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特許7146653鉄道車両における列車制御システム及び地震検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】鉄道車両における列車制御システム及び地震検知システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20220927BHJP
   B61L 25/04 20060101ALI20220927BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20220927BHJP
   B61C 17/12 20060101ALI20220927BHJP
   B61G 7/14 20060101ALI20220927BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20220927BHJP
   G01H 1/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B61L25/04
B61L23/00 Z
B61C17/12 Z
B61G7/14 C
G01V1/00 D
G01H1/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019003518
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020114105
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐多 光世
(72)【発明者】
【氏名】江田 隆則
(72)【発明者】
【氏名】菅原 誠
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-006807(JP,A)
【文献】特開平07-084061(JP,A)
【文献】特開2017-044506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B61L 25/04
B61L 23/00
B61C 17/12
B61G 7/14
G01V 1/00
G01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1、第2鉄道車両にそれぞれ搭載され、第1、第2鉄道車両の揺れを検知したとき、第1、第2鉄道車両の第1、第2加速度を検出する第1、第2加速度検出装置と、
前記第1、第2加速度検出装置にて検出された第1、第2加速度を受け、車上設備の機器を制御する車上制御装置を備え、
前記車上制御装置は、
前記第1、第2加速度の第1、第2加速度情報に基づき、前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による揺れであるか否かを判定する機能と、
前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による揺れであるか否かを判定する機能により、前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による揺れであると判定したとき、前記車上設備の機器を制御する機器制御機能を有する列車制御システムにおいて、
前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による揺れであるか否かを判定する機能は、
前記第1、第2加速度検出装置にて検出した第1、第2加速度を受信する機能、
前記第1、第2加速度の進行方向以外の方向の大きさが予め設定された加速度閾値を検出したか否かを判定する機能、
前記第1加速度の検出時刻と前記第2加速度の検出時刻の差が閾値時間内か否かを判定する機能を有し、
前記第1、第2加速度の進行方向以外の方向の大きさが予め設定された加速度閾値以上を検出し、かつ、前記第1加速度の検出時刻と前記第2加速度の検出時刻の差が閾値時間以下の場合、前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による搖動であると判定する機能を含む
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載された列車制御システムにおいて、
前記加速度閾値は、
車両、路線、運転パターン、走行位置を考慮して決定し、
前記閾値時間は、
Tc=Lc/VcとTe=Lc/(Ve-Vc)の間に設定する
但し、
Tc:特定の時点での第1鉄道車両/第1加速度検出装置が搖動する時間と、前記第2鉄道車両/前記第2加速度検出装置が搖動する時間の差
Te:地震時における特定の時点での第1鉄道車両/第1加速度検出装置が搖動する時間と、第2鉄道車両/第2加速度検出装置が搖動する時間の差
Lc:前記第1加速度検出装置と前記第2加速度検出装置間の距離
