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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】腹部CT用経口陰性造影剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/04 20060101AFI20220927BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220927BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 49/14 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 49/18 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A61K49/04
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/02
A61K49/14
A61K49/18
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019547116
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018054687
(87)【国際公開番号】W WO2018158195
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】1750216-2
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519307687
【氏名又は名称】ルメント アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】カサル-ドゥヤット ルシア
(72)【発明者】
【氏名】ブック オロフ
(72)【発明者】
【氏名】アドネルヒル イングヴァル
(72)【発明者】
【氏名】オステ リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】フォルク トーマス
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-089877(JP,A)
【文献】特表2009-536624(JP,A)
【文献】国際公開第2016/032346(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0151756(US,A1)
【文献】国際公開第2008/046729(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/053370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における小腸の少なくとも上部を含む胃腸管のCTイメージングにおける使用のための可食陰性造影剤であって、前記造影剤は経口摂取用であり、前記造影剤はさらに、-300~-800HUの範囲のCT密度コントラスト値を示す流動性水性泡であり、前記造影剤はpH6.5~8.0の水性連続液相を含み、前記水性連続液相は、
-0.1~5重量%の界面活性剤、前記界面活性剤はタンパク質である、
-0.01~1.0重量%の、泡安定剤として作用する親水コロイド、
-緩衝剤、及び
-水、
並びに前記連続水性液相に分散された気泡を含み、前記造影剤はBostwick稠度計を用いて23±1℃で30秒間測定して7~12cmの粘稠度を有し、前記連続液相中の界面活性剤:親水コロイドの重量比が8:1~2:1である、
可食陰性造影剤。
【請求項2】
前記連続水性液相に分散された前記気泡が空気気泡である、請求項1に記載の可食陰性造影剤。
【請求項3】
前記界面活性剤がオボアルブミンを含む、請求項1又は2に記載の可食陰性造影剤。
【請求項4】
前記造影剤が、少なくとも35体積%の分散空気気泡を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の可食陰性造影剤。
【請求項5】
前記造影剤が、25℃で35~55体積%の分散空気気泡を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の可食陰性造影剤。
【請求項6】
前記造影剤が-500~-700HUの範囲の密度コントラスト値を示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の可食陰性造影剤。
【請求項7】
前記造影剤がBostwick稠度計を用いて23±1℃で30秒間測定して8.5~12.0cmの粘稠度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の可食陰性造影剤。
【請求項8】
前記連続液相中の界面活性剤:親水コロイドの重量比が3:1~5:1、又は7:2~9:2である、請求項1から7のいずれか一項に記載の可食陰性造影剤。
【請求項9】
前記親水コロイドが
-多糖、
-天然ゴム、
-キトサン、又は
-改質天然ゴ
ある、請求項1から8のいずれか一項に記載の可食陰性造影剤。
【請求項10】
前記親水コロイドが天然ゴム又は改質天然ゴムである、請求項9に記載の可食経口陰性造影剤。
【請求項11】
前記緩衝剤がリン酸塩ベースであり、カウンターイオンがナトリウム及びカリウムであり、かつ前記液相のリン酸塩濃度が0.02~0.5モルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の可食経口陰性造影剤。
【請求項12】
-前記連続水性液相の乾燥分含有量が5重量%以下である、及び/又は
-前記連続水性液相が0.1~0.7重量%の前記親水コロイドを含む、及び/又は
-前記連続水性液相が0.5~2.5重量%の前記界面活性剤を含む、及び/又は
-前記陰性造影剤が-300~-700HUの範囲、例えば-500~-700HUの範囲のCT密度を示す、
請求項1から11のいずれか一項に記載の可食経口陰性造影剤。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の造影剤を供給するための水性液体組成物であって、前記水性液体組成物の組成物が請求項1から12のいずれか一項に記載の造影剤における連続水性液相の一つに対応する、水性液体組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の水性液体組成物を供給するための乾燥組成物であって、前記乾燥組成物が、
-界面活性剤、前記界面活性剤は卵アルブミンである、
-親水コロイド、及び
-緩衝剤
を含み、
前記連続液相中の界面活性剤:親水コロイドの重量比が8:1~2:1である、乾燥組成物。
【請求項15】
-前記親水コロイドが天然ゴムであり
前記緩衝剤がリン酸塩ベースであ
請求項14に記載の乾燥組成物。
【請求項16】
-前記緩衝剤の含有量が少なくとも20重量%である、及び/又は
-前記界面活性剤と前記親水コロイドの全体の含有量が少なくとも35重量%である、及び/又は
-前記界面活性剤、前記親水コロイド及び前記緩衝剤の全体の含有量が少なくとも75重量%である、
請求項14又は15に記載の乾燥組成物。
【請求項17】
