(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】フォーマの中間接続体、超電導ケーブル線路およびフォーマの中間接続方法
(51)【国際特許分類】
H02G 15/34 20060101AFI20220927BHJP
H01R 4/68 20060101ALI20220927BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220927BHJP
F16L 33/28 20060101ALI20220927BHJP
F16L 33/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H02G15/34
H01R4/68
H01B13/00 561Z
F16L33/28
F16L33/00 B
(21)【出願番号】P 2019002529
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 達尚
(72)【発明者】
【氏名】足立 和久
(72)【発明者】
【氏名】瀬間 信幸
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-280964(JP,A)
【文献】登録実用新案第3039773(JP,U)
【文献】特開2008-64303(JP,A)
【文献】特開平9-296891(JP,A)
【文献】特開2018-185946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/34
H01R 4/68
H01B 13/00
F16L 33/28
F16L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のコルゲート管を接続するためのフォーマの中間接続体であって、
前記コルゲート管の端部同士を外部から被覆する金属製のスリーブと、
前記コルゲート管の端部の内部に嵌合する金属製の固定具とを備え、
前記スリーブのビッカース硬度が前記固定具のビッカース硬度より小さいことを特徴とするフォーマの中間接続体。
【請求項2】
請求項1に記載のフォーマの中間接続体において、
前記スリーブが非磁性の金属から構成され、
前記固定具も非磁性の金属から構成されていることを特徴とするフォーマの中間接続体。
【請求項3】
複数本のコルゲート管と、
請求項1または2に記載のフォーマの中間接続体と、
前記複数本のコルゲート管の外周に巻回された超電導線材と、
を備えることを特徴とする超電導ケーブル線路。
【請求項4】
複数本のコルゲート管を接続するためのフォーマの中間接続方法であって、
金属製の固定具を前記コルゲート管の端部の内部に嵌合する工程と、
前記コルゲート管の端部を、前記固定具を嵌合した状態で、前記固定具よりビッカース硬度が小さい金属製のスリーブに挿通し、前記スリーブを外部から押圧する工程と、
を備えることを特徴とするフォーマの中間接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーマの中間接続体、超電導ケーブル線路およびフォーマの中間接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルでは、テープ状の超電導線材と絶縁紙とをフォーマ(心材)の外周に巻回し、冷媒をフォーマの内部で流通させ当該超電導線材を極低温に冷却し、大電流を低損失で送電可能としており、当該フォーマには金属製のコルゲート管が使用される。
【0003】
超電導ケーブルの敷設距離が長い場合、複数本(基本的には2本)の超電導ケーブルを接続することが想定される。かかる場合、まず、フォーマとしてのコルゲート管同士を接続する必要があり、その後に超電導線材などを接続するようになっている。
コルゲート管はいわゆる波付け管であって一定の溝が長手方向にらせん状に形成されており、製造上、コルゲート管同士の開口端部の形状は同一に形成されてないことが多い。このため、コルゲート管同士を接合しようとする場合、互いの開口端部を突き合わせると、断面形状が同一にならず、コルゲート管同士を直接接続することが困難である。
【0004】
コルゲート管同士の接続にはいくつかの手法が考えられるが以下の問題点がある。
(1)コルゲート管の端部を単に溶接で接続する場合;
溶接部位が非常に高温になるため、熱の影響が超電導線材におよび、超電導特性が劣化する可能性がある。熱の影響を小さくするため、コルゲート管上の超電導線材および絶縁紙を、コルゲート管の接続部分から軸方向に遠ざけると(剥ぎ取ると)、フォーマの露出部分の余長が必要となり接続に手間がかかる。
(2)コルゲート管の端部にリングを溶接する場合;
コルゲート管の端部をツバ出ししてフランジ部を設け、当該フランジ部にリングを溶接することが想定される。この場合、リングの外径が大きくなるし、溶接されたリングのゆがみや溶接材の盛りにより、接続部分に凹凸が生じる可能性がある。
【0005】
併せてコルゲート管同士の接続は、超電導ケーブルを敷設する現場でおこなうため、大掛かりな装置での加工を行うことは困難と考えられる。
【0006】
特許文献1には、「継手」を使用したコルゲート管の接続構造が開示されている。
かかる技術では、コルゲート管C,Cの端部に継手1,1を固着し、継手1,1のフランジ部3,3を対峙させ、クランプ4,4を周設させ、クランプ4,4を回動させ、孔H,H,…を連通させ、孔H,H同士にボルトBを挿通し、ナットNを係合させている(段落0012-0014、