Vc:前記第1、第2鉄道車両の速度
Ve:地震波の速度
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載された列車制御システムにおいて、
前記車上制御装置は、さらに、
前記第1加速度検出装置にて検出された前記加速度閾値以上の加速度の大きさと前記第2加速度検出装置にて検出された前記加速度閾値以上の加速度の大きさの差が予め設定された振幅閾値以下である場合、前記第1、第2加速度が地震による搖動であると判断する機能を含む
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載された列車制御システムにおいて、
前記加速度閾値は、複数の加速度閾値からなる
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項5】
少なくとも第1、第2鉄道車両の第1、第2加速度を検出する第1、第2加速度検出装置にて検出された第1、第2加速度を受け、前記第1又は第2鉄道車両に搭載される地震検出システムであって、
前記第1、第2加速度の第1、第2加速度情報に基づき、前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による揺れであるか否かを判定する機能を有する地震検出装置を備えた地震検出システムにおいて、
前記地震検出装置は、
前記第1、第2加速度検出装置にて検出した第1、第2加速度を受信する機能、
前記第1、第2加速度の進行方向以外の方向の大きさが予め設定された加速度閾値を検出したか否かを判定する機能、
前記第1加速度の検出時刻と前記第2加速度の検出時刻の差が閾値時間内か否かを判定する機能を有し、
前記第1、第2加速度の進行方向以外の方向の大きさが予め設定された加速度閾値以上を検出し、かつ、前記第1加速度の検出時刻と前記第2加速度の検出時刻の差が閾値時間以下の場合、前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による搖動であると判定する機能を含む
ことを特徴とする地震検出システム。
【請求項6】
請求項5に記載された地震検出システムにおいて、
前記加速度閾値は、
車両、路線、運転パターン、走行位置を考慮して決定し、
前記閾値時間は、
Tc=Lc/VcとTe=Lc/(Ve-Vc)の間に設定する
但し、
Tc:特定の時点での第1鉄道車両/第1加速度検出装置が搖動する時間と、第2鉄道車両/第2加速度検出装置が搖動する時間の差
Te:地震時における特定の時点での第1鉄道車両/第1加速度検出装置が搖動する時間と、第2鉄道車両/第2加速度検出装置が搖動する時間の差
Lc:前記第1、第2加速度検出装置間の距離
Vc:前記第1、第2鉄道車両の速度
Ve:地震波の速度
ことを特徴とする地震検出システム。
【請求項7】
請求項5に記載された地震検出システムにおいて、
前記地震検出装置は、さらに、
前記第1加速度検出装置にて検出された前記加速度閾値以上の加速度の大きさと前記第2加速度検出装置にて検出された前記加速度閾値以上の加速度の大きさの差が予め設定された振幅閾値以下である場合、前記第1、第2加速度が地震による搖動であると判断する機能を含む
ことを特徴とする地震検出システム。
【請求項8】
請求項5~7の何れか1項に記載された地震検出システムにおいて、
前記加速度閾値は、複数の加速度閾値からなる
ことを特徴とする地震検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、鉄道車両における地震検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本国では地震が多く、地震に対応する手段として地震検知システムや早期防災システムが発展し、数多く提案されている。
例えば、地震が発生したときの早期対策を可能とする早期防災システムとして、公益財団法人 鉄道総合技術研究所のホームページ/http://www.rtri,or,jp/rd/division/rd61/rd6110/rd61100101.htm1(非特許文献1)に記載された技術がある。この文献には、気象庁が配信する緊急地震速報を元に列車制御システムから複数の車両を連結した列車上に設置された車上制御装置に停止制御信号などを送信して、例えば、列車を緊急停止させ、走行中の列車が脱線するなどの事故を防止する早期防災システムに関する技術が開示されている。
【0003】
