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特許7146678判定装置、判定方法、錠剤印刷装置および錠剤印刷方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法、錠剤印刷装置および錠剤印刷方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20220927BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A61J3/06 R
A61J3/06 Q
G01N21/85 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019055026
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020151357
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小島 世誠
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳樹
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145562(WO,A1)
【文献】特開平10-100489(JP,A)
【文献】特開2011-093680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0284314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
G01N 21/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面を有しており、複数の対象物を搬送方向に沿って前記搬送面上に並べて保持し、前記搬送面を移動させて前記複数の対象物を搬送するコンベアと、
前記コンベアの搬送速度に基づいて生成されるタイミング信号に基づいて、前記複数の対象物の各々が撮像エリア内に進入するたびに、前記撮像エリアを撮像して画像データを取得し、複数の当該画像データを順次に出力するカメラと、
前記カメラから順次に入力された前記複数の画像データに基づいて、撮像漏れが生じたか否かを判定する画像処理部と
を備え、
前記コンベアの前記搬送面には、少なくとも一つのマークが設けられており、
前記マークは、前記複数の対象物のうち第1の対象物とともに前記撮像エリア内に進入して、前記第1の対象物とともに前記カメラによって撮像される位置に設けられており、
前記画像処理部は、
前記カメラから入力された前記複数の画像データの各々に対して、前記マークを識別する識別処理を行い、
前記複数の画像データに対する前記識別処理の結果を並べて構成されるマークパターンが、撮像漏れが生じていないときの前記マークパターンである基準パターンと相違するときに、前記撮像漏れが生じたと判定する、判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の判定装置であって、
前記複数の対象物は錠剤であり、
前記マークは、前記コンベアの前記搬送面に形成された貫通孔によって形成される、判定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の判定装置であって、
前記マークは前記複数の対象物のいずれとも離れた位置に設けられる、判定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の判定装置であって、
前記コンベアは、
前記搬送方向に沿って配列された複数の分割部材と、
前記複数の分割部材を相互に接続する接続部と
を備え、
前記接続部は、前記第1の対象物とともに前記撮像エリア内に進入して、前記第1の対象物とともに前記カメラによって撮像され、
前記画像処理部は、前記識別処理において、前記接続部を前記マークとして識別する、判定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の判定装置であって、
前記基準パターンの構成要素のうち互いに隣り合ういずれの二者も互いに相違する、判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の判定装置であって、
前記基準パターンの構成要素のうち互いに隣り合ういずれの三者も互いに相違する、判定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の判定装置であって、
前記画像処理部は、前記マークパターンおよび前記基準パターンに基づいて、撮像漏れが生じた前記対象物を特定する、判定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の判定装置であって、
撮像漏れが生じたと判定された前記対象物を、撮像漏れボックス、または、前記コンベアにおける前記カメラよりも上流の位置へ移動させる仕分け機構をさらに備える、判定装置。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の判定装置であって、
前記基準パターンは、複数の単位パターンを含み、前記単位パターンはN個の構成要素を含み、前記N個の構成要素のうち連続する(N-1)個の第1構成要素は互いに同じである、判定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の判定装置であって、
前記判定装置は、撮像漏れが生じていると前記画像処理部が判定したときに、第1画像データに含まれた前記対象物を、撮像漏れボックス、または、前記コンベアにおける前記カメラよりも上流の位置へ移動させる仕分け機構をさらに備え、
前記第1画像データは、前記撮像漏れが生じていると判定された直前に前記カメラによって連続して取得された前記画像データのうち、前記識別処理の結果が前記第1構成要素を示す画像データである、判定装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1つに記載の判定装置と、
前記判定装置によって撮像漏れの有無を判定された前記対象物である錠剤に印刷を行う印刷部とを備える、錠剤印刷装置。
【請求項12】
請求項11に記載の錠剤印刷装置であって、
前記印刷部は、前記判定装置によって撮像漏れが生じていないと判定された前記錠剤にのみ印刷を行う、錠剤印刷装置。
【請求項13】
搬送面を有するコンベアが複数の対象物を搬送方向に沿って前記搬送面上に並べて保持し、前記搬送面を移動させて前記複数の対象物を搬送する搬送工程と、
前記コンベアの搬送速度に基づいて生成されるタイミング信号に基づいて、前記複数の対象物の各々が撮像エリア内に進入するたびに、カメラが前記撮像エリアを撮像して画像データを取得し、複数の当該画像データを順次に出力する撮像工程と、
前記カメラから順次に入力された前記複数の画像データに基づいて、撮像漏れが生じたか否かを判定する判定工程と
を備え、
前記コンベアの前記搬送面には、少なくとも一つのマークが設けられており、
前記マークは、前記複数の対象物のうち第1の対象物とともに前記撮像エリア内に進入して、前記第1の対象物とともに前記カメラによって撮像される位置に設けられており、
前記判定工程において、
前記カメラから入力された前記複数の画像データの各々に対して、前記マークを識別する識別処理を行い、
前記複数の画像データに対する前記識別処理の結果を並べて構成されるマークパターンが、撮像漏れが生じていないときの前記マークパターンである基準パターンと相違するときに、前記撮像漏れが生じたと判定する、判定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の判定方法によって撮像漏れの有無を判定された錠剤に印刷を行う印刷工程を備える、錠剤印刷方法。
【請求項15】
請求項14に記載の錠剤印刷方法であって、
前記印刷工程においては、前記判定方法によって撮像漏れが生じていないと判定された前記錠剤にのみ印刷を行う、錠剤印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、判定装置、判定方法、錠剤印刷装置および錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、錠剤などの対象物の外観検査は、対象物を撮像して得られた画像データに所定の画像処理を施して外観の良否を判定することによって行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-114180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
錠剤の撮像は、錠剤の搬送速度に合わせて順次行われるが、撮像が適切に行われずに撮像漏れが生じる場合がある。
【0005】
このような撮像漏れは、複数の錠剤の外観検査の終了後に当該検査に用いられた画像データの数を確認することによって把握できる。
【0006】
しかしながら、このような方法では、撮像漏れが生じた錠剤が不良品などであるにも関わらず既に検査を通過している可能性がある。また、このような撮像漏れが生じた錠剤の検査通過を防ぐために、撮像漏れが生じた可能性のある錠剤を全て破棄するなどの措置をとらざるを得ない場合もある。
【0007】
本願は、以上に記載されたような問題を解決するためになされたものであり、撮像漏れが生じた場合であっても、撮像漏れが生じた対象物の検査通過を効果的に防ぐための技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
判定装置の第1の態様は、搬送面を有しており、複数の対象物を搬送方向に沿って前記搬送面上に並べて保持し、前記搬送面を移動させて前記複数の対象物を搬送するコンベアと、前記コンベアの搬送速度に基づいて生成されるタイミング信号に基づいて、前記複数の対象物の各々が撮像エリア内に進入するたびに、前記撮像エリアを撮像して画像データを取得し、複数の当該画像データを順次に出力するカメラと、前記カメラから順次に入力された前記複数の画像データに基づいて、撮像漏れが生じたか否かを判定する画像処理部とを備え、前記コンベアの前記搬送面には、少なくとも一つのマークが設けられており、前記マークは、前記複数の対象物のうち第1の対象物とともに前記撮像エリア内に進入して、前記第1の対象物とともに前記カメラによって撮像される位置に設けられており、前記画像処理部は、前記カメラから入力された前記複数の画像データの各々に対して、前記マークを識別する識別処理を行い、前記複数の画像データに対する前記識別処理の結果を並べて構成されるマークパターンが、撮像漏れが生じていないときの前記マークパターンである基準パターンと相違するときに、前記撮像漏れが生じたと判定する。
【0009】
判定装置の第2の態様は、第1の態様にかかる判定装置であって、前記複数の対象物は錠剤であり、前記マークは、前記コンベアの前記搬送面に形成された貫通孔によって形成される。
【0010】
判定装置の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる判定装置であって、前記マークは前記複数の対象物のいずれとも離れた位置に設けられる。
【0011】
判定装置の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる判定装置であって、前記コンベアは、前記搬送方向に沿って配列された複数の分割部材と、前記複数の分割部材を相互に接続する接続部とを備え、前記接続部は、前記第1の対象物とともに前記撮像エリア内に進入して、前記第1の対象物とともに前記カメラによって撮像され、前記画像処理部は、前記識別処理において、前記接続部を前記マークとして識別する。
【0012】
判定装置の第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる判定装置であって、前記基準パターンの構成要素のうち互いに隣り合ういずれの二者も互いに相違する。
【0013】
判定装置の第6の態様は、第5の態様にかかる判定装置であって、前記基準パターンの構成要素のうち互いに隣り合ういずれの三者も互いに相違する。
【0014】
判定装置の第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる判定装置であって、前記画像処理部は、前記マークパターンおよび前記基準パターンに基づいて、撮像漏れが生じた前記対象物を特定する。
【0015】
判定装置の第8の態様は、第7の態様にかかる判定装置であって、撮像漏れが生じたと判定された前記対象物を、撮像漏れボックス、または、前記コンベアにおける前記カメラよりも上流の位置へ移動させる仕分け機構をさらに備える。
【0016】
判定装置の第9の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる判定装置であって、前記基準パターンは、複数の単位パターンを含み、前記単位パターンはN個の構成要素を含み、前記N個の構成要素のうち連続する(N-1)個の第1構成要素は互いに同じである。
【0017】
判定装置の第10の態様は、第9の態様にかかる判定装置であって、前記判定装置は、撮像漏れが生じていると前記画像処理部が判定したときに、第1画像データに含まれた前記対象物を、撮像漏れボックス、または、前記コンベアにおける前記カメラよりも上流の位置へ移動させる仕分け機構をさらに備え、前記第1画像データは、前記撮像漏れが生じていると判定された直前に前記カメラによって連続して取得された前記画像データのうち、前記識別処理の結果が前記第1構成要素を示す画像データである。
