(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
F16F13/10 J
(21)【出願番号】P 2019003980
(22)【出願日】2019-01-14
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】園部 修也
(72)【発明者】
【氏名】水川 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 博
(72)【発明者】
【氏名】横山 和志
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-007811(JP,A)
【文献】特開2006-144983(JP,A)
【文献】実開平01-100943(JP,U)
【文献】特開2005-188725(JP,A)
【文献】特開2008-196630(JP,A)
【文献】特開2006-118547(JP,A)
【文献】特開2007-271001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 11/00-13/30
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動板が板厚方向で変位可能に収容された収容領域を備えた仕切部材を有する流体封入式防振装置において、
前記仕切部材の前記収容領域における前記可動板の変位方向の両側壁を弾性壁とすると共に、該弾性壁を該収容領域よりも外周側へ広げることで固定的に支持される環状の支持部を構成し、且つ、該収容領域と該支持部との間には、該可動板の変位方向で剪断変形する弾性連結部を構成し、更に該弾性壁よりも硬質の補強部材を該弾性壁に固着すると共に、該補強部材よりも外周側に該弾性連結部を設け
ており、且つ、
該弾性壁が該可動板の変位方向に重ね合わされる第一の弾性体と第二の弾性体によって構成されていると共に、それら第一の弾性体と第二の弾性体が互いに面対称形状とされていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項2】
可動板が板厚方向で変位可能に収容された収容領域を備えた仕切部材を有する流体封入式防振装置において、
前記仕切部材の前記収容領域における前記可動板の変位方向の両側壁を弾性壁とすると共に、該弾性壁を該収容領域よりも外周側へ広げることで固定的に支持される環状の支持部を構成し、且つ、該収容領域と該支持部との間には、該可動板の変位方向で剪断変形する弾性連結部を構成し、更に該弾性壁よりも硬質の補強部材を該弾性壁に固着すると共に、該補強部材よりも外周側に該弾性連結部を設け
ており、且つ、
該弾性壁が該可動板の変位方向に重ね合わされる第一の弾性体と第二の弾性体によって構成されていると共に、それら第一の弾性体と第二の弾性体を前記支持部において重ね合わせ方向に挟み込んで支持する挟持部材が設けられていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記支持部の外周部分には前記第一の弾性体と前記第二の弾性体の重ね合わせ方向で両外側へ突出する厚肉部分が設けられて、それら厚肉部分の内周側には前記弾性連結部との間に凹溝が形成されていると共に、前記挟持部材がそれら凹溝にそれぞれ差し入れられる一対の突出部を備えており、それら凹溝の底壁部が該一対の突出部によって挟持されている請求項
2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
周方向に延びる硬質の支持リングが前記支持部に固着されている請求項1~
3の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動板を板厚方向で変位可能に収容した収容領域が設けられた仕切部材を有する流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に封入された流体の流動作用などに基づいた防振効果を発揮する流体封入式防振装置が知られており、エンジンマウントなどに適用されている。流体封入式防振装置は、例えば、特開2006-144983号公報(特許文献1)の防振支持装置がそれであって、第1液室と第2液室を仕切る仕切部材を備えていると共に、仕切部材を構成する第1可動板ホルダと第2可動板ホルダの間に可動板が収容されている。
【0003】
ところで、可動板は、振動入力による第1液室と第2液室の相対的な液圧変動によって、板厚方向に変位せしめられる。特に、大振幅振動の入力時には、可動板が第1可動板ホルダ又は第2可動板ホルダに押し付けられることで、仕切部材の開口を閉塞して、第1液室と第2液室の相対的な液圧変動を効率的に惹起させる。これにより、減衰通路を通じた流体の行き来による減衰力が発揮されるようになっている。
【0004】
ところが、可動板が第1可動板ホルダ又は第2可動板ホルダに押し付けられる際に、打ち当たりによる衝撃力が車両ボデーなどへ伝達されることで、車室内に異音が生じる場合があった。
