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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/20 20060101AFI20220927BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
F24F1/0007 401C
F24F13/15 B
F24F13/15 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018235581
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020098052
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岸本 和之
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-083602(JP,A)
【文献】特開2018-080912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/20
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流を吹き出す細長の吹き出し口と、
前記吹き出し口内部の設置部に、着脱可能に設けられた風向調整ユニットと、
前記設置部から、前記設置部の主面に対して前記吹き出し口手前向きに傾斜して起立するガイドピラーと、を備え、
前記風向調整ユニットは、前記吹き出し口の長手方向の前記気流の向きを調整するための複数の風向板と、前記複数の風向板が設置される支持板と、を有し、
前記支持板には、前記吹き出し口奥側の辺に爪部が設けられ、
前記設置部は、前記爪部が前記吹き出し口奥向きに嵌め込まれる溝を有し、
前記ガイドピラーの前記吹き出し口手前側の稜線の前記設置部の主面に対する角度であって、
前記稜線の第1の位置における角度は、前記第1の位置より前記設置部に近い前記稜線の第2の位置における角度よりも大きいことを特徴とする、空気調和機。
【請求項2】
前記支持板には、前記吹き出し口奥側の辺に、前記ガイドピラーが嵌り込むガイド部が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記吹き出し口奥側の辺に設けられた凹部であることを特徴とする、請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記ガイドピラーの前記吹き出し口手前側の稜線の前記設置部の主面に対する角度は、前記稜線の少なくとも一部に沿って連続的に変化していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記風向調整ユニットを複数備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記複数の風向調整ユニットは、互いに入れ替えて前記吹き出し口内部に装着可能であることを特徴とする、請求項5に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
室内機に気流を発生させる室内ファンを備え、細長い形状の吹き出し口から、気流を部屋内に向けて吹き出す空気調和機が知られている。吹き出し口には、吹き出し口長手方向についての気流の向きを調整する風向板(縦ルーバ)を複数備えた風向調整ユニット(縦ルーバユニット)が設けられる。また、吹き出し口には、気流の向きを吹き出し口長手方向と直交する方向に調整する気流パネルも設けられる。縦ルーバや気流パネルはそれぞれの駆動部により与えられた駆動力により所要の向きに回動でき、自動若しくは、ユーザの選択によって、気流の向きを適宜調整することができるように構成されている。風向調整ユニットを着脱可能とし、ユーザが取り外せて清掃を行えるようにした、空気調和機も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-48791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吹き出し口長手方向についての気流の向きを調整するため、縦ルーバは、吹出し口の長手方向に沿って多数配置される必要がある。またこれら複数の縦ルーバは、そろって同じ向きに回動する必要がある。風向調整ユニットを着脱可能としつつこのような構成を実現するため、風向調整ユニットは、板状の支持板の上に、支持板に対して起立するように複数の縦ルーバを並べた構成とすることが考えられる。
【0005】