【0018】
錠剤印刷装置の第1の態様は、第1から第10の態様のいずれか一つの態様にかかる判定装置と、前記判定装置によって撮像漏れの有無を判定された前記対象物である錠剤に印刷を行う印刷部とを備える。
【0019】
錠剤印刷装置の第2の態様は、第1の態様にかかる錠剤印刷装置であって、前記印刷部は、前記判定装置によって撮像漏れが生じていないと判定された前記錠剤にのみ印刷を行う。
【0020】
判定方法の態様は、搬送面を有するコンベアが複数の対象物を搬送方向に沿って前記搬送面上に並べて保持し、前記搬送面を移動させて前記複数の対象物を搬送する搬送工程と、前記コンベアの搬送速度に基づいて生成されるタイミング信号に基づいて、前記複数の対象物の各々が撮像エリア内に進入するたびに、カメラが前記撮像エリアを撮像して画像データを取得し、複数の当該画像データを順次に出力する撮像工程と、前記カメラから順次に入力された前記複数の画像データに基づいて、撮像漏れが生じたか否かを判定する判定工程とを備え、前記コンベアの前記搬送面には、少なくとも一つのマークが設けられており、前記マークは、前記複数の対象物のうち第1の対象物とともに前記撮像エリア内に進入して、前記第1の対象物とともに前記カメラによって撮像される位置に設けられており、前記判定工程において、前記カメラから入力された前記複数の画像データの各々に対して、前記マークを識別する識別処理を行い、前記複数の画像データに対する前記識別処理の結果を並べて構成されるマークパターンが、撮像漏れが生じていないときの前記マークパターンである基準パターンと相違するときに、前記撮像漏れが生じたと判定する。
【0021】
錠剤印刷方法の第1の態様は、判定方法の態様によって撮像漏れの有無を判定された錠剤に印刷を行う印刷工程を備える。
【0022】
錠剤印刷方法の第2の態様は、第1の態様にかかる錠剤印刷方法であって、前記印刷工程においては、前記判定方法によって撮像漏れが生じていないと判定された前記錠剤にのみ印刷を行う。
【発明の効果】
【0023】
判定装置の第1の態様および判定方法の態様によれば、撮像漏れをリアルタイムに検出できる。よって、撮像漏れが生じた場合であっても、撮像漏れが生じた対象物の検査通過を効果的に防ぐことができる。
【0024】
判定装置の第2の態様によれば、錠剤から粉末が生じたとしても、その粉末は貫通孔を通過するので、粉末によるマークの視認上の識別性の低下を抑制することができる。例えばマークが搬送面に設けられた凹凸によって形成される場合、粉末がマークに付着すると、マークが粉末によって識別しにくくなり得る。この場合、画像処理部はマークを識別しにくい。これに対して、マークが貫通孔によって形成される場合、粉末がマークを通過するので、マークに付着しにくく、識別性の低下が抑制される。よって、画像処理部によるマークの識別精度の低下を抑制できる。
【0025】
判定装置の第3の態様によれば、画像処理部におけるマークの識別精度を向上できる。
【0026】
判定装置の第4の態様によれば、既設の接続部をマークに利用することができる。よって、製造コストの増大を抑制できる。
【0027】
判定装置の第5の態様によれば、1枚分の撮像漏れが生じたときに、その撮像漏れが生じた対象物を特定できる。
【0028】
判定装置の第6の態様によれば、2枚分の撮像漏れが生じても、その撮像漏れが生じた対象物を特定できる。
【0029】
判定装置の第7の態様によれば、撮像漏れが生じた対象物を、撮像漏れが生じていない対象物と分けることができる。そのため、例えば、撮像漏れが生じた対象物を搬送経路に再投入する際にも、効率的に処理を行うことができる。
【0030】
判定装置の第8の態様によれば、撮像漏れが生じた対象物を仕分けることができる。当該対象物をコンベアに移動させる場合には、当該対象物をカメラで再び撮像することができる。
【0031】
判定装置の第9の態様によれば、基準パターンの構成要素のうち連続する(N-1)個の構成要素が互いに同じであっても、その撮像漏れが生じたことを特定できる。2枚分の撮像漏れが生じても、その撮像漏れが生じた対象物を特定できる。
【0032】
判定装置の第10の態様によれば、撮像漏れが生じた可能性がある対象物を仕分けることができる。当該対象物をコンベアに移動させる場合には、当該対象物をカメラで再び撮像することができる。
【0033】
錠剤印刷装置の第1の態様および錠剤印刷方法の第1の態様によれば、撮像漏れの有無に応じて印刷を行う錠剤を選択することができる。
【0034】
錠剤印刷装置の第2の態様および錠剤印刷方法の第2の態様によれば、撮像漏れが生じていない錠剤のみに対して印刷を行うことができる。
【0035】
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】錠剤印刷装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図2】搬送ドラムおよび搬送ベルトの外観の一例を概略的に示す斜視図である。
図3】錠剤印刷装置における処理動作の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】錠剤印刷装置における処理動作の手順の一例を示すフローチャートである。
図5】錠剤の概略的な一例を示す平面図である。
図6】インクジェットヘッドによる印刷処理結果の一例を概略的に示す図である。
図7】搬送面の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図8】撮像漏れが生じていないときの画像データの一例を概略的に示す図である。
図9】撮像漏れが生じたときの画像データの一例を概略的に示す図である。
図10】撮像漏れの判定処理の一例を示すフローチャートである。
図11】パターン判定処理の一例を示すフローチャートである。
図12】搬送面の構成の他の一例を概略的に示す平面図である。
図13】搬送面の構成の他の一例を概略的に示す平面図である。
図14】搬送面の構成の他の一例を概略的に示す平面図である。
図15】搬送面の構成の他の一例を概略的に示す平面図である。
図16】撮像漏れが生じていないときの画像データの一例を概略的に示す図である。
図17】1枚分の画像データの撮像漏れが生じたときの画像データの一例を概略的に示す図である。
図18】2枚分の画像データの撮像漏れが生じたときの画像データの一例を概略的に示す図である。
図19】搬送ベルトの構成の一例を概略的に示す図である。
図20】搬送ベルトの搬送面の一例を概略的に示す図である。
図21】撮像漏れが生じていないときの画像データの一例を概略的に示す図である。
図22】撮像漏れが生じたときの画像データの一例を概略的に示す図である。
図23】パターン判定処理の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0038】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0039】
また、以下に記載される説明において、「第1」、または、「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0040】
また、図では、適宜にXYZ直交座標が付されている。Z軸方向は鉛直方向に沿う軸であり、XY平面は水平面に沿う平面である。以下では、X軸方向の一方側を+X側とも呼び、他方側を-X側とも呼ぶ。Y軸方向およびZ軸方向についても同様である。
【0041】
<錠剤印刷装置の構成>
図1は、錠剤印刷装置1の構成の一例を概略的に示す図である。図1の例では、錠剤印刷装置1は、錠剤2の表裏両面に対して印刷処理を行う装置である。
【0042】
錠剤印刷装置1は、少なくとも、ホッパー8と、搬送ドラム10と、搬送ベルト20と、搬送ベルト30と、外観検査カメラ51と、外観検査カメラ52と、外観検査カメラ53と、インクジェットヘッド61と、インクジェットヘッド62と、製品検査カメラ71と、製品検査カメラ72とを含んでいる。また、錠剤印刷装置1は、装置に設けられた各駆動部を制御して錠剤2に対する検査処理および印刷処理を実行させる制御部3を含む。
【0043】
ホッパー8は、錠剤印刷装置1の筐体5の天井部上側に設けられる。ホッパー8は、多数の錠剤2を一括して装置内に投入するための投入部である。ホッパー8から投入された複数の錠剤2は、傾斜面に沿って直進フィーダ122へ流れ込む。直進フィーダ122に供給された複数の錠剤2は、振動トラフの振動によって、回転フィーダ123側へ搬送される。そして、回転フィーダ123における回転台の回転による遠心力で、回転台の外周部付近へ集まる。そして、回転台の外周部付近に集まった錠剤2は、回転台の外周部から搬送ドラム10まで鉛直下向きに延びる供給フィーダ124によって、搬送ドラム10に供給される。
【0044】
図2は、搬送ドラム10および搬送ベルト20の外観の一例を概略的に示す斜視図である。搬送ドラム10は、ドラム式のコンベアである。この搬送ドラム10は、略円筒形状を有しており、回転駆動モータ(ここでは、図示しない)によってY軸方向に沿う中心軸を回転中心として時計回りに回転される。図2に例示されるように、搬送ドラム10の外周面には複数の吸着孔11が形成されている。本実施の形態では、搬送ドラム10の中心軸に沿って等間隔で5列に吸着孔11が形成されている。また、5列1組の吸着孔11が搬送ドラム10の外周面の周方向に沿って等間隔で複数行に形成されている。
【0045】
複数の吸着孔11の底部には吸着孔11よりも小さな小孔が設けられており、複数の吸着孔11のそれぞれは当該小孔を介して搬送ドラム10の内部に設けられた吸引機構(ここでは、図示しない)と連通している。当該吸引機構を作動させることによって、複数の吸着孔11のそれぞれに大気圧よりも低い負圧を作用させることができる。これによって、搬送ドラム10の各吸着孔11は1個の錠剤2を吸着保持することができる。
【0046】
搬送ドラム10は回転しながら、その上部においてホッパー8から錠剤2を受け取り、その錠剤2を回転方向(搬送方向)に沿って搬送する。搬送ドラム10の外周面は錠剤2とともに搬送方向に沿って移動するので、以下では、搬送ドラム10の外周面を搬送面とも呼ぶ。
【0047】
搬送ドラム10の環状の搬送面には、後述するカメラの撮像漏れを検出するためのマーク(識別子と呼んでもよい)12が設けられている。マーク12は、視覚的に識別可能であればよい。例えばマーク12は、搬送ドラム10の搬送面に付着されたペイント(インク)であってもよく、搬送ドラム10の搬送面に設けられた凹凸形状(例えば刻印)であってもよく、搬送ドラム10を径方向に貫通する貫通孔であってもよい。マーク12については後に詳述する。
【0048】
搬送ドラム10は、錠剤2が搬送ドラム10の下部まで到達したときに、当該錠剤2を搬送ベルト20へと受け渡す。搬送ドラム10の内部の下部には、搬送ベルト20に対向する部位の近傍にブロー機構が設けられている。当該ブロー機構は、吸着孔11の底部に設けられた上記の小孔に向けて加圧されたエアーを吹き付ける。ブロー機構が小孔にエアーを吹き付けることによって、吸着孔11には大気圧よりも高い圧力を作用させることができる。これによって、吸着孔11による錠剤2の吸着状態を解除することができる。このように、搬送ドラム10に設けられた複数の吸着孔11の全体には吸引機構によって吸引力を作用させつつも、搬送ベルト20に対向している5列1行の吸着孔11についてはブロー機構によって吸着を解除することができる。吸着を解除された錠剤2は搬送ベルト20に受け渡される。
【0049】
搬送ベルト20は、ベルト式のコンベアである。例えば搬送ベルト20は、複数の保持板22をベルト状につなぎ合わせて得られるベルト状体を、一対のプーリに掛け渡して構成される。一対のプーリが駆動モータ(ここでは、図示しない)によって回転駆動されることによって、複数の保持板22からなるベルト状体が図1の矢印の方向に移動する。搬送ベルト20は、複数の保持板22からなるベルト状体の一部が搬送ドラム10の下部に近接して対向するように設置されている。
【0050】
図2に例示されるように、複数の保持板22のそれぞれにはベルト状体の幅方向(Y軸方向)に沿って等間隔で複数の吸着孔21が形成されている。本実施の形態では、各保持板22にY軸方向に沿って5列に吸着孔21が形成されている。各保持板22に5列に並べられた吸着孔21の間隔は、搬送ドラム10の中心軸に沿って5列に並べられた吸着孔11の間隔と略等しい。
【0051】
吸着孔11と同様に、複数の吸着孔21の底部には吸着孔21よりも小さな小孔が設けられており、複数の吸着孔21のそれぞれは当該小孔を介して搬送ベルト20の内部に設けられた吸引機構と連通している。当該吸引機構を作動させることによって、複数の吸着孔21のそれぞれに大気圧よりも低い負圧を作用させることができる。これによって、搬送ベルト20の各吸着孔21は1個の錠剤2を吸着保持することができる。
【0052】
搬送ベルト20は搬送ドラム10から錠剤2を受け取って保持し、その錠剤2を例えば図1の矢印方向(搬送方向)に沿って搬送する。搬送ベルト20のベルト状体の外周面は錠剤2とともに搬送方向に沿って移動するので、以下では、搬送ベルト20のベルト状体の外周面を搬送面とも呼ぶ。
【0053】
搬送ベルト20の環状の搬送面には、後述するカメラの撮像漏れを検出するためのマーク24が設けられている。マーク24は視覚的に識別可能であればよい。マーク24の一例はマーク12と同様である。
