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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ハイブリッドマイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/16 20060101AFI20220927BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20220927BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B01J13/16
C11D3/50
C11B9/00 Z
A61Q19/10
A61Q13/00 102
A61Q19/00
A61K8/25
A61K8/19
A61K8/29
A61K8/26
A61K8/27
A61K8/24
A61K8/11
A61K8/87
A61Q5/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019515434
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017072844
(87)【国際公開番号】W WO2018054719
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/099465
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】16193786.7
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨンタオ ウー
(72)【発明者】
【氏名】ラウシーヌ ワリ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103394314(CN,A)
【文献】国際公開第2015/091705(WO,A1)
【文献】特表平09-505074(JP,A)
【文献】特開平06-170214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/16
C11D 3/50
C11B 9/00
A61Q 19/10
A61Q 13/00
A61Q 19/00
A61K 8/25
A61K 8/19
A61K 8/29
A61K 8/26
A61K 8/27
A61K 8/24
A61K 8/11
A61K 8/87
A61Q 5/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド不含の有機-無機マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、以下の工程:
1)化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子を水に懸濁させて、水相を形成する工程と、
2)少なくとも1種のポリイソシアネートと、疎水性活性成分を含有する油とを混合して、油相を形成する工程と、
3)前記油相を前記水相に加え、それらを混合して、界面重合による無機-有機マイクロカプセルスラリーの形成を可能にする条件下で水中油型ピッカリングエマルションを形成する工程と
を含む方法において、
前記水相は、ホルムアルデヒド不含であることを特徴とする方法、ただし、前記方法は、化学的に表面修飾された無機粒子を添加することからなるいかなる工程も含むものでなく、かつアミンもしくはポリアミンまたはその他のポリイソシアネートと重合しやすい水溶性反応物を、前記方法のいずれの段階でも加えない
【請求項2】
前記化学的に表面修飾されていない無機粒子は、リン酸カルシウム、シリカ、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ラポナイト、ベントナイト、パーライト、ドロマイト、ジアトマイト、バーミキュライト、ヘクトライト、ギブサイト、イライト、カオリナイト、アルミノケイ酸塩、石膏、ボーキサイト、マグネサイト、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪藻土およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記化学的に表面修飾されていない無機粒子は、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、カオリン、シリカ、ラポナイトおよびそれらの混合物からなる群から選択される無機粒子からなることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記水相中に存在する無機粒子の全量は、前記水相の0.1~20重量%に含まれることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記疎水性活性成分は、芳香剤、着香剤、栄養補助食品、化粧料、昆虫防除剤、殺生物活性剤およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法により得ることができる、ホルムアルデヒド不含の有機-無機マイクロカプセルスラリー。
【請求項8】
請求項記載のマイクロカプセルスラリーの乾燥により得ることができる、ホルムアルデヒド不含の有機-無機マイクロカプセル粉末。
【請求項9】
以下:
a)油性コアと、
b)化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子を含むシェルと
を含む少なくとも1つのマイクロカプセルを含む、請求項記載の有機-無機マイクロカプセルスラリー。
【請求項10】
前記化学的に表面修飾されていない無機粒子は、30nm超の粒子径を有する、請求項または記載の有機-無機マイクロカプセルスラリー。
【請求項11】
以下:
(i)請求項または記載のマイクロカプセルスラリーまたは請求項記載のマイクロカプセル粉末と、
(ii)香料担体、付香補助成分およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
(iii)任意に、溶媒または香料補助剤と
を含む、付香組成物。
【請求項12】
洗濯ケア製品、ホームケア製品、ボディケア製品、スキンケア製品、空気ケア製品または衛生製品の形態の液体の消費者製品において、
a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全重量に対して2~65重量%と、
b)水または水混和性の親水性有機溶媒と、
c)請求項もしくは記載のマイクロカプセルまたは請求項11記載の付香組成物と
を含む、液体の消費者製品。
【請求項13】
シャワーゲルまたはシャンプーの形態である、請求項12記載の液体の消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性活性成分をベースとするコア、好ましくは芳香剤または着香剤と、化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子を含むポリマーシェルとを有する有機-無機マイクロカプセル(ハイブリッドマイクロカプセルとも呼ばれる)の製造方法に関する。前記方法により得られたマイクロカプセルも、本発明の対象である。前記カプセルを含む付香組成物および消費者製品、特にホームケア製品またはパーソナルケア製品の形態である芳香付けされた消費者製品も、本発明の一部である。
【0002】
発明の背景
香料産業が直面する課題の1つとして、発香性の化合物によりもたらされる嗅覚上の有益性が、その揮発性、特に「トップノート」の揮発性ゆえに比較的に急速に失われてしまうことが挙げられる。揮発性物質の放出速度を調節するためには、芳香剤を含有するマイクロカプセルのような送達システムが必要であり、これによってコアのペイロードが保護され、トリガが与えられた際にこれが遅れて放出される。こうしたシステムに関する産業界からの重要な要求の1つに、困難を伴うベースにおいて、物理的に解離も分解もせずに懸濁性が保持されることが挙げられる。例えば、攻撃性の界面活性剤を高レベルで含有する個人向けおよび家庭用の香料入り洗浄剤は、マイクロカプセルの安定性に関して非常に課題が多い。
【0003】
