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特許7146744電源装置及びこれを備える車両、蓄電装置並びに電源装置用セパレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】電源装置及びこれを備える車両、蓄電装置並びに電源装置用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/293 20210101AFI20220927BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20220927BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20220927BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20220927BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20220927BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20220927BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220927BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220927BHJP
   H01M 10/627 20140101ALI20220927BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220927BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220927BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20220927BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M50/291
H01M50/209
H01M50/284
H01M50/249
B60L50/64
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/627
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/658
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019517551
(86)(22)【出願日】2018-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2018016511
(87)【国際公開番号】W WO2018207608
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2017095624
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆秀
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-004294(JP,A)
【文献】特開2010-238554(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0285051(US,A1)
【文献】特開2011-096465(JP,A)
【文献】特開2006-196230(JP,A)
【文献】特開2014-072063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0335398(US,A1)
【文献】米国特許第7764047(US,B2)
【文献】米国特許第8481191(US,B2)
【文献】国際公開第2012/172829(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204088432(CN,U)
【文献】中国実用新案第205028986(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/293
H01M 50/291
H01M 50/209
H01M 50/284
H01M 50/249
B60L 50/64
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/627
H01M 10/647
H01M 10/651
H01M 10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配置された複数の二次電池セルと、
前記隣接する二次電池セル同士の間に、それぞれ介在されるセパレータと、を備える電源装置であって、
各セパレータは、前記二次電池セルで押圧されて変形すると共に、元の形態に戻ろうとする復元性と、断熱性とを有する可撓性部材で構成されてなり、
前記セパレータが、無機材料の耐熱性繊維で構成されてなる電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
各セパレータは、メッシュ状に構成され、メッシュの空隙に存在する空気により断熱性の類焼防止層を形成してなる電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、
前記セパレータが、シート状に形成され、前記二次電池セルで押圧された際の厚さが、0.50mm以上となるよう構成されてなる電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記セパレータが、表面を絶縁材で被覆した金属結晶繊維で構成されてなる電源装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の電源装置であって、