【0054】
搬送ベルト20は、錠剤2が搬送ベルト30の直上に到達したときに、当該錠剤2を搬送ベルト30へと受け渡す。搬送ベルト20の内部には、搬送ベルト30に対向する部位の近傍にブロー機構が設けられている。当該ブロー機構は、吸着孔21の底部に設けられた上記の小孔に向けて加圧されたエアーを吹き付ける。ブロー機構が小孔にエアーを吹き付けることによって、吸着孔21には大気圧よりも高い圧力を作用させることができる。これによって、吸着孔21による錠剤2の吸着状態を解除することができる。解除された錠剤2は搬送ベルト30に受け渡される。
【0055】
搬送ベルト30の構成は、搬送ベルト20と概ね同様である。すなわち、搬送ベルト30は、複数の保持板をベルト状につなぎ合わせて得られるベルト状体を、一対のプーリに掛け渡して構成される。一対のプーリが駆動モータによって回転駆動されることにより、搬送ベルト30は図1の矢印の方向に移動する。搬送ベルト30は、複数の保持板からなるベルト状体の一部が搬送ベルト20に近接して対向するように設置されている。
【0056】
搬送ベルト30の保持板にも、ベルトの幅方向(Y軸方向)に沿って等間隔で複数(本実施の形態では5列)の吸着孔が形成されている。
【0057】
上記と同様に、搬送ベルト30の吸着孔には、搬送ベルト30の内部に設けられた吸引機構によって大気圧よりも低い負圧を作用させることができる。これによって、搬送ベルト30の各吸着孔は1個の錠剤2を吸着保持することができる。
【0058】
搬送ベルト30は搬送ベルト20から錠剤2を受け取って保持し、その錠剤2を例えば図1の矢印方向(搬送方向)に沿って搬送する。搬送ベルト30のベルト状体の外周面は錠剤2とともに搬送方向に沿って移動するので、以下では、搬送ベルト30のベルト状体の外周面を搬送面とも呼ぶ。
【0059】
搬送ベルト30の環状の搬送面には、後述するカメラの撮像漏れを検出するためのマーク(不図示)が設けられている。当該マークは視覚的に識別可能であればよい。当該マークの一例はマーク12と同様である。
【0060】
また、搬送ベルト30の内部には、例えば4箇所にわたって、ブロー機構9が設けられている。各ブロー機構9がエアーを吹き付けることによって搬送ベルト30の吸着孔に大気圧よりも高い圧力を作用させて当該吸着孔による錠剤2の吸着状態を解除することができる。
【0061】
搬送ベルト30の4箇所のブロー機構9は、いずれも下方または斜め下方に向けてエアーを吹き付ける。したがって、4箇所のブロー機構のうち、良品ダクト48に対向する部位に設けられたブロー機構9がエアーを吹き付けることによって、吸着孔による錠剤2の吸着状態を解除して当該錠剤2を良品ダクト48に放出することができる。良品ダクト48に放出された錠剤2は良品回収ボックス58に回収される。
【0062】
また、撮像漏れダクト49に対向する部位に設けられたブロー機構9がエアーを吹き付けることによって、吸着孔による錠剤2の吸着状態を解除して当該錠剤2を撮像漏れダクト49に放出することができる。撮像漏れダクト49に放出された錠剤2は撮像漏れボックス59に回収される。
【0063】
また、外観不良品ダクト47に対向する部位に設けられたブロー機構9がエアーを吹き付けることによって、吸着孔による錠剤2の吸着状態を解除して当該錠剤2を外観不良品ダクト47に放出することができる。外観不良品ダクト47に放出された錠剤2は外観不良品ボックス57に回収される。
【0064】
さらに、印刷不良品ダクト46に対向する部位に設けられたブロー機構9がエアーを吹き付けることによって、吸着孔による錠剤2の吸着状態を解除して当該錠剤2を印刷不良品ダクト46に放出することができる。印刷不良品ダクト46に放出された錠剤2は印刷不良品ボックス56に回収される。
【0065】
ダクト46~49、ボックス56~59およびブロー機構9を含む構成は、錠剤2を仕分ける仕分け機構90として機能することができる。
【0066】
外観検査カメラ51、外観検査カメラ52および外観検査カメラ53は、それぞれの撮像エリアを撮像するための撮像部であり、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラまたはCCD(Charge Coupled Device)カメラである。外観検査カメラ51、外観検査カメラ52および外観検査カメラ53の撮像エリアを、以下では、それぞれ第1撮像エリア、第2撮像エリアおよび第3撮像エリアと呼ぶ。
【0067】
外観検査カメラ51は搬送ドラム10の搬送面に対向して設置されている。外観検査カメラ51は、搬送ドラム10の吸着孔11に吸着保持されて搬送される複数の錠剤2を撮像する。つまり、外観検査カメラ51の第1撮像エリアは搬送ドラム10の搬送面上に設定される。この第1撮像エリアの大きさは適宜に設定することが可能であるが、外観検査カメラ51は搬送ドラム10の円筒周面(搬送面)を撮像することとなるため、その円筒周面の広範囲にわたって焦点を合わせることは困難である。このため、外観検査カメラ51は1行の錠剤2を撮像する。
【0068】
なお、外観検査カメラ51は複数設けられてもよい。例えば1行に並ぶ複数の錠剤2の各々に対応して外観検査カメラ51が設けられてもよい。この場合、各外観検査カメラ51は1個の錠剤2を順次に撮像する。
【0069】
外観検査カメラ51は各錠剤2が第1撮像エリア内に進入するたびに第1撮像エリアを撮像し、錠剤2を含む画像データを取得する。より具体的な動作の一例として、制御部3は、搬送ドラム10の回転位置を検出するエンコーダの出力信号に基づいて、撮像タイミングを規定するタイミング信号を生成し、このタイミング信号を外観検査カメラ51に出力する。外観検査カメラ51は、制御部3から入力されたタイミング信号に基づいて撮像を行う。これにより、外観検査カメラ51は錠剤2が第1撮像エリア内に進入するたびに撮像エリアを撮像する。
【0070】
しかしながら、外観検査カメラ51は撮像すべき撮像タイミングにおいて、撮像を行わない場合がある。このような撮像漏れは、例えば、制御部3の動作エラーまたは外観検査カメラ51の動作エラー等の諸要因に起因して生じ得る。
【0071】
外観検査カメラ52は搬送ベルト20の搬送面に対向して設置されている。外観検査カメラ52は、搬送ドラム10との対向位置よりも搬送方向の下流側であって、かつ、インクジェットヘッド61よりも上流側を撮像できる位置に設けられている。
【0072】
外観検査カメラ52は、搬送ベルト20よって吸着保持されて搬送される複数の錠剤2を撮像する。つまり、外観検査カメラ52の第2撮像エリアは搬送ベルト20の搬送面上に設定される。この第2撮像エリアの大きさは適宜に設定することが可能であり、少なくとも外観検査カメラ52に対向している5列1行の錠剤2を撮像可能な大きさであればよい。
【0073】
なお、搬送ドラム10とは異なり、搬送ベルト20の搬送面は略平面であるため、外観検査カメラ52の第2撮像エリアが広くてもその全面について焦点を合わせることも比較的容易である。また、外観検査カメラ52は複数設けられてもよい。例えば1行に並ぶ複数の錠剤2の各々に対応して外観検査カメラ52が設けられてもよい。この場合、各外観検査カメラ52は1個の錠剤2を順次に撮像する。
【0074】
外観検査カメラ52は、各錠剤2が第2撮像エリア内に進入するたびに撮像エリアを撮像し、錠剤2を含む画像データを取得する。制御部3による具体的な撮像処理は、外観検査カメラ51に対する撮像処理と同様である。この外観検査カメラ52においても撮像漏れが生じ得る。
【0075】
外観検査カメラ53は搬送ベルト30の搬送面に対向して設置されている。外観検査カメラ53は、搬送ベルト20との対向位置よりも搬送方向の下流側であって、かつ、インクジェットヘッド62よりも上流側を撮像できる位置に設けられている。
【0076】
外観検査カメラ53は、搬送ベルト30よって吸着保持されて搬送される複数の錠剤2を撮像する。つまり、外観検査カメラ53の第3撮像エリアは搬送ベルト30の搬送面上に設定される。この第3撮像エリアの大きさは適宜に設定することが可能であり、少なくとも外観検査カメラ53に対向している5列1行の錠剤2を撮像可能な大きさであればよい。
【0077】
外観検査カメラ52と同様に、搬送ベルト30の搬送面は略平面であるため、外観検査カメラ53の第3撮像エリアが広くてもその全面について焦点を合わせることも比較的容易である。また、外観検査カメラ53は複数設けられてもよい。例えば1行に並ぶ複数の錠剤2の各々に対応して外観検査カメラ53が設けられてもよい。この場合、各外観検査カメラ53は1個の錠剤2を順次に撮像する。
【0078】
外観検査カメラ53は、各錠剤2が第3撮像エリア内に進入するたびに第3撮像エリアを撮像し、錠剤2を含む画像データを取得する。制御部3による具体的な撮像処理は、外観検査カメラ51に対する撮像処理と同様である。この外観検査カメラ53においても撮像漏れが生じ得る。
【0079】
インクジェットヘッド61およびインクジェットヘッド62は、複数の吐出ノズルを含み、それら吐出ノズルからインクジェット方式によってインクの液滴を吐出する。インクジェットの方式は、ピエゾ素子(圧電素子)に電圧を加えて変形させることによってインクの液滴を吐出するピエゾ方式であってもよいし、ヒータに通電してインクを加熱することによってインクの液滴を吐出するサーマル方式であってもよい。
【0080】
本実施の形態においては、医薬品の錠剤2などに印刷処理を行うため、インクジェットヘッド61およびインクジェットヘッド62から吐出するインクとしては、食品衛生法で認められている原料によって製造された可食性インクを使用することが望ましい。また、インクジェットヘッド61およびインクジェットヘッド62は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)および黒(K)の4色のインクを吐出可能であり、これらを混合することによってカラー印刷が可能である。ただし、インクジェットヘッド61およびインクジェットヘッド62が吐出するインクの色はこれに限られるものではない。また、それぞれのヘッドが吐出するインクの色が全て異なる色である必要はなく、一部のヘッドが吐出するインクの色が同じ色であってもよい。
【0081】
インクジェットヘッド61は、外観検査カメラ52よりも搬送方向の下流側に設けられている。インクジェットヘッド61は、搬送ベルト20によって吸着保持されて搬送される複数の錠剤2に対して印刷処理を行う。
【0082】
また、インクジェットヘッド62は、外観検査カメラ53よりも搬送方向の下流側に設けられている。インクジェットヘッド62は、搬送ベルト30によって吸着保持されて搬送される複数の錠剤2に対して印刷処理を行う。
【0083】
なお、インクジェットヘッド61およびインクジェットヘッド62は、それぞれ搬送ベルト20および搬送ベルト30の幅方向全域をカバーするフルラインヘッドであることが好ましい。
【0084】
錠剤印刷装置1は、製品検査カメラ71および製品検査カメラ72を含む。製品検査カメラ71および製品検査カメラ72としては、例えばCMOSカメラまたはCCDカメラを用いることができる。製品検査カメラ71は搬送ベルト20の搬送面に対向して設置されている。製品検査カメラ71は、インクジェットヘッド61よりも搬送方向の下流側を撮像できる位置に設けられている。
【0085】
製品検査カメラ71は、搬送ベルト20によって吸着保持されて搬送される複数の錠剤2を撮像する。つまり、製品検査カメラ71の第4撮像エリアは、搬送ベルト20の搬送面上に設定される。この第4撮像エリアの大きさは適宜に設定することが可能であり、製品検査カメラ71に対向している5列1行の錠剤2を撮像可能な大きさであってもよい。また、製品検査カメラ71が1行に並ぶ錠剤2のそれぞれに対応して設けられてもよい。この場合、製品検査カメラ71は1個の錠剤2を撮像する。
【0086】
製品検査カメラ71は、各錠剤2が第4撮像エリア内に進入するたびに第4撮像エリアを撮像し、錠剤2を含む画像データを取得する。制御部3による具体的な撮像処理は、外観検査カメラ51に対する撮像処理と同様である。この製品検査カメラ71においても撮像漏れが生じ得る。
【0087】
製品検査カメラ72は搬送ベルト30の搬送面に対向して設置されている。製品検査カメラ72は、インクジェットヘッド62よりも搬送方向の下流側を撮像できる位置に設けられている。製品検査カメラ72は、搬送ベルト30によって吸着保持されて搬送される複数の錠剤2を撮像する。つまり、製品検査カメラ72の第5撮像エリアは、搬送ベルト30の搬送面上に設定される。この第5撮像エリアの大きさは適宜に設定することが可能であり、製品検査カメラ72に対向している5列1行の錠剤2を撮像可能な大きさであってもよい。また、製品検査カメラ72が1行に並ぶ錠剤2のそれぞれに対応して設けられてもよい。この場合、製品検査カメラ72は1個の錠剤2を撮像する。
【0088】
製品検査カメラ72は、各錠剤2が第5撮像エリア内に進入するたびに第5撮像エリアを撮像し、錠剤2を含む画像データを取得する。制御部3による具体的な撮像処理は、外観検査カメラ51に対する撮像処理と同様である。この製品検査カメラ72においても撮像漏れが生じ得る。
【0089】
錠剤印刷装置1は、ヒータ76およびヒータ77を含む。ヒータ76およびヒータ77としては、例えば熱風を吹き付けて錠剤2を加熱して乾燥させる熱風乾燥式ヒータを用いることができる。ヒータ76は、インクジェットヘッド61よりも搬送方向の下流側に設けられている。ヒータ76は、インクジェットヘッド61によって印刷処理が行われた錠剤2に対して熱風を吹き付けて乾燥させる。