一方で、列車に発生した異常を検知する手段として加速度測定手段が注目されている。例えば、加速度をもとに列車に発生した異常を検知する方法として、特開2000-6807号公報(特許文献1)に記載された技術がある。この公報には、「直交する3軸の加速度を検出する加速度計が配置された鉄道車両に搭載される事故検知装置において、前記加速度計により検出される加速度を取得する加速度取得手段と、その加速度取得手段により取得された複数の加速度のうちの1の加速度が、所定の第1閾値以上になる時から前記第1閾値未満になる時までの時間を取得する第1時間取得手段と、その第1時間取得手段により取得された時間に基づく条件の成立により前記鉄道車両の事故の発生を検知する事故検知手段とを備えていることを特徴とする事故検知装置」との記載がある。つまり、複数の加速度信号を比較し、何れか一方の加速度が他方の加速度信号に対して所定値以上に大きな値となった場合、異常が発生したと判断し、車両を緊急停止する方法である。
【0004】
また、加速度を元に事故を検出する方法として、特開2015-169542号公報(特許文献2)に記載された技術がある。この公報には、「車両に配備されている複数の台車上にそれぞれ加速度検出手段を設け、これらの加速度検出手段が検出する加速度信号をそれぞれ比較し、いずれかの信号が他の加速度信号に対して所定値以上に大きな値となった場合に異常が発生したと判断する検知手段を備えた事を特徴とする鉄道車両」との記載がある。つまり、複数方向又は複数位置の振動加速度が所定の閾値を超えた場合、事故が発生したと判定する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-6807号公報
【文献】特開2015-169542号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】公益財団法人 鉄道総合技術研究所HP 「http://www.rtri.or.jp/rd/division/rd61/rd6110/rd61100101.html」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載したシステムによれば、地震発生を検知したとき、早期に列車を停止させることができる。しかし、非特許文献1のシステムでは鉄道車両とは別の場所に設置した地震計、つまり、気象庁側で地震を観測した地震情報をもとに列車を制御する方法であるため、例えば、直下型地震には対応できない。
また、特許文献1及び特許文献2では、列車の異常や事故が地震によるものであるか否かについては考慮されていない。そのため、鉄道車両の走行時の車軸・台車の異常を検知し、鉄道車両を減速または緊急停止させること、また、鉄道車両の走行時の車軸・台車の異常検知に留まる。
【0008】
換言すれば、特許文献1では、特定の台車に発生した異常については検知できるが、複数の加速度測定手段がほぼ同時に揺動する地震については検知することができない。
また、特許文献2では、列車の事故は検知できるが、事故が発生する前の地震の搖動は検知することができない。
【0009】
そこで、本発明は、鉄道車両の搖動が連結器で接続された別の鉄道車両に伝わらない列車の特性を活かして、鉄道車両などの搖動が地震、特に直下型地震による搖動であるか否かを検出でき、地震発生時にとるべき緊急処理を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、代表的な本願発明の列車制御システム、列車制御システムにおける地震検出装置及び地震検出方法の一つは、
少なくとも第1、第2鉄道車両にそれぞれ搭載された第1、第2複数の加速度検出装置と、
前記第1、第2加速度検出装置にて検出された第1、第2加速度情報を受ける車上制御装置を備え、
前記車上制御装置は、前記第1、第2加速度検出装置にて検出した第1、第2加速度情報に基づき、地震による搖動を検出する。
【0011】
例えば、少なくとも第1、第2車両(含車両本体又は台車)にそれぞれ搭載され、第1、第2鉄道車両の揺れを検知したとき、第1、第2車両の第1、第2加速度を検出する第1、第2加速度検出装置と、
前記第1、第2加速度検出装置にて検出された第1、第2加速度を受け、車上設備の機器を制御する車上制御装置を備え、
前記車上制御装置は、
前記第1、第2加速度の第1、第2加速度情報に基づき、前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による揺れであるか否かを判定する機能と、
前記第1、第2鉄道車両の揺れが地震による揺れであるか否かを判定する機能により、前記第1、第2車両の揺れが地震による揺れであると判定したとき、前記車上設備の機器を制御する機器制御機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鉄道車両において、直下型地震において遭遇した場合でも地震を検知することができ。この地震の検出により、地震に応じた対応処置、例えば、乗客、乗務員など対して適切な緊急対応を迅速に実現することが可能である。
上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の列車制御システムにおける鉄道車両と本願発明の地震検知装置及び車上制御装置(含地震検出装置)との配置関係を示す概略構成図。
図2】鉄道システムにおける加速度検出装置と車上制御装置の構成例を示すブロック図。