車両の駆動用の電源装置である電源装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一に記載の電源装置を備えてなる車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える車両。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一に記載の電源装置を備えてなる蓄電装置であって、
前記電源装置への充放電を制御する電源コントローラを備えており、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記二次電池セルへの充電を可
能とすると共に、前記二次電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【請求項8】
互いに隣接して配置された複数の二次電池セル同士の間に介在させるためのセパレータであって、
前記二次電池セルで押圧されて変形すると共に、元の形態に戻ろうとする復元性と、断熱性とを有する可撓性部材で構成され、無機材料の耐熱性繊維で構成されてなるセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及びこれを備える車両、蓄電装置並びに電源装置用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の二次電池を直列、並列に接続した電源装置は、車両の駆動用等の用途で用いられている。このような電源装置の一例を図8の分解斜視図に示す。この図に示す電源装置は、角形の二次電池セル901をスペーサ902を介して多数積層して、端面にエンドプレート903を配置し、バインドバー904で締結している。スペーサ902は、硬質の樹脂等で構成されている。
【0003】
近年の電池に対する高出力、かつ小型化の要求に伴い、二次電池セルの高容量化が進められている一方、複数の二次電池セルを組み合わせた電池モジュールに対する安全性の確保が重要な課題となっている。特に、1つの二次電池セルが高温になった際、隣接する他の二次電池セルに熱が伝搬するいわゆる類焼試験における対策技術の確立が急務となっている。類焼試験とは、電池モジュールに含まれる二次電池セルの1つが熱暴走したときに、周囲の二次電池セルに熱連鎖していき、最終的に電池モジュールが破裂又は発火することがないかを検証する試験である。
【0004】
その一方で、二次電池セルの膨張にも対応しなければならない。二次電池セルは、充電や放電を繰り返すと膨張する。また、電池の劣化によっても膨張が生じる。特に電池の高容量化に伴い、充放電や劣化に伴う電池の膨張に際して生じる反力も増大する傾向にあり、この対応として構造部品の開発や、モジュールの高容量化(直列数または並列数の増加)によるモジュール剛性の向上(セパレータによる二次電池セル間の相対変位を抑制)を実現する技術開発が求められている。
【0005】
さらにまた、二次電池セル間に配置されるスペーサについても小型化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2014/0193685号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一は、二次電池セルの一部が高温となった際に隣接する他の二次電池セルに与える影響を低減させる類焼防止機能を備えた電源装置及びこれを備える車両、蓄電装置並びに電源装置用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の第1の形態に係る電源装置によれば、互いに隣接して配置された複数の二次電池セルと、前記隣接する二次電池セル同士の間に、それぞれ介在されるセパレータとを備える電源装置であって、各セパレータは、前記二次電池セルで押圧されて変形すると共に、元の形態に戻ろうとする復元性と、断熱性とを有する可撓性部材で構成することができる。上記構成により、二次電池セル間の断熱性を高めて熱暴走時の類焼を抑制しつつ、二次電池セルが膨張した際の変形もセパレータでもって吸収し、さらに膨張が収まった際にはセパレータの形状を回復させて、機械的な押圧力も維持して、機械的な安定性を高め振動や衝撃への耐性も維持できる。
【0009】
また、第2の形態に係る電源装置によれば、上記構成に加えて、各セパレータが、メッシュ状に構成され、メッシュの空隙に存在する空気により断熱性の類焼防止層を形成することができる。
【0010】
さらに、第3の形態に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記セパレータが、シート状に形成され、前記二次電池セルで押圧された際の厚さを、0.50mm以上となるよう構成できる。
【0011】
さらにまた、第4の形態に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記セパレータを、無機材料の耐熱性繊維で構成できる。
【0012】
さらにまた、第5の形態に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記セパレータを、表面を絶縁材で被覆した金属結晶繊維で構成できる。
【0013】
さらにまた、第6の形態に係る電源装置によれば、上記何れかの電源装置を車両の駆動用の電源装置として用いることができる。
【0014】
さらにまた、第7の形態に係る車輌によれば、上記何れかの電源装置を備えると共に、この電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えることができる。
【0015】
さらにまた、第8の形態に係る電源装置によれば、上記何れかの電源装置を備えると共に、この電源装置への充放電を制御する電源コントローラを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記二次電池セルへの充電を可能とすると共に、前記二次電池セルに対し充電を行うよう制御することができる。
