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特許7146745粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/08 20060101AFI20220927BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220927BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20220927BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220927BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C09J175/08
C09J11/06
C09J5/06
C09J7/38
G09F9/00 342
G09F9/00 302
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019517733
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2018018428
(87)【国際公開番号】W WO2018207938
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017095993
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】豊 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 竜治
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063784(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/063686(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/014283(WO,A1)
【文献】特開平11-269372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンのプレポリマー(A)と、
有機酸(B-1)、酸性リン酸エステル系化合物(B-2)、および有機酸無水物(B-3)からなる群から選択される少なくとも一つと、
ポリイソシアネートである架橋剤(C)とを含み、
前記酸性リン酸エステル系化合物(B-2)は、下記化学式(I)、(II)、(III)で表される酸性リン酸エステル系化合物からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記有機酸(B-1)は、前記酸性リン酸エステル系化合物(B-2)以外の有機酸であり、
前記ポリウレタンのプレポリマー(A)は、
三官能ポリエーテルポリオールを含むポリオールおよびイソシアネートから合成される水酸基を複数有するプレポリマーであることを特徴とする粘着剤。
【化I】
前記化学式(I)中、
およびRは、それぞれ、水素原子、炭化水素基またはアリール基であり、
およびRは同一であっても異なっていてもよく、
およびRの少なくとも一方は、炭化水素基またはアリール基である。
【化II】
【化III】
前記化学式(II)および(III)中、
およびRは、それぞれ、水素原子、炭化水素基またはアリール基であり、
およびRは同一であっても異なっていてもよく、
およびRの少なくとも一方は、炭化水素基またはアリール基であり、
AOはアルキレンオキシド基であり、各AOは同一でも異なっていてもよく、
nは1以上の整数を表し、各nは同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
前記ポリウレタンのプレポリマー(A)中のポリエーテルポリオールの含有率が、前記ポリウレタンポリオール(ポリウレタンのプレポリマー(A))を構成するポリオール中20~100モル%である請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記有機酸(B-1)が、カルボン酸およびスルホン酸の少なくとも一方である請求項1または2記載の粘着剤。
【請求項4】
前記有機酸無水物(B-3)が、カルボン酸無水物およびスルホン酸無水物の少なくとも一方である請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項5】
前記有機酸(B-1)、酸性リン酸エステル系化合物(B-2)、有機酸無水物(B-3)の含有率が、粘着剤の全質量に対して0.3~6質量%である請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項6】
基材の少なくとも片面に粘着層が形成された粘着シートであって、前記粘着層が請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤を用いて形成された粘着層であることを特徴とする粘着シート。
【請求項7】
前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤を塗工する塗工工程と、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する工程とを含む、請求項記載の粘着シートの製造方法。
【請求項8】
画像表示面に、画像表示装置の保護シートが貼付された画像表示装置であって、前記保護シートが請求項記載の粘着シートであることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤およびそれを用いた粘着シートは、産業上の種々の分野において広範に用いられている。具体的な用途としては、例えば、ガラス等の表面に貼付して用いる保護フィルム等がある。前記ガラスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、自動車、建物等の窓ガラスが挙げられる。
【0003】
粘着剤には、例えば、アクリル樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン粘着剤等がある。これらの中で、ウレタン粘着剤は、貼付した後に剥離できる性質(以下、再剥離性という)や粘着剤層と被着体の界面に気泡等を巻き込み難い性質(以下、濡れ性という)等の特性に優れるため、広く用いられている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-186064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、表面保護用の粘着シート等に用いられる粘着剤には、再剥離性、濡れ性に加え、耐被着体汚染性が必要とされている。これは、プラスチック、ガラス等の表面に粘着剤が貼られた製品を、長時間にわたり輸送や保管を行う場合があるためである。ここで、耐被着体汚染性とは、粘着シートが貼付された製品が高温高湿条件下に長時間置かれても、粘着シートを剥離した際に被着体に対する粘着剤由来の汚染が起こらないことをいう。なお、粘着剤が貼られる材料(被着体)の種類や、製品が長時間放置される環境によって汚染の度合いは異なるため、必要とされる耐被着体汚染性も異なる。また、汚染の原因として考えられるものは、粘着剤に由来する糊残り以外に、被着体の材質に由来する変質汚染が含まれる。
【0006】
そこで、本発明は、再剥離性、濡れ性、高温高湿下での耐被着体汚染性を満足することが可能な粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の粘着剤は、
ポリウレタンのプレポリマー(A)と、
有機酸(B-1)、酸性リン酸エステル系化合物(B-2)、および有機酸無水物(B-3)からなる群から選択される少なくとも一つを含み、
前記酸性リン酸エステル系化合物(B-2)は、下記化学式(I)、(II)、(III)で表される酸性リン酸エステル系化合物からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記有機酸(B-1)は、前記酸性リン酸エステル系化合物(B-2)以外の有機酸であり、
前記ポリウレタンのプレポリマー(A)は、ポリオールおよびイソシアネートから合成されるプレポリマーであることを特徴とする。
【化I】
前記化学式(I)中、
およびRは、それぞれ、水素原子、炭化水素基またはアリール基であり、
およびRは同一であっても異なっていてもよく、
およびRの少なくとも一方は、炭化水素基またはアリール基である。
【化II】
【化III】
前記化学式(II)および(III)中、
およびRは、それぞれ、水素原子、炭化水素基またはアリール基であり、
およびRは同一であっても異なっていてもよく、
およびRの少なくとも一方は、炭化水素基またはアリール基であり、
AOはアルキレンオキシド基であり、各AOは同一でも異なっていてもよく、
nは1以上の整数を表し、各nは同一でも異なっていてもよい。
【0008】
本発明の粘着シートは、基材の少なくとも片面に粘着層が形成された粘着シートであって、前記粘着層が、前記本発明の粘着剤を用いて形成された粘着層であることを特徴とする。
【0009】
本発明による粘着シートの製造方法は、前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、前記本発明の粘着剤および架橋剤を塗工する塗工工程と、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤および架橋剤を加熱する加熱工程とを含む、前記本発明の粘着シートの製造方法である。
【0010】
本発明の画像表示装置は、画像表示面に、画像表示装置の保護シートが貼付された画像表示装置であって、前記保護シートが、前記本発明の粘着シートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、再剥離性、濡れ性、高温高湿下での耐被着体汚染性を満足することが可能な粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0013】
本発明の粘着剤において、前記有機酸(B-1)が、例えば、カルボン酸およびスルホン酸の少なくとも一方であってもよい。
【0014】
本発明の粘着剤において、前記有機酸無水物(B-3)が、例えば、カルボン酸無水物およびスルホン酸無水物の少なくとも一方であってもよい。
【0015】
本発明の粘着剤は、例えば、さらに架橋剤(C)を含み、前記架橋剤がポリイソシアネートまたはポリオールであってもよい。
【0016】
本発明の粘着剤において、例えば、前記プレポリマー(A)が、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成され、水酸基を複数有するポリウレタンポリオールであってもよい。
【0017】
本発明の粘着剤において、例えば、前記プレポリマー(A)が、イソシアネート基を複数有するポリウレタンポリイソシアネートであってもよい。
【0018】
本発明の粘着剤において、前記架橋剤(C)は、例えば、ポリイソシアネートであってもよい。また、前記架橋剤(C)は、例えば、ポリオールであってもよい。
【0019】
本発明の粘着剤は、例えば、基材の少なくとも片面に粘着層を形成して粘着シートを製造するための粘着剤であってもよい。また、前記基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィンの基材であってもよい。
【0020】
