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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/343 20060101AFI20220927BHJP
   H01S 5/02 20060101ALI20220927BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H01S5/343 610
H01S5/02
H01L21/78 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019509693
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2018011598
(87)【国際公開番号】W WO2018180952
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017065568
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017190801
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】池田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】清水 源
(72)【発明者】
【氏名】北川 英夫
(72)【発明者】
【氏名】高山 徹
(72)【発明者】
【氏名】小野 将之
(72)【発明者】
【氏名】左文字 克哉
(72)【発明者】
【氏名】富田 修
(72)【発明者】
【氏名】川崎 里子
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-275714(JP,A)
【文献】特開平11-204880(JP,A)
【文献】特開2011-029224(JP,A)
【文献】特開平10-027942(JP,A)
【文献】特開2011-243857(JP,A)
【文献】特開2010-123869(JP,A)
【文献】特開平08-172238(JP,A)
【文献】特開2013-149845(JP,A)
【文献】特開2004-259872(JP,A)
【文献】特開平11-186659(JP,A)
【文献】特開2001-308459(JP,A)
【文献】特開2007-266575(JP,A)
【文献】米国特許第09209596(US,B1)
【文献】特開2009-295680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、第1方向に略直交する第2方向に延在する複数の導波路を有する半導体層積層体が形成された半導体層積層基板を作製する工程と、
前記第1方向に平行な複数の第1方向分割線に沿って前記半導体層積層基板を分割することで、前記複数の導波路を切断して複数のバー状基板を作製する工程と、
前記第2方向に平行な複数の第2方向分割線に沿って前記複数のバー状基板の各々を分割することで、複数の個片素子を作製する工程とを含み、
前記複数の個片素子の各々の導波路は、一方の端部の幅が他端の端部の幅と異なり、かつ、前記第1方向にオフセットされた位置に配置され、
前記半導体層積層基板は、前記複数の個片素子に対応する複数の素子形成領域を有し、
前記複数の素子形成領域は、前記第2方向に隣り合う第1素子形成領域及び第2素子形成領域を有し、
前記第1素子形成領域を挟む2つの前記第2方向分割線と前記第2素子形成領域を挟む2つの前記第2方向分割線とは前記第1方向にずれており、
前記複数の第1方向分割線は、第1の第1方向分割線と、第2の第1方向分割線と、第3の第1方向分割線とを含み、
前記複数の第2方向分割線は、前記第1素子形成領域を挟む第1の第2方向分割線及び第2の第2方向分割線と、前記第2素子形成領域を挟む第3の第2方向分割線及び第4の第2方向分割線とを含み、
前記第1素子形成領域は、前記第1の第1方向分割線、前記第2の第1方向分割線、前記第1の第2方向分割線及び前記第2の第2方向分割線で囲まれる領域であり、
前記第2素子形成領域は、前記第2の第1方向分割線、前記第3の第1方向分割線、前記第3の第2方向分割線及び前記第4の第2方向分割線で囲まれる領域であり、
前記半導体層積層基板において、前記第1素子形成領域の前記導波路は、前記第1の第2方向分割線及び前記第2の第2方向分割線のうち前記第1の第2方向分割線側に偏って配置され、前記第2素子形成領域の前記導波路は、前記第3の第2方向分割線及び前記第4の第2方向分割線のうち前記第4の第2方向分割線側に偏って配置されており、
前記半導体層積層基板における前記複数の導波路において、前記第1の第1方向分割線での前記導波路の前記第1方向の第1の幅をW1とし、前記第2の第1方向分割線での前記導波路の前記第1方向の第2の幅をW2とし、前記第3の第1方向分割線での前記導波路の前記第1方向の第3の幅をW3とすると、W1=W3、かつ、W1≠W2であり、
前記第1の第2方向分割線と前記第2の第2方向分割線との間隔をD1とし、前記第3の第2方向分割線と前記第4の第2方向分割線との間隔をD2とすると、D1=D2であり、
前記第1素子形成領域における前記導波路と前記第1の第2方向分割線までの幅と、前記第2素子形成領域における前記導波路と前記第4の第2方向分割線までの幅は等しい、
窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記バー状基板を作製する工程の前に、前記半導体層積層体の上に、前記複数の素子形成領域の各々に対応する電極を形成する工程をさらに含み、
前記第1素子形成領域において、前記電極の前記第1の第2方向分割線側に最も近い端部から前記導波路までの幅より、前記電極の前記第2の第2方向分割線側に最も近い端部から前記導波路までの幅の方が広く、
前記第2素子形成領域において、前記電極の前記第4の第2方向分割線側に最も近い部分から前記導波路までの幅より、前記電極の前記第3の第2方向分割線側に最も近い端部から前記導波路までの幅の方が広い、
請求項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2の第1方向分割線及び前記第1の第2方向分割線の交点である第1交点と前記第2の第1方向分割線及び前記第3の第2方向分割線の交点である第2交点との間における前記第2の第1方向分割線に沿って、第1の溝を形成する工程をさらに含む、
請求項又はに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1の溝は、前記半導体層積層体を貫通して前記基板に達する、
請求項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記バー状基板を作製する工程の後、かつ、前記複数の個片素子を作製する工程の前に、前記複数の第2方向分割線に沿って、第2の溝を形成する工程をさらに含む、
請求項1に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
基板の上に、第1方向に略直交する第2方向に延在する複数の導波路を有する半導体層積層体が形成された半導体層積層基板を作製する工程と、
前記第1方向に平行な複数の第1方向分割線に沿って前記半導体層積層基板を分割することで、前記複数の導波路を切断して複数のバー状基板を作製する工程と、
前記第2方向に平行な複数の第2方向分割線に沿って前記複数のバー状基板の各々を分割することで、複数の個片素子を作製する工程とを含み、
前記複数の個片素子の各々の導波路は、一方の端部の幅が他端の端部の幅と異なり、かつ、前記第1方向にオフセットされた位置に配置され、
前記半導体層積層基板は、前記複数の個片素子に対応する複数の素子形成領域を有し、
前記複数の素子形成領域は、前記第2方向に隣り合う第1素子形成領域及び第2素子形成領域を有し、
前記第1素子形成領域を挟む2つの前記第2方向分割線と前記第2素子形成領域を挟む2つの前記第2方向分割線とは前記第1方向にずれており、
前記複数の第1方向分割線は、第1の第1方向分割線と、第2の第1方向分割線と、第3の第1方向分割線とを含み、
前記複数の第2方向分割線は、前記第1素子形成領域を挟む第1の第2方向分割線及び第2の第2方向分割線と、前記第2素子形成領域を挟む第3の第2方向分割線及び第4の第2方向分割線とを含み、
前記第1素子形成領域は、前記第1の第1方向分割線、前記第2の第1方向分割線、前記第1の第2方向分割線及び前記第2の第2方向分割線で囲まれる領域であり、
前記第2素子形成領域は、前記第2の第1方向分割線、前記第3の第1方向分割線、前記第3の第2方向分割線及び前記第4の第2方向分割線で囲まれる領域であり、
前記半導体層積層基板において、前記第1素子形成領域の前記導波路は、前記第1の第2方向分割線及び前記第2の第2方向分割線のうち前記第1の第2方向分割線側に偏って配置され、前記第2素子形成領域の前記導波路は、前記第3の第2方向分割線及び前記第4の第2方向分割線のうち前記第4の第2方向分割線側に偏って配置されており、
前記バー状基板を作製する工程の後、かつ、前記複数の個片素子を作製する工程の前に、前記複数の第2方向分割線に沿って、第2の溝を形成する工程をさらに含む、
窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記第2の溝は、前記半導体層積層体を貫通して前記基板に達する、
請求項5又は6に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記複数の第2方向分割線に沿って、ガイド溝を形成する工程をさらに含み、
前記ガイド溝は、前記第1の第2方向分割線を間にして、各々が前記第2方向に延在する第3の溝及び第4の溝を含み、
前記第3の溝は、前記第1素子形成領域に形成され、
前記第4の溝は、前記第1素子形成領域の前記第1方向に隣接する第3素子形成領域に形成され、
前記第2の溝は、前記第3の溝と前記第4の溝の間に形成され、
前記第2の溝の底は、前記第3の溝及び前記第4の溝の底よりも深い位置に存在している、
請求項7に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記ガイド溝は、前記第3の第2方向分割線を間にして、各々が前記第2方向に延在する第5の溝及び第6の溝を含み、
前記第5の溝は、前記第2素子形成領域に形成され、
前記第6の溝は、前記第2素子形成領域の前記第1方向に隣接する第4素子形成領域に形成され、
前記第2の溝は、前記第5の溝と前記第6の溝の間に形成され、
前記第2の溝の底は、前記第5の溝及び前記第6の溝の底よりも深い位置に存在し、
前記第2の第1方向分割線上において、前記第3の溝と前記第6の溝との間に第7の溝を有する、
請求項8に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記半導体層積層体は、前記基板の上に、第1導電型の第1窒化物半導体層と、活性層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2窒化物半導体層とを順に有し、
前記第3の溝、前記第4の溝、前記第5の溝、前記第6の溝及び前記第7の溝は、少なくとも、前記第1窒化物半導体層に達する、
請求項9に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記第3の溝、前記第4の溝、前記第5の溝、前記第6の溝及び前記第7の溝は、繋がっている、
請求項9又は10に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記第2の第1方向分割線及び前記第1の第2方向分割線の交点である第1交点と前記第2の第1方向分割線及び前記第3の第2方向分割線の交点である第2交点との間における前記第2の第1方向分割線に沿って、第1の溝を形成する工程をさらに含み、
前記第1の溝の底は、前記第7の溝の底よりも深い位置に存在する、
請求項9~11のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記第7の溝は、前記第3の溝の前記導波路側の側面から、前記第2の第1方向分割線に対して45°以上の角度で前記第5の溝に達するように延びる側面を有する、
請求項11に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記第7の溝は、前記第1素子形成領域の前記第3の溝と前記第3素子形成領域の前記第4の溝との間において、前記第2の第1方向分割線から前記第2方向の幅が最小となる部分を有する、
請求項11に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記第7の溝は、前記第2素子形成領域の前記第5の溝と前記第4素子形成領域の前記第6の溝との間において、前記第2の第1方向分割線から前記第2方向の幅が最小となる部分を有する、
請求項11に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記第1の第2方向分割線に沿って、前記第2方向に延びる第8の溝と、前記第3の第2方向分割線に沿って、前記第2方向に延びる第9の溝とを形成する工程をさらに含む、
請求項7に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記第1素子形成領域及び前記第2素子形成領域の各々において、前記導波路は、幅がW1からW2へ連続的に変化する幅変化部を有する、
請求項~16のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体発光素子、窒化物半導体発光素子の製造方法及び窒化物半導体発光装置に関し、特に、プロジェクタ光源及び自動車用ヘッドライトに用いられるワット級の高出力半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大画面の画像を効率的に得るための一形態として、映像信号に応じた画像を形成する小型の液晶パネル等の空間光変調素子を、ランプなどの光源からの光で照明し、投射レンズによってその光学像をスクリーン上に拡大投射する投射型画像表示装置としてプロジェクタが広く用いられている。このようなプロジェクタ等の投射型画像表示装置においては、可視光の波長帯域で高い発光効率が得られる超高圧水銀ランプで光源を構成することが一般的である。
【0003】
これに対して、昨今、プロジェクタの光源に高圧水銀ランプではなく、高輝度・高精彩・低消費電力や長寿命などの特長を持つ半導体発光素子であるLEDやレーザが用いられ始めている。特に、デジタルサイネージや映画館用プロジェクタなど大画面高画質用途では、光源にワット級の高出力半導体レーザを採用したレーザプロジェクタの普及が始まっている。更に、ワット級の高出力半導体レーザは車載ヘッドライト用光源への展開も始まっている。このように、レーザ等の半導体発光素子を用いた光源は様々な分野への広がりを見せている。
【0004】
従来、この種の半導体発光素子として、共振器長方向の一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なるものが知られている。例えば、テーパストライプ構造の導波路を有する半導体レーザ素子が知られている(例えば特許文献1)。
【0005】
また、プロジェクタの光源に好適な半導体発光素子としては、窒化物系材料を用いた窒化物系半導体レーザが挙げられる。例えば、窒化物系半導体レーザによって波長405nm帯の青紫色の光源を構成し、窒化物系半導体レーザから出射するレーザ光によって、青色蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を励起して、これらの蛍光体から、青色光、緑色光及び赤色光を発光させることで、小型低消費電力のレーザプロジェクタを実現することができる。
【0006】
しかしながら、窒化物系半導体レーザは、光ピックアップまたは光通信で使われていた砒化ガリウム系レーザとは異なり、素子分割の際にへき開面ではない結晶面での分割を伴う。このため、ウエハから個々のレーザ素子を切り出す工程(チップ化工程)において、素子分割線から逸れて分割されたりレーザ素子が欠けたりする等の不具合が発生しやすいという課題があった。
【0007】
このような課題に対して、例えば特許文献2には、ガイド溝を用いて素子分割を行う技術が開示されている。図49は、特許文献2に開示された従来例1の半導体発光素子1000の平面図である。図49に示すように、従来例1の半導体発光素子1000では、基板に形成された半導体層積層体1200に、素子分割の方向に延びた素子分割用のガイド溝1201を形成している。
【0008】
また、特許文献3には、2段ガイド溝構造のガイド溝を用いて素子分割を行う技術が開示されている。図50は、特許文献3に開示された従来例2の半導体発光素子2000の平面図である。図50に示すように、従来例2の半導体発光素子2000では、基板に形成された半導体層積層体2200に、先端に突出形状を有する素子分割用の第1のガイド溝2201を形成するとともに、この第1のガイド溝2201の底部にさらに第2のガイド溝2202を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-295680号公報
【文献】特開2011-29224号公報
【文献】特開2007-329459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の半導体発光素子の製造方法では、窒化物半導体発光素子を量産することが難しいという課題がある。
【0011】
例えば、近年、導波路の位置が素子幅方向にオフセットされた窒化物半導体発光素子が検討されているが、一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なる構造を保持しつつ導波路の位置が素子幅方向にオフセットされた窒化物半導体発光素子を量産することは容易ではない。
【0012】
本開示は、一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なるとともに導波路の位置が素子幅方向にオフセットされた半導体レーザ素子を容易に量産することができる窒化物半導体発光素子の製造方法等を提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、特許文献2、3に開示された従来の技術では、素子分割によるパーティクルの発生を十分に抑制することができないという課題もある。
【0014】
本開示は、素子分割時にパーティクルの発生を十分に抑制することができる窒化物半導体発光素子の製造方法等を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記第1の目的を達成するために、本開示に係る第1の窒化物半導体発光素子の製造方法の一態様は、基板の上に、第1方向に略直交する第2方向に延在する複数の導波路を有する半導体層積層体が形成された半導体層積層基板を作製する工程と、前記第1方向に平行な複数の第1方向分割線に沿って前記半導体層積層基板を分割することで、前記複数の導波路を切断して複数のバー状基板を作製する工程と、前記第2方向に平行な複数の第2方向分割線に沿って前記複数のバー状基板の各々を分割することで、複数の個片素子を作製する工程とを含み、前記複数の個片素子の各々の導波路は、一方の端部の幅が他端の端部の幅と異なり、かつ、前記第1方向にオフセットされた位置に配置され、前記半導体層積層基板は、前記複数の個片素子に対応する複数の素子形成領域を有し、前記複数の素子形成領域は、前記第2方向に隣り合う第1素子形成領域及び第2素子形成領域を有し、前記第1素子形成領域を挟む2つの前記第2方向分割線と前記第2素子形成領域を挟む2つの前記第2方向分割線とは前記第1方向にずれている。
【0016】
また、本開示に係る第1の窒化物半導体発光素子の一態様は、基板と、前記基板の一方の面の上に位置し、第1方向に略直交する第2方向に延在する導波路を有する半導体素子構造体とを備え、前記窒化物半導体発光素子は、前記第2方向に略平行な第1の側面と、前記第1の側面と対向する第2の側面と、前記第1の側面及び前記第2の側面に略垂直な第3の側面と、前記第3の側面と対向する第4の側面とを有し、前記第3の側面及び前記第4の側面は、へき開面であり、平面視における前記第1の側面と前記第3の側面との交点近傍において、前記窒化物半導体発光素子は、第1の凹部を有し、前記第1の凹部は、前記第3の側面に対して45°以上の角度で傾斜する側面を有し、前記第4の側面における前記導波路の第1の幅をW1とし、前記第3の側面における前記導波路の第2の幅をW2とすると、W1≠W2であり、前記導波路は、前記第1方向にオフセットされた位置に配置されている。
【0017】
また、上記第2の目的を達成するために、本開示に係る第2の窒化物半導体発光素子の製造方法の一態様は、基板面内の第1方向に略直交する第2方向に延びる複数の導波路が形成される半導体層積層体が基板に形成された半導体層積層基板において、前記複数の導波路が形成される部分を間にして、前記第2方向に沿って第1の溝と第2の溝とを形成する第1の工程と、所定の分割位置において、前記基板面内において前記第1方向に沿って前記半導体層積層基板をへき開することで前記半導体層積層基板を複数に分割する第2の工程と、前記半導体層積層基板の前記第1の溝と前記第2の溝との間に前記第2方向に延びる第3の溝を形成する第3の工程と、前記第3の溝に沿って前記半導体層積層基板を複数に分割する第4工程とを含み、前記第1の工程では、前記所定の分割位置において、前記第1の溝と前記第2の溝との間に凹部が形成されている。
【0018】
また、本開示に係る第2の窒化物半導体発光素子の一態様は、基板と、前記基板の一方の面の上に位置し、第1方向に略直交する第2方向に延在する導波路を有する半導体素子構造体とを備え、前記窒化物半導体発光素子は、前記第2方向に略平行な第1の側面と、前記第1の側面と対向する第2の側面と、前記第1の側面及び前記第2の側面に略垂直な第3の側面と、前記第3の側面と対向する第4の側面とを有し、前記第3の側面及び前記第4の側面は、へき開面であり、前記窒化物半導体発光素子は、さらに、前記第1の側面と前記導波路との間に形成され且つ前記第2方向に延びる第1の溝と、前記第2の側面と前記導波路との間に形成され且つ前記第2方向に延びる第2の溝と、前記第1の側面と前記第3の側面との交点近傍に形成された第1の凹部と、前記第1の側面と前記第4の側面との交点近傍に形成された第2の凹部と、前記第1の側面から後退するように窪んだ第1の窪み部と、前記第2の側面から後退するように窪んだ第2の窪み部とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、窒化物半導体発光素子を容易に量産することができる。例えば、第1の窒化物半導体発光素子の製造方法の一態様によれば、一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なるとともに導波路の位置が素子幅方向にオフセットされた窒化物半導体発光素子を容易に量産することができる。また、第2の窒化物半導体発光素子の製造方法の一態様によれば、素子分割時にパーティクルの発生を十分に抑制することができるので、ワット級の動作状態において数千時間にも及ぶ長期動作保証が可能な窒化物半導体発光素子を量産することができる。また、第1の窒化物半導体発光素子及び第2の窒化物半導体発光素子の一態様によれば、量産性に優れた窒化物半導体発光素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1Aは、実施の形態1に係る半導体層積層基板の部分断面図である。
