(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F15B 20/00 20060101AFI20220927BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220927BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20220927BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20220927BHJP
F15B 11/16 20060101ALI20220927BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
F15B20/00 E
E02F9/20 Q
F15B11/02 C
F15B11/08 C
F15B11/16 B
F15B11/028 G
(21)【出願番号】P 2019029913
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小浦 慧視
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏政
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101790(JP,A)
【文献】国際公開第2013/128690(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00
E02F 9/20
F15B 11/02
F15B 11/08
F15B 11/16
F15B 11/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向吐出型の油圧ポンプと、
複数のアクチュエータと、
前記油圧ポンプを前記複数のアクチュエータのいずれか1つに選択的に接続して閉回路を形成する複数の切換弁と、
前記閉回路に作動油を補充するチャージ流路と、
前記閉回路の低圧側から前記チャージ流路に余剰な作動油を排出するフラッシング弁と、
前記複数のアクチュエータの動作を指示する操作レバーと、
前記操作レバーの操作量に基づいて、前記複数の切換弁に開弁指令または閉弁指令を出力しかつ前記油圧ポンプに吐出流量指令を出力するコントローラと、
前記コントローラから入力された情報を出力する報知装置とを備えた建設機械において、
前記油圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサ
と、
前記チャージ流路に作動油を供給するチャージポンプと、
前記チャージ流路の最大圧を規定するチャージリリーフ弁とを備え、
前記コントローラは、前記複数の切換弁の全てに閉弁指令を出力している状態で、前記油圧ポンプが一定時間作動油を吐出するように吐出流量指令を出力し、その間に前記圧力センサで計測された前記油圧ポンプの吐出圧
が、前記チャージリリーフ弁の設定圧以下となった場合に、前記複数の切換弁のいずれかが開固着している
と判定し、判定結果を前記報知装置に出力する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
双方向吐出型の油圧ポンプと、
複数のアクチュエータと、
前記油圧ポンプを前記複数のアクチュエータのいずれか1つに選択的に接続して閉回路を形成する複数の切換弁と、
前記閉回路に作動油を補充するチャージ流路と、
前記閉回路の低圧側から前記チャージ流路に余剰な作動油を排出するフラッシング弁と、
前記複数のアクチュエータの動作を指示する操作レバーと、
前記操作レバーの操作量に基づいて、前記複数の切換弁に開弁指令または閉弁指令を出力しかつ前記油圧ポンプに吐出流量指令を出力するコントローラと、
前記コントローラから入力された情報を出力する報知装置とを備えた建設機械において、
前記油圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサを備え、
前記コントローラは、前記操作レバーが中立となったときに、前記複数のアクチュエータのうち前記操作レバーが中立となる直前に前記油圧ポンプが作動油を供給していた特定のアクチュエータを選択し、前記複数の切換弁の全てに閉弁指令を出力している状態で、前記油圧ポンプが一定時間前記特定のアクチュエータの低圧側に向けて作動油を吐出するように前記吐出流量指令を出力し、その間に前記圧力センサで検出した前記油圧ポンプの吐出圧に基づいて、前記複数の切換弁のいずれかが開固着していると判定する
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプにより直接に油圧アクチュエータを駆動する油圧閉回路システムを搭載した建設機械に関に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベルやホイールローダなどの建設機械において、省エネ化が重要な開発項目になっている。建設機械の省エネ化には油圧システム自体の省エネ化が重要であり、油圧ポンプにより油圧アクチュエータを、絞り弁を介さずに閉回路接続して直接制御する油圧閉回路システムの適用が検討されている。このシステムは制御弁による圧損が無く、必要な流量のみをポンプが吐出するため流量損失もない。また、アクチュエータの位置エネルギーや減速時のエネルギー回生をすることもできるため、省エネ化が可能となる。
【0003】