主に疎水性活性剤を封入することにより該活性剤を保護し、そしてその制御された放出を提供するために、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂で形成されたアミノプラストマイクロカプセルが使用されてきた。しかしアミノプラストマイクロカプセルのようなカプセルには、香料消費者製品のような界面活性剤を含有する消費者製品への使用時に、特に高温での長期間の貯蔵後に、安定性の問題がある。このような製品では、たとえカプセル壁が無傷なままであっても、製品のベースに封入された活性剤を可溶化し得る界面活性剤の存在ゆえ、封入された活性剤が拡散により該カプセル壁を通ってカプセル外に漏出する傾向にある。この漏出現象によって、活性剤を保護し、そしてその制御された放出を提供するカプセルの有効性が低下する。
【0004】
油性コアをベースとするマイクロカプセルの安定性を向上させるための様々な戦略が説明されてきた。マイクロカプセルの安定性を向上させるための方法として、ポリ(アミン)やポリ(イソシアネート)といった化学物質群によるカプセル壁の架橋が説明されている。国際公開第2011/154893号(WO 2011/154893)には例えば、特定の相対濃度での芳香族ポリイソシアネートと脂肪族ポリイソシアネートとの組合せを用いたポリ尿素マイクロカプセルの製造方法が開示されている。
【0005】
いわゆるピッカリングエマルションにおいて、無機粒子による油/水界面の安定化が説明されている。これに関連して、無機粒子の架橋を可能にするための無機粒子の官能化が知られている。例えば、静電相互作用を提供する高分子電解質で外側水相から架橋されたピッカリングエマルションが、先行する開示の対象であった(Li Jianら、Langmuir(2010),26(19),15554-15560)。しかし、安定性を促進するのには静電相互作用が不十分であることから、そのような系は界面活性剤ベース中またはエタノール中で経時的に解離する可能性が非常に高い。コロイドソームの製造におけるピッカリングエマルションに関して、共有架橋も記載されている。特に、架橋剤としてのジイソシアネートの使用が科学刊行物に開示されている。国際公開第2009/063257号(WO 2009/063257)にはまた、内容物に関して紫外光からの保護レベルを高めたマイクロカプセルを製造するための、表面修飾無機粒子用の可能な架橋剤としてのポリイソシアネートの使用が記載されている。これらの生成物は典型的には、農薬用途が予定されている。この種の系は、芳香剤の封入には適さない。実際には、マイクロカプセルの良好なモルホロジーおよび透過性を維持するためには、過剰の表面修飾無機粒子が必要とされる。その他の問題は、こうしたマイクロカプセルがサイズ調整に対してほとんど余裕を示さないことである。さらに、油-水界面における吸着粒子の量は限定的であり、これはカプセル膜の特性に影響を及ぼす。
【0006】
国際公開第2015091705号(WO 2015091705)には、架橋した少なくとも2種類の無機粒子から構成される「ハイブリッド」マイクロカプセルとも呼ばれるハイブリッド有機-無機マイクロカプセルの製造方法が開示されている。より具体的には該文献には、少なくとも1つのアミン官能基を有する第1の種類の無機粒子と、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する第2の種類の無機粒子とが開示されている。
【0007】
上記に引用した先行技術には、化学的に表面修飾された無機粒子による油/水界面の安定化が開示されており、したがって、それらの架橋を可能にするための後化学反応および/または後化学処理が必要となる。
【0008】
したがって、例えば表面への付着性が高く、封入された活性成分に関する透過性が低く、また活性成分の送達の点でブルーミング効果が高いといった良好な特性を示す安定なマイクロカプセルを、簡便かつ費用対効果の高い方法で提供することが必要とされている。
【0009】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、ホルムアルデヒド不含の有機-無機マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、以下の工程:
1)化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子を水に懸濁させて、水相を形成する工程と、
2)少なくとも1種のポリイソシアネートと、疎水性活性成分を含有する油とを混合して、油相を形成する工程と、
3)前記油相を前記水相に加え、それらを混合して、界面重合による無機-有機マイクロカプセルスラリーの形成を可能にする条件下で水中油型ピッカリングエマルションを形成する工程と
を含む方法において、前記水相は、実質的にホルムアルデヒド不含であることを特徴とする方法に関する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、かかる方法により得ることができるマイクロカプセルスラリー、ならびに該マイクロカプセルスラリーを含有する付香組成物および消費者製品に関する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、上記で定義したマイクロカプセルスラリーの乾燥により得ることができるマイクロカプセル粉末、ならびに該マイクロカプセル粉末を含有する付香組成物および消費者製品に関する。
【0012】
最後の態様において、本発明は、さらに界面重合反応に供されたピッカリングエマルションを安定化するための、化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、化学的に表面修飾されていない無機粒子を使用して油相を安定化させる場合のピッカリングエマルションの形成の概略図である。
図2図2に、パネル試験において測定された芳香剤の知覚強度を、化学的に表面修飾されていない粒子を用いて製造された本発明によるマイクロカプセルと、比較マイクロカプセル(非ハイブリッドマイクロカプセル(X))とを比較して表す。
図3図3に、パネル試験において測定された芳香剤の知覚強度を、化学的に表面修飾されていない粒子を用いて製造された本発明によるマイクロカプセルと、比較マイクロカプセル(非ハイブリッドマイクロカプセル(X)、および化学的に表面修飾された粒子を含むハイブリッドマイクロカプセル(Z))とを比較して表す。
【0014】
発明の詳細な説明
特に明記しない限り、パーセンテージ(%)は、組成物の重量に対するパーセントを表すことを意図している。
【0015】
有機-無機マイクロカプセルスラリーの製造方法
本発明の第1の対象は、ホルムアルデヒド不含の有機-無機マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、以下の工程:
1)化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子を水に懸濁させて、水相を形成する工程と、
2)少なくとも1種のポリイソシアネートと、疎水性活性成分を含有する油とを混合して、油相を形成する工程と、
3)前記油相を前記水相に加え、それらを混合して、界面重合による無機-有機マイクロカプセルスラリーの形成を可能にする条件下で水中油型ピッカリングエマルションを形成する工程と
を含む方法において、前記水相は、実質的にホルムアルデヒド不含であることを特徴とする方法からなる。
【0016】
「実質的にホルムアルデヒド不含」とは、水相が、カプセル壁の性質を大幅に変更するような様式でのポリイソシアネートとのさらなる反応を生じやすい量のホルムアルデヒドを含まないことを意味する。
【0017】
換言すれば、マイクロカプセルの製造に使用される原材料は、相当量のホルムアルデヒド樹脂、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含まない。
【0018】
一実施形態によれば、水相は、ホルムアルデヒドをまったく含まない。
【0019】
本発明によれば、前記方法は、化学的に表面修飾された無機粒子を加えることからなるいかなる工程も含まない。換言すれば、本発明の方法では、化学的に表面修飾されていない無機粒子のみが加えられる。
【0020】
本発明の方法は、ピッカリングエマルションを形成する工程を含み、該エマルションは、さらに界面反応に供される。
【0021】
理論に束縛されることを望むものではないが、ピッカリングエマルションによって膜のモルホロジーおよび表面特性(サイズ、密度、ゼータ電位、剛性)が決定され、一方で界面反応によってカプセルの透過性および剛性が決定されるものと考えられる。
【0022】
図1に、化学的に表面修飾されていない無機粒子を使用した場合のピッカリングエマルションの形成を概略的に示す。特定の一実施形態によれば、本発明によるマイクロカプセルは、いかなる分子界面活性剤も存在しない状態で製造される。
【0023】
