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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】研磨組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220927BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20220927BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019535797
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2017068507
(87)【国際公開番号】W WO2018125905
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】62/440,649
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305037086
【氏名又は名称】フジフィルム・エレクトロニック・マテリアルズ・ユーエスエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FujiFilm Electronic Materials USA, Inc.
【住所又は居所原語表記】80 Circuit Drive, North Kingstown, Rhode Island 02852, USA
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 正
(72)【発明者】
【氏名】マクドノー、ジェームズ
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-117517(JP,A)
【文献】特開2006-310596(JP,A)
【文献】特表2005-529485(JP,A)
【文献】特開2009-260304(JP,A)
【文献】特開2011-151324(JP,A)
【文献】特開2010-171362(JP,A)
【文献】特開2008-205400(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)0.01wt%~10wt%の研磨剤と、
b)フォスフェートを含む0.001wt%~0.1wt%の第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む0.001wt%~0.1wt%の第2界面活性剤と、
d)0.1wt%~20wt%の錯化剤と、
e)0.001wt%~5wt%の少なくとも1つのアゾールと、
f)水と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記研磨剤は、アルミナ、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、被覆粒子、チタニア、セリア、ジルコニア、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フォスフェートは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェートから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記フォスフェートは、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルフォスフェートから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記フォスフェートは、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルフォスフェートから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記フォスフェートは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルフォスフェートから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アセチレン系化合物は、アセチレングリコールまたはそのエトキシル化付加物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アセチレン系化合物は、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシル化付加物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記錯化剤は、有機酸およびそれらの塩、アミノ酢酸、アミノ酸、カルボン酸、ポリアミン、アンモニア系化合物、四級アンモニウム化合物、無機酸、カルボキシル官能基およびアミノ官能基の両方を有する化合物、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、並びにそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記錯化剤は、アミノ酸から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記錯化剤は、グリシンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
)0.01wt%~1.0wt%の研磨剤と、
b)フォスフェートを含む0.001wt%~0.01wt%の第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む0.001wt%~0.01wt%の第2界面活性剤と、