このような油圧閉回路システムを開示する先行技術文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1に記載の油圧閉回路システムによれば、切換弁またはその制御系の失陥により切換弁が開固着した場合でも、意図しない油圧アクチュエータの動作を抑制し、機体の稼働を継続することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の油圧閉回路システムでは、切換弁に内蔵されたポペットが開固着した場合、当該ポペットがアクチュエータの高圧側に接続されているものであれば、当該ポペットの前後差圧に基づいて開固着を検出することができる。しかし、アクチュエータの低圧側に接続されているポペットの場合、当該ポペットの開閉状態に関わらず前後差圧が小さくなるため、当該ポペットの前後差圧に基づいて開固着を検出することはできない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、切換弁に内蔵されたポペットの内、アクチュエータの低圧側に接続されているポペットの開固着を検出し、意図しないアクチュエータ動作を抑制できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、双方向吐出型の油圧ポンプと、複数のアクチュエータと、前記油圧ポンプを前記複数のアクチュエータのいずれか1つに選択的に接続して閉回路を形成する複数の切換弁と、前記閉回路に作動油を補充するチャージ流路と、前記閉回路の低圧側から前記チャージ流路に余剰な作動油を排出するフラッシング弁と、前記複数のアクチュエータの動作を指示する操作レバーと、前記操作レバーの操作量に基づいて、前記複数の切換弁に開弁指令または閉弁指令を出力しかつ前記油圧ポンプに吐出流量指令を出力するコントローラと、前記コントローラから入力された情報を出力する報知装置とを備えた建設機械において、前記油圧ポンプの吐出圧を計測する圧力センサと、前記チャージ流路に作動油を供給するチャージポンプと、前記チャージ流路の最大圧を規定するチャージリリーフ弁とを備え、前記コントローラは、前記複数の切換弁の全てに閉弁指令を出力している状態で、前記油圧ポンプが一定時間作動油を吐出するように吐出流量指令を出力し、その間に前記圧力センサで計測された前記油圧ポンプの吐出圧が、前記チャージリリーフ弁の設定圧以下となった場合に、前記複数の切換弁のいずれかが開固着していると判定し、判定結果を前記報知装置に出力するものとする。
【0008】
以上のように構成した本発明によれば、複数の切換弁の全てに閉弁指令が出力されている状態で、油圧ポンプから一定時間作動油が吐出され、その間に圧力センサで計測された油圧ポンプの吐出圧に基づいて、複数の切換弁のいずれかが開固着しているか否かが判定され、判定結果が報知装置に出力される。これにより、アクチュエータの低圧側に接続されているポペットの開固着を操作者が認知することができるため、意図しないアクチュエータ動作を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油圧閉回路システムを搭載した建設機械において、切換弁に内蔵されたポペットの内、アクチュエータの低圧側に接続されているポペットの開固着を検出し、意図しないアクチュエータ動作を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルに搭載された油圧閉回路システムの概略構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施例に係るコントローラの機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施例に係るポンプ指令演算部の処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1の実施例に係る開固着判定部の処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施例に係るコントローラの機能ブロック図である。
【
図7】本発明の第2の実施例に係るポンプ指令演算部の処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施例に係る開固着判定部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る油圧ショベル100は、左右方向の両側にクローラ式の走行装置8a,8bを備えた下部走行体104と、下部走行体104上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体102を備えている。上部旋回体102上には、オペレータが搭乗するキャブ101が設けられている。
【0014】
上部旋回体102の前側には、例えば掘削作業などを行うためのフロント作業機103が上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0015】
フロント作業機103は、ブーム2と、ブーム2を駆動する方ロッド式のブームシリンダ1と、アーム4と、アーム4を駆動する方ロッド式のアームシリンダ3と、バケット6と、バケット6を駆動する方ロッド式のバケットシリンダ5とを備えている。
【0016】
ブームシリンダ1は、シリンダロッド1bの先端部が上部旋回体102に連結され、シリンダヘッド1aの基端部がブーム2に連結されている。
【0017】
アームシリンダ3は、シリンダロッド3bの先端部がアーム4に連結され、シリンダヘッド3aの基端部がブーム2に連結されている。
【0018】
バケットシリンダ5は、シリンダロッド5bの先端部がバケット6に連結され、シリンダヘッド5aの基端部がアーム4に連結されている。
【0019】
図2は、油圧ショベル100に搭載された油圧閉回路システムの概略構成図である。なお、説明の簡略化のため、
図2では、ブームシリンダ1とアームシリンダ3の駆動に関わる部分のみを示し、その他のアクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0020】
図2において、閉回路ポンプP1,P2は、図示しないエンジンにより駆動される。閉回路ポンプP1(P2)は、一対の入出力ポートを有する傾転斜板機構と、斜板の傾斜角(ポンプ押しのけ容積)を調整するポンプレギュレータ21(22)とを備えた双方向吐出型の油圧ポンプである。コントローラ14は、操作レバー(アームレバーL1、ブームレバーL2)から入力された操作量信号に基づいてポンプレギュレータ21,22に吐出流量指令を出力することにより、閉回路ポンプP1,P2の吐出方向および吐出流量を制御する。
【0021】