このような風向調整ユニットの空気調和機本体への取付けを、ユーザが確実に正しく行えるようにするため、構造上の工夫がなされることが望まれる。
【0006】
本発明の一態様は、着脱可能な風向調整ユニットの空気調和機本体への正しい固定位置への装着を、ユーザがより確実に実施できるようになる、メンテナンス性が改良された空気調和機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る空気調和機は、気流を吹き出す細長の吹き出し口と、前記吹き出し口内部の設置部に、着脱可能に設けられた風向調整ユニットと、前記設置部から、前記設置部の主面に対して前記吹き出し口手前向きに傾斜して起立するガイドピラーと、を備え、前記風向調整ユニットは、前記吹き出し口の長手方向の前記気流の向きを調整するための複数の風向板と、前記複数の風向板が設置される支持板と、を有し、前記支持板には、前記吹き出し口奥側の辺に爪部が設けられ、前記設置部は、前記爪部が前記吹き出し口奥向きに嵌め込まれる溝を有し、前記ガイドピラーの前記吹き出し口手前側の稜線の前記設置部の主面に対する角度であって、前記稜線の第1の位置における角度は、前記第1の位置より前記設置部に近い前記稜線の第2の位置における角度よりも大きい構成を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、着脱可能な風向調整ユニットの空気調和機本体への正しい固定位置への装着を、ユーザがより確実に実施できるようになる、メンテナンス性が改良された空気調和機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る空気調和機を示す斜視図であり、気流パネル及び風向調整ユニットを取り外した状態を示している。
図2】本発明の実施形態1に係る空気調和機を示す斜視図であり、気流パネルを取り外した状態を示している。
図3】本発明の実施形態1に係る空気調和機を示す斜視図であり、気流パネルが閉じた状態を示している。
図4】本発明の実施形態1に係る空気調和機を示す斜視図であり、気流パネルが開いた状態を示している。
図5】本発明の実施形態1に係る空気調和機の分解図である。
図6】本発明の実施形態1に係る空気調和機の吹き出し口モジュールの分解図である。
図7】本発明の実施形態1に係る空気調和機の吹き出し口モジュールを示す部分拡大図である。
図8】本発明の実施形態1に係る空気調和機の風向調整ユニットを示す斜視図である。
図9】本発明の実施形態1に係る空気調和機の風向調整ユニットを示す平面図であり、(a)は上面図、(b)は下面図、(c)は右側面図である。
図10】本発明の実施形態1に係る空気調和機の吹き出し口モジュールの断面図である。
図11】本発明の実施形態1に係る空気調和機本体に、風向調整ユニットを装着する状況を表した断面図である。
図12】本発明の実施形態2に係る空気調和機の風向調整ユニットの支持板を示す部品図である。
図13】比較例の空気調和機本体に、風向調整ユニットを装着する状況を表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1が、図1図11に基づいて詳細に説明される。本実施形態では、図3の外観図に示されるように、室内機と室外機とからなるセパレートタイプの壁掛け型空気調和装置の室内機である空気調和機1が例示として説明される。但し、本発明の一態様に係る空気調和機では、空調された気流の吹き出し口Bが、所定方向に延伸した細長の形状を有し、当該所定方向の正方向および負方向に風向きを調整する複数の風向板が、支持板上に当該所定方向に沿って配列された風向調整ユニットを備えていればよい。従って、空気調和機は、天井内据え付け型、床置き型でもよいし、室外機を有しない室内専用機型(窓取付型エアコン等)でもよい。
【0011】
なお各図面には、空気調和機1の様々な部材が示されているが、実施形態とは関係しない部材については説明が省略される。これらの説明が省略される部材は、公知のものと同様であると理解されてよい。また、各図面は、各部材の形状、構造、および位置関係等を示す構成を概略的に説明することを目的としたものであり、本発明の一態様に係る空気調和機が、各図面に示された構成に限定されるものではない。これらの点は、他の実施形態についても同様である。
【0012】
(空気調和機1の概要)
初めに、図1図5を参照して、本実施形態の空気調和機1の概略的な構成が説明される。
【0013】
図3は、空気調和機1の外観を示す斜視図であり、気流の吹き出し口Bが閉じられている状態を示す。図4は、空気調和機1の外観を示す斜視図であり、空調運転を実施し、気流パネル140が開き、気流の吹き出し口Bが外部から視認できる状態を示す。空気調和機1は、前側キャビネット20、リア側キャビネット30、吹き出し口モジュール10とを備え、これらにより空気調和機1の筐体が構成されている。図5は、空気調和機1を、前側キャビネット20、リア側キャビネット30、吹き出し口モジュール10とに分解して示す分解図である。図5には、空気調和機1内部に取り付けられる貫流ファン40も併せて示されている。