【0005】
特に、可動板が当接する収容領域の両側壁が金属などの硬質な部材で構成されていると、可動板の打ち当たりによる衝撃力が大きくなることから、特許文献1では、収容領域の両側壁が弾性体で形成された第1可動板ホルダと第2可動板ホルダで構成されており、可動板が当接する際の衝撃力が低減されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、可動板の打ち当たりによる衝撃が、第1,第2可動板ホルダの両側に重ね合わされた第1,第2バックアッププレートから車体フレームに伝達されるおそれがあり、更なる対策が求められていた。
【0007】
すなわち、金属で形成された第1,第2バックアッププレートが、可動板の変位方向の両側に設けられていると共に、それら第1,第2バックアッププレートの外周部分が、車体フレームに取り付けられる第2取付部材に対して剛結されていることから、可動板の打ち当たりによる衝撃が、第1,第2バックアッププレートから第2取付部材を介して車体フレームに伝達されて、異音の原因となることが考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、可動板が収容領域の両側壁に当接する際の衝撃力に起因する異音を低減できる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0011】
すなわち、本発明の第一の態様は、可動板が板厚方向で変位可能に収容された収容領域を備えた仕切部材を有する流体封入式防振装置において、前記仕切部材の前記収容領域における前記可動板の変位方向の両側壁を弾性壁とすると共に、該弾性壁を該収容領域よりも外周側へ広げることで固定的に支持される環状の支持部を構成し、且つ、該収容領域と該支持部との間には、該可動板の変位方向で剪断変形する弾性連結部を構成し、更に該弾性壁よりも硬質の補強部材を該弾性壁に固着すると共に、該補強部材よりも外周側に該弾性連結部を設けており、且つ、該弾性壁が該可動板の変位方向に重ね合わされる第一の弾性体と第二の弾性体によって構成されていると共に、それら第一の弾性体と第二の弾性体が互いに面対称形状とされていることを特徴とする。
【0012】
このような第一の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、可動板が打ち当たる収容領域の両側壁が弾性壁とされていることにより、可動板の打ち当たりに際して弾性壁の緩衝作用によって衝撃力が低減されることから、打音が低減される。
【0013】
しかも、固定的に支持される支持部が弾性壁と一体の弾性体で形成されることから、可動板の打ち当たりによる衝撃力が、支持部から車両ボデーなどの防振対象部材へ伝達され難く、防振対象部材への打音の伝達が問題になるのも防ぐことができる。
【0014】
さらに、可動板の変位方向で剪断変形する弾性連結部が、収容領域と支持部の間に設けられることによって、可動板の打ち当たりによる衝撃力が防振対象部材へ伝達されるのを、より効果的に防止することができて、衝撃力に基づく異音の発生が回避される。
【0015】
また、弾性壁において収容領域の両側壁を構成する部分が、補強部材によって変形剛性を高められることから、例えば、収容領域の両側壁に形成される透孔を可動板によって塞ぐ際に、可動板と収容領域の両側壁との当接状態が安定して、透孔を可動板によってより確実に塞ぐことができる。さらに、補強部材の外周側に弾性連結部が設けられていることにより、補強部材が外周側の他部材に対して接触したとしても、それら補強部材と他部材が弾性連結部を挟んで間接的に接触することから、打音などが問題になり難い。
【0017】
加えて、本態様によれば、第一の弾性体と第二の弾性体を共通の部品とすることができて、製造が容易になる。
【0018】
本発明の第二の態様は、可動板が板厚方向で変位可能に収容された収容領域を備えた仕切部材を有する流体封入式防振装置において、前記仕切部材の前記収容領域における前記可動板の変位方向の両側壁を弾性壁とすると共に、該弾性壁を該収容領域よりも外周側へ広げることで固定的に支持される環状の支持部を構成し、且つ、該収容領域と該支持部との間には、該可動板の変位方向で剪断変形する弾性連結部を構成し、更に該弾性壁よりも硬質の補強部材を該弾性壁に固着すると共に、該補強部材よりも外周側に該弾性連結部を設けており、且つ、該弾性壁が該可動板の変位方向に重ね合わされる第一の弾性体と第二の弾性体によって構成されていると共に、それら第一の弾性体と第二の弾性体を前記支持部において重ね合わせ方向に挟み込んで支持する挟持部材が設けられていることを特徴とする。
【0019】
第二の態様によれば、上記[0012]~[0015]に記載の効果に加えて、支持部が挟持部材で挟み込まれることによって、第一の弾性体と第二の弾性体が重ね合わされた状態に保持される。それ故、それら弾性体の間に形成される収容領域が安定して維持されて、目的とする防振特性を得ることができる。
【0020】