閉回路ポンプP1の出力ポートには、流路201,202が接続されている。流路201は、ブームシリンダ1のロッド側とポペットV1a、流路201aを介して接続し、アームシリンダ3のロッド側とポペットV1c、流路203aを介して接続している。流路202は、ブームシリンダ1のボトム側とポペットV1b、流路202aを介して接続し、アームシリンダ3のボトム側とポペットV1d、流路204aを介して接続している。
【0022】
閉回路ポンプP2の出力ポートには、流路203,204が接続されている。流路203は、ブームシリンダ1のボトム側とポペットV2a、流路202aを介して接続し、アームシリンダ3のロッド側とポペットV2c、流路203aを介して接続している。流路204は、ブームシリンダ1のロッド側とポペットV2b、流路201aを介して接続し、アームシリンダ3のボトム側とポペットV2d、流路204aを介して接続している。
【0023】
流路201~204は、ポンプリリーフ弁31を介してチャージ流路200に接続されている。閉回路ポンプP1,P2の最大吐出圧(流路201~204の最大圧力)は、ポンプリリーフ弁31の設定圧(ポンプリリーフ圧)によって規定される。ポンプリリーフ圧は、例えば35MPaに設定される。
【0024】
流路201a~204aは、オーバーロードリリーフ弁32を介してチャージ流路200に接続されている。アクチュエータ1,3の最大負荷圧(流路201a~204aの最大圧力)は、オーバーロードリリーフ弁32の設定圧(オーバーロードリリーフ圧)によって規定される。オーバーロードリリーフ圧は、例えば35MPaに設定される。
【0025】
コントローラ14は、電磁弁E1~E4へ励磁・非励磁指令を出力し、タンク43または圧力源44とポペットV1a~V1d,V2a~V2dとの接続を切り換えることにより、切換弁37~40の開閉制御を行う。
【0026】
流路201a,202aにはフラッシング弁46aが接続されており、流路201a,202aの低圧側をタンク43へ接続する。流路203a,204aにはフラッシング弁46bが接続されており、流路203a,204aの低圧側をタンク43へ接続する。フラッシング弁46a,46bは、それぞれ閉回路の余剰作動油をチャージ流路200へ排出する機能と、閉回路の不足作動油をチャージ流路200から吸入する機能とを備える。
【0027】
チャージ流路200は、チャージリリーフ弁42を介してタンク43に接続され、チェック弁33を介して流路201~204,201a~204aに接続されている。チャージ流路200には、チャージポンプ41から作動油が供給される。チャージポンプ41の最大吐出圧(チャージ流路200の最大圧力)は、チャージリリーフ弁42の設定圧(チャージリリーフ圧)によって規定される。
【0028】
<従来技術の課題>
次に従来技術の課題として、アクチュエータ低圧側と接続されたポペットが開固着した場合、ポペットが正常に閉弁した場合との判定が難しい事例について、
図2を用いて説明する。
【0029】
アームレバーL1、ブームレバーL2を操作してアーム4、ブーム2が駆動する場合について説明する。コントローラ14ではブームレバーL2、アームレバーL1の操作量を検出し、操作量に応じた吐出流量指令をポンプレギュレータ21,22へ出力し、励磁・非励磁指令を電磁弁E1~4へ出力する。ポンプP1,P2は、吐出流量指令に応じた流量の作動油を吐出する。また電磁弁E1~E4は励磁・非励磁指令を受信し、切換弁37~40に内蔵されているポペットV1a~V1d,V2a~V2dと圧力源44またはタンク43との接続を切り換えることにより、ポペットV1a~V1d,V2a~V2dを開弁または閉弁させる。
【0030】
(アクチュエータの高圧側に接続されたポペットが開固着した場合)
次にアーム4がダンプ動作から停止状態へ変化し、ブーム2が停止状態から駆動状態へ変化する動作状況を想定する。
【0031】
アームレバーL1を操作し、かつブームレバーL2は中立のままにしてアーム4のみがダンプ動作をしたとする。コントローラ14はアームレバーL1、ブームレバーL2の操作量を検出し、吐出流量指令をポンプレギュレータ21,22へ出力する。これにより、ポンプP1がアームシリンダ3のロッド側へ吐出する。
【0032】
またコントローラ14は、電磁弁E2へ励磁指令を出力し、電磁弁E1,E3,E4へ非励磁指令を出力する。非励磁指令を受信した電磁弁E1,E3,E4は、ポペットV1a,V1b,V2a~V2dのバネ室を圧力源44に接続することにより、ポペットV1a,V1b,V2a~V2dを閉弁させる。励磁指令を受信した電磁弁E2は、ポペットV1c,V1dのバネ室をタンク43に接続することにより、ポペットV1c,V1dを開弁させる。ポペットV1c,V1dが開弁することで、ポンプP1は、流路201,201aおよび流路202,202aを介してアームシリンダ3に接続され、アームシリンダ3のロッド側へ作動油を吐出する。
【0033】
その後アームレバーL1も中立状態に戻すと、コントローラ14はアームレバーL1の中立状態を検出して、ポンプP1へ中立にする指令を出力し、電磁弁E2へ非励磁指令を出力する。ポンプP1は中立の指令を受信して作動油の吐出を停止し、電磁弁E2は非励磁状態となり、ポペットV1c,V1dのバネ室が圧力源44に接続され、ポペットV1c,V1dが閉弁する。
【0034】
ポンプP1が中立になり、ポペットV1c,V1dが閉弁し、アームシリンダ3のロッド側が25MPa、ボトム側がチャージリリーフ圧(2MPa)になったとする。ポペットV1c,V1dが正常に閉弁すると、ポンプP1側の流路201,202の圧力はチャージリリーフ圧(2MPa)が維持され、アームシリンダのロッド側及び流路203aは25MPa、アームシリンダボトム及び流路204aの圧力はチャージリリーフ圧(2MPa)と等しくなる。
【0035】
ここで、アームシリンダ3のロッド側と接続されたポペットV1cが開固着すると、アームシリンダ3のロッド側は、流路203a,201を介してポンプP1と接続される。するとポペットV1cが正常に閉弁した場合と開固着した場合の、圧力センサPS3,PS5の計測値の大小関係は、以下のようになる。
【0036】
正常に閉弁:圧力センサPS3の圧力値(25MPa)>圧力センサPS5の圧力値(チャージリリーフ圧(2MPa))
開固着発生:圧力センサPS3の圧力値(25MPa)=圧力センサPS5の圧力値(25MPa)