図1B図1Bは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の断面図である。
図2A図2Aは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、基板上に半導体層積層体を成膜する工程を示す図である。
図2B図2Bは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、第1の溝及び第2の溝を形成する工程を示す図である。
図2C図2Cは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、導波路を形成する工程を示す図である。
図2D図2Dは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、電流ブロック膜を形成する工程を示す図である。
図2E図2Eは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、p側オーミック電極及びp側電極を形成する工程を示す図である。
図2F図2Fは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、n側電極を形成する工程を示す図である。
図2G図2Gは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、第4の溝を形成する工程を示す図である。
図2H図2Hは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、半導体層積層基板をへき開する工程を示す図である。
図2I図2Iは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、バー状基板に端面コート膜を形成する工程を示す図である。
図2J図2Jは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、第3の溝を形成する工程を示す図である。
図2K図2Kは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、バー状基板を分割する工程を示す図である。
図3図3は、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の製造方法によって製造された窒化物半導体発光素子を模式的に示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係るバー状基板の部分拡大図である。
図5図5は、実施の形態1に係るバー状基板の部分拡大図である。
図6図6は、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の平面図である。
図7図7は、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子の断面図である。
図8図8は、比較例の窒化物半導体発光素子の平面図である。
図9図9は、比較例のバー状基板の要部拡大図である。
図10図10は、実施の形態1に係るバー状基板の要部拡大図である。
図11図11は、基板上の半導体層積層体の残し厚と窒化物半導体発光素子の反り量との関係を示す図である。
図12図12は、バー状基板の反りが大きい場合と反り小さい場合とにおいて、基板上の半導体層積層体の応力と素子分割時の荷重との関係を模式的に示す図である。
図13図13は、第3の溝を形成する際のレーザビームのフォーカスと第3の溝の形状との関係を示す図である。
図14図14は、第3の溝を形成する際のレーザビームのデフォーカス量とデブリ飛散距離との関係を示す図である。
図15図15は、実施の形態1に係るバー状基板における分割溝形成領域の端部近傍の拡大平面図である。
図16図16は、実施の形態1に係るバー状基板における分割溝形成領域のバリエーションを示す平面図である。
図17図17は、分割溝形成領域の長手方向の頂点から分割位置(へき開面)までの距離L1と分割逸れ発生率との関係を示す図である。
図18図18は、実施の形態1に係る半導体層積層基板の部分拡大図である。
図19図19は、実施の形態1に係る半導体層積層基板における凹部周辺の拡大平面図である。
図20図20は、実施の形態1に係る半導体層積層基板における第1溝及び第2溝に関するθ1、θ2と、端面段差発生率との関係を示す図である。
図21図21は、半導体層積層基板をへき開した後のへき開面の様子を示す図である。
図22図22は、端面に段差が発生している窒化物半導体発光素子と端面に段差が発生していない窒化物半導体発光素子との垂直光軸ずれの値を示す図である。
図23図23は、実施の形態1に係る半導体層積層基板における第1の溝(第1の外壁)と第2の溝(第2の外壁)のバリエーションを示す平面図である。
図24図24は、AlN膜に微量のOガスを添加してSi基板上に成膜した際における膜表面に付着するパーティクル密度のO添加量依存性を示す図である。
図25図25は、実施の形態1における端面コート膜の膜剥れの抑制効果を更に改善させる端面コート膜構造を示す図である。
図26図26は、実施の形態1における窒化物半導体発光素子を作製したときの効果を説明するための図である。
図27図27は、実施の形態1の変形例2に係るバー状基板における分割溝形成領域の端部近傍の拡大平面図である。
図28図28は、テーパストライプ構造のリッジ部を有する窒化物半導体発光素子にワイヤを接続したときの様子を示す図である。
図29図29は、テーパストライプ構造のリッジ部を有する窒化物半導体発光素子にワイヤを接続したときの様子を示す図である。
図30図30は、比較例の半導体層積層基板の部分平面図である。
図31図31は、比較例の半導体層積層基板を分割することで得られる2種類の窒化物半導体発光素子を示す平面図である。
図32図32は、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の斜視図である。
図33図33は、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の正面図である。
図34図34は、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の上面図である。
図35A図35Aは、図34のA-A線における実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の断面図である
図35B図35Bは、図34のB-B線における実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の断面図である。
図36図36は、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子における導波路の形状を示す平面図である。
図37A図37Aは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、基板上に半導体層積層体を成膜する工程を示す図である。
図37B図37Bは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、ガイド溝(第3の溝及び第4の溝)を形成する工程を示す図である。
図37C図37Cは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、導波路を形成する工程を示す図である。
図37D図37Dは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、電流ブロック層を形成する工程を示す図である。
図37E図37Eは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、p側オーミック電極及びp側電極を形成する工程を示す図である。
図37F図37Fは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、n側電極を形成する工程を示す図である。
図37G図37Gは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、第1の溝を形成する工程を示す図である。
図37H図37Hは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、半導体層積層基板をへき開する工程を示す図である。
図37I図37Iは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、バー状基板に端面コート膜を形成する工程を示す図である。
図37J図37Jは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、第2の溝を形成する工程を示す図である。
図37K図37Kは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子の製造方法において、バー状基板を分割する工程を示す図である。
図38図38は、図37C(b)の破線で囲まれる領域Xの拡大図である。
図39図39は、図37G(b)の破線で囲まれる領域Yの拡大図である。
図40図40は、図37G(b)の第2の横方向分割線XL2における断面図である。
図41図41は、半導体層積層基板のへき開時に生じるへき開逸れを説明するための図である。
図42図42は、へき開方向に対する第7の溝の側面の角度αと第7の溝周辺の端面段差発生率との関係を示す図である。
図43A図43Aは、第1の溝の第1の変形例を示す図である。
図43B図43Bは、第1の溝の第2の変形例を示す図である。
図44図44は、実施の形態2に係る窒化物半導体発光装置の構成を示す図である。
図45図45は、第2の溝を形成する際に発生するデブリが窒化物半導体発光素子に付着する様子を示す図である。
図46図46は、実施の形態2の変形例1に係る窒化物半導体発光素子の平面図である。
図47図47は、実施の形態2の変形例2に係る半導体層積層基板の部分平面図である。
図48図48は、実施の形態2の変形例3に係る窒化物半導体発光素子の断面図である。
図49図49は、従来例1の半導体発光素子の平面図である。
図50図50は、従来例2の半導体発光素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0022】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0023】
また、本明細書及び図面において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を表している。本実施の形態では、Z軸方向を鉛直方向とし、Z軸に垂直な方向(XY平面に平行な方向)を水平方向としている。X軸及びY軸は、互いに直交し、かつ、いずれもZ軸に直交する軸である。X軸方向及びY軸方向は、基板100の基板面内の方向である。つまり、XY平面は、基板100の主面に平行な面である。また、窒化物半導体発光素子のレーザ共振器長方向をY軸方向としている。本明細書において、X軸方向を第1方向とし、Y軸方向を第2方向としている。なお、X軸、Y軸及びZ軸の各矢印が向いている方向をプラス方向としている。
【0024】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態1の説明に先立ち、本開示の実施の形態1の一態様を得るに至った経緯を説明する。
【0025】
上述の特許文献2、3に開示された技術のように、素子分割用のガイド溝を用いることによって、レーザ素子の形状については安定化する。しかしながら、本願発明者らが検討したところ、以下のような課題があることが判明した。
【0026】
まず、特許文献2の技術を用いた場合、素子分割そのものはガイド溝内に収まるが、ガイド溝は一定の幅を持つため、そのガイド溝の溝幅の範囲内では素子分割線の揺らぎがあり、素子分割の直進性が崩れるという課題がある。更に、実際に特許文献2の方法でレーザ素子を作製してみたところ、ガイド溝からはみ出して形成されるレーザ素子も一定の割合で発生することが分かった。
【0027】
また、特許文献3の技術を用いた場合、第1のガイド溝の先端の突出形状により第2のガイド溝に沿った素子分割の逸れを低減させる効果は期待できる。しかしながら、一定の深さを有する第1のガイド溝の底部にレーザスクライブ法を用いて第2のガイド溝を形成する際に、第1のガイド溝の深さが影響して第1のガイド溝の底部で溝加工用のレーザのフォーカスが安定しない。その結果、レーザにより形成される第2のガイド溝の形状が不安定になり、第2のガイド溝が精度よく形成されずに、素子分割線が安定しないということが分かった。更に、実際に特許文献3の方法でレーザ素子を作製してみたところ、第1のガイド溝の分割ガイド機能が充分なものではなく、素子分割の逸れを伴うレーザ素子が一定の割合で発生することが分かった。
【0028】
特許文献2、3で得られる素子の形状は、従来のレーザ素子では大きな問題とはならなかったが、出力が数Wクラスの高出力のレーザ素子では、素子の形状の僅かなバラツキ(例えば素子分割線の曲がり等による素子分割線のズレ)がレーザ素子の特性に大きな影響をもたらすことが、本願発明者らの実験により明らかとなった。
【0029】
まず、数Wクラスのレーザ素子では、レーザ素子から発生する熱を如何に効率よく排熱するかが大きな技術的課題となっている。このような課題に対して、発光層側がサブマウントに接触するようにレーザ素子を実装する方法、所謂ジャンクションダウン実装を採用するケースがある。これにより、排熱効率を改善し、レーザ素子から発生する熱を効率よく排熱することができる。
【0030】
しかしながら、ジャンクションダウン実装を行う場合、絶縁膜が形成されていない素子分割面(側面)とサブマウントの半田との距離が極めて近くなるため、製造ばらつきによりリーク電流が発生するリスクが極めて高くなる。
【0031】
数Wクラスのレーザ素子において、素子分割線のズレに伴って突出部が発生したり、レーザ素子の欠けに伴って絶縁膜が剥れたりして不良部位が発生すると、その部分で半田とレーザ素子間のリーク電流が発生し、製造時の歩留りが低下するという課題がある。
【0032】
しかも、車載ヘッドライト用のレーザ素子の開発に際し、車載環境である高温振動環境下での信頼性試験を実施したところ、長期間使用したときにリーク電流が増加するレーザ素子が存在することが分かった。この不良素子を解析したところ、明確なリークパスは確認出来なかったが、レーザ素子の欠けに伴う絶縁膜の剥れが生じていることが確認された。このことは、高温振動環境下では素子分割線の突出部や素子の欠けに伴う絶縁膜の剥れが信頼性の劣化に繋がる可能性があることを示唆しており、素子分割線がズレたりレーザ素子が欠けたりしない高精度な分割方法が必要とされている。
【0033】
また、本願発明者らのさらなる検討により、素子分割線のズレが発生してレーザ素子が分割された場合には、その影響がレーザ素子の端面(レーザ出射面及び反射面)にまで及ぶことも明らかとなった。
【0034】
具体的には、レーザ素子の端面(レーザ出射面及び反射面)には反射率を調整するコート膜(端面コート膜)が形成されているが、素子分割線が曲がったり等して素子分割線にズレが発生してレーザ素子が分割された場合、レーザ素子の端面に大きな力が加わり、その結果、端面コート膜の膜剥れが発生するという不具合が発生することが分かった。
【0035】
しかも、素子分割線にズレが発生してレーザ素子が分割された場合、それに伴い端面コート膜の剥れや基板の破片などのパーティクルが発生する確率が高くなることも分かった。発生したパーティクルの一部は、レーザ素子の端面の発光領域に付着するおそれがある。レーザ素子の端面の発光領域にパーティクルが付着すると、レーザ素子の特性劣化やCOD(Catastrophic Optical Damage)レベルの低下などの不具合をもたらす。
【0036】
この場合、更に、車載ヘッドライト用のレーザ素子の開発に際しては、以下のような不具合があることも新たに判明した。すなわち、素子分割線がズレて形成されたレーザ素子では、端面コート膜の剥れ等の明確な不具合が見られなくても、振動試験後に特性が劣化するものが散見した。特性が劣化したレーザ素子を解析してみると、振動試験前には無かった端面のパーティクルが、試験後に付着していることが確認された。これは、素子分割時に発生したマイクロクラックが起点となり振動試験によってパーティクルが発生したことが原因であると考えられる。更に、素子分割線がズレて形成されたレーザ素子では、端面コート膜の剥れやパーティクル等の明確な不具合が見られなくても、信頼性が劣化するものも見られた。このことは、素子分割時の何らかのダメージがレーザ素子の信頼性に影響を与えた可能性を示唆している。
【0037】
以上説明したように、数Wクラスの高出力の窒化物系半導体レーザでは、従来用いられていた素子分割構造を用いるだけでは不十分であり、幾つかの課題が発生することが明らかとなった。そこで、素子分割をより高精度に行う新たな技術の開発が求められていた。
【0038】
このような課題に対して、本願発明者らが鋭意検討した結果、基板に形成された半導体層積層体に対して、導波路の延在方向(第2方向)に沿って延びる第1の溝と第2の溝とを形成するとともに第1の溝と第2の溝との間に凹部を形成し、さらに、第1の溝と第2の溝との間に導波路の延在方向に沿って延びる第3の溝を形成することで、素子分割線のズレを抑制するとともに素子分割時にパーティクルの発生を十分に抑制できる技術を見出した。
【0039】
本開示の実施の形態1は、このような課題を解決するためになされたものであり、素子分割線のズレを抑制するとともに素子分割時にパーティクルの発生を十分に抑制することができる窒化物半導体発光素子及び窒化物半導体発光素子の製造方法等を提供することを目的とする。
【0040】
以下、本開示の実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
まず、実施の形態1に係る半導体層積層基板102及び窒化物半導体発光素子101の構成について、図1A及び図1Bを用いて説明する。図1Aは、実施の形態1に係る半導体層積層基板102の部分断面図である。図1Bは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子101の断面図である。
【0042】
図1Aに示される半導体層積層基板102は、窒化物半導体発光素子積層基板であり、半導体層積層基板102を分割することで、図1Bに示される窒化物半導体発光素子101を得ることができる。本実施の形態において、窒化物半導体発光素子101は、窒化物系材料によって構成された半導体素子構造体200を有する窒化物半導体レーザである。
【0043】
図1Aに示すように、半導体層積層基板102は、基板100と、基板100の上に積層された半導体層積層体200Aとを有する。
【0044】
また、図1Bに示すように、窒化物半導体発光素子101は、基板100と、基板100の上に積層された半導体素子構造体200とを有する。
【0045】
基板100は、窒化物半導体基板等の半導体基板であり、例えば、GaNからなるGaN基板である。本実施の形態では、基板100として、六方晶のn型GaN基板を用いている。
【0046】
図1Aに示す半導体積層基板102の半導体層積層体200Aと、図1Bに示す窒化物半導体発光素子101の半導体層積層体200とは、同じ層構成である。具体的には、半導体層積層基板102及び窒化物半導体発光素子101は、基板100の上に、半導体層積層体200A及び半導体素子構造体200として、第1導電型の第1窒化物半導体層210と活性層220と第2導電型の第2窒化物半導体層230とを順次有する。
【0047】
第1窒化物半導体層210は、例えば、n型のAlGaNからなるn型クラッド層211と、n型クラッド層211の上に形成されたGaNからなるn側ガイド層212とを有する。
【0048】
活性層220は、窒化物半導体層である。本実施の形態において、活性層220は、アンドープの量子井戸活性層であり、例えば、InGaNからなる量子井戸層とInGaNからなる量子障壁層とが交互に積層された量子井戸構造の活性層である。
【0049】
第2窒化物半導体層230は、例えば、InGaNからなるp側ガイド層231と、p側ガイド層231の上に形成されたp型電子障壁層(オーバーフロー抑制層)232と、p型電子障壁層232の上に形成されたp型のAlGaNからなるp型クラッド層233と、p型クラッド層233の上に形成されたp型のGaNからなるp型コンタクト層234とを有する。
【0050】
図1Aに示すように、半導体層積層基板102の第2窒化物半導体層230には、レーザ共振器長方向にリッジストライプ状に延在する複数の導波路201が形成されている。図1Bに示すように、窒化物半導体発光素子101の第2窒化物半導体層230には、レーザ共振器長方向に延在する1本の導波路201が形成されている。導波路201は、窒化物半導体発光素子101における電流注入領域及び光導波路としての機能を有する。
【0051】
各導波路201は、レーザ共振器長方向に延在する2本の開口部202を第2窒化物半導体層230に掘り込むことで形成することができる。つまり、各導波路201は、第2窒化物半導体層230に形成された2つの開口部202によって挟まれている。本実施の形態において、導波路201は、p型クラッド層233とp型コンタクト層234を掘り込むことで形成されている。
【0052】
また、各導波路201上の一部を除き、第2窒化物半導体層230の上(本実施の形態ではp型コンタクト層234の上)は、SiOからなる電流ブロック膜240で覆われている。つまり、電流ブロック膜240は、p型コンタクト層234の上に開口部を有するように形成されている。
【0053】
半導体素子構造体200及び半導体層積層体200Aの上には、第1電極として、p側オーミック電極250及びp側電極260が形成されている。p側オーミック電極250は、電流ブロック層240の開口部に形成されている。p側電極260は、p側オーミック電極250の上に形成される。p側オーミック電極250は、例えば、Pd及びPtによって構成され、p側電極260は、例えば、Ti、Pt及びAuによって構成される。そして、p側電極260は、半導体層積層基板102及び窒化物半導体発光素子101の最上面として形成されている。