【0014】
リア側キャビネット30は、空調対象となる部屋の壁面に固定される。空気調和機1は全体として長方形の箱状であり、その長手方向に細長い吹き出し口Bが設けられている。各図に示されるように、吹き出し口の長手方向がX方向であり、XZ平面が、リア側キャビネット30が取り付けられる壁面に平行であるようにY方向、Z方向が定義される。Y軸の方向は、取り付け壁面から空気調和機1の正面に向かう方向である。空気調和機1が、鉛直面に平行な壁に、X軸が水平になるように取り付けられた時に、Z軸方向は、鉛直方向上向きとなる。本願において、吹き出し口Bの長手方向(X軸に平行)が横方向若しくは左右方向と称され、X軸の向きが左、X軸の向きに逆の向きが右とされる。ユーザが吹き出し口B(空気調和機1の正面)に正対したときに、ユーザから見て、それぞれ左向き、右向きに相当するからである。また、Y軸の向きが手前向き、Y軸に逆の向きが奥向きとも称される。ユーザが吹き出し口B(空気調和機1の正面)に正対したときに、ユーザから見て、それぞれ手前側、奥側に相当するからである。よって、吹き出し口Bにおける気流の向きは、概略Y軸の向き(手前向き)である。
【0015】
更に本願においては、記述を分かりやすくするために、Z軸に平行な方向が上下方向、Z軸の向きが上、Z軸の向きに逆の向きが下と称されることがある。これは、空気調和機1が、鉛直面に平行な壁に、X軸が水平になるように取り付けられたときに、理解がしやすいための記述方法であり、空気調和機1の取り付け方法が、この条件に制限されるものではない。
【0016】
図3等に示されるように、前側キャビネット20及びリア側キャビネット30の上方(Z軸正方向)には、多数の桟とその間の隙間からなる空気の取り入れ口Iが設けられている。図5に示されるように、貫流ファン40は、横軸(回転軸がX軸に平行)円筒形状の、気流を発生させるファンであり、空気を吸入および送出するための複数のブレードを、周方向に備えている。図示されないが、貫流ファン40の上側周囲を囲むように、熱交換器が設けられる。貫流ファン40が回転することで、取り入れ口Iから空気調和機1内へ空気を吸い込み、吸い込んだ空気を熱交換器を通して吹き出し口Bから室内へ吹き出す気流が作り出される。
【0017】
図5に示されるように、吹き出し口モジュール10は、前側キャビネット20の下側(Z軸負方向)に設けられる。吹き出し口モジュール10は、吹き出し口Bを構成する枠体100に、縦ルーバ122(風向板)を複数備えた風向調整ユニット120、気流パネル140等が組み付けられて構成される。吹き出し口モジュール10の構造の詳細については後述される。室内へ吹き出す気流は、気流パネル140及び風向調整ユニット120の縦ルーバ122によって方向付けられる。
【0018】
気流パネル140は、空気調和機1の運転状態に応じて、空気調和機1内の制御装置(不図示)によって開閉が制御される。図3に示されるように、気流パネル140が閉じられた場合には、気流の吹き出し口Bは塞がれ、気流パネル140は、空気調和機1の外装パネルとしての役割を果たす。気流パネル140がX軸の周りの方向に回転し、開かれた場合には、図4に示されるように、気流の流路としての吹き出し口Bが露出する。また、気流パネル140はその回転角度により、吹き出し口Bから室内へ吹き出す気流の上下方向(Z軸に平行)の向きを調整する。
【0019】
図2は、空気調和機1の外観を示す斜視図であり、空気調和機1から気流パネル140が取り外された状態を示している。
【0020】
気流パネル140は横長の略板状の部材であり、その一端に回転軸である短軸141を有し、他端に係合孔142を有する。短軸141は内側に向かって押し込み可能であり、吹き出し口モジュール10の枠体100に設けられた軸穴101から取り外すことで、ユーザは、気流パネル140を空気調和機1本体から取り外すことができる。係合孔142は、空気調和機1本体側(枠体100側)に取り付けられる気流パネル回転ユニット150の係合軸151と係合する。
【0021】
気流パネル140は、気流パネル回転ユニット150の係合軸151から回転方向の駆動力を得て、気流の上下方向(Z軸に平行)の向きを調整するための回転角度の調整が行われる。気流パネル140は、略板形状の部材であり、内部に可動部分がほとんどない比較的単純な構造であるため、重量も軽く、ユーザは容易に着脱ができ清掃及び洗浄も容易である。
【0022】