【0016】
さらにまた、第9の形態に係るセパレータによれば、互いに隣接して配置された複数の二次電池セル同士の間に介在させるためのセパレータであって、多孔質の材質で構成され、該多孔質の内部に含まれる空気により類焼防止層を形成できる。上記構成により、二次電池セル間の断熱性を高めて熱暴走時の類焼を抑制しつつ、二次電池セルが膨張した際の変形もセパレータでもって吸収し、さらに膨張が収まった際にはセパレータの形状を回復させて、機械的な押圧力も維持して、機械的な安定性を高め振動や衝撃への耐性も維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態にかかる組電池の斜視図である。
図2図1に示す組電池の分解斜視図である。
図3】セパレータの斜視図である。
図4図4Aは実施形態1に係るセパレータの、図3のIV-IV線における断面図及び要部拡大断面図、図4Bは実施形態2に係るセパレータの、図3のIV-IV線における断面図及び要部拡大断面図、図4Cは実施形態3に係るセパレータの、図3のIV-IV線における断面図及び要部拡大断面図である。
図5】エンジンとモータで走行するハイブリッド自動車にバッテリ装置を搭載する例を示すブロック図である。
図6】モータのみで走行する電気自動車にバッテリ装置を搭載する例を示すブロック図である。
図7】蓄電装置にバッテリ装置を使用する例を示すブロック図である。
図8】従来の電源装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る電源装置100の斜視図を図1に、その分解斜視図を図2に、それぞれ示す。これらの図に示す電源装置100は、複数の二次電池セル1を積層している電池積層体2と、この電池積層体2の両端に配置された一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3に両端が連結されて、電池積層体2を締結する一対の締結部材4とを備えている。さらに、電源装置100は、締結部材4が、電池積層体2の側面に沿って配置される本体部40と、この本体部40の両端で折曲されて、エンドプレート3の外側面に固定される固定部41とを備えている。
【0020】
(二次電池セル1)
二次電池セル1は、図2に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形電池で、厚さ方向に積層されて電池積層体2としている。二次電池セル1はリチウムイオン二次電池である。ただし、二次電池セルは、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等、充電できる全ての二次電池とすることもできる。二次電池セル1は、密閉構造の外装缶に正負の電極板を電解液と共に収容している。外装缶は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板を角形にプレス成形され、開口部を封口板で気密に密閉している。封口板は、外装缶と同じアルミニウムやアルミニウム合金で、両端部に正負の電極端子11を固定している。さらに、封口板は、正負の電極端子11の間に、ガス排出弁15を設けている。
【0021】
複数の二次電池セル1は、各二次電池セル1の厚み方向が積層方向となるように積層されて電池積層体2を構成している。二次電池セル1は、正負の電極端子11を設けている端子面10を同一平面に配置して、複数の二次電池セル1を積層して電池積層体2としている。
【0022】
(セパレータ12)
電池積層体2は、図2に示すように、積層している二次電池セル1の間にセパレータ12を挟着している。図のセパレータ12は、絶縁材で薄いプレート状またはシート状に製作されている。図に示すセパレータ12は、二次電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状としており、このセパレータ12を互いに隣接する二次電池セル1の間に積層して、隣接する二次電池セル1同士を絶縁している。なお、セパレータ12とは別に、隣接する二次電池セル1間に第二スペーサを配置しても良い。二次電池セル1とスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることで、二次電池セル1を冷却することができる。また、二次電池セル1の表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクチューブで二次電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を熱溶着させてもよい。
【0023】
(電池積層体2)
電池積層体2は、隣接する二次電池セル1の正負の電極端子11に金属製のバスバー(図示せず)が接続されて、バスバーでもって複数の二次電池セル1を直列又は並列に、あるいは直列と並列に接続される。図に示す電池積層体2は、12個の二次電池セル1を直列に接続している。ただ、本発明は、電池積層体を構成する二次電池セル1の個数とその接続状態を特定しない。
【0024】
(端面スペーサ13)
電池積層体2は、両端面に端面スペーサ13を挟んでエンドプレート3を配置している。端面スペーサ13は、図2に示すように、電池積層体2とエンドプレート3との間に配置されてエンドプレート3を電池積層体2から絶縁する。端面スペーサ13は、上述したセパレータ12と同様の材質で構成することができる。図に示す端面スペーサ13は、二次電池セル1の対向面全体をカバーできる大きさのプレート部13Xを備えており、このプレート部13Xを電池積層体2の両端に配置された二次電池セル1とエンドプレート3との間に積層している。
【0025】