図1)。
【0007】
特許文献2には、超電導ケーブルの接続装置が開示されている。
かかる技術では、超電導ケーブルの端部に金属スリーブ5,5’を固定し、金属スリーブ5,5’を金属導電性管6に収納し、金属導電性管6を金属スリーブ5,5’に固定ネジで接続している(段落0034-0035、
図3-
図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実用新案登録第2586114号公報
【文献】特許第5465895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術では、問題点(1)(2)を解決することはできないし、特に問題点(2)と同様の課題を有する。
特許文献2の技術は、コルゲート管(フォーマ)の接続というよりも超電導層2,3の接続に関する技術であり、コルゲート管の外側に金属スリーブ5,5’および金属導電性管6という2種の円筒状部材を必要とするためそのぶん大径化する。かかる技術では、結局のところ、絶縁材料のカバー7で絶縁した場合、中間接続部に凹凸が形成され(段落0036および
図5)、問題点(2)と同様の課題が残る。
【0010】
したがって本発明の主な目的は、超電導特性を劣化させることなくフォーマとしてのコルゲート管を容易に接続することができ、接続部分の凹凸形成も抑制しうるフォーマの中間接続体および中間接続方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
複数本のコルゲート管を接続するためのフォーマの中間接続体であって、
前記コルゲート管の端部同士を外部から被覆する金属製のスリーブと、
前記コルゲート管の端部の内部に嵌合する金属製の固定具とを備え、
前記スリーブのビッカース硬度が前記固定具のビッカース硬度より小さいことを特徴とするフォーマの中間接続体が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、
複数本のコルゲート管を接続するためのフォーマの中間接続方法であって、
金属製の固定具を前記コルゲート管の端部の内部に嵌合する工程と、
前記コルゲート管の端部を、前記固定具を嵌合した状態で、前記固定具よりビッカース硬度が小さい金属製のスリーブに挿通し、前記スリーブを外部から押圧する工程と、
を備えることを特徴とするフォーマの中間接続方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スリーブと固定具とを単に使用するだけでコルゲート管同士を接続しうるため、溶接加工を必要とせず、超電導特性を劣化させることもないし、コルゲート管を容易に接続することもできる。併せて、スリーブのビッカース硬度が固定具のそれより小さいため、コルゲート管の端部を、固定具を嵌合した状態で、スリーブに挿通し、スリーブを外部から押圧すると、当該スリーブが変形しながらコルゲート管の端部に密着し、接続部分の凹凸形成も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】フォーマの中間接続体の概略構成を示す図である。
【
図3】フォーマの中間接続方法を経時的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
<超電導ケーブルおよびフォーマの中間接続体>
図1は超電導ケーブル10の概略構成を示す図である。
図1に示すとおり、超電導ケーブル10はフォーマとしてのコルゲート管20、3相交流送電可能な超電導導体層30、32、34、絶縁体層40、42、44、接地層50、断熱内管60、断熱外管62および防食層70を備えており、フォーマと同軸に超電導導体層30、32、34が形成された、いわゆる三相同軸超電導ケーブルである。
【0017】
コルゲート管20はステンレス鋼(SUS:Steel Use Stainless)から構成されている。
コルゲート管20の内部には液体窒素等が流通され、コルゲート管20は超電導導体層30、32、34を内側から冷却する冷媒管として機能するようになっている。
【0018】
コルゲート管20の外周には、超電導導体層30、32、34(U相、V相、W相)と絶縁体層40、42、44とが交互に積層され配置されている。
超電導導体層30、32、34はそれぞれ複数の超電導線材が螺旋状に巻回され筒状に形成されている。
絶縁体層40、42、44は超電導導体層30、32、34の絶縁を確保するために設けられている。絶縁体層40、42、44は、カーボン紙などの半導体紙やクラフト紙などの絶縁紙が層状に巻回され筒状に形成されている。
ここではコルゲート管20、超電導導体層30、32、34および絶縁層40、42、44で「ケーブルコア」が形成されている。
【0019】
接地層50は金属製テープが絶縁体層44に巻回され筒状に形成されている。
接地層50は接地されケーブルコアの外表面を接地電位に保持するようになっている。
断熱内管60および断熱外管62は2重管構造を構成している。
断熱内管60にはケーブルコアが収容され、運転時に冷媒が充填され、ケーブルコアの超電導導体層30、32、34が超電導状態に維持されるようになっている。
断熱内管60と断熱外管62との内部空間は断熱のため真空状態に保持され、断熱内管60の内部や断熱外管62の外部から断熱内管60の内部への熱の侵入を防止するようになっている。
【0020】
防食層70は、断熱外管62の腐食を防止するものである。
