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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】自動走行システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220927BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220927BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
G08G1/00 X
B60R16/02 645C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019047447
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020147205
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】疋田 康貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔一
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 愼右
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-287380(JP,A)
【文献】特開2018-161085(JP,A)
【文献】特開2017-013695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
A01B 69/00 - 69/08
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
業車両の位置情報を取得する測位ユニットに電力供給用のバッテリから通電する通電経路が備えられ、
前記通電経路は、第1スイッチを介して前記バッテリから前記測位ユニットを含む電装品へ通電可能な第1通電経路と、第1スイッチとは異なる第2スイッチを介して前記バッテリから少なくとも前記測位ユニットへ通電可能な第2通電経路とを含み、
前記第1スイッチがON状態である場合には、前記第1通電経路及び前記第2通電経路の何れでも、前記バッテリから前記測位ユニットへの通電を行い、
前記第1スイッチがOFF状態である場合には、ON状態の前記第2スイッチを介して前記第2通電経路により前記バッテリから前記測位ユニットへの通電を行うように構成されている自動走行システム。
【請求項2】
前記第2スイッチは、前記第1スイッチがOFF状態となってから所定時間経過後にOFF状態となり、前記第2通電経路による前記バッテリから前記測位ユニットへの通電を停止させる請求項1に記載の自動走行システム。
【請求項3】
前記第1スイッチがOFF状態となってから前記所定時間を計測して、前記所定時間経過後に前記第2スイッチをOFF状態にさせるタイマーユニットが備えられ、
前記第1スイッチがON状態である場合には、前記第1通電経路及び前記第2通電経路の何れでも、前記バッテリから前記タイマーユニットへの通電を行い、
前記第1スイッチがOFF状態である場合には、ON状態の前記第2スイッチを介して前記第2通電経路により前記バッテリから前記タイマーユニットへの通電を行うように構成されている請求項2に記載の自動走行システム。
【請求項4】
前記第2スイッチは、所定の操作具への操作に基づいてOFF状態となり、前記第2通電経路による前記バッテリから前記測位ユニットへの通電を停止させる請求項1~3の何れか1項に記載の自動走行システム。
【請求項5】
作業車両の位置情報を取得するための補正情報を通信する補正情報通信機器が備えられ、
前記第1スイッチがON状態である場合には、前記第1通電経路及び前記第2通電経路の何れでも、前記バッテリから前記補正情報通信機器への通電を行い、
前記第1スイッチがOFF状態である場合には、ON状態の前記第2スイッチを介して前記第2通電経路により前記バッテリから前記補正情報通信機器への通電を行うように構成されている請求項1~4の何れか1項に記載の自動走行システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の自動走行システムは、衛星測位システム等を用いて作業車両の位置情報を取得する測位ユニットが備えられ、その測位ユニットにて取得した作業車両の位置情報に基づいて、予め生成した目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
作業車両の自動走行を開始する場合には、測位ユニットに含まれる慣性計測装置等の各種の機器を初期化したり、測位衛星からの電波の受信状況等を調整する等の調整作業を行っている。よって、自動走行にて作業を行う場合には、調整作業を行った上で、測位ユニットにて取得した作業車両の位置情報に基づいて、目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-127208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測位ユニットに対しては、作業車両に搭載されるバッテリから電力が供給されている。従来、測位ユニットへの電力供給は、作業車両のキースイッチの状態に応じて切り替えられており、キースイッチがON状態になると、バッテリから測位ユニットへ電力が供給され、キースイッチがOFF状態になると、バッテリから測位ユニットへの電力供給が遮断される。
【0006】
自動走行での作業中に、例えば、一時的な休憩等により、キースイッチをON状態からOFF状態に切り替えると、そのキースイッチの切替に伴って、バッテリから測位ユニットへの電力供給が遮断されることになる。よって、作業を再開するためには、測位ユニットに含まれる慣性計測装置等の各種の機器を初期化したり、測位衛星からの電波の受信状況等を調整する等の調整作業を、再度、行わなければならず、作業を再開できるまでに時間を要するとともに、作業手間もかかることになる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業途中等に作業を中断した場合でも、作業の再開をスムーズに行うことができ、作業効率の向上を図ることができる自動走行システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、電力供給用のバッテリと、衛星測位システムを用いて作業車両の位置情報を取得する測位ユニットと、前記バッテリから前記測位ユニットに通電する通電経路とが備えられ、
前記通電経路は、第1スイッチを介して前記バッテリから前記測位ユニットを含む電装品へ通電可能な第1通電経路と、第1スイッチとは異なる第2スイッチを介して少なくとも前記バッテリから前記測位ユニットへ通電可能な第2通電経路とを含み、
前記第1スイッチがON状態である場合には、前記第1通電経路及び前記第2通電経路の何れでも、前記バッテリから前記測位ユニットへの通電を行い、