対象における腹部MRIによる胃腸管のイメージングにおける造影剤として使用される、請求項1から12のいずれか一項に記載の可食陰性造影剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CTイメージング用造影剤に関する。さらに、本発明は、対象における小腸のCTイメージングにおけるこうした造影剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影法(CT:Computerized tomography)は、健康及び病的な実質器官、筋、脂肪組織、骨、管、リンパ小節などの断面像又はスライスを生成する一連のX線キャプションを連結することによってその内部を含む体、例えば人体の詳細な画像を生成する画像診断技術である。今日、CTは、磁気共鳴断層撮影法などの他の断層撮影技術に比べてその低コスト及び著しく速い検査という理由から、また、世界中でその利用能が高いという理由から、頻繁に使用されるツールである。癌の診断におけるその一般的な使用に加えて、CTは、炎症性疾患、外傷、異常などの種々の他の疾患及び障害の診断を容易にするのに広く用いられる。
【0003】
腹部のCT(CT-abd)では、造影剤は、組織区分間の密度差を増すことによって構造の境界を画定するのに使用される。高いコントラスト差は、放射線科医が腹部及び骨盤内の異常を経時的に検出し、追跡するのに必要であり、したがって医学的診断の可能な詳細の可視化を改善する。構造及び/又は材料の放射線密度は、ハウンスフィールド単位(HU:Hounsfield Units)で測定される。基準点は、それぞれ放射線密度値-1000HU及び0HUである空気及び水によって定義され、使用される管電圧とは無関係である。CTスキャン画像は、グレースケールで観察される(図1参照)。腹部の器官及び構造は、それらの組成物の放射線密度に応じて、グレースケールの白色(骨など、約+1000HU)から淡灰色(血管など、約+70HU)及び黒色(肺の空気など、約-1000HU)の種々の色で示される。
【0004】
慣例的にCT-abdと称される患者は、通常、胃腸管の境界を画定する経口薬剤を調製される。今まで、最も一般的に使用される境界画定剤は、白色腸内容物を生成する、すなわち正のHUを有する、静脈内適用のためのヨウ素造影剤の希釈溶液であった。別の薬剤は、腸管腔を他の体の構造の色に近い灰色で示す密度約10HUを与える等浸透圧溶液である。したがって、正の経口充填剤は、CT画像上で小腸の腸管壁と管腔とのコントラストがないか、又は不十分である。結果として、腸管壁の画像を読むのが容易ではなく、偽陽性と偽陰性の両方の診断を含めて、低品質の放射線医学診断を招く可能性がある。
【0005】
その結果、ますます多くの患者、特に小腸疾患を有する若年患者が、今日、小腸の磁気共鳴エンテログラフィー(MRE:magnetic resonance enterography)によって検査されている。MREは、小腸管壁及び粘膜が白色の色合いで、すなわち高い信号で示され、一方腸管腔がT1シークエンスの黒色で、すなわち低い又は無信号で示されるので、優れた画像を与える。信号の大きな段差は、小腸管壁及び粘膜の診断法を大きく改善する。しかし、MREの主な欠点は、検査時間が長く、呼吸を止める期間が長く、MR装置の入手が制限されることである。したがって、CT-abdは、当分の間、依然としてほとんどの場合に最適な第1のイメージング法である。
【0006】
したがって、粘膜内層に対して特に大きいコントラストを与え、腸壁の特に大きいコントラストを与え、それによって医学的評価の改善の機会を与える、陰性「黒色」充填造影剤に関心が持たれ、必要とされている。管腔の造影密度値が低いほど、コントラスト差が大きくなり、粘膜及び腸管壁の画像表示が良好であり、仮想内視鏡検査である3D表現を行う可能性が高くなる。しかし、コントラストが大きすぎると(すなわち、-1000HUに近い密度コントラスト値)、いわゆる「ハードビームアーチファクト」によって界面が不明瞭になることに注意すべきである。空気は、黒色腸充填造影剤として使用することができる。しかし、空気は、経鼻胃管を通して吹き込まなければならない。吹き込まれた空気は不快であり、管留置は有痛性であり、管腔の空気はハードビームアーチファクトを生ずる。胃及び十二指腸の下流並びに結腸の上流のその局在を考えると、小腸は近づきにくく、操作しにくい。
【0007】
本技術分野では、陰性腸充填剤に対する臨床学的要請に応えようとしてきたが、今までそうした薬剤は市販されていない。
【0008】
特許文献1においては、1982年まで遡り、患者の胃を膨張させて二重造影バリウム食ラジオグラフィーを可能にする系が開示されている。該系は、順次嚥下する2種類の液剤を含む。第1の製剤は、着色、風味づけ及び濃化が可能である無毒アルカリ性溶液又は炭酸塩若しくは炭酸水素塩の分散物である。第2の製剤は、食品用酸の溶液を含む。系は、in situで気体を発生するように意図される。小腸の境界を画定する潜在的に興味深い系ではあるが、開示された技術は、造影剤の分布が不均一になる欠点がある。さらに、コントラスト(すなわち放射線密度値)の制御が限定的である。
【0009】
特許文献2においては、腹部CTにおける臨床用途用陰性造影剤として使用される植物油に基づく組成物が開示されている。これらの造影剤は、小腸の境界を画定し、かなり均一な分布を与えるのに適しているが、陰性密度値が不十分である欠点がある。
【0010】
CTスキャン検査のための結腸の境界画定のための直腸ガス注入は、生成するコントラストが低すぎはするが壁と管腔の間で急激な密度変化を生じるCTコロノグラフィにおける大腸の仮想3Dレンダリング用の十分確立された技術である。小腸へのこうした直接接近は存在しない。非特許文献1の論文では、CTイメージングにおいて結腸管壁の明瞭な可視化のための新規泡状流動性陰性造影媒体が開示されている(特許文献3も参照)。陰性造影は、結腸診断用CTスキャン検査における結腸可視化のための直腸投与用浣腸剤として意図される。それは、-120HUまで下がる密度コントラスト値を与える。しかし、結腸のポリープ(2mm以上)の検出に十分であると報告された-120HUのコントラストは、小腸ループの3D仮想画像のレンダリングには十分な低さであるとは考えられていない。
【0011】
したがって、小腸の境界を画定し、患者及び医師に改善された診断値を与えるのに適切な低密度の値を与える陰性造影剤が当該技術分野において必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】カナダ特許第1116084号
【文献】中国特許第1233505号
【文献】国際公開第2007/131390号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Contrast media and molecular imaging(vol.6、p.465~473、2011)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、経口摂取用の胃腸管のCTイメージング用可食陰性造影剤であって、-300~-800HUの範囲のCT密度コントラスト値を示す流動性水性泡であり、Bostwick稠度計を用いて23±1℃で30秒間測定して7~12cm、例えば8.5~12.0cmの粘稠度を有する造影剤を提供することによって、当該技術分野における上で確認された欠陥及び欠点の1つ以上を個々に又は任意の組合せで緩和、軽減、除去又は回避しようとするものである。造影剤は、pH6.5~8.0の水性連続液相及び連続水性液相中に分散された気泡を含む。水性連続液相は、界面活性剤、該界面活性剤はタンパク質である、泡安定剤として作用する親水コロイド、緩衝剤、及び水を含む。
【0015】
一実施形態によれば、気泡は空気気泡である。別の実施形態によれば、気泡は、CO、N、NO及び/又はアルゴン、例えばN、NO及び/又はアルゴンの気泡である。
【0016】
連続液相中の界面活性剤:親水コロイドの重量比は、8:1~2:1、3:1~5:1、又は7:2~9:2とすることができる。一実施形態によれば、界面活性剤は、オボアルブミンを含む。さらに、親水コロイドは、以下の群から選択することができる。