さらに、図2の端面スペーサ13は、二次電池セル1の端子面10をカバーする端子面カバー部13Aを、プレート部13Xの上端縁に連結して設けている。図2の端面スペーサ13は、プレート部13Xの上端縁の全体にわたって、二次電池セル1側に突出する端子面カバー部13Aを設けている。このように、プレート部13Xの上端縁の全体にわたって端子面カバー部13Aを設ける構造は、エンドプレート3と電池積層体2との絶縁距離を確保しながら、二次電池セル1の上面である端子面10を確実にカバーして絶縁特性を向上できる。
【0026】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、図1図2に示すように、電池積層体2の両端に配置されると共に、電池積層体2の両側面に沿って配置される締結部材4を介して締結される。エンドプレート3は、電池積層体2の二次電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ13の外側に配置されて電池積層体2を両端から挟着している。エンドプレート3は、アルミニウム合金製としている。アルミニウム合金としては、Al-Cu-Mg系、Al-Cu-Ni-Mg系、Al-Cu-Si系、Al-Si-Mg系、Al-Si-Cu系、Al-Si-Cu-Mg系、Al-Si-Cu-Ni-Mg系等が利用できる。このアルミニウム合金製のエンドプレート3は、熱処理型合金である。またアルミニウム合金製のエンドプレート3は、後述する通りダイキャストで成型される。またアルミニウム合金製のエンドプレート3は、後述する通り、溶体化処理、焼入れ及び時効熱処理等を含む熱処理によって調質されることが好ましい。
【0027】
エンドプレート3は、外形を四角形としており、電池積層体2の端面に対向して配置されている。図1図2に示すエンドプレート3は、二次電池セル1の外形とほぼ等しい外形としている。ずなわち、図に示すエンドプレート3は、左右方向の幅を二次電池セル1の幅と等しくすると共に、上下方向の高さを二次電池セル1の高さと等しくしている。なお、本明細書において、上下方向とは図における上下方向とし、左右方向は、図における左右方向であって、電池の積層方向と直交する水平方向を意味するものとする。
【0028】
さらに、図2に示すエンドプレート3は、エンドプレート3を固定するための貫通孔を複数形成している。例えばエンドプレート3は、締結部材4の固定部41を固定する留め具19を挿入するための第一貫通孔33を有している。図に示すエンドプレート3は、第一貫通孔33として、複数の貫通孔を開口している。図のエンドプレート3は、両側部であって固定部41と対向する位置に、上下に離して複数の第一貫通孔33を設けている。
図2のエンドプレート3は、両側に沿って3個ずつ、全体で6個の第一貫通孔33を設けている。このエンドプレート3は、外周面に配置される固定部41を貫通する留め具19が第一貫通孔33に挿入される。第一貫通孔33に挿入された留め具19は、第一貫通孔33に固定されて固定部41を定位置に固定する。
【0029】
さらにエンドプレート3は、第一貫通孔33とは異なる第二貫通孔34として、電源装置を固定部位(例えば車載用の電源装置においては、車両)に固定するボルトを挿入するための貫通孔を形成している。第二貫通孔34は、エンドプレート3の上面において両端に縦穴として貫通されている。
(留め具19)
【0030】
留め具19は、第一貫通孔33に抜けないように固定される。このような留め具19として、止ネジやボルト、リベット等が使用できる。止ネジやボルトである留め具は、第一貫通孔33に挿入する際に、第一貫通孔33に螺合して固定される。したがって、止ネジやボルトである留め具が固定される第一貫通孔33は、内面に止ネジやボルトの雄ネジと噛み合う雌ネジを設けることができる。また、リベットである留め具は、固定部を貫通する状態でエンドプレート3の第一貫通孔33に挿入されると共に、第一貫通孔33の内部において一端がかしめられてエンドプレート3と固定部とを固定する。リベットである留め具は、エンドプレート3の第一貫通孔33の内部で形成されるカシメ部によって、エンドプレート3の第一貫通孔33と固定部の貫通孔の開口縁部とを挟着して、固定部をエンドプレート3に固定する。リベットが挿入される第一貫通孔33は、外側面の開口面積を小さくしてリベットの頭部を通過できない内形とすると共に、反対側である対向面側の開口面積を大きくして、リベットを変形させて形成されるカシメ部を内部に配置できる構造とすることができる。
【0031】
(締結部材4)
締結部材4は、図1図2に示すように、電池積層体2の積層方向に延長されており、両端が電池積層体2の両端面に配置されたエンドプレート3に固定されて、このエンドプレート3を介して電池積層体2を積層方向に締結している。締結部材4は、電池積層体2の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板で、電池積層体2の両側面に対向して配置されている。この締結部材4には、鉄などの金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなる締結部材4は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。
【0032】
締結部材4は、電池積層体2の側面に沿って配置される本体部40と、この本体部40の両端で折曲されて、エンドプレート3の外側面に固定される固定部41とを備えている。本体部40は、電池積層体2と、その両端に配置されるエンドプレート3のほぼ全体を被覆する大きさの矩形状としている。図1に示す本体部40は、電池積層体2の側面のほぼ全面を隙間なく被覆している。ただ、本体部40は、1以上の開口部を設けて、電池積層体の側面の一部を表出させることもできる。締結部材4は、両端を一対のエンドプレート3に固定するために、その両端部をエンドプレート3の外側面に沿うように折曲加工して固定部41を設けている。図に示す固定部41は、本体部40及びエンドプレート3の上下方向の高さとほぼ等しくして、エンドプレート3の左右の両側部を被覆している。この締結部材4は、固定部41の先端に設けた貫通孔42に挿入される留め具19を介してエンドプレート3に固定される。さらに、図に示す締結部材4は、本体部40の両端部を除く中間部分の上端部に沿って、電池積層体2の上面及び下面を保持する折曲部44を備えている。折曲部44は、電池積層体2を構成する二次電池セル1の上面及び下面を保持して、各二次電池セル1の端子面10の位置が上下にずれるのを抑制している。