本方法の第1の工程において、化学的に表面修飾されていない無機粒子を、好ましくは2~8のpHを有する水相に分散させる。典型的には、これは超音波または高度の機械的撹拌を用いて行われる。第2の工程において、少なくとも1種のポリイソシアネートを、疎水性活性成分を含有する油(例えば香油またはフレーバー油)に溶解させて油相を形成し、次いで該油相を水相に加えてピッカリングエマルションを形成する。該ピッカリングエマルションの平均液滴サイズは、1~3000μm、好ましくは1~500μm、より好ましくは5~50ミクロンに含まれる。水中油型ピッカリングエマルションは、例えば室温で高速機械式分散機または超音波分散機を使用することによって製造される。
【0024】
ピッカリングエマルションを形成してから、pH値を好ましくは、8.5超でかつ好ましくは11以下の値に調整する。しかし、この工程を省略してもよい。
【0025】
界面反応を、典型的には50~80℃の温度で撹拌しながら2~40時間行うことができ、それによって反応が完了して無機-有機マイクロカプセルがスラリーの形態で形成される。
【0026】
本発明のマイクロカプセルのモルホロジーは、コアシェル型からマトリックス型に至るまで様々であり得る。一実施形態によれば、本発明のマイクロカプセルのモルホロジーは、コアシェル型である。この場合、マイクロカプセルは、疎水性活性成分、典型的には香油またはフレーバー油をベースとするコアと、化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子を含むシェルとを含む。
【0027】
油相
疎水性活性成分を含有する油に少なくとも1種のポリイソシアネートを溶解させることにより、油相を形成する。
【0028】
ポリイソシアネート
本発明により使用される適切なポリイソシアネートは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有し、該ポリイソシアネートには、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよびそれらの混合物が包含される。
【0029】
特定の一実施形態によれば、ポリイソシアネートは少なくとも3つのイソシアネート官能基を含むが、ただしイソシアネート官能基を6つまで含んでよく、またはさらにイソシアネート官能基を4つしか含まなくてもよく、油相は、実質的にジイソシアネートを含まない。
【0030】
特定の一実施形態によれば、トリイソシアネート(イソシアネート官能基が3つ)が使用される。
【0031】
一実施形態によれば、前記ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートである。
本明細書では、「芳香族ポリイソシアネート」という用語は、芳香族部分を含むいずれのポリイソシアネートも包含することを意味する。好ましくはこの用語は、フェニル、トルイル、キシリル、ナフチルまたはジフェニル部分を含み、より好ましくはトルイルまたはキシリル部分を含む。好ましい芳香族ポリイソシアネートは、ビウレットおよびポリイソシアヌレートであり、より好ましくは上記で言及された特定の芳香族部分のうちの1つを含む。より好ましくは芳香族ポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(商品名Desmodur(登録商標)RCとしてBayerより市販)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名Desmodur(登録商標)L75としてBayerより市販)、キシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名Takenate(登録商標)D-110NとしてMitsui Chemicalsより市販)である。最も好ましい一実施形態では、芳香族ポリイソシアネートは、キシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物である。
【0032】
もう1つの実施形態によれば、前記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートである。「脂肪族ポリイソシアネート」という用語は、芳香族部分を何ら含まないポリイソシアネートと定義される。好ましい脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Mitsui Chemicalsより入手可能)またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(商品名Desmodur(登録商標)N100としてBayerより市販)であり、これらの中でもヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットがさらにより好ましい。
【0033】
もう1つの実施形態によれば、前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネート(双方とも少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む)との混合物の形態であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレートとの混合物およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物の形態である。最も好ましくは、これは、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物である。
【0034】
好ましくは、少なくとも1種のポリイソシアネートは、疎水性である。
【0035】
好ましくは、少なくとも1種のポリイソシアネートは、油相の0.1~40重量%、好ましくは油相の0.5~15重量%、さらにより好ましくは油相の1~12重量%に含まれる量で存在する。
【0036】
特定の一実施形態によれば、油相濃度は、ピッカリングエマルションの5~60%、好ましくは20~40%に含まれる。
【0037】
疎水性活性成分
「疎水性活性成分」とは、水と混合した際に2相の分散液を形成するいずれの活性成分 - 単一の成分または複数の成分の混合物 - をも意味する。
【0038】
疎水性活性成分は好ましくは、着香剤、着香剤成分、芳香剤、芳香剤成分、栄養補助食品、化粧料、昆虫防除剤、殺生物活性剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
油相中に存在する昆虫防除剤の性質および種類については、本明細書ではより詳細な説明は保証されないが、いずれにせよすべてのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、当業者であれば、自身の一般知識に基づいて、また用途に応じて、それらを選択することができるであろう。
【0040】
このような昆虫防除剤の例は、カバノキ、DEET(N,N-ジエチル-m-トルアミド)、レモンユーカリ(Corymbia citriodora)の精油およびその活性化合物、p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、イカリジン(ヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシレート)、ネペラクトン、シトロネラ油、ニーム油、ボグミルトル(Bog Myrtle)(セイヨウヤチヤナギ)、ジメチルカルバート、トリシクロデセニルアリルエーテル、IR3535(3-[N-ブチル-N-アセチル]アミノプロピオン酸、エチルエステル、エチルヘキサンジオール、フタル酸ジメチル、メトフルトリン、インダロン、SS220、アントラニレート系昆虫忌避剤ならびにそれらの混合物である。
【0041】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、芳香剤と、栄養補助食品、化粧料、昆虫防除剤および殺生物活性剤からなる群から選択される他の成分との混合物を含む。
【0042】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、芳香剤を含む。
【0043】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、芳香剤からなる。
【0044】