-デンプンベースの多糖(例えば、アロールート、コーンスターチ、カタクリデンプン、ジャガイモデンプン、サゴ又はタピオカ)などの多糖、
-天然ゴム(例えば、アルギニン、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカント、カラゲナン、ペクチン又はキサンタンガム)、
-キトサン、及び
-改質天然ゴム(例えば、アルギン酸プロピレングリコール)。
【0017】
一実施形態によれば、親水コロイドは、天然ゴム又は改質天然ゴムである。好ましくは、天然ゴムは、キサンタンガム及び/又はアルギン酸プロピレングリコールである。
【0018】
緩衝剤は、一価のカウンターイオンを含むことができる。好ましくは、こうしたカウンターイオンは、ナトリウム及び/又はカリウムである。緩衝剤がリン酸塩ベースであり、カウンターイオンがナトリウム及びカリウムである一実施形態においては、液相のリン酸塩濃度を0.01~1モルとすることができる。好ましくは、緩衝剤がリン酸塩ベースである実施形態における液相のリン酸塩濃度は、0.02~0.5モル、例えば約0.05モルである。
【0019】
一実施形態によれば、可食陰性造影剤は、少なくとも35体積%の分散空気気泡、例えば50体積%を超える分散空気気泡を含む。したがって、造影剤は、25℃で30~70体積%の分散空気気泡、例えば25℃で35~55体積%、例えば35~45体積%の分散空気気泡、又は25℃で55~65体積%の分散空気気泡を含むことができる。造影剤は、-500~-700HUの範囲の密度コントラスト値を示すことができる。
【0020】
例示的一実施形態によれば、可食経口陰性造影剤は、以下の特性の1つ以上を有する。
-5重量%以下、例えば3.0重量%以下の連続水性液相の乾燥分含有量、及び/又は
-連続水性液相の親水コロイド含有量0.01~1.0重量%、好ましくは0.1~0.7重量%、及び/又は
-連続水性液相の界面活性剤含有量0.1~5重量%、好ましくは0.5~2.5重量%、及び/又は
--300~-700HUの範囲、例えば-500~-700HUの範囲のCT密度。
【0021】
本発明の更なる一態様によれば、造影剤を供給するための水性液体組成物が提供される。水性液体組成物の組成は、連続水性液相の一つに対応する。
【0022】
本発明の別の一態様によれば、造影剤を供給するための水性液体組成物を供給するための乾燥組成物が提供される。乾燥組成物は、界面活性剤、該界面活性剤はタンパク質である、親水コロイド、及び緩衝剤を含む。好ましくは、界面活性剤は、オボアルブミンを含む。例示的一実施形態によれば、親水コロイドは天然ゴムであり、好ましくは天然ゴムはキサンタンガムであり、緩衝剤はリン酸塩ベースであり、好ましくは緩衝剤はNaHPO及びKHPOを含む。さらに、こうした例示的一実施形態によれば、
-乾燥組成物中の界面活性剤:親水コロイドの重量比が10:1~1:1、例えば8:1~2:1である、及び/又は
-乾燥組成物中の緩衝剤の含有量が少なくとも20重量%、例えば少なくとも40重量%である、及び/又は
-乾燥組成物中の界面活性剤と親水コロイドの全体の含有量が少なくとも35重量%、例えば少なくとも50重量%である、及び/又は
-乾燥組成物中の界面活性剤、ゲル化剤及び緩衝剤の全体の含有量が少なくとも75重量%、例えば少なくとも85重量%である。
【0023】
本発明の別の一態様によれば、小腸を含む胃腸管のCTイメージングにおける造影剤としての可食陰性造影剤の使用が提供される。同様に、本可食陰性造影剤は、対象、例えばヒトにおける小腸の少なくとも上部を含む胃腸管のCTイメージングにおける造影剤として使用することができる。こうした使用においては、造影剤は、好ましくは、検査するべき対象にCTイメージング前に経口投与することができる。特に、造影剤は、腹部CTイメージングにおいて小腸の少なくとも上部の境界画定に使用することができる。
【0024】
本発明の別の一態様によれば、腹部MRIによる又は腹部超音波イメージングによる胃腸管のイメージングにおける造影剤としての可食陰性造影剤の使用が提供される。同様に、本可食陰性造影剤は、対象、例えばヒトにおける腹部MRIによる又は腹部超音波イメージングによる胃腸管のイメージングにおける造影剤として使用することができる。こうした使用においては、造影剤は、好ましくは、検査するべき対象に腹部MRI又は腹部超音波イメージング前に経口投与することができる。
【0025】
本発明の更なる有利な特徴は、従属請求項に定義されている。さらに、本発明の有利な特徴を詳細な説明において記述する。
【0026】
本発明が可能とする上記及び他の態様、特徴及び効果は、添付図面を参照して、本発明の以下の記述から明白であり、明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ハノウンスフィールド(Honounsfield)単位(HU)、及び構造がCTスキャン画像において示されるグレースケールを示す図である。
図2a】約マイナス600HUの密度コントラストを有する一実施形態に係る本造影剤の使用による健常者の腹部CTスキャン検査から得られる画像である。図2aにおいては、診断に使用される窓であり腸の管腔を暗く示す腹窓が示される。
図2b】約マイナス600HUの密度コントラストを有する一実施形態に係る本造影剤の使用による健常者の腹部CTスキャン検査から得られる画像である。図2bにおいては、対象の腸における泡の均一性及び内在空気の存在を示す肺野が示される。
図2c】約マイナス600HUの密度コントラストを有する一実施形態に係る本造影剤の使用による健常者の腹部CTスキャン検査から得られる画像である。図2cにおいては、陰性造影剤を白色で示す反転像(inverted image)が示される。
図3】約マイナス400HUの密度コントラストを有する別の一実施形態に係る本造影剤の使用による健常者の腹部CTスキャン検査から得られる画像である。図3aにおいては、診断に使用される窓であり腸の管腔を暗く示す腹窓が示され、図3bにおいては、陰性造影剤を白色で示す反転像が示される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
水性媒体中の空気分散物で構成される系は、分散空気の割合に応じて-1000HU~0HUの範囲の陰性密度コントラスト値を与え、したがって陰性造影剤として使用することができる。腹部CTイメージングの場合、与えられる陰性密度コントラスト値を、好ましくは、かなり高い体積割合の空気に対応する-300~-800HUの範囲とすべきである。さらに、CTイメージングに使用される造影剤は、胃腸管中で十分安定であり、胃腸管全体を通して本質的に同じCT陰性密度コントラスト値を与えるべきである。
【0029】
当該技術分野において認識されるように、液体中の空気、すなわち泡の分散は、発泡剤を含む水溶液又は分散物を起泡させる、又は泡立たせることによって行うことができる。発泡剤の典型例は、洗浄剤である。発泡剤のタイプ及び量は、最終的な泡の性質に影響する。さらに、水溶液又は分散物に取り込まれる空気の量も最終的な泡の性質に影響する。
【0030】
界面活性剤は、増粘剤又は安定剤、例えば親水コロイドと一緒に広範に使用されて、水相中に分散された空気気泡からなる泡を供給し、安定化する。増粘剤又は安定剤の安定化の機序は、静電気的及び/若しくは立体的な反発の促進、並びに/又は気泡間の連続水相の粘度増加に基づく。それらは、したがって、最終的な泡(すなわち、空気の水性分散物)の粘度及び粘稠度にも本質的に影響する。
【0031】
さらに、造影剤の陰性密度の程度を決定する因子である分散空気の体積比も、最終的な泡の粘度及び粘稠度に影響する。したがって、十分低い陰性造影値(すなわち、-300以下、例えば-500~-800HU)を有し、最適な画質及び安定性を有するだけでなく、経口摂取に許容される粘稠度も有する腸充填安定陰性造影剤を提供することは困難であることが判明した。