【0033】
なお、締結部材4は、図示しないが、本体部40と折曲部44の内面に絶縁シートを配置して、この絶縁シートにより、電池積層体2の二次電池セル1と締結部材4とを絶縁することができる。さらに、締結部材4は、図示しないが、本体部40の両端部の内面に緩衝材を配置して、エンドプレート3の両側面を振動等の衝撃から保護することもできる。
【0034】
(セパレータ12の詳細)
セパレータ12の斜視図を図3に示す。このセパレータ12は、断熱性を高めた材質で構成される。セパレータ12を構成する材質は、絶縁性を有する材質で構成することが好ましい。また、セパレータ12を構成する材質は、可撓性を有する材質で構成することが好ましい。すなわち、可撓性を有する材質で構成されるセパレータ12は、二次電池セルが膨張してセパレータ12が押圧された際に変形して、該変形を吸収すると共に、応力が低減されたときには元の形態に戻ろうとする復元性を有する。これにより、二次電池セルの膨張時の変形を許容しつつ、電池積層体の締結力を維持できる。なお、二次電池セルは、電池の異常状態に加え、通常の充放電によっても膨張や収縮をする。上記構成のセパレータを用いることで、膨張時には二次電池セルの変形分を吸収してストレスを緩和することができる。その一方で、膨張が収まった際に隙間が生じてしまうと、電池積層体2を締結する締結部材4の締結力が相対的に弱まり、振動等によりがたつきが生じたり、締結部材4等が摩耗や破損したりする要因となる。そこで、元の厚さに復元することで緩みを抑え、安定的な保持力を発揮する。またその一方で、電池セル膨張時の変形が大きすぎると、セパレータが薄くなって断熱性能が低下する。本実施形態では、二次電池セルで押圧された際の厚さが、0.50mm以上、好ましくは0.65mm以上となるように設計している。これにより、二次電池セルの膨張時にも断熱性を維持することができる。好ましくは、セパレータのヤング率を108~109N/m2とする。
【0035】
このような絶縁性、断熱性と可撓性を実現する材質として、例えばセパレータを、繊維を織り込んだメッシュ状に構成する。実施形態1に係るセパレータ12Aとして、図3のIV-IV線における断面図である図4Aに示す例では、メッシュ層12aで構成している。このようなメッシュ状の材質でセパレータ12Aを構成することで、メッシュ層12aの空隙が存在するため、セパレータに外力が加わると、隙間が狭くなりセパレータの寸法が変化する。変形に伴ってメッシュ層12aの空隙が狭くなると、繊維の弾性特性がセパレータとしての性質に寄与するようになる。従って、メッシュ層の空隙率や繊維のヤング率を適正な値とすることで、セパレータが二次電池セルで押圧された際の厚さが、0.50mm以上、好ましくは0.65mm以上となるように設計することができる。なお、セパレータを構成する繊維は、熱伝導率が低い特性を有していることが好ましい。すなわちセパレータ12Aの断熱性を高めることで、セパレータ12Aの一方の面に位置する二次電池セルが熱暴走等により高温になっても、反対側の面に位置する二次電池セルに伝熱することを抑制する類焼防止層として機能させることができる。またメッシュ層12aとしたことで可撓性を高め、圧縮変形と回復力を発揮できる。このような材質としては、非金属の無機材料、例えば高耐熱性の樹脂製の繊維(例えば難燃性ビニロン繊維、ポリエーテルイミド繊維、およびアラミド繊維)等が利用できる。あるいはワイヤなどの金属線の表面を絶縁材でコーティングしてメッシュ状に構成したものとしてもよい。
【0036】
また、メッシュ状のようなある程度の規則性を有する空隙の他、ランダムな空隙を形成する繊維質を用いてもよい。例えば、ランダムな短繊維を交絡させた繊維材12bでセパレータを構成してもよい。このような例を実施形態2に係るセパレータ12Bとして、図4Bの要部拡大断面図に示す。繊維材12bとしては、ロックウールやガラス繊維、表面を絶縁材で被覆した金属結晶繊維や、高耐熱性の樹脂製の繊維(例えば難燃性ビニロン繊維、ポリエーテルイミド繊維、およびアラミド繊維)等が利用できる。このようにセパレータ12Bを繊維状に構成することでも、圧縮性に富んだ高耐熱の空気層を形成できる。
【0037】
さらに、セパレータの表面の摩擦係数を高め、滑り止め効果を発揮させることも好ましい。これによって、電池モジュールの耐振動、衝撃性を向上できる。例えば、セパレータの表面に滑り止めのコーティングを施す。
【0038】
加えて、セパレータの表面積は、二次電池セルの表面よりも小さくすることが好ましい。これによって、二次電池セルの膨張時に、この二次電池セルの封口体に印加される力を低減して二次電池セルの外装缶の破損を回避できる。また、セパレータを二次電池セルよりも一回り小さくすることで、伝熱面積を小さくして断熱性を向上する効果も得られる。
【0039】
以上の例では外装缶を角型とする二次電池セルに適用する例を説明したが、本発明はこれに限らず、他の形状の電池、例えばラミネート形の二次電池セルや円筒形の二次電池セルにも適用できる。
【0040】
以上の電源装置は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置1000を構築した例として説明する。
【0041】
(ハイブリッド車用電源装置)