【0054】
また、基板100の一方の面(p側電極260側の面)とは反対側の面である他方の面(裏面)には、第2電極として、n側電極270が形成されている。n側電極270は、例えば、Ti、Pt及びAuによって構成される。
【0055】
そして、図1Aに示すように、半導体層積層基板102において、複数の導波路201における隣り合う2つの導波路201間には、導波路201の長手方向(Y軸方向:第2方向)に沿って第1の溝111と第2の溝112とが形成されている。つまり、第1の溝111及び第2の溝112は、導波路201と略平行に延在している。第1の溝111及び第2の溝112は、隣り合うようにして一対で形成されており、導波路201は、隣り合う一対の第1の溝111及び第2の溝112の間に存在する。ここで、第1の溝111と第2の溝112の各々は、下面と、その下面に垂直に近い角度で形成された2つの対向する側面をからなる凹形状を有している。
【0056】
なお、図1Bに示すように、窒化物半導体発光素子101において、導波路201は、1本の第1の溝111と1本の第2の溝112との間に存在する。
【0057】
第1の溝111及び第2の溝112は、半導体層積層体200Aを掘り込むことで形成されている。具体的には、第1の溝111及び第2の溝112は、第1の溝111及び第2の溝112の底が第1窒化物半導体層210にまで到達するように掘り込まれている。すなわち、第1の溝111及び第2の溝112は、第2窒化物半導体層230、活性層220及び第1窒化物半導体層210の一部までを掘り込むことで形成されている。本実施の形態では、n型クラッド層211の途中まで掘り込まれており、第1の溝111及び第2の溝112の底は、n型クラッド層211内にまで到達している。なお、第1の溝111及び第2の溝112の深さは、同じであるが、これに限らない。
【0058】
次に、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子101の製造方法について、図2A図2Kを用いて説明する。図2A図2Kは、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子101の製造方法を説明するための図である。
【0059】
本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子101の製造方法では、まず、図2A図2Fに示すようにして半導体層積層基板102を作製し、その後、図2G図2Kに示すようにして半導体層積層基板102を分割する。以下、具体的な各工程について、詳細に説明する。
【0060】
まず、図2Aに示すように、基板100としてn型GaN基板を用意し、基板100の上の全面に、複数の窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長することにより半導体層積層体200Aを形成する。
【0061】
具体的には、基板100の上に、Geがドープされたn型AlGaNからなるn型クラッド層211及びn型GaNからなるn側ガイド層212を順次成長させることで第1窒化物半導体層210を形成する。
【0062】
続いて、第1窒化物半導体層210の上(本実施の形態では、n側ガイド層212の上)に、例えば、活性層220として、アンドープのInGaNからなる井戸層とアンドープのInGaNからなる障壁層とが交互に1回又は複数回積層された量子井戸活性層を形成する。
【0063】
続いて、活性層220の上に、InGaNからなるp側ガイド層231と、p型の電子障壁層232と、Mgがドープされたp型のAlGaNからなるp型クラッド層233と、p型GaNからなるp型コンタクト層234を順次形成する。
【0064】
次に、図2Bに示すように、基板面内のY軸方向(紙面垂直方向)に延びる複数の導波路201が形成される半導体層積層体200Aが形成された基板100において、複数の導波路201が形成される部分を間にして、Y軸方向に沿って第1の溝111と第2の溝112とを形成する。
【0065】
具体的には、真空蒸着法及びエッチング技術を用いて、SiO膜からなるマスク400及び第1レジスト膜(不図示)をp型コンタクト層234上に順次形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて、第1レジスト膜に開口を形成する。この第1レジスト膜の開口は、第1の溝111及び第2の溝112に対応する部分に形成する。
【0066】
続いて、エッチング技術を用いて、第1レジスト膜が開口された部分のマスク400をエッチングすることでマスク400に第1開口部401を形成し、その後、残った第1レジスト膜を除去する。
【0067】
続いて、反応性イオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)等のドライエッチング技術を用いて、マスク400の第1開口部401に対応する部分についてp型コンタクト層234以下の半導体層積層体200Aをエッチングすることで、第1の溝111及び第2の溝112を形成する。
【0068】
このとき、第1の溝111及び第2の溝112は、第1の溝111及び第2の溝112の底面が第1窒化物半導体層210に到達するまで、活性層220及び第2窒化物半導体層230をエッチング除去するように半導体層積層体200Aを基板100に向かって掘り込む。第1の溝111及び第2の溝112の底(深さ)は、少なくとも第1窒化物半導体層210まで到達しているとよく、さらには、基板100まで到達していてもよい。すなわち、第1の溝111及び第2の溝112の底部には、第1窒化物半導体層210又は基板100が露出している。本実施の形態において、第1の溝111及び第2の溝112の底は、n型クラッド層211まで到達している。
【0069】
このようにして、第1の溝111及び第2の溝112を形成することができる。また、詳細は後述するが、この工程では、第1の溝111と第2の溝112との間に凹部120(図2G及び図5参照)が形成されている。凹部120は、第1の溝111と第2の溝112とを形成すると同時に形成される。このため、凹部120の深さは、第1の溝111及び第2の溝112と同じ深さである。また、第1の溝111と第2の溝112とは、この凹部120により繋がっている。つまり、第1の溝111と第2の溝112と凹部120とは、底面が共通であり、互いに連続して形成されている。なお、第1の溝111、第2の溝112及び凹部120の上面視形状を含めた全体の形状の詳細については後述する。
【0070】
次に、図2Cに示すように、半導体層積層体200Aにリッジストライプ状の導波路201を形成する。
【0071】
具体的には、第2レジスト膜(不図示)をマスク400の上に形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて、第2レジスト膜にストライプ状の開口を形成する。この第2レジスト膜の開口は、導波路201を挟む開口部202に対応する部分に形成する。
【0072】
続いて、エッチング技術を用いて、第2レジスト膜が開口された部分のマスク400をエッチングすることでマスク400に第2開口部402を形成し、その後、残った第2レジスト膜を除去する。
【0073】
続いて、RIE等のドライエッチング技術を用いて、マスク400の第2開口部402に対応する部分についてp型コンタクト層234以下の半導体層積層体200Aをエッチングすることで2つの開口部202を形成する。
【0074】
このとき、2つの開口部202は、2つの開口部202の底がp型クラッド層233にまで到達するように半導体層積層体200Aを基板100に向かって掘り込む。具体的には、p型コンタクト層234をエッチングするとともにp型クラッド層233の上面から所定の深さの領域までをエッチングする。これにより、リッジストライプ状の導波路201が形成される。このとき、導波路201は、基板100の基板面内(水平方向)のY軸方向に延在し、所定の間隔をあけて複数形成される。
【0075】
次に、マスク400を除去した後、図2Dに示すように、半導体層積層体200Aを覆うように電流ブロック膜240を形成する。
【0076】
具体的には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、基板100上の全面にわたって、約300nmの厚みを有するSiO膜からなる電流ブロック膜240を、半導体層積層体200Aの上に形成する。これにより、p型コンタクト層234の上面が電流ブロック膜240によって被覆されるとともに、第1の溝111、第2の溝112及び開口部202の内面も電流ブロック膜240によって被覆される。
【0077】
次に、図2Eに示すように、半導体層積層体200Aの上に、所定の形状にパターニングされたp側オーミック電極250及びp側電極260を形成する。
【0078】
具体的には、第3レジスト膜(不図示)をマスクとしたエッチング技術を用いて、リッジストライプ状の導波路201の上の電流ブロック膜240をエッチングして、電流ブロック膜240にストライプ状の開口を形成する。その後、真空蒸着法及びエッチング技術を用いて、リッジストライプ状の導波路201におけるp型コンタクト層234上にPt膜及びPd膜を順に積層することでp側オーミック電極250を形成する。
【0079】
続いて、真空蒸着法及びリフトオフ法を用いて、電流ブロック膜240の開口を覆うように、Ti膜及びAu膜を順に積層することで、p側電極260を形成する。このとき、p側電極260は、p側オーミック電極250と接触するようにして電流ブロック膜240上の所定の領域にp側オーミック電極250よりも幅広で形成されている。
【0080】
その後、基板100のp側電極260側の面とは反対側の面(基板100の裏面)側から、p側電極260までの厚みが約85μmになるまで研磨する。
【0081】
次に、図2Fに示すように、基板100の裏面に、所定の形状にパターニングされたn側電極270を形成する。
【0082】
具体的には、真空蒸着法及びリフトオフ法を用いて、基板100の研磨された面に、基板100から順に、Ti膜、Pt膜及びAu膜を積層することにより、n側電極270を形成する。
【0083】
以上にようにして、図1Aに示されるような、半導体層積層体200Aに複数のリッジストライプ状の導波路201が形成された半導体層積層基板102を作製することができる。
【0084】
次に、図2G図2Kを用いて、半導体層積層基板102を分割して窒化物半導体発光素子101を素子分離する方法を説明する。
【0085】
図2Fの工程の後に、図2Gに示すように、半導体層積層基板102をへき開するために、へき開の起点となるへき開用の分割溝として第4の溝114をレーザスクライブ法によって形成する。
【0086】
第4の溝114(へき開用の分割溝)は、所定の分割位置102a(へき開を行う予定の位置)において、ある一定の間隔で複数形成される。本実施の形態において、半導体層積層基板102には、第4の溝114を形成するための領域として、所定の分割位置102aに凹部120と、凹部120の一部領域を含む第1の部分120aが形成されている。つまり、一つの第4の溝114は、第1の部分120aに形成されており、また、凹部120を横断するように形成されている。
【0087】
複数の第4の溝114は、基板面内において導波路201の長手方向(Y軸方向)に直交する第1方向(X軸方向)に沿って形成されている。また、各第4の溝114は、その第1方向に長尺状となるように形成される。さらに、第1方向に沿って一列に形成された複数の第4の溝114は、導波路201の長手方向に並ぶように複数列で形成されている。
【0088】
このため、第4の溝114を形成する際、レーザスクライブ法におけるレーザ光を、半導体層積層基板102に対して移動させながら、間欠的に照射することにより、第4の溝114を、導波路201の長手方向と直交する方向(第1方向)に延びる破線状に形成することができる。
【0089】
なお、第4の溝114は、平面視において導波路201と直交する方向において、複数の第1の部分120aのすべてに形成してもよいし、複数の第1の部分120aに対して一定間隔毎に形成してもよい。言い換えると、複数の第1の部分120aに対して、第4の溝114が形成されない第1の部分120aがあってもよい。
【0090】
また、第4の溝114の深さ(p型コンタクト層234から基板100に向かう方向の深さ)は、第1の溝111及び第2の溝112の深さよりも深い。本実施の形態において、第4の溝114は、基板100に到達している。具体的には、第4の溝114の実際の深さは、20μm以上であることが望ましく、第4の溝114の深さが20μmよりも浅い場合は、へき開逸れなどが発生するおそれがある。一方、第4の溝114の深さが深すぎると、第4の溝114の先端の形状が丸みを帯びてしまい、この場合も、へき開逸れなどが発生しやすくなる。このため、第4の溝114の深さは、20μm以上60μm以下であることが望ましい。
【0091】
次に、図2Hに示すように、分割位置102a(へき開位置)において、基板面内において導波路201の長手方向(Y軸方向:第2方向)と直交する第1方向(X軸方向)に沿って半導体層積層基板102をへき開することで半導体層積層基板102を複数に分割する。本実施の形態では、第4の溝114が形成された半導体層積層基板102をへき開(一次へき開)することで、半導体層積層基板102を複数のバー状基板103に分割する。
【0092】
具体的には、第4の溝114が形成された半導体層積層基板102に対して、基板面内において導波路201と直交する方向(第1方向)に延びる刃状治具を第4の溝114に沿ってn側電極270側から接触させ、荷重を印加する。これにより、半導体層積層基板102が第4の溝114に沿ってへき開され、半導体層積層基板102から、バー状基板103が形成される。
【0093】
このとき、半導体層積層基板102のへき開は、複数基板面内において導波路201と直交する方向に沿って破線状に配列された複数の第4の溝114の列ごとに行う。これにより、半導体層積層基板102から、バー状基板103が複数形成される。
【0094】
次に、図2Iに示すように、へき開により得られたバー状基板103のへき開面に、端面コート膜500を形成する。
【0095】
具体的には、バー状基板103の一方のへき開面には、第1の端面コート膜として、密着層となるAlON膜、酸素拡散防止層となるAlN膜及び反射率調整層を形成する。一方、バー状基板103の他方のへき開面には、第2の端面コート膜として、密着層となるAlON膜、酸素拡散防止層となるAlN膜及び反射率調整層の順に形成される。
【0096】
次に、図2Jに示すように、バー状基板103の第1の溝111と第2の溝112との間に導波路201の長手方向(Y軸方向:第2方向)に延びる幅3μm以上8μm以下の第3の溝113を形成する。本実施の形態では、バー状基板103に第3の溝113を形成する。第3の溝113は、第4の溝114と同様に、レーザスクライブ法によって形成される。
【0097】
第3の溝113は、バー状基板103を素子分割(素子分離)するために予めバー状基板103に形成しておく溝である。つまり、第3の溝113は、素子分割用の起点となる分割溝であり、バー状基板103の隣り合う導波路201の間に形成されている。
【0098】
第3の溝113は、第1の溝111と第2の溝112との間の断面凸形状の分割溝形成領域113aに、その上面から形成される。分割溝形成領域113aは、第1の溝111と第2の溝112と2つの凹部120とで囲まれる領域であり、分割溝形成領域113aの凸形状は、その上面と垂直に近い角度で対向する2つの側面と、上面とからなる。また、分割溝形成領域113aは、第1の溝111と第2の溝112との間ごとに複数存在する。第3の溝113は、複数の分割溝形成領域113aごとに形成される。複数の第3の溝113は、基板面内において導波路201の長手方向に沿って形成されている。
【0099】
また、第3の溝113の深さ(p型コンタクト層234から基板100に向かう方向の深さ)は、第1の溝111及び第2の溝112の深さよりも深い。本実施の形態において、第3の溝113の底は、基板100に到達している。具体的には、第3の溝113の実際の深さは、30μm以上であることが望ましく、第3の溝113の深さが30μmよりも浅い場合は、分割逸れなどが発生するおそれがある。また、第3の溝113の深さが深すぎると、第3の溝113の先端の形状が丸みを帯びてしまい、この場合も、分割逸れなどが発生しやすくなる。また、デブリの発生量も増加し、p側電極に対して不具合を引き起こす原因となる。このため、第3の溝113の深さは、30μm以上70μm以下であるとよく、より好ましくは30μm以上60μm以下である。
【0100】
次に、図2Kに示すように、複数に分割された半導体層積層基板102(の各々バー状基板103)を、第3の溝113に沿ってさらに複数に分割する。本実施の形態では、第3の溝113を分割溝として、バー状基板103を複数に分割する。
【0101】
具体的には、第3の溝113が形成されたバー状基板103に対して、導波路201の長手方向に延びる刃状治具を第3の溝113に沿ってn側電極270側から接触させて荷重を印加する。これにより、バー状基板103は第3の溝113に沿って分割される。これにより、バー状基板103から窒化物半導体発光素子101が素子分離して個片化する。
【0102】
このようにして作製された窒化物半導体発光素子101を図3に示す。図3は、実施の形態1に係る窒化物半導体発光素子101の製造方法によって製造された窒化物半導体発光素子101を模式的に示す図である。図3は、図1Bに示す窒化物半導体発光素子101に対応する図である。
【0103】
図3に示すように、窒化物半導体発光素子101は、基板100の上に、導波路201を有する半導体素子構造体200が形成されものである。窒化物半導体発光素子101は、導波路201の長手方向(第2方向)に略平行な第1の側面110aと、第1の側面110aと対向する第2の側面110bと、第1の側面110aと第2の側面110bとに略垂直な第3の側面110cと、第3の側面110cと対向する第4の側面110dと、上面110eとを有する。
【0104】
窒化物半導体発光素子101は、上面視において、第1の側面110aと第2の側面110bと第3の側面110cと第4の側面110dとで囲まれた略四角形となっている。第3の側面110c及び第4の側面110dは、導波路201と接する面であり、へき開面である。第3の側面110c及び第4の側面110dは端面コート膜で覆われている。また、上面110eは、半導体素子構造体200の上面である。
【0105】
窒化物半導体発光素子101は、第2の側面110bと導波路201との間に形成され且つ導波路201の長手方向に延びる第1の溝111と、第1の側面110aと導波路201と間に形成され且つ導波路201の長手方向に延びる第2の溝112とを有する。
【0106】
また、窒化物半導体発光素子101は、凹部120として、第1の凹部121、第2の凹部122、第3の凹部123及び第4の凹部124を有する。第1の凹部121、第2の凹部122、第3の凹部123及び第4の凹部124の各々は、上面視において、第1の側面110aと第2の側面110bと第3の側面110cと第4の側面110dとで囲まれた略四角形の4隅に形成されている。
【0107】
第1の凹部121は、平面視において、第1の側面110aと第3の側面110cとの交点近傍に形成されている。つまり、第1の凹部121は、第1の側面110aと第3の側面110cとにまたがって形成されている。
【0108】
第2の凹部122は、平面視において、第1の側面110aと第4の側面110dとの交点近傍に形成されている。つまり、第2の凹部122は、第1の側面110aと第4の側面110dとにまたがって形成されている。
【0109】
第3の凹部123は、平面視において、第2の側面110bと第3の側面110cとの交点近傍に形成されている。つまり、第3の凹部123は、第2の側面110bと第3の側面110cとにまたがって形成されている。
【0110】
第4の凹部124は、平面視において、第2の側面110bと第4の側面110dとの交点近傍に形成されている。つまり、第4の凹部124は、第2の側面110bと第4の側面110dとにまたがって形成されている。
【0111】
また、窒化物半導体発光素子101は、第3の溝113の一部として、第1の側面110aから後退するように窪んだ第1の窪み部113b1と、第2の側面110bから後退するように窪んだ第2の窪み部113b2とを有する。
【0112】
この第3の溝113からなる第1の窪み部113b1は、第1の側面110a側から見ると、ほぼ台形に近い形状となっている。この台形形状は、p側電極260側の上底の長さよりも、n側電極270側の下底の長さの方が短くなっている。
【0113】
前述のように、第3の溝113は、分割溝形成領域113aの上面からレーザスクライブ法によって形成する。例えば、導波路201と並行して第3の側面110c側から第4の側面110d側にレーザ光を移動させながら照射する場合、まず、レーザのパワーを徐々に強めながら移動させて台形形状の第3の側面110c側の斜辺に対応する部分を形成する。次に、あるパワーまで強めた後にその状態を保ったまま移動させて台形形状の下底に対応する部分を形成する。その後パワーを徐々に弱めて移動させて台形形状の第4の側面110d側の斜辺に対応する部分を形成する。このようにして、第3の溝113からなる第1の窪み部113b1の形状を得ることができる。
【0114】
ここで、第1の窪み部113b1において、窒化物半導体発光素子101のp側電極260が形成された表面側からn側電極270が形成された裏面側に向かう方向に延びる縞状の凹凸が形成される。この縞状の凹凸はレーザスクライブに起因する第1の縞状の凹凸である。この第1の縞状の凹凸は、第1の窪み部113b1全体にわたって形成されている。また、第1の窪み部113b1と裏面との間、言い換えると第1の側面110aのn側電極270側やその周辺において、素子分割時に第1の窪み部113b1に起因して、裏面に向かう方向に延びる第2の縞状の凹凸が形成される。第1の側面110aにおいて、第1の窪み部113b1に形成された第1の縞状の凹凸(ラフネス)の大きさ(凸部と凹部間の平均の高さ)、及び、n側電極270側に形成された第2の縞状の凹凸(ラフネス)の大きさは、第1の窪み部113b1と第3の側面110cの間のラフネス、及び、第1の窪み部113b1と第4の側面110dの間のラフネスより大きい。
【0115】
第1の窪み部113b1とは反対側の、第3の溝113からなる第2の窪み部113b2も同様の方法で形成され、第1の窪み部113b1と同様の形状となっている。したがって、第2の側面110bの形状は、第1の側面110aの形状と同様の形状となっている。