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記支持部の外周部分には前記第一の弾性体と前記第二の弾性体の重ね合わせ方向で両外側へ突出する厚肉部分が設けられて、それら厚肉部分の内周側には前記弾性連結部との間に凹溝が形成されていると共に、前記挟持部材がそれら凹溝にそれぞれ差し入れられる一対の突出部を備えており、それら凹溝の底壁部が該一対の突出部によって挟持されているものである。
【0021】
第三の態様によれば、厚肉部分よりも薄肉とされる凹溝の底壁部が、挟持部材の突出部で挟まれて支持されることによって、支持部を挟持部材によって安定して支持することができる。しかも、挟持部材の突出部が凹溝へ差し入れられることにより、支持部の厚肉部分が挟持部材に対して内周側へ抜けるのを防止することもできる。
【0022】
本発明の第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、周方向に延びる硬質の支持リングが前記支持部に固着されているものである。
【0023】
第四の態様によれば、支持リングによって支持部が補強されることから、支持部をより安定して固定的に支持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、可動板が収容領域の両側壁に当接する際の衝撃力に起因する異音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す断面図であって、
図2のI-I断面に相当する図。
【
図2】
図1に示すエンジンマウントを構成する第一の弾性体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10を示す。エンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。以下の説明において、上下方向とは、原則として、後述する可動板68の変位方向であって、軸方向である
図1中の上下方向を言う。
【0028】
より詳細には、第一の取付部材12は、金属などで形成された高剛性の部材であって、略円柱形状とされていると共に、上端部には外周側へ突出するフランジ状部18が一体形成されている。更に、第一の取付部材12は、中心軸上を上下方向に延びて上面に開口するねじ穴20を備えている。
【0029】
第二の取付部材14は、金属などで形成された高剛性の部材であって、薄肉大径の略円筒形状を有している。本実施形態の第二の取付部材14は、上部が下部よりも大径とされた段付き円筒形状とされている。
【0030】
第一の取付部材12が第二の取付部材14に対して略同一中心軸上で上側に配置されて、それら第一の取付部材12が第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、全体として略円錐台形状とされており、外周へ向けて下傾する外周面を備えている。そして、本体ゴム弾性体16の小径側端部が、第一の取付部材12の外周面および下面、更にはフランジ状部18の下面に加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の大径側端部が、第二の取付部材14の内周面に加硫接着されている。なお、本実施形態の本体ゴム弾性体16は、第一の取付部材12と第二の取付部材14を備える一体加硫成形品として形成される。
【0031】
さらに、本体ゴム弾性体16は、下面に開口する凹所22を備えている。凹所22は、上下逆向きの略すり鉢形状とされている。
【0032】
更にまた、本体ゴム弾性体16は、外周部分から下方へ延び出すシールゴム層24を備えている。シールゴム層24は、薄肉大径の略円筒形状とされており、第二の取付部材14の小径部分の内周面を覆うように固着されている。なお、シールゴム層24は、凹所22の開口に対して外周側へ離れた位置に設けられており、シールゴム層24の上端の内周側には、略軸直角方向に広がる本体ゴム弾性体16の当接面26が、全周に亘って連続して設けられている。
【0033】
また、第二の取付部材14には、可撓性膜28が取り付けられている。可撓性膜28は、略円板形状とされた薄肉のゴム膜であって、外周端部が環状の固定部材30に固着されている。そして、固定部材30が第二の取付部材14の下端部分の内周側へ差し入れられた状態で、第二の取付部材14が八方絞りなどで縮径加工されることにより、固定部材30が第二の取付部材14に固定されて、可撓性膜28が第二の取付部材14に取り付けられる。第二の取付部材14と固定部材30の間にはシールゴム層24が圧縮状態で介在することから、固定部材30を備えた可撓性膜28は、第二の取付部材14に対して流体密に取り付けられている。
【0034】
このように第二の取付部材14に可撓性膜28が取り付けられることにより、筒状とされた第二の取付部材14の上側の開口が、本体ゴム弾性体16によって流体密に塞がれていると共に、第二の取付部材14の下側の開口が、可撓性膜28によって流体密に塞がれている。これにより、第二の取付部材14の内周側には、外部から流体密に隔てられた流体室32が画成されている。