図3】本発明の加速度検出装置における加速度測定処理を示すフローチャート。
図4】本発明の車上制御装置処理を示すフローチャート。
図5】加速度における軸定義の一例を示す模式図。
図6】特急電車における加速度推移の一例を示す加速度グラフ。
図7】進行方向以外の加速度閾値と制御対象となる車内機器の作動関係との関係を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、鉄道車両に本発明の地震検知装置を適用した場合の実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例
【0015】
図1は、本発明の列車制御システムにおける鉄道車両1、2と本願発明の加速度検出装置4、5及び車上制御装置11(含地震検知装置)との配置関係を示す概略構成図である。
【0016】
加速度検出装置4、5は、連結器3により連結された複数の鉄道車両1、2にそれぞれ搭載され、所定の間隔(距離Lc)を置いて設置されている。加速度検出装置4、5の鉄道車両1、2への設置は、各車両本体又は各車両本体を載せた各台車であってもよい。
【0017】
また、加速度検出装置4、5は、鉄道車両1,2(又は加速度検出装置自身)の加速度を測定する機能と、測定した加速度、例えば、進行方向以外の加速度が所定の加速度閾値を超えたか否かを検出判定する機能と、鉄道車両1,2の加速度の発生時刻(計測時刻)、大きさ、方向などの加速度情報をメモリに記憶する機能と、加速情報度(加速度発生時刻、加速度大きさ、加速度方向)を有線または無線で車上制御装置11側の地震検出装置111に送信する機能を有する。
【0018】
車上制御装置11は、例えば、先頭の鉄道車両1に搭載され、鉄道車両1、2の搖動が地震によるものか否かを検出する地震検出機能を有する。
地震検出機能とは、例えば、複数の加速度装置から送信される複数の加速度の加速度情報を受信する機能、複数の加速度の加速度情報をもとに鉄道車両1、2の揺れが地震に基づくものであるか否かを検出判定する機能、地震に基づく鉄道車両1、2の揺れを検出したとき、当該揺れに応じて車上設備における各機器を制御する機能、また、検出した加速度に基づく地震情報を地上設備や記憶装置(DB)に出力する機能を含む。
そして、加速度検出装置4,5及び車上制御装置11は、鉄道車両1、2の搖動が地震によるものか否かを検出する地震検出システムを構成する。
【0019】
図2は、鉄道システムにおける加速度検出装置4,5と車上制御装置11の構成例を示すブロック図である。
【0020】
地震検出システムは、複数の鉄道車両1、2(以下、第1鉄道車両、第2鉄道車両と称する)に搭載された複数の加速度検出装置4、5(以下、第1、第2加速度検出装置と称する)、鉄道車両1に搭載された車上設備114の車上機器1141~1144や地上設備21の地上制御装置や近隣車両に搭載された他の車上制御装置31’などを制御する車上制御装置11を有する。
【0021】
第1、第2加速度検出装置4、5は、それぞれ第1、第2鉄道車両1、2の加速度を測定する加速度計41,51(以下、第1、第2加速度計と称する)、第1、第2加速度計41,51にて測定した加速度V4、V5(以下、第1、第2加速度と称する)の加速度情報V41,V51(以下、第1、第2加速度情報と称する)を記憶するメモリ42、52、それぞれの第1、第2加速度情報を車上制御装置11側に送信する通信部43、53を含む。
【0022】
第1、第2加速度情報は、それぞれ、第1、第2加速度を検出した加速度検出時刻、加速度の大きさを示す加速度大きさ、加速度の方向を示す加速度方向、加速度計の機器番号を示す加速度計番号を含む。
【0023】
すなわち第1、第2加速度検出装置4、5は、それぞれ、以下の機能を有する。
(1)線路6上を走行する第1、第2車両1、2の第1、第2加速度を測定し、第1、第2鉄道車両1、2の進行方向(線路方向/y軸方向)以外の方向、つまり、線路6に対して直角かつ左右方向(x軸方向)、上下方向(z軸方向)の加速度を検出する機能
進行方向(線路方向)以外の加速度を検出する機能は、車上制御装置11側にて行ってもよい。この場合は、第1、第2加速度検出装置4、5におけるこの機能を省略することができる。
(2)進行方向(線路方向)以外の第1、第2加速度V4,V5の加速度発生時刻(加速度情報)をメモリ42,52に記憶する機能
(3)進行方向(線路方向)以外の第1、第2加速度V4,V5の加速度大きさ(加速度情報)をメモリ42,52に記憶する機能
(4)進行方向(線路方向)以外の第1、第2加速度V4,V5の加速度方向(加速度情報)をメモリ42,52に記憶する機能
(5)進行方向(線路方向)以外の第1、第2加速度V4,V5の加速度計番号、加速度大きさ、加速度方向を含む第1、第2加速度V4,V5の加速度情報V41、V51を車上制御装置11側に送信する機能
【0024】
車上制御装置11は、地震検出装置111、車上設備114を有する。
【0025】