)0.1wt%~2.0wt%の錯化剤と、
)0.001wt%~0.5wt%の少なくとも1つのアゾールと、
)0.1wt%~5wt%の酸化剤と、
g)水と、
を含む、組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物と、銅層と、を接触させることを含み、
前記組成物は、前記組成物のピーク除去率の少なくとも75パーセントの割合で前記銅層を除去する、
前記銅層を基板から除去する方法。
【請求項15】
(a)少なくとも1つの金属層を基板に設ける工程と、
(b)前記基板を請求項13に記載の組成物と接触させる工程と、
(c)前記組成物を用いて前記基板を化学機械研磨する工程と、
を含む、基板を研磨する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(開示の背景)
1.開示の分野
本開示は概して、研磨組成物、および本明細書に記載の組成物を使用して半導体基板を研磨する方法に関する。より具体的には、本開示は化学機械研磨組成物および半導体基板から銅層を除去する方法に関し、ここで組成物は界面活性剤の相乗的組み合わせを含む。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
化学機械研磨(CMP)として知られるプロセスは、研磨パッドおよびスラリーを使用して、半導体ウェハ上の異なる金属層または非金属層を研磨することを含む。銅は、半導体製造において相互接続を形成するために一般的に使用されている材料である。例えば、ダマシンプロセスによって銅インレイ構造が形成されると、インレイワイヤ間の銅およびバリアメタルを研磨および除去することによって、孤立銅ワイヤが作られる。銅およびバリア層CMPは、銅およびバリア層の研磨を含む。スループットを向上させるために材料の高い除去率でウェハを研磨しながら、全体的な欠陥の数が少ないなどの好ましいウェハ特性を依然として維持することが望ましい。
【0003】
典型的な銅CMPプロセスは3つのプロセス段階からなる。最初に、電気メッキされた銅の過剰積層(テクノロジノードに応じて最大2μmの厚さ)が比較的高い下向きの力で急速に研磨され、堆積トポグラフィが完全に平坦化されるまである程度の量の銅が残る(図1a参照)。スループットと平坦化効率、低欠陥が重要なニーズである。第1段階の間に完全に平坦化された後に残った銅の過剰積層は、バリア層上でとどまりながら、より低い下向きの力で研磨される(図1b)。
【0004】
上記第2研磨プロセスでは、ディッシングと呼ばれる、導電膜の上面の高さが下がる現象が発生する。これは、それぞれの第1の従来の研磨組成物が、銅含有金属を研磨する能力が高すぎるために、導電膜が過剰に除去されたためと考えられる。ディッシングは配線の断面積を減少させ、それによって配線抵抗の増大を引き起こす。ディッシングはまた半導体装置の表面の平坦性を損ない、半導体装置内に多層配線を形成することを困難にする。
【0005】
CMPプロセスの目的は、バリアメタルから全ての銅を除去することであるが、非常に低い欠陥および改善された表面粗さで、インレイ銅ワイヤ上で著しく低いディッシングを達成することである。この目的のために、ディッシング低減剤(DRの)として機能する化合物がCMP組成物に添加されてきた。このアプローチはある程度成功したが、ディッシング低減剤の濃度が高すぎると、ウェハ上に残留する銅残留物が問題となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、他の化学機械研磨(CMP)組成物と比較した場合に、低減したディッシング低減剤(DR)濃度であっても最小のディッシングを達成するCMP組成物を提供する。本開示の組成物はまた、組成物中の低濃度のDRを可能にする動的表面張力低下剤(DSTR)を含む。実際、本開示の組成物は、より高濃度のDRを有する他の組成物と同じディッシングの低減を達成するために、より少ない量のDRを可能にする。それにより、本開示の組成物を使用すると、高いDR濃度の有害な影響が回避または最小化される。
【0007】
いくつかの実施形態では、
a)研磨剤と、
b)フォスフェートを含む第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む第2界面活性剤と、
d)錯化剤と、
e)少なくとも1つのアゾールと、
f)任意にpH調整剤と、
f)水と、
を含む、組成物が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、
a)約0.01wt%~約10wt%の研磨剤と、
b)フォスフェートを含む約0.001wt%~約0.1wt%の第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む約0.001wt%~約0.1wt%の第2界面活性剤と、
d)約0.1wt%~約20wt%の錯化剤と、
e)約0.01wt%~約5wt%の少なくとも1つのアゾールと、
f)水と、
を含む、組成物が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、
a)約0.01wt%~約1.0wt%の研磨剤と、
b)フォスフェートを含む約0.001wt%~約0.01wt%の第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む約0.001wt%~約0.01wt%の第2界面活性剤と、
d)約0.1wt%~約2.0wt%の錯化剤と、
e)約0.01wt%~約0.5wt%の少なくとも1つのアゾールと、
f)約0.1wt%~約5wt%の酸化剤と、
g)水と、