防食層70は所望の耐電圧特性を有するものであって常温環境で利用される。
防食層70は、常電導ケーブルで実績がある電気絶縁強度に優れる材料、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリ塩ビニル(PVC)などで構成されている。
【0021】
図2はフォーマの中間接続体80の概略構成を示す図である。
フォーマの接続に際しては、
図2に示すとおり、2本のコルゲート管20の端部同士が突き合わされた状態で中間接続体80により接続されている。
中間接続体80は金属製のスリーブ82と金属製の固定具84とから構成されている。
スリーブ82はコルゲート管20の端部同士を外部から被覆している。
固定具84は嵌合部86と非嵌合部88とで構成されている。嵌合部86はコルゲート管20の内部形状に対応しうる波付け状を呈しており、コルゲート管20の端部の内部に嵌合している。非嵌合部88は平坦部90と隔壁92(微小なフランジ)とから構成され、嵌合部86と隔壁92との間が凹状を呈している。
【0022】
スリーブ82と固定具84とでは、スリーブ82のビッカース硬度が固定具84のビッカース硬度より小さくなっている。スリーブ82および固定具84はどちらも非磁性の金属から構成され、具体的にスリーブ82は銅、アルミニウムなどから構成され、固定具84はステンレス鋼(SUS:Steel Use Stainless)、ニッケル合金、チタン合金などから構成される。ここではスリーブ82は銅から構成され、固定具84はステンレス鋼から構成されている。かかるスリーブ82と固定具84との材質の組み合わせは一例であって、他の金属の組み合わせが採用されてもよい。
固定具84とコルゲート管20とでは、固定具84のビッカース硬度がコルゲート管20のビッカース硬度と同じかそれより大きくなっており、ここでは両部材がステンレス鋼から構成されている。固定具84は好ましくはビッカース硬度がコルゲート管20より大きいのがよい。かかる固定具84とコルゲート管20との材質の組み合わせも一例であって、他の金属の組み合わせが採用されてもよい。
【0023】
なお、中間接続体80上では超電導線材が正確に巻回され、超電導導体層30、32、34の接続が確実に好適に行われる。「超電導ケーブル線路」とはかかる状態のものを意味し、少なくともコルゲート管20、中間接続体80および超電導導体層30、32、34を有し、超電導導体層30、32、34同士が中間接続体80を跨いで接続され、中間接続体80を介して電流が流れる状態のものを意味している。
【0024】
<フォーマの中間接続方法>
図3はフォーマの中間接続方法を経時的に示す概略図である。
図3Aに示すとおり、固定具84の嵌合部86をコルゲート管20の端部の内部に嵌合させる。その後、コルゲート管20の端部を、固定具84を嵌合した状態で、スリーブ82に挿通する。
その後、
図3Bに示すとおり、ダイスを介して圧縮機でスリーブ82を外部から押圧する。
【0025】
その結果、スリーブ82のビッカース硬度が固定具84のビッカース硬度より小さいため、
図3Cに示すとおり、スリーブ82が変形しながらコルゲート管20に密着し、コルゲート管20の端部同士が固定され接続される。同時に、スリーブ82の一部が固定具84の非嵌合部88に流動するように充填され、スリーブ82自体が全体として薄くなる。
かかる場合、固定具84のビッカース硬度はスリーブ82のビッカース硬度より大きいため、固定具84はスリーブ82の押圧を受けても変形することはなく、コルゲート管20の形状を維持したままこれを支持しうる。もちろん、固定具84はビッカース硬度がコルゲート管20と同じかそれ以上であるため、コルゲート管20自体が変形することもない。
【0026】
<まとめ>
以上の本実施形態によれば、スリーブ82のビッカース硬度が固定具84のビッカース硬度より小さいため、コルゲート管20の端部を、固定具84を嵌合した状態で、スリーブ82に挿通し、スリーブ82を外部から押圧した場合、スリーブ82が変形しながらコルゲート管20の端部に密着し、コルゲート管20の端部同士が固定され接続される。かかる場合、単にスリーブ82と固定具84とを使用しコルゲート管20の端部同士を接続しうるため、溶接加工を必要とせず、超電導特性を劣化させることもないし、コルゲート管20を容易に接続することもでき、接続部分の凹凸形成も抑制することができる。同時に、スリーブ82の一部が固定具84の非嵌合部88に流動するように充填され、スリーブ82自体が全体として薄くなるため、接続部分の凹凸形成を確実に抑制することができる。
【0027】
なお、3本以上のコルゲート管20の端部同士を接続する際も、当該端部同士を1か所に集中的に配置し、中間接続体80を適用し接続してもよい。かかる場合、各端部に対し固定具84をそれぞれ嵌合しこれを1つのスリーブ(放射状に分岐したスリーブ82)に挿通し、そのスリーブを外部から押圧すればよい。
【0028】
以上の説明は本発明の好適な実施形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記ケーブルの構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0029】
10 超電導ケーブル
20 コルゲート管(フォーマ)
30、32、34 超電導導体層
40、42、44 絶縁体層
50 接地層
60 断熱内管
62 断熱外管
70 防食層
80 中間接続体
82 スリーブ
84 固定具
86 嵌合部
88 非嵌合部
90 平坦部
92 隔壁