前記第1スイッチがOFF状態である場合には、ON状態の前記第2スイッチを介して前記第2通電経路により前記バッテリから前記測位ユニットへの通電を行うように構成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、作業車両を自動走行させて作業を行う場合には、第1スイッチをON状態に切り替えることで、第1通電経路及び第2通電経路の何れでも、バッテリから測位ユニットへの通電を行うので、測位ユニットが作業車両の位置情報を適切に取得することができる。よって、作業車両を自動走行させて、作業を適切に行うことができる。
【0010】
例えば、一時的な休憩等により作業を中断する場合には、第1スイッチをOFF状態に切り替えても、ON状態の第2スイッチを介して第2通電経路によりバッテリから測位ユニットへの通電を行うことができる。これにより、測位ユニットにて作業車両の位置情報を取得できる状態を保持することができるので、作業を再開する場合に、調整作業を行わなくても、作業をスムーズに再開することができ、作業効率の向上を図ることができる。しかも、第2スイッチが常時ON状態であるので、第2スイッチがON状態とOFF状態との切り替えが繰り返されることなく、第2スイッチの磨耗や劣化が生じるのを防止でき、耐久性の面で良好なものとなる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記第2スイッチは、前記第1スイッチがOFF状態となってから所定時間経過後にOFF状態となり、前記第2通電経路による前記バッテリから前記測位ユニットへの通電を停止させる点にある。
【0012】
第1スイッチがOFF状態である場合でも、ON状態の第2スイッチを介して第2通電経路によりバッテリから測位ユニットへの通電を行うことができるが、例えば、作業が終了した場合でも、第2通電経路によるバッテリから測位ユニットへの通電をそのまま継続してしまうと、バッテリの電力を無駄に消費してしまう。そこで、本構成によれば、第1スイッチがOFF状態となってから所定時間経過後に第2スイッチがOFF状態となることで、第2通電経路によるバッテリから測位ユニットへの通電を停止させて、バッテリの電力を無駄に消費することなく、バッテリがあがってしまうのを防止することができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、前記第1スイッチがOFF状態となってから前記所定時間を計測して、前記所定時間経過後に前記第2スイッチをOFF状態にさせるタイマーユニットが備えられ、
前記第1スイッチがON状態である場合には、前記第1通電経路及び前記第2通電経路の何れでも、前記バッテリから前記タイマーユニットへの通電を行い、
前記第1スイッチがOFF状態である場合には、ON状態の前記第2スイッチを介して前記第2通電経路により前記バッテリから前記タイマーユニットへの通電を行うように構成されている点にある。
【0014】
本構成によれば、タイマーユニットを備えることで、第1スイッチがOFF状態となってから所定時間経過したか否かを正確に把握することができ、第1スイッチがOFF状態となってから所定時間経過後に適切に第2スイッチをOFF状態に切り替えることができる。しかも、第1スイッチがOFF状態であっても、第2通電経路によりバッテリからタイマーユニットへの通電を行うので、第1スイッチがOFF状態である場合でも、タイマーユニットによる動作を適切に行うことができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記第2スイッチは、所定の操作具への操作に基づいてOFF状態となり、前記第2通電経路による前記バッテリから前記測位ユニットへの通電を停止させる点にある。
【0016】
本構成によれば、作業が終了した場合や作業対象の作業領域から離れた場合等、測位ユニットへの通電をいち早く停止させたい場合には、ユーザ等が所定の操作具への操作を行うことで、第2スイッチをOFF状態として、第2通電経路によるバッテリから測位ユニットへの通電を停止させることができる。これにより、ユーザ等の使い勝手を向上しながら、バッテリから測位ユニットへの無駄な通電を防止することができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、作業車両の位置情報を取得するための補正情報を通信する補正情報通信機器が備えられ、
前記第1スイッチがON状態である場合には、前記第1通電経路及び前記第2通電経路の何れでも、前記バッテリから前記補正情報通信機器への通電を行い、
前記第1スイッチがOFF状態である場合には、ON状態の前記第2スイッチを介して前記第2通電経路により前記バッテリから前記補正情報通信機器への通電を行うように構成されている点にある。
【0018】
本構成によれば、補正情報通信機器を備えることで、測位ユニットは、補正情報を加味した状態で作業車両の位置情報を取得することができ、高精度の作業車両の位置情報を取得することができる。しかも、第1スイッチがOFF状態である場合でも、ON状態の第2スイッチを介して第2通電経路によりバッテリから補正情報通信機器への通電を行うので、高精度の作業車両の位置情報を取得できる状態を保持することができる。よって、作業途中で作業を中断した場合でも、作業を再開する当初から高精度の作業車両の位置情報を取得でき、作業車両の自動走行を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】自動走行システムの概略構成を示す図
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図3】目標走行経路を生成した状態における作業領域を示す図
図4】バッテリから測位ユニットへの通電回路を示す図
図5】バッテリから測位ユニットへの通電回路を示す図
図6】バッテリから測位ユニットへの通電回路を示す図
図7】バッテリから測位ユニットへの通電回路における動作を示すフローチャート
図8】第2実施形態におけるバッテリから測位ユニットへの通電回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る自動走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
この自動走行システムは、図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両に適用することができる。
【0021】
この自動走行システムは、図1及び図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能なタッチパネル式の表示部51(例えば、液晶パネル)等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
【0022】
トラクタ1は、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪5、及び、駆動可能な左右の後輪6を有する走行機体7が備えられている。走行機体7の前方側には、ボンネット8が配置され、ボンネット8内には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)9が備えられている。走行機体7のボンネット8よりも後方側には、搭乗式の運転部を形成するキャビン10が備えられている。
【0023】