よって正常状態では圧力センサPS5の圧力値は2MPa、V1c開固着時には圧力センサPS5の圧力値は25MPaとなるので、圧力センサPS3,PS5の圧力値によりV1cの開固着を判定できる。
【0037】
(アクチュエータの低圧側に接続されたポペットが開固着した場合)
一方アームシリンダ3のボトム側と接続されたポペットV1dが開固着した場合、アームシリンダ3のボトム側は、流路204a,202を介してポンプP1と接続される。ポペットV1dが正常に閉弁した場合と開固着した場合の、圧力センサPS4,PS6の計測値の大小関係は、以下のようになる。
【0038】
正常に閉弁:圧力センサPS4の圧力値(チャージリリーフ圧(2MPa))=圧力センサPS6の圧力値(チャージリリーフ圧(2MPa))
開固着発生:圧力センサPS4の圧力値(チャージリリーフ圧(2MPa))=圧力センサPS6の圧力値(チャージリリーフ圧(2MPa))
よって圧力センサPS4,PS6の圧力値でアームシリンダ低圧側と接続しているポペットV1dが正常に閉弁した状態と開固着状態の判定はできない。
【0039】
ポペットV1dが開固着すると、ポンプP1は、流路202,204aを介してアームシリンダ3のボトム側と接続される。この状態から、ブームレバーL2のみを操作し、アームレバーL1は中立状態にすると、コントローラ14はブームレバーL2の操作量を検出して、ポンプP1へ吐出流量指令を出力し、電磁弁E1へ励磁指令を出力する。
【0040】
電磁弁E1が励磁指令を受信すると、ポペットV1a,V1bのバネ室がタンク43と接続され、ポペットV1a,V1bが開弁する。するとブームシリンダ1は、流路201a,202a、および流路201,202を介してポンプP1と接続される。ここでポペットV1dが開固着しているので、ブームシリンダ1のボトム側は、流路202a,203aを介してアームシリンダ3のボトム側と接続される。
【0041】
ポンプP1はコントローラ14より出力された吐出流量指令を受信し、ブームレバーL2の操作量に応じて作動油を吐出する。すると、操作者がブームレバーL2のみを操作しているにもかかわらず、ブームシリンダ1とアームシリンダ3が駆動し、ブーム2とアーム4が動作するといった、操作者の意図しない動作が発生する。
【実施例1】
【0042】
本発明の第1の実施例について、
図2~
図6を用いて説明する。
【0043】
(圧力センサ)
図2において、アクチュエータ側の流路201a~204aには圧力センサPS1~PS4が設けられ、ポンプ側の流路201~204にはPS5~PS8が設けられている。また圧力センサPS1~PS4,PS5~PS8は信号線を介してコントローラ14に接続されており、圧力情報をコントローラ14に出力する。コントローラ14には、信号線を介して報知装置15が接続されている。報知装置15は、操作者に機体の情報を通知するためのものであり、モニタやスピーカー等で構成される。
【0044】
(コントローラ)
図3は、本実施例に係るコントローラ14の機能ブロック図である。
【0045】
図3において、コントローラ14は、レバー操作量検出部14aと、ポンプ指令演算部14bと、開固着判定部14cと、電磁弁指令部14dとを備えている。以下、各部の詳細を説明する。
【0046】
<レバー操作量検出部14a>
レバー操作量検出部14aはアームレバーL1、ブームレバーL2から操作量信号を受信し、各レバー操作量をポンプ指令演算部14bへ出力する。またアームレバーL1、ブームレバーL2が中立か否かを判定し、判定結果(例えば、中立でない場合は0、中立の場合は1)をポンプ指令演算部14bおよび電磁弁指令部14dへ出力する。
【0047】
<ポンプ指令演算部14b>
ポンプ指令演算部14bは、レバー操作量検出部14aから受信したレバー操作量に応じて、吐出流量指令をポンプレギュレータ21,22へ出力する。またレバー操作量検出部14aから受信した中立判定結果に応じて、開固着判定開始・終了指令を開固着判定部14cへ出力する。
【0048】
<開固着判定部14c>
開固着判定部14cは、ポンプ指令演算部14bから開固着判定開始・終了指令を受信し、圧力センサPS1~PS8から圧力情報に基づいて、切換弁37~40内のポペットV1a~V1d,V2a~V2dに対して開固着判定を行い、判定結果を報知装置15へ出力する。
【0049】
<電磁弁指令部14d>
電磁弁指令部14dは、14aから中立判定結果を受信し、それに基づいて電磁弁E1~E4に励磁・非励磁指令を出力する。具体的には、アームレバーL1の中立判定結果が1(中立)の場合は、電磁弁E2,E4へ非励磁指令(閉弁指令)を出力する。これにより、ポペットV1c,V1d,V2c,V2dのバネ室が圧力源44に接続され、ポペットV1c,V1d,V2c,V2dが開弁する。中立判定結果が0(非中立)の場合は、電磁弁E2,E4へ励磁指令(開弁指令)を出力する。これにより、ポペットV1c,V1d,V2c,V2dのバネ室がタンク43に接続され、ポペットV1c,V1d,V2c,V2dが閉弁する。
【0050】
ブームレバーL2についても同様に、中立判定結果が1(中立)の場合は、電磁弁E1,E3へ非励磁指令(閉弁指令)を出力する。これにより、ポペットV1a,V1b,V2a,V2bのバネ室が圧力源44に接続され、ポペットV1a,V1b,V2a,V2bが開弁する。中立判定結果が0(非中立)の場合は、電磁弁E1,E3へ励磁指令(開弁指令)を出力する。これにより、ポペットV1a,V1b,V2a,V2bのバネ室がタンク43に接続され、ポペットV1a,V1b,V2a,V2bが閉弁する。
【0051】
(ポンプ指令演算部14bの処理)
図4は、ポンプ指令演算部14bの処理を示すフローチャートである。以下、各処理を順に説明する。
【0052】
処理q1で、レバー操作量検出部14aからレバー操作量を受信する。
【0053】
処理q2で、レバー操作量に応じた吐出流量指令をポンプレギュレータ21,22へ出力する。
【0054】
処理q3で、アームレバーL1、ブームレバーL2が中立か否かを判定する。中立の場合は処理q4へ進み、中立でない場合は開始へ戻る。
【0055】
処理q4で、ポンプ番号i=1とする。
【0056】
処理q5で、ポペットVia,Vic側の開固着判定開始指令を出力する。
【0057】