「香油」は「芳香剤」とも呼ばれ、これは本明細書では、約20℃で液状である成分または組成物を意味する。上記実施形態のいずれか1つによれば、前記香油は、単独の付香成分であってもよいし、付香組成物の形態での複数の成分の混合物であってもよい。「付香成分」とは、本明細書では、匂いの付与または調整を主な目的として使用される化合物を意味する。すなわち、付香成分であると考えられるべきこのような成分は、単に匂いを有しているものとしてではなく、少なくとも組成物の匂いをポジティブにまたは心地よいように付与または変更できるものとして、当業者には認識されるはずである。本発明においては、香油には、付香成分と、付香成分の送達を一緒に改善、増強または変更する物質(例えば、芳香剤前駆体、エマルションまたは分散液)との組合せ、ならびに匂いを変更または付与するという有益性以外の、例えば長期持続性、ブルーミング、悪臭中和作用、抗微生物作用、微生物安定性、昆虫防除性といったさらなる有益性を付与する組合せも含まれる。
【0045】
油相中に存在する付香成分の性質および種類については、本明細書ではより詳細な説明は保証されないが、いずれにせよすべてのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、当業者であれば、自身の一般知識に基づき、また用途および所望の感覚受容作用に従って、それらを選択することができるであろう。一般的に言えば、これらの付香成分は、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペノイド類、含窒素複素環式化合物または含硫黄複素環式化合物および精油といった様々な化学種に属し、また該香料補助成分は、天然由来のものであっても合成由来のものであってもよい。こうした補助成分の多くは、いずれにせよ、S.Arctanderによる著作Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版のような参考文献、または類似の性質の他の論文、および香料分野の多数の特許文献に列記されている。また前記成分は、様々な種類の付香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0046】
付香成分を、芳香剤産業で現在使用されている溶媒に溶解させてもよい。溶媒は、好ましくはアルコールではない。このような溶媒の例は、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、Eastmanより入手可能)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネン類もしくは他のテルペン類またはイソパラフィン類である。好ましくは溶媒は、例えばAbalyn(登録商標)または安息香酸ベンジルのように、非常に疎水性が高くかつ高立体障害性である。好ましくは芳香剤は、30%未満の溶媒を含む。より好ましくは芳香剤は、20%未満、さらにより好ましくは10%未満の溶媒を含む。これらのパーセンテージはいずれも、芳香剤の全重量に対する重量により定められる。最も好ましくは、芳香剤は溶媒を実質的に含まない。
【0047】
一実施形態によれば、疎水性活性成分は、工程3)後に得られた分散液の全重量に対して20~50重量%で存在する。
【0048】
水相の特定の実施形態
特定の一実施形態によれば、本発明の方法は、反応プロセス中にポリアミンまたはポリオールを水相に加えることを含む。この追加工程によって、より緻密な有機-無機シェルを形成することが可能となる。適切なポリアミンの例としては、グアニジン、グアニジン塩、グアナゾール、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、スペルミジン、スペルミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエーテルアミンおよびポリビニルアミンが挙げられる。適切なポリオールの例としては、エチレングリコール、グリセリン、スクロース、ペンタエリスリトール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0049】
特定の一実施形態によれば、アミンもしくはポリアミンまたはその他のポリイソシアネートと重合しやすい水溶性反応物、例えばポリオール、チオール、尿素、ウレタンおよびそれらの混合物の相当量を、本方法のいずれの段階でも加えない。
【0050】
もう1つの実施形態によれば、本方法は、以下:
1)ポリアミン成分であって、メラミンの形態であるか、またはメラミンと2つのNH官能基を含む少なくとも1種のC1~4化合物との混合物の形態であるポリアミン成分と、
2)グリオキサールとC4~62,2-ジアルコキシエタナールと任意にグリオキサレートとの混合物の形態のアルデヒド成分であって、ここで、前記混合物は、グリオキサール/C4~62,2-ジアルコキシエタナールのモル比が約1/1~10/1に含まれるものとするアルデヒド成分と、
3)プロトン酸触媒と
を一緒に反応することによって得ることができる組成物を、工程iii)で形成されたピッカリングエマルションに加えることからなるさらなる工程を含む。
【0051】
そのようなメラミン-グリオキサール樹脂は、国際公開第2011161618号(WO 2011161618)に十分に定義されており、該刊行物の内容を本明細書に援用する。
【0052】
化学的に表面修飾されていない無機粒子
「化学的に表面修飾されていない無機粒子」とは、粒子の表面に対して、反応性官能基を有するような化学的修飾が行われていないことを意味する。
【0053】
一実施形態によれば、本発明で定義される無機粒子は、アミノ基で官能化されていない。
【0054】
したがって本発明によれば、元の粒子に対して化学的な処理および/または修飾は行われていない。
【0055】
換言すれば、本発明による無機粒子の反応性官能基は、該粒子の固有の特性である。
【0056】
本発明による無機粒子は、合成されたものであっても天然のものであってもよい。
【0057】
特定の一実施形態によれば、化学的に表面修飾されていない無機粒子は、NHなどのアミン官能基を有しない。
【0058】
一実施形態によれば、化学的に表面修飾されていない無機粒子は、リン酸カルシウム、シリカ、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ラポナイト、ベントナイト、パーライト、ドロマイト、ジアトマイト、バーミキュライト、ヘクトライト、ギブサイト、イライト、カオリナイト、アルミノケイ酸塩、石膏、ボーキサイト、マグネサイト、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪藻土およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
一実施形態によれば、リン酸カルシウムは、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムおよびそれらの混合物からなる群において選択される。
【0060】
一実施形態によれば、化学的に表面修飾されていない無機粒子は、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、カオリン、ラポナイト、シリカ粒子およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0061】
特定の一実施形態によれば、化学的に表面修飾されていない無機粒子は、ハイドロキシアパタイトを含み、好ましくはハイドロキシアパタイトからなる。
【0062】
したがって、マイクロカプセルは、ピッカリングエマルションを安定化するための化学的に表面修飾されていない無機粒子と、界面重合により形成されたポリマーシェルとから構成されるシェルの性質に関して、「有機-無機」または「ハイブリッド」と定義される。
【0063】
一実施形態によれば、化学的に表面修飾されていない無機粒子は、10nm~20μm、好ましくは100nm~10μm、より好ましくは200nm~5μm、さらにより好ましくは1μm~5μmに含まれる粒子径を有する。
【0064】
特定の一実施形態によれば、化学的に表面修飾されていない無機粒子は、30nm超の、好ましくは100nm超の粒子径を有する。
【0065】
「粒子径」とは、粒子が水相中に分散している際に、Malvern Instruments Ltd.,(英国)製Zetasizer Nano ZS装置を用いて動的光散乱(DLS)により測定されるサイズ分布に基づく平均粒子直径を意味する。
【0066】
好ましくは、水相中に存在する無機粒子の全量は、0.1~20重量%、好ましくは0.2~10重量%に含まれる。
【0067】
任意の工程:外側被覆