【0116】
第1の窪み部113b1は、第1の側面110aの上端部を含む領域が窪むように段差状に凹んだ部分である。同様に、第2の窪み部113b2は、第2の側面110bの上端部を含む領域が窪むように段差状に凹んだ部分である。
【0117】
また、窒化物半導体発光素子101は、第4の溝114の一部として、第1の側面110aに接し且つ第3の側面110cから後退するように窪んだ第1の窪み部114a1と、第2の側面110bに接し且つ第3の側面110cから後退するように窪んだ第2の窪み部114a2と、第1の側面110aに接し且つ第4の側面110dから後退するように窪んだ第3の窪み部114a3と、第2の側面110bに接し且つ第4の側面110dから後退するように窪んだ第4の窪み部114a4とを有する。
【0118】
この第4の溝114からなる第1の窪み部114a1と第2の窪み部114a2は、第3の側面110c側から見ると、ほぼ三角形に近い形状となっており、第3の側面110cの第1の窪み部114a1と第2の窪み部114a2から、裏面側に向かって基板100やその周辺においては凹凸形状の段差が生じており、段差部分でへき開面が面一ではないずれた階段状の形状となっている。
【0119】
また、第4の溝114からなる第3の窪み部114a3と第4の窪み部114a4も同様に、第4の側面110d側から見ると、三角形に近い形状となっており、第4の側面110dの第3の窪み部114a3と第4の窪み部114a4から、裏面側に向かって基板100やその周辺においては凹凸形状の段差が生じており、完全なへき開面にはなっていない。
【0120】
この段差がリッジストライプ状の導波路201に接すると、安定した窒化物半導体素子101の特性が得られないなどの不具合をもたらす。
【0121】
なお、第1の溝111、第2の溝112、第1の凹部121、第2の凹部122、第3の凹部123、第4の凹部124及び分割溝形成領域113aは、連続して電流ブロック膜240(不図示)で覆われているが、これは積層した半導体素子構造体200が外部からのパーティクルなどにより、電気的に接続されないよう保護するためであり、リーク電流を抑制する役目も果たしている。
【0122】
以上、ここまでは、窒化物半導体発光素子101の製造方法を中心に説明してきたが、以下は、上記のように製造される窒化物半導体発光素子101が安定した形状や所望の素子特性を得ることができる点について説明する。
【0123】
図4及び図5は、バー状基板103を示している。図4(a)は、バー状基板103の部分拡大平面図であり、図4(b)は、図4(a)のB-B線における断面図である。また、図5(a)は、バー状基板103の部分拡大平面図であり、図5(b)は、図5(a)のB-B線における断面図であり、図5(c)は、図5(a)のC-C線における断面図である。
【0124】
また、図6及び図7は、バー状基板103を分割して得られる窒化物半導体発光素子101を示している。図6は、窒化物半導体発光素子101の平面図である。また、図7(a)は、図6のA-A線における断面図であり、図7(b)は、図6のB-B線における断面図であり、図7(c)は、図6のC-C線における断面図である。
【0125】
図4(a)、図6及び図7(a)に示すように、素子分割後の窒化物半導体発光素子101の角部に当たる領域では、第1の溝111と第2の溝112との間には、第1の溝111及び第2の溝112の深さと同じ深さの凹部120が形成されている。
【0126】
また、図4図7に示すように、第3の溝113は、第1の溝111と第2の溝112と2つの凹部120とで囲まれる分割溝形成領域113aに形成されている。本実施の形態においては、第3の溝113は、分割溝形成領域113aの長手方向に沿って長尺状に形成されている。具体的には、第3の溝113は、分割溝形成領域113aの一方の端部から他方の端部にわたって形成されている。また、第3の溝113は、分割溝形成領域113aにのみ形成されており、凹部120には形成されていない。
【0127】
第3の溝113は、図5(a)に示すように、上面視において分割溝形成領域113aの長手方向に沿って長尺状に形成される。第3の溝113は、分割溝形成領域113aの端部に近い位置において第1方向(X軸方向)の幅が狭くなっており、端部から第2方向(Y軸方向)に離れた位置において第1方向(X軸方向)の幅が太くなっている。
【0128】
また、図5(b)に示す断面図のように、分割溝形成領域113aの上面から形成された第3の溝113は、その幅は基板100に向かう深さ方向に対して徐々に細くなっており、その深さは、基板100まで到達している。
【0129】
導波路201に平行な第2方向(Y軸方向)に沿った断面はへき開面とならないため、導波路201に平行な第2方向は、基板面内における導波路201に直交する第1方向(X軸方向)よりも分割が困難である。このため、導波路201に平行な第2方向に沿って分割することでバー状基板103を複数の窒化物半導体発光素子101に個片化する際、分割時の逸れやチッピングが発生しやすい。
【0130】
例えば、図8に示される比較例の窒化物半導体発光素子101Xのように、2段ガイド溝構造を採用し、導波路201に平行な第2方向に沿って素子分割用の第1のガイド溝110Xを形成するとともに、この第1のガイド溝110Xの底部にさらに第2のガイド溝120Xを形成したとしても、分割時の逸れやチッピングを十分に抑制することができない。
【0131】
分割時の逸れやチッピングは、端面コート膜の剥れやパーティクル等を発生させる原因となる。その発生したパーティクルの一部が窒化物半導体発光素子の発光領域に付着すると、窒化物半導体発光素子の特性が劣化したりCODレベルが低下したりするなどの不具合をもたらす。
【0132】
これに対して、本実施の形態では、導波路201に平行な第2方向に沿ってバー状基板103を分割する際の分割の起点となる第3の溝113を、第1の溝111及び第2の溝112のような深さ方向に掘り込まれている領域にさらに掘り込んで形成するのではなく、断面凸形状の分割溝形成領域113aのように、窒化物半導体発光素子101のより上面に近い位置の部分から掘り込むことで形成している。つまり、本実施の形態では、半導体層積層体200Aを掘り込まずに残した部分に第3の溝113を形成している。具体的には、第3の溝113は、p型コンタクト層234上の電流ブロック膜240が形成された部分から掘り込むことで形成されている。
【0133】
このように、第3の溝113を、半導体層積層体200Aの掘り込まれている部分にさらに掘り込んで形成するのではなく、分割溝形成領域113aのような、半導体層積層体200Aのより上面に近い領域から掘り込んで形成する理由は、以下の通りである。
【0134】
本願発明者らは、上記のとおり、従来技術を用いても、窒化物半導体発光素子を分割する際に依然発生する不良に対し、分割溝形成領域及びその近傍の構造について、様々な検討を行った。その結果、本実施の形態における分割溝形成領域113aを用いることで、分割時の逸れやチッピングの発生を抑制できることを見出した。以下、この点について、図9及び図10を用いて説明する。
【0135】
図9は、比較例のバー状基板103Xの構成を示している。図9(a)は、比較例のバー状基板103Xの部分断面図であり、図9(b)は、比較例のバー状基板103Xのガイド溝110X周辺の拡大斜視図である。
【0136】
図10は、実施の形態1に係るバー状基板103の構成を示している。図10(a)は、実施の形態1に係るバー状基板103の部分断面図であり、図10(b)は、同バー状基板103の分割溝形成領域113a周辺の拡大斜視図である。
【0137】
図9に示される比較例のバー状基板103Xを分割することで、図8に示される窒化物半導体発光素子101Xを得ることができる。図9の(a)及び(b)に示すように、比較例のバー状基板103Xでは、半導体層積層体200Aを掘り込んで第1のガイド溝110Xを形成するとともに、この第1のガイド溝110Xの底部からさらに掘り込むことで第2のガイド溝120Xを形成している。
【0138】
図10の(a)及び(b)に示すように、本実施の形態におけるバー状基板103では、半導体層積層体200Aを掘り込んで第1の溝111及び第2の溝112を形成し、半導体層積層体200Aを掘り込まずに残した部分(第1の溝111と第2の溝112で挟まれる部分)を分割溝形成領域113aとし、この残してできた凸形状の分割溝形成領域113aに、分割溝として第3の溝113を掘り込んで形成している。
【0139】
そして、本発明者らが鋭意検討した結果、図9に示す比較例のバー状基板103Xと図10に示す本実施の形態におけるバー状基板103とでは、得られる窒化物半導体発光素子の反り量が異なるということを見出した。そして、半導体層積層体200Aを掘り込まずに残した部分の厚さ(残し厚)と、窒化物半導体発光素子の反り量との相関関係を調べた。その結果を図11に示す。
【0140】
図11は、基板100上の半導体層積層体200Aの残し厚と、窒化物半導体発光素子の反り量との関係を示す図である。なお、残し厚が0μmの場合は、半導体層積層体200Aが無く、基板100まで掘り込んでいる場合であり、残し厚3μmの場合は、半導体層積層体200Aを全く掘り込んでいない場合である。
【0141】
図11に示すように、基板100上の半導体層積層体200Aの残し厚を薄くして、基板100まで凹形状を掘り込んでいくと、窒化物半導体発光素子の反り量が約半分まで低減することが判明した。
【0142】
ここで、本発明者らは、窒化物半導体発光素子の反り量がバー状基板を分割する際に何らかの影響を与えると考え、その影響について考察した。その考察を図12を用いて説明する。
【0143】
図12は、バー状基板の反りが大きい場合と反り小さい場合とにおいて、基板100上の半導体層積層体200Aの応力と素子分割時の荷重との関係を模式的に示す図である。図12において、(a)は、バー状基板での膜応力を示しており、(b)は、第3の溝13を形成した後の応力を示しており、(c)は、素子分割時における荷重と応力との関係を示している。
【0144】
一般的にGaN系の窒化物半導体発光素子ではその不純物組成に起因して、GaN基板からなる基板100上に形成された半導体層積層体200Aは、図12の(a)に示すように、圧縮される方向の応力が働く。この場合、図11に示したように、半導体層積層体200Aの残し厚が大きいほど、窒化物半導体発光素子の反り量が大きくなるのはこの影響である。
【0145】
ここで、図10に示される本実施の形態におけるバー状基板103のように、分割溝形成領域113aが凸形状である場合(つまり、半導体層積層体200Aの残し厚が大きい場合)、図12の左図に示すように、バー状基板の反りが大きく、バー状基板に大きな圧縮応力がかかっていると考えられる。
【0146】
一方、図9に示される比較例のバー状基板103Xのように、第1のガイド溝110Xの底部からさらに第2のガイド溝120Xを掘り込んで分割溝形成領域を凹形状とした場合(つまり、半導体層積層体200Aの残し厚が小さい場合)、基板100まで掘り込まれた部分で応力が緩和するため、図12の右図に示すように、バー状基板の反りが小さく、バー状基板にかかる圧縮応力は小さいと考えられる。
【0147】
次に、図12の(b)に示すように、反りの大きいバー状基板と反りの小さいバー状基板の各々に第3の溝113を形成すると、第3の溝113により分断された半導体層積層体200Aの両側に、第3の溝113が開く方向の応力が発生する。
【0148】
この時に発生する第3の溝113が開く方向の応力は、半導体層積層体200Aに発生する応力の大きさに比例し、本実施の形態のように反りの大きいバー状基板(図12の左図)では大きく、比較例のように反りの小さいバー状基板(図12の右図)では小さくなる。
【0149】
そして、図12の(c)に示すように、反りの大きいバー状基板と反りの小さいバー状基板の各々に、n側電極330側から荷重を印加して素子分割を行うと、第3の溝113が開く方向の応力は、素子分割する荷重をアシストする方向に働くことになる。
【0150】
このため、比較例のように反りの小さいバー状基板(図12の右図)と比較して、本実施の形態のように反りの大きいバー状基板(図12の左図)の場合は、より少ない荷重で素子分割が可能になる。
【0151】
ここで、比較例のバー状基板103Xと本実施の形態におけるバー状基板103とについて、分割溝による分割溝形成領域に発生する応力について考察した結果を、上記の図9及び図10を用いて説明する。
【0152】
上述のように、図9に示される比較例のバー状基板103Xでは、分割溝として、第1のガイド溝110X及び第2のガイド溝120Xを形成して分割溝形成領域を凹形状としている。一方、図10に示される本実施の形態におけるバー状基板103では、凸形状の分割溝形成領域113aに分割溝として第3の溝113を形成している。
【0153】
図9に示される比較例のバー状基板103Xでは、分割溝形成領域(第1のガイド溝110X)が凹形状であるため、分割溝形成領域での分割溝(第2のガイド溝120X)を開く方向の応力が小さい。このため、分割溝の先端から伸びるクラックの直進性が悪くなり、結果的に分割により得られた窒化物半導体発光素子の形状が悪化する割合が高くなる。
【0154】
これに対して、図10に示される本実施の形態におけるバー状基板103では、図9に示される比較例のバー状基板103Xよりも、分割溝形成領域113aでの分割溝(第3の溝113)を開く方向の応力が大きくなる。このため、分割溝の先端から伸びるクラックの直進性が高くなり、結果的に分割により得られた窒化物半導体発光素子の形状も良好になる。
【0155】
さらに、図10に示される本実施の形態におけるバー状基板103における凸形状の分割溝形成領域113aの効果は、基板面内に欠陥集中領域や極性反転領域(以下コア領域と呼ぶ)が存在しない基板、いわゆるコアレス基板において顕著に効果が発現するが、基板内にストライプ状に欠陥集中領域や極性反転領域が存在する基板、いわゆるストライプコア基板においては本実施の形態の効果は小さくなる。これは、基板100上の半導体層積層体200A(つまりエピタキシャル層)が、コアレス基板では基板内で連続しているのに対し、ストライプコア基板ではコア領域でエピタキシャル層が分断されるため、コア領域での応力が小さくなることが原因であると考えられる。
【0156】
また、本実施の形態における半導体層積層基板102の構造によれば、分割溝(第3の溝113)形成時に飛散したデブリの付着による不具合を抑制することもできる。以下、この点について説明する。
【0157】
分割溝(第3の溝113)をレーザスクライブ法で形成する場合、周辺領域にデブリが飛散して付着する。このデブリは金属を侵食する性質を有しており、p側電極260に付着すると、付着部分のp側電極260が侵食されて変質する。また、デブリが連続している面積が大きいほど侵食される領域も広くなる。
【0158】
例えば、比較例のバー状基板103Xでは、図9(a)に示すように、凹形状の分割溝形成領域(第1のガイド溝110X)に分割溝として第2のガイド溝120Xを形成しているので、分割溝形成領域の周辺領域に飛散して付着したデブリ104が連続して形成されることになる。この結果、p側電極260が侵食されて変質する。
【0159】
このように、p側電極260が変質すると、窒化物半導体発光素子の駆動電圧が上昇したり、ワイヤーボンディングの強度が低下したりするなどの不具合が発生する。
【0160】
このような不具合を解消するために、分割溝(第3の溝113)を形成する前にバー状基板の表面に保護膜を塗布し、保護膜上に飛散したデブリを保護膜と一緒に取り除くという方法、あるいは、デブリが付着した窒化物半導体発光素子そのものを洗浄してデブリを取り除くという方法が考えられるが、このような方法では別途工程が必要になる。
【0161】
これに対して、本実施の形態における窒化物半導体発光素子101は、図10(a)に示すように、断面凸形状の分割溝形成領域113aを有するので、第3の溝113からp側電極260までの間にデブリ104が付着しても、デブリ104が第1の溝111と第2の溝112とによって分断されることになる。これにより、p側電極260とデブリ104とが接触する面積を低減させることができるので、デブリ104によるp側電極260の変質を抑制することができる。
【0162】
さらに、本実施の形態における窒化物半導体発光素子101では、断面凸形状の分割溝形成領域113aが、上面視において、窒化物半導体発光素子101の長辺側に相当する両端の各々に設けられている。これにより、衝立状の分割溝形成領域113aが側面外壁として機能するので、導波路201又は半導体層積層体200付近に異物が侵入することも抑制できる事が考えられる。
【0163】
さらに、本実施の形態における半導体層積層基板102の構造によれば、分割溝(第3の溝113)形成時に発生するデブリの発生量そのものも低減することができる。以下、この点について説明する。
【0164】
分割溝(第3の溝113)は、レーザスクライブ法によって形成する。この場合、集光レンズにより収束されたレーザビームを、指定した位置に深さ方向に対しての焦点を基準に照射する。このとき、焦点部分でビームスポット径が一番小さくなるように、レーザビームの焦点を合わせている。
【0165】
レーザビームの焦点位置によって、レーザビームにより形成される分割溝(第3の溝113)の形状も変化する。具体的には、焦点位置が深さ方向にばらつくと、図13に示すように、デフォーカス量が大きくなり、分割溝の溝幅Wが太くなる。また、デフォーカス量が大きくなるにつれて、分割溝の先端の形状が丸みを帯びていく。このため、分割の起点としての機能が低下してしまう。
【0166】
また、焦点位置に対してデフォーカスが発生すると、デブリの飛散距離も大きくなる。図14は、分割溝をレーザビームで形成するときのデフォーカス量と分割溝を形成するときに発生するデブリの飛散距離との関係を示す図である。図14に示すように、デフォーカス量が大きくなると、デブリが発生する領域が広くなり、リーク電流の発生のリスクが増加する。なお、デブリの飛散量は、レーザスクライブのパワーやその他の条件によって異なる。
【0167】
図9に示される比較例のバー状基板103Xのように、第1のガイド溝110Xの底から分割溝として第2のガイド溝120Xをさらに掘り込む場合、第1のガイド溝110Xの底面にレーザビームの焦点を合わせる必要がある。レーザビームの焦点を合わせるための領域としては、200×200μm程度の領域を使用して焦点を合わせている。このため、図9に示される比較例のバー状基板103Xでは、第1のガイド溝110Xの底ではなく、バー状基板103Xの上面にレーザビームの焦点が合いやすくなり、分割溝である第2のガイド溝120Xの溝幅が太くなったり先端が丸みを帯びたりして、分割の起点としての機能がする。つまり、分割溝から逸れて分割されてしまうおそれがある。
【0168】
一方、図10に示される本実施の形態におけるバー状基板103では、第1の溝111及び第2の溝112を形成することで第1の溝111及び第2の溝112で挟まれた半導体層積層体200Aを分割溝形成領域113aとして、分割溝である第3の溝113を形成している。つまり、半導体層積層体200Aを掘り込まずに残した部分を分割溝形成領域113aとし、この凸形状の分割溝形成領域113aに第3の溝113を形成している。
【0169】
これにより、図10に示される本実施の形態におけるバー状基板103では、分割溝形成領域113aの上面にレーザビームの焦点が合いやすく、分割溝である第3の溝113の溝幅が太くなったり先端が丸みを帯びたりすることを抑制できる。したがって、第3の溝113は、分割の起点としての機能を十分発揮するので、第3の溝113から逸れて分割されてしまうことを抑制できる。
【0170】
ただし、本実施の形態におけるバー状基板103では、分割溝形成領域113aに形成される第3の溝113がへき開面(分割位置102a)まで形成されていないため、第3の溝113からへき開面までの間で、窒化物半導体発光素子101に分割する時の逸れやチッピングが発生するおそれがある。
【0171】
そこで、本実施の形態におけるバー状基板103では、図15に示すように、分割溝形成領域113aと分割位置102a(へき開面)までの間に、分割のガイド機能を有する構造として凹部120が形成されている。これにより、分割時に逸れ又はチッピングが発生することを顕著に抑制できる。以下、この点について、図15を用いて説明する。図15は、実施の形態1に係るバー状基板103における分割溝形成領域113aの端部近傍の拡大平面図である。
【0172】
図15に示すように、第3の溝113の延長線上に、凹部120が形成されている。具体的には、凹部120は、分割溝形成領域113aの長手方向の両端部に形成されている。
【0173】
凹部120は、分割溝形成領域113aの長手方向(第2方向)の長さが最小となる最小部分を有する。つまり、分割溝形成領域113aの長手方向(第2方向)の幅が局所的に狭くなる領域を有している。
【0174】
凹部120の最小部分における分割溝形成領域113aの頂点と凹部120とが接する側壁で形成される形状は、分割のガイド機能を有する形状となっている。言い換えると、分割溝形成領域113aの先端部は頂点を有している。そして、分割溝形成領域113aの頂点の内角となる角度をθ3とすると、θ3を小さくすることで、凹部120をガイド機能として強く働かせることができる。一方、θ3を小さくすると、第3の溝113を形成できる領域が狭くなってしまい、第3の溝113の先端から分割位置102a(へき開面)までの距離L2が長くなり、第3の溝113の分割の起点となる機能が低下しまう。したがって、距離L2が短いほど、分割に必要な応力は小さくなり、チッピングの発生を抑えることができる。また、基板100が六方晶の窒化物半導体基板である場合、θ3の角度を60度にすると、凹部120と接する側壁がへき開面と重なってしまうため、分割溝形成領域113aの頂点の形状としては、θ3の角度は60度を除いた形状にすることが望ましい。なお、第3の溝113を形成するための分割溝形成領域113aは、分割溝形成領域113aの長手方向の先端の頂点同士を結ぶ直線に対して対称な形状であるとよく、例えば、図16の(a)~(g)に示されるような多角形等の形状が採用されうる。
【0175】
さらに、分割溝形成領域113aの長手方向の先端の頂点の位置を分割位置102a(へき開面)に近づけることで、第3の溝113の先端も分割位置102a(へき開面)に近づく位置にまで形成することが可能となる。
【0176】
図17は、分割溝形成領域113aの長手方向の頂点から分割位置102a(へき開面)までの距離L1と分割逸れ発生率との関係を示す図である。
【0177】