【0035】
この流体室32には、非圧縮性流体が封入されている。非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やエチレングリコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液などの液体が、好適に採用される。
【0036】
また、流体室32には、仕切部材34が配設されている。仕切部材34は、全体として略円板形状とされており、略円板形状とされた弾性壁36の外周部分が、後述する挟持部材72によって上下方向で挟持された構造を有している。
【0037】
より詳細には、弾性壁36は、上下に重ね合わされた第一の弾性体38と第二の弾性体40によって構成されている。第一,第二の弾性体38,40は、それぞれ略円板形状のゴム弾性体であって、本実施形態では、第一の弾性体38と第二の弾性体40が軸直角方向に広がる面に関する対称形状とされている。このように、第一の弾性体38と第二の弾性体40は、互いに面対称形状で略同一構造とされていることから、以下では、第一の弾性体38の構造について、
図2,3を参照しつつ説明すると共に、第二の弾性体40の構造については、
図1中に第一の弾性体38と対応する符号を付すことで説明を省略する。
【0038】
第一の弾性体38は、中央部分を構成する中央壁部42と、外周部分を構成する支持部44と、それら中央壁部42と支持部44とをつなぐ弾性連結部46とを、一体的に備えている。換言すれば、第一の弾性体38は、後述する収容領域66の上下方向の両側壁である中央壁部42から外周へ広がっており、外周へ広がった部分に支持部44が一体形成されていると共に、それら中央壁部42と支持部44の間に弾性連結部46が一体形成された構造を有している。
【0039】
中央壁部42は、薄肉の略円板形状とされており、上下に貫通する複数の透孔48が形成されている。本実施形態の透孔48は、内周部分に設けられた透孔48aと、外周部分に設けられた透孔48bと、径方向中間部分に設けられた透孔48cとによって構成されており、それら透孔48a~48cは孔断面形状が互いに異なっている(
図2参照)。さらに、中央壁部42の下面には、補強部材50が固着されている。補強部材50は、薄肉の略円板形状とされており、金属や硬質の合成樹脂、中央壁部42よりも硬度の高いゴムなどで形成されて、中央壁部42よりも硬質の部材とされている。この補強部材50には、中央壁部42の透孔48と対応する透孔52が形成されており、それら透孔48,52が直列的に接続されている。
【0040】
支持部44は、略円環形状とされており、外周部分が厚肉部分54とされていると共に、内周部分が薄肉部分56とされている。厚肉部分54と薄肉部分56は、上面が略同一平面上に位置していると共に、厚肉部分54が薄肉部分56よりも下方へ大きく突出している。さらに、支持部44における厚肉部分54には、金属や合成樹脂などで形成された硬質の支持リング58が固着されている。本実施形態では、
図2に示すように、周方向に延びるC字環状とされた支持リング58が、厚肉部分54に対して略埋設状態で固着されていると共に、厚肉部分54が周方向の複数箇所に切欠き60を備えており、支持リング58が切欠き60において外部に露出している。
【0041】
弾性連結部46は、略円環形状乃至は円筒形状とされていると共に、上下方向の中間部分において内周へ延び出すように中央壁部42が一体形成されており、中央壁部42の上側には、弾性連結部46の上部を周壁として上方へ開口する円形凹所62が形成されている。さらに、弾性連結部46の下部は、中央壁部42に固着された補強部材50よりも外周側に位置しており、本実施形態では補強部材50の外周面に固着されている。
【0042】
更にまた、支持部44の厚肉部分54と弾性連結部46との径方向間には、下方へ開口する凹溝64が周方向に延びて形成されている。なお、凹溝64の底壁部は、支持部44の薄肉部分56によって構成されている。
【0043】
そして、第一の弾性体38と第二の弾性体40は前述のように互いに上下反転した面対称構造とされており、第一の弾性体38と第二の弾性体40が上下方向で相互に重ね合わされることで弾性壁36が構成されている。弾性壁36は、外周部分である支持部44,44において、厚肉部分54,54が上下各一方側へ突出して設けられていると共に、厚肉部分54,54の内周側において、凹溝64,64が上下各一方の面に開口して設けられている。また、弾性壁36は、中央壁部42,42で構成された中央部分の上下両面に、それぞれ補強部材50が固着されている。なお、弾性壁36の支持部が、第一,第二の弾性体38,40の支持部44,44で構成されていると共に、弾性壁36の弾性連結部が、弾性体38,40の弾性連結部46,46で構成されている。
【0044】