吹き出し口B内には、気流パネル140の奥に、左右方向の向きを変えることが可能な縦ルーバ122が複数設置されており、気流パネル140が取り外された状態では容易に外部から視認できる。また、吹き出し口B内には、中央部付近の上部に、イオン発生ユニット110が配置されている。
【0023】
図1は、空気調和機1の外観を示す斜視図であり、図2の状態から、更に縦ルーバ122を複数備える風向調整ユニット120が取り外された状態を示している。図1及び図2から明らかになるように、空気調和機1は、風向調整ユニット120を吹き出し口B内の左右に並んで2つ備えている。風向調整ユニット120は、縦ルーバ122の向きにより、吹き出し口Bから室内へ吹き出す気流の左右方向の向きを調整する。吹き出し口Bの内部において、風向調整ユニット120が取り付けられる位置の奥側には、ガイドピラー106が縦向きに形成されている。
【0024】
(風向調整ユニット120及び吹き出し口モジュール10の概要)
次に、風向調整ユニット120の構成及び、風向調整ユニット120等を配置する枠体100を有する吹き出し口モジュール10の構成について、図6図9を参照しつつ説明される。
【0025】
図6は、吹き出し口モジュール10を示す斜視図であり、吹き出し口モジュール10を分解して示す。吹き出し口モジュール10は概略、枠体100、イオン発生ユニット110、2つの風向調整ユニット120、駆動ユニット130、気流パネル140、気流パネル回転ユニット150とから構成されている。図7は、枠体100に、イオン発生ユニット110、駆動ユニット130、左側の風向調整ユニット120が取り付けられた状態を拡大して示す斜視図である。イオン発生ユニット110は、左右それぞれにイオン吹き出しのための開口部を備えた一体のユニットである。それぞれの風向調整ユニット120は、枠体100内の吹き出し口Bの底部(Z軸負方向側の面)の設置部102に対して着脱可能に嵌め込まれる。図8は、風向調整ユニット120を拡大して示す斜視図であり、図9はその平面図である。図9において(a)は、風向調整ユニット120の上面図、(b)は下面図、(c)は右側面図である。
【0026】
風向調整ユニット120は、支持板121の上に、複数の縦ルーバ122が吹き出し口B長手方向に沿って配列されて構成されている。複数の縦ルーバ122は、支持板121に対して起立し、支持板121に垂直な軸周りに、一定の角度の範囲内で揺動し得る。それぞれの軸にあたる部分は、風向調整ユニット120における最も奥寄り(Y軸方向と逆方向)に位置しており、羽の先端にあたる部分は、手前側(Y軸方向)に位置する。複数の縦ルーバ122は、各々羽の先端部分が連結バー123で繋がれており、これにより風向調整ユニット120において複数の縦ルーバ122の左右の向きが同じになるように揺動させられる。風向調整ユニット120の全体は、ほぼ左右対称に形成されている。
【0027】
複数の縦ルーバ122のうち、風向調整ユニット120の両端に位置する2つの縦ルーバ122aは、回動軸124を有し、縦ルーバ122a全体が回転運動する。一方、両端以外の縦ルーバ122b(両端に位置する縦ルーバ122aで挟まれた縦ルーバ122b)は、支持板121から略垂直に起立する軸部1221と、縦ルーバ122bの主要部分である羽根部1223と、軸部1221と羽根部1223との間の軟部1222とから構成されている。軸部1221の基部(根元部分)は、支持板121に固定されている。縦ルーバ122bが左右に振れていないときに、軟部1222及び羽根部1223は、軸部1221に略平行な板状の形状である。軸部1221と羽根部1223とは、軟部1222と同素材で構成された、軟部1222に対して相対的に肉厚の厚い柔軟性の乏しい部分からなる。あるいは、軸部1221と羽根部1223とは、軟部1222に対して相対的に硬質の素材で構成された柔軟性の乏しい部分であってもよい。
【0028】
縦ルーバ122bの軸に相当する軸部1221は、支持板121に対して固定されているが、軟部1222で縦ルーバ122bは左右に湾曲することができ、羽根部1223の左右の向きを変えることができる。このように、縦ルーバ122bは、簡易な構造で上記揺動運動(回転運動)をすることが可能なように構成されている。よって、風向調整ユニット120全体がコンパクトで軽量に構成され得る。
【0029】
図9(b)に示されるように、両端の縦ルーバ122aの回動軸124は、支持板121の下側に突き抜けている。風向調整ユニット120が、枠体100の設置部102に取り付けられた際に、いずれか一方の回動軸124の下端部が、駆動ユニット130の伝達軸131と係合するように構成されている。
【0030】