処理q6で、ポンプPiの吐出方向をポペットVia,Vic側へ切り換え、設定時間taの間この状態を維持する。
【0058】
処理q7で、ポペットVia,Vic側の開固着判定終了指令を出力する。
【0059】
処理q8で、ポペットVib,Vid側の開固着判定開始指令を出力する。
【0060】
処理q9で、ポンプPiの吐出方向をポペットVib,Vid側へ切り換え、設定時間taの間この状態を維持する。
【0061】
処理q10で、ポペットVib,Vid側の開固着判定終了指令を出力する。
【0062】
処理q11で、ポンプ番号iがポンプ数Npと等しいか否かを判定する。i≠Npの場合は処理q12へ進み、i=Npの場合は開始へ戻る。
【0063】
処理q12、でポンプ番号iに1を加算し、処理q5に戻る。
【0064】
(開固着判定部14cの処理)
図5は、開固着判定部14cの処理を示すフローチャートである。以下、各処理を順に説明する。
【0065】
処理r1で、ポンプ指令演算部14bからポペットVia,Vic側の開固着判定開始指令を受信したか否かを判定する。受信した場合は処理r2へ進み、受信していない場合は処理r1に戻る。
【0066】
処理r2で、ポペットVia,Vic側のポンプ吐出圧とチャージリリーフ圧とを比較する。ポンプ吐出圧≦チャージリリーフ圧の場合は処理r3へ進み、ポンプ吐出圧>チャージリリーフ圧の場合は処理r4へ進む。
【0067】
処理r3で、ポペットVia,Vic側の開固着通知を行い、処理r4へ進む。
【0068】
処理r4で、ポンプ指令演算部14bからポペットVia,Vic側の開固着判定終了指令を受信したか否かを判定する。受信した場合は処理r5へ進み、受信していない場合は処理r2に戻る。
【0069】
処理r5で、ポンプ指令演算部14bからポペットVib,Vid側の開固着判定開始指令を受信したか否かを判定する。受信した場合は処理r6へ進み、受信していない場合は処理r5に戻る。
【0070】
処理r6で、ポペットVib,Vid側のポンプ吐出圧とチャージリリーフ圧とを比較する。ポンプ吐出圧≦チャージリリーフ圧の場合は処理r7へ進み、ポンプ吐出圧>チャージリリーフ圧の場合は処理r8へ進む。
【0071】
処理r8で、ポペットVib,Vid側の開固着通知を行い、処理r8へ進む。
【0072】
処理r8で、ポンプ指令演算部14bからポペットVia,Vic側の開固着判定終了指令を受信したか否かを判定する。受信した場合は開始へ戻り、受信していない場合は処理r6に戻る。
【0073】
<動作例>
本実施例に係る油圧ショベル100の動作例として、アームシリンダ3のボトム側が低圧側で、かつポンプP1をアームシリンダ3に接続する切換弁38のポペットV1dが開固着した場合の動作を説明する。
【0074】
操作者がアームレバーL1を操作状態から中立状態に戻し、ブームレバーL2は中立状態であるとする。レバー操作量検出部14aはアームレバーL1とブームレバーL2の操作量を検出し、検出値を電磁弁指令部14dとポンプ指令演算部14bへ出力する。アームレバーL1が中立なので、電磁弁指令部14dは電磁弁E2,E4へ非励磁指令を出力する。非励磁指令を受信した電磁弁E2,E4は、ポペットV1c,V1d,V2c,V2dのバネ室を圧力源44に接続することにより、ポペットV1c,V1d,V2c,V2dを閉弁させる。ブームレバーL2も中立なので、電磁弁指令部14dは電磁弁E1,E3へ非励磁指令を出力する。非励磁指令を受信した電磁弁E1,E3は、ポペットV1a,V1b,V2a,V2bのバネ室を圧力源44に接続することにより、ポペットV1a,V1b,V2a,V2bを閉弁させる。ポンプ指令演算部14bがアームレバーL1とブームレバーL2の操作量を受信する。アームレバーL1が中立なので、ポンプPiはポンプ指令演算部14bからの吐出流量指令に従って、ポペットV1a,V1c側およびポペットV1b,V1d側へ作動油を吐出する(処理q6および処理q9)。
【0075】
閉回路ポンプP1はアームレバーL1が中立になった場合に、ポンプ指令演算部14bから出力される吐出流量指令に従い、吐出を停止する。このときポペットV1dが開固着したものとする。電磁弁指令部14dは、電磁弁E1~E4へ非励磁指令を出力する。非励磁指令を受信した電磁弁E1~E4は、ポペットV1a~1d,V2a~dのバネ室を圧力源44に接続することにより、ポペットV1a~V1d,V2a~V2dを閉弁させる。
【0076】
しかし、ポペットV1dが開固着したことで、アームシリンダ3のボトム側は、流路204a、ポペットV1b、および流路202を介してポンプP1に接続される。
【0077】
操作者がアームレバーL1を操作状態から中立状態に戻し、ブームレバーL2を中立状態のままにする。レバー操作量検出部14aはアームレバーL1とブームレバーL2の操作量を受信する。アームレバーL1とブームレバーL2の操作量を検出後、検出値を電磁弁指令部14dとポンプ指令演算部14bへ出力する。
【0078】
電磁弁指令部14dは、アームレバーL1とブームレバーL2が中立の場合、電磁弁E1~4へ非励磁指令を出力する。
【0079】
ポンプ指令演算部14bは、処理q1でアームレバーL1、ブームレバーL2の操作量を受信し、処理q2でポンプレギュレータ21,22へ吐出流量指令を出力し、処理q3でアームレバーL1、ブームレバーL2が中立か否かを判定する。ここではアームレバーL1、ブームレバーL2ともに中立なので、処理q4へ進む。処理q4では開固着判定に使うポンプ番号iのカウントが1から始まる。次に処理q5にてポペットVia,Vic側の開固着判定開始指令を出力した後、処理q6にてポンプP1の吐出方向をV1a,V1c側へ切り換え、設定時間taの間この状態を維持する。
【0080】
開固着判定部14cは、処理r1でポペットVia,Vic側の開固着判定開始指令を受信した後、処理r2でポペットVia,Vic側へ作動油を吐出した際に発生するポンプ吐出圧とチャージリリーフ圧とを比較する。
【0081】
ポペットVia,Vicは閉弁しているので、ポンプ吐出圧>チャージリリーフ圧となり、処理r4でポペットVia,Vic側の開固着判定終了指令を受信した後に、処理r5へ進む。
【0082】