を含む、組成物が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、基板から銅層を除去する方法が提供される。そのような方法は、例えば、組成物のピーク除去率の少なくとも75パーセントである割合で組成物が銅層を除去する本開示の組成物と銅層とを接触させることによって行われ得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、基板を研磨する方法が提供される。そのような方法は、例えば、
(a)少なくとも1つの金属層を基板に設ける工程と、
(b)基板を本開示の組成物と接触させる工程と、
(c)組成物を用いて前記基板を化学機械研磨する工程と、
によって行われ得る。
【0012】
本開示に記載の組成物は概して、水に不溶性の研磨剤を含有する。したがって、本開示の組成物はスラリーと呼ばれ得る。本開示の目的のために、用語「組成物」および「スラリー」ならびに「組成物」および「スラリー」は互換的に使用される。
【0013】
以下のリストは、本開示において使用されるいくつかの用語を定義する。
-錯化剤:金属イオンと可溶性または不溶性の錯体を形成する化合物
-酸化剤:金属原子をより高い原子価状態に酸化する化学物質
-腐食防止剤:腐食から金属表面を保護する化学物質
-研磨剤:ウェハ表面の機械的除去を助ける固体粒子
-正規化除去率:ピーク除去率、またはベースライン組成物の除去率など、特定の除去率と基準の除去率との比
-ピーク除去率:所与のスラリーについての最大除去率
-ピーク除去率に対する酸化剤濃度:ピーク除去率に対応する酸化剤濃度
【0014】
本開示において使用される「相乗効果」または「相乗的」という用語は、2つの成分が組み合わさって、それらの個々の特性のみに基づいて予想されるよりも大きな目的を達成する場合の効果を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a】公知技術による銅CMPプロセスの描写である。
図1b】公知技術による銅CMPプロセスの描写である。
図2a】本開示の組成物がより低いDR濃度で、より高いDR濃度を有する組成物と同じディッシングの低減を達成することを可能にすることを実証するディッシングデータを示す。
図2b】本開示の組成物がより低いDR濃度で、より高いDR濃度を有する組成物と同じディッシングの低減を達成することを可能にすることを実証するディッシングデータを示す。
図2c】本開示の組成物がより低いDR濃度で、より高いDR濃度を有する組成物と同じディッシングの低減を達成することを可能にすることを実証するディッシングデータを示す。
図2d】いくつかのサイズの欠陥についてのディッシング率におけるDSTR濃度の影響のプロットを示す。
図3a】有効性を維持しながらDR濃度を低下させることができるメカニズムの概略図およびレンダリングである。
図3b】有効性を維持しながらDR濃度を低下させることができるメカニズムの概略図およびレンダリングである。
図4a】TSV除去率(RR)データを示しており、極端なDSTR負荷でも除去率(RRの)が低下しないことを示している。
図4b】TSV除去率(RR)データを示しており、極端なDSTR負荷でも除去率(RRの)が低下しないことを示している。
図5a】銅ウェハ上のDSTRによる接触角の減少を示す接触角データを表す。
図5b】銅ウェハ上のDSTRによる接触角の減少を示す接触角データを表す。
図5c】銅ウェハ上のDSTRによる接触角の減少を示す接触角データを表す。
図6】本開示の組成物によって使用されるDSTRの消泡特性を示す。容易に明らかなように、例示的な配合物の発泡は、DSTRを含まない配合物と比較して半分に減少する。これは濃縮物の濾過性に関連がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本開示の詳細な説明)
本開示は、既知の化学機械研磨組成物と比較した場合に、低減したディッシング低減剤(DR)濃度であっても最小のディッシングを達成するCMP組成物を提供する。本開示の組成物は、組成物中の低濃度のDRを可能にする動的表面張力低下剤(DSTR)を含む。実際、本開示の組成物は、より高濃度のDRを有する既知の組成物と同じディッシングの低減を達成するために、より低濃度のDRを可能にする。それにより、本開示の組成物を使用すると、高いDR濃度の有害な影響が回避または最小化される。
【0017】
この意味で、本開示のDRとDSTRとは相乗的であり、DRとDSTRの組み合わせによって達成されるより低濃度のディッシングは、DRまたはDSTR単独から予想される、予想されるディッシング減少量に基づいて予想されるよりも優れている。本開示による、DRとDSTRとの組み合わせの改善された効果の発見は、より少ないDRの使用を可能にし、それは、上述のように、研磨後に基板表面上に残存する銅残留物がより少なくなることをもたらす。以下により詳細に記載されるように、本開示の組成物は、a)研磨剤と、b)フォスフェートを含む第1界面活性剤と、c)アセチレン系化合物を含む第2界面活性剤と、d)錯化剤と、e)少なくとも1つのアゾールと、f)水と、を含む。
【0018】
本開示の組成物での使用が考えられる研磨剤は、限定されないが、アルミナ、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、被覆粒子、チタニア、セリア、ジルコニア、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、研磨剤はコロイドシリカである。研磨剤は、組成物の総重量を基準にして0.05wt%~5wt%の量で、またはその間の任意の部分的な範囲で存在し得る。
【0019】