駆動ユニット130は、枠体100に組み立てられた際に、2つの伝達軸131が、それぞれの設置部102に設けられた貫通穴103から突き出るように(図7参照)構成される。図6に示されるように、伝達軸131が配置される貫通穴103の位置は、右側の設置部102においては左端、左側の設置部102においては右端となる。つまり、吹き出し口モジュール10において、吹き出し口Bの中央部付近に2つの伝達軸131が設けられている。
【0031】
右側の設置部102に設置された風向調整ユニット120では、左端の回動軸124が、伝達軸131に係合し、右端の回動軸124には、なにも係合しない。左側の設置部102に設置された風向調整ユニット120では、右端の回動軸124が、伝達軸131に係合し、左端の回動軸124には、なにも係合しない。
【0032】
以上のような構成により、2つの風向調整ユニット120の間に設けられた一つのモータを備える駆動ユニット130によって、左右双方の風向調整ユニット120の縦ルーバ122の揺動運動を行わせることが可能となっている。従って、2つの風向調整ユニット120に対して、それぞれに駆動源を設ける必要がなく、低コストで左右方向の気流の制御を行うことが可能となる。
【0033】
このように、吹き出し口B内に設けられた縦ルーバ122は、上述の構成により、一つのモータ(駆動ユニット130)による揺動運動を可能としながら、2つの風向調整ユニット120に分かれて構成されており、それぞれが別途にまとまって着脱可能である。しかも、駆動力源や、左右双方の風向調整ユニット間の駆動力のリンク機構は、空気調和機1本体側の駆動ユニット130内に形成されているから、個々の風向調整ユニット120は軽量である。よって、ユーザは縦ルーバ122の取り外しを容易に行うことができ、また2つのユニットに分かれているために、吹き出し口B全体にわたる1つのユニットで構成する場合に比して小型、軽量であり、清掃若しくは洗浄作業もより容易である。
【0034】
しかも、それぞれの風向調整ユニット120では、回動軸124が左右両側に形成されているため、互いに入れ替えても、枠体100に装着が可能であって、そのようにしても縦ルーバ122の揺動運動のための駆動力を駆動ユニット130から伝達することができる。そのため、左右で形状の異なる風向調整ユニットを分割して設置する場合と比較して、部品の共通化がされるため、より低コストの空気調和機が実現できる。また、装着作業についてのユーザの利便性も高まる。
【0035】
また、中央の駆動ユニット130から、左右に分けて駆動力を伝達するため、吹き出し口Bの一方の端部から駆動力を与える場合と比較して、全ての縦ルーバへより確実に駆動力を伝達できる。
【0036】
(風向調整ユニット120の装着方法)
風向調整ユニット120の空気調和機1本体への装着方法が、図7図11を参照しつつ詳細に説明される。
【0037】
空気調和機1は、風向調整ユニット120の着脱を可能とするロック機構を備えている。図8及び図9に示されるように、ロック機構として、風向調整ユニット120の両端には、つまみ125と共に左右(X軸方向)にスライド可能なかんぬき126が設けられている。かんぬき126は、つまみ125のスライドにより風向調整ユニット120の内側に向けて押し込まれると、ばねにより外側に向けて付勢される。風向調整ユニット120が空気調和機1本体(枠体100)に装着されている状態で、ユーザが付勢力に逆らって両端のつまみ125を風向調整ユニット120の内側に移動させると、吹き出し口モジュール10の枠体100に設けられたかんぬき穴104と、かんぬき126との係合が外れる。そうして、ユーザは風向調整ユニット120を空気調和機1本体(枠体100)から取り外すことができる。
【0038】
なお、風向調整ユニット120の支持板121の下面には、図9(c)等に示される突起部127が設けられており、風向調整ユニット120が空気調和機1本体(枠体100)に装着されている際には、枠体100の設置部102の中央付近に設けられた緩嵌穴105(図7参照)に、緩く嵌り込んでいる。そうしてユーザが、風向調整ユニット120の取り外しを行う際に、風向調整ユニット120が枠体100の設置部102から少し浮いた状態となったとしても、突起部127は緩嵌穴105に嵌り込み続ける。従って、取り外しのときに、ユーザが風向調整ユニット120のロック機構を解除した際に、風向調整ユニット120が空気調和機1本体から落下してしまうことが防止される。
【0039】
また、風向調整ユニット120の空気調和機1本体(枠体100)への取付けは、風向調整ユニット120を枠体100の設置部102の奥側の部分で噛み合わせ、ロック機構について取り外しと逆の操作を行うことにより行うことができる。こうして、空気調和機1では、風向調整ユニット120が、装着された状態では外れることはないが、ユーザのロック解除操作により比較的簡単に取り外しを行えるように構成されている。