特定の実施形態によれば、本発明の方法によって得られるマイクロカプセルの表面を、追加の工程で修飾することができる。表面修飾に適したモノマーまたはポリマーは、モノマーまたはポリマーとマイクロカプセルとの間に化学結合を形成することができ、かつマイクロカプセルと目的の基材との相容性を改善することができる化合物から選択される。
【0068】
したがって、本発明の特定の一実施形態によれば、本方法の工程3)の間または最後に、非イオン性多糖類、カチオン性ポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを本発明のスラリーに加えて、マイクロカプセルに外側被覆を形成することも可能である。
【0069】
非イオン性多糖類ポリマーは、当業者に周知である。好ましい非イオン性多糖類は、ローカストビーンガム、キシログルカン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される。
【0070】
カチオン性ポリマーも、当業者に周知である。好ましいカチオン性ポリマーは、少なくとも0.5meq/g、より好ましくは少なくとも約1.5meq/g、ただし好ましくは約7meq/g未満、より好ましくは約6.2meq/g未満のカチオン電荷密度を有する。カチオン性ポリマーのカチオン電荷密度は、米国薬局方において窒素定量法に関する化学試験の項目で記載されているケルダール法により求めることができる。好ましいカチオン性ポリマーは、ポリマー主鎖の一部を形成し得るか、または該主鎖に直接結合する側鎖置換基が有し得るかのいずれかである第一級、第二級、第三級および/または第四級アミン基を含む単位を有するものから選択される。カチオン性ポリマーの重量平均(Mw)分子量は、好ましくは10,000~3.5Mダルトンであり、より好ましくは50,000~2Mダルトンである。
【0071】
特定の一実施形態によれば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、四級化N,N-ジメチルアミノメタクリレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、四級化ビニルイミダゾール(3-メチル-1-ビニル-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド)、ビニルピロリドン、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドをベースとするカチオン性ポリマーを使用する。好ましくはコポリマーは、ポリクオタニウム-5、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-28、ポリクオタニウム-43、ポリクオタニウム-44、ポリクオタニウム-46、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドまたはポリガラクトマンナン2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびセルロースヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドからなる群から選択されるものとする。
【0072】
市販品の具体例として、Salcare(登録商標)SC60(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドとアクリルアミドとのカチオン性コポリマー、供給元:BASF)またはLuviquat(登録商標)、例えばPQ 11N、FC 550またはStyle(ポリクオタニウム-11~68またはビニルピロリドンの四級化コポリマー、供給元:BASF)、またはさらにJaguar(登録商標)(C13SまたはC17、供給元:Rhodia)を挙げることができる。
【0073】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、上記のポリマーが、約0~5重量%、またはさらに約0.1~2重量%に含まれる量で添加され、ここで、パーセンテージは、工程3)後に得られたスラリーの全重量に対する重量/重量ベースで表される。当業者には、前記添加されたポリマーの一部のみがマイクロカプセルのシェルに組み込まれ/該シェル上に堆積されることが明確に理解される。
【0074】
本発明のもう1つの対象は、ホルムアルデヒド不含の有機-無機マイクロカプセル粉末の製造方法であって、以下の工程:
1)化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子を水に懸濁させて、水相を形成する工程と、
2)少なくとも1種のポリイソシアネートと、疎水性活性成分を含有する油とを混合して、油相を形成する工程と、
3)前記油相を前記水相に加え、それらを混合して、界面重合による無機-有機マイクロカプセルスラリーの形成を可能にする条件下で水中油型ピッカリングエマルションを形成する工程と、
4)前記マイクロカプセルスラリーを乾燥させて、有機-無機マイクロカプセル粉末を得る工程と
を含む方法において、前記水相は、実質的にホルムアルデヒド不含であることを特徴とする方法である。
【0075】
当業者に知られているいずれの乾燥方法を用いてもよく、特に、好ましくは例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、天然もしくは化工デンプン、植物ガム、ペクチン、キサンタン、アルギン酸塩、カラギーナンまたはセルロース誘導体のようなポリマー担体材料の存在下でスラリーを噴霧乾燥することにより、粉末形態のマイクロカプセルを得ることができる。
【0076】
マイクロカプセルスラリーおよびマイクロカプセル粉末
上記方法により得ることができるホルムアルデヒド不含の有機-無機マイクロカプセルスラリーおよびホルムアルデヒド不含の有機-無機マイクロカプセル粉末も、本発明の対象である。
【0077】
一実施形態によれば、ホルムアルデヒド不含のマイクロカプセルスラリーまたはホルムアルデヒド不含のマイクロカプセル粉末は、以下:
a)油性コア、好ましくは芳香剤を含む油性コアと、
b)化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子を含むシェルと
を含む少なくとも1つのマイクロカプセルを含む。
【0078】
一実施形態によれば、化学的に表面修飾されていない無機粒子は、10nm~20μm、好ましくは100nm~10μm、より好ましくは200nm~5μm、さらにより好ましくは1μm~5μmに含まれる粒子径を有する。
【0079】
特定の一実施形態によれば、化学的に表面修飾されていない無機粒子は、30nm超の、好ましくは100nm超の粒子径を有する。
【0080】
付香組成物
本発明のもう1つの対象は、
(i)上記で定義された芳香剤マイクロカプセルスラリーまたは芳香剤マイクロカプセル粉末であって、前記油性コアは芳香剤を含むものとするスラリーまたは粉末と、
(ii)香料担体、香料補助成分およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
(iii)任意に、少なくとも1種の香料補助剤と
を含む付香組成物である。
【0081】
液体の香料担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系または香料に一般的に使用される溶媒を挙げることができる。香料に一般的に使用される溶媒の性質および種類については、すべてのものを余すことなく詳細に記載できるものではない。ただし非限定的な例として、ジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノールまたはクエン酸エチルといった溶媒を挙げることができ、これらが最も一般的に使用されている。香料担体および香料補助成分の双方を含む組成物について、先に明記したもの以外の適切な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン類または他のテルペン類、イソパラフィン類、例えば商標Isopar(登録商標)(供給元・Exxon Chemical)で知られているもの、またはグリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類、例えば商標Dowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)で知られているものもあり得る。「香料補助成分」とは本明細書では、快楽的な作用を付与する付香調製物または組成物において使用される化合物であって、上記で定義されたマイクロカプセルではないものを意味する。すなわち、付香成分であると考えられるべきこのような補助成分は、単に匂いを有しているものとしてではなく、組成物の匂いをポジティブにまたは心地よいように付与または変更できるものとして、当業者には認識されるはずである。