本発明において、「アルキル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキルを含む。前記アルキルの炭素数は、特に制限されず、例えば、1~30であり、好ましくは、1~18、3~16または4~12である。前記アルキルは、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。アルキル基から誘導される基や原子団(アルコキシ基等)についても同様である。アルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基等)、または、アルキル基から誘導される基(ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルカノイル基等)においても同様である。
【0021】
本発明において、「アルケニル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルケニルを含む。前記アルケニルは、前記アルキルにおいて、1個または複数の二重結合を有するもの等が挙げられる。前記アルケニルの炭素数は、特に制限されず、例えば、前記アルキルと同様であり、好ましくは2~12または2~8である。前記アルケニルは、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、3-メチル-2-ブテニル等が挙げられる。
【0022】
本発明において、「アルキニル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキニルを含む。前記アルキニルは、前記アルキルにおいて、1個または複数の三重結合を有するもの等が挙げられる。前記アルキニルの炭素数は、特に制限されず、例えば、前記アルキルと同様であり、好ましくは2~12または2~8である。前記アルキニルは、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等が挙げられる。前記アルキニルは、例えば、さらに、1個または複数の二重結合を有してもよい。
【0023】
本発明において、「芳香環」は、例えば、アリール、ヘテロアリールおよびアリールアルキルを含む。また、「環状構造」は、例えば、前記芳香環、シクロアルキル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、シクロアルケニルを含む。
【0024】
本発明において、「アリール」は、例えば、単環芳香族炭化水素基および多環芳香族炭化水素基を含む。前記単環芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル等が挙げられる。前記多環芳香族炭化水素基は、例えば、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル等が挙げられる。好ましくは、例えば、フェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチル等のナフチル等が挙げられる。
【0025】
本発明において、「ヘテロアリール」は、例えば、単環芳香族複素環式基および縮合芳香族複素環式基を含む。前記ヘテロアリールは、例えば、フリル(例:2-フリル)、チエニル(例:2-チエニル)、ピロリル(例:1-ピロリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,4-トリアゾール-1-イル)、テトラゾリル(例:1-テトラゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル)、イソキサゾリル(例:3-イソキサゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル)、ピリジル(例:2-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル)、フラザニル(例:3-フラザニル)、ピラジニル(例:2-ピラジニル)、オキサジアゾリル(例:1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)、ベンゾフリル(例:2-ベンゾ[b]フリル)、ベンゾチエニル(例:2-ベンゾ[b]チエニル)、ベンズイミダゾリル(例:1-ベンゾイミダゾリル)、ジベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノキサリル(例:2-キノキサリニル)、シンノリニル(例:3-シンノリニル)、キナゾリル(例:2-キナゾリニル)、キノリル(例:2-キノリル)、フタラジニル(例:1-フタラジニル)、イソキノリル(例:1-イソキノリル)、プリル、プテリジニル(例:2-プテリジニル)、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル(例:1-アクリジニル)、インドリル(例:1-インドリル)、イソインドリル、フェナジニル(例:1-フェナジニル)またはフェノチアジニル(例:1-フェノチアジニル)等が挙げられる。
【0026】
本発明において、「シクロアルキル」は、例えば、環状飽和炭化水素基であり、炭素数は、特に限定されないが、例えば、3~24または3~15である。前記シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基等が挙げられ、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、橋かけ環式炭化水素基等が挙げられる。
【0027】
本発明において、「橋かけ環式炭化水素基」は、例えば、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルおよびビシクロ[3.2.1]オクチル、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル、ビシクロ[3.3.1]ノナン、1-アダマンチル、2-アダマンチル等が挙げられる。
【0028】
本発明において、「スピロ炭化水素基」は、例えば、スピロ[3.4]オクチル等が挙げられる。
【0029】
本発明において、「シクロアルケニル」は、例えば、環状の不飽和脂肪族炭化水素基を含み、炭素数は、例えば、3~24または3~7である。前記基は、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等が挙げられ、好ましくは、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等である。前記シクロアルケニルは、例えば、環中に不飽和結合を有する橋かけ環式炭化水素基およびスピロ炭化水素基も含む。
【0030】
本発明において、「アリールアルキル」は、例えば、ベンジル、2-フェネチル、およびナフタレニルメチル等が挙げられ、「シクロアルキルアルキル」は、例えば、シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル等が挙げられ、「ヒドロキシアルキル」は、例えば、例えば、ヒドロキシメチルおよび2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0031】
また、本発明において、「置換基」または「さらなる置換基」としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ、ハロゲン、ハロゲン化アルキル(例:CF、CHCF、CHCCl)、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アルキル(例:メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル)、アルケニル(例:ビニル)、アルキニル(例:エチニル)、シクロアルキル(例:シクロプロピル、アダマンチル)、シクロアルキルアルキル(例:シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチル)、シクロアルケニル(例:シクロプロペニル)、アリール(例:フェニル、ナフチル)、アリールアルキル(例:ベンジル、フェネチル)、ヘテロアリール(例:ピリジル、フリル)、ヘテロアリールアルキル(例:ピリジルメチル)、ヘテロシクリル(例:ピペリジル)、ヘテロシクリルアルキル(例:モルホリルメチル)、アルコキシ(例:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、ペルフルオロアルキル(例:CF),ハロゲン化アルコキシ(例:OCF)、アシル、アルケニルオキシ(例:ビニルオキシ、アリルオキシ)、アリールオキシ(例:フェニルオキシ)、アルキルオキシカルボニル(例:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル)、アリールアルキルオキシ(例:ベンジルオキシ)、アミノ[アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ)、アシルアミノ(例:アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アリールアルキルアミノ(例:ベンジルアミノ、トリチルアミノ)、ヒドロキシアミノ)、アルキルアミノアルキル(例:ジエチルアミノメチル)、スルファモイル、オキソ等を含む。
【0032】
本発明において、「アルコキシ」は、例えば、前記アルキル-O-基を含み、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、およびn-ブトキシ等が挙げられ、「アルコキシアルキル」は、例えば、メトキシメチル等が挙げられ、「アミノアルキル」は、例えば、2-アミノエチル等が挙げられる。
【0033】
本発明において、「アシル」は、特に限定されないが、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、エトキシカルボニル、等が挙げられる。アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)においても同様である。また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアルカノイル基(アシル基)とはホルミル基を指すものとする。
【0034】
本発明において、「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0035】
本発明において、「ペルフルオロアルキル」は、特に限定されないが、例えば、炭素数1~30の直鎖または分枝アルキル基から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられる。前記「ペルフルオロアルキル」は、より具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル等の基から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられる。ペルフルオロアルキル基を構造中に含む基(ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等)においても同様である。
【0036】
また、本発明において、前述した各種基が、ヘテロ環であるか、またはヘテロ環を含む場合は、「炭素数」には、前記ヘテロ環を構成するヘテロ原子数も含むものとする。
【0037】
また、本発明において、置換基等に異性体が存在する場合は、特に断らない限り、どの異性体でもよい。例えば、「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でもよく、「プロピル基」という場合は、n-プロピル基でもイソプロピル基でもよい。