ポンプ指令演算部14bは、処理q7でポペットVia,Vic側の開固着判定終了指令を出力し、処理q8でポペットVia,Vid側の開固着判定開始指令を出力する。続く処理q9でポンプP1の吐出方向をポペットV1b,V1d側へ切り換え、設定時間taの間この状態を維持する。設定時間taが経過後、処理q10でポペットVib,Vid側の開固着判定開始指令を出力する。続く処理q11でポンプ番号i≠ポンプ数(2)と判定し、処理q12でポンプ番号iに1を加算した後、処理q5に戻る。以後、ポンプP2についても同様の処理が行われる。
【0083】
開固着判定部14cは、処理r5でポペットVib,Vid側の開固着判定終了指令を受信した後、処理r6でポペットV1b,V1d側のポンプ吐出圧とチャージリリーフ圧とを比較する。ポペットV1dが開固着しているので、ポンプ吐出圧≦チャージリリーフ圧となり、処理r7で開固着通知を行う。
【0084】
このように本実施例では、ポペットVib,Vid側の開固着判定時にポンプP1がポペットV1b,V1d側に作動油を吐出する。ポペットV1dが正常に閉弁すると、吐出された作動油はポペットV1dで遮断されるため、ポンプ吐出側の圧力が上昇する。一方でポペットV1dが開固着すると、ポンプP1から吐出された作動油は開固着したポペットV1d、流路204a、フラッシング弁46bを経由してチャージ流路200へ流れるため、ポンプP1の吐出圧はチャージリリーフ圧(2MPa)と等しくなる。
【0085】
すなわち、ポペットV1dが正常に閉弁した場合と開固着した場合の、圧力センサPS3,PS6の計測値の大小関係は、以下のようになる。
【0086】
正常に閉弁:圧力センサPS4の圧力値(チャージリリーフ圧(2MPa))<圧力センサPS6の圧力値(メインリリーフ圧(35MPa))
開固着発生:圧力センサPS4の圧力値(チャージリリーフ圧(2MPa))=圧力センサPS6の圧力値(チャージリリーフ圧(2MPa))
以上の通り、圧力センサPS4,PS6の圧力値の大小関係は、正常に閉弁した場合と開固着が発生した場合とで変化するため、アームシリンダ低圧側と接続しているポペットV1dが正常に閉弁した状態と開固着状態の判定ができる。
【0087】
本実施例では、双方向吐出型の油圧ポンプP1(P2)と、複数のアクチュエータ1,3と、油圧ポンプP1(P2)を複数のアクチュエータ1,3のいずれか1つに選択的に接続して閉回路を形成する複数の切換弁37,38(39,40)と、前記閉回路に作動油を補充するチャージ流路200と、前記閉回路の低圧側からチャージ流路200に余剰な作動油を排出するフラッシング弁46a,46bと、複数のアクチュエータ1,3の動作を指示する操作レバーL1,L2と、操作レバーL1,L2の操作量に基づいて、複数の切換弁37,38(39,40)に開弁指令または閉弁指令を出力しかつ油圧ポンプP1(P2)に吐出流量指令を出力するコントローラ14と、コントローラ14から入力された情報を出力する報知装置15とを備えた油圧ショベル100において、油圧ポンプP1(P2)の吐出圧を計測する圧力センサPS5,PS6(PS7,PS8)を備え、コントローラ14は、複数の切換弁37,38(39,40)の全てに閉弁指令を出力している状態で、油圧ポンプP1(P2)が一定時間作動油を吐出するように吐出流量指令を出力し、その間に圧力センサPS5,PS6(PS7,PS8)で計測された油圧ポンプP1(P2)の吐出圧に基づいて、複数の切換弁37,38(39,40)のいずれかが開固着しているか否かを判定し、判定結果を報知装置15に出力する。
【0088】
また、本実施例に係る油圧ショベル100は、チャージ流路200に作動油を供給するチャージポンプ41と、チャージ流路200の最大圧を規定するチャージリリーフ弁42とを更に備え、コントローラ14は、複数の切換弁37,38(39,40)の全てに閉弁指令を出力している状態で、油圧ポンプP1(P2)から作動油を一定時間吐出し、その間に圧力センサPS5,PS6(PS7,PS8)で計測した油圧ポンプP1(P2)の吐出圧がチャージリリーフ弁42の設定圧以下となった場合に、複数の切換弁37,38(39,40)のいずれかが開固着していると判定する。
【0089】
以上のように構成した本実施例によれば、複数の切換弁37,38(39,40)の全てに閉弁指令が出力されている状態で、油圧ポンプP1(P2)から一定時間作動油が吐出され、その間に圧力センサPS5,PS6(PS7,PS8)で計測された油圧ポンプP1(P2)の吐出圧に基づいて、複数の切換弁37,38(39,40)のいずれかが開固着しているか否かが判定され、判定結果が報知装置15に出力される。これにより、アクチュエータ1,3の低圧側に接続されているポペットの開固着を操作者が認知することができるため、意図しないアクチュエータ動作を抑制することが可能となる。
【実施例2】
【0090】
本発明の第2の実施例に係る油圧ショベル100について、
図6~
図8を用いて説明する。
【0091】
図6は、本実施例に係るコントローラ14の機能ブロック図である。
【0092】
図6において、コントローラ14は、レバー操作量検出部14aと、ポンプ指令演算部14bと、開固着判定部14cと、電磁弁指令部14dと、ポンプ接続先記憶部14eと、アクチュエータ選択部14fと、アクチュエータ低圧側選択部14gとを備えている。以下、各部の詳細を説明する。
【0093】
<ポンプ接続先記憶部14e>
ポンプ接続先記憶部14eは、ポンプP1,P2とアクチュエータの接続履歴を記憶し、アクチュエータ選択部14fへ出力する。
【0094】
<レバー操作量検出部14a>
レバー操作量検出部14aはアームレバーL1、ブームレバーL2から操作量信号を受信し、各レバー操作量をポンプ指令演算部14bへ出力する。またアームレバーL1、ブームレバーL2が中立か否かを判定し、判定結果(例えば、非中立でない場合は0、中立の場合は1)をポンプ指令演算部14b、電磁弁指令部14d、およびアクチュエータ選択部14fへ出力する。
【0095】
<アクチュエータ選択部14f>