図17に示すように、距離L1が9μm以下になると、分割時の逸れを抑制できることが分かる。ただし、半導体層積層基板102をへき開してバー状基板103にするための第4の溝114を形成する領域が必要になる。第4の溝114の幅は2μm~6μm程度で、距離L1は、第4の溝114の幅がばらついたり第4の溝114の形成位置がY軸方向(第2方向)にばらつくことを考慮して、距離L1は、4μm以上であるとよい。つまり、距離L1は、4μm以上9μm以下であるとよい。
【0178】
この場合、分割溝形成領域113aの長手方向に隣接する2つの分割溝形成領域113a間の距離は8μm以上18μm以下となる。つまり、凹部120の分割溝形成領域113aの長手方向(Y軸方向)の最小の幅は、8μm以上18μm以下にするとよい。
【0179】
以上説明したように、これらの効果を利用することで、窒化物半導体発光素子101の安定した形状が得られ、良好な特性を得ることができる。
【0180】
また、分割溝形成領域113aと第1の溝111の第1の外壁と第2の溝112の第2の外壁とは、ある一定以上の距離を保つ必要がある。第1の溝111、第2の溝112及び凹部120は、前述したようにエッチングにより同時に形成するが、第1の溝111及び第2の溝112が完全にn型クラッド層211以下まで掘り込まれていない残渣領域が発生した場合、その領域が電流リークパスとなってしまう。残渣のサイズや発生領域にもよるが、本実施の形態における製造方法では、分割溝形成領域113aと第1の溝111の第1の外壁と第2の溝112の第2の外壁との距離は、5μm以上とすることが望ましい。
【0181】
また、窒化物半導体発光素子101の幅を維持したまま、分割溝形成領域113aと第1の溝111の第1の外壁との距離、及び、分割溝形成領域113aと第2の溝112の第2の外壁との距離を、5μmよりも大きくすると、分割溝形成領域113a自体の幅を狭くする必要がある。このため、第3の溝113を形成するためのレーザスクライブ条件にもよるが、本実施の形態においては、分割溝形成領域113aの幅は10μm以上とすることが望ましい。これは、第3の溝113が分割溝形成領域113a内で収まる領域として形成するためであり、また、分割後の分割溝形成領域113aの欠け等を発生させないためである。このときの第3の溝113の幅は3μm以上8μm以下で、より好ましくは4μm以上6μm以下である。
【0182】
さらに、本実施の形態では、端面コート膜の剥れやパーティクル等の発生を抑制させる方法として、以下の方法が挙げられる。以下、この方法について、図18及び図19を用いて説明する。図18及び図19は、半導体層積層基板102の部分拡大図である。図18(a)は、半導体層積層基板102の拡大平面図であり、図18(b)は、図18(a)のB-B線における断面図である。図19は、半導体層積層基板102における凹部120周辺の拡大平面図である。
【0183】
図18及び図19に示すように、第1の溝111は、第2の溝112から遠い側に第1の外壁111aを有し、第2の溝112は、第1の溝111から遠い側に第2の外壁112aを有する。分割位置102aの近傍において第1の外壁111aと第2の外壁112aとの間には、凹部120の一部領域を含む第1の部分120aが配置されている。すなわち、第1の外壁111aと第2の外壁112aと間の第1方向(X軸方向)と平行な方向の距離は分割位置102aの近傍において最大値を有する。
【0184】
また、図19に示すように、第1の外壁111aは、分割位置102aを間にして各々が第2の外壁112aとは反対側の方向に延びる一対の第1外壁部111a1及び111a2を有する。また、第2の外壁112aは、分割位置102aを間にして、各々が第1の外壁111aとは反対側の方向に延びる一対の第2外壁部112a1及び112a2を有する。
【0185】
第4の溝114は、分割位置102aにおける第1の溝111の第1の外壁111aと第2の溝112の第2の外壁112aとの間(第1の部分120a)において、凹部120をまたいで形成される。第4の溝114の長手方向の長さは、第1の外壁111a及び第2の外壁112aにかからない長さで、できるだけ長く形成することが望ましい。第1の外壁111aと第2の外壁112aとをまたいで、第1の部分120aよりも長く第4の溝114を形成してしまうと、リーク電流が増加する原因となる。
【0186】
第4の溝114の長さは、第1の部分120aの第1方向(X軸方向)の長さに対して、5μmから25μm程度短い長さで形成するのが良く、本実施の形態における第4の溝114の長さは25μm以上45μm以下であることが好ましい。第4の溝114の長さが45μm(第1の部分120aの第1方向の長さに対して5μm短い)より長くなると、第1の溝114の第1方向に対する形成位置ばらつきなどにより、第1の外壁111aと第2の外壁112aをまたいで形成してしまう恐れがある。一方で、第4の溝114の長さが25μm(第1の部分120aの第2方向の長さに対して25μm短い)未満になると、へき開の起点となるための効果が小さくなり、へき開ずれなどの不具合をもたらす可能性が高くなってくる。より好ましくは、第4の溝114の長さは30μm以上40μm以下である。
【0187】
言い換えると、第4の溝114を形成する第1の部分120aの第1方向(X軸方向)の長さは、30μm以上であることが望ましく、より好ましくは35μm以上である。
【0188】
また、第4の溝114の幅については、2μm以上6μm以下で形成すると良い。第4の溝114の幅が2μm未満になると、第4の溝114の深さも浅くなり、へき開の起点となるための効果が小さくなる。一方、第4の溝114の幅が6μmより太くなると、第4の溝114の第2方向(Y軸方向)に対する形成位置ばらつきになどにより、バー状基板103を窒化物半導体発光素子101に分割する時のガイド機能として配置されている分割溝形成領域113aにかかる恐れがあり、分割逸れの抑制効果が弱まる。合わせて、デブリの発生量も多くなるため、より好ましい第4の溝114の幅としては、3μm以上5μm以下である。
【0189】
第4の溝114の幅は、長手方向(X軸方向:第1方向)の両端部に近づくにつれて徐々に細くなるが、中心付近が最大値を有しており、この最大値が前述の範囲に収まるように形成することが望ましい。
【0190】
次に、図19に示すように、分割位置102aにおいて、第1の外壁111aの基板面内に延びる方向と、導波路201又は分割溝形成領域113aの長手方向に直交する方向(第1方向:X軸方向)とのなす角をθ1とし、第2の外壁112aの基板面内に延びる方向と、導波路201又は分割溝形成領域113aの長手方向に直交する方向(第1方向)とのなす角をθ2とすると、θ1及びθ2は、いずれも、75度以上90度以下であるとよい(75°≦θ1≦90°、75°≦θ2≦90°)。
【0191】
ここで、本実施の形態では、図18に示すように、分割位置102aにおける第1の外壁111aと第2の外壁112aは、導波路201に対して平行に形成されており、θ1とθ2は90度である。つまり、図19に示すように、一対の第1外壁部111a1及び111a2は、導波路201又は分割溝形成領域113aの長手方向(Y軸方向)に対する傾きが分割位置102aに対して対称であり、且つ長さが同じであるため、θ1は90度となる。同様に、一対の第2外壁部112a1及び112a2は、導波路201又は分割溝形成領域113aの長手方向(Y軸方向)に対する傾きが分割位置102aに対して対称であり、且つ長さが同じであるため、θ2は90度となる。
【0192】
なお、一対の第1外壁部111a1及び111a2のY軸方向に対する傾きが分割位置102aに対して対称でない場合、又は、一対の第1外壁部111a1及び111a2の長さが異なる場合は、分割位置102aにおける第1の外壁111aはY軸方向と平行ではなくなる。この場合、第1の外壁111aとX軸方向とのなす角の小さいほうの値をθ1とし、第2の外壁112aとX軸方向とのなす角の小さいほうの値をθ2とする。
【0193】
ここで、θ1、θ2と、半導体層積層基板102をへき開する際に発生する端面(へき開面)の段差との関係について、図20を用いて説明する。図20は、θ1、θ2と端面段差発生率との関係を示す図である。
【0194】
分割位置102aにおいて半導体層積層基板102をへき開してバー状基板103を作製する場合、へき開面は、第1の外壁111a及び第2の外壁112aを通過して導波路201の長手方向に直交する方向(第1方向:X軸方向)に沿って形成される。
【0195】
このとき、図20に示すように、θ1、θ2が75度未満になると、第1の部分120aの近傍で、へき開が逸れて進行する割合が高くなり、端面に段差が発生する割合が高くなる。さらに、θ1、θ2が小さいほど、第1の部分120a近傍でへき開が逸れる割合が高くなる。これは、第1の溝111及び第2の溝112がエッチングによって深さ方向に段差を有しており、第1の外壁111a及び第2の外壁112aのガイド機能が働くためである。また、半導体素子構造体200の結晶構造が六方晶である窒化物半導体発光素子101では、導波路201の長手方向に直交する方向(第1方向)と、その第1方向に対して60度の方向にへき開面を有しているため、θ1、θ2を60度にすると、よりへき開が逸れる割合が高くなる。
【0196】
次に、へき開が逸れた場合に、窒化物半導体発光素子101の特性に与える影響について図21及び図22を用いて説明する。
【0197】
図21(a)は、半導体層積層基板102をへき開した後の端部付近の平面図であり、図21(b)はそのへき開面を示す図であり、図21(c)はそのへき開面に発生した段差を示す図である。
【0198】
図21の(a)~(c)に示すように、へき開が逸れて進行すると、バー状基板103のへき開面(端面)には段差が生じる。へき開面は、窒化物半導体発光素子101の発光面となるため、へき開面に段差が発生すると、窒化物半導体発光素子101の発光特性に影響を与える。
【0199】
図22は、端面(へき開面)に段差が発生している窒化物半導体発光素子101と端面(へき開面)に段差が発生していない窒化物半導体発光素子101との垂直光軸ずれの値を示す図である。
【0200】
図22に示すように、窒化物半導体発光素子101の端面における垂直光軸にずれが発生すると、レーザ発振に対する垂直方向の角度が安定しない。このため、発光特性だけではなく、電気特性及び信頼性にも影響を与える。
【0201】
へき開の逸れによって発生する段差は、半導体層積層基板102の結晶面と異なる方向で分割されているためである。段差が発生すると、半導体層積層基板102からのパーティクル発生の原因にもなり、端面コート膜の密着性が低下する原因ともなる。
【0202】
このため、第1の外壁111a及び第2の外壁112aよるガイド機能が弱くなるように、θ1、θ2は、75度以上90度以下にすることが望ましく、90度に近づくほどより好ましい。なお、第1の外壁111a及び第2の外壁112aは、例えば、図23の(a)~(e)に示されるような形状であっても、安定したへき開を行うことができる。
【0203】
また、一対の第1外壁部111a1及び111a2の各々の基板面内に延びる方向と、導波路201の長手方向に直交する方向(第1方向)とのなす角、及び、一対の第2外壁部112a1及び111a2の各々の基板面内に延びる方向と、導波路201の長手方向に直交する方向(第1方向)とのなす角は、いずれも、30度以上90度以下であるとよく、より好ましくは、45度以上であるが、60度ではない方がよい。一対の第1外壁部111a1及び111a2と一対の第2外壁部112a1及び111a2との位置は、分割位置1a(へき開する位置)ではないが、分割位置102a近傍においても、第4の溝114の形成位置が、導波路201の長手方向(第2方向)に対して平行にずれて形成された場合の影響を少しでも除くために、一対の第1外壁部111a1及び111a2と一対の第2外壁部112a1及び111a2とに関しては、上記の角度の範囲にすることが望ましい。なお、第1の部分120a近傍における、第1の外壁111aと第2の外壁112aとの第1方向における距離は、他の領域と同じ距離であってもよい。
【0204】
また、端面コート膜の剥がれを抑制するためには、へき開面に形成する端面コート膜の密着性を高める必要がある。これまで、半導体基板に密着させる密着層として結晶性のAlN膜が一般的に用いられていたが、AlN膜は、窒化物半導体発光素子積層基板である半導体層積層基板102との熱膨張係数差が大きく、膜剥れが発生しやすい。
【0205】
そこで、本実施の形態においては、AlN膜と比較して窒化物半導体発光素子積層基板との熱膨張係数差が小さいAlON膜を密着層として用いて端面コート膜を形成した。
【0206】
図24は、AlN膜に微量のOガスを添加してSi基板上に成膜した際における膜表面に付着するパーティクル密度のO添加量依存性を示す図である。パーティクル密度が小さい(つまり、パーティクルの発生数が少ない)ということは、膜の密着性が高いということを示している。
【0207】
図24に示すように、AlN膜に微量のOを添加することで、劇的にパーティクル密度が減少させることができる。これは、AlN膜に微量のOを添加して成膜することにより、膜の密着性が大幅に向上したことを示している。
【0208】
図25は、実施の形態1における端面コート膜の膜剥れの抑制効果を更に改善させる端面コート膜構造を示す図である。
【0209】
図25に示される窒化物半導体発光素子では、両端面に、密着層501、AlN層502及び反射率調整層503を形成している。なお、基板100としては、GaN基板を用いている。このように、AlN層502と基板100との間に密着層501を挿入することで、AlN層502及び反射率調整層503の膜剥れの低減効果が期待でき、窒化物半導体発光素子への分割工程においても、端面コート膜の剥れを抑制できる効果が得られる。
【0210】
以上、本実施の形態における窒化物半導体発光素子101とその製造方法等を説明してきたが、実際に本実施の形態における窒化物半導体発光素子101を作製したときの効果を図26に示す。
【0211】
図26には、本実施の形態と、比較例1と、比較例2とについての分割逸れ発生率を示している。本実施の形態と比較例1、2とで異なる点は、分割溝形成領域113aの形状である。比較例1は、分割溝形成領域113aを平坦にした構造で、比較例2は、分割溝形成領域113aを凹形状にした構造(図9と同等の構造)で、本実施の形態は、分割溝形成領域113aを凸形状にした構造である。また、距離L1はいずれも4μmとし、距離L2はいずれも10μmとし、第3の溝113の深さはいずれも基板100に到達する深さとした。また、θ1、θ2は、いずれも90度とし、θ3については、比較例2と本実施の形態は90度とした。
【0212】
その結果、図26に示すように、比較例2は比較例1に対して、凹形状の分割溝形成領域113aを有しているため、ガイド機能の役割が働き、良好な窒化物半導体発光素子の形状を得ることができた。さらに、本実施の形態では、凸形状の分割溝形成領域113aの場合は、より良好な窒化物半導体発光素子の形状を得ることが確認された。
【0213】
以上説明したように、本実施の形態によれば、より平坦なへき開面を形成することができ、より安定した形状の窒化物半導体発光素子101を歩留よく量産することができる。これにより、良好なレーザ素子特性を有する窒化物半導体発光素子101を実現することができる。しかも、素子分割時にパーティクルの発生を十分に抑制することができるので、ワット級の動作状態においても数千時間に及ぶ長期動作保証が可能となる。
【0214】
(実施の形態1の変形例1)
次に、上記実施の形態1の変形例1について説明する。
【0215】
本変形例では、上記実施の形態1における第3の溝113の長さに関して、図15で示したL2を、15μm、20μm、25μmの3条件とし、それ以外の条件は、上記実施の形態1と同様の製造方法で窒化物半導体発光素子を作製した。
【0216】
その結果、分割逸れ発生率は、L2=15μm、20μmの場合では、図26に示される比較例2の場合よりも低くなったが、L2=25μmではチッピングが増加した。この結果は、第3の溝113の長さが短いため、バー状基板103の分割において、より強い応力での分割が必要になり、チッピングの増加に繋がったと考えられる。したがって、チッピングを抑制するには、上記のように距離L2は短い方がよく、L2の上限が20μmである事が明らかとなり、これにより、安定した形状の窒化物半導体発光素子を製造することができる。
【0217】
(実施の形態1の変形例2)
次に、上記実施の形態1の変形例2について説明する。
【0218】
本変形例では、分割溝形成領域113aの先端の角度θ3をどこまで鋭角化できるかの検討を行った。図27は、分割溝形成領域113aの先端の角度θ3を90度よりもさらに鋭角にした場合の分割溝形成領域113a周辺の拡大平面図である。
【0219】
この場合、例えばθ3を30度にすると、分割溝形成領域113aの面積が小さくなる。第3の溝113の幅Wのばらつき又は第3の溝113の形成位置のX軸方向(第1方向)へのばらつきを考慮すると、必然的にL2の長さは長くなる。この場合、θ3の角度が小さいと、分割溝形成領域113aは、ガイド機能として強く働くが、第3の溝113の長さが短いため、上記変形例1で説明したように、バー状基板103の分割において、より強い応力での分割が必要になり、チッピングの増加に繋がる。
【0220】
また、θ3を60度にすると、分割溝形成領域113aの先端部の壁面がへき開面と重なってしまうため、分割溝形成領域113aの側壁に沿って分割された場合に、そのままへき開面に沿って分割されてしまい、窒化物半導体発光素子の形状が悪化してしまうことが考えられる。
【0221】
そこで、θ3を50度にすることで、第3の溝113の長さで変化するL2を20μm以下で形成することができ、チッピングを抑制するとともに、上記実施の形態1と同等の分割逸れ発生率に抑えることができる。
【0222】
したがって、θ3を50度以上にすることで、分割の逸れの抑制とチッピングの抑制との両立を図ることができる。なお、θ3が大きくなりすぎると、分割溝形成領域113aのガイド機能が弱くなるため、θ3の上限は、90度であるとよい。よって、θ3は、50度以上90度以下であることが望ましい。
【0223】
(実施の形態2)
次に、本開示の実施の形態2について説明するが、本開示の実施の形態2の説明に先立ち、本開示の一態様を得るに至った経緯を説明する。
【0224】
従来、一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なる構造を有する窒化物半導体発光素子が知られている。例えば、図28に示すように、テーパストライプ構造の導波路201を有する窒化物半導体発光素子1Xが知られている。図28に示される導波路201は、レーザ光が出射する出射面側の端部の幅の方が反射面側の端部の幅よりも大きくなっている。
【0225】
また、窒化物半導体発光素子に電流を供給する手段として、金ワイヤ等のワイヤがある。この場合、図28に示すように、サブマウント等に実装された窒化物半導体発光素子1Xには、ワイヤボンディングによってワイヤ620が接続される。
【0226】
一般的に、窒化物半導体発光素子を量産する場合、個々の窒化物半導体発光素子に対応する複数の素子形成領域を通るようにストライプ状の導波路が形成された半導体層積層基板をへき開することで複数のバー状基板にして、このバー状基板をさらに複数に分割して個片化することで、1枚の基板(ウエハ)から複数の窒化物半導体発光素子(チップ)を得る。
【0227】
このとき、一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なる窒化物半導体発光素子を量産する際、半導体層積層基板のへき開の位置で導波路の幅を一つ置きに異ならせる方法が考えられる。これにより、1枚の基板から1種類の窒化物半導体発光素子を容易に量産することができる。
【0228】
近年、窒化物半導体発光素子の小型化及びコストダウン等を目的として、窒化物半導体発光素子の幅を狭くすることが検討されている。
【0229】
しかしながら、窒化物半導体発光素子の幅を狭くすると、図29に示すように、窒化物半導体発光素子1Xにワイヤ620を接続したときに、ワイヤ620の接続部621が窒化物半導体発光素子1Xの導波路201(リッジ部)上に位置することになる。この場合、ワイヤボンディング時の衝撃によって導波路201がダメージを受けて窒化物半導体発光素子1Xの信頼性が低下するおそれがある。
【0230】
そこで、ワイヤの接続部が導波路上に位置しないように、導波路の位置を素子幅方向にオフセットすることが考えられる。
【0231】
しかしながら、一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なるとともに導波路の位置が素子幅方向にオフセットされた窒化物半導体発光素子を1つの基板(ウエハ)から量産する場合に、図30に示すように、半導体層積層基板2Yを分割するための2つの分割線XL及びYLのうち分割線XLの位置(へき開の位置)において導波路201の幅を一つ置きに異ならせる方法を用いると、図31の(a)に示すように、出射面から見て導波路201が左側にオフセットされた窒化物半導体発光素子1Yaと、図31の(b)に示すように、出射面から見て導波路201が右側にオフセットされた窒化物半導体発光素子1Ybとが作製される。つまり、導波路201のオフセットの方向が異なる2種類の窒化物半導体発光素子ができてしまう。
【0232】
このような課題に対して、本願発明者らが鋭意検討した結果、本願発明者らは、一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なるとともに導波路の位置が素子幅方向にオフセットされた窒化物半導体発光素子を量産する際に、複数の素子形成領域を通るように導波路が形成された半導体層積層基板を分割して個片化する方法を用いたとしても、導波路のオフセットの方向が揃った1種類の窒化物半導体発光素子を容易に製造することができる方法を見出した。
【0233】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、一方の端部と他方の端部とで導波路の幅が異なるとともに導波路の位置が素子幅方向にオフセットされた窒化物半導体発光素子を製造する際に、導波路のオフセットの方向が揃った1種類の窒化物半導体発光素子を容易に製造することができる窒化物半導体発光素子の製造方法等を提供することを目的とする。
【0234】
以下、本開示の実施の形態2について、図面を参照しながら説明する。
【0235】
まず、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法によって製造される窒化物半導体発光素子1の構成について、図32図36を用いて説明する。図32図34は、それぞれ実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子1の斜視図、正面図及び上面図である。図35A及び図35Bは、それぞれ、図34のA-A線及びB-B線における同窒化物半導体発光素子1の断面図である。図36は、同窒化物半導体発光素子1における導波路201の形状を示す平面図である。
