(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ゴム組成物、タイヤ、添加剤及びヒドラジド化合物
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20220927BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220927BHJP
C07C 243/38 20060101ALI20220927BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220927BHJP
C08K 5/25 20060101ALI20220927BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C08L7/00
B60C1/00 Z
C07C243/38 CSP
C08K3/013
C08K5/25
C08L9/00
(21)【出願番号】P 2018531982
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2017028300
(87)【国際公開番号】W WO2018025966
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2016153586
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 悟司
(72)【発明者】
【氏名】斉木 彩
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】植野 真布夕
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正樹
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-014885(JP,A)
【文献】特開昭51-014886(JP,A)
【文献】特開2006-290838(JP,A)
【文献】特開2006-290839(JP,A)
【文献】特開平11-292834(JP,A)
【文献】米国特許第02828299(US,A)
【文献】国際公開第2017/104467(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/062335(WO,A1)
【文献】特開昭50-066581(JP,A)
【文献】特開昭51-006718(JP,A)
【文献】特開昭50-070105(JP,A)
【文献】特開2002-226504(JP,A)
【文献】特表2014-501827(JP,A)
【文献】特表2007-501197(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101368(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/211932(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
C07C243/00-243/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、下記式(I)で表される化合
物
(式中、Aは、フェニル基又はナフチル基であり、少なくとも2つの極性基を有し、且つ、その中の少なくとも1つがヒドロキシル基であり、該極性基は同じであっても異なっていてもよい。R
1及びR
2は、いずれも水素原子であ
る。)
とを含み、
前記式(I)で表される化合物が、2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,4-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド、3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボヒドラジド、1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、2,4,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾヒドラジド及び2-ヒドロキシ-5-ニトロベンゾヒドラジドからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物中のAの有する極性基の少なくとも2つが、ヒドロキシル基であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記式(I)で表される化合物の分子量が、250以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物の融点が、80℃以上、250℃未満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05~30質量部であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記充填材が、カーボンブラック及び/又はシリカを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10~160質量部であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなることを特徴とする、タイヤ。
【請求項10】
ジエン系ゴムを含有するゴム成分に添加される添加剤であって、下記式(I)で表される化合物
(式中、Aは、フェニル基又はナフチル基であり、少なくとも2つの極性基を有し、且つ、その中の少なくとも1つがヒドロキシル基であり、該極性基は同じであっても異なっていてもよい。R
1及びR
2は、いずれも水素原子であ
る。)
を含有し、
前記式(I)で表される化合物が、2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,4-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド、3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボヒドラジド、1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、2,4,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾヒドラジド及び2-ヒドロキシ-5-ニトロベンゾヒドラジドからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、添加剤。
【請求項11】
3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド及び4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジドからなる群より選択される少なくとも1つである、ヒドラジド化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、タイヤ、添加剤及びヒドラジド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなっており、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く、低発熱性に優れたゴム組成物が望まれている。
【0003】
従来の空気入りタイヤにおいては、低発熱性を実現することを目的として、ゴム組成物中のカーボンブラックの粒子径を大きくしたり、カーボンブラックの配合量を減少させる等の対策が考えられるが、同時にトレッドゴムの耐摩耗性の低下や、ゴムの耐カット性や耐チッピング性等の耐破壊性を低下させるという問題があった。
【0004】
そのため、強度等の他の物性を低下させることなく、低発熱性を改善できる技術の開発が望まれていた。
それらの技術の一つとして、例えば特許文献1には、ゴム成分とカーボンブラックとの化学的相互作用を向上させることを目的として、天然ゴムを含むエラストマーに、カーボンブラック及び特定のヒドラジド化合物を配合したゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術については、低発熱性が十分ではなく、自動車の低燃費化に対する要求に応えるべく、低発熱性のさらなる改善が必要であった。また、低発熱性の改善に加えて、耐摩耗性についてもさらなる改善が望まれていた。