走行機体7の後部には、3点リンク機構11を介して、作業装置12の一例であるロータリ耕耘装置を昇降可能かつローリング可能に連結することができる。トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置に代えて、モア、プラウ、播種装置、散布装置等の各種の作業装置12を連結することができる。
【0024】
トラクタ1には、図2に示すように、エンジン9からの動力を変速する電子制御式の変速装置13、左右の前輪5を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構14、左右の後輪6を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構15、ロータリ耕耘装置等の作業装置12への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構16、ロータリ耕耘装置等の作業装置12を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構17、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット18、トラクタ1の車速を検出する車速センサ19、前輪5の操舵角を検出する舵角センサ20、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット21等が備えられている。
【0025】
なお、エンジン9には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置13には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、又は、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構14には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構14等を採用してもよい。
【0026】
キャビン10の内部には、図1に示すように、パワーステアリング機構14(図2参照)を介した左右の前輪5の手動操舵を可能にするステアリングホイール38、搭乗者用の運転席39、タッチパネル式の表示部、及び、各種の操作具等が備えられている。
【0027】
図2に示すように、車載電子制御ユニット18は、変速装置13の作動を制御する変速制御部181、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部182、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を制御する作業装置制御部183、自動走行時に左右の前輪5の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構14に出力する操舵角設定部184、及び、予め生成された自動走行用の目標走行経路P(例えば、図3参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部185等を有している。
【0028】
図2に示すように、測位ユニット21には、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、図1及び図2に示すように、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局4が設置されている。
【0029】
トラクタ1と基準局4との夫々には、図2に示すように、測位衛星71(図1参照)から送信された電波を受信する測位アンテナ24,61、及び、トラクタ1と基準局4との間における測位情報(補正情報)を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール25,62等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側の測位アンテナ24が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側の測位アンテナ61が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報(トラクタ1の現在位置を測定するための補正情報)とに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット21は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0030】
トラクタ1に備えられる測位アンテナ24、通信モジュール25、及び、慣性計測装置23は、図1に示すように、アンテナユニット80に収納されている。アンテナユニット80は、キャビン10の前面側の上部位置に配置されている。
【0031】
図2に示すように、携帯通信端末3には、表示部51等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット52、及び、トラクタ側の通信モジュール25との間における測位情報を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール53等が備えられている。端末電子制御ユニット52は、トラクタ1を自動走行させるための目標走行経路P(例えば、図3参照)を生成する走行経路生成部54、及び、ユーザが入力した各種の入力情報や走行経路生成部54が生成した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部55等を有している。
【0032】
走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成するに当たり、携帯通信端末3の表示部51に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、運転者や管理者等のユーザ等が作業車両の機種及び作業装置12の種類や作業幅等の車体情報を入力しており、入力された車体情報が端末記憶部55に記憶されている。目標走行経路Pの生成対象となる走行領域S(図3参照)を圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット52は、圃場の形状や位置を含む圃場情報を取得して端末記憶部55に記憶している。
【0033】
圃場情報の取得について説明すると、ユーザ等が運転してトラクタ1を実際に走行させることで、端末電子制御ユニット52は、測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置等から圃場の形状や位置等を特定するための位置情報を取得することができる。端末電子制御ユニット52は、取得した位置情報から圃場の形状及び位置を特定し、その特定した圃場の形状及び位置から特定した走行領域Sを含む圃場情報を取得している。図3では、矩形状の走行領域Sが特定された例を示している。
【0034】
特定された圃場の形状や位置等を含む圃場情報が端末記憶部55に記憶されると、走行経路生成部54は、端末記憶部55に記憶されている圃場情報や車体情報を用いて、目標走行経路Pを生成する。
【0035】