【0038】
また、本発明の粘着シートは、前述のとおり、基材の少なくとも片面に粘着層が形成された粘着シートであって、前記粘着層が、前記本発明の粘着剤を用いて形成された粘着層であることを特徴とする。本発明の粘着シートは、画像表示装置の画像表示面に貼付することにより、前記画像表示面の保護シートとして用いられる粘着シートであることが好ましい。
【0039】
本発明による粘着シートの製造方法は、前述のとおり、前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、前記本発明の粘着剤を塗工する塗工工程と、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する加熱工程とを含む、前記本発明の粘着シートの製造方法である。前記塗工工程において、本発明の粘着剤がプレポリマーを含み架橋剤を含まない場合は、本発明の粘着剤を、前記架橋剤とともに塗工することが好ましい。
【0040】
また、本発明の画像表示装置は、前述のとおり、画像表示面に、前記画像表示装置の保護シートが貼付された画像表示装置であって、前記保護シートが、前記本発明の粘着シートであることを特徴とする。
【0041】
以下、本発明の実施形態について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0042】
[1.粘着剤]
前述のとおり、本発明の粘着剤は、ポリウレタンのプレポリマー(A)(以下「成分(A)」という場合がある。)と、有機酸(B-1)、酸性リン酸エステル系化合物(B-2)、および有機酸無水物(B-3)からなる群から選択される少なくとも一つ(以下「成分(B)」という場合がある。)を含み、前記酸性リン酸エステル系化合物(B-2)は、下記化学式(I)、(II)、(III)で表される酸性リン酸エステル系化合物からなる群から選択される少なくとも一つであり、前記有機酸(B-1)は、前記酸性リン酸エステル系化合物(B-2)以外の有機酸であり、前記ポリウレタンのプレポリマー(A)は、ポリオールおよびイソシアネートから合成されるプレポリマーであることを特徴とする。
【0043】
[1-1.ポリウレタンのプレポリマー(A)]
ポリウレタンのプレポリマー(A)は、前述のとおり、ポリオールおよびイソシアネートから合成されるプレポリマーである。前記イソシアネートは、例えば、ポリイソシアネートであってもよい。
【0044】
前記ポリウレタンのプレポリマー(A)は、例えば、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオールであってもよい。なお、本発明において、「ポリウレタンポリオール」は、ポリウレタンのプレポリマーであって、水酸基を複数有するプレポリマーをいう。また、本発明において「プレポリマー」は、重合または架橋が途中まで進行した状態のポリマーであって、さらに重合または架橋を進行させることが可能なポリマーをいう。本発明において「ポリウレタンのプレポリマー」は、重合または架橋が途中まで進行した状態のポリウレタンであって、さらに重合または架橋を進行させたポリウレタンに変換可能なポリウレタンをいう。前記「ポリウレタンのプレポリマー」は、例えば、水酸基またはイソシアネート基を複数有することにより、さらに重合または架橋を進行させたポリウレタンに変換可能である。また、本発明において「ポリウレタンポリイソシアネート」は、特に断らない限り、イソシアネート基を複数(例えば、分子の両末端に)有することにより、さらに重合または架橋を進行させたポリウレタンに変換可能な、ポリウレタンのプレポリマーをいう。また、本発明において、「ポリオール」は、1分子中に、水酸基(好ましくは、アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基の少なくとも一方)を、複数(2または3以上)有する有機化合物をいう。
【0045】
前記ポリウレタンポリオールの含有率は、特に限定されないが、本発明の粘着剤の全質量に対し、例えば、20~80質量%、30~70質量%、または40~60質量%であってもよい。
【0046】
または、本発明の粘着剤において、ポリウレタンのプレポリマー(A)は、イソシアネート基を複数有するポリウレタンポリイソシアネートであってもよい。なお、本発明において、「ポリイソシアネート」は、1分子中に、イソシアネート基(イソシアナト基ともいう)すなわち(-N=C=O)を複数(2または3以上)有する有機化合物(多官能イソシアネート)をいう。前記イソシアネート基を複数有するポリウレタンポリイソシアネートの含有率は、特に限定されないが、本発明の粘着剤の全質量に対し、好ましくは20~80質量%、より好ましくは40~60質量%である。なお、前記ポリオールおよびポリイソシアネートの種類等は、後述の「2.粘着剤の製造方法」において、本発明の粘着剤の製造方法の例示とともに述べる。
【0047】
[1-2.有機酸(B-1)、酸性リン酸エステル系化合物(B-2)、および有機酸無水物(B-3)]
本発明の粘着剤は、前述のとおり、成分(B)として、有機酸(B-1)、酸性リン酸エステル系化合物(B-2)、および有機酸無水物(B-3)からなる群から選択される少なくとも一つを含む。本発明の粘着剤において、前記有機酸(B-1)は、前述のとおり、例えば、カルボン酸およびスルホン酸の少なくとも一方であってもよいし、両方を含んでいてもよい。
【0048】
前記有機酸(B-1)において、前記カルボン酸としては、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸等が挙げられる。また、前記スルホン酸としては、芳香族スルホン酸、脂肪族スルホン酸等が挙げられる。本発明の粘着剤の塗布装置または貼付対象物の腐食を抑制または防止する観点からは、成分(B)(酸成分)の酸性が強すぎないことが好ましい。この観点から、前記有機酸(B-1)は、芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸の少なくとも一方であることが好ましい。前記芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、後述の化学式(IV)および(V)で表される芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸が挙げられる。
【0049】
前記有機酸(B-1)において、前記脂肪族カルボン酸および前記脂肪族スルホン酸としては、例えば、脂肪族飽和または不飽和炭化水素基にカルボキシ基またはスルホ基が結合した脂肪族カルボン酸または脂肪族スルホン酸が挙げられる。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、直鎖状でも分枝状でもよく、環状構造を含んでいても含んでいなくてもよい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、橋かけ炭化水素基、スピロ炭化水素基、シクロアルケニル基等であってもよい。本発明の粘着剤の塗布装置または貼付対象物の腐食を抑制または防止する観点から、前記脂肪族カルボン酸および前記脂肪族スルホン酸の酸性が強すぎないことが好ましい。この観点から、前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基の炭素数が、例えば、3以上、6以上、または8以上であってもよい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基の炭素数の上限値は、18以下、14以下、12以下であることが好ましい。前記脂肪族カルボン酸および前記脂肪族スルホン酸としては、例えば、プロピオン酸、n-ヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、n-ノナン酸、n-ノナデカン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸などの一塩基酸、ヘキサン二酸、オクタン二酸、デカン二酸などの二塩基酸、1-プロパンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。
【0050】
前記有機酸(B-1)は、粘着剤製造時の溶媒(例えばトルエン等)への溶解度の観点から、芳香環を含むことが好ましく、例えば、前記芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸の少なくとも一方であることが好ましい。前記芳香族カルボン酸および、芳香族スルホン酸は、例えば、下記化学式(IV)で表すことができる。
【0051】
【化IV】
前記化学式(IV)中、
Arは、芳香環(アリール)または複素芳香環(ヘテロアリール)であり、単環でも縮合環でもよく、
100は、カルボキシ基、またはスルホ基であり、1でも複数でもよく、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
Arは、R100以外の任意の置換基を1または複数有していてもよく、有していなくてもよい。
【0052】
前記化学式(IV)中、Arは、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環等が挙げられる。また、R100以外の任意の置換基としては、例えば、飽和または不飽和炭化水素基が挙げられる。前記飽和または不飽和炭化水素基としては、例えば、脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、直鎖状でも分枝状でもよく、環状構造を含んでいても含んでいなくてもよい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、炭素数1~18であってもよい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、橋かけ炭化水素基、スピロ炭化水素基、シクロアルケニル基等であってもよい。
【0053】
また、前記有機酸(B-1)は、例えば、下記化学式(V)で表すことができる。
【0054】
【化V】
前記化学式(V)中、R100は、前記化学式(IV)と同じであり、
200は、脂肪族飽和または不飽和炭化水素基であり、1でも複数でもよく、同一でも異なっていてもよい。前記飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、前記化学式(IV)と同様である。
【0055】
前記化学式(IV)および(V)において、本発明の粘着剤の塗布装置または貼付対象物の腐食を抑制または防止する観点から、前記化学式(IV)または(V)で表される芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸の酸性が強すぎないことが好ましい。この観点から、および、前記化学式(IV)または(V)で表される芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸の溶媒(例えばトルエン等)に対する溶解度の観点から、前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基の炭素数が1以上、2以上、4以上であることが好ましい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基の炭素数の上限値は、18以下、14以下であることが好ましい。前記有機酸(B-1)は、前記化学式(IV)、(V)で表される有機酸を併用することができる。
【0056】