【0090】
ヒータ77は、インクジェットヘッド62よりも搬送方向の下流側に設けられている。ヒータ77は、インクジェットヘッド62によって印刷処理が行われた錠剤2に対して熱風を吹き付けて乾燥させる。
【0091】
なお、ヒータ76およびヒータ77はそれぞれ搬送ベルト20および搬送ベルト30の下方に設けられているが、搬送ベルト20および搬送ベルト30は錠剤2を吸着保持して搬送するため、錠剤2が下側を向いている状態であっても当該錠剤2は落下せずに搬送される。
【0092】
また、錠剤2の乾燥処理にはヒータが必ずしも用いられる必要はなく、錠剤2の種類によっては自然乾燥によって乾燥させることが望ましい場合もある。その場合には、錠剤印刷装置1はヒータ76およびヒータ77を含んでいなくてもよい。
【0093】
錠剤印刷装置1は、清掃機構83および清掃機構84を含む。搬送ベルト20および搬送ベルト30には、錠剤2から生じた粉体が付着することがある。清掃機構83および清掃機構84は、それぞれ搬送ベルト20および搬送ベルト30に付着した粉体を清掃する。清掃機構83および清掃機構84としては、例えばエアーを吹き付けて周辺雰囲気を吸引回収するものを採用することができる。
【0094】
制御部3は、錠剤印刷装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM(Read Only Memory)、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM(Random Access Memory)および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって錠剤印刷装置1における錠剤2に対する処理が進行する。なお、制御部3の機能の一部または全部は専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0095】
制御部3は、外観検査カメラ51および外観検査カメラ52等によって取得された画像データに基づいてインクジェットヘッド61およびインクジェットヘッド62を制御する印刷制御部としての機能も有している。
【0096】
制御部3は画像処理部として機能できる。例えば制御部3は、外観検査カメラ51、外観検査カメラ52、外観検査カメラ53、製品検査カメラ71または製品検査カメラ72によって取得された画像データに対する画像処理に基づいて、錠剤2の良否を判定する機能を有している。また、制御部3は、当該画像データに対する画像処理に基づいて各カメラにおいて撮像漏れが生じたか否かを判定する機能も有している。
【0097】
<錠剤印刷装置の動作>
次に、錠剤印刷装置1における処理動作の一例について説明する。図3および図4は、錠剤印刷装置1における処理動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【0098】
まず、錠剤印刷装置1のホッパー8に複数の錠剤2を一括投入する(ステップS1)。錠剤の一括投入は、作業者がバケツなどを用いて手動で行うようにしてもよいし、錠剤印刷装置1とは別体の搬送機構などによって自動で行うようにしてもよい。
【0099】
本実施の形態では、複数の円盤形状の錠剤2がホッパー8に投入される。図5は、錠剤2の平面図である。錠剤2の片面には、錠剤2を半分に割るための割線7が形成されている。割線7は、円盤形状の錠剤2の径方向に沿って刻まれた溝である。割線7は錠剤2の片面のみに形成されている。
【0100】
本実施の形態では、割線7が設けられている側の面を錠剤2の表面とする。錠剤2の裏面には割線7は形成されていない。なお、錠剤2の表面と裏面とでは薬剤としての性質に相違があるものではなく、単に区別のための便宜上、割線7が設けられている側の面を表面としているに過ぎない。
【0101】
ホッパー8に投入された複数の錠剤2は供給フィーダ124によって搬送ドラム10に導かれ、複数の錠剤2が1個ずつ搬送ドラム10の吸着孔11に吸着保持される。
【0102】
搬送ドラム10には、搬送方向(搬送ドラム10の周方向)に垂直な方向、つまり搬送ドラム10の中心軸方向に沿って5列に吸着孔11が形成されている。したがって、搬送ドラム10は、搬送方向と垂直な方向に5個の錠剤を整列させた5列にて複数の錠剤2を搬送する。
【0103】
本明細書では、搬送ドラム10の搬送方向と垂直な方向に5個の錠剤を配列した単位を「行」と表記する。すなわち、搬送ドラム10は、各吸着孔11に個別に錠剤2を吸着保持し、複数の錠剤2を5列複数行に整列させた状態で搬送する(ステップS2)。
【0104】
なお、ホッパー8から投入された錠剤2を搬送ドラム10が5個ずつ円滑に吸着保持できるように、ホッパー8に複数の錠剤2を5個ずつ整列させて供給する整列機構を取り付けるようにしてもよい。このような整列機構としては、例えばボールフィーダー方式の機構を採用することができる。
【0105】
次に、搬送ドラム10によって搬送されている複数の錠剤2を外観検査カメラ51が撮像する(ステップS3)。複数の錠剤2は、搬送ドラム10の吸着孔11に保持されて搬送ドラム10の周方向に沿って図1の紙面上で反時計回りに搬送される。複数の錠剤2は、5列ずつ整列されて搬送されるものの、各錠剤2の表面が搬送ドラム10の内側(搬送ドラム10の中心側)を向いているか外側を向いているかは全くランダムである。また、円形の吸着孔11によって円形の錠剤2を保持することとなるため、錠剤2の方向性は任意となり、搬送ドラム10によって搬送される各錠剤2の割線7の向きも全くランダムである。
【0106】
外観検査カメラ51は、搬送ドラム10の外側から錠剤2を撮像する。よって、外観検査カメラ51によって撮像される錠剤2には、外観検査カメラ51に対して表面を向けているものと裏面を向けているものとがランダムに含まれている。
【0107】
換言すれば、外観検査カメラ51は、搬送ドラム10によって搬送される複数の錠剤2の一方面を撮像しているのである。ここで、「一方面」とは、錠剤2の表面であるか裏面であるかに関わりなく、搬送ドラム10によって搬送されている錠剤2の搬送ドラムに接触している面とは反対側の面である。本実施の形態では、複数の外観検査カメラ51が設けられており、外観検査カメラ51は1個の錠剤2ごとに撮像を行う。
【0108】
通常、医薬品である錠剤2の製造に際しては異物などの混入がないように万全の品質管理がなされているが、それでもなお異物などが混入することもある。このような異物としては、例えば人の髪の毛や金属粉などがあり得る。
【0109】
外観検査カメラ51によって撮像された結果である画像データは、制御部3に転送される。制御部3は、その画像データに所定の画像処理を施すことによって、複数の錠剤2のうち一方面に表面を向けている錠剤2の割線7の方向および一方面に異物が付着している錠剤2を認識する(ステップS4)。
【0110】
制御部3は、外観検査カメラ51からの画像データに基づいて、撮像漏れの判定処理を行う(ステップS5)。撮像漏れの判定処理については後に詳述する。
【0111】
次に、外観検査カメラ51によって撮像された錠剤2が搬送ドラム10によってさらに搬送されて搬送ベルト20に近接対向する位置に到達する。このときに、搬送ドラム10のブロー機構が5列1行の錠剤2が吸着保持されている5個の吸着孔11にエアーを吹き付けることによって、当該5列1行の錠剤2に対する吸着状態を解除する。
【0112】
一方、搬送ドラム10に近接対向する位置における搬送ベルト20の保持板22の吸着孔21には負圧が作用している。したがって、搬送ドラム10による吸着状態が解除された5列1行の錠剤2は、搬送ドラム10の吸着孔11から搬送ベルト20の吸着孔21に受け渡されて吸着保持されることとなる。
【0113】
このような錠剤2の受け渡しを確実に行うため、制御部3は、搬送ドラム10の搬送速度と搬送ベルト20の搬送速度とを等しくするとともに、吸着孔11と吸着孔21とが正確に対向するように双方の搬送部の動作を同期させる制御を行っている。
【0114】
搬送ドラム10から搬送ベルト20に錠剤2が受け渡されるとき、その錠剤2は回転等せずにそのまま移動する。すなわち、それぞれの錠剤2は割線7の方向を維持したまま搬送ドラム10から搬送ベルト20に受け渡されることとなる。
【0115】
また、搬送ドラム10から搬送ベルト20に錠剤2が受け渡されるときに、それぞれの錠剤2は表裏反転することとなる。すなわち、搬送ドラム10では割線7が形成された表面を外側に向けて吸着保持されていた錠剤2は、裏面を外側に向けて搬送ベルト20の吸着孔21に吸着保持される。逆に、搬送ドラム10では裏面を外側に向けて吸着保持されていた錠剤2は、表面を外側に向けて搬送ベルト20に吸着保持される。
【0116】
したがって、搬送ドラム10によって搬送されていた各錠剤2はその方向を維持したまま表裏反転されて搬送ベルト20に受け渡されて搬送される(ステップS6)。
【0117】
続いて、搬送ベルト20によって搬送されている複数の錠剤2を外観検査カメラ52が撮像する(ステップS7)。搬送ベルト20は、搬送ドラム10から表裏反転させて受け取った複数の錠剤2を搬送方向と垂直な方向に5列ずつ整列させて搬送している。外観検査カメラ52は、搬送ベルト20の外側から錠剤2を撮像する。よって、外観検査カメラ52によって撮像される錠剤2にも、外観検査カメラ52に対して表面を向けているものと裏面を向けているものとがランダムに含まれている。
【0118】
ただし、搬送ドラム10から搬送ベルト20に各錠剤2を受け渡すときに表裏が反転するため、外観検査カメラ51が撮像した各錠剤2の表裏と外観検査カメラ52が撮像した対応する錠剤2の表裏とは完全に逆となる。
【0119】
換言すれば、外観検査カメラ52は、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2の他方面を撮像しているのである。ここで、「他方面」とは、上述の一方面とは反対側の面という意味であり、錠剤2の表面であるか裏面であるかに関わりなく、搬送ベルト20によって搬送されている錠剤2の外側を向いている面である。本実施の形態では、複数の外観検査カメラ51が設けられており、外観検査カメラ51は1個の錠剤2ごとに撮像を行う。
【0120】
外観検査カメラ52によって撮像された結果である画像データは、制御部3に転送される。制御部3は、その画像データに所定の画像処理を施すことによって、複数の錠剤2のうち他方面に表面を向けている錠剤2の割線7の方向および他方面に異物が付着している錠剤2を認識する(ステップS8)。
【0121】
制御部3は、外観検査カメラ52からの画像データに基づいて、撮像漏れの判定処理を行う(ステップS9)。撮像漏れの判定処理については後に詳述する。
【0122】
次に、外観検査カメラ52によって撮像された錠剤2が搬送ベルト20によってさらに搬送されてインクジェットヘッド61に対向する位置に到達する。そして、インクジェットヘッド61が錠剤2に対する印刷処理を行う(ステップS10)。ここで、制御部3は、外観検査カメラ51および外観検査カメラ52によって取得された画像データに基づいてインクジェットヘッド61による印刷処理を制御する。図6は、インクジェットヘッド61による印刷処理結果の一例を示す図である。
【0123】
上述したように、外観検査カメラ51は、搬送ドラム10によって搬送される複数の錠剤2の一方面を撮像する。搬送ドラム10から搬送ベルト20に錠剤2が受け渡されるときに、全ての錠剤2の表裏が反転する。そして、外観検査カメラ52は、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2の他方面を撮像する。
【0124】
したがって、全ての錠剤2について、外観検査カメラ51および外観検査カメラ52によって表裏両面が撮像されて画像データが取得されている。具体的には、外観検査カメラ51によって表面が撮像された錠剤2については外観検査カメラ52によって裏面が撮像される。逆に、外観検査カメラ51によって裏面が撮像された錠剤2については外観検査カメラ52によって表面が撮像される。
【0125】
インクジェットヘッド61は、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2の他方面に対して印刷処理を行うこととなる。ただし、インクジェットヘッド61は、複数の錠剤2のうち外観検査工程(ステップS4)および外観検査工程(ステップS8)の双方において異物などが検出されていない、かつ、撮像漏れ判定工程(ステップS5)および撮像漏れ判定工程(ステップS9)の双方において撮像漏れが生じたと判定されていない錠剤2に対してのみ印刷処理を行う。
【0126】
また、制御部3は、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が表面である錠剤2に対しては表面用印刷データに基づいてインクジェットヘッド61に表面用印刷処理を行わせる。ここでは、表面用印刷データとして、例えば「ABCD」の文字データを採用する。
【0127】
さらに、制御部3は、当該錠剤2の表面に形成された割線7に対する所定方向に沿ってインクジェットヘッド61に錠剤2の表面への表面用印刷処理を行わせる。本実施の形態では、錠剤2の表面の割線7と平行な方向に沿ってインクジェットヘッド61が印刷処理を行う。搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が表面である錠剤2における割線7の方向については、外観検査カメラ52によって取得された画像データに画像処理を施すことによって制御部3が認識することができる(図6の実線で示す割線7の方向)。