【0236】
図32及び図34に示すように、窒化物半導体発光素子1は、第1の側面1aと、第2の側面1bと、第3の側面1cと、第4の側面1dとを有する。
【0237】
第1の側面1a及び第2の側面1bは、Y軸方向に略平行な面である。具体的には、第1の側面1a及び第2の側面1bは、YZ平面に略平行な面である。第2の側面1bは、第1の側面1aと対向している。
【0238】
なお、詳細は後述するが、第1の側面1a及び第2の側面1bは、半導体層積層基板を分割して窒化物半導体発光素子1を作製する際に、Y軸方向に延在する縦方向分割線に沿った分割面である。
【0239】
第3の側面1c及び第4の側面1dは、X軸方向に略平行な面である。具体的には、第3の側面1c及び第4の側面1dは、XZ平面に略平行な面であって、第1の側面1a及び第2の側面1bに略垂直な面である。第4の側面1dは、第3の側面1cと対向している。第3の側面1cは、窒化物半導体発光素子1の出射面であり、第4の側面1dは、窒化物半導体発光素子1の反射面である。
【0240】
なお、詳細は後述するが、第3の側面1c及び第4の側面1dは、半導体層積層基板を分割して窒化物半導体発光素子1を作製する際に、X軸方向に延在する横方向分割線に沿った分割面である。具体的には、第3の側面1c及び第4の側面1dは、導波路201と接する面であり、へき開面である。また、図32図34には図示されていないが、第3の側面1c及び第4の側面1dには端面コート膜(反射膜)が被覆されている。
【0241】
図32図35Bに示すように、窒化物半導体発光素子1は、実施の形態1における窒化物半導体発光素子101と同様に、基板100と、基板100の一方の面の上に位置する半導体素子構造体200とを有する。本実施の形態における窒化物半導体発光素子1も、窒化物系半導体材料によって構成された窒化物半導体レーザである。
【0242】
基板100は、実施の形態1と同様に、例えば、GaNからなるGaN基板である。本実施の形態でも、基板100として、六方晶のn型GaN基板を用いている。
【0243】
図35A及び図35Bに示すように、半導体素子構造体200は、実施の形態1と同様に、基板100の上に、第1導電型の第1窒化物半導体層210と、活性層220と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2窒化物半導体層230とを順に有する。第1窒化物半導体層210、活性層220及び第2窒化物半導体層230の具体的な材料は、実施の形態1と同様である。
【0244】
図34に示すように、窒化物半導体発光素子1は、実施の形態1における窒化物半導体素子101と同様に、レーザ共振器長方向に延在する導波路201を有する。図35A及び図35Bに示すように、導波路201は、第2窒化物半導体層230に形成されている。本実施の形態において、導波路201は、リッジ状に形成されたリッジストライプ構造である。
【0245】
また、図35A及び図35Bに示すように、本実施の形態でも、各導波路201上の一部を除き、第2窒化物半導体層230の上(本実施の形態ではp型コンタクト層234の上)は、SiOからなる電流ブロック層240で覆われている。
【0246】
また、半導体素子構造体200の上には、第1電極として、p側オーミック電極250及びp側電極260が形成されて、基板100の他方の面には、第2電極として、n側電極270が形成されている。
【0247】
本実施の形態における窒化物半導体発光素子1では、図33に示すように、導波路201の位置が窒化物半導体発光素子1の素子幅方向にオフセットされている。つまり、導波路201は、X軸方向(第1方向)にオフセットされた位置に配置されており、導波路201の中心線は、窒化物半導体発光素子1の幅方向の中心からずれた位置に存在している。
【0248】
本実施の形態において、導波路201の位置は、窒化物半導体発光素子1を正面から見たときに、X軸方向のプラス方向(右方向)にオフセットされている。このため、図32及び図34に示すように、p側電極260の第1の側面1aに最も近い第1端部261から導波路201までの第1の幅は、p側電極260の第2の側面1bに最も近い第2端部262から導波路201までの第2の幅よりも長くなっている。
【0249】
また、図36に示すように、導波路201は、共振器長方向の一方の端部(窒化物半導体発光素子1の出射面側のリッジ端部)と他方の端部(窒化物半導体発光素子1の反射面側のリッジ端部)とで幅が異なっている。つまり、第4の側面1dである反射面側の端部における導波路201の第1の幅(第1のリッジストライプ幅)をW1とし、第3の側面1cである出射面側の端部における導波路201の第2の幅(第2のリッジストライプ幅)をW2とすると、W1≠W2である。具体的には、出射面側の第2の幅W2が反射面側の第1の幅W1よりも大きくなっている(W2>W1)。
【0250】
本実施の形態において、導波路201は、幅がW1で一定の第1直線部201aと、幅がW1からW2へ連続的に変化する幅変化部201bと、幅がW2で一定の第2直線部201cとを有する。幅変化部201bは、第1直線部201aと第2直線部201cとの間に位置する。本実施の形態において、幅変化部201bの幅は、反射面側から出射面側に向かって単調に増加している。具体的には、幅変化部201bは、テーパ状に幅が漸次変化するテーパ部であり、導波路201は、テーパストライプ構造となっている。
【0251】
この場合、幅変化部201bの共振器長方向に対するテーパ角θ(傾斜角)は、導波路201の共振器長方向の全長をLとし、第1直線部201aの長さをX1とし、第2直線部201cの長さをX2とすると、以下の式1で表すことができる。
【0252】
tan(θ)=(W2-W1)/(2×(L-X1-X2))・・・式1
【0253】
また、窒化物半導体発光素子1では、導波路201の幅が広い方を出射面としてレーザ光が取り出される。この場合、出射面及び反射面には、端面でのレーザ光の反射率がそれぞれRf(%)、Rr(%)となるように端面コート膜(反射膜)が形成されている。ここで、出射面からの光の取り出し効率を向上させるために、Rf<Rrとしている。
【0254】
このように、導波路201が幅変化部201b(テーパ部)を有することで、リッジストライプ領域の共振器長方向に対する活性層220での電子正孔対密度分布の均一性を高めることができるとともに、活性層220への電流注入面積が小さくなるためレーザ発振に必要な発振しきい電流値を小さくすることができる。これにより、高温動作時の熱飽和レベルが向上するので、窒化物半導体発光素子1の高温動作特性が改善する。
【0255】
さらに、導波路201を伝搬するレーザ光の光分布形状を幅が狭い第1の幅W1で制御することができる。つまり、横モード制御を行うことができる。この場合、共振器端面近傍に導波路201の幅が一定となる領域を設けることにより、へき開の位置のずれによる導波路201の端部の幅が変化してしまうことを抑制できる。
【0256】
特に、本実施の形態における窒化物半導体発光素子1では、導波路201の位置がオフセットされているが、導波路201の位置がオフセットされていると、窒化物半導体発光素子1の動作中に発生する熱の放熱は、導波路201と左右の側面との距離の違いによる影響を受けやすくなるため、高温動作特性が低下する。しかし、本実施の形態における窒化物半導体発光素子1では、導波路201が幅変化部201b(テーパ部)を有するので、上記のように高温動作特性を向上させることができる。これにより、高温動作特性の低下を招くことなく、素子面積の低減による低コストの窒化物半導体発光素子1を実現できる。
【0257】
このように構成される窒化物半導体発光素子1には、複数の溝が形成されている。具体的には、図32図35Bに示すように、窒化物半導体発光素子1には、第1の溝11、第2の溝12、第3の溝13及び第4の溝14が形成されている。
【0258】
後述するように、第1の溝11は、へき開用の分割溝であり、第2の溝12は、個片化する際の素子分離用の分割溝である。第1の溝11及び第2の溝12は、レーザによって形成される。また、第3の溝13及び第4の溝14は、第2の溝12を形成するための分割溝形成領域12aを形成するためのガイド溝である。第3の溝13及び第4の溝14は、エッチングによって形成される。
【0259】
図32及び図34に示すように、第1の溝11は、平面視における第1の側面1aと第3の側面1cとの交点近傍において、X軸方向(第1方向)に沿って延在する。本実施の形態において、第1の溝11は、第3の側面1cに形成されている。具体的には、第1の溝11は、上面視において、第3の側面1c(出射面)から僅かに後退して窪むように形成されている。
【0260】
また、第1の溝11は、図32及び図33に示すように、第1の凹部21の底面からZ軸方向に向かって掘り込むように形成されている。第1の溝11は、半導体素子構造体200を貫通して基板100に達している。後述するが、第1の溝11の最大深さは、20μm~60μmであり、平面視したときの第1の溝11の第1方向の長さは、30μm~40μmである。第1の溝11は、正面視形状が三角形状となるように形成されているが、これに限らない。なお、第1の溝11は、第4の側面1dにも形成されている。
【0261】
第2の溝12は、図32及び図34に示すように、第1の側面1a及び第2の側面1bの各々に形成されている。本実施の形態において、第2の溝12は、上面視において、第1の側面1a及び第2の側面1bから僅かに後退して窪むように形成されている。
【0262】
また、第2の溝12は、図32及び図35Aに示すように、半導体素子構造体200の上面からZ軸方向に向かって掘り込むように形成されている。第2の溝12は、半導体素子構造体200を貫通して基板100に達している。後述するが、第2の溝12の最大深さは、30μm~60μmであり、平面視したときの第2の溝12の第2方向の長さは、分割溝形成領域12aに収まる長さである。第2の溝12は、第3の溝13及び第4の溝よりも深い。つまり、第2の溝12の底は、第3の溝13及び第4の溝14の底よりも深い位置に存在している。第2の溝12は、側面視形状が略台形状となるように形成されているが、これに限らない。
【0263】
また、窒化物半導体発光素子1は、上記実施の形態1における窒化物半導体発光素子101と同様に、第2の溝12の一部として、第1の側面1aから後退するように窪んだ第1の窪み部と、第2の側面1bから後退するように窪んだ第2の窪み部とを有する。
【0264】
第1の窪み部は、第1の側面1aの上端部を含む領域が窪むように段差状に凹んだ部分である。同様に、第2の窪み部は、第2の側面1bの上端部を含む領域が窪むように段差状に凹んだ部分である。
【0265】
また、窒化物半導体発光素子1は、上記実施の形態1における窒化物半導体発光素子101と同様に、第1の溝11の一部として、第3の側面1cから後退するように窪んだ第3の窪み部と、第4の側面1dから後退するように窪んだ第4の窪み部とを有する。
【0266】
本実施の形態において、第2の溝12は、分割溝形成領域12aに形成されている。分割溝形成領域12aは、第3の溝13及び第4の溝14を形成することにより得られる島状の領域であり、Y軸方向に延在している。第2の溝12は、分割溝形成領域12aの上面からZ軸方向に向かって掘り込むように形成される。
【0267】
図32図34に示すように、第3の溝13及び第4の溝14は、Y軸方向と略平行に延在している。第3の溝13及び第4の溝14は、導波路201を挟んで一対で形成されている。つまり、導波路201は、隣り合う一対の第3の溝13及び第4の溝14の間に存在する。図35Aに示すように、第3の溝13及び第4の溝14の各々は、底面と、その底面に略垂直に形成された2つの対向する側面とからなる凹形状を有している。
【0268】
第3の溝13及び第4の溝14は、半導体素子構造体200を掘り込むことで形成されている。具体的には、第3の溝13及び第4の溝14は、第1窒化物半導体層210に達しており、底が第1窒化物半導体層210にまで到達するように掘り込まれている。すなわち、第3の溝13及び第4の溝14は、第2窒化物半導体層230、活性層220及び第1窒化物半導体層210の一部までを掘り込むことで形成されている。本実施の形態において、第3の溝13及び第4の溝14は、n型クラッド層211の途中までを掘り込むことで形成されている。つまり、第3の溝13及び第4の溝14の底は、n型クラッド層211にまで達している。なお、第3の溝13及び第4の溝14の深さは、同じであるが、これに限らない。
【0269】
また、図32に示すように、窒化物半導体発光素子1は、第1の側面1aと第3の側面1cとの交点近傍において、第1の凹部21を有する。本実施の形態において、第1の凹部21は、第1の側面1aと第3の側面1cとにまたがって形成されている。詳細は後述するが、第1の凹部21の側面(壁面)は、第3の側面1cに対して45°以上の角度で傾斜しているとよい。
【0270】
さらに、窒化物半導体発光素子1は、第1の側面1aと第4の側面1dとの交点近傍において、第2の凹部22を有する。本実施の形態において、第2の凹部22は、第1の側面1aと第4の側面1dとにまたがって形成されている。詳細は後述するが、第2の凹部22の側面(壁面)は、第4の側面1dに対して45°以上の角度で傾斜しているとよい。
【0271】
第1の凹部21及び第2の凹部22は、いずれも第4の溝14と繋がっている。具体的には、第4の溝14の長手方向の一方の端部に第1の凹部21が連結され、第4の溝14の長手方向の他方の端部に第2の凹部22が連結されている。第1の凹部21及び第2の凹部22は、第4の溝14と同時に形成される。したがって、第1の凹部21及び第2の凹部22と第4の溝14とは深さが同じであり、第1の凹部21及び第2の凹部22の底面と第4の溝14の底面とは同じ深さ位置にある。
【0272】
次に、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法について、図37A図37Kを用いて説明する。図37A図37Kは、実施の形態2に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法を説明するための図である。図37B図37Fにおいて、上図の(a)は、下図の(b)のA-A線における断面図であり、下図の(b)は部分平面図である。図37Gにおいて、上図の(a)は部分斜視図であり、下図の(b)は部分平面図である。図37H及び図37Iは部分斜視図である。図37J及び図37Kにおいて、上図の(a)は、部分斜視図であり、中図の(b)は部分平面図であり、下図の(c)は部分断面図である。図37Jの(c)は、(b)のC-C線における断面図である。なお、図37G図37Kの斜視図では、立体構造が正確に図示されていない。
【0273】
本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法では、まず、図37A図37Fに示すようにして、複数の導波路201を有する半導体層積層体200Aが形成された半導体層積層基板2を作製する。その後、図37G図37Kに示すようにして、横方向分割線XL及び縦方向分割線YLの略直交する2つの分割線に沿って半導体層積層基板2を分割して複数に個片化することで、窒化物半導体発光素子1を得る。以下、具体的な各工程について、詳細に説明する。
【0274】
まず、図37Aの(a)に示すように、基板100の上に半導体層積層体200Aを形成することにより半導体層積層基板2を作製する。例えば、基板100の一方の面の全面に、複数の窒化物半導体からなる半導体層をエピタキシャル成長することにより半導体層積層体200Aを形成する。
【0275】
具体的には、基板100としてn型六方晶GaN基板を用意し、この基板100の上に、Geがドープされたn型AlGaNからなるn型クラッド層211及びn型GaNからなるn側ガイド層212を順次成長させることで第1窒化物半導体層210を形成する。
【0276】
続いて、第1窒化物半導体層210の上(本実施の形態では、n側ガイド層212の上)に、例えば、活性層220として、アンドープのInGaNからなる井戸層とアンドープのInGaNからなる障壁層とが交互に1回又は複数回積層された量子井戸活性層を形成する。
【0277】
続いて、活性層220の上に、InGaNからなるp側ガイド層231と、p型電子障壁層232と、Mgがドープされたp型のAlGaNからなるp型クラッド層233と、p型GaNからなるp型コンタクト層234を順次形成する。
【0278】
このとき、図37Aの(b)に示すように、半導体層積層基板2は、各々が最終的に窒化物半導体発光素子1として得られる個々の個片素子に対応する複数の素子形成領域300を有する。
【0279】
複数の素子形成領域300は、複数の横方向分割線XLと複数の縦方向分割線YLとによって区画されている。具体的には、複数の素子形成領域300の各々は、Y軸方向に隣り合う2本の横方向分割線XLと、X軸方向に隣り合う2本の縦方向分割線YLとで囲まれる領域である。
【0280】
複数の横方向分割線XLの各々は、基板100の面内において、X軸方向(第1方向)に平行な第1方向分割線である。一方、複数の縦方向分割線YLの各々は、基板100の面内において、Y軸方向(第2方向)に平行な第2方向分割線である。複数の横方向分割線XL及び複数の縦方向分割線YLは、半導体層積層基板2を分割するための分割線である。つまり、半導体層積層基板2は、複数の横方向分割線XL及び複数の縦方向分割線YLに沿って切断される。これにより、複数の素子形成領域300の各々が個片化されて個片素子となる。
【0281】
そして、本実施の形態では、複数の素子形成領域300が行毎にX軸方向にずれている。具体的には、複数の素子形成領域300が、偶数行と奇数行とで一行置きにX軸方向にずれている。つまり、複数の縦方向分割線YLが複数の素子形成領域300の行毎にX軸方向にずれている。
【0282】
具体的には、第1の行の複数の素子形成領域300の複数の縦方向分割線YLと、第2の行の複数の素子形成領域300の複数の縦方向分割線YLとは、X軸方向にずれている。また、第1の行の複数の素子形成領域300の複数の縦方向分割線YLと、第3の行の複数の素子形成領域300の複数の縦方向分割線YLとは一致している。つまり、縦方向分割線YLは、偶数行と奇数行とで一行置きにX軸方向にずれている。また、偶数行同士の縦方向分割線YL及び奇数行同士の縦方向分割線YLは、X軸方向にずれておらず、一致している。
【0283】
一例として、図37Aの(b)に示すように、複数の横方向分割線XLは、第1の横方向分割線XL1と、第2の横方向分割線XL2と、第3の横方向分割線XL3とを含み、複数の縦方向分割線YLは、第1の縦方向分割線YL1と、第2の縦方向分割線YL2と、第3の縦方向分割線YL3と、第4の縦方向分割線YL4とを含む。
【0284】
また、複数の素子形成領域300は、Y軸方向に隣り合う第1素子形成領域301及び第2素子形成領域302を有する。第1素子形成領域301は、第1の横方向分割線XL1、第2の横方向分割線XL2、第1の縦方向分割線YL1及び第2の縦方向分割線YL2の4本の分割線で四方が囲まれる矩形領域である。また、第2素子形成領域302は、第2の横方向分割線XL2、第3の横方向分割線XL3、第3の縦方向分割線YL3及び第4の縦方向分割線YL4の4本の分割線で四方が囲まれる矩形領域である。
【0285】
そして、第1素子形成領域301を挟む2つの縦方向分割線YL(第1の縦方向分割線YL1、第2の縦方向分割線YL2)と、第2素子形成領域302を挟む2つの縦方向分割線(第3の縦方向分割線YL3、第4の縦方向分割線YL4)とは、X軸方向にずれている。
【0286】
次に、半導体層積層体200Aを形成した後、図37Bの(a)及び(b)に示すように、半導体層積層体200Aが形成された半導体層積層基板2において、縦方向分割線YLに沿って、ガイド溝10を形成する。ガイド溝10は、第2の溝12を形成するための分割溝形成領域12aを形成するための溝である。本実施の形態では、縦方向分割線YLが一行置きにX軸方向にずれているので、ガイド溝10も一行置きにX軸方向にずれている。
【0287】
ガイド溝10は、以下の方法で形成することができる。具体的には、図37Bの(a)に示すように、真空蒸着法及びエッチング技術を用いて、SiO膜からなるマスク400及び第1レジスト膜(不図示)をp型コンタクト層234上に順次形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて、第1レジスト膜に開口を形成する。この第1レジスト膜の開口は、第3の溝13及び第4の溝14に対応する部分に形成する。
【0288】
続いて、エッチング技術を用いて、第1レジスト膜が開口された部分のマスク400をエッチングすることでマスク400に第1開口部401を形成し、その後、残った第1レジスト膜を除去する。
【0289】
続いて、反応性イオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)等のドライエッチング技術を用いて、マスク400の第1開口部401に対応する部分についてp型コンタクト層234以下の半導体層積層体200Aをエッチングすることで、ガイド溝10を形成する。
【0290】
このとき、ガイド溝10は、底面が第1窒化物半導体層210に到達するまで、活性層220及び第2窒化物半導体層230をエッチング除去するように半導体層積層体200Aを基板100に向かって掘り込む。ガイド溝10の底(深さ)は、少なくとも第1窒化物半導体層210まで到達しているとよく、さらには、基板100まで到達していてもよい。すなわち、ガイド溝10の底部には、第1窒化物半導体層210又は基板100が露出している。本実施の形態において、ガイド溝10の底は、n型クラッド層211まで到達している。
【0291】
このように、本実施の形態におけるガイド溝10は、エッチングにより形成されるエッチング溝である。図37Bの(b)に示すように、ガイド溝10は、縦方向分割線YLを間にして、X軸方向に隣り合う2つの素子形成領域300に形成される。
【0292】
具体的には、ガイド溝10は、第1の縦方向分割線YL1を間にして、各々がY軸方向に延在する第3の溝13及び第4の溝14を含む。第3の溝13は、第1素子形成領域301に形成され、第4の溝14は、第1素子形成領域301のX軸方向に隣接する第3素子形成領域303に形成される。
【0293】
また、ガイド溝10は、第3の縦方向分割線YL3を間にして、各々がY軸方向に延在する第5の溝15及び第6の溝16を含む。第5の溝15は、第2素子形成領域302に形成され、第6の溝16は、第2素子形成領域302のX軸方向に隣接する第4素子形成領域304に形成される。
【0294】