前記化学式(IV)および(V)において、前記芳香族カルボン酸としては、例えば、直鎖または分枝アルキルベンゼンカルボン酸(アルキル安息香酸)等が挙げられ、例えば、アルキル炭素数10~14の直鎖または分枝アルキルベンゼンカルボン酸(アルキル安息香酸)等が挙げられる。前記芳香族カルボン酸としては、具体的には、例えば、安息香酸、フタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、前記芳香族スルホン酸としては、例えば、直鎖または分枝アルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられ、例えば、アルキル炭素数10~14の直鎖または分枝アルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0057】
前記酸性リン酸エステル系化合物(B-2)は、前述のとおり、前記化学式(I)、(II)、(III)で表される酸性リン酸エステル系化合物からなる群から選択される少なくとも一つである。前記酸性リン酸エステル系化合物(B-2)は、前述のとおり、前記化学式(I)、(II)、(III)で表される酸性リン酸エステル系化合物を併用することができる。
【0058】
前記化学式(I)、(II)および(III)中、R、R、RおよびRは、前述のとおり、それぞれ、水素原子、炭化水素基またはアリール基である。前記炭化水素基としては、例えば、飽和または不飽和炭化水素基が挙げられる。前記飽和または不飽和炭化水素基としては、例えば、脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、直鎖状でも分枝状でもよく、環状構造を含んでいても含んでいなくてもよい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、炭素数4~18、4~14、4~10または4~7であってもよい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、橋かけ炭化水素基、スピロ炭化水素基、シクロアルケニル基等であってもよい。前記アリール基としては、例えば、前述の各アリール基が挙げられる。
【0059】
また、前記化学式(I)、(II)および(III)中、前述のとおり、AOはアルキレンオキシド基であり、各AOは同一でも異なっていてもよい。AOとしては、例えば、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基等が挙げられる。また、前述のとおり、nは1以上の整数を表し、各nは同一でも異なっていてもよい。nは、例えば、1~10、または1~6であってもよい。
【0060】
前記有機酸無水物(B-3)は、特に限定されないが、例えば、芳香族カルボン酸無水物、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族スルホン酸無水物、脂肪族スルホン酸無水物等が挙げられる。前記芳香族カルボン酸無水物、前記脂肪族カルボン酸無水物、芳香族スルホン酸無水物および脂肪族スルホン酸無水物において、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸、芳香族スルホン酸および脂肪族スルホン酸は、例えば、前記有機酸(B-1)で例示した脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸および脂肪族スルホン酸と同様でもよい。
【0061】
前記有機酸無水物(B-3)は、粘着剤製造時の溶媒(例えばトルエン等)への溶解度の観点から、芳香環を含むことが好ましく、例えば、前記芳香族カルボン酸無水物および前記芳香族スルホン酸無水物の少なくとも一方であることが好ましい。前記芳香族カルボン酸無水物および前記芳香族スルホン酸無水物は、例えば、下記化学式(VI)または(VII)で表すことができる。
【0062】
【化VI】
【0063】
【化VII】
【0064】
前記化学式(VI)中、
1000は、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)であり、
Arは、芳香環(アリール)または複素芳香環(ヘテロアリール)であり、単環でも縮合環でもよく、各Arは同一でも異なっていてもよく、
各Arは、任意の置換基を1または複数有していてもよく、有していなくてもよく、
各Arは、さらに、R1000以外の1または複数のカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)で連結されていてもよいし、連結されていなくてもよい。
【0065】
前記化学式(VII)中、
1000は、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)であり、
Arは、芳香環(アリール)または複素芳香環(ヘテロアリール)であり、単環でも縮合環でもよく、
Arは、任意の置換基を1または複数有していてもよく、有していなくてもよく、
Arは、さらに、R1000以外の1または複数のカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0066】
前記化学式(VI)および(VII)中、Arは、前記有機酸(B-1)で例示した前記化学式(IV)と同様に、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環等が挙げられる。また、前記任意の置換基としては、前記有機酸(B-1)で例示した前記化学式(IV)と同様に、例えば、飽和または不飽和炭化水素基が挙げられる。前記飽和または不飽和炭化水素基としては、例えば、脂肪族飽和または不飽和炭化水素基である。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、直鎖状でも分枝状でもよく、環状構造を含んでいても含んでいなくてもよい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、炭素数1~18であってもよい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、橋かけ炭化水素基、スピロ炭化水素基、シクロアルケニル基等であってもよい。
【0067】
なお、前記化学式(VI)において、R1000がカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)である場合は、下記化学式(VI-1)で表され、R1000がスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)である場合は、下記化学式(VI-2)で表される。下記化学式(VI-1)および(VI-2)において、R1000が下記のとおりカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)である以外は、前記化学式(VI)と同じである。
【0068】
【化VI-1】
【0069】
【化VI-2】
【0070】
また、前記化学式(VII)において、R1000がカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)である場合は、下記化学式(VII-1)で表され、R1000がスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)である場合は、下記化学式(VII-2)で表される。下記化学式(VII-1)および(VII-2)において、R1000が下記のとおりカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)である以外は、前記化学式(VII)と同じである。
【0071】
【化VII-1】
【0072】
【化VII-2】
【0073】
また、前記有機酸無水物(B-3)において、前記芳香族カルボン酸無水物および芳香族スルホン酸無水物は、例えば、下記化学式(VIII)または(IX)で表すことができる。
【0074】
【化VIII】
【0075】
【化IX】
【0076】
前記化学式(VIII)中、
1000は、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)であり、
各R200は、脂肪族飽和または不飽和炭化水素基であり、各ベンゼン環に結合したR200は、それぞれ1でも複数でも存在しなくてもよく、各R200は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
各ベンゼン環は、さらに、R1000以外の1または複数のカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)で連結されていてもよいし、連結されていなくてもよい。
なお、各R200において、前記飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、前記化学式(IV)および(V)と同様である。
【0077】
前記化学式(IX)中、
1000は、カルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)であり、
200は、脂肪族飽和または不飽和炭化水素基であり、ベンゼン環に結合したR200は、1でも複数でも存在しなくてもよく、R200は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
ベンゼン環は、さらに、R1000以外の1または複数のカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、R200において、前記飽和または不飽和炭化水素基は、例えば、前記化学式(IV)および(V)と同様である。
【0078】
なお、前記化学式(VIII)において、R1000がカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)である場合は、下記化学式(VIII-1)で表され、R1000がスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)である場合は、下記化学式(VIII-2)で表される。下記化学式(VIII-1)および(VIII-2)において、R1000が下記のとおりカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)である以外は、前記化学式(VIII)と同じである。
【0079】
【化VIII-1】
【0080】
【化VIII-2】
【0081】
また、前記化学式(IX)において、R1000がカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)である場合は、下記化学式(IX-1)で表され、R1000がスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)である場合は、下記化学式(IX-2)で表される。下記化学式(IX-1)および(IX-2)において、R1000が下記のとおりカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)またはスルホン酸無水物基(-SO-O-SO-)である以外は、前記化学式(IX)と同じである。
【0082】
【化IX-1】
【0083】
【化IX-2】
【0084】
前記化学式(VI)~(IX)において、本発明の粘着剤の塗布装置または貼付対象物の腐食を抑制または防止する観点から、前記化学式(VI)~(IX)で表される芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸の酸性が強すぎないことが好ましい。この観点から、および、前記化学式(VI)~(IX)で表される芳香族カルボン酸無水物または芳香族スルホン酸無水物の溶媒(例えばトルエン等)に対する溶解度の観点から、前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基の炭素数が1以上、2以上、4以上であることが好ましい。前記脂肪族飽和または不飽和炭化水素基の炭素数の上限値は、18以下、14以下であることが好ましい。