【0032】
小腸のCTイメージング用陰性造影剤は、界面活性剤及び安定剤を含む水性組成物中で空気などの気体を分散させることによって提供できることが見いだされた。さらに、別の気体、例えば、CO、N、NO及びアルゴンも、界面活性剤及び安定剤を含む水性組成物中で分散させて、小腸のCTイメージング用陰性造影剤を提供することができる。これらの代替気体のうち、N、NO及びアルゴンが好ましい。
【0033】
タンパク質などの高分子量分子は、良好な起泡性及び泡安定性を有する生成物に使用される一般的な食物ベースの界面活性剤である。低分子量界面活性剤が高分子量分子よりもはるかに速く拡散し、表面張力をより効果的に減少させるにもかかわらず、タンパク質などの高分子量界面活性剤は、低分子量の界面活性剤に比べてより厚いより安定なフィルムを泡系における気泡間に形成することを可能にする。しかし、タンパク質などの分子がより遅く拡散するにもかかわらず、それらは、空気-水界面における吸着前でも、分子の閉じ込め及び集合を形成し、したがってより厚いより安定なフィルムを形成することができる。
【0034】
食物ベースのタンパク質の中で、卵白タンパク質は、ゲル化及び泡形成に対して例外的な機能特性を有することが見いだされた。卵白タンパク質、すなわち卵アルブミンは、幾つかの球状タンパク質(オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン、リゾチーム、グロブリン、アビジン)で構成される。オボアルブミンは重要なタンパク質の一つであるが、卵アルブミンに含まれる異なるタンパク質の組合せは、起泡性及び泡安定性に有利である。反対の電荷の混合物及び分子間結合の形成は、食物泡の安定化を向上させる。混合物は、したがって、好ましくは、少なくともオボアルブミン、オボムチン及びオボグロブリンを含むことができる。
【0035】
分散物においては、界面活性剤、例えば卵アルブミンは、それらの両親媒性のために、空気気泡の形成及びその安定化を可能にする。アルブミンタンパク質は、泡形成及びゲル化に対して例外的な機能特性を有し、ここではしたがって好ましいことが判明した。しかし、分散空気気泡の安定化を高めるために、泡安定剤、例えば天然ゴムなどの泡安定剤として作用する親水コロイドが液体組成物中に存在すべきである。
【0036】
タンパク質である界面活性剤と泡安定剤として作用する親水コロイドが適切な比で液体組成物中に存在すると、依然として流動性であり、十分に安定である、-300~-800HUの範囲のCT密度コントラスト値を示す陰性造影剤を提供することができる。泡調製及び貯蔵中だけでなくその摂取中にも卵アルブミン及びタンパク質ネットワークの機能特性を安定に維持するために、造影剤のpHは、安定であり、6.5~8.0の範囲とすべきである。したがって、貯蔵中だけでなく厳しい胃腸条件下でも安定であり、起泡性及び泡安定性を高める適切で最適な環境をタンパク質に提供する最適で安定なpH条件を得るために、緩衝剤が使用された。さらに、緩衝剤を液体組成物に添加しても起泡性に影響しないことが分かった。造影剤が胃を通過して小腸に至る際に安定なままであるために、緩衝剤の包含は、経口摂取用のCTイメージング用陰性造影剤を提供するために不可欠であると思われた。実際、緩衝剤は、更に、より少ない厳しい条件でも泡を安定化し、より長い品質保持期間を与えることが判明した。実際、陰性造影剤は、本陰性造影剤の経口摂取後に小腸のCTイメージングを可能にすることが分かった(図2a~c参照)。
【0037】
実施形態は、したがって、経口摂取用の腸のCTイメージング用可食陰性造影剤に関する。陰性造影剤は、-300~-800HUの範囲、好ましくは-550~-700HUの範囲のCT密度コントラスト値を示す流動性水性泡である。造影剤は、界面活性剤、該界面活性剤はタンパク質である、泡安定剤として作用する親水コロイド、緩衝剤、及び水を含む連続水性液相を含む。連続液相はpHが6.5~8.0、例えば約7.3である。さらに、造影剤は、連続水性液相中に分散された気泡、好ましくは空気気泡を含む。別の実施形態によれば、造影剤中の気泡は、連続水性液相中に分散されたCO、N、NO又はアルゴン、例えばN、NO又はアルゴンの気泡である。
【0038】
造影剤は、好ましくは、25℃で少なくとも35体積%の分散気泡(例えば、空気気泡)、例えば50体積%を超える分散気泡を含む。一実施形態によれば、造影剤は、25℃で30~70体積%の分散気泡(例えば、空気気泡)、例えば25℃で35~55体積%、例えば40~45体積%の分散気泡(例えば、空気気泡)、又は25℃で55~65体積%の分散気泡(例えば、空気気泡)を含む。分散気体の割合が高いほど(例えば、25℃で55~65体積%の分散気泡)、コントラスト値(参照、約-600HU)が低く、安定な泡を与えるのに必要な界面活性剤及び泡安定剤の量が減少する。ややより低いより高い割合の分散気体(例えば、25℃で35~55体積%又は40~45体積%の分散気泡)は、より高い含水量のために腸の膨張を高め、それによって腸のループ中の隠れた可視空間を作ることによって診断を改善する可能性がある。しかし、ややより低いより高い割合の分散気体は、安定な泡を与えるのに幾らか多い界面活性剤及び泡安定剤を必要とする。
【0039】
小腸の境界を画定するのに有用であり、患者に優しくするために、直腸を介した逆方向の充填、又は経鼻胃管を介した順方向の代わりに、胃を通過して小腸に達するように造影剤を経口投与することが必要であると思われた。さらに、約0.9~1.2Lなどのかなり多量の造影剤が小腸を満たすのに必要であると思われた。液体様及び流動性であるが、それでも十分に安定である陰性造影剤を提供することによって、検査される対象、例えばヒトが造影剤を飲むことができる。造影剤の粘度に関連する粘稠度は、飲用適性に重要であることが分かった。飲用に適し安定であるために、造影剤は、Bostwick稠度計を用いて測定して7~12cm、例えば8.5~12.0cmの粘稠度を有するべきである。当業者によって認識されるように、Bostwick粘稠度は、粘稠性流体である食料品の粘稠度を評価するために食品産業で一般に使用される尺度である。手短に言えば、Bostwick粘稠度は、所与の流体試料によって偏平溝上で所与の時間間隔で恒温下で覆われる距離として測定される。本明細書では、Bostwick粘稠度は、所与の流体試料について23±1℃で30秒間で覆われる距離に関する。距離は、狭い稠度計によって測定される。狭い稠度計は、b/H比1.3~1.4の貯蔵器を有する稠度計である。「b」は貯蔵器の幅であり、「H」はその高さである。一例として、CSC Scientific Company Inc.製Bostwick稠度計を使用することができる。さらに、一実施形態によれば、Bostwick粘稠度は、ASTM F1080-93(2013)「Standard Test Method for Determining the Consistency of Viscous Liquids Using a Consistometer」に以下の改変を加えて測定される。
-ステップ5.2は、均一な泡である本造影剤ではこのステップが余分であるので省略された。
-ステップ5.6における試験期間は30秒であった。
【0040】
高い粘稠度、例えばBostwick粘稠度7cm未満、例えば8.5cm未満の硬すぎる泡は、飲み尽くすのがより困難であり、空気を同時に嚥下し、対象の不快感を生じるだけでなく、不鮮明なCT画像になることが判明した。したがって、造影剤は、スプーンですくうことができるよりも、飲みやすいように十分に流動性であるべきである。特に、より高いコントラスト値を示す、すなわち60%を超える分散空気を含む泡の場合、Bostwick粘稠度が少なくとも8.5cmであると好ましいことが更に判明した。60%までの分散空気を含む泡でも、Bostwick粘稠度が少なくとも7cmであるという条件で、許容され得る。さらに、造影剤中に均一に分散していない大きい空気気泡の存在は、CTにおいて干渉し、放射線学的診断を損なう斑状の腸充填を招く。一般に、気泡の少なくとも80%、例えば少なくとも90%が、200μm未満、例えば150μm未満のサイズである。一部の実施形態によれば、気泡の少なくとも80%が、100μm未満、例えば80μm未満のサイズである。