【0040】
なお、ロック機構は上記のものに限らず、かんぬきのスライド方向への付勢力は与えられず、単にかんぬきの位置により風向調整ユニット120の固定を行うようなものであってもよい。その場合も風向調整ユニット120の装着状態では、つまみ(かんぬき)にやや力を加えないとスライドしないようにロックされるようになっていることが望ましい。また、ロック機構が、風向調整ユニット120の側に設けられているものに限らず、空気調和機1本体側(枠体100側)に設けられていてもよい。その場合、例えば、風向調整ユニット120の中央部で、支持板121を挟み込み固定する機構とすることができる。
【0041】
次に、風向調整ユニット120の枠体100への設置状態が詳細に説明される。図9(a)~(c)に示されるように、風向調整ユニット120の支持板121は、奥側の辺に、奥向きに突出した爪部121aを備える。風向調整ユニット120が枠体100の設置部102に装着された際には、設置部102の奥側に設けられた嵌入溝102a(溝)に爪部121aが嵌り込むようにして風向調整ユニット120が固定される。嵌入溝102aは、爪部121aが奥側に向けて嵌り込む溝である。つまり、溝の奥行き方向は、設置部102に対して平行である。
【0042】
また、風向調整ユニット120の支持板121は、奥側の辺の一部が凹んだ凹部121b(ガイド部)を2か所左右対称の位置に有している。風向調整ユニット120が枠体100の設置部102に装着された際には、設置部102の奥側に設けられた2か所の位置決め突起102cにそれぞれの凹部121bが合うようにして風向調整ユニット120が固定される。位置決め突起102cの一方は、ガイドピラー106の基部をなしている。
【0043】
以上のようにして、風向調整ユニット120は、装着されると、枠体100に左右方向、縦方向ともに動かないように固定される。
【0044】
続いて、ユーザが、風向調整ユニット120を空気調和機1本体(枠体100)に取り付ける際の装着方法が説明される。
【0045】
図10は、吹き出し口B長手方向(X方向)から観察した、枠体100の断面図である。吹き出し口B内部の、気流の通路の底面(Z軸負方向側の面)に設けられた設置部102からガイドピラー106が、起立している。ガイドピラー106は、設置部102の主面に対して垂直ではなく、手前向き(Y軸方向)に傾斜するように起立している。ガイドピラー106の手前側(Y軸方向)の稜線は、次のように構成されている。設置部102の主面から離れた位置(第1の位置)の稜線106aは、設置部102の主面に対して相対的に大きい(深い)角度を有し、設置部102の主面に近い位置(第2の位置)の稜線106bは、設置部102の主面に対して相対的に小さい(浅い)角度を有する。ここで、設置部102の主面に対する稜線の方向の関係が垂直に近い方向をより深い角度、と称している。設置部102の主面に垂直である位置からの傾斜で表現すると、より浅い角度とは、傾斜が大きくなる状態である。また、ここでガイドピラー106の手前側の稜線とは、吹き出し口B長手方向(X方向)から観察したときに、ガイドピラー106の最も手前側(Y軸方向)の部分を構成する線を称している。ガイドピラー106の最も手前側がX軸に平行な小面で構成されているときには、ガイドピラー106の手前側の稜線は、その小面のXZ断面の手前側(Y軸方向)の縁と等しい。しかし、ガイドピラー106の手前側の形状は、必ずしもこのような小面で構成されることに限定されない。
【0046】
空気調和機1本体(枠体100)に取り付けるために、ユーザが、風向調整ユニット120を吹き出し口Bから差し入れて装着位置に移動させる状況を、図11に模式的に示す。図において、風向調整ユニット120の爪部121aが枠体100の嵌入溝102aに嵌り込む直前の位置での支持板121の断面が示されており、また、支持板121の移動の軌跡が模式的に矢印Aと矢印Bとで表されている。
【0047】
ユーザが、左右の位置がおよそ正しい状態で、風向調整ユニット120を吹き出し口Bの奥へと差し入れると、ガイドピラー106が支持板121の凹部121bに緩く嵌り込んで、支持板121がガイドピラー106の手前側の面に接触する。接触状態を保ったまま、ユーザが支持板121を設置部102の方へ移動させると、ガイドピラー106が設置部102の主面に対して垂直ではなく、手前向き(Y軸方向)に傾斜するように起立しているため、支持板121が徐々に吹き出し口の手前側から設置部102に向けて自然にガイドされる。
【0048】