【0085】
前記化学式(VI)~(IX)において、前記芳香族カルボン酸としては、例えば、直鎖または分枝アルキルベンゼンカルボン酸(アルキル安息香酸)等が挙げられ、例えば、アルキル炭素数10~14の直鎖または分枝アルキルベンゼンカルボン酸(アルキル安息香酸)等が挙げられる。また、前記芳香族カルボン酸無水物としては、具体的には、例えば、無水安息香酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0086】
前述のとおり、本発明の粘着剤の塗布装置または貼付対象物の腐食を抑制または防止する観点からは、成分(B)(酸成分)の酸性が強すぎないことが好ましい。この観点から、本発明において、成分(B)(酸成分)としては、前述のとおり、有機酸(B-1)、酸性リン酸エステル系化合物(B-2)、および有機酸無水物(B-3)からなる群から選択される少なくとも一つを用いるが、酸性リン酸エステル系化合物(B-2)または有機酸無水物(B-3)であることがより好ましい。また、本発明の粘着剤の塗布装置または貼付対象物の腐食を抑制または防止する観点から、有機酸無水物(B-3)はカルボン酸無水物が好ましい。
【0087】
成分(B)(酸成分)の含有率は、特に限定されないが、本発明の粘着剤の全質量に対し、例えば、0.3~6質量%、0.6~6質量%、または3~6質量%であってもよい。また、前記成分(B)(酸成分)の含有率は、例えば、ポリウレタンのプレポリマー(A)の全質量に対し、例えば、0.5~10質量%、1~10質量%、または5~10質量%であってもよい。高温高湿下での耐被着体汚染性の観点からは、成分(B)(酸成分)の含有率が少なすぎないことが好ましい。また、再剥離性の観点、および、塗布装置または貼付対象物の腐食を抑制または防止する観点からは、成分(B)(酸成分)の含有率が多すぎないことが好ましい。
【0088】
[1-3.架橋剤(C)]
本発明の粘着剤は、前述のとおり、さらに、架橋剤(C)を含んでいてもよい。架橋剤(C)は、特に限定されないが、ポリウレタンのプレポリマー(A)がポリウレタンポリオールである場合は、架橋剤(C)の一部または全部が、ポリイソシアネートであることが好ましい。なお、本発明において、「ポリイソシアネート」は、前述のとおり、1分子中に、イソシアネート基(イソシアナト基ともいう)すなわち(-N=C=O)を複数(2または3以上)有する有機化合物(多官能イソシアネート)をいう。
【0089】
本発明の粘着剤が、架橋剤(C)として前記ポリイソシアネートを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、例えば、前記ポリウレタンポリオールの水酸基モル量に対して、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基が0.5~5倍または1~4倍のモル量であってもよい。
【0090】
架橋剤(C)がポリイソシアネート(多官能イソシアネート)を含む場合、前記ポリイソシアネートとしては、特に限定されない。前記ポリイソシアネートは、例えば、後述の「2.粘着剤の製造方法」において例示する、ポリウレタンのプレポリマー(A)の合成に用いるポリイソシアネートと同様でもよく、また、例えば、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する三量体等でもよく、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0091】
または、本発明の粘着剤において、ポリウレタンのプレポリマー(A)は、前述のとおり、イソシアネート基を複数有するポリウレタンポリイソシアネートであってもよい。この場合において、前記架橋剤(C)の一部または全部が、ポリオールであることが好ましい。本発明の粘着剤が、架橋剤(C)として前記ポリオールを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、前記ポリウレタンポリイソシアネートのイソシアネート基のモル量に対して、前記ポリオールの水酸基が0.5~5倍または1~4倍のモル量であってもよい。
【0092】
架橋剤(C)がポリオールを含む場合、前記ポリオールとしては、特に限定されない。前記ポリオールは、例えば、後述の「2.粘着剤の製造方法」において例示する、ポリウレタンのプレポリマー(A)の合成に用いるポリオールと同様でもよく、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0093】
[1-4.他の成分]
本発明の粘着剤は、前述のとおり、前記成分(A)および(B)を含む。前記成分(C)(架橋剤(C))は、前述のとおり、含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、本発明の粘着剤は、前記成分(A)~(C)以外の他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、本発明の粘着剤は、前記他の成分として、さらに、溶媒、酸化防止剤、架橋防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、光安定剤、帯電防止剤等を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。それらの種類等は、特に限定されないが、例えば、一般的な粘着剤と同様またはそれに準じてもよい。前記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。前記消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、鉱物油系等の消泡剤が挙げられる。前記光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤が挙げられる。前記帯電防止剤としては、無機塩類、有機塩類等のイオン性化合物、ノニオン性界面活性剤等の非イオン性化合物が挙げられる。前記溶媒、前記酸化防止剤および前記架橋防止剤については、特に限定されないが、例えば、後述の「2.粘着剤の製造方法」において、本発明の粘着剤の製造方法の例示とともに説明するとおりである。
【0094】
前記他の成分としては、例えば、カルボン酸エステル等を含んでいてもよい。前記カルボン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、特開2011-190420号公報、特開2015-151429号公報、特開2016-186029号公報に記載のカルボン酸エステル等であってもよい。前記カルボン酸エステルは、例えば、後述の実施例におけるカルボン酸エステル等であってもよい。
【0095】
[2.粘着剤の製造方法]
本発明の粘着剤の製造方法は、前記成分(A)および(B)を用いること以外は特に限定されず、例えば、一般的な粘着剤の製造方法を参考にしてもよく、例えば、前記特許文献1等を参考にしてもよい。以下、主に、ポリウレタンのプレポリマー(A)が、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオール(ポリウレタンのプレポリマー)である場合の製造方法について、例を挙げて説明する。
【0096】
まず、反応容器に、ポリオール、ポリイソシアネート、溶媒、および、必要に応じ触媒を入れ、加熱撹拌しながら反応を行う。前記ポリオールの使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば20~80質量%、または40~60質量%である。前記ポリイソシアネートの使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば0.5~10質量%、または1~5質量%である。前記溶媒の使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば10~50質量%、または20~40質量%である。前記触媒は、使用しなくてもよいが、反応のスムーズな進行の観点から、使用することが好ましい。前記触媒を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば0.001~0.1質量%である。前記反応の反応温度は、特に限定されないが、例えば30~80℃、または40~60℃である。前記反応の反応時間は、特に限定されないが、例えば0.5~15hr、0.5~4hr、または1~3hrである。このようにして、ポリウレタンポリオール(ポリウレタンのプレポリマー(A))含有組成物を合成できる。
【0097】
なお、前記ポリウレタンポリオール含有組成物の合成においては、例えば、(1)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒、ポリイソシアネートを全量フラスコに仕込む方法、および、(2)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒をフラスコに仕込んでポリイソシアネ-トを滴下して添加する方法が可能である。(1)の方が簡便であるが、(2)の方が反応を制御しやすいため、必要に応じて使い分けることが可能である。
【0098】
さらに、合成した前記ポリウレタンポリオール含有組成物に、成分(B)を加え、均一になるまで撹拌する。このとき、必要に応じ、成分(C)(架橋剤(C))を加えてもよい。また、必要に応じ、成分(A)~(C)以外の他の成分を加えてもよい。前記他の成分は、例えば、溶媒を含んでいてもよく、また、前述のように、酸化防止剤、架橋防止剤、カルボン酸エステル等を含んでいてもよい。このようにして、本発明の粘着剤を得ることができる。
【0099】
架橋剤(C)は、例えば、ポリイソシアネート(多官能イソシアネート)を含むことが好ましい。前記ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、以下において例示する、ポリウレタンポリオール(ポリウレタンのプレポリマー(A))含有組成物の合成に用いるポリイソシアネートと同様でもよく、また、例えば、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する三量体等でもよく、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。架橋剤(C)において、前記ポリイソシアネートの使用量は、特に限定されないが、例えば、前記ポリウレタンポリオールの水酸基のモル量に対して、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基が0.5~5倍または1~4倍のモル量、または前記ポリウレタンポリイソシアネートのイソシアネート基のモル量に対して、前記ポリオールの水酸基が0.5~5倍または1~4倍のモル量が好ましい。
【0100】
前記溶媒は、使用しなくてもよいが、本発明の粘着剤を構成する各成分のスムーズな混合の観点から、使用することが好ましい。前記触媒を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば0.001~0.1質量%、または0.01~0.05質量%である。前記酸化防止剤は、使用しなくてもよいが、使用することが好ましい。前記酸化防止剤を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば0.05~1質量%、または0.1~0.6質量%である。前記脂肪酸エステルを使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば5~50質量%、または10~30質量%である。