錯化剤は、金属イオンとの可溶性または不溶性錯体を形成するという所望の機能を果たす任意の化合物であり得る。一実施形態では、錯化剤が、有機酸およびそれらの塩、アミノ酢酸、グリシンまたはアラニンのようなアミノ酸、カルボン酸、ポリアミン、アンモニア系化合物、四級アンモニウム化合物、無機酸、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸などのカルボキシル官能基およびアミノ官能基の両方を有する化合物、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される。他の実施形態では、錯化剤はグリシンである。錯化剤は、それぞれ組成物の総重量に基づいて、約0.1wt%~約20wt%、もしくは0.1~約10wt%、もしくは0.1~約5wt%、もしくは0.1~約2wt%の量、または列挙された範囲の間の任意の部分的な範囲で存在し得る。
【0020】
本開示の組成物中での使用が考えられる腐食防止剤は、限定されないが、アゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾールおよびその誘導体、特定の界面活性剤、またはそれらの任意の混合物を含む。腐食防止剤は、それぞれ組成物の重量を基準にして、約100ppm~約10,000ppm、もしくは約100ppm~約2000ppmの量、または列挙された範囲の間の任意の部分的な範囲で存在し得る。
【0021】
本開示の組成物および方法において、第1界面活性剤は、ディッシング低減剤(DR)として機能し得る。いくつかの実施形態では、第1界面活性剤はフォスフェートである。他の実施形態では、第1界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルフォスフェート、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物である。DRに使用され得る他の化合物は、サルフェート、フォスフォネート、スルフォネート、アミン、およびカルボン酸基を有する化合物である。
【0022】
本開示の組成物および方法において、第2界面活性剤は、動的表面張力低下剤(DSTR)として機能し得る。いくつかの実施形態では、第2界面活性剤はアセチレン系化合物である。いくつかの実施形態では、第2界面活性剤はアセチレングリコールまたはそのエトキシル化付加物である。いくつかの実施形態では、第2界面活性剤は、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシル化付加物である。
【0023】
DRおよびDSTRの量は、いくつかの考慮事項に従って調整される必要がある。DSTRが少なすぎる量で存在するとき、それは本明細書に記載される表面張力を低下させる利点のいずれも提供しない。DSTRの量が多すぎると、それは組成物中に過度の発泡を生じさせる可能性があり、それは組成物を使用、希釈、および濾過できないほど困難にする。多くの気泡がフィルターの封鎖として機能し、液体が曲がりくねったフィルターファイバーネットワーク内において通過できる場所を減らす。液体がフィルターを通過するのが困難なため、圧力が上昇し得る。DRは、ディッシングを防ぐために基板上の銅材料を保護するので、多すぎるDRを使用すると、研磨後に基板上に残留する銅残留物をもたらし得る。ただし、使用するDRが少なすぎると、銅に十分な保護が提供されず、さらにディッシングが発生する。DRは、組成物の0.5wt%までの量または任意のその部分的な範囲の量で存在し得る。DSTRは、組成物の1wt%までの量または任意のその部分的な範囲の量で存在し得る。
【0024】
したがって、本開示による1つの特定の組成物では、該組成物は、
a)約0.1wt%~約10wt%の研磨剤と、
b)フォスフェートを含む約0.01wt%~約0.1wt%の第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む約0.01wt%~約0.1wt%の第2界面活性剤と、
d)約1wt%~約20wt%の錯化剤と、
e)約0.1wt%~約5wt%の少なくとも1つのアゾールと、
f)水と、
を含む。
【0025】
上記の各成分の濃度範囲は、CMP濃縮物中に存在する各成分の濃度を反映していることを理解すべきである。使用前に、上記の組成物は典型的には少なくとも約5倍に希釈される。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約10倍に希釈される。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約20倍に希釈される。
【0026】
この実施形態の組成物が希釈されるとき、酸化剤が典型的には組成物に添加される。本開示の組成物中での使用が考えられる酸化剤は、限定されないが、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、硝酸銀(AgNO)、硝酸鉄もしくは塩化鉄、過酸または塩、オゾン水、フェリシアン化カリウム、重クロム酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、臭素酸カリウム、三酸化バナジウム、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、硝酸第二鉄、KMgO、他の無機もしくは有機過酸化物、またはそれらの混合物もしくは組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、酸化剤は過酸化水素である。酸化剤は、希釈された使用時点(POU)スラリーが約0.1wt%~約5wt%、または約0.4wt%~約2wt%の酸化剤を有するような量で存在し得る。
【0027】
したがって、一実施形態では、本開示は、
a)約0.01wt%~約1.0wt%の研磨剤と、
b)フォスフェートを含む約0.001wt%~約0.01wt%の第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む約0.001wt%~約0.01wt%の第2界面活性剤と、
d)約0.1wt%~約2.0wt%の錯化剤と、
e)約0.01wt%~約0.5wt%の少なくとも1つのアゾールと、
f)約0.1wt%~約5wt%の酸化剤と、
g)水と、