【0082】
付香組成物中に存在する香料補助成分の性質および種類については、本明細書ではより詳細な説明は保証されないが、いずれにせよすべてのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、当業者であれば、自身の一般知識に基づき、また用途および所望の感覚受容作用に従って、それらを選択することができるであろう。一般的に言えば、これらの香料補助成分は、アルコール類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペノイド類、含窒素複素環式化合物または含硫黄複素環式化合物および精油といった様々な化学種に属し、また該香料補助成分は、天然由来のものであっても合成由来のものであってもよい。こうした補助成分の多くは、いずれにせよ、S.Arctanderによる著作Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版のような参考文献、または類似の性質の他の論文、および香料分野の多数の特許文献に列記されている。また前記補助成分は、様々な種類の付香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0083】
「香料補助剤」とは本明細書においては、色、特定の耐光性、化学的安定性などのさらに付加された有益性を付与し得る成分を意味する。付香ベースにおいて一般的に使用される補助剤の性質および種類については、すべてのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、前記成分は当業者に周知であることに言及する必要がある。
【0084】
好ましくは本発明による付香組成物は、上記で定義されたマイクロカプセルを0.05~30重量%、好ましくは0.1~30重量%含む。
【0085】
本発明のマイクロカプセルを、多くの適用分野および消費者製品において有利に使用することができる。マイクロカプセルは、液体の消費者製品に適用可能な液体形態で使用することも、粉末化した消費者製品に適用可能な粉末形態で使用することも可能である。
【0086】
したがって本発明のもう1つの対象は、液体の消費者製品であって、
a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全重量に対して2~65重量%と、
b)水または水混和性の親水性有機溶媒と、
c)上記で定義されたマイクロカプセルスラリーと、
d)任意に、封入されていない芳香剤と
を含む、液体の消費者製品である。
【0087】
粉末化した消費者製品であって、
(a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全重量に対して2~65重量%と、
(b)上記で定義されたマイクロカプセル粉末と、
(c)任意に、上記で定義されたマイクロカプセルとは異なる芳香剤粉末と
を含む粉末の消費者製品も、本発明による対象である。
【0088】
芳香剤の油性コアを含むマイクロカプセルの場合、本発明の製品は特に、芳香付けされた消費者製品、例えばファインフレグランスまたは「機能性」香料に属する製品に使用されるものであり得る。機能性香料としては特に、ヘアケア、ボディクレンジング、スキンケア、衛生ケアを含むパーソナルケア製品ならびに洗濯ケアおよび空気ケアを含むホームケア製品が挙げられる。したがって本発明のもう1つの対象は、上記で定義されたマイクロカプセルまたは上記で定義された付香組成物を付香成分として含む、芳香付けされた消費者製品からなる。前記消費者製品の芳香要素は、上記で定義された芳香剤マイクロカプセルと、自由な状態の、つまり封入されていない芳香剤と、本明細書に開示されたもの以外の種類の芳香剤マイクロカプセルとの組合せであり得る。
【0089】
特に、液体の消費者製品であって、
a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全重量に対して2~65重量%と、
b)水または水混和性の親水性有機溶媒と、
c)上記で定義された付香組成物と
を含む液体の消費者製品は、本発明のもう1つの対象である。
【0090】
また、粉末化した消費者製品であって、
(a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全重量に対して2~65重量%と、
(b)上記で定義された付香組成物と
を含む粉末の消費者製品も、本発明の一部である。
【0091】
したがって、本発明のマイクロカプセルを、そのまま添加することも、芳香付けされた消費者製品中の本発明の付香組成物の一部として添加することもできる。
【0092】
明確にするために述べると、「芳香付けされた消費者製品」とは、様々な有益性の中でも、付香作用を、適用される表面(例えば、皮膚、毛髪、布地、紙または家庭における表面)または空気中に(エアフレッシュナー、消臭剤など)送達することが期待される消費者製品を意味することに言及する必要がある。すなわち、本発明による芳香付けされた消費者製品とは、「ベース」とも呼ばれる機能性配合物を、有益な作用剤とともに、その中でも有効量の本発明によるマイクロカプセルとともに含む製品である。
【0093】
芳香付けされた消費者製品の他の構成要素の性質および種類については、本明細書ではより詳細な説明は保証されないが、いずれにせよすべてのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、当業者であれば、自身の一般知識に基づき、また該製品の性質および所望の作用に従って、それらを選択することができる。本発明のマイクロカプセルを組み込むことができる消費者製品のベース配合物は、このような製品に関する多数の文献に記載されている。これらの配合物については、本明細書ではより詳細な説明は保証されないが、いずれにせよすべてのものを余すことなく詳細に記載できるものではない。このような消費者製品を配合する当業者であれば、自身の一般的な知識および利用可能な文献に基づいて、適切な成分を完全に選択することができる。
【0094】
適切な香料消費者製品の非限定的な例は、芳香剤、例えばファインパフューム、コロンまたはアフターシェーブローション;布地ケア製品、例えば液体または固体の洗剤、タブレットおよびポッド、布地柔軟剤、乾燥機用シート、布地リフレッシャー、アイロン水または漂白剤;ボディケア製品、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー、ヘアコンディショナー、カラーリング調製物またはヘアスプレー)、化粧調製物(例えば、バニシングクリーム、ボディローションまたは消臭剤もしくは発汗抑制剤)またはスキンケア製品(例えば、芳香付けされた石鹸、シャワーもしくはバスムース、ボディウォッシュ、オイルもしくはゲル、バスソルトまたは衛生製品);空気ケア製品、例えばエアフレッシュナーまたは「すぐに使用可能な」粉末状エアフレッシュナー;またはホームケア製品、例えば万能クリーナー、液状もしくは粉末状またはタブレット状の台所洗剤製品、トイレクリーナーまたは種々の表面を清浄化するための製品、例えば布地または硬質表面(床、タイル、石目床など)の処理/リフレッシュを目的としたスプレー&ワイプ、衛生製品、例えば生理用ナプキン、おむつ、トイレットペーパーであり得る。
【0095】
特定の一実施形態によれば、消費者製品は、シャンプー、シャワーゲル、リンスオフコンディショナー、棒状石鹸、粉末状または液状の洗剤、布地柔軟剤および床用クリーナーからなる群から選択される。
【0096】
特定の一実施形態によれば、消費者製品は、シャンプーまたはシャワーゲルである。
【0097】
好ましくは消費者製品は、本発明のマイクロカプセルを0.05重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.2~5重量%含み、ここで、これらのパーセンテージは、該消費者製品の全重量に対する重量により定められる。当然のことながら、上記濃度を、各製品に望まれる嗅覚作用に従って適合させてもよい。
【0098】
本発明のもう1つの対象は、さらに界面重合反応に供されたピッカリングエマルションを安定化するための、化学的に表面修飾されていない無機粒子からなる無機粒子の使用である。
【0099】
本発明のカプセルは、具体的かつ有利には、付着性およびブルーミング効果の点で良好な結果を示しつつも、著量の界面活性剤を含有する消費者製品において安定であることが判明した。