【0041】
界面活性剤は卵アルブミンとすることができ、卵アルブミンは良好な起泡性を水溶液に付与する。さらに、卵アルブミンは、可食の十分容認された食品添加物である。卵タンパク質アレルギーを除いては、その使用は、原則的には禁忌を示さない。卵アルブミン中の主要な起泡成分はオボアルブミンである。一実施形態によれば、界面活性剤は、オボアルブミンを含む。オボアルブミンは界面活性剤として単独で使用することができるが、少なくともオボアルブミン、オボムチン及びオボグロブリンを少なくとも含むタンパク質の混合物を使用することが好ましい。好ましくは、界面活性剤は卵アルブミンである。卵アルブミンは、レギュラー高ゲルインスタント、超高ゲルインスタント、又は高起泡インスタント卵アルブミン粉末などの卵アルブミン粉末とすることができる。好ましくは、卵アルブミン粉末は、高ゲルインスタント卵アルブミン粉末である。
【0042】
さらに、タンパク質界面活性剤を酵素的に処理して、タンパク質を加水分解し、その結果、タンパク質の分子量を低下させ、イオン化可能基数を増加させ、疎水性アミノ酸を露出させ、分子間相互作用を高める官能基を露出させることによって、起泡性及び泡安定性を改善することができる。
【0043】
種々の親水コロイドを使用して、造影剤の連続液相の粘度を増加させることによって、それを安定化することができる。当業者によって認識されるように、親水コロイドは、典型的に、多数のヒドロキシル基を含む植物、動物、微生物又は合成起源の親水性ポリマーである。親水コロイドは、高分子電解質とすることができる。本造影剤中の親水コロイドは、したがって、
-デンプンベースの多糖(例えば、アロールート、コーンスターチ、カタクリデンプン、ジャガイモデンプン、サゴ又はタピオカ)などの多糖、
-天然ゴム(例えば、寒天、アルギン酸、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントアルギン酸プロピレングリコール、カラゲナン、ペクチン又はキサンタンガム)、
-キトサン、又は
-改質天然ゴム(例えば、アルギン酸プロピレングリコール)
とすることができる。
【0044】
好ましい一実施形態においては、親水コロイドは、キサンタンガム、アルギン酸、ペクチンなどの天然ゴムである。カルボキシル基を含むキサンタンガム、アルギン酸及びペクチンは、界面活性剤として使用されるタンパク質と相互作用する能力を有する。さらに、ペクチン、アルギン酸及びキサンタンガムは、それらの分子構造及び荷電官能基、すなわちカルボン酸の存在のために、複雑な性質の安定な系を形成することができる。アルギン酸は、その天然型で、又はプロピレングリコールの対応するカルボン酸エステル、すなわちアルギン酸プロピレングリコールとして使用することができる。好ましくは、天然ゴムは、キサンタンガム(例えば、E415)及び/又はアルギン酸プロピレングリコール(例えば、E405)である。
【0045】
連続水性液相は、0.01~1.0重量%の親水コロイド、例えば0.1~0.7重量%又は0.2~0.5重量%の親水コロイドを含むことができる。少なすぎる量の親水コロイドは泡の安定性を有意に改善しないことが分かった。一方、多すぎる量の親水コロイドは、泡の流動性を低下させ、したがって摂取中の患者の認容性を低下させ、更には非流動性の硬い泡をもたらす。さらに、多すぎる量の親水コロイドは、多分散性の泡及び多数の大きな可視気泡を引き起こす。以下で更に考察するように、親水コロイドの絶対量が重要であるだけでなく、界面活性剤に対する相対量も重要である。
【0046】
緩衝剤は、好ましくは胃腸管の厳しいpH条件でも、造影剤の連続液相のpH6.5~8.0を維持するべきである。当業者は、pH6.5~8.0を与える経口投与組成物において使用される種々の適切な緩衝剤を熟知している。一例として、緩衝剤は、リン酸塩ベースとすることができ、例えば、リン酸水素(HPO 2-)及びリン酸二水素(HPO )を含むことができる。緩衝剤は、更に、炭酸塩ベースとすることができ、例えば、炭酸水素塩(HCO )及び炭酸塩(CO 2-)を含むことができる。当業者によって認識されるように、緩衝剤は、典型的にカウンターイオン(単数又は複数)を含む。Ca2+、Mg2+などの二価カチオンを有するリン酸緩衝剤は、こうしたリン酸塩の溶解性が不十分な場合があるので、さほど好ましくない。これは、炭酸塩ベースの緩衝剤にも当てはまる。したがって、緩衝剤は、一価のカウンターイオン、例えばカチオンを含むことができる。好ましくは、対イオンは一価のカチオンである。より好ましくは、カウンターイオンはナトリウム及び/又はカリウムである。緩衝剤は、したがって、KHPOとNaHPOの混合物、又はKHPOとNaHPOの混合物とすることができる。カリウムと同様にナトリウムを含む緩衝剤を使用して、バランスのとれた電解質摂取を与える利点がある。経口摂取される造影剤では、これは所望の特性である。典型的に、緩衝剤は、緩衝種(酸及びその共役塩基、例えば、HPO 及びHPO 2-)0.01~1モル、例えば0.02~0.5モルに対応する量で使用される。したがって、緩衝剤がリン酸塩ベースである場合、連続液相のリン酸塩濃度(すなわち、HPO、HPO 、HPO 2-及びPO 3-の累積濃度)は、0.01~1モル、例えば0.02~0.5モル、又は0.02~0.1モルとすることができる。連続液相のリン酸塩濃度は、約0.05モル又は約0.1モルとすることができる。リン酸水素(HPO 2-)のリン酸二水素(HPO )に対するモル比は変わり得る。緩衝剤は、まず、卵アルブミンタンパク質にその機能性を高めるのに、また、造影剤を酸性条件に曝露する胃の通過中に中性pHを維持するのに、最適な条件を与えるので、リン酸水素(HPO 2-)のリン酸二水素(HPO )に対するモル比は1:1~1:10、例えば1:1~1:5、1:2~1:4とすることができる。腸液のpHは造影剤のpHに近いので、造影剤をアルカリ性条件に対して緩衝することはさほど重要ではない。
【0047】
連続液相の全乾燥分含有量はかなり低く、連続液相は主に水からなる。一実施形態によれば、連続液相の乾燥分含有量は、5重量%以下、例えば3.0重量%以下である。連続液相の乾燥分含有量は、少なくとも0.2重量%、例えば少なくとも0.5重量%又は少なくとも1.0重量%とすることができる。
【0048】
既述のとおり、連続液相は、0.01~1.0重量%の親水コロイド、例えば0.1~0.7重量%の親水コロイドを含むことができる。さらに、連続液相は、0.1~5重量%の界面活性剤、好ましくは0.5~2.5重量%の界面活性剤を含むことができる。少なくとも1時間安定である(排液のない又は限られた、また、多分散性の増加のない又は限られた)陰性造影剤を提供するために、連続液相中の界面活性剤:親水コロイドの重量比を10:1~1:1、例えば8:1~2:1、3:1~5:1、又は7:2~9:2とすることができる。好ましくは、連続液相中の界面活性剤:親水コロイドの重量比は1:1を超え、すなわち、連続液相は、界面活性剤の重量割合が親水コロイドより高い。連続液体中の界面活性剤:親水コロイドの重量比は、約4:1とすることができる。
【0049】