さらに、第一の弾性体38と第二の弾性体40の重ね合わせ面間には、円形凹所62,62によって構成される収容領域66が形成されている。収容領域66の上下方向の両側壁は、第一の弾性体38の中央壁部42と、第二の弾性体40の中央壁部42とによって構成されていると共に、収容領域66の外周壁は、第一の弾性体38の弾性連結部46と、第二の弾性体40の弾性連結部46とによって構成されている。さらに、収容領域66の上下壁部は、補強部材50,50によって変形が制限されている。
【0045】
また、収容領域66には、可動板68が配設されている。可動板68は、全体として略円板形状とされており、ゴム弾性体で形成されていると共に、薄肉円板状の補強板70が内部に固着されている。さらに、可動板68の外周部分は、内周部分の上下両面に対して厚さ方向の外側へ突出するリブ71,71が、全周に亘って略一定の断面形状で形成されており、厚さ寸法が部分的に大きくされている。そして、可動板68は、略軸直角方向に広がるようにして収容領域66に収容されている。なお、リブ71,71の突出先端間における可動板68の厚さ寸法が、可動板68の厚さ方向と同方向である収容領域66の上下方向での内法寸法よりも小さくされている。更に、可動板68の径方向寸法が、収容領域66の径方向での内法寸法よりも小さくされている。これらにより、可動板68が収容領域66内で厚さ方向の微小変位を許容されている。
【0046】
また、可動板68を配された収容領域66を備える第一,第二の弾性体38,40は、挟持部材72によって外周部分を支持されている。挟持部材72は、本体部材74と、底板部材76とが、上下方向で重ね合わされて構成されている。
【0047】
本体部材74は、全体として略円環形状とされており、内周部分において下向きに突出する突出部78を備えていると共に、外周部分が下向きに突出する周壁部80を備えており、当該外周部分には、周方向へ一周に満たない長さで延びる周溝82が、外周面に開口して形成されている。
【0048】
底板部材76は、略円環板形状とされて、内周端部において上向きに突出する突出部84を備えている。本実施形態の突出部84は、突出先端面が径方向に湾曲する凸形の湾曲断面を有しており、第一の弾性体38の凹溝64に差し入れることが可能とされている。
【0049】
そして、本体部材74の外周部分の下面が底板部材76の外周部分の上面に重ね合わされることで、挟持部材72が本体部材74と底板部材76を含んで構成されている。また、本体部材74の内周部分と底板部材76の内周部分は、上下に離れて対向配置されており、それら本体部材74の内周部分と底板部材76の内周部分との対向間において、第一の弾性体38の支持部44と第二の弾性体40の支持部44とが、上下方向に挟持されている。
【0050】
さらに、第一の弾性体38の支持部44の厚肉部分54が、挟持部材72の突出部84と周壁部80との径方向間に差し入れられていると共に、第二の弾性体40の支持部44の厚肉部分54が、挟持部材72の突出部78と周壁部80との径方向間に差し入れられている。そして、第一の弾性体38の支持部44と第二の弾性体40の支持部44が、相互に重ね合わされた状態で、挟持部材72によって上下方向に挟み込まれて支持されることにより、本実施形態の仕切部材34が構成されている。
【0051】
なお、支持部44,44は、薄肉部分56が、本体部材74の内周部分に設けられた突出部78と、底板部材76の内周部分に設けられた突出部84との間で挟持されていると共に、厚肉部分54が、本体部材74の内周部分における突出部78よりも内周側と、底板部材76の内周部分における突出部84よりも内周側との間で挟持されている。
【0052】
さらに、本実施形態の支持部44は、厚肉部分54に硬質の支持リング58が固着されていることから、挟持部材72に対して径方向で位置決めされている。また、支持部44の厚肉部分54に支持リング58が設けられていることで、厚肉部分54の厚さ方向のばね特性が硬くされており、厚肉部分54,54を挟持部材72によって挟み込むことによって第一,第二の弾性体38,40に及ぼされる支持力を大きく得ることができる。一方、薄肉部分56は、厚さ寸法が小さくされていることから、一対の突出部78,84による挟持によって大きな支持力を得ることができる。
【0053】
また、収容領域66の壁部を構成する中央壁部42,42と弾性連結部46,46は、挟持部材72よりも内周側に配置されている。これにより、中央壁部42,42は、弾性連結部46,46の剪断変形による上下方向の変位を許容されている。
【0054】
かくの如き構造とされた仕切部材34は、
図1に示すように、流体室32に配置されている。より具体的には、仕切部材34は、第二の取付部材14の内周へ下側から差し入れられた状態で、第二の取付部材14が縮径せしめられることにより、第二の取付部材14が仕切部材34の外周面に押し付けられて、仕切部材34が第二の取付部材14に組み付けられている。
【0055】
さらに、第二の取付部材14の内周面と仕切部材34の外周面の間には、シールゴム層24が介在しており、第二の取付部材14が仕切部材34の外周面にシールゴム層24を介して押し付けられることで、仕切部材34は第二の取付部材14に対して流体密に組み付けられている。