地震検出装置111は、通信装置1111、制御装置1112、記憶装置1113を含み、第1、第2加速度検出装置4,5から通信装置1111を介して受信した第1、第2加速度V4,V5の第1、第2加速度情報V41,V51を記憶装置113に記憶し、第1、第2加速度の第1、第2加速度情報をもとに地震検出を行い、検出した第1、第2鉄道車両1,2の揺れ、つまり、地震の大きさに応じて車上設備114の車上機器1141~1144の1つ以上を制御し、また、このときの加速度情報を地震情報として地上設備21側の地上制御装置や他の車上制御装置31’に対して通知する機能を有する。
【0026】
通信装置1111は、加速度検出装置4,5及び地上設備21側の地上制御装置や他の車上制御装置31’との間で加速度情報の送受や制御信号などの通信を行う装置である。
車上設備114は、車内報知器1141、乗務員報知器1142、制振器(ダンバー)1143、緊急停止器(ブレーキ)1144などである。
【0027】
制御装置1112は、例えば、CPUからなり、通信装置1111にて受信した第1、第2加速度V4,V5の第1、第2加速度情報V41,V51を入力し、第1、第2加速度情報V41,V51を記憶装置113(DB)に出力し、また、第1、第2加速度情報に基づく地震に関する地震情報を車上機器1141~1144(車内報知器、乗務員報知器、制振器、緊急停止機器/ブレーキなど)や通信装置1111を介して地上設備21の地上制御装置や近隣を走行する鉄道車両の車上制御装置などに出力する加速度情報入出力部11121、複数の加速度情報をもとに地震を検出する地震検出処理部11122、検出した鉄道車両1,2の揺れ(地震)に応じた機器制御を行う機器制御処理部11123を有する。
【0028】
地震検出処理部1112は、以下のような機能を有する。
(1)第1加速度検出装置4にて検出した第1加速度V4及び第2加速度検出装置5にて検出した第2加速度V5が、予め設定された所定の加速度閾値(Vo)を超えたか否かを判定する機能
(2)第1加速度検出装置4と第2加速度検出装置5間の距離(Lc:図1参照)を算出する機能
(3)第1加速度検出装置4と第2加速度検出装置5間の距離(Lc)に応じた閾値時間(To)を算出する機能
(4)加速度閾値(Vo)を超えた閾値以上の第1加速度V4及び第2加速度V5は、閾値時間(To)内に発生したか否かを判定する機能
(5)加速度閾値(Vo)を超えた閾値以上の第1加速度の大きさと第2加速度の大きさの差は、予め設定された振幅閾値(V1)内か否かを判定する機能
加速度閾値(Vo)の設定や閾値時間(To)などについては後述する。
【0029】
機器制御処理部11123は、第1、第2車両1,2や第1、第2加速度検出装置4,5の揺れが地震によるものである場合、第1、第2加速度V4,V5の第1、第2加速度情報V41,V51を受けて、地震に応じた処理、つまり、第1、第2加速度の発生時刻(加速度測定時刻)、大きさなどに応じて車上設備114における各車上機器1141~1144や地上設備21の地上制御装置などを制御する機能を有する。
【0030】
図3は、第1加速度検出装置4と第2加速度検出装置5における加速度測定処理を示すフローチャートである。
【0031】
図3のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。本例では、第1、第2加速度計41,51にて測定した進行方向以外の加速度が所定の加速度閾値(Vo)を超えたか否かを含めたステップを含むものとする。
【0032】
ステップS01:
加速度測定処理を開始すると、第1、第2加速度検出装置4、5は、第1、第2加速度計41、51にて測定した進行方向以外の第1、第2加速度V4,V5が予め設定された加速度閾値(Vo)を超えた否かを判定する。このステップは、車上制御装置11側にて実行するものであれば、省略することができる。
判定結果、進行方向以外の第1、第2加速度が予め設定された加速度閾値(Vo)を超えていない場合(No)は、ステップS01を繰り返し、加速度閾値(Vo)を超えた場合(Yes)は、次のステップS02~ステップS05を実行する。
【0033】
ステップS02:
第1、第2加速度検出装置4、5は、第1、第2加速度V4,V5の発生時刻(加速度発生時刻)をメモリ42、52に記憶する。
【0034】
ステップS03:
次に、第1、第2加速度検出装置4、5は、第1、第2加速度V4,V5の大きさ(加速度大きさ)をメモリ42、52に記憶する。
【0035】
ステップS04:
加速度検出装置4、5は、加速度V4,V5の方向(加速度方向)をメモリ42,52に記憶する。
【0036】
ステップS05:
第1、第2加速度検出装置4、5は、第1、第2加速度検出装置4、5を識別する加速度測定機器番号、加速度発生時刻、加速度大きさ、加速度方向を含む加速度情報を、通信部43、53を介して地震検出装置111側に送信する。
以上のステップをもって加速度計測処理を終了する。
【0037】
図4は、制御装置1112(CPU)の処理を示すフローチャートである。