また、ガイド溝10は、第7の溝17を含む。第7の溝17は、横方向分割線XLと縦方向分割線YLとの交点付近に形成される。具体的には、第7の溝17は、第2の横方向分割線XL2上において、第3の溝13及び第4の溝14と第5の溝15及び第6の溝16との間に形成される。つまり、第7の溝17は、第3の溝13及び第4の溝14と第5の溝15及び第6の溝16とを連結する連結溝であり、第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15、第6の溝16及び第7の溝17は、互いに繋がっている。なお、第7の溝17は、図32における第1の凹部21及び第2の凹部22に対応する。
【0295】
第7の溝17は、第1素子形成領域301の第3の溝13と第4の溝14との間において、第2の横方向分割線XL2からY軸方向の幅が最小となる部分を有する。また、第7の溝17は、第2素子形成領域302の第5の溝15と第6の溝16との間において、第2の横方向分割線XL2からY軸方向の幅が最小となる部分を有する。
【0296】
第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15、第6の溝16及び第7の溝17は、少なくとも、第1窒化物半導体層210に達している。本実施の形態において、第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15、第6の溝16及び第7の溝17は、ガイド溝10として同時に形成されるので、底面は面一である。
【0297】
そして、ガイド溝10を形成することで、分割溝形成領域12aが形成される。例えば、第1素子形成領域301と第3素子形成領域303との間に形成される分割溝形成領域12aは、第3の溝13と第4の溝14と上下の第7の溝17で囲まれる島状の領域である。また、第2素子形成領域302と第4素子形成領域304との間に形成される分割溝形成領域12aは、第5の溝15と第6の溝16と上下の第7の溝17で囲まれる島状の領域である。
【0298】
次に、ガイド溝10を形成した後は、図37Cの(a)及び(b)に示すように、半導体層積層基板2の半導体層積層体200Aに、各々がY軸方向に延在するリッジストライプ状の複数の導波路201を形成する。複数の導波路201は、X軸方向に一定の間隔をあけて等間隔に形成される。
【0299】
また、本実施の形態では、複数の素子形成領域300及び複数の縦方向分割線YLが各々の行毎にX軸方向にずれているが、導波路201は、複数の素子形成領域300及び複数の縦方向分割線YLの行毎にずれていない。つまり、導波路201は、個片素子(窒化物半導体発光素子1)に対応する各素子形成領域300単位ではX軸方向にオフセットされた位置に配置されているが、半導体層積層基板2全体ではY軸方向に並ぶ複数の素子形成領域300を通るように直線状に形成される。言い換えると、第1素子形成領域301における導波路と第1の縦方向分割線YL1との間の幅は、第2素子形成領域302における導波路と第4の縦方向分割線YL4との間の幅と等しい。
【0300】
また、各素子形成領域300において、導波路201は、一方の端部の幅が他端の端部の幅と異なっている。具体的には、各素子形成領域300における導波路201は、テーパ構造として、テーパ状に幅が漸次変化する幅変化部(テーパ部)を有する。
【0301】
このようなテーパ構造の導波路201を有する窒化物半導体発光素子1を量産するために、横方向分割線XLの位置で導波路201の幅を一つ置きに異ならせている。つまり、横方向分割線XLの位置において、Y軸方向に隣り合う2つの素子形成領域300の各々の導波路201の幅は一致している。
【0302】
このような形状の導波路201は、以下の方法で形成することができる。具体的には、図37Cの(a)に示すように、第2レジスト膜(不図示)をマスク400の上に形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて、第2レジスト膜にストライプ状の開口を形成する。この第2レジスト膜の開口は、導波路201を挟む開口部202に対応する部分に形成する。
【0303】
続いて、エッチング技術を用いて、第2レジスト膜が開口された部分のマスク400をエッチングすることでマスク400に第2開口部402を形成し、その後、残った第2レジスト膜を除去する。
【0304】
続いて、RIE等のドライエッチング技術を用いて、マスク400の第2開口部402に対応する部分についてp型コンタクト層234以下の半導体層積層体200Aをエッチングすることで2つの開口部202を形成する。
【0305】
このとき、2つの開口部202は、2つの開口部202の底がp型クラッド層233にまで到達するように半導体層積層体200Aを基板100に向かって掘り込む。具体的には、p型コンタクト層234をエッチングするとともにp型クラッド層233の上面から所定の深さの領域までをエッチングする。
【0306】
これにより、図37Cの(b)に示すように、素子形成領域300毎にテーパ構造を有し、且つ、Y軸方向に並ぶ複数の素子形成領域300を通るリッジストライプ状の複数の導波路201を形成することができる。
【0307】
具体的には、図38に示すように、半導体層積層基板2における導波路201において、第1の横方向分割線XL1での導波路201のX軸方向の第1の幅をW1とし、第2の横方向分割線XL2での導波路201のX軸方向の第2の幅をW2とし、第3の横方向分割線XL3での導波路201のX軸方向の第3の幅をW3とすると、W1=W3、かつ、W1≠W2、具体的にはW2>W1である。図38は、図37C(b)の破線で囲まれる領域Xの拡大図である。
【0308】
本実施の形態において、第1素子形成領域301及び第2素子形成領域302の各々において、導波路201は、幅がW1からW2へ連続的に変化する幅変化部を有する。
【0309】
また、第1の縦方向分割線YL1と第2の縦方向分割線YL2との間隔をD1とし、第3の縦方向分割線YL3と第4の縦方向分割線YL4との間隔をD2とすると、D1=D2である。つまり、第1素子形成領域301の幅と第2素子形成領域302の幅とは同じである。本実施の形態において、複数の素子形成領域300の幅は、全て同じである。
【0310】
また、半導体層積層基板2において、第1素子形成領域301の導波路201は、第1の縦方向分割線YL1及び第2の縦方向分割線YL2のうち第1の縦方向分割線YL1側に偏って配置されている。一方、第2素子形成領域302の導波路201は、第3の縦方向分割線YL3及び第4の縦方向分割線YL4のうち第4の縦方向分割線YL4側に偏って配置されている。
【0311】
次に、導波路201を形成した後はマスク400を除去し、図37Dの(a)及び(b)に示すように、半導体層積層体200Aを覆うように電流ブロック層240を形成する。
【0312】
具体的には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、基板100上の全面にわたって、約300nmの厚みを有するSiO膜からなる電流ブロック層240を半導体層積層体200Aの上に形成する。これにより、p型コンタクト層234の上面が電流ブロック層240によって被覆されるとともに、ガイド溝10(第3の溝13、第4の溝14)及び開口部202の内面も電流ブロック層240によって被覆される。
【0313】
次に、図37Eの(a)及び(b)に示すように、半導体層積層体200Aの上に、複数の素子形成領域300の各々に対応するp側オーミック電極250及びp側電極260を形成する。
【0314】
具体的には、第3レジスト膜(不図示)をマスクとしたエッチング技術を用いて、リッジストライプ状の導波路201の上の電流ブロック層240をエッチングして、電流ブロック層240にストライプ状の開口を形成する。その後、真空蒸着法及びエッチング技術を用いて、リッジストライプ状の導波路201におけるp型コンタクト層234上にPt膜及びPd膜を順に積層することでp側オーミック電極250を形成する。
【0315】
続いて、真空蒸着法及びリフトオフ法を用いて、電流ブロック層240の開口を覆うように、Ti膜及びAu膜を順に積層することで、p側電極260を形成する。このとき、p側電極260は、p側オーミック電極250と接触するようにして電流ブロック層240上の所定の領域にp側オーミック電極250よりも幅広で形成される。
【0316】
本実施の形態において、導波路201は、各素子形成領域300において、X軸方向にオフセットされている。このため、各素子形成領域300において、導波路201は、p側電極260に対してもX軸方向にオフセットされている。
【0317】
具体的には、第1素子形成領域301において、p側電極260の第1の縦方向分割線YL1側に最も近い端部から導波路201までの幅より、p側電極260の第2の縦方向分割線YL2側に最も近い端部から導波路201までの幅の方が広くなっている。また、第2素子形成領域302において、p側電極260の第4の縦方向分割線YL4側に最も近い部分から導波路201までの幅より、p側電極260の第3の縦方向分割線YL3側に最も近い端部から導波路201までの幅の方が広くなっている。平面視した場合の、p側電極260の形状は、図32図37Eでは第1方向に対して非対称の形状となっているがこれに限らず、対称の形状でも良い。また、第2方向に対しても対称な形状となっているがこれに限らず、非対称の形状でも良い。
【0318】
さらに、分割線XLを軸として隣り合うp側電極260の間隔は10μmから140μmとすることが望ましい。例えば、第1素子形成領域301のp側電極260と第2素子形成領域302のp側電極260との第2方向の間隔が、10μmであれば、第1素子形成領域301のp側電極260と第2素子形成領域302のp側電極260とから第2の横方向分割線XL2までの距離は共に5μmになる。第1素子形成領域301のp側電極260と第2素子形成領域302のp側電極260との間隔が10μmよりも狭い場合は、第1の溝11の形成位置ばらつきや、へき開位置ばらつきによって、へき開面がp側電極260に重なってしまう恐れがある。一方、第1素子形成領域301のp側電極260と第2素子形成領域302のp側電極260との間隔が140μmよりも広い場合は、電流注入面積が減ってしまい、窒化物半導体発光素子1の特性の悪化につながる。
【0319】
p側オーミック電極250及びp側電極260を形成した後は、基板100のp側電極260側の面とは反対側の面(基板100の裏面)を研磨する。
【0320】
次に、図37Fの(a)及び(b)に示すように、基板100の裏面に、所定の形状にパターニングされたn側電極270を形成する。
【0321】
具体的には、真空蒸着法及びリフトオフ法を用いて、基板100の研磨された面に、基板100の裏面から順に、Ti膜、Pt膜及びAu膜を積層することにより、所定形状のn側電極270を形成する。
【0322】
以上にようにして、基板100の上にY軸方向に延在する複数の導波路201を有する半導体層積層体200Aが形成された半導体層積層基板2を作製することができる。
【0323】
次に、図37G図37Kを用いて、半導体層積層基板2を分割して個片化することによって窒化物半導体発光素子1を得る方法を説明する。
【0324】
図37Fの工程の後、図37Gの(a)及び(b)に示すように、複数の横方向分割線XLに沿って第1の溝11を形成する。第1の溝11は、半導体層積層基板2をへき開して分割する際にへき開の起点となるへき開用の分割溝である。本実施の形態において、第1の溝11は、レーザスクライブ法によって形成されたレーザスクライブ溝である。
【0325】
本実施の形態において、第1の溝11は、基板100の面内において、横方向分割線XLと縦方向分割線YLとの交点近傍ごとに形成される。各第1の溝11は、X軸方向に長尺状をなすように形成される。つまり、第1の溝11は、複数の横方向分割線XLの各々に沿って破線状に形成される。破線状の第1の溝11は、例えば、半導体層積層基板2に対してレーザ光を相対的に移動させながら間欠的に照射するによって形成することができる。
【0326】
具体的には、第1の溝11は、ガイド溝10内において、Y軸方向に隣り合う2つの縦方向分割線YLと1つの横方向分割線XLとの2つの交点の間に形成される。図39は、図37G(b)の破線で囲まれる領域Yの拡大図である。図39に示すように、例えば、第1の溝11は、第2の横方向分割線XL2及び第1の縦方向分割線YL1の交点である第1交点P1と第2の横方向分割線XL2及び第3の縦方向分割線YL3の交点である第2交点P2との間における第2の横方向分割線XL2に沿って形成されている。
【0327】
また、図40は、図37G(b)の第2の横方向分割線XL2における断面図である。図40に示すように、第1の溝11は、ガイド溝10のうち第7の溝17に形成されている。つまり、第1の溝11は、第7の溝17の底面から下方に掘り込まれている。したがって、第1の溝11の底は、第7の溝17の底よりも深い位置に存在する。
【0328】
次に、図37Hに示すように、複数の横方向分割線XLに沿って半導体層積層基板2を順次分割することで、複数の導波路201を切断して複数のバー状基板3を作製する。本実施の形態では、第1の溝11を利用して半導体層積層基板2をへき開(一次へき開)することで、1つの半導体層積層基板2を複数のバー状基板3に分割する。
【0329】
具体的には、第1の溝11が形成された半導体層積層基板2に対して、X軸方向に延びる刃状治具を第1の溝11に沿ってn側電極270側から接触させて半導体層積層基板2に荷重を印加する。これにより、半導体層積層基板2が第1の溝11の長手方向に沿って分割される。つまり、半導体層積層基板2が横方向分割線XLに沿って分割される。
【0330】
このとき、半導体層積層基板2の分割は、X軸方向に沿って破線状に形成された複数の第1の溝11の列ごとに行う。これにより、1つの半導体層積層基板2から複数のバー状基板3が得られる。
【0331】
なお、本実施の形態において、複数の縦方向分割線YLは、偶数行と奇数行とで一行置きにX軸方向にずれている。したがって、半導体層積層基板2から分割された複数のバー状基板3のうちY軸方向に隣り合う2つのバー状基板3の縦方向分割線YLの位置は、一方が他方に対してX軸方向にずれている。
【0332】
次に、図37Iに示すように、へき開により得られたバー状基板3のへき開面に、端面コート膜500を形成する。具体的には、バー状基板3の両方のへき開面の各々に、端面コート膜500を形成する。
【0333】
端面コート膜500は、例えば、へき開面と密着する密着層であるAlON膜、酸素拡散防止層であるAlN膜及び反射率調整層によって構成される。一例として、窒化物半導体発光素子1の出射面(第3の側面1c)となるへき開面には、反射率が2%の端面コート膜500が形成され、窒化物半導体発光素子1の反射面(第4の側面1d)となるへき開面には、反射率が95%の端面コート膜500が形成される。
【0334】
次に、図37Jの(a)~(c)に示すように、複数の縦方向分割線YLに沿ってバー状基板3に第2の溝12を形成する。第2の溝12は、バー状基板3を複数に分割して個片素子を作製する際に用いられる素子分離用の分割溝である。本実施の形態において、第2の溝12は、レーザスクライブ法によって形成されたレーザスクライブ溝である。
【0335】
図37Jの(a)及び(b)に示すように、第2の溝12は、X軸方向に隣り合う2つの素子形成領域300の間において、Y軸方向に沿って形成される。本実施の形態では、X軸方向に隣り合う2つの素子形成領域300の間には分割溝形成領域12aが形成されており、第2の溝12は、その分割溝形成領域12aに形成される。つまり、第2の溝12は、分割溝形成領域12aを挟むように形成された第3の溝13(又は第5の溝15)と第4の溝14(第6の溝16)との間に形成されることになる。
【0336】
また、図37Jの(c)に示すように、第2の溝12の深さは、ガイド溝10(第3の溝13、第4の溝14)の深さよりも深い。つまり、第2の溝12の底は、第3の溝13(又は第5の溝15)及び第4の溝14(又は第6の溝16)の底よりも深い位置に存在する。本実施の形態において、第2の溝12の底は、基板100にまで到達している。
【0337】
次に、複数の縦方向分割線YLに沿って複数のバー状基板3の各々を順次分割することで、図37Kの(a)~(c)に示すように、窒化物半導体発光素子1に対応する個片素子4を作製する。本実施の形態では、第2の溝12を利用してバー状基板3を分割することで、1つのバー状基板3を複数の個片素子4に分割する。
【0338】
具体的には、第2の溝12が形成されたバー状基板3に対して、Y軸方向に延びる刃状治具を第2の溝12に沿ってn側電極270側から接触させてバー状基板3に荷重を印加する。これにより、バー状基板3が第2の溝12の長手方向に沿って分割される。つまり、バー状基板3が縦方向分割線YLに沿って分割される。
【0339】
このとき、バー状基板3の分割は、Y軸方向に沿って形成された複数の第2の溝12ごとに行う。これにより、1つのバー状基板3から複数の個片素子4(窒化物半導体発光素子1)が得られる。このようにして、図32に示される構造の窒化物半導体発光素子1を製造することができる。
【0340】
以上のようにして得られた窒化物半導体発光素子1は、半導体層積層基板2における奇数行及び偶数行のいずれのバー状基板3を分割した場合であっても、導波路201のオフセットの方向が揃った1種類の窒化物半導体発光素子1が得られる。本実施の形態では、導波路201がX軸方向のプラス側にオフセットされた窒化物半導体発光素子1のみが得られる。
【0341】
以上説明したように、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法は、Y軸方向に延在する複数の導波路201を有する半導体層積層体200Aが形成された半導体層積層基板2を複数の横方向分割線XL及び複数の縦方向分割線YLに沿って分割して個片化して窒化物半導体発光素子1を製造する方法であって、Y軸方向に隣り合う第1素子形成領域301及び第2素子形成領域302を有する半導体層積層基板2において、少なくとも第1素子形成領域301を挟む2つの縦方向分割線YLと第2素子形成領域302を挟む2つの縦方向分割線YLとがX軸方向にずれている。具体的には、縦方向分割線YL及び縦方向分割線YLに沿って形成されるガイド溝10が、偶数行と奇数行とで一行置きにX軸方向にずれている。
【0342】
これにより、一方の端部と他方の端部とで導波路201の幅が異なるとともに導波路201の位置が素子幅方向にオフセットされた窒化物半導体発光素子1を量産する際に、複数の素子形成領域300を通るように導波路201が形成された半導体層積層基板2を分割して個片化する方法を用いたとしても、導波路201のオフセットの方向が揃った1種類の窒化物半導体発光素子1を得ることができる。
【0343】
また、本実施の形態では、第1素子形成領域301及び第2素子形成領域302の各々において、導波路201は、幅がW1からW2へ連続的に変化する幅変化部201bを有している。
【0344】
これにより、横モード制御及び温度特性に有効なテーパストライプ構造を有し且つオフセットされた導波路201を有する1種類の窒化物半導体発光素子1を容易に量産することができる。
【0345】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法は、半導体層積層体200Aの上に、複数の素子形成領域300の各々に対応するp側電極260を形成する工程を含む。そして、第1素子形成領域301において、p側電極260の第1の縦方向分割線YL1側に最も近い端部から導波路201までの幅よりも、p側電極260の第2の縦方向分割線YL2側に最も近い端部から導波路201までの幅の方が広くなっている。また、第2素子形成領域302においても、p側電極260の第4の縦方向分割線YL4側に最も近い端部から導波路201までの幅よりも、p側電極260の第3の縦方向分割線YL3側に最も近い端部から導波路201までの幅の方が広くなっている。
【0346】
これにより、窒化物半導体発光素子1にワイヤをボンディングする場合に、p側電極260にワイヤ接続領域を広く確保することができる。したがって、導波路201の上にワイヤの接続部(ボンド部)が位置することを回避することができる。この場合、接合強度の観点でワイヤの接続部のボール径が最大で60μmであることを考慮すると、p側電極260におけるワイヤ接続領域の幅は、60μm以上であるとよく、より好ましくは、69μmである。
【0347】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法は、横方向分割線XLに沿って第1の溝11を形成する工程を含む。
【0348】
これにより、第1の溝11を利用して半導体層積層基板2を一次へき開することができるので、所定の一次へき開予定ライン(横方向分割線XL)に沿って半導体層積層基板2を容易に分割することができる。
【0349】
この場合、図39に示すように、第1の溝11は、第2の横方向分割線XL2及び第1の縦方向分割線YL1の交点である第1交点P1と第2の横方向分割線XL2及び第3の縦方向分割線YL3の交点である第2交点P2との間における第2の横方向分割線XL2に沿って形成されている。
【0350】
ここで、第1の溝11を利用して半導体層積層基板2をへき開する際、図41の矢印で示すように、へき開の位置が実線で正確に割れる場合と破線のように所定のへき開ラインから逸れる場合がある。また、へき開が逸れた位置は、へき開が基板100の結晶面から逸れているため、へき開面(端面)には段差が発生する。へき開逸れ及びへき開面の段差が発生すると、窒化物半導体発光素子1の歩留りが低下したり、基板100を含む半導体層積層体200Aのパーティクルが発生したり、端面コート膜の密着性が悪化したりする等の不具合が発生する。したがって、これらの不具合を発生させないために、へき開はできるだけへき開面に沿って進行させることが望ましい。
【0351】
そこで、本実施の形態では、第1の溝11を、半導体層積層体200Aを貫通して基板100に達する深さで形成している。この場合、図40に示すように、第1の溝11の深さdは、20μm以上であるとよく、20μm以上60μm以下であることがより好ましい。また、図39に示すように、第1の溝11の長さsは、30μm以上40μm以下であるとよい。
【0352】
これにより、第1の溝11を用いて半導体層積層基板2をへき開する際に、へき開の起点による効果を大きくすることができるので、へき開逸れの発生を抑制し、へき開面での段差の発生を抑制できる。
【0353】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法は、縦方向分割線YLに沿って第2の溝12を形成する工程を含む。
【0354】
これにより、図37Kに示すように、第2の溝12を利用してバー状基板3を分割することができるので、所定の分割予定ライン(縦方向分割線YL)に沿ってバー状基板3を容易に分割できるとともに、チッピングの発生及び分割逸れを抑制することができる。