【0128】
一方、制御部3は、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が裏面である錠剤2に対しては、裏面用印刷データに基づいてインクジェットヘッド61に裏面用印刷処理を行わせる。ここでは、裏面用印刷データとして、例えば「1234」の文字データとする。
【0129】
制御部3は、当該錠剤2の表面に形成されている割線7に対する上記所定方向と同一方向に沿って、インクジェットヘッド61に当該錠剤2の裏面にも裏面用印刷処理を行わせる。本実施の形態では、錠剤2の表面に対しては割線7と平行な方向に沿って印刷処理が行われており、錠剤2の裏面に対しても表面側の割線7と平行な方向に沿ってインクジェットヘッド61が印刷処理を行う。
【0130】
搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち他方面が裏面である錠剤2の表面側における割線7の方向については、外観検査カメラ51によって取得された画像データに画像処理を施すことによって制御部3が認識することができる(図6の点線で示す割線7の方向)。
【0131】
さらに、制御部3は、外観検査カメラ52によって取得された画像データに基づいて、インクジェットヘッド61による各錠剤2に対する印刷位置の微調整(修正)を行う。搬送ベルト20の吸着孔21のサイズは錠剤2の大きさよりもやや大きいため、搬送ドラム10から搬送ベルト20に錠剤2が受け渡されるとき、各錠剤2の方向性は維持されるものの、吸着孔21の範囲内で若干の位置のバラツキが生じる。
【0132】
制御部3は、外観検査カメラ52によって取得された画像データから吸着孔21内における各錠剤2の位置のずれを検出し、その検出結果に基づいて印刷位置の微調整を実行する。このようにして、複数の錠剤2の他方面に対する印刷処理が実行される。
【0133】
本実施の形態においては、異物などが検出された錠剤2、および、撮像漏れが生じた錠剤2に対しては印刷処理を行わない。その結果、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち異物などが検出されず、撮像漏れが生じず、かつ、他方面が表面である錠剤2(図6の右側の錠剤2)については、表面に形成された割線7と平行な方向に沿って「ABCD」という文字列がインクジェットヘッド61によって錠剤2の表面に印刷されることとなる。
【0134】
また、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2のうち異物などが検出されず、撮像漏れが生じず、かつ、他方面が裏面である錠剤2(図6の左側の錠剤2)については、表面に形成された割線7と平行な方向に沿って「1234」という文字列がインクジェットヘッド61によって錠剤2の裏面に印刷されることとなる。
【0135】
次に、他方面に対する印刷処理が行われた錠剤2が、搬送ベルト20によってさらに搬送されて製品検査カメラ71に対向する位置に到達する。製品検査カメラ71は、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2の他方面を撮像し、インクジェットヘッド61による複数の錠剤2の他方面に対する印刷処理の結果を撮像する。
【0136】
製品検査カメラ71は、取得した画像データを制御部3に転送する。制御部3は、製品検査カメラ71によって取得された画像データに基づいて、複数の錠剤2の他方面に対するインクジェットヘッド61の印刷処理結果を確認する(ステップS11)。このとき、複数の錠剤2のうち他方面に異物が付着している錠剤2については、その異物の付着も製品検査カメラ71による撮像によって検知されることとなる。
【0137】
制御部3は、製品検査カメラ71からの画像データに基づいて、撮像漏れの判定処理を行う(ステップS12)。撮像漏れの判定処理については後に詳述する。
【0138】
次に、他方面の印刷処理結果が検査された錠剤2が搬送ベルト20によってさらに搬送されてヒータ76に対向する位置に到達する。図1に例示されたように、ヒータ76は搬送ベルト20よりも下方に設置されており、錠剤2がヒータ76に対向する位置に到達したときには、当該錠剤2は搬送ベルト20によって下向きに保持されていることとなる。搬送ベルト20は吸着孔21に負圧を作用させることによって錠剤2を吸着保持しているため、錠剤2を下向きに保持することも可能である。
【0139】
ヒータ76は、搬送ベルト20によって搬送される複数の錠剤2の他方面に対して熱風を吹き付けてそれら複数の錠剤2を乾燥させる(ステップS13)。このような乾燥処理を行うことによって、インクジェットヘッド61から複数の錠剤2に吐出されたインクを迅速に乾燥させてにじみを防止することができる。
【0140】
次に、ヒータ76によって乾燥された5列1行の錠剤2が搬送ベルト20によってさらに搬送されて搬送ベルト30に近接対向する位置に到達する。このときに、搬送ベルト20のブロー機構が当該5列1行の錠剤2が吸着保持されている5個の吸着孔21にエアーを吹き付けることによって当該5列1行の錠剤2に対する吸着状態を解除する。一方、搬送ベルト20に近接対向する位置における搬送ベルト30の吸着孔には負圧が作用している。したがって、搬送ベルト20による吸着状態が解除された5列1行の錠剤2は、搬送ベルト20の吸着孔21から搬送ベルト30の吸着孔に受け渡されて吸着保持されることとなる。このような錠剤2の受け渡しを確実に行うため、制御部3は、搬送ベルト20の搬送速度と搬送ベルト30の搬送速度とを等しくするとともに、双方の搬送ベルトの吸着孔が正確に対向するように双方の搬送ベルトの動作を同期させる制御を行っている。
【0141】
搬送ベルト20から搬送ベルト30に錠剤2が受け渡されるとき、その錠剤2は回転等することなくそのまま移動する。すなわち、それぞれの錠剤2は割線7の方向を維持したまま搬送ベルト20から搬送ベルト30に受け渡されることとなる。
【0142】
また、搬送ベルト20から搬送ベルト30に錠剤2が受け渡されるときに、それぞれの錠剤2は表裏反転することとなる。すなわち、搬送ベルト20では割線7が形成された表面を外側に向けて吸着保持されていた錠剤2は裏面を外側に向けて搬送ベルト30に吸着保持される。逆に、搬送ベルト20では裏面を外側に向けて吸着保持されていた錠剤2は表面を外側に向けて搬送ベルト30に吸着保持される。したがって、搬送ベルト20によって搬送されていた各錠剤2はその方向を維持したまま表裏反転されて搬送ベルト30に受け渡されて搬送されるのである(ステップS14)。
【0143】
続いて、搬送ベルト30によって搬送されている複数の錠剤2を外観検査カメラ53が撮像する(ステップS15)。搬送ベルト30は、搬送ベルト20から表裏反転させて受け取った複数の錠剤2を搬送方向と垂直な方向に5列ずつ整列させて搬送している。外観検査カメラ53は、搬送ベルト30の外側から錠剤2を撮像する。したがって、外観検査カメラ53が撮像した各錠剤2の表裏は、外観検査カメラ52が撮像した対応する錠剤2の表裏とは完全に逆になる一方で、外観検査カメラ51が撮像した対応する錠剤2の表裏とは完全に一致する。すなわち、外観検査カメラ53は、外観検査カメラ51と同じく、搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2の一方面を撮像している。本実施の形態では、複数の外観検査カメラ53が設けられており、各外観検査カメラ53は1個の錠剤2に対して撮像を行う。
【0144】
外観検査カメラ53による撮像は、搬送ベルト30によって吸着保持される複数の錠剤2の位置のバラツキを検出するために行われる。制御部3は、外観検査カメラ53によって取得された画像データから搬送ベルト30の吸着孔内における各錠剤2の位置のずれを検出する。制御部3は、ステップS4およびステップS8におけるような外観検査を行ってもよい。また制御部3は、外観検査カメラ53からの画像データに基づいて撮像漏れ判定を行ってもよい。
【0145】
次に、外観検査カメラ53によって撮像された錠剤2が、搬送ベルト30によってさらに搬送されてインクジェットヘッド62に対向する位置に到達する。そして、インクジェットヘッド62が錠剤2に対する印刷処理を行う(ステップS16)。ここで、制御部3は、主に外観検査カメラ51および外観検査カメラ52によって取得された画像データに基づいて、インクジェットヘッド62による印刷処理を制御する。
【0146】
インクジェットヘッド62は、搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2の一方面に対して印刷処理を行うこととなる。ただし、インクジェットヘッド61と同様に、インクジェットヘッド62は、複数の錠剤2のうち外観検査工程(ステップS4)および外観検査工程(ステップS8)の双方において異物などが検出されていない、かつ、撮像漏れ判定工程(ステップS5)および撮像漏れ判定工程(ステップS9)の双方において撮像漏れが生じたと判定されていない錠剤2に対してのみ印刷処理を行う。
【0147】
インクジェットヘッド62による印刷はインクジェットヘッド61による印刷と同様であるので、紙面の増大を避けるために繰り返しの説明を省略する。
【0148】
次に、一方面に対する印刷処理が行われた錠剤2が、搬送ベルト30によってさらに搬送されて製品検査カメラ72に対向する位置に到達する。製品検査カメラ72は、搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2の一方面を撮像し、インクジェットヘッド62による複数の錠剤2の一方面に対する印刷処理の結果を撮像する。
【0149】
製品検査カメラ72は、取得した画像データを制御部3に転送する。制御部3は、製品検査カメラ72によって取得された画像データに基づいて、複数の錠剤2の一方面に対するインクジェットヘッド62の印刷処理結果を確認する(ステップS17)。このとき、複数の錠剤2のうち一方面に異物が付着している錠剤2については、その異物の付着も製品検査カメラ72による撮像によって検知されることとなる。
【0150】
制御部3は、製品検査カメラ72からの画像データに基づいて、撮像漏れの判定処理を行う(ステップS18)。撮像漏れの判定処理については後に詳述する。
【0151】
続いて、一方面の印刷処理結果が検査された錠剤2が搬送ベルト30によってさらに搬送されてヒータ77に対向する位置に到達する。ヒータ77は、搬送ベルト30によって搬送される複数の錠剤2の一方面に対して熱風を吹き付けてそれら複数の錠剤2を乾燥させる(ステップS19)。このような乾燥処理を行うことによって、インクジェットヘッド62から複数の錠剤2に吐出されたインクを迅速に乾燥させてにじみを防止することができる。
【0152】
最後に、表裏両面の検査が終了した錠剤2の仕分け処理が行われる(ステップS20)。具体的には、以下の処理を、制御部3の制御でブロー機構9を動作させることによって行う。
【0153】
ステップS11およびステップS17における表裏両面の印刷処理の結果に問題がなく、かつ、撮像漏れも生じていない錠剤2、つまり良品の錠剤2については、ブロー機構からのエアー吹き付けによって良品ダクト48に投入される。良品ダクト48に放出された錠剤2は良品回収ボックス58に回収される。
【0154】
一方、表裏両面のいずれかの印刷処理の結果に問題のあった錠剤2、つまり不良品の錠剤2については、ブロー機構からのエアー吹き付けによって印刷不良品ダクト46に投入される。印刷不良品ダクト46に放出された錠剤2は印刷不良品ボックス56に回収される。
【0155】
また、複数の錠剤2のうち外観検査カメラ51または外観検査カメラ52によって異物などが検出された錠剤2、すなわち印刷処理が行われなかった錠剤2については、ブロー機構からのエアー吹き付けによって外観不良品ダクト47に投入される。外観不良品ダクト47に放出された錠剤2は外観不良品ボックス57に回収される。このように、欠陥などが検出された錠剤2については、欠陥などが検出されずに印刷処理が行われた錠剤2とは別に外観不良品ボックス57に回収することができる。
【0156】
また、複数の錠剤2のうち外観検査カメラ51、外観検査カメラ52、外観検査カメラ53、製品検査カメラ71または製品検査カメラ72における撮像漏れが生じた錠剤2については、ブロー機構からのエアー吹き付けによって撮像漏れダクト49に投入される。撮像漏れダクト49に放出された錠剤2は撮像漏れボックス59に回収される。このように、撮像漏れが生じた錠剤2については、異物などが検出されずに印刷処理が行われた錠剤2とは別に撮像漏れボックス59に回収することができる。
【0157】
なお、撮像漏れボックス59に回収された錠剤2は、錠剤2の搬送経路における上流側へ再投入されてもよい。具体的には、撮像漏れが生じたカメラの位置よりも上流の位置から投入されることが望ましい。例えば、製品検査カメラ71における撮像漏れが生じたのであれば、ホッパー8ではなくインクジェットヘッド62よりも下流であって製品検査カメラ71よりも上流の位置から、撮像漏れが生じた錠剤2が投入されてもよい。当該投入動作は、図示しない駆動アームなどが、制御部3の制御で動作することによって行われてもよい。
【0158】
<撮像漏れの判定処理>