さらに、造影剤は経口投与用に意図されるので、連続液相は0.1~0.4重量%の香味剤を含むことができる。香味剤は、造影剤を美味にし、飲みやすくするのに役立つ。かなり多量の造影剤がCT検査前に消費されるべきであるので、これは重要な特徴であり得る。造影剤は経口投与用に意図されるので、構成成分は可食であるべきである。好ましくは、液相中の構成成分は、食品添加物として容認されたものとさえすべきであり、含まれる量は、安全摂取量上限を超えるべきではない。一実施形態によれば、液相中の構成成分の少なくとも一部は、欧州薬局方第9版に列挙された構成成分である。陰性造影剤の消費は毎日でも定期的でもないその場限りの一度であるが、成分量は、好ましくは、適切な当局によって報告され、登録された安全摂取量内である。
【0050】
一実施形態によれば、水性液相中の構成成分は、水を除いて、本質的に(例えば、他の構成成分の含有量は0.1重量%未満、例えば0.01重量%未満である)
-卵アルブミン粉末、
-キサンタンガム及び/又はアルギン酸プロピレングリコール、例えば、キサンタンガム、
-リン酸ナトリウム及びカリウム、並びに
-場合によっては香味剤(単数又は複数)
からなる。
【0051】
更なる一実施形態は、本造影剤を供給するための水性液体組成物に関する。液体組成物の組成は、陰性造影剤の連続水性液相の一つに対応する。こうした水性液体組成物は、健康管理施設に提供することができる。液体組成物を起泡させること(泡立たせることとしても知られる)によって、すぐに使える陰性造影剤を、健康管理施設で腹部CT検査に使用するために提供することができる。検査するべき対象は、次いで、造影剤を検査直前に飲む。対象はそれを均等に整然と40~60分で飲む。好ましくは、対象は各用量を10~15分で飲み、各用量は好ましくは0.3~0.4Lの泡を含む。対象は、陰性造影剤を座って、又は立って、又は歩きながら飲むことができる。好ましくは、対象は摂取中に少なくとも20分間歩いて、胃腸管の蠕動運動を高め、それによって腸全体にわたる泡の均一な充填及び分布を促進する。陰性造影剤は、対象がより快適に感じるように、グラスから直接、又はストローを用いて、又はテーブルスプーンを用いて飲むことができる。好ましくは、陰性造影剤をグラスから直接飲んで、空気を吸入しないようにする。空気の吸入は、恐らくは口の中を泡である程度満たすためにストロー又はスプーンを使用し、その結果空気を嚥下した場合に見られた。泡の安定性が典型的に限定的であることを考えると、液体組成物を泡摂取及び対応するCT検査の直前に、例えば1時間前以内に起泡させることによって陰性造影剤を供給することが必要かもしれない。したがって、すぐに使える造影剤を提供するのではなく、本造影剤を供給するための水性液体組成物を健康管理施設に提供することが好ましい場合もある。更に以下で概説するように、分散し、続いて起泡させて本造影剤を供給する乾燥粉末として本造影剤を健康管理施設に提供することもできる。しかし、陰性造影剤の安定性は、本質的に一定であり、一貫した陰性CT密度コントラスト値を小腸全体で与えるのに十分であるべきである。本発明の重要な一目的は、明瞭なCT-abdのために最適な陰性密度コントラストを与える空気含有量の安定で流動性である美味な陰性造影剤を提供することである。本明細書で述べるように、安定な泡は、典型的に流動性ではない。
【0052】
安全性及び衛生学的理由のために、発泡前液体生成物を滅菌、例えばUV-C滅菌することができる。しかし、加熱滅菌は、液体組成物中の構成成分の機能特性にネガティブに影響し得る、例えば、タンパク質を変性させ得るので、あまり好ましくない場合もある。さらに、発泡前液体生成物をアルゴン又は窒素などの不活性気体下で貯蔵し、冷却することができる(5±3℃)。さらに、防腐剤、例えばパラベンを発泡前液体生成物に含むことができる。
【0053】
一実施形態によれば、本造影剤を供給するための乾燥粉末が提供される。粉末は、造影剤の供給に使用される本水性液体組成物を凍結乾燥又は噴霧乾燥することによって提供することができる。凍結乾燥又は噴霧乾燥粉末は水中に容易に分散し、続いて起泡させて、安定な泡、すなわち本造影剤を与えるので、これは有利である。さらに、粉末、例えば凍結乾燥粉末は、良好な品質保持期間を有する。
【0054】
液体組成物を起泡させて陰性造影剤を供給することは二段階手順で行うことができる。第1の段階では、気体、例えば空気を液体組成物中に取り込んで、かなり広い気泡サイズ分布の分散気体、例えば空気の気泡を含む組成物を用意する。第2の段階では、できるだけ均一な泡において気泡サイズのできるだけ低い多分散性が得られるまで、より大きい気泡が分解される。一実施形態によれば、気泡の少なくとも80%、例えば少なくとも90%が直径200μm未満である。さらに、気泡の少なくとも25%を直径25~150μmとすることができる。一部の実施形態によれば、気泡の少なくとも80%、例えば少なくとも90%が直径20~80μmである。さらに、気泡の少なくとも25%を直径40~60μmとすることができる。様々なサイズ範囲の気泡の割合は、少なくとも250個の気泡、例えば少なくとも500個の気泡のサイズを顕微鏡で測定することによって求めることができる。気泡サイズの多分散性が低いほど、泡が安定であり、明瞭なCT画像が得られる(小さい気泡のバルクの泡の中の大きい気泡は干渉し、まだらのCT画像を形成する)。気泡サイズを減少させることが好ましいが、小さすぎる気泡で構成された泡は、気体-水界面におけるタンパク質の過剰な不溶化に起因する気泡弾性の低下のために、安定性が低下する。
【0055】
負のHUを有する腸充填造影剤の最も重要な効能は、クローン病などの腸疾患の診断法を改善することである。ヨウ素造影媒体の静脈内注射後にあらゆる炎症性病変が明るくなることはよく知られている。この反応は、大きい病変部においては極めて明白であるが、小さい病変部においては疑わしい。というのは、微小病変とその周囲とのコントラストの予見可能な差は、ないことはないにしても小さいからである。一方、隣接組織区分及び腸内部のHUが減少すると、できれば疾患初期の、小さい粘膜病変の検出が容易になる。
【0056】
理論的には、コントラストの急増は、微小な初期の病変部を検出可能にする。そのため、陰性腸充填剤は、一次腸疾患のない患者における腹部のCT検査でも推奨される。というのは、これまで無症状の疾患が明らかになる可能性があり、患者の利益のために処置を開始することができるからである。
【0057】
別の効能は、種々の腹部疾患のCTスクリーニングプログラムに登録された健常な対象に対するものである。すなわち、腹部及び小腸のCT前の予備的処置としての陰性腸充填造影剤は、新しい改善された放射線診断上の可能性を加えることが予見され、すなわち改善されたイメージング特性は大きな診断上の可能性を提供する。
【0058】
小腸のCTベースの仮想内視鏡検査は、腸内容物のHUが腸壁と大きく異なる場合にのみ可能である。3Dレンダリングを行うために、差は、使用するソフトウェアに応じて600HU以上でなければならない。仮想腸内視鏡検査は、関係する医師が、一般に胃腸出血又は炎症性疾患患者において、小腸のカプセル内視鏡検査を考えているすべての患者に必要である。病変部を占める室は、それが炎症性起源であれ、カルチノイドなどの腸腫瘍から生ずることがやや多い出血であれ、すべて3Dイメージングで見ることができる。
【0059】
本腸充填陰性造影剤は、副作用がないか、極めて軽度でしかなく、患者の認容性が高いので、腹部CT検査で調べられるすべての患者において、特に疾患自体又はその処置から病気及び病弱である患者において、予備の薬剤として示される。
【0060】
したがって、更なる一実施形態は、腸を含めた胃腸管のCTイメージングなどのCTイメージングにおける造影剤としての本可食陰性造影剤の使用に関する。同様に、別の一実施形態は、対象、例えばヒトにおける腸を含めた胃腸管のCTイメージングなどのCTイメージングにおいて造影剤として使用される本造影剤に関する。本可食陰性造影剤は主にヒト用に意図されるが、獣医学用途にも同様に使用することができる。獣医学用途は、例えば、ネコ、イヌ又はウマにおける使用を含むことができるが、それらに限定されない。
【0061】