アクチュエータ選択部14fは、レバー操作量検出部14aから中立判定結果を受信し、ポンプ接続先記憶部14eから接続情報を受信する。アクチュエータ選択部14fは、中立判定結果が0(非中立)の場合は、ポンプ接続先記憶部14eから受信した接続履歴を参照しない。中立判定結果が1(中立)の場合は、ポンプ接続先記憶部14eから受信したアクチュエータ接続履歴に基づいて、レバーL1,L2が中立になる直前に接続されていたアクチュエータを選択し、選択結果をアクチュエータ低圧側選択部14gへ出力する。
【0096】
<アクチュエータ低圧側選択部14g>
アクチュエータ低圧側選択部14gは、アクチュエータ選択部14fから選択結果を受信し、圧力センサPS1~PS8から圧力情報を受信する。アクチュエータ低圧側選択部14gは、ポンプPiの吐出側と接続されていたアクチュエータ吸込み側、およびポンプPiの吸込み側と接続されていたアクチュエータ吐出側のいずれか低圧側を選択し、選択結果をポンプ指令演算部14bへ出力する。
【0097】
<ポンプ指令演算部14b>
ポンプ指令演算部14bは、レバー操作量検出部14aからレバー操作量を受信し、レバー操作量に応じた吐出流量指令をポンプレギュレータ21,22へ出力する。またレバー操作量検出部14aから中立判定結果を受信し、開固着判定開始・終了指令を開固着判定部14cへ出力する。さらに、アクチュエータ低圧側選択部14gから選択結果を受信した場合は、アクチュエータ低圧側に吐出するように、吐出流量指令をポンプレギュレータ21,22へ出力する。
【0098】
<開固着判定部14c>
開固着判定部14cは、ポンプ指令演算部14bから開固着判定開始・終了指令を受信し、圧力センサPS1~PS8から受信した圧力情報に基づいて、切換弁37~40内のポペットV1a~V1d,V2a~V2dのうち、アクチュエータ低圧側のポペットに対してのみ開固着判定を行い、判定結果を報知装置15へ出力する。
【0099】
<電磁弁指令部14d>
電磁弁指令部14dについては、第1の実施例と同様であるため、説明は省略する。
【0100】
(ポンプ指令演算部14bの処理)
図7は、ポンプ指令演算部14bの処理を示すフローチャートである。以下、各処理を順に説明する。
【0101】
処理s1で、レバー操作量検出部14aからレバー操作量を受信する。
【0102】
処理s2で、レバー操作量に応じた吐出流量指令をポンプレギュレータ21,22へ出力する。
【0103】
処理s3で、アームレバーL1、ブームレバーL2が中立か否かを判定する。中立の場合は処理s4へ進み、中立でない場合は開始へ戻る。
【0104】
処理s4で、ポンプ番号i=1とする。
【0105】
処理s5で、ポンプPiの吐出側と接続されていたアクチュエータ吸込側の圧力Pdと、ポンプPiの吸込側と接続されていたアクチュエータ吐出側圧力Poを圧力センサPS1~PS8より受信する。
【0106】
処理s6で、開固着判定開始指令を開固着判定部14cへ出力する。
【0107】
処理s7で、圧力Pdと圧力Poとを比較する。Po≦Pdの場合は処理s8へ進み、Po>Pdの場合は処理s9へ進む。
【0108】
処理s8で、アームレバーL1、ブームレバーL2が中立になる直前にポンプPiの吸入側と繋がっていたアクチュエータの吐出側へ作動油を吐出する。
【0109】
処理s9で、アームレバーL1、ブームレバーL2が中立になる直前にポンプPiの吐出側と繋がっていたアクチュエータの吸込側へ作動油を吐出する。
【0110】
処理s10で、開固着判定終了指令を開固着判定部14cへ出力する。
【0111】
処理s11で、ポンプ番号iがポンプ数Npと等しいか否かを判定する。i≠Npの場合は処理s12へ進み、i=Npの場合は開始へ戻る。
【0112】
処理s12でポンプ番号iに1を加算し、処理s5に戻る。
【0113】
(開固着判定部14cの処理)
図8は、開固着判定部14cの処理を示すフローチャートである。以下、各処理を順に説明する。
【0114】
処理t1で、ポンプ指令演算部14bから開固着判定開始指令を受信したか否かを判定する。受信した場合は処理t2へ進み、受信していない場合は開始へ戻る。
【0115】
処理t2で、ポンプ吐出圧とアクチュエータ低圧側圧力とを比較する。ポンプ吐出圧>アクチュエータ低圧側圧力の場合は開始へ戻り、ポンプ吐出圧≦アクチュエータ低圧側圧力の場合は処理t3へ進む。
【0116】
処理t3で、開固着通知を行う。
【0117】
処理t4で、ポンプ指令演算部14bから開固着判定終了指令を受信したか否かを判定する。受信した場合は開始へ戻り、受信していない場合は処理t2に戻る。
【0118】
<動作例>
本実施例に係る油圧ショベル100の動作例として、アームシリンダ3のボトム側が低圧側で、かつポンプP1をアームシリンダ3に接続する切換弁38のポペットV1dが開固着した場合の動作を説明する。
【0119】
操作者がアームレバーL1を操作状態から中立状態に戻し、ブームレバーL2は中立状態であるとする。レバー操作量検出部14aはアームレバーL1とブームレバーL2の操作量を検出し、検出値を電磁弁指令部14dとポンプ指令演算部14bへ出力する。アームレバーL1が中立なので、電磁弁指令部14dは電磁弁E2,E4へ非励磁指令を出力する。非励磁指令を受信した電磁弁E2,E4は、ポペットV1c,V1d,V2c,V2dのバネ室を圧力源44に接続することにより、ポペットV1c,V1d,V2c,V2dを閉弁させる。
【0120】
ブームレバーL2も中立なので、電磁弁指令部14dは電磁弁E1,E3へ非励磁指令を出力する。非励磁指令を受信した電磁弁E1,E3は、ポペットV1a,V1b,V2a,V2bのバネ室を圧力源44に接続することにより、ポペットV1a,V1b,V2a,V2bを閉弁させる。ポンプ指令演算部14bがアームレバーL1とブームレバーL2の操作量を受信する。アームレバーL1が中立なので、ポンプPiはポンプ指令演算部14bからの吐出流量指令に従って、アームレバーL1が中立になる直前にポンプPiと接続されていたアクチュエータの低圧側へ作動油を吐出する(処理s8または処理s9)。
【0121】
閉回路ポンプP1はアームレバーL1が中立になった場合に、ポンプ指令演算部14bから出力される吐出流量指令に従い、吐出を停止する。このときアームシリンダ3のボトム側が低圧で、かつポペットV1dが開固着したものとする。電磁弁指令部14dは電磁弁E1~E4へ非励磁指令を出力する。非励磁指令を受信した電磁弁E1~E4は、ポペットV1a~V1d,V2a~V2dのバネ室を圧力源44に接続することにより、ポペットV1a~V1d,V2a~V2dを閉弁させる。