を含む、POU組成物を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、基板から銅層を除去する方法が提供される。そのような方法は、例えば、組成物のピーク除去率の少なくとも75パーセントである割合で組成物が銅層を除去する本開示の組成物と銅層とを接触させることによって行われ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、基板を研磨する方法が提供される。そのような方法は、例えば、
(a)少なくとも1つの金属層を基板に設ける工程と、
(b)基板を本開示の組成物と接触させる工程と、
(c)組成物を用いて前記基板を化学機械研磨する工程と、
によって行われ得る。
【0030】
さらに、いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、任意成分としてpH調整剤、腐食防止剤、追加の界面活性剤、有機溶媒、および消泡剤などの添加剤を含有してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、pH調整剤として作用する塩基を有し得る。塩基性pH調整剤は、組成物のpHをその操作pH値にするのを助ける。pHを調整するために使用される塩基は、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、トリエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の適切な塩基であり得る。pH調整剤は、濃縮物またはPOU組成物のpHが4~9、またはそれらの任意の部分的な範囲となるような量で存在し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、任意の組み合わせで、以下の成分のうちの1つ以上を特に除外し得る。そのような成分は、シラン化合物、グラフトポリマー材料、水溶性ポリマー、Cu、Ta、Ti、もしくはRbイオン、スルホン酸、脂肪酸、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、グラミン、アデニン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N,N’-ジフェニルエチレンジアミン、アンモニア、ポリ(メタ)アクリレート、酢酸、尿素過酸化水素、酒石酸、ポリ(ビニルピロリドン)、長鎖アルキルアミン、アルコールアミン、キノリンカルボン酸、キノリン酸、二価の有機酸、ヒドロキシル酸、ペルオキソ硫酸もしくはその塩、芳香族スルホン酸、芳香族カルボン酸、未焼結酸化セリウム、および窒素原子を含まない多価有機酸からなる群から選択される。
【0033】
図2a~図2cは、本開示の組成物で研磨された基板上のディッシング欠陥に関するデータを示す。グラフは、DSTRを含まない組成物と、DRおよびDSTRを含む組成物とを用いて研磨後に基板上に見られるディッシング欠陥の量を比較する。分かるように、DSTRを含まない組成物では、好ましいディッシング結果を達成するためには、はるかに高濃度のDRが必要である。例えば、0.25マイクロメートルのディッシング欠陥サイズ(図2a)では、100個の欠陥の総数を達成するために、DSTRなしで約400ppmのDRが必要とされる。DSTRを使用した場合、同じ結果を得るには約300ppmのDRしか必要ない。他の欠陥サイズを表すグラフでも同様の結果が見られる。
【0034】
図2a~2cの各組成物中のDSTRの量は、濃縮物の総重量に基づいて500ppmである。図2dは、DSTRがそれ自体でディッシングに影響を及ぼさないことを示す。図2dのデータは、示されている最大量のディッシング欠陥に対して正規化されており、それは250ppmのDSTRにおける100ミクロン平方欠陥に対するものである。図2dから分かるように、様々な欠陥サイズおよびDSTRの量にわたって、ディッシング欠陥の量の増加または減少は事実上ない。このようにして、上で論じられかつ図2a~2cに示された効果は、相乗的で驚くべきものである。DSTRはそれ自体では有益な効果をもたらさないので、当業者は、DRと一緒に使用された場合、DSTRがディッシングに対して改善された効果を有することを予想していなかったであろう。DSTRのみを有し、DRを含まない組成物は、図2aおよび2cのプロットに含まれ、最適な線はほぼ水平になる。
【0035】
図3aおよび3bは、本開示の組成物が使用されるときに起こり得ることの概略図を示す。理論に縛られることなく、図3aの左の画像に見られるように、DSTRが使用されないとき、本開示の発明者らは、表面張力が組成物の液滴の形状を維持すると推測する。これにより、DRが拡散して基板の表面全体に接触するのを防ぐ。大量のDRが使用されている場合でも、示されている伸張はそれらの有用性を制限する。DSRが使用されると、組成物の水滴が破裂し、DRが基板全体に広がることを可能にする。図3の下の画像は、基板にDRが多すぎる、つまり表面に銅が残るという悪影響を示す。
【0036】