【0056】
更にまた、仕切部材34が第二の取付部材14の内周へ差し入れられる際に、仕切部材34の挟持部材72は、上面の外周部分が本体ゴム弾性体16の当接面26に重ね合わされることにより、上下方向の所定位置にセットされる。さらに、挟持部材72の下側に可撓性膜28に固着された固定部材30が重ね合わされると共に、第二の取付部材14の下端部が内周へ折り曲げられて固定部材30の下面に重ね合わされることにより、挟持部材72の下方への抜けが防止されている。これらにより、仕切部材34の挟持部材72は、第二の取付部材14に対して上下方向で位置決めされている。なお、仕切部材34における第一,第二の弾性体38,40の中央壁部42,42は、弾性連結部46,46の剪断変形によって、第二の取付部材14に対する上下方向の変位をある程度まで許容される。
【0057】
このように、仕切部材34が第二の取付部材14の内周側に配されて、流体室32において軸直角方向に広がるように設けられることにより、流体室32が仕切部材34を挟んで上下両側に二分されている。すなわち、仕切部材34の上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16によって構成された受圧室86が形成されていると共に、仕切部材34の下側には、壁部の一部が可撓性膜28によって構成された平衡室88が形成されている。なお、受圧室86と平衡室88には、流体室32に封入された非圧縮性流体が封入されている。
【0058】
また、仕切部材34の外周面が第二の取付部材14によって流体密に覆われることにより、周溝82の外周側の開口が流体密に閉塞されている。これにより、周方向に延びるトンネル状の流路が形成されており、当該トンネル状流路の両端部が受圧室86と平衡室88の各一方に連通されていることにより、受圧室86と平衡室88を相互に連通するオリフィス通路90が形成されている。なお、オリフィス通路90は、通路断面積Aと通路長Lの比A/Lを調節することにより、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が設定されている。オリフィス通路90のチューニング周波数は、特に限定されないが、本実施形態では、例えば、自動車のエンジンシェイクに相当する10Hz程度にチューニングされている。
【0059】
また、仕切部材34の収容領域66は、上側の透孔48,52を通じて受圧室86に連通されていると共に、下側の透孔48,52を通じて平衡室88に連通されており、受圧室86と平衡室88が収容領域66を通じた流路92によって相互に連通されている。なお、収容領域66を通じた流路92のチューニング周波数は、オリフィス通路90のチューニング周波数よりも高周波に設定されており、例えば、自動車のアイドリング振動や走行こもり音に相当する十数Hz以上の周波数に設定される。
【0060】
かくの如き構造とされたエンジンマウント10は、第一の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、車両に装着されて、パワーユニットが車両ボデーに対して防振連結される。
【0061】
かかるエンジンマウント10の車両への装着状態において、第一の取付部材12と第二の取付部材14の間へエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、受圧室86において平衡室88に対する相対的な圧力変動が惹起される。そして、受圧室86と平衡室88の相対的な圧力差によって、オリフィス通路90を通じた流体流動が共振状態で積極的に生ぜしめられる。これにより、流体の流動作用に基づく防振効果(高減衰作用)が発揮されて、振動が低減される。
【0062】
さらに、低周波大振幅振動の入力時には、可動板68が収容領域66内で大きく変位することから、可動板68が収容領域66の上下壁部に当接して、上側の透孔48,52と下側の透孔48,52を覆って遮断する。これにより、上側の透孔48,52と収容領域66と下側の透孔48,52とによって構成された流路92が、可動板68によって遮断されて、流路92を通じた流体流動が制限される。それ故、受圧室86の平衡室88に対する相対的な圧力変動が効率的に惹起されて、オリフィス通路90を通じて流動する流体の量が多く確保されることから、オリフィス通路90による防振効果を有利に得ることができる。
【0063】
特に本実施形態では、可動板68の外周部分にリブ71,71が設けられていることにより、リブ71,71が収容領域66の上下壁部に当接することでシール構造としても機能して、上側の透孔48,52と下側の透孔48,52が可動板68によって一層確実に流体密に覆われて、流路92が遮断される。
【0064】
ここにおいて、可動板68が当接する収容領域66の上下壁部が、第一,第二の弾性体38,40によって構成されていることから、可動板68が収容領域66の上下壁部に打ち当てられても、当接時の打音が第一,第二の弾性体38,40の緩衝作用によって低減される。