支持板121がガイドピラー106の上部の第1の位置で当たっている際には、稜線106aの角度に従って、支持板121が設置部102の主面に対して深い角度(矢印A)で設置部102に近づく。この際の支持板121の爪部121aの先端の軌跡を延長すると、嵌入溝102aよりも手前になる。
【0049】
更にユーザが支持板121を設置部102の方へ移動させると、支持板121がガイドピラー106の下部の第2の位置で当たるようになる。すると、稜線106bの角度に従って、支持板121が設置部102の主面に対して浅い角度(矢印B)で設置部102に近づくようになる。そうして最終的に風向調整ユニット120の爪部121aが枠体100の嵌入溝102aに嵌り込む。このように、ガイドピラー106によって、風向調整ユニット120(支持板121)の動きが、ガイドされて、風向調整ユニット120が正しい位置で、空気調和機1本体(枠体100)に取り付けられる。
【0050】
比較のため、図13に、ガイドピラー906の手前側の稜線の、設置部902の主面に対する角度が一定であるとした比較例の空気調和機の枠体900について説明する。このとき、ガイドピラー906の主要部分の形状は、単純に一定の太さの柱状である。この場合、ガイドピラー906によってガイドされる風向調整ユニット120の移動の軌跡(矢印C)は直線的であり、設置部902の主面に対する角度は一定である。すると、風向調整ユニット120の爪部121aが、設置部902の嵌入溝902aに嵌り込まずに、嵌入溝902aを構成する溝壁部902bに乗り上げてしまうことが生じやすくなる。爪部121aの先端の移動の軌跡も、ほぼ嵌入溝102aの奥に向けて一定であるためである。このように爪部121aが溝壁部902bに乗り上げてしまった場合でも、ユーザが無理に上記ロック機構を用いて風向調整ユニット120を固定してしまうことがある。このような誤った装着がなされると、風向調整ユニット120が空気調和機の運転中に正しく動作しないだけでなく、風向調整ユニット120等の破損の原因ともなりかねない。
【0051】
一方、実施形態1の空気調和機1では、風向調整ユニット120の取付けが正しくなされず、間違った方法で取り付けられて空気調和機1の本来の機能が発揮されない、あるいは風向調整ユニットが正しく嵌っていないのにユーザが無理に風向調整ユニットを固定しようとして破損するなどのトラブルの発生が抑制される。図11に示されたように、ユーザが風向調整ユニット120を設置部102に近づけていく際の、爪部121aの軌跡が、角度を変えつつ嵌入溝902aに近づいていくため、爪部121aが、嵌入溝102aを構成する溝壁部102bに乗り上げてしまう現象の発生が抑制されるからである。従って実施形態1の空気調和機1によれば、爪部121aが嵌入溝902aに嵌り込む状態で風向調整ユニット120をより確実に正しく装着でき、このようなトラブルの発生が抑制される。
【0052】
上記の説明では、ガイドピラー106の手前側の稜線の、設置部102の主面に対する角度について、ガイドピラー上部(第1の位置)とガイドピラー下部(第2の位置)の2か所について言及がされた。しかしながら、ガイドピラー106の手前側の稜線の角度に関しては、2段階で移り変わるものに限定する趣旨ではなく、多段階、更には連続的に角度が移行するようなものであってもよい。図10に示されるように、連続的に角度が移行するものであった方が、ユーザがよりスムーズに、ガイドピラーにガイドさせての風向調整ユニット120の移動を行うことができ好ましい。ガイドピラー106の手前側の稜線が部分的に直線で、部分的に曲線であるようなものであってもよい。ガイドピラー106の手前側の稜線の設置部102の主面に対する角度は、稜線の少なくとも一部に沿って連続的に変化しているものであってもよい。
【0053】
実施形態1において、各部材を備えた吹き出し口モジュール10により一体化されて吹き出し口Bが構成される例が示された。しかしながら、例えば、吹き出し口Bの上側(Z軸正方向)と下側(Z軸負方向)とで別々の部材を組み立てて吹き出し口Bを構成するものであってもよく、このような変更は設計事項として、当業者が適宜に採用し得るものである。
【0054】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0055】
実施形態2に係る空気調和機は、図1~11に示された空気調和機1と同様の構造を有する。ただし、風向調整ユニットの支持板221の形状が、空気調和機1とは異なる。
【0056】
図12は、実施形態2に係る空気調和機の風向調整ユニットの支持板221の部品図である。実施形態1の支持板121とは異なり、風向調整ユニット120の装着の操作のときにガイドピラーが緩く嵌り込むガイド部221bは、支持板221の辺の2つの突起により構成されている。この場合、支持板221がガイドピラーに当たる位置が、実施形態1の支持板121と比較すると、支持板221の奥側になるため、その分、枠体におけるガイドピラーの取付け位置も移動する必要があるものの、他は実施形態1に係る空気調和機1と同様に構成できる。