図4aおよび4bは、DSTRの量が、たとえあったとしても、組成物の除去率に及ぼす影響が最小限であることを示す。図5a~5cは、DRおよびDSTの濃度の関数としての組成物の接触角に関するデータを示す。DRが増大するにつれて接触角が増大することに反映されるように、DR自体が銅上に疎水性表面を形成する(図5c)。水性スラリーが表面を均一に被覆することを困難にするので、これは望ましくない(すなわち、ウインドシールド上のRainXタイプの被覆と同様、すなわち水性液滴が玉になって疎水性表面によってはじかれる)。接触角は、DSTRの添加がもたらす組成物の濡れ性能の向上を示し、DSTRはまた銅表面をより親水性にする(すなわち、接触角が減少する)。接触角が減少するにつれて、組成物は銅表面を濡らしている。濡れが増加すると、ウェハ表面全体でより均一な研磨が可能になり、プロセス調整の応答性が向上し、また、図3に示すように、DRの使用を少なくするための鍵となる。例えば、濡れ性が悪く、中心部の除去率が早いプロファイルでは、流体力学がウェハ表面上のいくつかのスポットが疎水性になり、スラリーをはじくだけである場合、補正するのは難しい場合がある。よりよく濡れ、スラリーがウェハ全体を素早く均一に濡らすようにすると、除去率プロファイルはより調整可能になるように思われる。また、余分な濡れは、特に小さな特徴の場合、陥凹した銅領域へのスラリーの浸透を助け、DRが最小の銅線にも適切に付着し、それを保護してディッシングを減らし得る。図6は、2つの組成物(DSTRなしのもの)の並列比較を示す。DSTRは、組成物によって示される発泡を大幅に減少させ、それは希釈された濃縮物を調製するときに組成物をはるかに扱いやすくする。
【0037】
以下の実施例は、本開示の主題をさらに説明することを意図しており、決して本開示を限定すると解釈されるべきではない。
【0038】
(実施例)
以下の配合物は、本開示の実施における使用のために企図される典型的な組成物である。全ての値はwt%である。表示されている量は、POUで10倍に希釈された濃縮液に対するものである。
【表1】
【0039】
本開示を本明細書に記載の実施例に関して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義されるような本開示の精神および範囲から逸脱することなく他の修正および変形が可能である。
【0040】
(付記)
(付記1)
a)研磨剤と、
b)フォスフェートを含む第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む第2界面活性剤と、
d)錯化剤と、
e)少なくとも1つのアゾールと、
f)水と、
を含む、組成物。
【0041】
(付記2)
前記研磨剤は、アルミナ、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、被覆粒子、チタニア、セリア、ジルコニア、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、付記1に記載の組成物。
【0042】
(付記3)
前記フォスフェートは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェートから選択される、付記1に記載の組成物。
【0043】
(付記4)
前記フォスフェートは、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルフォスフェートから選択される、付記1に記載の組成物。
【0044】
(付記5)
前記フォスフェートは、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルフォスフェートから選択される、付記1に記載の組成物。
【0045】
(付記6)
前記フォスフェートは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルフォスフェートから選択される、付記1に記載の組成物。
【0046】
(付記7)
前記アセチレン系化合物は、アセチレングリコールまたはそのエトキシル化付加物である、付記1に記載の組成物。
【0047】
(付記8)
前記アセチレン系化合物は、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシル化付加物である、付記1に記載の組成物。
【0048】
(付記9)
前記錯化剤は、有機酸およびそれらの塩、アミノ酢酸、アミノ酸、カルボン酸、ポリアミン、アンモニア系化合物、四級アンモニウム化合物、無機酸、カルボキシル官能基およびアミノ官能基の両方を有する化合物、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、並びにそれらの任意の混合物からなる群から選択される、付記1に記載の組成物。
【0049】
(付記10)
前記錯化剤は、アミノ酸から選択される、付記9に記載の組成物。
【0050】
(付記11)
前記錯化剤は、グリシンである、付記10に記載の組成物。
【0051】
(付記12)
酸化剤をさらに含む、付記1に記載の組成物。
【0052】
(付記13)
a)約0.01wt%~約10wt%の研磨剤と、
b)フォスフェートを含む約0.001wt%~約0.1wt%の第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む約0.001wt%~約0.1wt%の第2界面活性剤と、
d)約0.1wt%~約20wt%の錯化剤と、
e)約0.001wt%~約5wt%の少なくとも1つのアゾールと、
f)水と、
を含む、組成物。
【0053】
(付記14)
a)約0.01wt%~約1.0wt%の研磨剤と、
b)フォスフェートを含む約0.001wt%~約0.01wt%の第1界面活性剤と、
c)アセチレン系化合物を含む約0.001wt%~約0.01wt%の第2界面活性剤と、
d)約0.1wt%~約2.0wt%の錯化剤と、
e)約0.001wt%~約0.5wt%の少なくとも1つのアゾールと、
f)約0.1wt%~約5wt%の酸化剤と、
g)水と、
を含む、組成物。
【0054】
(付記15)
付記14に記載の組成物と、銅層と、を接触させることを含み、
前記組成物は、前記組成物のピーク除去率の少なくとも75パーセントの割合で前記銅層を除去する、
前記銅層を基板から除去する方法。
【0055】
(付記16)
(a)少なくとも1つの金属層を基板に設ける工程と、
(b)前記基板を付記14に記載の組成物と接触させる工程と、
(c)前記組成物を用いて前記基板を化学機械研磨する工程と、
を含む、基板を研磨する方法。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6