以下で詳述する撮像漏れの判定処理は、外観検査カメラ51、外観検査カメラ52、外観検査カメラ53、製品検査カメラ71および製品検査カメラ72のいずれにも適用することができる。つまり、当該判定処理はステップS5、ステップS9、ステップS12およびステップS18のいずれにも適用可能である。以下では、代表的に、外観検査カメラ51を対象とした撮像漏れの判定処理について述べる。なお、外観検査カメラ51に対して撮像漏れが生じたか否かを判定する判定装置は、少なくとも、搬送ドラム10と、外観検査カメラ51と、制御部3とによって構成される。
【0159】
外観検査カメラ51は、搬送ドラム10の搬送面に吸着保持された錠剤2を撮像する。ここでは、説明の簡単のために、外観検査カメラ51が1個の錠剤2を撮像する場合について述べる。
【0160】
図2に例示するように、外観検査カメラ51の撮像対象たる搬送ドラム10の搬送面には、複数のマーク12が設けられている。図7は、搬送ドラム10の搬送面の一部の概略構成の一例を平面的に示す図である。図7の例では、搬送ドラム10の搬送面のうち、1列の錠剤2に相当する部分が示されている。図7では、搬送ドラム10における搬送方向が搬送方向D1で示されており、また、外観検査カメラ51の第1撮像エリアが第1撮像エリアR1で示されている。図7に例示すように、1列の錠剤2は搬送方向D1に沿って並ぶ。
【0161】
図7の例では、複数のマーク12はそれぞれ複数の錠剤2に1対1で対応して設けられている。言い換えれば、複数のマーク12はそれぞれ吸着孔11に1対1で対応して設けられる。各マーク12は、対応する錠剤2(吸着孔11)の近傍に設けられ、対応する錠剤2とともに外観検査カメラ51の第1撮像エリアR1内に進入する。外観検査カメラ51は第1撮像エリアR1を撮像することにより、錠剤2およびマーク12の両方を含む画像データを取得する。逆に言えば、マーク12は、錠剤2とともに外観検査カメラ51によって撮像される位置に設けられている。
【0162】
図7の例では、マーク12として2種類のマーク12aおよびマーク12bが採用されている。マーク12aおよびマーク12bは互いに異なる形状を有している。図7の例では、マーク12aは、搬送方向D1に直交する直交方向に延在する一対のラインによって構成されている。当該一対のラインは、錠剤2(吸着孔11)の直径の延長線に相当しており、その直交方向の両側に設けられている。マーク12bは搬送方向D1に沿って延在する一対のラインによって構成されている。当該一対のラインも、錠剤2(吸着孔11)の直径の延長線に相当しており、その搬送方向D1の両側に設けられている。複数のマーク12は、マーク12aおよびマーク12bが搬送方向D1に沿って交互に並ぶように設けられている。なお、搬送ドラム10に設けられる錠剤2(吸着孔11)の1列の個数は偶数個に設定される。これにより、搬送ドラム10の搬送面上に、マーク12aおよびマーク12bを交互に並ぶように設けることができる。
【0163】
図8および図9は、外観検査カメラ51が取得した一連の画像データIM1の一例を概略的に示す図である。図8および図9では、複数の画像データIM1が時系列的に並んで示されている。図8では、撮像漏れが生じていない場合の複数の画像データIM1が示されており、図9では、1枚分の撮像漏れが生じた場合の複数の画像データIM1が示されている。図9では、取得できなかった画像データIM1を破線で示している。また、図8および図9では、画像データIM1の下側に表が付記されている。この表については後に詳述する。
【0164】
図8に例示するように、撮像漏れが生じていない場合には、外観検査カメラ51は、マーク12aを含む画像データIM1と、マーク12bを含む画像データIM1とを交互に取得する。これは、搬送ドラム10の搬送面において、マーク12aおよびマーク12bが搬送方向D1に沿って交互に並んでいるからである。
【0165】
これに対して、図9に例示するように、1枚分の撮像漏れが生じた場合、外観検査カメラ51は、同じ種類のマーク12を含む画像データIM1を続けて取得する。図9の例では、マーク12aを撮像すべき撮像タイミングにおいて外観検査カメラ51が撮像を行っていない。よって、この撮像漏れの前後において、マーク12bを含む画像データIM1が連続している。
【0166】
ここで、検出マークパターンを導入する。検出マークパターンは、画像データIM1内のマーク12の種類を画像データIM1ごとに時系列的に並べて得られるパターンである。マーク12aおよびマーク12bをそれぞれ「A」および「B」の記号で表現すると、撮像漏れが生じていないときの検出マークパターンは、(・・・,A,B,・・・)で表現される。つまり、このときの検出マークパターンは、(A,B)が繰り返されたパターンである。図8および図9には、この検出マークパターンも示されている。
【0167】
次に基準パターンを導入する。基準パターンは、搬送ドラム10の搬送面上のマーク12の種類を搬送方向D1に並べて得られるパターンである。図7の例では、マーク12aおよびマーク12bが搬送方向D1に沿って交互に配列されるので、基準パターンも(・・・,A,B,・・・)で表現される。つまり、基準パターンも、(A,B)が繰り返されたパターンである。なお、この基準パターンにおいて、複数の構成要素(「A」または「B」)のうち互いに隣り合ういずれの二者も互いに相違する。言い換えれば、基準パターンにおいて、同じ構成要素が連続していない。
【0168】
図8から理解できるように、撮像漏れが生じていないときの検出マークパターンは基準パターンと一致する。その一方で、図9の例では、検出マークパターンは、(・・・,A,B,B,A,B,・・・)で表現される。つまり、1枚分の撮像漏れが生じたときには、検出マークパターンは基準パターンと相違する。
【0169】
そこで、制御部3は撮像漏れが生じたか否かを検出マークパターンおよび基準パターンに基づいて判定する。図10は、制御部3による撮像漏れの判定処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御部3は、外観検査カメラ51から画像データIM1が入力されたか否かを判定する(ステップS31)。未だ画像データIM1が入力されていないときには、制御部3は再びステップS31の処理を実行する。
【0170】
画像データIM1が入力されたときには、制御部3は画像データIM1に対してマーク識別処理を行う(ステップS32)。マーク識別処理とは、画像データIM1内のマーク12を識別する処理である。具体的な一例として、制御部3は画像データIM1に対して、基準画像を用いたパターン認識処理を施すことにより、画像データIM1内のマーク12を識別する。パターン認識処理の手法としては、テンプレートマッチングなどの任意の手法を採用することができる。基準画像としては、予め取得された、マーク12aが含まれた画像、および、マーク12bが含まれた画像が採用される。このマーク識別処理の結果(以下、識別結果とも呼ぶ)は、画像データIM1内のマーク12の種類(マーク12aかマーク12bか)を示す。
【0171】
次に、制御部3はパターン判定処理を行う(ステップS33)。パターン判定処理とは、検出マークパターンが基準パターンに一致しているか否かを判定し、検出マークパターンが基準パターンと相違するときに撮像漏れが生じたと判定する処理である。パターン判定処理の具体的な処理の一例は後に詳述する。
【0172】
次に、制御部3は処理を終了すべきか否かを判定する(ステップS34)。例えばホッパー8に投入された全ての錠剤2に対する撮像が終了しているときには、制御部3は処理を終了すべきと判定し、処理を終了する。処理を終了すべきでないと判定したときには、制御部3はステップS31の処理を再び実行する。
【0173】
以上のように、制御部3は、画像データIM1が入力されるたびに、マーク識別処理(ステップS32)およびパターン判定処理(ステップS33)を実行する。よって、撮像漏れが生じた場合には、制御部3はその撮像漏れをリアルタイムで検出することができる。
【0174】
次に、パターン判定処理の具体的な一例について述べる。このパターン判定処理を説明するにあたって、まず、その考え方について述べる。
【0175】
基準パターンは、搬送ドラム10の搬送面に設けられたマーク12によって規定されるので、基準パターンの構成要素の並びは予め分かっている。図7の例では、基準パターンは、(A,B)が繰り返されたパターンである。言い換えれば、撮像漏れが生じていないときのマーク識別処理の結果(以下、基準要素と呼ぶ)は予め分かっている。したがって、画像データIM1に対するマーク識別処理の結果が基準要素と一致していれば、検出マークパターンが基準パターンに一致しているといえる。その一方で、識別結果が当該基準要素と相違していれば、検出マークパターンが基準パターンと相違しているといえる。
【0176】
そこで、パターン判定処理の具体的な一例として、制御部3は以下に説明するように、検出マークパターンと基準パターンとの一致/相違を判定する。
【0177】
図11は、パターン判定処理の動作の具体的な一例を示すフローチャートである。制御部3は、ステップS32の識別結果(マーク12の種類)が基準要素と一致するか否かを判定する(ステップS41)。この基準要素は、撮像漏れが生じていないときに画像データIM1に含まれるべきマーク12の種類を示しており、基準パターンの並びに沿って更新される。基準要素の初期値としては、1回目のステップS32の識別結果を採用してもよい。この場合、1回目のステップS41では、識別されたマーク12は必ず基準要素に一致する。そして、制御部3は基準パターンの構成要素の並びにしたがって当該基準要素を更新し、次回以降の基準要素を決定する(ステップS43)。例えば、1回目のステップS32の識別結果が「A」を示していれば、2回目の基準要素として「B」が採用され、3回目の基準要素として「A」が再び採用される。以下、制御部3は同様にして基準要素を更新する。
【0178】
図8および図9には、各画像データIM1に対応して、識別結果、基準要素、および、識別結果と基準要素との一致/相違の別を示している。図では、マーク12の種類を示す記号として、「A」および「B」に加えて、符号「12a」および「12b」も示している。
【0179】
ステップS41にて、識別結果が基準要素と一致すると判定したときには、検出マークパターンは基準パターンと一致するので、制御部3は撮像漏れが生じたとは判定せずに、制御部3は基準要素を更新する(ステップS43)。具体的には、制御部3は基準パターンの並びにおいて、識別結果が示す要素の1つ後の構成要素を、次の基準要素に採用する。例えば識別結果が「A」を示しているときには、基準パターンの並びにおいて「A」の1つ後の構成要素は「B」であるので、制御部3は次の基準要素として「B」を採用する。識別結果が「B」を示しているときには、基準パターンの並びにおいて「B」の1つ後の構成要素は「A」であるので、制御部3は次の基準要素として「A」を採用する。
【0180】
図8の例では、各画像データIM1の識別結果が基準要素と一致するので、制御部3は、どの画像データIM1に対する判定でも、撮像漏れが生じていないと判定する。
【0181】
一方で、識別結果が基準要素と相違するときには、検出マークパターンが基準パターンと相違するので、制御部3は、撮像漏れが生じたと判定する(ステップS42)。図9に例示するように、撮像漏れが生じた直後の画像データIM1において、識別結果が基準要素と相違する。よってこのとき、制御部3は撮像漏れが生じたと判定する。
【0182】
図9から理解できるように、撮像漏れは、撮像漏れが生じたと判定したときの画像データIM1の直前で生じる。そこで、制御部3は、外観検査カメラ51が撮像できなかった錠剤2(以下、対象錠剤とも呼ぶ)を次のように特定する。ここで、撮像漏れが生じたと判定したときの画像データIM1を第1画像データIM1と呼び、その第1画像データIM1に含まれる錠剤2を第1錠剤2と呼ぶ。図9を参照して、制御部3は、第1画像データIM1の1つ前に外観検査カメラ51によって取得された第2画像データIM1に含まれた第2錠剤2を、撮像漏れの対象錠剤として特定する。搬送ドラム10の搬送面上の錠剤2で説明すると、制御部3は、第1錠剤2よりも1つだけ搬送方向D1の下流側に位置する第2錠剤2を対象錠剤として特定する。さらに言い換えれば、制御部3は、外観検査カメラ51が、第1錠剤2よりも一つ前に第1撮像エリアR1を通過した第2錠剤2を撮像できていないと判定する。制御部3はこの第2錠剤2が撮像漏れボックス59に回収されるように、搬送ベルト30内のブロー機構9を制御する。
【0183】
以上のように、錠剤印刷装置1では、制御部3は、外観検査カメラ51から入力される画像データIM1に対する画像処理によって、撮像漏れが生じた錠剤2をリアルタイムで特定することができる。よって、撮像漏れが生じた対象物が各種検査を通過してしまう可能性を低減できる。また、撮像漏れが生じた錠剤2に対するその後の搬送経路における印刷処理の有無、回収されるボックスの種別、さらには、当該錠剤2の搬送経路への再投入まで、後続する処理を適切に行うことができる。
【0184】
上述の例では、搬送ドラム10上の錠剤2を撮像する外観検査カメラ51についての撮像漏れを、搬送ドラム10の搬送面に設けられたマーク12を利用して検出する手法について述べた。外観検査カメラ52は搬送ベルト20上の錠剤2を撮像するので、搬送ベルト20の搬送面に設けられたマーク24を利用することで、外観検査カメラ51と同様にして、外観検査カメラ52についての撮像漏れを検出することができる。製品検査カメラ71も同様である。また、搬送ベルト30の搬送面に設けられたマークを利用することで、外観検査カメラ51と同様に、外観検査カメラ53についての撮像漏れを検出することができる。製品検査カメラ72も同様である。