図3に示すように、走行経路生成部54は、走行領域S内を中央領域R1と外周領域R2とに区分け設定している。中央領域R1は、走行領域Sの中央部に設定されており、トラクタ1を往復方向に自動走行させて所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行う往復作業領域となっている。外周領域R2は、中央領域R1の周囲に設定されている。走行経路生成部54は、例えば、車体情報に含まれる旋回半径やトラクタ1の前後幅及び左右幅等から、トラクタ1を圃場の畔際で旋回走行させるために必要となる旋回走行用のスペース等を求めている。走行経路生成部54は、中央領域R1の外周に求めたスペース等を確保するように、走行領域S内を中央領域R1と外周領域R2とに区分けしている。
【0036】
走行経路生成部54は、図3に示すように、車体情報や圃場情報等を用いて、目標走行経路Pを生成している。例えば、目標走行経路Pは、中央領域R1において同じ直進距離を有して作業幅に対応する一定距離をあけて平行に配置設定された直線状の複数の作業経路P1とを有している。複数の作業経路P1は、トラクタ1を直進走行させながら、所定の作業を行うための経路である。連結経路P2は、所定の作業を行わずに、トラクタ1の走行方向を180度転換させるためのUターン経路であり、作業経路P1の終端と隣接する次の作業経路P1の始端とを連結している。
【0037】
ちなみに、図3に示す目標走行経路Pは、あくまで一例であり、どのような目標走行経路を設定するかは適宜変更が可能である。例えば、走行経路生成部54は、連結経路P2を生成せずに、作業経路P1のみを生成することもできる。この場合には、ユーザ等が運転してトラクタ1を実際に走行させたときに、図3に示すように、作業の始端地点及び終端地点となる地点Aと地点Bとを登録する。走行経路生成部54は、地点Aと地点Bとを結ぶ直線状の初期直線経路を生成し、その初期直線経路に平行な複数の平行経路を生成することで、初期直線経路及び複数の平行経路を作業経路P1とすることができる。
【0038】
走行経路生成部54にて生成された目標走行経路Pは、表示部51に表示可能であり、車体情報及び圃場情報等と関連付けた経路情報として端末記憶部55に記憶されている。経路情報には、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度等が含まれている。
【0039】
このようにして、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成すると、端末電子制御ユニット52が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路情報を転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット18が、経路情報を取得することができる。車載電子制御ユニット18は、取得した経路情報に基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数ミリ秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
【0040】
経路情報の転送に関しては、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、経路情報の全体を端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に一挙に転送することができる。また、例えば、目標走行経路Pを含む経路情報を、情報量の少ない所定距離ごとの複数の経路部分に分割することもできる。この場合には、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階においては、経路情報の初期経路部分のみが端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送される。自動走行の開始後は、トラクタ1が情報量等に応じて設定された経路取得地点に達するごとに、その地点に対応する以後の経路部分のみの経路情報が端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送するようにしてもよい。
【0041】
トラクタ1の自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザ等がスタート地点にトラクタ1を移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1に送信する。これにより、トラクタ1では、車載電子制御ユニット18が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。車載電子制御ユニット18が、衛星測位システムを用いて測位ユニット21により取得されるトラクタ1の測位情報に基づいて、走行領域S内の目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部として構成されている。
【0042】
自動走行制御には、変速装置13の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構15の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪5を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を自動制御する作業用自動制御、等が含まれている。
【0043】
自動変速制御においては、変速制御部181が、目標走行速度を含む目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力と車速センサ19の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標走行速度がトラクタ1の車速として得られるように変速装置13の作動を自動制御する。
【0044】
自動制動制御においては、制動制御部182が、目標走行経路Pと測位ユニット21の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路情報に含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪6を適正に制動するようにブレーキ操作機構15の作動を自動制御する。
【0045】
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部184が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて左右の前輪5の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構14に出力する。パワーステアリング機構14が、目標操舵角と舵角センサ20の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪5の操舵角として得られるように左右の前輪5を自動操舵する。
【0046】