【0007】
そのため、本発明の目的は、低発熱性及び耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低発熱性及び耐摩耗性に優れたタイヤを提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、ゴム組成物中に配合されることで優れた低発熱性及び耐摩耗性を発現させることが可能な添加剤及び新規なヒドラジド化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ゴム成分及び充填材を含むゴム組成物について、上記課題を解決するべく鋭意研究を行った。そして、ゴム組成物中に、特定構造を有するヒドラジド化合物を含有させることによって、ゴム成分とカーボンブラックやシリカとの相互作用を高めることができる結果、より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、充填材と、下記式(I)で表される化合物とを含むことを特徴とする。
(式中、Aは、アリール基であり、少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基であり、さらに、該置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。)
上記構成を具えることによって、優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できる。
【0010】
また、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物中のAの有する極性基の少なくとも1つが、ヒドロキシル基、アミノ基又はニトロ基であることが好ましく、当該極性基の少なくとも1つがヒドロキシル基であることがより好ましく、当該極性基の少なくとも2つがヒドロキシル基であることが特に好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0011】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物中のAが、フェニル基又はナフチル基であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現でき、実用性の点でも優れるためである。
【0012】
また、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物中のR1及びR2が、いずれも水素原子であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0013】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物の分子量が、250以下であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0014】
さらにまた、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物の融点が、80℃以上、250℃未満であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0015】
また、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05~30質量部であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0016】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記ジエン系ゴムが、天然ゴムであることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0017】
さらにまた、本発明のゴム組成物については、前記充填材が、カーボンブラック及び/又はシリカを含むことが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0018】
また、本発明のゴム組成物については、前記充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10~160質量部であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0019】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記式(I)で表される化合物が、2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,4-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド
、3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボヒドラジド、1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、2,4,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾヒドラジド及び2-ヒドロキシ-5-ニトロベンゾヒドラジドからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、その中でも、2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド、3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド、2,4,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド、又は、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾヒドラジドであることがより好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
なお、3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド及び4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジドは、文献未記載の新規化合物である。
【0020】
本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できる。
【0021】
本発明の添加剤は、ジエン系ゴムを含有するゴム成分に添加される添加剤であって、下記式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする。
(式中、Aは、アリール基であり、少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基であり、さらに、該置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。)
上記構成を具えることで、ゴム組成物の低発熱性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低発熱性及び耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低発熱性及び耐摩耗性に優れたタイヤを提供することができる。さらに、本発明によれば、ゴム組成物中に配合されることで優れた低発熱性及び耐摩耗性を発現させることが可能な添加剤及び新規なヒドラジド化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を具体的に例示説明する。
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、充填材と、下記式(I)で表される化合物とを含むゴム組成物である。