【0065】
しかも、可動板68が補強板70の表面をゴムで覆った構造とされていることから、当接時の衝撃力が、可動板68のゴムによっても低減される。加えて、可動板68の外周部分に厚さ方向両側へ突出するリブ71,71が設けられていることにより、可動板68が収容領域66の上下壁部に当接する際に、リブ71,71が優先的に当接して、可動板68の上下何れかの面の全体が同時に当接する場合に比して、打音がより一層低減される。
【0066】
さらに、第一,第二の弾性体38,40に作用する可動板68の打ち当たりによる衝撃力は、車両ボデーに伝達され難くなっている。すなわち、仕切部材34は、車両ボデーに取り付けられる第二の取付部材14に対して固定される挟持部材72が、収容領域66の上下壁部に対して外周へ外れた位置に設けられていることから、収容領域66の上下壁部に可動板68が打ち当たる際に、衝撃力が挟持部材72へ直接的に作用し難い。しかも、可動板68の打ち当たる収容領域66の上下壁部から挟持部材72への衝撃力の伝達経路は、弾性壁36で構成されることから、挟持部材72へ伝達される衝撃力が弾性壁36の緩衝作用(内部摩擦など)によって低減される。特に、収容領域66の上下壁部を構成する中央壁部42,42と、挟持部材72で支持される支持部44,44との間に、剪断変形する弾性連結部46,46が設けられることで、衝撃力の挟持部材72への伝達が更に低減される。それ故、可動板68の打ち当たりによる打音が車両ボデーに伝達され難く、打音に起因する車室内の異音が防止される。
【0067】
さらに、第一,第二の弾性体38,40において収容領域66の上下壁部を構成する中央壁部42,42には、補強部材50,50が固着されており、中央壁部42,42の当該部分の変形が補強部材50,50によって制限されている。これにより、可動板68が中央壁部42,42に当接する際に、可動板68と中央壁部42,42との間において、中央壁部42,42の変形による隙間が形成され難くなって、上側の透孔48,52と下側の透孔48,52が可動板68でより確実に塞がれる。
【0068】
しかも、補強部材50,50は、挟持部材72に対して内周側へ離れて配置されていることから、可動板68の打ち当たりによって硬質の補強部材50,50に作用する衝撃力が、挟持部材72へ直接的に伝達されないようになっている。特に本実施形態では、補強部材50,50の外周面が弾性連結部46,46によって覆われていることから、補強部材50,50と挟持部材72の間に弾性連結部46,46が介在しており、それら補強部材50,50と挟持部材72の直接的な当接が防止されている。
【0069】
一方、高周波小振幅振動の入力時には、上側の透孔48,52と下側の透孔48,52が可動板68で塞がれることなく連通状態に保持されることから、受圧室86と平衡室88の間において、上側の透孔48,52と収容領域66と下側の透孔48,52とで構成される流路92を通じた流体流動が積極的に生ぜしめられる。これにより、受圧室86の実質的な密閉による高動ばね化が回避されて、低動ばねによる防振効果(振動絶縁作用)が発揮される。なお、オリフィス通路90は、チューニング周波数よりも高周波の振動入力時において、反共振によって実質的な遮断状態とされる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、硬質の補強板70の表面がゴムで覆われた構造の可動板68を例示したが、可動板68は、例えば、全体が硬質とされていてもよいし、全体が弾性体で形成されていてもよい。
【0071】
また、弾性壁36を構成する第一,第二の弾性体38,40は、互いに同じ形状であることが望ましいが、収容領域66の上下壁部を構成する部分(中央壁部42)と支持部44と弾性連結部46とをそれぞれ備えていれば、互いに異なる形状とされていてもよい。また、何れか一方の弾性体にのみ支持リング58を設けたり、何れか一方の弾性体にのみ補強部材50を設けたりすることも可能であり、第一,第二の弾性体38,40を互いに異なる構造とすることもできる。さらに、支持リング58や補強部材50は、本発明において必須ではない。
【0072】
また、前記実施形態の挟持部材72は、互いに異なる形状の本体部材74と底板部材76とを組み合わせて構成されていたが、例えば、互いに面対称形状とされた同じ構造の2部材を重ね合わせて構成することもできる。
【0073】
また、例えば、第一,第二の弾性体38,40の外周面に筒状の嵌合金具を固着して、各弾性体38,40に固着された当該嵌合金具を相互に連結する連結手段を設けると共に、当該嵌合金具を第二の取付部材14の内周へ嵌合させることで、弾性壁36を第二の取付部材14に取り付けることもできる。要するに、弾性壁36の外周部分が挟持部材72によって上下方向で挟まれて支持された構造は、必須ではない。
【0074】