【0122】
しかし、ポペットV1dが開固着したことで、アームシリンダ3のボトム側は、流路204a、ポペットV1b、および流路202を介してポンプP1に接続される。
【0123】
その後ポンプ指令演算部12bからの吐出流量指令に応じてポンプP1がアームシリンダ3のボトム側へ作動油を吐出し、開固着判定部14cでポンプPiの吐出圧とアクチュエータ低圧側の圧力が比較される。開固着判定部14cはポペットV1dの開固着を判定し、判定結果を報知装置15へ出力する。その後ポンプP2についても同様の処理が行われる。
【0124】
ポンプ接続先記憶部14eは、ポンプP1,P2がアクチュエータと接続されていた履歴(接続履歴)を記憶し、アクチュエータ選択部14fへ出力する。
【0125】
操作者がアームレバーL1を中立状態に戻し、ポンプ指令演算部14bが処理s3でポンプPiの中立状態を検出すると、中立判定結果(1)がアクチュエータ選択部14f、ポンプ指令演算部14b、および電磁弁指令部14dへ出力される。
【0126】
電磁弁指令部14dは、アームレバーL1が中立の場合、電磁弁E2,E4へ非励磁指令を出力する。
【0127】
アクチュエータ選択部14fは、レバー操作量検出部14aから中立判定結果(1)を受信し、ポンプ接続先記憶部14eから受信したアクチュエータ接続履歴に基づいて、アームレバーL1が中立になる直前にポンプP1が接続されていたアクチュエータとしてアームシリンダ3を選択し、選択結果をアクチュエータ低圧側選択部14gへ出力する。
【0128】
アクチュエータ低圧側選択部14gは、処理s5でポンプPiの吐出側と接続されていたアクチュエータ吸込み側の圧力Pdと、ポンプPiの吸込み側と接続されていたアクチュエータ吐出側圧力Poとを比較し、Pd<Poという結果をポンプ指令演算部14bへ出力する。
【0129】
ポンプ指令演算部14bは、処理s1でアームレバーL1、ブームレバーL2の操作量を受信し、処理s2でポンプレギュレータ21,22へ吐出流量指令を出力し、処理s3でアームレバーL1、ブームレバーL2が中立か否かを判定する。ここではアームレバーL1、ブームレバーL2ともに中立なので、処理s4へ進む。処理s4では開固着判定に使うポンプ番号iのカウントが1から始まる。次に処理s5でポンプPiの吐出側と接続されていたアームシリンダ3のロッド側圧力と、ポンプP1の吸込み側と接続されていたアームシリンダ3のボトム側圧力を受信し、処理s7で比較する。ここではボトム側圧力<ロッド側圧力と判定して、処理s8または処理s9でアームシリンダ3のボトム側へ作動油を吐出する。作動油の吐出は設定時間taの間行われる。設定時間taを経過後、処理s10で開固着判定開始指令を出力する。続く処理s11でポンプ番号i≠ポンプ数(2)と判定し、処理s12でポンプ番号iに1を加算した後、処理s5に戻る。以後、ポンプP2についても同様の処理が行われる。
【0130】
開固着判定部14cは、処理t1で開固着判定終了指令を受信した後、処理t2でポンプP1の吐出圧とアームシリンダ3のボトム側圧力(アクチュエータ低圧側圧力)とを比較する。ポペットV1dが開固着しているので、ポンプP1の吐出圧≦アクチュエータ低圧側圧力となり、処理t3で開固着通知を行う。
【0131】
本実施例では、コントローラ14は、操作レバーL1,L2が中立となったときに、複数のアクチュエータ1,3のうち操作レバーL1,L2が中立となる直前に油圧ポンプP1,P2が作動油を供給していた特定のアクチュエータを選択し、複数の切換弁37,38(39,40)の全てに閉弁指令を出力している状態で、油圧ポンプP1(P2)が一定時間特定のアクチュエータの低圧側に向けて作動油を吐出するように吐出流量指令を出力し、その間に圧力センサPS5,PS6(PS7,PS8)で検出した油圧ポンプP1(P2)の吐出圧に基づいて、複数の切換弁37,38(39,40)のいずれかが開固着していると判定する。
【0132】
以上のように構成した本実施例によれば、第1の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0133】
第1の実施例では、ポンプPiがポペットVia,Vic側とポペットVib,Vid側の双方向へ吐出し、ポンプPiに接続されるポペットVia,VicとポペットVib,Vidのいずれかにおいて開固着が発生していると判定する。これに対し本実施例では、操作レバーL1,L2が中立となる直前にポンプが接続していたアクチュエータの低圧側に向けてのみ作動油を吐出することで、開固着の発生を迅速に検出することができる。
【0134】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0135】
1…ブームシリンダ(アクチュエータ)、1a…シリンダヘッド、1b…シリンダロッド、2…ブーム、3…アームシリンダ(アクチュエータ)、3a…シリンダヘッド、3b…シリンダロッド、4…アーム、5…バケットシリンダ(アクチュエータ)、5a…シリンダヘッド、5b…シリンダロッド、6…バケット、7…旋回油圧モータ、8a,8b…走行装置、14…コントローラ、14a…レバー操作量検出部、14b…ポンプ指令演算部、14c…開固着判定部、14d…電磁弁指令部、14e…ポンプ接続先記憶部、14f…アクチュエータ選択部、14g…アクチュエータ低圧側選択部、15…報知装置、21,22…ポンプレギュレータ、31…ポンプリリーフ弁、32…オーバーロードリリーフ弁、33…チェック弁、41…チャージポンプ、42…チャージリリーフ弁、43…タンク、44…圧力源、46a…フラッシング弁、46b…フラッシング弁、100…油圧ショベル(建設機械)、101…キャブ、102…上部旋回体、103…フロント作業機、104…下部走行体、200…チャージ流路、201~204…流路(閉回路)、201a~204a…流路(閉回路)、E1~E4…電磁弁、L1…アームレバー(操作レバー)、L2…ブームレバー(操作レバー)、P1,P2…閉回路ポンプ(油圧ポンプ)、PS1~PS8…圧力センサ、V1a~V1d…ポペット、V2a~V2d…ポペット。