【0100】
ここで、本発明を実施例によりさらに説明する。特許請求の範囲に記載された本発明は、これらの実施例により何ら限定されることを意図するものではないことを認識されたい。
【0101】

例1
ハイドロキシアパタイト(HA)粒子を含むマイクロカプセルの製造
マイクロカプセルA1
第1の工程において、超音波プローブを用いてpH4の緩衝液に分散させたHA粒子(Aladdine Reagents(Shanghai) Co., LTD製の水酸化リン酸カルシウム)から、水相を製造する。次いでこの水相を、ポリイソシアネート(Takenate(登録商標)D-110N(74.4%)(キシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物、Mitsui Chemicalsの商標)を含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで5分間用いることにより、ピッカリングエマルションを製造する。配合を、以下の表1に記載する。
【0102】
【表1】
【0103】
表1a)芳香剤の組成
【表2-1】
【0104】
【表2-2】
【0105】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。
【0106】
また、A1について記載したものと同一のプロトコールを用いて、様々なハイドロキシアパタイト粒子含有率およびポリイソシアネート濃度で、マイクロカプセルA1II~A1XIIを製造した(表11および表13参照)。
【0107】
マイクロカプセルB1
第1の工程において、超音波プローブを用いてHA粒子をpH4の緩衝液に分散させて、水相を製造する。次いでこの水相を、2種のポリイソシアネートの混合物を含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで5分間用いることにより、ピッカリングエマルションを製造する。配合を、以下の表2に記載する。
【0108】
【表3】
【0109】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。
【0110】
マイクロカプセルC1
第1の工程において、超音波プローブを用いてpH4の緩衝液に分散させたHA粒子(Fluidinova,S.A製の水酸化リン酸カルシウム)から、水相を製造する。次いでこの水相を、1種のポリイソシアネートを含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで5分間用いることにより、ピッカリングエマルションを製造する。配合を、以下の表3に記載する。
【0111】
【表4】
【0112】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。また、C1について記載したものと同一のプロトコールを用い、異なるハイドロキシアパタイト粒子濃度を用いて、マイクロカプセルC1IIを製造した(表11参照)。
【0113】
例2
β-リン酸三カルシウム(β-TCP)粒子を含むマイクロカプセルの製造
マイクロカプセルA2
第1の工程において、超音波プローブを用いてpH4の緩衝液に分散させたβ-TCP粒子から、水相を製造する。次いでこの水相を、1種のポリイソシアネートを含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで5分間用いることにより、ピッカリングエマルションを製造する。配合を、以下の表4に記載する。
【0114】
【表5】
【0115】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。また、A2について記載したものと同一のプロトコールを用い、異なるβ-リン酸三カルシウム粒子濃度を用いて、マイクロカプセルA2IIを製造した(表11参照)。
【0116】
例3
高熱法シリカ(ヒュームドシリカ)粒子を含むマイクロカプセルの製造
マイクロカプセルA3
第1の工程において、超音波プローブを用いてpH4の緩衝液に分散させたヒュームドシリカ粒子から、水相を製造する。次いでこの水相を、1種のポリイソシアネートを含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで5分間用いることにより、ピッカリングエマルションを製造する。配合を、以下の表5に記載する。
【0117】
【表6】
【0118】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。
【0119】
例4
カオリンクレー粒子を含むマイクロカプセルの製造
マイクロカプセルA4
第1の工程において、超音波プローブを用いてpH4の緩衝液に分散させたカオリンクレー粒子から、水相を製造する。次いでこの水相を、1種のポリイソシアネートを含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで5分間用いることにより、ピッカリングエマルションを製造する。配合を、以下の表6に記載する。
【0120】
【表7】
【0121】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。
【0122】
例5
炭酸カルシウム(CaCO )およびβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)粒子を含むマイクロカプセルの製造
マイクロカプセルA5
第1の工程において、超音波プローブを用いて脱塩水に分散させた炭酸カルシウムおよびβ-リン酸三カルシウム粒子から、水相を製造する。次いでこの水相を、1種のポリイソシアネートを含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで5分間用いることにより、ピッカリングエマルションを製造する。配合を、以下の表7に記載する。
【0123】
【表8】
【0124】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。
【0125】
例6(比較)
乳化剤としてポリビニルアルコールを含む非ハイブリッドマイクロカプセルの製造
マイクロカプセルX
第1の工程において、PVOH 18-88を水に分散させる。次いでこの水相を、1種のポリイソシアネートを含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで3分間用いることにより、エマルションを製造する。配合を、以下の表8(マイクロカプセルX)および表9(マイクロカプセルY)に記載する。
【0126】
【表9】
【0127】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。
【0128】
例7(比較)
アミノ官能化SiO 粒子を含むハイブリッドマイクロカプセルの製造
マイクロカプセルZ
第1の工程において、超音波プローブを用いてpH7の緩衝液に分散させたアミノ官能化SiO粒子から、水相を製造する。次いでこの水相を、1種のポリイソシアネートを含む油相と混合する。Ultra Turrax,IKA T25ホモジナイザーを24000rpmで5分間用いることにより、ピッカリングエマルションを製造する。配合を、以下の表10に記載する。
【0129】
【表10】
【0130】
第2の工程において、70℃で3時間にわたって撹拌しながら界面反応を行う。得られたマイクロカプセルは、スラリー(水中懸濁液)の形態である。
【0131】
例8
シャワーゲルベースにおけるマイクロカプセルの貯蔵安定性
シャワーゲルベースの組成
先の例に記載した方法により得られた所定量のマイクロカプセルスラリーを、高速撹拌(1200rpmで10分間)下でシャワーゲルに加えた。
【0132】
シャワーゲルは、8.0%のポリアクリレート-1クロスポリマー(Carbopol(登録商標)AquaCCポリマー、供給元:Noveon)、0.5%のクエン酸(40%水溶液)、25.0%のC12~C15パレス硫酸ナトリウム(Zetesol AO 328 U、供給元:Zschimmer&Schwarz)、4.0%のコカミドプロピルベタイン(Tego Betain F50、供給元:Goldschmidt AG)、0.1%のDMDMヒダントインおよびヨードプロピニルブチルカルバメート(Glydant Plus Liquid、供給元:Lonza)、4.0%の塩化ナトリウム(20%水溶液)および58.4%の水を含有する。ベース中の最終封入香油含有率は、0.2%であった。
【0133】
安定性測定
マイクロカプセルを含むシャワーゲルベースを、閉鎖した小さな瓶に移し、45℃に保った。
【0134】