(式中、Aは、アリール基であり、少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基であり、さらに、該置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。)
【0024】
●ゴム成分
本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分については、ジエン系ゴムを含むものであれば特に限定はされない。
前記ジエン系ゴムについては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)等を挙げられるが、これらの中でも、天然ゴムを用いることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるからである。
なお、前記ジエン系ゴムについては、1種単独で含有してもよいし、2種以上のブレンドとして含有してもよい。
【0025】
なお、前記ゴム成分におけるジエン系ゴムの含有量については、特に限定はされないが、優れた低発熱性を維持するという点からは、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0026】
●充填材
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、充填材を含む。
充填材を、前記ゴム成分及び後述する式(I)で表される化合物とともに含むことで、他の物性を低下させることなく、優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できる。
【0027】
ここで、前記充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、前記ゴム成分100質量部に対して10~160質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。充填材の量について適正化を図ることで、より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためであり、含有量が10質量部未満の場合、十分な耐破壊性が得られないおそれがあり、含有量が160質量部を超えると、十分な低発熱性が得られないおそれがある。
【0028】
また、前記充填材の種類については特に限定はされない。例えば、カーボンブラックや、シリカ、その他の無機充填材を含むことができる。その中でも、前記充填材は、カーボンブラック及び/又はシリカを含むものであることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性が得られるためである。なお、カーボンブラック及びシリカについては、それぞれ単独で含有することもできるし、これらを併用して含有することもできる。
ここで、前記カーボンブラックとしては、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレード等のカーボンブラックが挙げられる。
また、前記シリカとしては、特に限定はされず、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ及びコロイダルシリカ等を用いることができる。
【0029】
また、前記その他の無機充填材として、例えば下記式(II)で表される無機化合物を用いることも可能である。
nM・xSiOY・zH2O ・・・ (II)
(式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数、及び0~10の整数である。)
【0030】
上記式(II)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
【0031】
●式(I)で表される化合物
そして、本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分及び充填材に加えて、式(I)で表される化合物を含む。
式(I)の、Aは、アリール基である。ここで、該アリール基は、任意の位置に少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよく、前記極性基の位置については、前記芳香環中のどこであってもよい。
また、式(I)のR
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基である。さらに、これらの置換基については、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。
【0032】
上記式(I)で表される化合物については、Aで示されたアリール基がカーボンブラック等の充填材と高い親和性を有し、且つ、ヒドラジド骨格を有する部分がゴム成分と高い親和性を有するため、ゴム組成物中に配合されることで、ゴム成分と充填材との化学的相互作用を大きく向上させることができる。それによって、充填材同士の擦れ合いに起因したヒステリシスを低減できる結果、従来に比べて極めて優れた低発熱性を得ることができる。加えて、充填材の分散性向上によって、よりすぐれた補強性についても実現できる。
【0033】
ここで、前記式(I)で表される化合物中のAで示したアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。その中でも、前記アリール基は、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。優れた充填材との親和性を示すため、より優れた低発熱性を実現でき、芳香環の数を減らせるため、コスト的にも有利であり、実用性の点でも優れる。
【0034】
また、前記式(I)で表される化合物中のAで示したアリール基の有する極性基の数は、2つ以上であることが好ましい。芳香環中に2つ以上の極性基を有することで、カーボンブラック等の充填材と高い親和性を得ることができるためであり、2つ未満の場合には、充填材との親和性が十分に得られず、ゴム組成物の低発熱性を低下させるおそれがある。
また、前記極性基の種類については、特に限定はされず、例えば、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基、アルコキシシリル基、アルキルアミノ基、ニトロ基等が挙げられる。それらの中でも、前記極性基は、少なくとも1つがヒドロキシル基、アミノ基又はニトロ基であることが好ましく、ヒドロキシル基であることがより好ましく、少なくとも2つがヒドロキシル基であることが特に好ましい。さらに優れた充填材との親和性を示し、ゴム組成物の低発熱性をより向上できるためである。
【0035】
また、前記式(I)で表される化合物においてAにつながるヒドラジド基については、R1及びR2が、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基となる。なお、これらの置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含むものであってもよい。
さらに、R1及びR2については、上述した置換基の中でも、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、R1及びR2がいずれも水素原子であることがより好ましい。ゴム成分と高い親和性を有し、より優れた低発熱性及び耐摩耗性が得られるためである。
【0036】
ここで、上述した式(I)で表される化合物のいくつかの代表例を、以下に示す。
2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,4-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド
3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド
4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド
3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボヒドラジド
1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド
2,4,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド
2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾヒドラジド
【0037】
また、前記式(I)で表される化合物の分子量については、250以下であることが好ましく、220以下であることがより好ましく、180以下であることが更に好ましい。天然ゴムの各分子との親和性が高くなり、より優れた低発熱性を得ることができ、耐摩耗性についても高めることができるからである。
【0038】
また、前記式(I)で表される化合物の融点については、80℃以上、250℃未満であることが好ましく、前記ヒドラジド化合物の融点を低くすることで、天然ゴムの各分子との親和性が高くなり、より優れた低発熱性を得ることができ、耐摩耗性についても高めることができるからである。
【0039】
なお、本発明のゴム組成物における前記式(I)で表される化合物の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05~30質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。前記含有量を前記ゴム成分100質量部に対して0.05質量部以上とすることで、所望の低発熱性が得られ、30質量部以下とすることで、耐摩耗性や、強度等の他の物性を良好に維持できるためである。
【0040】
●その他の成分
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分、前記充填材及び前記式(I)で表される化合物の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含むことができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0041】
●ゴム組成物の製造方法
なお、本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定はされない。例えば、ジエン系ゴム含有するゴム成分と、充填材と、前記式(I)で表される化合物とを、公知の方法で、配合し、混錬することで得ることができる。
【0042】
(タイヤ)
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いてなることを特徴とする。本発明のゴム組成物をタイヤ材料として含むことで、他の物性を低下させることなく、優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できる。
前記ゴム組成物を適用する部位については、タイヤの中でもトレッドに用いることが好ましい。本発明のゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、低発熱性及び耐摩耗性に優れる。
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。なお、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0043】
(添加剤)
本発明の添加剤は、ジエン系ゴムを含有するゴム成分に添加される添加剤であって、下記式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする。
(式中、Aは、アリール基であり、少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基であり、さらに、該置換基は、O、S及びN原子のうちの一種以上を含んでいてもよい。)
【0044】
式(1)で表されるヒドラジド化合物を含有してなる添加剤は、カーボンブラック等の充填材と高い親和性を有し、且つ、ゴム成分と高い親和性を有するため、ゴム組成物中に配合されることで、ゴム成分と充填材との化学的相互作用を大きく向上させることができ、結果として優れた低発熱性を発現できる。また、充填材の分散性向上によって、より優れた補強性を実現できるとともに、ゴム成分と充填材との化学的相互作用が大きく向上した結果、耐摩耗性の向上が可能となる。即ち、本発明の添加剤は、低発熱化剤、耐摩耗特性付与剤、耐破壊特性付与剤、又は恒粘度剤として使用することができることから、換言すれば、本発明は、ジエン系ゴムを含有するコム成分に添加することを特徴とする、式(1)で表されるヒドラジド化合物を含有してなる低ロス剤、耐摩耗特性付与剤、耐破壊特性付与剤又は恒粘度剤を包含する。
【0045】
また、本発明の添加剤は、前記式(I)で表される化合物中のAの有する極性基の少なくとも1つがヒドロキシル基又はアミノ基又はニトロ基であることが好ましい。より優れた低発熱性を実現できるためである。
さらに、本発明添加剤は、前記式(I)で表される化合物中のAが、フェニル基又はナフチル基であることが好ましい。より優れた低発熱性を実現でき、実用性の点でも優れるためである。
また、本発明の添加剤は、前記式(I)で表される化合物中のR1及びR2が、いずれも水素原子であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
さらに、本発明の添加剤は、前記式(I)で表される化合物の分子量が、250以下であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
さらにまた、本発明の添加剤は、前記式(I)で表される化合物の融点が、80℃以上、250℃未満であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
また、本発明の添加剤は、前記式(I)で表される化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.05~30質量部であることが好ましい。より優れた低発熱性及び耐摩耗性を実現できるためである。
【0046】
本発明の添加剤をゴム成分に添加する際には、シリカ、カーボンブラック等の充填材に加え、例えば、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等のゴム工業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0047】
なお、本発明の添加剤のその他の事項については、上述の本発明のゴム組成物中で説明した内容と同様である。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
(化合物a~k)
実施例に用いられる化合物a~kについて、化学式を以下に示す。
なお、化合物a~kの種類、融点、1H-NMR測定(条件:300MHz、DMSO-d6、δppm)の結果についても以下に示す。
【0050】
・化合物a:2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,6-ジヒドロキシ安息香酸メチル5.29g、100%ヒドラジン一水和物3.30gを1-ブタノール32mLに添加し、117℃で15時間攪拌した。反応液を冷却後、析出している固体を濾別し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド2.85g(収率54%)を得た。
(融点:198℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):6.3(d,2H),7.1(t,1H),NH(3H)及びOH(2H)は不検出)
・化合物b:2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,3-ジヒドロキシ安息香酸メチル2.75g、100%ヒドラジン一水和物7.00gを水1.5mLに添加し、100℃で3時間攪拌した。反応液を濃縮後、析出している固体にイソプロピルアルコールを加えて濾別し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,3-ジヒドロキシベンゾヒドラジド2.00g(収率73%)を得た。
(融点:223℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):4.7(br-s,2H),6.7(m,1H), 6.9(m,1H),7.2(m,1H),10.1(br-s,1H),OH(2H)は不検出)