図4のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。本例では、第1、第2加速度計41,51にて測定した進行方向以外の第1、第2加速度が所定の加速度閾値(Vo)を超えたか否かを含めたステップを含むものとする。
【0038】
ステップS11:
制御装置1112は、地震検出処理を開始すると、地震検出処理部11122にて、第1、第2加速度検出装置4、5の加速度が所定の閾値以上の加速度を検出したか否か、例えば、進行方向以外(x軸、z軸方向)の加速度であって加速度閾値(Vo)以上の第1、第2加速度を検出したか否かを判定する。この判定は、第1、第2加速度検出装置4、5にて実施されている場合は、省略することができる。
ステップS11による判定結果、加速度閾値(Vo)以上の加速度V4,V5を検出していない場合(No)は、ステップS11を繰り替えし、加速度閾値(Vo)以上の第1、第2加速度V4,V5を検出した場合(Yes)は、ステップS12に進む。
【0039】
ステップS12:
制御装置1112は、地震検出処理部11122にて第1加速度検出装置4と第2加速度検出装置5間の距離(L)を算出する。この距離は、予め地震検出装置111側の記憶装置1113にテーブルとして保持していれば、このテーブルに記憶された距離を用いればよく、改めて算出する必要はない。但し、第1、第2鉄道車両1、2同士の併結などで第1、第2加速度検出装置4、5間の距離(L)が変化する場合には算出してもよい。
【0040】
ステップS13:
次いで、制御装置1112は、地震検出処理部11122にて第1、第2加速度検出装置4、5間の距離(L)に応じた閾値時間(To)を算出する。
【0041】
ステップS14:
次に、制御装置1112は、地震検出処理部11122にて加速度閾値(Vo)以上の加速度V4,V5が閾値時間Tc内に発生したか否かを判定する。
この判定結果、加速度閾値(Vo)以上の第1、第2加速度V4,V5が閾値時間(To)内に発生していない場合(No)は、ステップS11に戻り、閾値時間(To)内に発生している場合(Yes)は、ステップS15に進む。
【0042】
ステップS15:
制御装置1112は、地震検出処理部11122にて加速度閾値(Vo)以上の第1、第2加速度V4,V5の大きさの差、つまり、第1加速度検出装置4による加速度の大きさと第2加速度検出装置5による加速度の大きさの差が振幅閾値(To)内か否かを判定する。
この判定の結果、加速度の大きさの差が振幅閾値(To)内でない場合(No)は、ステップS11に戻り、振幅閾値(To)内である場合(Yes)は、ステップS17に進む。
【0043】
ステップS17:
上述したステップS11~ステップS15にて第1、第2鉄道車両1、2や第1、第2加速度検出装置4,5の揺れが、地震による搖動であると判定したとき、制御装置1112は、地震検出処理部11122にて地震に応じた処理を実行する。
【0044】
地震に応じた処理とは、上述したとおり、車上設備114における車内報知器1141による乗客への地震発生報知処理、乗務員報知器1142による乗務員へ地震発生報知処理、制振器1143や緊急停止器1144による脱線防止や衝撃吸収処理であり、また、通信装置1111における車外通信部による地上設備21及び近隣列車31への地震発生報知処理である。
【0045】
なお、本実施例では、加速度閾値(Vo)を一つに設定しているが、複数の加速度閾値(Vo)を設定し、きめ細かな制御を可能としてもよい。
また、進行方向(y軸方向)を含む加速度を検出し、加速度閾値以上の第1加速度の方向と第2加速度の方向の差が所定の閾値内であるか否かを判定するステップを施してもよい。
【0046】
加速度検出の時間差について図1を参照して以下に記述する。
まず、第1加速度検出装置4と、第2加速度検出装置5による加速度検出の時間差について説明する。
【0047】
第1、第2鉄道車両1,2は、線路の継ぎ目やカーブ、段差など特定の地点で決まった揺動をすることがある。例えば、図1において、第1、第2車両の速度をVcとし、加速度検出装置4と加速度検出装置5間の距離をLcとすると、特定の地点で第1、第2のそれぞれ、つまり、第1車両1/第1加速度検出装置4と、第2車両2/第2加速度検出装置5が揺動する時間の差Tcは次の式1となる。
【0048】
[式1]
Tc = Lc/Vc
Lc = 50m、Vc = 300km/hとすると、Tc = 0.6secとなる。
【0049】
一方、地震の場合は、第1、第2鉄道車両1,2/第1、第2加速度検出装置4,5のそれぞれが揺動する時間の差Teが一番大きくなるのは、車両の後方から地震波が来た場合である。この地震波の速度をVeとするとTeは次の式2であらわされる。
【0050】
[式2]
Te = Lc/(Ve-Vc)
【0051】
ここで、地震波の速度VeにおけるP波は5~7km/s、S波は3~4km/sである。このため、Veとして、遅いS波の値を採用すると