腸を含めた胃腸管のCTイメージングにおいては、造影剤を、好ましくは、CTイメージング前に検査するべき対象に経口投与することができる。特に、小腸のCTイメージングにおいては、経口陰性造影剤は、当該技術分野における欠点を克服する優秀なツールであると思われる。造影剤は、腹部CTイメージングにおいて小腸の少なくとも上部の境界画定に使用することができる。好ましくは、造影剤を小腸、十二指腸及び空腸から下の結腸までの境界画定に使用することができる。
【0062】
更に別の一実施形態は、腹部CTイメージング法に関する。該方法は、以下のステップを含む。
-本可食陰性造影剤を検査するべき対象、例えばヒトに経口投与して、それを小腸の少なくとも上部を含む胃腸管に分布させるステップ、及び
-コンピュータ断層撮影法によって対象の腹部のCT画像を得るステップ。
【0063】
さらに、本可食陰性造影剤は、胃腸管のCTイメージングに使用されるだけでなく、腹部磁気共鳴画像法(MRI:magnetic resonance imaging)又は腹部超音波イメージングによる胃腸管のイメージングにも使用することができ、分散空気は、こうしたイメージング技術においても造影剤として有用である。
【0064】
したがって、更なる一実施形態は、腹部MRIによる又は腹部超音波イメージングによる胃腸管のイメージングにおける造影剤としての本可食陰性造影剤の使用に関する。同様に、別の一実施形態は、対象、例えばヒトにおける胃腸管のMRI又は超音波イメージングなどの腹部MRI又は腹部超音波イメージングによるイメージングにおける造影剤として使用される本造影剤に関する。本可食陰性造影剤は主にヒト用に意図されるが、獣医学用途にも同様に使用することができる。獣医学用途は、例えば、ネコ、イヌ又はウマにおける使用を含むことができるが、それらに限定されない。腹部MRI又は腹部超音波イメージングの前に、造影剤を、好ましくは、検査するべき対象にイメージング前に経口投与することができる。特に、小腸のイメージングにおいては、経口陰性造影剤は、当該技術分野における欠点を克服する優秀なツールであると思われる。造影剤は、腹部MRI又は超音波イメージングにおいて小腸の少なくとも上部の境界画定に使用することができる。
【0065】
更に別の一実施形態は、腹部MRI及び/又は超音波イメージング法に関する。該方法は、以下のステップを含む。
-本可食陰性造影剤を検査するべき対象、例えばヒトに経口投与して、それを小腸の少なくとも上部を含む胃腸管に分布させるステップ、及び
-対象の腹部のMRI又は超音波イメージング画像を得るステップ。
【0066】
既述のとおり、造影剤は、界面活性剤、該界面活性剤はタンパク質である、泡安定剤として作用する親水コロイド、緩衝剤、及び水を含む水性液体組成物を起泡させることによって供給することができる。液体組成物は、他の成分を水中に分散させることによって用意することができる。したがって、更なる一実施形態は、こうした液体組成物を供給するための乾燥組成物に関する。乾燥組成物は、界面活性剤、該界面活性剤はタンパク質である、親水コロイド、及び緩衝剤を含む。明らかに、界面活性剤、親水コロイド及び緩衝剤に関係して既述された態様は、乾燥組成物にも同等に適用可能である。
【0067】
したがって、一実施形態に係る乾燥組成物は、キサンタンガム及び/又はアルギン酸プロピレングリコールなどの天然ゴムを親水コロイドとして含むことができる。さらに、乾燥組成物は、オボアルブミンを界面活性剤として含むことができる。一実施形態によれば、界面活性剤は卵アルブミンである。界面活性剤が卵アルブミンである一実施形態においては、卵アルブミンをプロテアーゼで酵素的に処理することができる。プロテアーゼでの処理は、タンパク質の分子量を低下させ、イオン化可能基数を増加させ、疎水性アミノ酸を露出させ、分子間相互作用を高める官能基を露出させることによって、卵アルブミンタンパク質の起泡性及び泡安定性を改善することができる。
【0068】
別の一実施形態によれば、乾燥組成物においては、
-界面活性剤:親水コロイドの重量比が10:1~1:1、例えば8:1~2:1である、
-緩衝剤の含有量が少なくとも20重量%、例えば少なくとも40重量%である、
-界面活性剤と親水コロイドの全体の含有量が少なくとも35重量%、例えば少なくとも50重量%である、並びに/又は
-界面活性剤、親水コロイド及び緩衝剤の全体の含有量が少なくとも75重量%、例えば少なくとも85重量%である。
【0069】
さらに、乾燥組成物は、こうした一実施形態によれば、場合によっては、少なくとも5重量%の香味剤を含むことができる。
【0070】
別の一実施形態によれば、乾燥組成物においては、
-界面活性剤:親水コロイドの重量比が10:1~1:1、例えば8:1~2:1である、
-緩衝剤の含有量が少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%である、
-界面活性剤と親水コロイドの全体の含有量が少なくとも20重量%、例えば少なくとも35重量%である、並びに/又は
-界面活性剤、親水コロイド及び緩衝剤の全体の含有量が少なくとも75重量%、例えば少なくとも85重量%である。
【0071】
さらに、乾燥組成物は、こうした一実施形態によれば、場合によっては、少なくとも5重量%の香味剤を含むことができる。
【0072】
別の一実施形態によれば、乾燥組成物においては、
-界面活性剤:親水コロイドの重量比が10:1~1:1、例えば8:1~2:1である、
-緩衝剤の含有量が少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%である、
-界面活性剤と親水コロイドの全体の含有量が少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%である、並びに/又は
-界面活性剤、親水コロイド及び緩衝剤の全体の含有量が少なくとも75重量%、例えば少なくとも85重量%である。
【0073】
さらに、乾燥組成物は、こうした一実施形態によれば、場合によっては、少なくとも5重量%の香味剤を含むことができる。
【0074】
既述のとおり、こうした乾燥組成物は、界面活性剤、該界面活性剤はタンパク質である、泡安定剤として作用する親水コロイド、緩衝剤、及び水を含む水性液体組成物を凍結乾燥又は噴霧乾燥することによって調製することができる。
【0075】
更なる説明がなくとも、当業者は、前述の説明によって、本発明を最大限に利用することができると考えられる。前述の好ましい具体的実施形態は、したがって、単なる説明であって、本開示を決して限定するものではないと解釈すべきである。
【0076】
本発明を具体的実施形態を参照して上述したが、本発明を本明細書に記載する特定の形態に限定することを意図したものではない。そうではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、上で具体的に記述したもの以外の実施形態、例えば、上記のものとは異なる実施形態がこれら添付の特許請求の範囲内で同様に可能である。
【0077】
特許請求の範囲においては、「含む(comprises/comprising)」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除しない。さらに、個々の特徴が異なる特許請求の範囲に含まれる場合もあるが、場合によってはこれらを有利に組み合わせることもでき、異なる請求項における2つの特徴の包含は、これら特徴の組合せが可能ではない、及び/又は有利ではないことを意味しない。
【0078】
さらに、単数の参照は、複数を排除しない。「1つ(a、an)」、「第1の」、「第2の」などの用語は、複数を排除しない。
【0079】
生成物製造
材料
食品等級の物質