作業用自動制御においては、作業装置制御部183が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図3参照)の始端等の作業開始地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業(例えば耕耘作業)が開始され、かつ、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図3参照)の終端等の作業終了地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業が停止されるように、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動を自動制御する。
【0047】
このようにして、トラクタ1においては、変速装置13、パワーステアリング機構14、ブレーキ操作機構15、クラッチ操作機構16、昇降駆動機構17、車載電子制御ユニット18、車速センサ19、舵角センサ20、測位ユニット21、及び、通信モジュール25、等によって自動走行ユニット2が構成されている。
【0048】
この実施形態では、キャビン10にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン10にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
【0049】
キャビン10にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット18にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることができる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることができる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、運転席39の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の表示部51に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット18による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール38を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
【0050】
トラクタ1には、図1及び図2に示すように、トラクタ1(走行機体7)の周囲における障害物を検知して、障害物との衝突を回避するための障害物検知システム100が備えられている。障害物検知システム100は、レーザを用いて測定対象物までの距離を3次元で測定可能な複数のライダーセンサ101,102と、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーユニット103,104と、障害物検知部110と、衝突回避制御部111とが備えられている。
【0051】
ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104にて測定する測定対象物は、物体や人等としている。ライダーセンサ101,102は、トラクタ1の前方側を測定対象とする前ライダーセンサ101と、トラクタ1の後方側を測定対象とする後ライダーセンサ102とが備えられている。ソナーユニット103,104は、トラクタ1の右側を測定対象とする右側のソナーユニット103と、トラクタ1の左側を測定対象とする左側のソナーユニット104とが備えられている。
【0052】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づいて、所定距離内の物体や人等の測定対象物を障害物として検知する障害物検知処理を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、障害物検知部110にて障害物を検知すると、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させる衝突回避制御を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させるだけでなく、報知ブザーや報知ランプ等の報知装置26を作動させて、障害物が存在することを報知している。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、通信モジュール25,53を用いて、トラクタ1から携帯通信端末3に通信して表示部51に障害物の存在を表示させることで、障害物が存在することを報知可能としている。
【0053】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づく障害物検知処理をリアルタイムで繰り返し行い、物体や人等の障害物を適切に検知している。衝突回避制御部111は、リアルタイムで検知される障害物との衝突を回避するための衝突回避制御を行うようにしている。
【0054】
障害物検知部110及び衝突回避制御部111は、車載電子制御ユニット18に備えられている。車載電子制御ユニット18は、コモンレールシステムに含まれたエンジン用の電子制御ユニット、ライダーセンサ101,102、及び、ソナーユニット103,104等にCAN(Controller Area Network)を介して通信可能に接続されている。
【0055】
上述の如く、トラクタ1の自動走行を開始する場合には、トラクタ1をスタート地点に移動させた後、測位ユニット21に含まれる慣性計測装置23等の各種の機器を初期化したり、測位衛星71からの電波の受信状況等を調整する等の調整作業を行っている。例えば、一時的な休憩等で作業途中に作業を中断した場合に、再度、調整作業を行う必要があると、作業を再開できるまでに時間を要するとともに、作業手間もかかることになり、作業の再開をスムーズに行うことができなくなる。
【0056】
そこで、この実施形態では、バッテリ27から測位ユニット21への通電回路を工夫することで、作業を中断した場合でも、測位ユニット21等への電力供給を継続させ、作業を再開させるときに、調整作業を行う必要を無くし、作業の再開をスムーズに行えるようにしている。
【0057】
以下、図4図6に基づいて、バッテリ27から測位ユニット21への通電回路について説明する。ちなみに、図4図6は、通電される部位(太線部位)が異なるだけで、同じ通電回路を示しているので、図4に基づいて説明する。
【0058】
図4は、ボンネット8に収容されたバッテリ27から各種の電装品への通電経路を示している。バッテリ27から電力を供給する電装品として、測位ユニット21、タイマーユニット29、通信モジュール25、それら以外の各電装品28等が備えられている。バッテリ27から測位ユニット21への通電経路として、第1スイッチC1を介してバッテリ27から測位ユニット21や各電装品28へ通電可能な第1通電経路K1と、第1スイッチC1とは異なる第2スイッチC2を介してバッテリ27から測位ユニット21に通電可能な第2通電経路K2とが備えられている。
【0059】