【0101】
以下、ポリウレタンポリオール(ポリウレタンのプレポリマー(A))含有組成物の合成について、さらに詳しく説明する。
【0102】
前記ポリオールは、特に限定されず、例えば、二官能(一分子中に水酸基を二個有する)でも三官能以上(一分子中に水酸基を三個以上有する)でもよいが、三官能以上であることが好ましく、三官能であることが特に好ましい。また、前記ポリオールは、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。前記ポリオールは、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールの一方または両方でもよい。
【0103】
前記ポリエステルポリオールとしては、特に限定されず、例えば、公知のポリエステルポリオールでもよい。前記ポリエステルポリオールの酸成分としては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールのグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールのポリオール成分としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。その他、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0104】
前記ポリエステルポリオールの分子量は、特に限定されず、低分子量から高分子量まで使用可能である。好ましくは数平均分子量が500~5,000のポリエステルポリオールを用いる。数平均分子量が500以上であれば、反応性が高過ぎてゲル化することを防止しやすい。また、数平均分子量が5,000以下であれば、反応性の低下、および、ポリウレタンポリオール自体の凝集力の低下を防止しやすい。前記ポリエステルポリオールは、使用しても使用しなくてもよいが、使用する場合の使用量は、例えば、前記ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中10~90モル%、または10~50モル%であってもよい。
【0105】
また、前記ポリエーテルポリオールは、特に限定されず、例えば、公知のポリエーテルポリオールであってもよい。具体的には、前記ポリエーテルポリオールは、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオールであってもよい。さらに具体的には、前記ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2以上のものであってもよい。前記ポリエーテルポリオールの分子量は特に限定されず、低分子量から高分子量まで使用可能である。例えば、数平均分子量が1,000~15,000のポリエーテルポリオールを用いてもよい。数平均分子量が1,000以上であれば、反応性が高過ぎてゲル化することを防止しやすい。また、分子量が15,000以下であれば、反応性の低下、および、ポリウレタンポリオール自体の凝集力の低下を防止しやすい。前記ポリエーテルポリオールは、使用しても使用しなくてもよいが、使用する場合の使用量は、例えば、前記ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中20~100モル%、または20~80モル%であってもよい。
【0106】
前記ポリエーテルポリオールは、必要に応じ、その一部を、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類に置き換えて併用してもよい。
【0107】
前述のとおり、前記ポリオールは、二官能(一分子中に水酸基を二個有する)のポリエーテルポリオールでもよいが、三官能以上(一分子中に水酸基を三個以上有する)であることが好ましい。特に、数平均分子量が1,000~15,000であり、かつ三官能以上のポリオールを一部もしくは全部用いることにより、更に粘着力と再剥離性のバランスがとりやすくなる。数平均分子量が1,000以上であれば、三官能以上のポリオールの反応性が高過ぎてゲル化することを防止しやすい。また、数平均分子量が15,000以下であれば、三官能以上のポリオールの反応性の低下、および、ポリウレタンポリオール自体の凝集力の低下を防止しやすい。例えば、数平均分子量2,500~3,500で三官能以上のポリオールを一部もしくは全部用いてもよい。
【0108】
前記ポリイソシアネート(有機ポリイソシアネート化合物)としては、特に限定されないが、例えば、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。また、ポリイソシアネートは、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0109】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0110】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0111】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0112】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0113】
また、一部上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する三量体等も併用することができる。
【0114】
前記ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が好ましい。
【0115】
前記触媒としては、特に限定されず、例えば、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0116】
前記3級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【0117】
前記有機金属系化合物としては、錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。前記錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。前記非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0118】
これらの触媒を使用する場合、例えば、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの2種類のポリオールが存在する系では、その反応性の相違により、単独の触媒の系ではゲル化したり、反応溶液が濁るという問題が生じやすい。そのような場合は、例えば、二種類以上の触媒を併用することにより、反応速度、触媒の選択性等が制御可能となり、これらの問題を解決することができる。その組み合わせとしては、例えば、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、錫系/錫系等が用いられるが、好ましくは錫系/錫系、更に好ましくはジブチル錫ジラウレートと2-エチルヘキサン酸錫の組み合わせである。その配合比は、特に限定されないが、例えば、質量で2-エチルヘキサン酸錫/ジブチル錫ジラウレートが1未満であり、例えば0.2~0.6であってもよい。配合比が1未満であれば、触媒活性のバランスによるゲル化を防止しやすい。これらの触媒使用量は、特に限定されないが、例えば、ポリオールと有機ポリイソシアネートの総量に対して0.01~1.0質量%または0.01~0.2質量%である。
【0119】
前記触媒を使用する場合、前記ポリウレタンポリオール合成の反応温度は、例えば、100℃未満、または40℃~60℃であってもよい。100℃未満であれば、反応速度および架橋構造の制御がしやすく、所定の分子量を有するポリウレタンポリオールが得やすい。
【0120】
また、前記触媒を使用しない(無触媒)場合、前記ポリウレタンポリオール合成の反応温度は、例えば、100℃以上、または110℃以上であってもよい。また、無触媒下では、前記ポリウレタンポリオール合成の反応時間は、例えば、3時間以上である。
【0121】
前記ポリウレタンポリオール合成に用いる前記溶媒は、特に限定されず、例えば、公知の溶媒を使用できる。前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等のエステル、トルエン、キシレン等の炭化水素等が挙げられる。ポリウレタンポリオールの溶解性、溶媒の沸点等の点から、トルエンが特に好ましい。
【0122】
また、前記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系、イオウ系等の酸化防止剤が挙げられる。
【0123】
また、本発明の粘着剤において、ポリウレタンのプレポリマー(A)が、イソシアネート基を複数有するポリウレタンポリイソシアネートを含む場合の製造方法については、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリイソシアネートの使用量を相対的に多くしてプレポリマーにイソシアネート基を残すこと以外は、前述の製造方法(本発明の粘着剤が、前記カルボン酸エステルと、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオール(ポリウレタンのプレポリマー)とを含む場合の製造方法)と同様にして行うことができる。この場合、前記ポリオールの使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば30~70質量%、または40~60質量%である。前記ポリイソシアネートの使用量は、特に限定されないが、製造後の粘着剤の質量に対し、例えば3~20質量%、または5~15質量%である。その他の成分(溶媒、触媒、酸化防止剤、架橋防止剤等)の使用量は、例えば、前述の製造方法と同様でもよい。また、この場合、架橋剤(C)は、前述のとおり、ポリオールを含むことが好ましい。架橋剤(C)における前記ポリオールの使用量は、特に限定されないが、例えば、前記ポリウレタンポリイソシアネートのイソシアネート基のモル量に対して、前記ポリオールの水酸基が0.5~5倍または1~4倍のモル量、または前記ポリウレタンポリイソシアネートのイソシアネート基のモル量に対して、前記ポリオールの水酸基が0.5~5倍または1~4倍のモル量が好ましい。
【0124】
なお、本発明において、ポリウレタンのプレポリマー(A)の分子量、分子量分散度等は、特に限定されない。ポリウレタンのプレポリマーの数平均分子量は、前記ポリウレタンのプレポリマーの製造原料として使用したポリイソシアネートおよびポリオール夫々の分子量、ならびに、前記ポリイソシアネートと前記ポリオールとの反応比(NCO/OH当量比)が定まれば理論的に算出できる(特開2017-025147号公報)。
【0125】
[3.粘着シートおよびその製造方法、用途等]
つぎに、本発明の粘着シートおよびその製造方法、用途等について、例を挙げて説明する。
【0126】
本発明の粘着シートは、前述のとおり、基材の少なくとも片面に粘着層が形成された粘着シートであって、前記粘着層が、前記本発明の粘着剤を用いて形成された粘着層であることを特徴とする。その製造方法は、特に限定されないが、例えば、前記本発明の製造方法(本発明による粘着シートの製造方法)により製造することができる。