【0185】
<マークの構成>
錠剤2は、例えば、粉末状の錠剤材料が一定の形状に圧縮および/または成形されることにより製造される。このような錠剤2が他の物体に衝突すると、錠剤2からの粉末が飛び散ることがある。このため、錠剤印刷装置1の内部空間には、当該粉末が浮遊し得る。この粉末は搬送ドラム10の搬送面に付着し得る。
【0186】
マーク12は、搬送ドラム10の搬送面に形成された貫通孔によって形成されてもよい。このマーク12(貫通孔)は搬送ドラム10をその厚み方向(径方向)に貫通する。これによれば、錠剤2からの粉末はマーク12を通過する。したがって、当該粉末がマーク12に付着しない。よって、粉末の付着によるマーク12の視認上の識別性の低下を抑制することができる。
【0187】
比較のために、マーク12が搬送面に設けられた凹凸によって形成された構造を考察する。この構造によれば、錠剤2からの粉末がマーク12の上に付着し得る。粉末がマーク12の上に付着すると、マーク12が本来の色または模様と異なってしまい、制御部3がマーク12の誤識別する可能性が高くなる。つまり、制御部3によるマーク12の識別精度が低下する。これに対して、マーク12が貫通孔で形成されていれば、粉末はマーク12を通過し、マーク12に付着しない。よって、制御部3によるマーク12の識別精度の低下を抑制できる。
【0188】
<マークの位置>
図12は、搬送ドラム10の搬送面の一部の概略構成の他の一例を平面的に示す図である。図12の例では、各マーク12は搬送ドラム10の搬送面において、全ての錠剤2に対して離れた位置に設けられている。具体的な一例として、各マーク12は搬送方向D1に直交する直交方向において、対応する錠剤2と間隔を空けて隣り合う位置(図では左側)に設けられている。
【0189】
図12の例では、複数のマーク12として、2種類のマーク12cおよびマーク12dが採用されている。マーク12cは、直交方向に延在する1本のラインによって構成されており、マーク12dは、直交方向に延在する2本のラインによって構成されている。当該2本のラインは搬送方向D1において向かい合っている。
【0190】
制御部3による撮像漏れの判定処理は図10と同様である。ただし、マーク識別処理(ステップS32)において用いられる基準画像は、マーク12cおよびマーク12dに応じた画像である。具体的には、基準画像としては、予め取得された、マーク12cを含む画像、および、マーク12dを含む画像を採用する。これにより、制御部3は画像データIM1内のマーク12を識別することができる。制御部3は例えば図11と同様の処理により、撮像漏れを検出することができる。
【0191】
図12の例では、マーク12は錠剤2と離れた位置に設けられている。これによれば、外観検査カメラ51によって取得される画像データIM1においても、マーク12は錠剤2と離れる。よって、制御部3はマーク識別処理において、錠剤2とマーク12とを区別しやすい。つまり、制御部3によるマーク12の識別精度を向上することができる。また、マーク12が錠剤2と離れているので、制御部3がマーク12の少なくとも一部を錠剤2の欠陥として誤検出する可能性も低減できる。つまり、制御部3による錠剤2の検査精度も向上することができる。
【0192】
<マークの位置>
上述の例では、形状が異なる複数種類のマーク12が採用された。しかるに、1種類のマーク12を採用してもよい。図13は、搬送ドラム10の搬送面の一部の概略構成の他の一例を平面的に示す図である。図13の例では、複数のマーク12は同一形状を有している。ただし、マーク12の錠剤2に対する位置が互いに相違する。図13の例では、対応する錠剤2に対して左側に位置するマーク12と、対応する錠剤2に対して下側に位置するマーク12とが、搬送方向D1に沿って交互に設けられる。
【0193】
このような搬送ドラム10において、基準パターンは、マーク12の錠剤2に対する相対位置によって構成される。つまり、基準パターンの各構成要素は、マーク12の錠剤2に対する相対位置を示す。外観検査カメラ51は錠剤2が画像データIM1の中央に位置するように第1撮像エリアR1を撮像するので、基準パターンの各構成要素は、マーク12の画像データIM1内における位置を示している、とも言える。マーク12が錠剤2に対して左側に設けられていること、および、マーク12が錠剤2に対して下側に設けられていることを、それぞれ「A’」および「B’」の記号で表現すると、基準パターンは(・・・,A’,B’,・・・)で表現される。つまり、基準パターンは、(A’,B’)が繰り返されたパターンとなる。
【0194】
制御部3による撮像漏れの判定処理は図10と同様である。ただし、マーク識別処理(ステップS32)において用いられる基準画像は、図13のマーク12に応じた画像である。つまり、基準画像としては、予め取得されたマーク12の画像が採用される。図13の例では、1種類のマーク12が採用されているので、基準画像の枚数を低減することができる。
【0195】
マーク識別処理(ステップS32)の結果は、マーク12の錠剤2に対する相対位置(言い換えれば、マーク12の画像データIM1内の位置)を示す。具体的には、マーク識別処理の結果は「A’」および「B’」のいずれか一方を示す。制御部3は例えば図11と同様の処理により、撮像漏れを検出することができる。
【0196】
<マークの有無>
図14は、搬送ドラム10の搬送面の一部の概略構成の他の一例を平面的に示す図である。図14の例では、マーク12として1種類のマーク12aが採用されている。ただし、マーク12aは、搬送方向D1に沿って並ぶ錠剤2に対して1対1では設けられていない。図14の例では、マーク12は錠剤2に対して1つ飛ばして設けられている。
【0197】
このような搬送ドラム10において、基準パターンはマーク12の有無によって構成される。つまり、基準パターンの各構成要素は、マーク12の有無を示す。マーク12が設けられていること、および、マーク12が設けられていないことを、それぞれ「1」および「0」の数字で表現すると、基準パターンは、(・・・,1,0,・・・)で表現される。つまり、基準パターンは、(1,0)が繰り返されたパターンとなる。
【0198】
制御部3による撮像漏れの判定処理は図10と同様である。ただし、マーク識別処理(ステップS32)の結果はマーク12の有無(「1」または「0」)を示す。この場合でも、制御部3は例えば図11と同様の処理により、撮像漏れを検出することができる。
【0199】
<パターン判定処理の他の例>
上述の例では、制御部3はマーク識別処理の結果と基準要素とを比較した。しかしながら、制御部3は前回のマーク識別処理の結果と、今回のマーク識別処理の結果とを比較してもよい。図7図12から図14の例では、基準パターンは、異なる2つの構成要素が交互に繰り返されたパターンである。よって、撮像漏れが生じていない場合には、今回の画像データIM1に対するマーク識別処理の結果が、前回の画像データIM1に対するマーク識別処理の結果と相違する(例えば図8)。その一方で、1枚分の撮像漏れが生じた場合には、今回の画像データIM1に対するマーク識別処理の結果が、前回の画像データIM1に対するマーク識別処理の結果と一致する(例えば図9)。
【0200】
そこで、制御部3はパターン判定処理として、今回のステップS32の識別結果が前回のステップS32の識別結果と相違するか否かを判定してもよい。今回の識別結果が前回の識別結果と相違しているときには、制御部3は撮像漏れが生じていないと判定する。一方で、今回の識別結果が前回の識別結果と一致しているときには、制御部3は撮像漏れが生じたと判定する。このような動作によっても、制御部3は撮像漏れをリアルタイムで検出することができる。
【0201】
<3種の構成要素>
図15は、搬送ドラム10の搬送面の概略構成の他の一例を平面的に示す図である。図15の例では、マーク12として2種類のマーク12aおよびマーク12bが採用されている。ただし、マーク12は錠剤2に対して1対1では設けられていない。図15の例では、搬送方向D1の下流側から上流側に向かって並ぶ2つの錠剤2の近傍にマーク12aおよびマーク12bがそれぞれこの順で設けられ、その次の錠剤2の近傍にはマーク12が設けられていない。以後、同様にしてマーク12が設けられる。
【0202】
このような搬送ドラム10において、基準パターンは、マーク12の種類およびマーク12の有無によって構成される。つまり、基準パターンの各構成要素は、マーク12の種類およびマーク12の有無を示す。マーク12aが設けられていること、マーク12bが設けられていること、および、マーク12が設けられていないことを、それぞれ「A」、「B」および「0」で表現すると、基準パターンは、(・・・,A,B,0,・・・)で表現される。つまり、基準パターンは、(A,B,0)が繰り返されたパターンである。この基準パターンにおいて、構成要素のうち互いに隣り合ういずれの三者も互いに相違する。
【0203】
図16から図18は、外観検査カメラ51が取得した一連の画像データIM1の一例を概略的に示す図である。図16では、撮像漏れが生じていない場合の複数の画像データIM1が示されており、図17では、1枚分の撮像漏れが生じた場合の複数の画像データIM1が示されており、図18では、2枚分の画像データIM1の撮像漏れが生じた場合の複数の画像データIM1が示されている。図17および図18では、取得できなかった画像データIM1を破線で示している。
【0204】
図16に例示するように、撮像漏れが生じていない場合には、外観検査カメラ51は、マーク12aを含む画像データIM1と、マーク12bを含む画像データIM1と、マーク12を含まない画像データIM1とをこの順に繰り返し取得する。このときの検出マークパターンは(・・・,A,B,0,・・・)で表現され、基準パターンと一致する。
【0205】
図17の例では、マーク12bを含む1枚の画像データIM1に対して撮像漏れが生じている。このときの検出マークパターンは、(・・・,A,0,A,B,0,・・・)で表現され、基準パターンと相違する。つまり、1枚分の撮像漏れが生じたときには、検出マークパターンは基準パターンと相違する。
【0206】
図18の例では、マーク12bを含む1枚の画像データIM1と、その次の画像データIM1の両方に対して撮像漏れが生じている。このときの検出マークパターンは、(・・・,A,A,B,0,・・・)で表現され、基準パターンと相違する。つまり、2枚分の撮像漏れが生じたときにも、検出マークパターンは基準パターンと相違する。
【0207】
制御部3による撮像漏れの判定処理は図10と同様である。つまり、制御部3は検出マークパターンが基準パターンと相違するときに、撮像漏れが生じたと判定する。検出マークパターンと基準パターンの一致/相違の判定(パターン判定処理)の具体的な一例は図11と同様である。
【0208】
ここで、ステップS42において、撮像漏れの対象錠剤を特定する手法について述べる。まず、制御部3は撮像漏れの枚数を特定する。図17の例では、マーク12bを含む1枚の画像データIM1に対して撮像漏れが生じている。よって、撮像漏れの直前の検出結果は「A」であり、撮像漏れの直後の識別結果は「0」である。つまり、識別結果は基準パターンの並び(・・・,A,B,0,・・・)において、「B」の識別結果を1つ飛ばして、「A」から「0」へと変化する。
【0209】
一方で、基準要素は撮像漏れの前後においても基準パターン(・・・,A,B,0,・・・)の並びに沿って変化するので、撮像漏れの直後の基準要素は「B」である。要するに、1枚分の撮像漏れが生じた場合には、その撮像漏れの直後の基準要素および(図では「B」)識別結果(図では「0」)は、基準パターンの並び(・・・,A,B,0,・・・)において隣り合う。具体的には、当該識別結果が基準パターンの並びにおいて当該基準要素の一つ後の構成要素と一致する。
【0210】
そこで、制御部3は撮像漏れの直後の画像データIM1の識別結果(図では「0」)が基準パターンの並び(・・・,A,B,0,・・・)において、基準要素(「B」)の一つ後の構成要素と一致するか否かを判定する。当該識別結果が当該構成要素と一致するときには、制御部3は1枚分の撮像漏れが生じたと判定する。
【0211】
そして、制御部3は、撮像漏れが生じたと判定したときの第1画像データIM1よりも1つ前に外観検査カメラ51によって取得された第2画像データIM1に含まれる第2錠剤2を対象錠剤として特定する。言い換えれば、制御部3は、第1画像データIM1に含まれる第1錠剤2よりも1つ下流側に位置する第2錠剤2を対象錠剤として特定する。さらに言い換えれば、制御部3は、外観検査カメラ51が、第1錠剤2よりも一つ前に第1撮像エリアR1を通過した第2錠剤2を撮像できていないと判定する。制御部3は、この第2錠剤2が撮像漏れボックス59に回収されるように、搬送ベルト30内のブロー機構9を制御する。
【0212】
図18の例では、マーク12bを含む画像データIM1およびマーク12を含まない画像データIM1の2枚分の撮像漏れが生じている。よって、撮像漏れの直後の識別要素はその直前の識別結果の「A」と同一である。つまり、識別結果は、基準パターンの並び(・・・,A,B,0,A,B,0,・・・)において、「B」および「0」の2つを飛ばして、「A」から「A」へと変化する。
【0213】