第1通電経路K1は、バッテリ27と測位ユニット21とを接続する通電経路となっている。第1通電経路K1には、通電方向の最も上流側に第1スイッチC1が配置されている。第1スイッチC1は、各電装品28への電力供給を開始したり、エンジン9を始動させるためのキースイッチにて構成され、このキースイッチは、キャビン10のステアリングホイール38の近傍に配置されている。第1スイッチC1は、ユーザ等の操作に応じてON状態とOFF状態とに切り替えられ、キースイッチのON操作によりON状態となり、キースイッチのOFF操作によりOFF状態となる。
【0060】
図4に示すように、第1通電経路K1において第1スイッチC1の下流側には、第1~第3分岐経路E1~E3が分岐接続され、測位ユニット21に加えて、各電装品28、タイマーユニット29、通信モジュール25に通電可能に構成されている。第1分岐経路E1は、通電方向の最も上流側から分岐され、バッテリ27と各電装品28(測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25以外の電装品)とを接続する経路となっている。第2分岐経路E2は、第1分岐経路E1の第1分岐接続箇所E1aよりも通電方向の下流側から分岐され、バッテリ27とタイマーユニット29とを接続する経路となっている。第3分岐経路E3は、第2分岐経路E2の第2分岐接続箇所E2aよりも通電方向の下流側から分岐され、バッテリ27と通信モジュール25とを接続する経路となっている。
【0061】
ちなみに、タイマーユニット29に接続される第2分岐経路E2と通信モジュール25に接続される第3分岐経路E3とを、通電方向で上流側と下流側とを反対に配置させることもでき、第2、第3分岐経路E2,E3を通電方向でどのように配置させるかについては適宜変更が可能である。
【0062】
第1通電経路K1において第1分岐接続箇所E1aと第2分岐接続箇所E2aとの間には、通電方向を第1分岐接続箇所E1a側から第2分岐接続箇所E2a側への一方向とするダイオードDが配置されている。これにより、第1通電経路K1において第2分岐接続箇所E2a側から第1分岐接続箇所E1a側への通電が阻止されている。
【0063】
第1通電経路K1において第1分岐接続箇所E1aとダイオードDとの間には、第1スイッチC1(キースイッチ)がON状態であることを示すON信号をタイマーユニット29に入力するON信号入力経路Fが備えられている。これにより、タイマーユニット29は、ON信号入力経路Fを介したON信号の入力によって、第1スイッチC1がON状態であるかOFF状態であるか、及び、第1スイッチC1がON状態からOFF状態に切り替えられたタイミングを把握している。
【0064】
第2通電経路K2は、第1通電経路K1の途中部位から分岐され、第1通電経路K1の途中部位に合流する経路となっており、第1通電経路K1の一部を兼用しながら、第1通電経路K1と並列状態で備えられている。第2通電経路K2には、第2スイッチC2が配置され、第1スイッチC1と第2スイッチC2とが並列状態で備えられている。第2スイッチC2は、常時、ON状態となる常閉スイッチとして構成され、ON状態を保持する電源保持リレー回路Gが備えられている。電源保持リレー回路Gは、タイマーユニット29からリレー制御出力をコイルG1に出力するリレー制御出力経路G2が備えられている。電源保持リレー回路Gは、タイマーユニット29からリレー制御出力経路G2を介してコイルG1にリレー制御出力が出力されている間は第2スイッチC2をON状態に保持し、タイマーユニット29からのコイルG1へのリレー制御出力が停止されると、第2スイッチC2をOFF状態に切り替える。
【0065】
第2通電経路K2は、第1通電経路K1において第1スイッチC1の上流側から分岐され、第1通電経路K1において第2分岐接続箇所E2aと第3分岐接続箇所E3aの間に合流している。これにより、第2通電経路K2は、第2スイッチC2を介して、バッテリ27から測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25の夫々に通電可能となっている。第1通電経路K1において第1分岐接続箇所E1aと第2分岐接続箇所E2aとの間に、通電方向を一方向に規制するダイオードDが配置されているので、第2通電経路K2により各電装品28への通電は阻止されている。
【0066】
以下、トラクタ1を自動走行させて作業を行う場合に、第1スイッチC1及び第2スイッチC2の切り替え、及び、第1スイッチC1及び第2スイッチC2を切り替えた状態での通電状態について説明する。
【0067】
トラクタ1の自動走行を行う場合には、第1スイッチ(キースイッチ)C1をON状態に切り替えている。第1スイッチC1がON状態である場合には、図4に示すように、第1通電経路K1及び第2通電経路K2の何れでも、バッテリ27から測位ユニット21への通電を行うようにしている。つまり、第1スイッチC1がON状態である場合には、第1通電経路K1及び第2通電経路K2のどちらの通電経路を介しても、バッテリ27から測位ユニット21に通電可能となっている。このとき、例えば、電位差等を調整することで、第1通電経路K1が第2通電経路K2よりも優先して通電を行うようにすることもできる。
【0068】
第1スイッチC1がON状態である場合には、図4に示すように、第1通電経路K1における第1~第3分岐経路E1~E3の夫々についても通電可能となっている。これにより、第1通電経路K1及び第1~第3分岐経路E1~E3を介して、バッテリ27から測位ユニット21への通電を行うとともに、バッテリ27から各電装品28、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電も行う。また、第2通電経路K2及び第2、第3分岐経路E2、E3を介して、バッテリ27から測位ユニット21への通電を行うとともに、バッテリ27からタイマーユニット29及び通信モジュール25への通電も行う。
【0069】
このように、トラクタ1の自動走行を行う場合には、第1スイッチC1をON状態とすることで、第1通電経路K1及び第2通電経路K2を介して、バッテリ27から、測位ユニット21、各電装品28、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を行うことができる。よって、各電装品28が使用可能な状態となるとともに、測位ユニット21は、トラクタ側の測位アンテナ24が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報に加え、基地局側の測位アンテナ61が測位衛星71からの電波を受信して得た補正情報を通信モジュール25(補正情報通信機器に相当する)が受信することで、測位情報及び補正情報からトラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。
【0070】
例えば、一時的な休憩等によりトラクタ1の自動走行を中断させる場合には、第1スイッチC1をON状態からOFF状態に切り替える。第1スイッチC1がOFF状態である場合には、図5に示すように、ON状態の第2スイッチC2を介して第2通電経路K2によりバッテリ27から測位ユニット21への通電を行う。このとき、第2分岐経路E2及び第3分岐経路E3の夫々についても通電可能となっているので、第2通電経路K2及び第2、第3分岐経路E2、E3を介して、バッテリ27から測位ユニット21への通電を行うとともに、バッテリ27からタイマーユニット29及び通信モジュール25への通電も行う。
【0071】