【0057】
実施形態2に係る空気調和機によっても、実施形態1に記載の効果と同様の効果が得られる。
【0058】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る空気調和機は、気流を吹き出す細長の吹き出し口と、前記吹き出し口内部の設置部に、着脱可能に設けられた風向調整ユニットと、前記設置部から、前記設置部の主面に対して前記吹き出し口手前向きに傾斜して起立するガイドピラーと、を備え、前記風向調整ユニットは、前記吹き出し口の長手方向の前記気流の向きを調整するための複数の風向板と、前記複数の風向板が設置される支持板と、を有し、前記支持板には、前記吹き出し口奥側の辺に爪部が設けられ、前記設置部は、前記爪部が前記吹き出し口奥向きに嵌め込まれる溝を有し、前記ガイドピラーの前記吹き出し口手前側の稜線の前記設置部の主面に対する角度であって、前記稜線の第1の位置における角度は、前記第1の位置より前記設置部に近い前記稜線の第2の位置における角度よりも大きい構成を備えている。
【0059】
上記の構成によれば、着脱可能な風向調整ユニットの空気調和機本体への正しい固定位置への装着を、ユーザがより確実に実施できるようになる、メンテナンス性が改良された空気調和機を実現できる。
【0060】
本発明の態様2に係る空気調和機は、上記態様1において、前記支持板には、前記吹き出し口奥側の辺に、前記ガイドピラーが嵌り込むガイド部が設けられていてもよい。
【0061】
上記の構成によれば、ユーザが風向調整ユニットを空気調和機本体へ装着させる際に、吹き出し口長手方向における正しい位置に、風向調整ユニットをガイドさせることができる。
【0062】
本発明の態様3に係る空気調和機は、上記態様2において、前記ガイド部が、前記吹き出し口奥側の辺に設けられた凹部で構成されていてもよい。
【0063】
上記の構成によれば、吹き出し口長手方向への位置決めのためのガイド部を具体的に構成できる。
【0064】
本発明の態様4に係る空気調和機は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記ガイドピラーの前記吹き出し口手前側の稜線の前記設置部の主面に対する角度は、前記稜線の少なくとも一部に沿って連続的に変化していてもよい。
【0065】
上記の構成によれば、ユーザが風向調整ユニットを空気調和機本体へ装着させる際に、スムーズに風向調整ユニットを設置部に向けて移動させることができる、
本発明の態様5に係る空気調和機は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記風向調整ユニットを複数備えていてもよい。
【0066】
上記の構成によれば、ユーザによる風向調整ユニットの着脱及び、その清掃、洗浄が容易な空気調和機が実現できる。
【0067】
本発明の態様6に係る空気調和機は、上記態様5において、前記複数の風向調整ユニットが、互いに入れ替えて前記吹き出し口内部に装着可能である構成を備えていてもよい。
【0068】
上記の構成によれば、複数の風向調整ユニットを空気調和機本体に装着する際のユーザの利便性が向上し、また空気調和機本体から風向調整ユニットを着脱可能にする空気調和機を低コストで実現できる。
【0069】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。更に、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0070】
1、2 空気調和機
10 吹き出し口モジュール
100 枠体
101 軸穴
102 設置部
102a、902a 嵌入溝(溝)
102b、902b 溝壁部
102c 位置決め突起
103 貫通穴
104 かんぬき穴
105 緩嵌穴
106 ガイドピラー
106a 第1の位置の稜線
106b 第2の位置の稜線
110 イオン発生ユニット
120 風向調整ユニット
121、221 支持板
121a 爪部
121b 凹部(ガイド部)
221b ガイド部
122、122a、122b 縦ルーバ
1221 軸部
1222 軟部
1223 羽根部
123 連結バー
124 回動軸
127 突起部
130 駆動ユニット
131 伝達軸
140 気流パネル
141 短軸
142 係合孔
150 気流パネル回転ユニット
151 係合軸
20 前側キャビネット
30 リア側キャビネット
40 貫流ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13