・化合物c:2,4-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル5.50g、100%ヒドラジン一水和物13.4gを水3mLに添加し、100℃で3時間攪拌した。反応液を濃縮後、析出している固体にイソプロピルアルコールを加えて濾別し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,4-ジヒドロキシベンゾヒドラジド4.82g(収率88%)を得た。
(融点:237℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):
6.2(m,2H),7.6(m,1H),NH(3H)及びOH(2H)は不検出)
・化合物d:2,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド
2,5-ジヒドロキシ安息香酸メチル5.39g、100%ヒドラジン一水和物3.29gを1-ブタノール32mLに添加し、117℃で15時間攪拌した。反応液を冷却後、析出している固体を濾別し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体2,5-ジヒドロキシベンゾヒドラジド4.26g(収率79%)を得た。
(融点:210℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):4.6(br-s,2H),6.7(m,1H), 6.8(m,1H),7.2(m,1H),9.0(br-s,1H),9.9(br-s,1H),11.5(br-s,1H))
・化合物e:4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド
4-アミノ-2-ヒドロキシ安息香酸メチル12.0g、100%ヒドラジン一水和物30.3gを水6.6mLに添加し、100℃で2時間攪拌した。反応液を濃縮後、水を加え、析出した固体を濾別し、水で洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド8.68g(収率72%)を得た。
(融点:198℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):
4.4(br-s,2H),5.7(m,2H),6.0(m,2H), 7.4(m,1H),9.5(m,1H),12.7(br-s,1H))
・化合物f:3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド
3,5-ジヒドロキシナフトエ酸43.0g、濃硫酸42.0mLをメタノール860mLに添加し、65℃で44時間攪拌した。反応液を冷却後、水を加え、析出した固体を濾別し、水で洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸メチル44.7g(収率97%)を得た。
上記の方法で得た3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸メチル8.39g、100%ヒドラジン一水和物5.29gをブタノール40.0mLに添加し、65℃で2時間攪拌した。反応液を濃縮し、析出した固体をイソプロピルアルコールに懸濁した。析出した固体を濾別し、イソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド5.01g(収率60%)を得た。
(融点:219℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):
6.8(m,1H),7.1(m,1H),7.3(m,1H), 7.4(s,1H),8.3(s,1H),10.3(br-s,2H),NH(3H)不検出)
・化合物g:4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド
3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸50.0gをクロロホルム270mLに加え、氷冷後、60%硝酸24.3mLを滴下した。35分間攪拌した後、析出した固体を濾別し、水、クロロホルムで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、橙色固体3-ヒドロキシ-4-ニトロ-2-ナフトエ酸47.7g(収率77%)を得た。
上記の方法で得た3-ヒドロキシ-4-ニトロ-2-ナフトエ酸12.5g、濃硫酸1mLをブタノール200mLに添加し、117℃で48時間攪拌した。反応液を濃縮後、析出している固体を濾別し、ブタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、黄色固体3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボン酸ブチル7.52g(収率48%)を得た。
上記の方法で得た3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボン酸ブチル28.7g、パラジウムカーボン2.90gをメタノール494mLに添加し、水素で置換して室温で8時間攪拌した。反応液を濃縮後、得られた固体にヒドラジン一水和物17.7g、ブタノール330mLを加え、75℃で13時間攪拌した。反応液を冷却後、析出している固体を濾別し、ブタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、淡黄色固体4-アミノ-3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド21.1g(収率98%)を得た。
(融点:181℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):
4.7(br-s,2H),7.3(m,1H), 7,4(m,1H),7.6(m,1H),7.7(s,1H),8.0(m,1H),10.4(br-s,1H),NH(3H)不検出)
・化合物h:3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボヒドラジド
3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸50.0gをクロロホルム270mLに加え、氷冷後、60%硝酸24.3mLを滴下した。35分間攪拌した後、固体を濾別し、水、クロロホルムで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、橙色固体3-ヒドロキシ-4-ニトロ-2-ナフトエ酸47.7g(収率77%)を得た。
上記の方法で得た3-ヒドロキシ-4-ニトロ-2-ナフトエ酸12.5g、濃硫酸1mLをブタノール200mLに添加し、117℃で48時間攪拌した。反応液を濃縮後、析出した固体を濾別し、ブタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、黄色固体3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボン酸ブチル7.52g(収率48%)を得た。
上記の方法で得た3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボン酸ブチル17.1gをメタノール175mLに溶解し、100%ヒドラジン一水和物6.28gを添加し、65℃で16時間攪拌した。反応液を冷却後、析出した固体を濾別し、メタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、橙色固体3-ヒドロキシ-4-ニトロナフタレン-2-カルボヒドラジド14.6g(収率100%)を得た。
(融点:185℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):
7.1(m,1H), 7.4(m,2H),7.8(m,1H),8.4(m,1H),NH(3H),OH(1H)不検出)
・化合物i:1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド
マロン酸ジエチル5.00gのアセトニトリル50mL溶液に塩化マグネシウム2.97gを加え、氷冷した。次に、トリエチルアミン6.30gを滴下して30分間攪拌した後、フェニル酢酸クロリド4.82gを滴下し、室温に戻し、4.5時間攪拌した。再び反応液を氷冷し、2N塩酸200mLを加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮後、減圧乾燥した。得られた淡黄色油状物残渣を氷冷し、濃硫酸15mLを滴下し、室温に戻して17時間攪拌した。反応液を氷冷し、氷水35mLをゆっくり加え、析出した固体を濾別し、水洗した。得られた固体を減圧乾燥し、黄色固体1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸エチル6.09g(収率84%)を得た。
上記の方法で得た1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸エチル800mgのメタノール3mL溶液に室温で100%ヒドラジン一水和物0.21gを加え、2.5時間加熱還流し、室温に戻して12時間攪拌した。析出した固体を濾別し、得られた固体をメタノールで洗浄し、減圧乾燥して黄土色固体1,3-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド540mg(収率72%)を得た。
(融点:205℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):
6.6(s,1H), 7.2(m,1H),7.4(m,1H),7.5(d,1H),8.0(d,1H),NH(3H),OH(2H)不検出)
・化合物j:2,4,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド
2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸1水和物10.0gのアセトン100mL溶液に、室温で炭酸ナトリウム2.96gを加えて10分間攪拌し、ジメチル硫酸7.04gを加えて50℃に昇温し、5時間攪拌した。反応液を濃縮し、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。更に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮後、析出した固体を酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒に懸濁して濾別し、減圧乾燥してピンク色固体2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸メチル6.03g(収率62%)を得た。
上記の方法で得た2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸メチル2.40gをメタノール10mLに懸濁させ、室温で100%ヒドラジン一水和物0.98gを加え、1.5時間加熱還流し、室温に戻して12時間攪拌した。析出した固体を濾別し、得られた固体をメタノールで洗浄し、減圧乾燥してベージュ色固体2,4,6-トリヒドロキシベンゾヒドラジド960mg(収率40%)を得た。
(融点:207℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):
4.3(br-s,2H),5.8(s,2H),7.2(s,1H),9.3(br-s,1H),12.3(br-s,2H))
・化合物k:2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾヒドラジド
2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸5.00gのアセトン50mL溶液に、室温で炭酸ナトリウム1.66gを加えて10分間攪拌し、ジメチル硫酸3.94gを加えて50℃に昇温し、5時間攪拌した。反応液を濃縮し、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。更に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮後、析出した固体を冷ヘキサンに懸濁して濾別し、減圧乾燥して白色固体2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸メチル4.94g(収率91%)を得た。
上記の方法で得た2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸メチル4.50gをメタノール12mLに懸濁させ、室温で100%ヒドラジン一水和物1.85gを加え、12時間加熱還流した。室温に戻し、析出した固体を濾別し、得られた固体をメタノールで洗浄し、減圧乾燥してピンク色固体2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾヒドラジド3.09g(収率69%)を得た。
(融点:180℃、
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6,δppm):
2.14(s,3H),5.1(br-s,2H),6.1(s,2H),9.9(br-s,1H),12.5(br-s,2H))
【0051】
<実施例1-1~1-11、比較例1-1~1-2、実施例2-1~2-11、比較例2-1~2-2>
次に、プラストミルで混練して表1及び2に示す配合処方のゴム組成物を調製した。
調製した各ゴム組成物のサンプルに対して、下記の方法で、低発熱性及び耐摩耗性について、評価を行った。評価結果を表1及び2に示す。
【0052】
(1)tanδ(低発熱性)
各サンプルのゴム組成物を、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに対し、粘弾性測定装置[レオメトリックス社製]を用い、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzで損失正接(tanδ)を測定した。
なお、tanδは、比較例1-1及び比較例2-1の値を100としたときの指数で示し、小さい程、低発熱性に優れることを示す。
【0053】
(2)摩耗試験(耐摩耗性)
調製した各加硫ゴムから円板状(直径16.2mm×厚さ6mm)に切り抜いた試験片を用い、JIS-K6264-2:2005に準じて、DIN摩耗試験を行い、室温でDIN摩耗試験を行った際の摩耗量(mm3)を測定した。
なお、各サンプルにおいて測定した摩耗量については、比較例1-1及び比較例2-1の摩耗量の逆数を100とした場合の、各サンプルの摩耗量の逆数を指数として表示している。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0054】
【0055】
*1:RSS#1
*2:旭カーボン(株)製「♯80」
*3:3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、東京化成工業(株)製
*4:イソフタル酸ジヒドラジド、東京化成工業(株)製
*5:三共油化工業株式会社製「A/O MIX」
*6:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック6C」
*7:2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業(株)製「ノクラック224」
*8:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業(株)製「サンセラーCM」
*9:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
*10:Evonic Industries製「Si75」
【0056】
表1の結果から、各実施例のゴム組成物は、いずれも、良好な低発熱性及び耐摩耗性を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、低発熱性及び耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低発熱性及び耐摩耗性に優れたタイヤを提供することができる。さらに、本発明によれば、ゴム組成物中に配合されることで優れた低発熱性及び耐摩耗性を発現させることが可能な添加剤及び新規なヒドラジド化合物を提供することができる。