【0355】
この場合、第2の溝12は、半導体層積層体200Aを貫通して基板100に達するとよい。また、第2の溝12の深さは、20μm以上70μm以下であるとよく、30μm以上60μm以下であることがより好ましい。
【0356】
これにより、第2の溝12を用いてバー状基板3を分割する際に、分割の起点による効果を大きくすることができるので、分割逸れの発生を抑制できる。
【0357】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法は、縦方向分割線YLに沿ってガイド溝10を形成する工程を含む。図37Bの(b)に示すように、ガイド溝10は、第1の縦方向分割線YL1を間にして各々がY軸方向に延在する第3の溝13及び第4の溝14と、第3の縦方向分割線YL3を間にして各々がY軸方向に延在する第5の溝15及び第6の溝16とを含む。第3の溝13は、第1素子形成領域301に形成され、第4の溝14は、第1素子形成領域301のX軸方向に隣接する第3素子形成領域303に形成され、第5の溝15は、第2素子形成領域302に形成され、第6の溝16は、第2素子形成領域302のX軸方向に隣接する第4素子形成領域304に形成されている。そして、第2の溝12は、第3の溝13(又は第5の溝15)と第4の溝14(又は第6の溝16)の間に形成され、第2の溝12の底は、第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15及び第6の溝16の底よりも深い位置に存在する。
【0358】
これにより、第2の溝12を利用してバー状基板3を分割する際、分割時の応力を緩和することができるので、チッピングの発生を抑制できる。
【0359】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法では、ガイド溝10として、第7の溝17が形成されている。図37Bの(b)に示すように、第7の溝17は、例えば、第2の横方向分割線XL2上において、第3の溝13と第6の溝16との間に形成されている。
【0360】
具体的には、第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15、第6の溝16及び第7の溝17は、繋がっている。
【0361】
これにより、第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15、第6の溝16及び第7の溝17を、同一のプロセスで且つ安定した出来栄えで形成することができる。
【0362】
また、ガイド溝10(第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15、第6の溝16、第7の溝17)を形成することによって、ガイド溝10で囲まれる分割溝形成領域12aを形成することができ、第2の溝12を分割溝形成領域12aに形成することができる。
【0363】
これにより、第2の溝12を利用してバー状基板3を分割する際に、分割時の逸れやチッピングの発生を一層抑制できることができる。
【0364】
なお、図39に示すように、分割溝形成領域12aの幅W11は、第2の溝12及び分割溝形成領域12aの形成不良を抑制するとの観点と第2の溝12の幅や位置の寸法ばらつきを考慮して、10μm以上であるとよい。また、ガイド溝10(第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15、第6の溝16)の幅W12は、エッチング残りによるガイド溝10の形成不良に伴うリークの発生を抑制するとの観点では、5μm以上であるとよい。
【0365】
ここで、本実施の形態では、一次へき開用の第1の溝11は、ガイド溝10である第7の溝17内に形成されている。
【0366】
これにより、半導体層積層体200Aの側面に発生するリークを抑制することができるので、信頼性の高い窒化物半導体発光素子1を実現できる。
【0367】
ただし、第1の溝11が第7の溝17内に形成されていると、ガイド溝10である第7の溝17の側面(側壁)によるガイド機能によって一次へき開時にへき開逸れが発生し、へき開面に段差が発生する場合がある。そこで、図39及び図41に示すように、へき開方向(横方向分割線XL)と第7の溝17(ガイド溝10)の側面11aとのなす角αと、へき開面(端面)の段差発生率との関係を調べた。その結果を図42に示す。図42は、へき開方向に対する第7の溝17の側面11aの角度αと第7の溝17周辺の端面段差発生率との関係を示す図である。
【0368】
図42に示すように、角度αが小さければ小さい程、へき開進行に対する第7の溝17のガイド機能が強くなり、へき開逸れが発生してへき開面に段差が生じやすくなること分かる。一方、角度αが大きければ大きい程、へき開進行に対する第7の溝17のガイド機能が弱くなり、へき開逸れの発生が抑えられてへき開面の段差の発生を抑制できることが分かる。
【0369】
そして、図42に示す結果から、へき開方向(横方向分割線XL)に対する第7の溝17の側面11aの角度αは、45°以上であるとよい。例えば、第7の溝17は、第3の溝13の導波路201側の側面から、第2の横方向分割線XL2に対して45°以上の角度で第5の溝15に達するように延びる側面11aを有するとよい。ただし、角度αが60°のときは、GaN基板である基板100の結晶面とへき開ラインとが重なって第7の溝17のガイド機能が強まるため、へき開の進行が第7の溝17の側面11a付近でずれやすくなる。つまり、へき開逸れが発生しやすくなり、へき開面に段差が発生しやすくなる。
【0370】
このように、へき開方向に対する第7の溝17の側面11aの角度αを45°以上にすることで、第7の溝17内に形成された第1の溝11を用いて半導体層積層基板2をへき開する場合であっても、へき開逸れの発生を効果的に抑制することができる。これにより、へき開面での段差の発生を抑制できる。
【0371】
具体的には、一次へき開予定ライン(横方向分割線XL)上の第7の溝17の側面11aの角度αは、70°以上90以下であるとよく、90°であることがより好ましい。
【0372】
また、一次へき開予定ライン(横方向分割線XL)以外においては、第7の溝17の側面11aの角度αは、30°以上90以下(60°を除く)であるとよく、45°以上90°以下90°(60°を除く)であることがより好ましい。
【0373】
いずれにしても、一次へき開が進行する部分のガイド溝10(本実施の形態では、第7の溝17)の側面11aは、へき開方向に対してガイド機能が弱くなる90°に近づけることが望ましい。
【0374】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法では、第7の溝17は、第1素子形成領域301の第3の溝13と第3素子形成領域303の第4の溝14との間において、第2の横方向分割線XL2からY軸方向の幅が最小となる部分を有する。また、第7の溝17は、第2素子形成領域302の第5の溝15と第4素子形成領域304の第6の溝16との間において、第2の横方向分割線XL2からY軸方向の幅が最小となる部分を有する。
【0375】
これにより、分割溝形成領域12aに形成された第2の溝12を利用して分割する際にガイド機能によって分割逸れが発生することを抑制できる。
【0376】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法において、半導体層積層体200Aは、基板100の上に、第1導電型の第1窒化物半導体層210と、活性層220と、第2導電型の第2窒化物半導体層230とを順に有しており、ガイド溝10(第3の溝13、第4の溝14、第5の溝15、第6の溝16、第7の溝17)は、少なくとも、第1窒化物半導体層210に達している。
【0377】
これにより、半導体層積層体200Aの側面に発生するリークを抑制することができる。
【0378】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法では、図40に示すように、第1の溝11の底は、第7の溝17の底よりも深い位置に存在している。
【0379】
これにより、第1の溝11を用いて半導体層積層基板2をへき開する際に、へき開逸れの発生を一層抑制できる。
【0380】
なお、本実施の形態において、第1の溝11は、図39に示すように、第1交点P1と第2交点P2との間であって、かつ、第1交点P1及び第2交点P2のいずれにも重ならないように形成されていたが、これに限らない。例えば、図43Aに示すように、第1の溝11は、第1交点P1及び第2交点P2のいずれにも重なっていてもよいし、図43Bに示すように、第1の溝11は、第1交点P1及び第2交点P2のいずれか一方(図43Bでは第2交点P2)のみに重なっていてもよい。
【0381】
ただし、第1の溝11は、図39に示す本実施の形態のように、第1交点P1及び第2交点P2のいずれにも重ならない方がよい。言い換えると第1の溝11は、第2の溝12の延長線上に重ならないほうがよい。このように構成することで、第2の溝12を利用してバー状基板3を分割する際に発生するパーティクルを低減することができる。
【0382】
また、本実施の形態における製造方法によって作製される窒化物半導体発光素子1は、基板100と、基板100の一方の面の上に位置し、Y軸方向に延在する導波路201を有する半導体素子構造体200とを備える。そして、窒化物半導体発光素子1は、平面視における第1の側面1aと第3の側面1cとの交点近傍において、第1の凹部21を有し、第1の凹部21は、へき開面である第3の側面1cに対して45°以上の角度で傾斜する側面11aを有する。さらに、第3の側面1cにおける導波路201の第2の幅をW2とし、第4の側面1dにおける導波路201の第1の幅をW1とすると、W1≠W2であり、導波路201は、X軸方向にオフセットされた位置に配置されている。
【0383】
このように、第1の凹部21を有することで、半導体素子構造体200の側面でのリークを抑制することができる。さらに、ガイド溝10(第7の溝17)の一部である第1の凹部21の側面11aの角度αが45°以上であるので、窒化物半導体発光素子1を製造する際にへき開逸れが発生することを抑制できる。さらに、第3の側面1cと第4の側面1dとで導波路201の幅が異なることによって、横モード制御をしたり低閾値電流化(電流注入の小面積化)したり反射面での端面コート膜の反射率を低くしたりする場合に、共振器長方向の動作キャリア密度を平坦化することができる。さらに、導波路201がX軸方向(素子幅方向)にオフセットされていることで、ワイヤ接続領域を広く確保できる。これにより、ワイヤボンディング時にワイヤの接続部が導波路201の上に位置することを回避できる。
【0384】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1は、さらに、平面視における第1の側面1aと第4の側面1dとの交点近傍において、第2の凹部22を有し、第2の凹部22は、第4の側面1dに対して45°以上の角度で傾斜する側面11aを有する。
【0385】
このように、第2の凹部22を有することで、半導体素子構造体200の側面でのリークを一層抑制することができる。さらに、ガイド溝10(第7の溝17)の他の一部である第2の凹部22の側面11aの角度αが45°以上であるので、窒化物半導体発光素子1を製造する際にへき開逸れが発生することを抑制できる。
【0386】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1は、半導体素子構造体200の上にp側電極260を有しており、p側電極260の第1の側面1aに最も近い第1端部261から導波路201までの第1の幅は、p側電極260の第2の側面1bに最も近い第2端部262から導波路201までの第2の幅よりも長い。
【0387】
この構成により、p側電極260における広い第1の幅の領域を広いワイヤ接続領域として用いることができるので、ワイヤの接続部が導波路201の上に位置することを容易に回避できる。
【0388】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1において、導波路201は、幅がW1からW2へ連続的に変化する幅変化部201bを有する。
【0389】
この構成により、テーパストライプ構造の導波路201を有する窒化物半導体発光素子1を実現できるので、横モード制御をしたり低閾値電流化(電流注入の小面積化)したり反射面での端面コート膜の反射率を低くしたりする場合に、共振器長方向の動作キャリア密度を平坦化することができる。容易に量産することができる。
【0390】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1は、第1の側面1aと第3の側面1cとの交点近傍において、X軸方向に沿って延在する第1の溝11を有する。
【0391】
この構成により、第2の溝12を利用してバー状基板3を分割して窒化物半導体発光素子1を製造することができるとともに、バー状基板3を分割する際に、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0392】
また、図44に示すように、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1は、窒化物半導体発光装置5に用いることができる。図44は、実施の形態2に係る窒化物半導体発光装置5の構成を示す図である。図44では、端面コート膜を図示していない。
【0393】
図44に示すように、本実施の形態に係る窒化物半導体発光装置5は、窒化物半導体発光素子1と、窒化物半導体発光素子1が実装されるサブマウント610と、窒化物半導体発光素子1に接続されたワイヤ620とを備える。
【0394】
サブマウント610は、高熱伝導体611と、高熱伝導体611の上面に積層された第1金属層612及び第1接合層613と、高熱伝導体611の下面に積層された第2金属層614及び第2接合層615とを有する。高熱伝導体611は、例えば、SiC、AlN又はダイヤモンド等の高熱伝導材料によって構成される。また、第1金属層612及び第2金属層614は、配線層であり、例えば、高熱伝導体611側から順にTi/Pt/Auによって構成される。また、第1接合層613は、例えば、第1金属層612側から順にPt/AuSnによって構成され、第2接合層615は、例えば、AuSnによって構成される。
【0395】
サブマウント610に実装される窒化物半導体発光素子1は、サブマウント610の第1接合層613に接合される。窒化物半導体発光素子1をサブマウント610に実装する際、窒化物半導体発光素子1のp側電極260の第1端部261(又は第2端部262)とサブマウント610の第1金属層612の端部とを認識部として用いるとよい。これにより、窒化物半導体発光素子1とサブマウント610との位置合わせを行う際に、サブマウント610と窒化物半導体発光素子1の平行だしを容易に行うことができる。
【0396】
また、本実施の形態に係る窒化物半導体発光素子1は、上記のように、p側電極260の第1の側面1aに最も近い第1端部261から導波路201までの第1の幅が、p側電極260の第2の側面1bに最も近い第2端部262から導波路201までの第2の幅よりも長くなっている。したがって、ワイヤ620における窒化物半導体発光素子1との接続部621(ボンド部)は、窒化物半導体発光素子1の第1の側面1a及び第2の側面1bのうち第1の側面1aの方の近くに配置される。つまり、ワイヤ620の接続部621は、p側電極260における幅の広い第1の幅に対応する領域に接続される。
【0397】
この構成により、窒化物半導体発光素子1の導波路201の上にワイヤ620の接続部621が位置しないようにワイヤ620をボンディングすることができる。これにより、ワイヤボンディング時の衝撃によって導波路201がダメージを受けることを抑制することができる。つまり、導波路201へのストレスを軽減することができる。
【0398】
また、本実施の形態において、ワイヤ620の接続部621のX軸方向の幅は、p側電極260の第1の側面1aに最も近い第1端部261から導波路201までの第1の幅よりも狭い。
【0399】
この構成により、窒化物半導体発光装置5において、リークが発生することを抑制することができる。
【0400】
また、上記のように、本実施の形態における窒化物半導体発光素子1は、レーザスクライブ法によって形成された第2の溝12を利用してバー状基板3を分割することで作製される。このとき、図45に示すように、この第2の溝12を形成する際に発生するデブリ(飛散物)が第2の溝12周辺に付着し、p側電極260の第1端部261及び第2端部262がデブリによって覆われてしまう場合がある。この場合、窒化物半導体発光素子1をサブマウント610に実装する際に、p側電極260の第1端部261及び第2端部262を認識部として利用することができなくなる。
【0401】
そこで、図46に示される窒化物半導体発光素子1’では、p側電極260Aが、X軸方向に関して第2端部262と導波路201の間に、Y軸方向に延在する第3端部263を有する。具体的には、平面視において、p側電極260Aの第2端部262の一部を内側に窪ませた部分を第3端部263としている。
【0402】
この構成により、第2の溝12を形成して窒化物半導体発光素子1’にデブリが付着したとしても、p側電極260Aの第3端部263にデブリが付着することを抑制できる。これにより、p側電極260Aにデブリが付着しても第3端部263を認識部として用いることができるので、サブマウント610と窒化物半導体発光素子1’との位置合わせ時に、サブマウント610と窒化物半導体発光素子1’との平行だしを精度よく行うことができる。したがって、窒化物半導体発光素子1’を高精度にサブマウント610に実装することができる。
【0403】
なお、図46では、実装時の認識部として用いる第3端部263は、第2端部262側に設けたが、第1端部261側に設けてもよい。ただし、ワイヤ620との接続領域を広く確保するとの観点では、第3端部263は、第2端部262側に設けるとよい。尚、図45図46では、端面コート膜を図示していない。
【0404】
(実施の形態2の変形例)
次に、実施の形態2の変形例について説明する。
【0405】
上記実施の形態2では、縦方向分割線YLに沿って形成されたガイド溝10として、第1の縦方向分割線YL1を挟むように第3の溝13と第4の溝14とを設けるとともに、第3の縦方向分割線YL3を挟むように第5の溝15と第6の溝16とを設けたが、これに限らない。例えば、図47に示される半導体層積層基板2’のように、ガイド溝10として、第1の縦方向分割線YL1に沿ってY軸方向に延びる1本の第8の溝18と、第3の縦方向分割線YL3に沿ってY軸方向に延びる1本の第9の溝19とを形成してもよい。つまり、分割溝形成領域12aを形成しなくてもよい。この構成により、半導体層積層体200Aの側面に発生するリークを一層抑制できる。
【0406】
また、上記実施の形態2では、半導体層積層体200Aに開口部202を形成することで、リッジストライプ構造の導波路201を形成したが、これに限らない。例えば、図48に示される窒化物半導体発光素子1”のように、p型クラッド層233Aに凸形状のリッジ部を形成することで、リッジストライプ構造の導波路201を形成してもよい。
【0407】
(その他の変形例)
以上、本開示に係る窒化物半導体発光素子及び窒化物半導体発光素子の製造方法等について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0408】
例えば、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0409】
本開示に係る窒化物半導体発光素子は、半導体レーザ素子として有用であり、特に、プロジェクタ光源及び自動車用ヘッドライトに用いられるワット級の高出力半導体レーザ素子として有用である。
【符号の説明】
【0410】
1、1’、1” 窒化物半導体発光素子
1a 第1の側面
1b 第2の側面
1c 第3の側面
1d 第4の側面
2、2’、2Y 半導体層積層基板
3 バー状基板
4 個片素子
5 窒化物半導体発光装置
10 ガイド溝
11 第1の溝
11a 側面
12 第2の溝
12a 分割溝形成領域
13 第3の溝
14 第4の溝
15 第5の溝
16 第6の溝
17 第7の溝
18 第8の溝
19 第9の溝
21 第1の凹部
22 第2の凹部
100 基板
101 窒化物半導体発光素子
102 半導体層積層基板
102a 分割位置
103 バー状基板
104 デブリ
110a 第1の側面
110b 第2の側面
110c 第3の側面
110d 第4の側面
110e 上面
111 第1の溝
111a 第1の外壁
111a1、111a2 第1外壁部
112 第2の溝
112a 第2の外壁
112a1、112a2 第2外壁部
113 第3の溝
113a 分割溝形成領域
113b1、114a1 第1の窪み部
113b2、114a2 第2の窪み部
114 第4の溝
114a3 第3の窪み部
114a4 第4の窪み部
120 凹部
120a 第1の部分
121 第1の凹部
122 第2の凹部
123 第3の凹部
124 第4の凹部
200 半導体素子構造体
200A 半導体層積層体
201 導波路
202 開口部
210 第1窒化物半導体層
211 n型クラッド層
212 n側ガイド層
220 活性層
230 第2窒化物半導体層
231 p側ガイド層
232 p型電子障壁層
233 p型クラッド層
234 p型コンタクト層
240 電流ブロック膜
250 p側オーミック電極
260 p側電極
261 第1端部
262 第2端部
263 第3端部
270 n側電極
300 素子形成領域
301 第1素子形成領域
302 第2素子形成領域
303 第3素子形成領域
304 第4素子形成領域
400 マスク
401 第1開口部
402 第2開口部
500 端面コート膜
501 密着層
502 AlN層
503 反射率調整層
610 サブマウント
611 高熱伝導体
612 第1金属層
613 第1接合層
614 第2金属層
615 第2接合層
620 ワイヤ
621 接続部
XL 横方向分割線
YL 縦方向分割線
XL1 第1の横方向分割線
XL2 第2の横方向分割線
XL3 第3の横方向分割線
YL1 第1の縦方向分割線
YL2 第2の縦方向分割線
YL3 第3の縦方向分割線
YL4 第4の縦方向分割線
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35A
図35B
図36
図37A
図37B
図37C
図37D
図37E
図37F
図37G
図37H
図37I
図37J
図37K
図38
図39
図40
図41
図42
図43A
図43B
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50