可動板68は、前記実施形態において、全体が収容領域66の壁内面から離れた状態とされ得る構造とされていたが、部分的に収容領域66の壁内面に接した状態に保持されていてもよく、例えば、中央部分又は外周部分を収容領域66の上下壁部によって部分的に挟持された構造の可動板68も採用され得る。この場合には、可動板68は、挟持されていない部分が、弾性変形によって変位可能とされる。
【0075】
本発明は、必ずしも受圧室86と平衡室88を備えるタイプの流体封入式防振装置にのみ適用されるものではなく、例えば、相対的な圧力差を生じる複数の受圧室のみを備えた流体封入式防振装置にも適用され得る。
また、本発明は、もともと以下(i)~(v)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 可動板が板厚方向で変位可能に収容された収容領域を備えた仕切部材を有する流体封入式防振装置において、前記仕切部材の前記収容領域における前記可動板の変位方向の両側壁を弾性壁とすると共に、該弾性壁を該収容領域よりも外周側へ広げることで固定的に支持される環状の支持部を構成し、且つ、該収容領域と該支持部との間には、該可動板の変位方向で剪断変形する弾性連結部を構成し、更に該弾性壁よりも硬質の補強部材を該弾性壁に固着すると共に、該補強部材よりも外周側に該弾性連結部を設けたことを特徴とする流体封入式防振装置、
(ii) 前記弾性壁が前記可動板の変位方向に重ね合わされる第一の弾性体と第二の弾性体によって構成されていると共に、それら第一の弾性体と第二の弾性体が互いに面対称形状とされている(i)に記載の流体封入式防振装置、
(iii) 前記弾性壁が前記可動板の変位方向に重ね合わされる第一の弾性体と第二の弾性体によって構成されていると共に、それら第一の弾性体と第二の弾性体を前記支持部において重ね合わせ方向に挟み込んで支持する挟持部材が設けられている(i)又は(ii)に記載の流体封入式防振装置、
(iv) 前記支持部の外周部分には前記第一の弾性体と前記第二の弾性体の重ね合わせ方向で両外側へ突出する厚肉部分が設けられて、それら厚肉部分の内周側には前記弾性連結部との間に凹溝が形成されていると共に、前記挟持部材がそれら凹溝にそれぞれ差し入れられる一対の突出部を備えており、それら凹溝の底壁部が該一対の突出部によって挟持されている(iii)に記載の流体封入式防振装置、
(v) 周方向に延びる硬質の支持リングが前記支持部に固着されている(i)~(iv)の何れか一項に記載の流体封入式防振装置、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、可動板が打ち当たる収容領域の両側壁が弾性壁とされていることにより、可動板の打ち当たりに際して弾性壁の緩衝作用によって衝撃力が低減されることから、打音が低減される。しかも、固定的に支持される支持部が弾性壁と一体の弾性体で形成されることから、可動板の打ち当たりによる衝撃力が、支持部から車両ボデーなどの防振対象部材へ伝達され難く、防振対象部材への打音の伝達が問題になるのも防ぐことができる。さらに、可動板の変位方向で剪断変形する弾性連結部が、収容領域と支持部の間に設けられることによって、可動板の打ち当たりによる衝撃力が防振対象部材へ伝達されるのを、より効果的に防止することができて、衝撃力に基づく異音の発生が回避される。また、弾性壁において収容領域の両側壁を構成する部分が、補強部材によって変形剛性を高められることから、例えば、収容領域の両側壁に形成される透孔を可動板によって塞ぐ際に、可動板と収容領域の両側壁との当接状態が安定して、透孔を可動板によってより確実に塞ぐことができる。さらに、補強部材の外周側に弾性連結部が設けられていることにより、補強部材が外周側の他部材に対して接触したとしても、それら補強部材と他部材が弾性連結部を挟んで間接的に接触することから、打音などが問題になり難い。
上記(ii)に記載の発明では、第一の弾性体と第二の弾性体を共通の部品とすることができて、製造が容易になる。
上記(iii)に記載の発明では、支持部が挟持部材で挟み込まれることによって、第一の弾性体と第二の弾性体が重ね合わされた状態に保持される。それ故、それら弾性体の間に形成される収容領域が安定して維持されて、目的とする防振特性を得ることができる。
上記(iv)に記載の発明では、厚肉部分よりも薄肉とされる凹溝の底壁部が、挟持部材の突出部で挟まれて支持されることによって、支持部を挟持部材によって安定して支持することができる。しかも、挟持部材の突出部が凹溝へ差し入れられることにより、支持部の厚肉部分が挟持部材に対して内周側へ抜けるのを防止することもできる。
上記(v)に記載の発明では、支持リングによって支持部が補強されることから、支持部をより安定して固定的に支持することができる。
【符号の説明】
【0076】
10:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、34:仕切部材、36:弾性壁、38:第一の弾性体、40:第二の弾性体、44:支持部、46:弾性連結部、50:補強部材、54:厚肉部分、56:薄肉部分(凹溝の底壁部)、58:支持リング、64:凹溝、66:収容領域、68:可動板、72:挟持部材、78,84:突出部