一方で、基準要素は撮像漏れの前後においても基準パターン(・・・,A,B,0,・・・)の並びに沿って変化するので、撮像漏れの直後の基準要素は「B」である。要するに、2枚分の撮像漏れが生じたときには、その撮像漏れの直後の基準要素(図では「B」)および識別結果(図では「A」)は、基準パターンの並びにおいて一つ飛ばしで隣り合う。具体的には、当該識別結果は当該基準要素の2つ後の構成要素と一致する。
【0214】
そこで、制御部3は撮像漏れの直後の画像データIM1の識別結果(図では「A」)が基準パターンの並び(・・・,B,0,A・・・)において、基準要素(図では「B」)の2つ後の構成要素と一致するか否かを判定する。当該識別結果が当該基準要素と一致するときには、制御部3は2枚分の撮像漏れが生じたと判定する。
【0215】
そして、制御部3は、撮像漏れが生じたと判定したときの第1画像データIM1よりも1つ前に取得された第2画像データIM1に含まれる第2錠剤2、および、2つ前に取得された第3画像データIM1に含まれる第3錠剤2を、対象錠剤として特定する。言い換えれば、制御部3は、第1画像データIM1に含まれる第1錠剤2よりも1つ下流側に位置する第2錠剤2と、第1錠剤2よりも2つ下流側に位置する第3錠剤2とを、撮像漏れの対象錠剤として特定する。さらに言い換えれば、制御部3は、外観検査カメラ51が、第1錠剤2よりも1つ前に第1撮像エリアR1を通過した第2錠剤2、および、2つ前に第1撮像エリアR1を通過した第3錠剤2を撮像できていないと判定する。制御部3は、第2錠剤2および第3錠剤2が撮像漏れボックス59に回収されるように、搬送ベルト30内のブロー機構9を制御する。
【0216】
以上のように、基準パターンの構成要件の互いに隣り合う任意の三者が互いに相違する場合には、撮像漏れの枚数が1枚であっても2枚であっても、撮像できなかった錠剤2を特定することができる。
【0217】
以下、より一般的に、基準パターンの構成要件の互いに隣り合う任意のX個が互いに相違する場合について説明する。このような基準パターンは、例えば異なるX個のマーク12が搬送ドラム10の搬送面において搬送方向D1に沿って所定の順序で繰り返し設けられることで、構成される。この場合、制御部3は撮像漏れの枚数を次のように特定する。即ち、制御部3は、画像データIM1に対する識別結果が基準パターンの並びにおいて基準要素のY(1≦Y≦X-1)個後の構成要素と一致するときに、撮像漏れの枚数をY枚と特定する。また、制御部3は、外観検査カメラ51が、画像データIM1に含まれた第1錠剤2の直前に第1撮像エリアR1を順次に通過したY行の錠剤2が撮像できなかったと判定する。制御部3は、このY行の錠剤2を撮像漏れボックス59に回収するように、搬送ベルト30内のブロー機構9を制御する。
【0218】
<搬送ベルト20>
図19は、搬送ベルト20の構成の一例を概略的に示す図である。搬送ベルト20のベルト状体は、複数の分割部材26と、接続部27とを含んでいる。分割部材26は、搬送ベルト20のベルト状体を周方向において複数に分割して得られる部材である。分割部材26は周方向に沿って配列される。各分割部材26は複数の保持板22を含んでおり、分割部材26の外側の面が搬送面となる。
【0219】
接続部27は、周方向において隣り合う2つの分割部材26を相互に接続する部材である。各接続部27は当該2つの分割部材26を接着する接着部材であってもよい。あるいは、接続部27は分割部材26の周方向の端部に設けられて、他の分割部材26と機械的に接続する接続構造(例えば係止構造)を有していてもよい。
【0220】
図19の例では、4つの分割部材26および4つの接続部27が設けられている。ここでは簡単のために、4つの接続部27は略等間隔に設けられている。つまり、4つの分割部材26の周方向における長さは互いに略等しく、各分割部材26に含まれる保持板22の数も互いに等しい。よって、各分割部材26に形成された吸着孔21の数も互いに等しく、各分割部材26において吸着保持される錠剤2の数も互いに等しい。
【0221】
図20は、搬送ベルト20の搬送面の一部の概略構成の一例を平面的に示す図である。図20では、搬送ベルト20の搬送面のうち、錠剤2の1列分に相当する部分が示されている。搬送ベルト20の搬送面は、外観検査カメラ52によって撮像される。図20の例では、搬送ベルト20の搬送方向が搬送方向D2で示され、また、外観検査カメラ52の第2撮像エリアが第2撮像エリアR2で示されている。
【0222】
図20に示すように、接続部27の少なくとも一部は、自身に最も近い錠剤2とともに第2撮像エリアR2に進入する。このとき、外観検査カメラ52は第2撮像エリアR2を撮像して、接続部27の一部と錠剤2とを含む画像データを取得する。言い換えれば、接続部27は、接続部27の少なくとも一部が錠剤2とともに外観検査カメラ52によって撮像される位置に設けられる。
【0223】
接続部27の当該一部はマーク24として機能する。言い換えれば、制御部3は、外観検査カメラ52からの画像データに対するマーク識別処理により、当該画像データ内の接続部27の当該一部を、マーク24として識別する。
【0224】
基準パターンは、当該接続部27の一部(マーク24)の有無を構成要素としたパターンである。マーク24が設けられていること、および、マーク24が設けられていないことを、それぞれ「1」および「0」で表現すると、基準パターンは(・・・,1,0,・・・・・,0,・・・)で表現される。言い換えれば、基準パターンは、(1,0,・・・・・,0)が繰り返されたパターンである。この(1,0,・・・,0)を単位パターンと呼ぶと、単位パターンの構成要素の個数Nは分割部材26において搬送方向D2に沿って並ぶ錠剤2の数と一致する。単位パターン(1,0,・・・,0)における「1」の個数は1であり、連続する「0」の個数は(N-1)である。
【0225】
図21および図22は、外観検査カメラ52によって取得される一連の画像データIM2の一例を概略的に示す図である。図21では、撮像漏れが生じていないときの複数の画像データIM2が示されており、図22では、1枚分の撮像漏れが生じたときの複数の画像データIM2が示されている。
【0226】
図21に例示するように、撮像漏れが生じていない場合には、外観検査カメラ52は、マーク24を含む1枚の画像データIM2の後に、マーク24を含まない(N-1)枚の画像データIM2を取得する。このときの検出マークパターンは基準パターンに一致する。
【0227】
図22の例では、マーク24を含まない1枚の画像データIM2に対して撮像漏れが生じている。この場合には、外観検査カメラ52は、マーク24を含む1枚の画像データIM2の後に、マーク24を含まない(N-2)枚の画像データIM2を取得する。つまり、マーク24を含まない画像データIM2の連続枚数が1つ少なくなる。このときの検出マークパターンは基準パターンと相違する。
【0228】
そこで、制御部3は、当該連続枚数をカウントし、その連続枚数が基準値と相違するときに、撮像漏れが生じたと判定してもよい。基準値は、撮像漏れが生じていないときの連続枚数であり、ここでは(N-1)である。図23は、制御部3の上記動作の一例を示すフローチャートである。この一連の処理は、図10のステップS33のパターン判定処理に相当する。まず、制御部3は、画像データIM2からマーク24を識別できたか否かを判定する(ステップS51)。画像データIM2からマーク24を識別できないときには、制御部3は値Mをインクリメントする(ステップS52)。マーク24が識別されないときに、値Mがインクリメントされるので、値Mは、マーク12を含まない画像データIM2の連続枚数、つまり、検出マークパターンにおいて連続する「0」の個数を示すこととなる。
【0229】
画像データIM2からマーク12を識別できたときには、制御部3は値Mが基準値Mrefと一致するか否かを判定する(ステップS53)。基準値Mrefは、基準パターンにおいて連続する「0」の個数であり、ここでは(N-1)である。値Mが基準値Mrefと一致するときには、制御部3は値Mを例えば零に初期化する(ステップS54)。つまり、値Mが基準値Mrefと一致するときには、検出マークパターンが基準パターンと一致するので、制御部3は撮像漏れが生じていないと判定するのである。一方で、値Mが基準値Mrefと一致しないときには、検出マークパターンが基準パターンと相違するので、制御部3は撮像漏れが生じたと判定する(ステップS55)。次に、制御部3は値Mを例えば零に初期化する(ステップS54)。
【0230】
以上のように、制御部3は画像データIM2に対する画像処理によって、撮像漏れを検出することができる。しかも、マーク24として既設の接続部27を利用しているので、既設の搬送ベルト20を利用することができる。よって、新たにマーク24を設ける必要がなく、製造コストの増大を抑制できる。
【0231】
図19および図20に例示する搬送ベルト20によれば、基準パターンにおいて、同じ構成要素(「0」)が連続する。この場合、画像データIM2の画素値に基づいて、撮像漏れが生じた撮像タイミングを特定することは難しい。なぜなら、図22から理解できるように、マーク24を含まない複数の画像データIM2のうち、どの画像データIM2に対して撮像漏れが生じたとしても、検出マークパターンが同じになるからである。
【0232】
そこで、制御部3は、撮像漏れが生じたと判定したときには、撮像漏れが生じた可能性がある全ての錠剤2を対象錠剤として特定してもよい。具体的には、制御部3は、撮像漏れが生じたと判定したときの画像データIM2と、その一つ前にマーク24が含まれた画像データIM2との間の画像データIM2(図23では、(N-2)枚の画像データIM2)に含まれた全ての錠剤2を、対象錠剤として特定する。言い換えれば、制御部3は、撮像漏れが生じたと判定したときの画像データIM2の直前において外観検査カメラ52によって連続して取得され、識別結果が「0」を示す(N-2)枚の画像データIM2に含まれる錠剤2を対象錠剤として特定する。制御部3は、対象錠剤が撮像漏れボックス59に回収されるように、搬送ベルト30内のブロー機構9を制御してもよい。
【0233】
<マークパターン>
上述の例では、マークの形状、マークの位置およびマークの有無のいずれかによって基準パターンを構成した。しかるに、マークの色によって基準パターンを構成してもよい。言い換えれば、マークの種類(形状および色)、マークの位置(画像データ内におけるマークの位置)、および、マークの有無の少なくともいずれか1つによって基準パターンが構成されてもよい。
【0234】
<仕分け先>
上述の例では、撮像漏れが生じた錠剤2は撮像漏れボックス59に回収されているが、このような仕分け方法に限られるものではなく、例えば、撮像漏れが生じた錠剤2を不良品とみなして印刷不良品ボックス56に回収してもよい。
【0235】
<カメラの撮像エリア>
外観検査カメラ51が1行5列の錠剤2を撮像する場合には、その第1撮像エリアR1は1行5列の錠剤2を含む程度に広い。この場合、マーク12は1行5列の錠剤2の1つ1つに設けられる必要はなく、1行5列の錠剤2の1組に対して1つ設けられていてもよい。
【0236】
<以上に記載された実施の形態における変形例について>
以上、実施の形態が説明されたが、この錠剤印刷装置1はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施の形態においては、錠剤2の表裏両面に印刷処理を行っていたが、表面または裏面のいずれか一方のみに印刷処理を行うようにしてもよい。
【0237】
また、錠剤2に割線7が設けられていない場合、つまり表裏の区別のない錠剤2に対して印刷処理を行う場合にも本実施の形態に関する技術を適用することができる。この場合、錠剤2の片面のみに印刷できればよいのであれば、インクジェットヘッド61またはインクジェットヘッド62のいずれか一方のみで印刷を行うようにしてもよい。
【0238】
また、上記実施形態においては、インクの液滴を吐出するインクジェット方式によって印刷処理を行っていたが、印刷処理の手法はこれに限定されるものではなく、凸版印刷、グラビア印刷を含む凹版印刷、または、レーザー印刷などであってもよい。
【0239】
また、錠剤2の形状は円盤形状に限定されるものではなく、例えば略楕円形状や棒状など他の形状であってもよい。この場合、各搬送部の吸着孔は錠剤2の形状に応じたものとなる。
【0240】
また、上記実施形態においては、5列1行の単位で錠剤2を搬送するようにしていたが、これに限定されるものではなく、1列で錠剤2を搬送するようにしてもよいし、2列以上の複数列にて錠剤2を搬送するようにしてもよい。
【0241】
また、上記実施の形態においては、撮像の対象として錠剤2を例示しているものの、必ずしもこれに限らない。本実施の形態は、錠剤2以外の任意の対象物に対して適用可能である。
【0242】
また、上記実施の形態においては、環状の搬送面を有する搬送ドラム10および搬送ベルト20,30により搬送しているがこれに限定されるものではなく、例えば、直線で往復移動するコンベアで搬送するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0243】
1 錠剤印刷装置
2 対象物(錠剤)
3 画像処理部(制御部)
10 コンベア(搬送ドラム)
12,12a~12d,24 マーク
20,30 コンベア(搬送ベルト)
51,52,53 カメラ(外観検査カメラ)
61,62 印刷部(インクジェットヘッド)
71,72 カメラ(製品検査カメラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23