図5に示すように、第1スイッチC1がOFF状態となっても、常閉スイッチである第2スイッチC2がON状態となっているので、第2通電経路K2を介して、バッテリ27から測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電が行われる。これにより、測位ユニット21、及び、通信モジュール25については、電力の供給が保持されるので、調整作業が既に行われた状態が保持されることになる。つまり、測位ユニット21は、測位情報及び補正情報からトラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定している状態を保持することができる。
【0072】
よって、作業途中にて作業が中断されて、第1スイッチC1がOFF状態に切り替えられても、図5に示すように、第2通電経路K2を介して、バッテリ27から測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を行うことで、測位ユニット21が、測位情報及び補正情報からトラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定している状態を保持することができ。その結果、再度、調整作業を行わなくても、トラクタ1の自動走行を再開することができ、作業の再開をスムーズに行うことができる。ちなみに、トラクタ1の自動走行を再開する場合には、第1スイッチC1をOFF状態からON状態に切り替えている。
【0073】
作業途中に作業を一旦中断する場合だけでなく、作業が終了した場合でも、第1スイッチC1をOFF状態に切り替える。この場合に、第2通電経路K2を介して、バッテリ27から測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を行う状態を継続していると、バッテリ27の電力を無駄に消費してしまう。
【0074】
そこで、この実施形態では、タイマーユニット29が、第1スイッチがOFF状態となってからの時間を計測しており、その計測開始から所定時間(例えば、2時間)が経過すると、図6に示すように、第2スイッチC2をOFF状態にさせて、第2通電経路K2によるバッテリ27から測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を停止させている。所定時間については、例えば、2時間の一定時間に設定したり、所定時間を変更設定することもできる。
【0075】
タイマーユニット29は、図4に示すように、第1スイッチC1がON状態であると、ON信号入力経路Fを介してON信号の入力を受けているので、図5に示すように、ON信号の入力が無くなったタイミングを、第1スイッチC1がON状態からOFF状態となったタイミングとして認識することができる。タイマーユニット29は、図4及び図5に示すように、電力の供給を受けることで、リレー制御出力経路G2を介してコイルG1にリレー制御出力を出力しており、第1スイッチがOFF状態となってからの計測時間が所定時間(例えば、2時間)になると、図6に示すように、コイルG1へのリレー制御出力を停止することで、第2スイッチC2をOFF状態に切り替えている。
【0076】
ちなみに、タイマーユニット29は、第1スイッチC1がOFF状態からON状態に切り替えられると、計測した時間をゼロにリセットしている。よって、例えば、タイマーユニット29が第1スイッチがOFF状態となってからの時間を計測している最中に、第1スイッチC1がOFF状態からON状態に切り替えられた場合でも、タイマーユニット29は、計測した時間をゼロにリセットしている。
【0077】
図6に示すように、第1スイッチC1及び第2スイッチC2がともにOFF状態である場合には、バッテリ27から、測位ユニット21、各電装品28、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電が停止されている。これにより、作業が終了した場合には、第1スイッチC1をOFF状態に切り替えてから所定時間経過後に、測位ユニット21等への通電を停止して、バッテリ27の電力を無駄に消費せず、バッテリ27があがるのを防止している。
【0078】
作業が終了した場合には、第1スイッチC1をOFF状態に切り替えてから所定時間経過するのを待たずに、測位ユニット21等への通電を停止させたいこともある。そこで、この実施形態では、図4に示すように、第1スイッチC1をOFF状態に切り替えてから所定時間経過していなくても、第2スイッチC2をOFF状態に切り替えるための電力遮断スイッチ30(所定の操作具に相当する)が備えられている。
【0079】
電力遮断スイッチ30は、常時、OFF状態となる常開スイッチとして構成され、ユーザ等の操作によりON状態に切り替えられる。電力遮断スイッチ30は、例えば、図1の点線にて示すように、ボンネット8内に配置されており、外部に露出していない箇所に備えられている。これにより、誤って電力遮断スイッチ30が操作されるのを防止して、測位ユニット21等への通電が誤操作等により停止されるのを防止している。
【0080】
図4に示すように、電力遮断スイッチ30がON状態であることを示す遮断スイッチON信号が、遮断スイッチON信号入力経路Hを介して、タイマーユニット29に入力可能に構成されている。図6に示すように、電力遮断スイッチ30がON状態に切り替えられると、遮断スイッチON信号が、遮断スイッチON信号入力経路Hを介して、タイマーユニット29に入力される。これにより、タイマーユニット29は、コイルG1へのリレー制御出力を停止することで、第2スイッチC2をOFF状態に切り替えている。このように、電力遮断スイッチ30に対するユーザ等の操作により電力遮断スイッチ30がON状態に切り替えられると、タイマーユニット29からのリレー制御出力を停止させ、第2スイッチC2をOFF状態に切り替えて、バッテリ27から測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を停止している。
【0081】
電力遮断スイッチ30に対して操作を行うのは、作業を終了した場合だけではない。例えば、測位ユニット21がトラクタ1の現在位置及び現在方位を正確に測定できない状態が継続する等により、測位ユニット21によるトラクタ1の現在位置及び現在方位の測定を再度やり直したい場合がある。このような場合に、電力遮断スイッチ30を操作することで、バッテリ27から測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を一度停止させた上で、再度、測位ユニット21によるトラクタ1の現在位置及び現在方位の測定を行うことができる。
【0082】
図4に示す通電回路における動作を、図7のフローチャートに基づいて説明する。
まず、第1スイッチC1がON状態である場合には、図4に示すように、第1通電経路K1及び第2通電経路K2を介して、バッテリ27から、測位ユニット21、各電装品28、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を行う(ステップ#1のYesの場合、ステップ#2)。
【0083】