【0127】
前記本発明の製造方法(本発明による粘着シートの製造方法)は、前述のとおり、前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、前記本発明の粘着剤を塗工する塗工工程と、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する加熱工程とを含む、前記本発明の粘着シートの製造方法である。以下、主に、ポリウレタンのプレポリマー(A)が、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオールを含む場合の、本発明による粘着シートの製造方法について、例を挙げて説明する。
【0128】
すなわち、まず、前記基材の、前記粘着層が形成される粘着層形成面に、前記本発明の粘着剤を塗工する(塗工工程)。前記基材は、特に限定されず、例えば、プラスチック、ポリウレタン、紙、金属箔などが挙げられるが、プラスチックが好ましい。前記プラスチックとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)等が挙げられる。
【0129】
前記基材の形状も特に限定されず、例えば、シート、フィルム、発泡体等が挙げられる。前記基材は、製造後の粘着シートの取扱いやすさ、保存のしやすさ等の観点から、例えば、巻き取り可能な長尺のテープ状であることが好ましい。
【0130】
また、前記基材は、例えば、必要に応じて、前記基材の粘着剤層形成面に、易接着処理を施した基材であってもよい。前記易接着処理は、特に限定されないが、具体的には、例えば、コロナ放電を処理する方法、アンカーコート剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0131】
本発明の粘着剤が、架橋剤(C)を含まない場合は、例えば、前記塗工工程に先立ち、架橋剤(C)を混合することが好ましい。架橋剤(C)がポリイソシアネートを含む場合、前記ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、前記「2.粘着剤の製造方法」で例示したポリイソシアネート、および、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する三量体等が挙げられ、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。架橋剤(C)がポリオールを含む場合、前記ポリオールとしては、特に限定されない。前記ポリオールは、例えば、前述の「2.粘着剤の製造方法」において例示する、ポリウレタンのプレポリマー(A)の合成に用いるポリオールと同様でもよく、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。また、架橋剤(C)の使用量については、例えば、前述のとおりである。さらに、前記本発明の粘着剤と前記架橋剤とを混合しやすくする目的、または前記基材に塗工しやすくする目的等で、前記塗工工程に先立ち、さらに溶媒を混合してもよい。前記溶媒の種類等は、特に限定されないが、例えば、前記「2.粘着剤の製造方法」で例示した溶媒と同様であり、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0132】
前記塗工工程における塗工方法は、特に限定されず、公知の方法でもよい。前記塗工方法としては、例えば、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等が挙げられる。
【0133】
また、前記塗工工程における前記粘着剤の塗工量(塗布量)は、特に限定されないが、製造される粘着シートにおける粘着層の厚みが、例えば、1~50μm、5~30μm、7~20μm、または10~15μmとなるようにする。
【0134】
さらに、前記塗工工程後、前記粘着層形成面上において前記粘着剤を加熱する(加熱工程)。なお、以下において、前記加熱工程を、後述する第2の加熱工程と区別するために「第1の加熱工程」ということがある。前記加熱工程(第1の加熱工程)における加熱温度は、特に限定されないが、例えば、60℃以上、60℃を超える温度、90℃以上、または90℃を超える温度であり、または100℃以上、または130℃以上である。前記加熱温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、150℃以下である。
【0135】
粘着シートの保存時、取扱い時等に、前記粘着層が前記基材の端からはみ出すことを防止するためには、前記加熱工程における加熱温度を、なるべく高くすることが好ましい。前記加熱温度をなるべく高くすることにより、例えば、前記本発明の粘着剤と前記架橋剤との架橋(硬化)反応が十分に進行しやすいため、前記はみ出しを防止できると推測される。ただし、このメカニズムは推測であって、本発明を何ら限定しない。
【0136】
前述のとおり、一般的な粘着剤では、粘着剤を基材に塗工した後の加熱温度が高すぎると、前記粘着層の、前記基材に対する密着性が低下するおそれがある。しかし、本発明の粘着剤によれば、高温で加熱しても、前記基材に対する密着性が良好であり、かつ、前述のとおり、前記基材に対するハジキおよびはみ出しを防止できるのである。
【0137】
また、前記加熱工程(第1の加熱工程)における加熱時間は、特に限定されないが、例えば、塗工した前記粘着剤の乾燥(溶媒の除去)が十分であり、かつ、前記基材が熱により損傷しない程度の時間が好ましい。具体的な前記加熱時間は、前記溶媒および前記基材の種類等にもよるが、例えば30~240秒、または60~180秒である。
【0138】
さらに、本発明による粘着シートの製造方法において、前記加熱工程(第1の加熱工程)後に、前記加熱工程よりも低い温度で加熱する第2の加熱工程を含むことが好ましい。前記第2の加熱工程は、行っても行わなくてもよいが、これを行うことにより、前記基材の端からの粘着層のはみ出しを、さらに効果的に防止できる。前記第2の加熱工程において起こる現象は不明であるが、例えば、粘着層の硬化(架橋)がさらに進行していると推測される。ただし、この推測は、本発明を何ら限定しない。前記第2の加熱工程における加熱温度は、特に限定されないが、例えば30~50℃、または35~45℃である。また、前記第2の加熱工程における加熱時間は、特に限定されないが、例えば24~120hr、または48~96hrである。
【0139】
本発明の粘着シートの用途は、特に限定されないが、前述のとおり、画像表示装置の画像表示面に貼付することにより、前記画像表示面の保護シートとして用いることが好ましい。また、この用途に用いる場合、例えば、前記基材が透明であることが、より好ましい。
【0140】
本発明の画像表示装置は、前述のとおり、画像表示面に、前記画像表示装置の保護シートが貼付された画像表示装置であって、前記保護シートが、前記本発明の粘着シートであることを特徴とする。前記画像表示装置としては、特に限定されないが、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピューター等が挙げられる。ただし、本発明の粘着シートの用途は、画像表示装置用に限定されず、例えば、自動車、建物等の窓ガラスの保護シートとしても用いることができる。また、本発明の粘着シートは、例えば、ガラスに限定されず、透明導電膜としてガラス基板上に加工されたITO(Indium Tin Oxide、酸化インジウムスズ)用の保護シートとしても用いることができる。さらに、本発明の粘着シートの用途は、これらに限定されず、例えば、一般的な粘着シート、粘着フィルム、粘着テープ等と同様の用途に広く使用可能である。また、本発明の粘着剤の用途も、特に本発明の粘着シートのみに限定されず、例えば、粘着剤と同様の用途に広く使用可能である。
【0141】
本発明の粘着シートの形態も特に限定されないが、例えば、保管時には、前記粘着層上にセパレータを貼付して前記粘着層を保護し、使用(例えば、画像表示装置等への貼付)直前に前記セパレータを剥離することが好ましい。また、例えば、本発明の粘着シートが、巻き取り可能な長尺のテープ状であり、巻き取って保管することが好ましい。本発明の粘着テープによれば、巻き取り時、および保管時等において、前記粘着層が粘着テープの端からはみ出すことを防止できる。
【実施例
【0142】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0143】
以下の実施例および比較例において使用した原料名(化合物名)と、その製品名(商品名)および製造元とを、下記表1に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
[合成例1]
以下の手順に従い、ポリウレタンのプレポリマー(A)を合成した。
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えたセパラブルフラスコに、グリセリンPO・EO、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエン、DBTDLを仕込み、撹拌しながら60℃で3時間反応を行った。内容物のNCO基を、赤外分光光度計(IR)を用いて測定したところ、NCO基の残留は確認できなかった。次に内容物を40℃以下まで冷却し、酸化防止剤と酢酸エチルを加えた。なお「グリセリンPO・EO」はグリセリンのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシド付加物を表す。「DBTDL」はジブチルスズジラウレートを表す。
【0146】
[合成例2]
合成例1のグリセリンPO・EOを、グリセリンPOとしたこと以外は合成例1と同様にしてポリウレタンのプレポリマー(A)を合成した。なお、「グリセリンPO」はグリセリンのプロピレンオキシド付加物を表す。
【0147】
[合成例3]
合成例1のグリセリンPO・EOとプルロニック型ポリオールを併用したこと以外は合成例1と同様にしてポリウレタンのプレポリマー(A)を合成した。なお、「プルロニック型ポリオール」はポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加物を表す。
【0148】
[合成例4]
合成例1のグリセリンPO・EOとポリプロピレングリコールを併用したこと以外は合成例1と同様にしてポリウレタンのプレポリマー(A)を合成した。
【0149】
[合成例5]
合成例1のヘキサメチレンジイソシアネートを4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとしたこと以外は合成例1と同様にしてポリウレタンのプレポリマー(A)を合成した。
【0150】
前記合成例1~5におけるポリウレタンのプレポリマー(A)の合成で用いた各成分の成分量(質量部)を、下記表2にまとめて示す。すなわち、合成例1~5においては、ポリウレタンのプレポリマー(A)を含む溶液を得た。
【0151】
【表2】
【0152】
[実施例1]
合成例1のポリウレタンのプレポリマー溶液100質量部(固形分として60質量部)に有機酸の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸 1質量部および架橋剤N 8質量部(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製ポリイソシアネート系架橋剤、固形分75質量%)を配合し、よく撹拌したものを実施例1の粘着剤(塗工液)とした。
【0153】
[実施例2]
ポリウレタンのポリオールを合成例2としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0154】