45℃で1ヵ月間貯蔵した後、マイクロカプセルスラリーを含む1.0gのシャワーゲルベースを4.0mlの脱塩水と混合し、内部標準(イソオクタン/ジエチルエーテル中の75mg/Lのラウリン酸エチル)を含む5.0mlのイソオクタン/ジエチルエーテルで抽出した。抽出物を、IKA KS 130ベーシックを用いてMOT480/分で15分間振盪した。次いで、0.22umのRC膜で有機相をろ過し、GC(7890A、Agilent Technologies)-MS(5975C,Agilent Technologies)により分析して、芳香剤の漏出を測定した。結果を、表11に示す。
【0135】
【表11】
【0136】
上記の結果は、本発明で定義されるマイクロカプセルを用いて製造したマイクロカプセルをシャワーゲルベースに分散させた場合(45℃で1ヵ月間貯蔵)に示す油の漏出が、非ハイブリッドマイクロカプセルと比較して低度であることを示す。
【0137】
例9
シャワーゲルベースにおけるマイクロカプセルの付着性能
先の例に記載した方法により得られた所定量のマイクロカプセルスラリーを、高速撹拌(1200rpmで10分間)下で、例8に開示したシャワーゲルに加えた。
【0138】
付着試験
付着の定量化のために、以下の手法を用いた。500mgの白人の小型の褐色の毛髪見本を、140mLのシリンジを用いて装着を目的として40mLの水道水(39℃)で湿らせた。余剰分の水を1回やさしく絞り出し、UVトレーサー(Uvinul A Plus)を充填したマイクロカプセル(希釈シャンプー中0.4%の香油に相当する用量を有する)を含む0.1mLの希釈シャンプーベース(水で1:1で希釈したシャンプーベース)を、100μLの容積式ピペットで施与した。
【0139】
シャンプベースは、0.4%のグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(JaguarC-14S,Rhone Poulenc)、7%のココ-ベタイン(Dehyton AB-30,Cognis)、45%のラウレス硫酸ナトリウム(Texapon NSO IS,Cognis)、3%のジメチコン(および)ラウレス-23(および)ラウレス-4(および)サリチル酸(DOW CORNING 2-1691 EMULSION,Dow Corning)、0.9%のジステアリン酸グリコール(CUTINA AGS,Cognis)、1.2%のコカミドMIPA(REWOMID IPP 240,Degussa)、1.2%のセチルアルコール(Firmenich)、0.3%のDMDMヒダントイン(および)ヨードプロピニルブチルカルバメート(GLYDANT PLUS LIQUID,Lonza)、および41.0%の脱イオン水を含む。
【0140】
希釈シャンプーを、水平方向に10回および垂直方向に10回のパスで分配した。次に、見本を100mLの水道水(39℃)ですすぎ、装着を目的として見本の両側に50mLを施与した。余剰分の水をやさしく絞り出し、次いでこの毛髪見本を切断して、予め秤量した20mLのシンチレーションバイアルに入れた。このプロセスを3回繰り返し、次いで、切断された毛髪の入ったバイアルを、50~60℃で真空オーブン中で(100トル)少なくとも5時間乾燥させた。乾燥プロセス後、バイアルを再び秤量して、バイアル中の毛髪の重量を測定した。マイクロカプセルを含有する0.1mLのモデル界面活性剤混合物を空のバイアルに加えることによって、対照標準も製造した。次いで、4mLの200プルーフエタノールを各バイアルに加え、それらを60分間の超音波処理に供した。超音波処理後、サンプルを0.45μmのPTFEフィルターを通してろ過し、UV検出器を使用してHPLCで分析した。モデル界面活性剤混合物のマイクロカプセルの付着性のパーセンテージを求めるために、毛髪サンプルから抽出されたユビナール(Uvinul)の量を、対照サンプルから抽出されたユビナール(Uvinul)の量と比較した。
【0141】
結果
【表12】
【0142】
結論
上記の結果は、本発明において定義される粒子を用いて製造したハイブリッドマイクロカプセルの、リンスオフの施与での毛髪への付着性が、非ハイブリッドマイクロカプセル(マイクロカプセルXおよびY)を用いて得られた付着性よりも顕著に高いことを明示している。
【0143】
上記の結果はまた、本発明において定義されるハイブリッドマイクロカプセル(すなわち、化学的に修飾されていない無機粒子を含む)の付着性が、化学的に修飾された無機粒子を含むハイブリッドマイクロカプセル(マイクロカプセルZ)よりも高いことを示している。
【0144】
例10
シャンプーベースにおける嗅覚的性能
実験の部
マイクロカプセルA1の製造について記載された方法により得られたマイクロカプセルスラリー(様々なHA粒子含有率およびポリイソシアネート濃度で製造したもの - 表13における組成を参照)の所定量を、シャンプーベースに分散させた。
【0145】
本発明による方法によって製造された他のマイクロカプセルについても、同一の実験を行った(A1、A2、C1、A3およびA4、図3参照)。
【0146】
【表13】
【0147】
シャンプーベースは、0.05%のEDTA四ナトリウム(EDETA B POWDER,BASF)、0.2%のヒドロキシエチルセルロース(TYLOSE H10 Y G4,SHIN ETSU)、0.1%のポリクオタニウム-10(UCARE POLYMER JR-400,Noveon)、23.2%のラウリル硫酸アンモニウム(SULFETAL LA B-E,ZSHIMMER AND SCHWARZ)、0.8%のラウレス-2(ARLYPONF,Cognis)、30%のラウレス硫酸アンモニウム(ZETESOL LA,Z&S HANDEL AG)、1.5%のジメチコン(および)ラウレス-23(および)ラウレス-4(および)サリチル酸(DOW CORNING 2-1691 EMULSION,Dow Corning)、1.2%のセチルアルコール(Firmenich)、1.5%のコカミドMEA(COMPERLAN 100,COGNIS)、2%のジステアリン酸グリコール(CUTINA AGS,Cognis)、0.1%のパンテノール75%、0.4%のフェノキシエタノール(および)ピロクトンオラミン(NIPAGUARD PO 5,Clariant)、および38.95%の脱塩水を含む。
【0148】
ベース中の最終封入香油含有率は、0.2%であった。
【0149】
各評価のために、4~6名の専門パネリストを選定した。同量のシャンプーのサンプルを毛髪見本に施与した。以下の洗浄プロトコールに従って評価を行った:
(1)毛髪見本を最初に水で湿らせ、次いで1.5mlの界面活性剤混合物ベースを毛髪に沿って平均して施与した。
【0150】
(2)毛髪を折り曲げて、あまり力をかけずに円を描くように5回こすった。
【0151】
(3)パネリストは、洗浄後直ちに毛髪見本を評価した。
【0152】
洗浄前に、パネリストはシャンプーベースの強度をニートであると評価しなければならなかった。フレグランス強度の評価を0~7の等級で行い、0は無臭を意味し、7は非常に強いことを意味した。
【0153】
結果
結果を、図2および図3に示す。
【0154】
結論
本発明において定義される粒子を用いて製造したマイクロカプセルは、洗浄中に強度が高く、すなわち、非ハイブリッドマイクロカプセルおよび化学的に修飾された無機粒子を含むハイブリッドマイクロカプセルよりも高いブルーミング効果を示すことが明らかとなった。
【0155】
したがって本発明は、(化学的に修飾されていない無機粒子を用いるだけで)例えば表面への付着性が高く、封入された活性成分に関する透過性が低く、また活性成分の送達の点でブルーミング効果が高いといった良好な特性を示す費用対効果の高いマイクロカプセルを提供する。
【0156】
例11
本発明のマイクロカプセルを含むAPロールオン(AP-Roll on)ベースの製造
75℃に予め温めた、BRIJ 72(3.25g,Croda,英国)、BRIJ 721(0.75g,Croda,英国)およびARLAMOL E (4.00g, Croda,英国)の混合物を、撹拌しながら水(51.00g)に入れた。この混合物を10分間均質化し、次いで撹拌しながら室温に冷却する。LOCRON L(40.00g,Clariant,スイス国)を45℃でゆっくりと加え、この混合物を室温に保つ(表14参照)。
【0157】
マイクロカプセルC1スラリー(約2.6g)を35℃で加えることにより、封入香油濃度1%、中性の匂い(pH4.2~4.7)、粘度1000~2500cPs(製造の24~48時間後に測定)の白色の液体エマルションが得られる。
【0158】
【表14】
図1
図2
図3