図5に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体90と、車両本体90を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置1000と、電源装置1000の電池を充電する発電機94と、モータ93とエンジン96で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電源装置1000は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置1000の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置1000から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置1000の電池を充電する。
【0042】
(電気自動車用電源装置)
また図6に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体90と、車両本体90を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置1000と、この電源装置1000の電池を充電する発電機94、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。モータ93は、電源装置1000から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置1000の電池を充電する。
【0043】
(蓄電用電源装置)
さらに、この電源装置は、移動体用の動力源としてのみならず、載置型の蓄電用設備としても利用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を図7に示す。この図に示す電源装置1000は、複数の電池パック81をユニット状に接続して電池ユニット82を構成している。各電池パック81は、複数の二次電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電池パック81は、電源コントローラ84により制御される。この電源装置1000は、電池ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため電源装置1000は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して電源装置1000と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、電源装置1000の電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから電源装置1000への充電を許可する。
また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、電源装置1000から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、電源装置1000への充電を同時に行うこともできる。
【0044】
電源装置1000で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して電源装置1000と接続されている。電源装置1000の放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、電源装置1000からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、電源装置1000の電源コントローラ84によって制御される。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。図7の例では、UARTやRS-232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0045】
各電池パック81は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、パック入出力端子DIと、パック異常出力端子DAと、パック接続端子DOとを含む。パック入出力端子DIは、他のパック電池や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、パック接続端子DOは子パックである他のパック電池に対して信号を入出力するための端子である。またパック異常出力端子DAは、パック電池の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電池パック81同士を直列、並列に接続するための端子である。また電池ユニット82は、並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両、蓄電装置並びに電源装置用セパレータは、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1…二次電池セル、2…電池積層体、3…エンドプレート、4…締結部材、10…端子面、11…電極端子、12、12A、12B、12C…セパレータ、12a…メッシュ層、12b…繊維材、12c…多孔質、13…端面スペーサ、13X…プレート部、13A…端子面カバー部、15…ガス排出弁、19…留め具、33…第一貫通孔、34…第二貫通孔、40…本体部、41…固定部、42…貫通孔、44…折曲部、81…電池ブロック、82…電池ユニット、84…電源コントローラ、85…並列接続スイッチ、90…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、100…電源装置、901…二次電池セル、902…スペーサ、903…エンドプレート、904…バインドバー、1000…電源装置、HV…車両、EV…車両、CP…充電用電源、LD…負荷、DS…放電スイッチ、CS…充電スイッチ、OL…出力ライン、HT…ホスト機器、DI…入出力端子、DA…異常出力端子、DO…接続端子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8