[実施例3]
ポリウレタンのポリオールを合成例3としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0155】
[実施例4]
ポリウレタンのポリオールを合成例4としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0156】
[実施例5]
ポリウレタンのポリオールを合成例5としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0157】
[実施例6]
有機酸を分枝アルキルベンゼンスルホン酸としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0158】
[実施例7]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物JP-508(城北化学工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0159】
[実施例8]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物AP-8(大八化学工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0160】
[実施例9]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物フォスファノールLP-700(東邦化学工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0161】
[実施例10]
化学式(1001)で表されるカルボン酸エステル(nは平均12)30質量部をさらに配合したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【化1001】
【0162】
[実施例11]
化学式(1010)で表されるカルボン酸エステル(nは平均10)30質量部をさらに配合したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【化1010】
【0163】
[実施例12]
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を0.6質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0164】
[実施例13]
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を3.0質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0165】
[実施例14]
フォスファノールLP-700(東邦化学工業株式会社製)を2.0質量部としたこと以外は実施例9と同様にして粘着剤を製造した。
【0166】
[実施例15]
フォスファノールLP-700(東邦化学工業株式会社製)を4.0質量部としたこと以外は実施例9と同様にして粘着剤を製造した。
【0167】
[実施例16]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物JP-504(城北化学工業株式会社製)を2質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0168】
[実施例17]
有機酸をプロピオン酸としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0169】
[実施例18]
有機酸をn-ノナデカン酸としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0170】
[実施例19]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物フォスファノールRB-410(東邦化学工業株式会社製)を2質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0171】
[実施例20]
有機酸に代えて有機酸無水物の無水安息香酸を4質量部用い、架橋剤Nを12質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0172】
[実施例21]
有機酸に代えて有機酸無水物の無水フタル酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0173】
[実施例22]
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を0.3質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0174】
[実施例23]
架橋剤Nを4質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0175】
[実施例24]
架橋剤Nを12質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0176】
[実施例25]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物AP-4(大八化学工業株式会社製)を2質量部用い、架橋剤Nを12質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0177】
[実施例26]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物AP-10(大八化学工業株式会社製)を2質量部用い、架橋剤Nを12質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0178】
[実施例27]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物フォスファノールML-220(東邦化学工業株式会社製)を2質量部用い、架橋剤Nを12質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0179】
[実施例28]
有機酸に代えて酸性リン酸エステル系化合物フォスファノールRS-710(東邦化学工業株式会社製)を2質量部用い、架橋剤Nを12質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0180】
[実施例29]
有機酸を2-エチルヘキサン酸 1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0181】
[実施例30]
有機酸を直鎖アルキルベンゼンスルホン酸0.6質量部、2-エチルヘキサン酸 1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0182】
[比較例1]
有機酸および酸性リン酸エステル系化合物を配合しないこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0183】
[比較例2]
化学式(1010)で表されるカルボン酸エステル(nは平均10)1質量部をさらに配合したこと以外は比較例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0184】
[比較例3]
化学式(1010)で表されるカルボン酸エステル(nは平均10)30質量部をさらに配合したこと以外は比較例1と同様にして粘着剤を製造した。
【0185】
以上のようにして製造した実施例および比較例の粘着剤について、下記の方法により、接着力(剥離力)、濡れ性、および耐被着体汚染性を評価した。それらの結果を、下記表2にまとめて示す。
【0186】
1.接着力
接着力の評価には、厚み50μmのPETフィルム上に塗工液(粘着剤)を塗工して製造した粘着シートを試料として用いた。23℃×湿度50%RHの環境下で、前記試料を25mm幅にカットし、被着体(ガラス板)に2kgローラー3往復の荷重で貼り合わせた。これを1時間養生後、前記試料の一端をオートグラフで180°方向に300mm/分の速度で引き剥がしたときの剥離力(N/25mm)を接着力とした。粘着シートとしての剥離力は再剥離性の観点からは、この接着力(剥離力)が過剰に大きくないことが好ましく、0.1N/25mm以下であることが好ましい。
【0187】
2.濡れ性
濡れ性の評価には、厚み50μmのPETフィルム上に塗工液を塗工して製造した粘着シートを試料として用いた。前記試料を5cm×10cmにカットし、45°傾けた状態で前記試料の幅5cmの一辺のみをガラス板に接触させた。その後、手を離し、前記試料全面がガラス板に接触する(ガラス板を濡らす)のに要した時間(秒)を濡れ性の評価とした。前記時間(秒)が短いほど、前記ガラス板に対する濡れ性(密着性)が高いことをになる。濡れ性が高いほど、被着体(本実施例では前記ガラス板)に対し、素早く貼り合わせることができる。濡れ性は10秒/10cm以下であることが好ましい。
【0188】
3.耐被着体汚染性
耐被着体汚染性の評価には、厚み50μmのPETフィルム上に塗工液を塗工して製造した粘着シートを試料として用いた。前記試料を4cm×10cmにカットし、ガラス板またはPETフィルムに粘着シートを貼り合わせた。これを80℃×湿度80%RHの恒温恒湿器内に72時間静置した後、さらに23℃×湿度50%RHの環境下に1時間静置した。次に粘着シートをガラス板またはPETフィルムから剥離し、粘着シートが貼り合わされていた部分のガラス表面の白色汚染の状態を目視評価し、これを耐被着体汚染性の評価結果とした。なお、白色汚染の状態は暗室で白色光を照射して評価した。

(耐被着体汚染性の評価結果)
◎:ガラス表面に白色汚染物は全くみられなかった。
○:ガラス表面の一部に点状の白色汚染物がみられた。
△:ガラス表面にまだら状に白色汚染物がみられた。
×:ガラス表面の全面に白色汚染物がみられた。
【0189】
【表3】
【0190】
【表4】
【0191】
表3、4に示したとおり、成分(A)~(C)を全て含む実施例1~30の粘着剤は、接着力(再剥離性)、濡れ性、および耐被着体汚染性の全てが良好であった。すなわち、実施例1~30の粘着剤は、再剥離性と、濡れ性と、耐被着体汚染性の全てを同時に満足することが可能であった。これに対し、成分(B)(酸成分)を含まない比較例1~3の粘着剤は、接着力(再剥離性)および濡れ性は良好であったものの、耐被着体汚染性が、実施例と比較して劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0192】
以上、説明したとおり、本発明によれば、再剥離性、濡れ性、高温高湿下での耐被着体汚染性を満足することが可能な粘着剤、粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置を提供することができる。本発明の粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法は、例えば、携帯電話、スマートフォン、自動車、建物等の窓ガラスの保護シートとして用いることができる。また、本発明は、これに限定されず、様々な用途において広範に使用可能であり、例えば、一般的な粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法が使用される分野に広く適用可能である。
【0193】
この出願は、2017年5月12日に出願された日本出願特願2017-095993を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。