(参考文献:地震調査研究推進本部事務局https://jishin.go.jp/resource/terms/tm_seismic_wave_velocity/)
Lc = 50m, Vc = 300km/h, Ve = 3km/sとなり、Te = 0.017secとなる。
【0052】
加速度検出の時間差は、上述したとおり、TcとTeでは大きく異なる。故に、TcとTeの間に閾値時間(To)を設定すると、鉄道車両がカーブ等による揺動か、地震による揺動か判別可能である。
例えば、第1、第2加速度V4、V5が加速度閾値(To)を超えていない場合は、カーブ等による搖動と判断し、加速度Vが加速度閾値(To)を超えている場合は、地震による搖動と判定する。
【0053】
以上述べたように、加速度閾値(To)は、加速度検出の時間差、つまり、第1加速度検出装置4による加速度の検出時間と第2加速度検出装置5による加速度の検出時間の時間差を考慮して設定する。
【0054】
次に、加速度の大きさと方向について図5図7を参照して以下に記述する。
図5は、加速度における軸定義の一例を示す図である。
【0055】
第1鉄道車両1と第2鉄道車両2は、連結器3で接続されている。ここで、線路方向(進行方向)をy軸方向、線路6に対して直角かつ右から左にx軸方向、上から下に向かってz軸方向と定義した場合、列車は線路6上を走行するため、進行方向若しくは逆向きの加速度が発生する。このときの加速度は、図5では、y軸方向の正負の加速度となる。そして、y軸方向の加速度は前車の車両1/後車の鉄道車両2がほぼ同じタイミングで同じ大きさの加速度となる。しかし、線路6に沿った加速度であるため、脱線等の大きな問題は起きにくい。
【0056】
一方、線路6に対して直角のx軸方向と上下方向のz軸方向は脱線等の危険が大きくなる。したがって、地震を検知する際にはx軸とz軸方向の加速度を用いるものとする。ただし、線路6が湾曲している場合には曲率に応じてy軸方向の加速度を考慮してもよい。
x軸方向とz軸方向の加速度大きさの閾値には、過去の地震と、列車走行時の加速度を考慮して決定する。
【0057】
図6は、特急電車における加速度推移の一例を示す特性図である。
同図から見て、z軸方向については、重力加速度があるため約10m/sとなる。x軸方向と、z軸方向については、10m/s近辺で上下1.0m/s以内に収まっている。
【0058】
このような加速度推移の特性情報を予め取得し、制御装置1112は地震に由来する加速度を特性情報に基づき検知する。例えばx軸方向の振幅に着目し、このx軸方向の加速度が2.0m/s(200gal)を超えるケースが、所定の震度以上の地震が発生した場合のみであれば、この情報をもとに加速度閾値(Vo)を設定する。
【0059】
進行方向以外の加速度閾値(Vo)は、一律で決定してもよいし、鉄道車両・路線・運転パターン(特急、各駅停車など)、走行位置(曲線、坂道、地下、高架、地上等)を考慮して、例えば、図7に示すように決定してもよい。
【0060】
図7は、進行方向以外の加速度閾値(Vo)となる制御装置1112による制御対象となる車内機器の作動関係を示すテーブルである。
【0061】
同図のように閾値となる加速度閾値(Vo)を複数設定し、それぞれの加速度を超えると制御装置が作動するように構成してもよい。
【0062】
例えば、150、200、250、300galに設定した場合における制御装置1112による車上設備114の各車上機器1141~1144の作動関係を示し、150galの加速度閾値を超えたときには、緊急停止器1143を作動して車両を減速モードとし、200galの加速度閾値を超えたときには、車内報知器1141、乗務員報知器1142、緊急停止器1144などを作動して車内報知、緊急停止、乗務員報知モードとし、250galの加速度閾値を超えたときには、車内報知器1141、車外報知器、緊急停止器などを作動して車内報知、外報知、緊急静止モードとし、300galの加速度閾値を超えたときには、車内報知器1141、車外報知器、乗務員報知器1142、制振器1143、緊急停止器1144などを作動して車内報知、車外報知、乗務員報知、制振起動、緊急停止モードとする。
【0063】
また、閾値となる加速度閾値(Vo)は、進行方向以外の特定の方向の加速度(例:線路に直角方向)を対象にしてもよいし、進行方向以外の加速度を足し合わせてよいし、進行方向の加速度から列車の加速度に相当する部分を減算したものを足し合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 鉄道車両
2 鉄道車両
3 連結器
4、5 加速度検出装置
41,51 加速度計
42,52 メモリ
6 線路
11 車上制御装置
111 地震検出装置
1111 通信装置
1112 制御装置
1113 記憶装置
114 車上設備
1141 車上機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7