第1スイッチC1がON状態からOFF状態に切り替えられると、タイマーユニット29が、第1スイッチC1がOFF状態となってからの時間を計測するタイマー計測を行う(ステップ#1のNoの場合、ステップ#3)。電力遮断スイッチ30がOFF状態であり、第1スイッチC1がOFF状態となってから所定時間が経過していなければ、リターンとなる(ステップ#4のNoの場合、ステップ#5のNoの場合)。
【0084】
第1スイッチC1がOFF状態となってからの所定時間が経過していなくても、電力遮断スイッチ30がON状態に切り替えられると、第2スイッチC2をOFF状態に切り替えて、バッテリ27から、測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を停止させる(ステップ#4のYesの場合、ステップ#6)。
また、電力遮断スイッチ30がON状態に切り替えられなくても、第1スイッチC1がOFF状態となってから所定時間が経過すると、第2スイッチC2をOFF状態に切り替えて、バッテリ27から、測位ユニット21、タイマーユニット29及び通信モジュール25への通電を停止させる(ステップ#5のYesの場合、ステップ#6)。
【0085】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、第1実施形態の図4における通電回路についての別実施形態であるので、図8に基づいて、第2実施形態における通電回路について説明する。その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、同符号を記す等によりその説明は省略する。
【0086】
図8は、図4と同様に、バッテリ27から各種の電装品への通電経路を示しているので、図4と同様の構成については同符号を記すことにより適宜説明は省略し、基本的には、図4と異なる構成について説明する。
【0087】
図8に示す通電回路では、図4と同様に、バッテリ27と測位ユニット21とを接続する第1通電経路K1を備え、その第1通電経路K1の一部を兼用しながら、第1通電経路K1と並列状態で第2通電経路K2が備えられている。電源の供給側については、バッテリ27に加えて、バッテリ27からの電力供給を安定させるための安定化電源31が備えられている。安定化電源31は、第1通電経路K1において、バッテリ27と第2通電経路K2の分岐箇所との間に配置されている。
【0088】
図8に示す通電回路では、図4と同様に、バッテリ27から電力を供給する電装品として、測位ユニット21、タイマーユニット29、通信モジュール25、それら以外の各電装品(図示省略)が備えられている。タイマーユニット29に接続する第2分岐経路E2は、図4とは異なり、第1通電経路K1において、ダイオードDよりも上流側から分岐接続され、ダイオードDよりも下流側とタイマーユニット29とを接続する第4分岐経路E4が追加されている。これにより、第1通電経路K1にてバッテリ27からタイマーユニット29に通電する場合には、第1通電経路K1及び第2分岐経路E2を介して、バッテリ27からタイマーユニット29へ通電している。それに対して、第2通電経路K2にてバッテリ27からタイマーユニット29に通電する場合には、第2通電経路K2及び第4分岐経路E4を介して、バッテリ27からタイマーユニット29へ通電している。
【0089】
図8に示す通電回路では、第1スイッチC1とタイマーユニット29とを接続する接続経路Jに、セーフティスイッチ32が備えられている。このセーフティスイッチ32は、キャビン10の操縦部に配置されるクラッチを切操作しなければ、エンジン9の始動を禁止するためのものである。セーフティスイッチ32は、常時、OFF状態となる常開スイッチにて構成されており、クラッチが切操作されることで、ON状態に切り替えられる。セーフティスイッチ32がOFF状態である場合には、第1スイッチ(キースイッチ)C1をエンジン9の始動位置に操作しても、セルモータ等に電力が供給されず、エンジン9を始動できなくなっている。
【0090】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0091】
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン9と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン9に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行部として、左右の後輪6に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪6が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
【0092】
(2)上記実施形態では、第2スイッチC2をOFF状態とするための条件を、第1スイッチC1がOFF状態となってから所定時間が経過することに設定しているが、その他、各種の条件を設定することができるとともに、複数種の条件を設定することもできる。
【0093】
例えば、トラクタ1を自動走行させる目標走行経路Pを生成する際に、図3に示すように、地点Aと地点Bとを登録して、地点Aと地点Bとを結ぶ直線状の初期直線経路を生成し、その初期直線経路に平行な複数の平行経路を生成することで、目標走行経路Pを作業経路P1のみから生成する場合がある。この場合には、自動走行を行うときには、地点Aや地点Bが登録されているので、地点Aや地点Bが登録されていなければ、自動走行を行わないと判断できる。
【0094】
そこで、地点Aや地点Bが登録されていると、第2スイッチC2をON状態とし、地点Aや地点Bが登録されていなければ、第2スイッチC2をOFF状態とすることができ、地点A及び地点Bの登録の有無により、第2スイッチC2をON状態とOFF状態に切り替えることができる。
【0095】
このように、自動走行を行える状況下であれば、第2スイッチC2をON状態とし、自動走行を行えない状況下であると、第2スイッチC2をOFF状態とすることができ、自動走行を行える状況下にあるか否かによって、第2スイッチC2をON状態とOFF状態に切り替えることができる。
【0096】
また、トラクタ1等の作業車両をトラック等に載せて運搬中である場合には、自動走行を行わないので、この場合にも、第2スイッチC2をOFF状態とすることができる。この場合には、作業車両の車速がゼロであるにもかかわらず、測位ユニット21にて取得する作業車両の位置情報が変化しているので、作業車両の車速及び測位ユニット21にて取得する作業車両の位置情報から、トラクタ等に載せて運搬中であるか否かを判定することができる。
【0097】
(3)上記実施形態では、電力遮断スイッチ30をボンネット8内に配置しているが、例えば、キャビン10の操縦部に配置したり、携帯通信端末3の表示部51に表示させることもでき、電力遮断スイッチ30をどのような位置に配置させるかは適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 トラクタ(作業車両)
21 測位ユニット
25 通信モジュール(補正情報通信機器)
27 バッテリ
28 各電装品
29 タイマーユニット
30 電力遮断スイッチ(所定の操作具)
C1 第1スイッチ
C2 第2スイッチ
K1 第1通電経路
K2 第2通電経路

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8