リン酸一カリウム及びリン酸二カリウム(KHPO、KHPO)並びにリン酸一ナトリウム及びリン酸二ナトリウム(NaHPO、NaHPO)はUnivarによって供給された。高ゲルインスタント卵アルブミン粉末(EAP-HGI又はEWP-HGI)並びにレギュラー超高ゲルインスタント及び高起泡インスタント卵アルブミン粉末は、Pulviver(ベルギー)によって供給された。Keltrol(登録商標)RDキサンタンガムは、CP Kelco(デンマーク)によって供給された。NPUプロテアーゼは、DSM Food Specialities BVによって供給された。香味剤はSymriseによって提供された。
【0080】
欧州薬局方に含まれる物質
なお、食品等級物質としての、卵アルブミン粉末を除く上記物質は、医薬品等級でも入手可能であることに留意するべきである(下記参照)。
【0081】
リン酸二カリウム及びリン酸一ナトリウム二水和物は、Dr.Paul Lohmannによって製造され、Kemiintressen(スウェーデン)によって供給された。Xantural 11Kは、CP Kelco(USA)によって製造され、Kemiintressen(スウェーデン)によって供給された。香味剤はMane(フランス)によって製造され、Kemiintressen(スウェーデン)によって供給された。
【0082】
装置、機器及び材料
実験室撹拌機プレート:RCT basic IKA Labortechnik(非デジタル)及びRCT basic IKA Safety control(デジタル)。水浴:PRECISION水浴及びGRANT水浴。光学顕微鏡法:顕微鏡法スライド及びカバースライドシリコーンアイソレーター(2mm厚)並びにCellA,Imaging Software for Life Science Microscopyに接続された顕微鏡。ブレンダー:平刃を備えるGastro 350 Bamix(登録商標)、メスフラスコ(500mL及び1L)。1Lの厚いガラス壁ビーカー:内径10cm、Schott Duran。2Lの厚いガラス壁ビーカー:内径12.5cm、Schott Duran。400mLガラス壁ビーカー:内径7.5cm、Schott Duran。磁気撹拌子。Neville and More(イギリス)によって供給され、Graham Packaging(オランダ)によって製造されたPETジャーRAMAPET R180(1.5L、内径12.0cm)。使用したPPキャップは、Neville and More、UK(供給業者)、Macek、NL(製造者)からのものである。
【0083】
可食陰性造影剤
表1は、実施例に使用した可食陰性造影剤の種々の処方物の組成を示す。
【0084】
表1 可食陰性造影剤の種々の処方物の組成
【表1】
[a]NPUプロテアーゼによる酵素処理。[b]酵素処理なし。
【0085】
卵白タンパク質の機能性、したがって成形性及び泡安定性を妨害し得るエタノール又は脂肪のいかなる可能な混入又は痕跡も起こらないようにするために、すべての材料を、手袋をして慎重に操作した。
【0086】
小腸を満たすのに成体が摂取する必要がある体積は0.9~1.2Lであるので、下記実験手順は、空気含有量60%の泡約1.2Lを得るために分散物500mLの製造で従うステップを示す。より少ない空気含有量を採用する場合、より多量の分散物が必要となり、すなわち、空気含有量44%の泡約1.2Lを得るには620mL必要である。
【0087】
下記生成物調製における成分の比及び量を、各実施例又は処方の項及び表1に明記する。
【0088】
緩衝剤調製
リン酸塩をメスフラスコ中でdH0(500mL)に溶解することによってリン酸緩衝剤(500mL)を調製した。リン酸緩衝剤を1Lの厚いガラスビーカーに注ぎ、溶液のpHと温度の両方を測定した。
【0089】
高ゲルインスタント卵白タンパク質(HGI-EWP)の分散物調製
HGI-EWPを、濾過したリン酸緩衝剤(500mL)に室温(22~23℃)で撹拌下分散させた。完全に均一な分散物が得られるまで混合物を撹拌した。分散物は、黄色がかり、濁っていた。
【0090】
NPUによる酵素処理
NPU(0.005%)を分散物に撹拌下添加した。混合物を前もって安定化した50℃の水浴に1時間入れ、前もって安定化した70℃の水浴に15分間移し、氷水浴中で6℃で10分間冷却した。
【0091】
親水コロイド(キサンタンガム、XG)の混合
均一な分散物が観察されるまでキサンタンガムを分散物に連続撹拌下で添加した。分散物は、黄色がかり、濁っていた。
【0092】
香味剤の混合
完全に均質になるまで香味剤を分散物に撹拌下添加した。
【0093】
この時点で、分散物を起泡させて、室温の泡を得ることができ、又は冷蔵庫に5±3℃で貯蔵することができた。分散物は、アルミ箔で覆われたガラスビーカーに貯蔵してパラフィルムで密封した場合、1~2日間貯蔵することができた。分散物は、PETジャーにその蓋を密閉して貯蔵した場合、防腐剤なしで1~2日間、又はアルゴン下で少なくとも3か月貯蔵することができた。アルゴンをその抗酸化及び抗微生物性のために防腐剤として使用した。
【0094】
泡調製
すべての成分を含む均一分散物(500mL)を、分散物がある高さから底部に直接達したときに典型的に形成される大きい気泡が形成されないように傾けた容器の内壁に向かって注ぐことによって、2Lの厚いガラス壁(内径12.5cm)又は1.5L PET容器(内径12.0cm)に移した。最終的な泡体積よりも上の容器壁に広がり付着した残留分散物によって泡の特性が影響されないことが認められたものの、分散物全体が確実に泡の中に取り込まれ、泡に変換されるように、分散物を移すときに分散物を最終的な泡体積よりも広げないようにすることが好ましい場合もある。
【0095】
空気含有量約40~60%に対応する70~140%以内のオーバーランは、患者によって十分容認された粘稠度(7.5~12cm)の泡、及びX線イメージングにおける最適な陰性密度コントラスト値(マイナス400~マイナス650HU)を与える。一実施形態によれば、オーバーランは空気含有量約60%に対応する約140%である。こうした泡は、患者によって十分容認された粘稠度(典型的に8.5~12cm)を有し、良好な陰性密度コントラスト値を与える。最適な空気含有量は、最適な粘稠度と最適な陰性密度コントラストとの良好なバランスを見つけるために極めて重要である。空気含有量は、良好な陰性密度コントラストを与えるために十分高くすべきであるが、同時に空気含有量が高すぎて十分かつ容易に流動する泡が得られないようにするべきではない(硬すぎる泡は、泡を飲むことが困難であり、又はスプーンですくうことさえ困難である)。
【0096】
以下の2つの主要ステップに分割されるプロセスにおいて、分散物を、2Lガラスビーカー又は1.5L PET容器中で平刃を用いて起泡させた。
【0097】
1)空気の取り込み及び泡形成。
分散物を平刃によって起泡させ始め、気泡が形成される間、所望の最終体積に達するまで、ブレンダーを垂直上方にゆっくり移動した。この時点で、ブレンダーを停止し、垂直下方に移動した。泡形成を開始するプロセスを慎重に行って、分解して均一な泡を得ることが著しく困難である多すぎ、かつ大きすぎる気泡が形成しないようにした。
【0098】
2)大きい気泡を分解して小さい気泡サイズを有し多分散性の低い均一な泡を得る。
ブレンダーを垂直移動させて、上限及び下限から上方及び下方に完全に転置させ、上限は所望の最終泡体積であり、下限は容器の底部(それに衝突しない)である。ブレンダーのブレードを、空気ポケットを形成せずに分散物中に連続的に維持して、余分な空気を取り込まないようにし、新しい大きい気泡を形成しないようにした。ブレンダーを上方に持って行くたびに、ブレンダーを上限で数秒余分に維持して、表面に残った大きい気泡をより効率的に分解することが好ましかった。ブレードを表面の極めて近くに持って行くときには過剰の空気を取り込まないようにかなり注意した。というのは、それは、オーバーランの増加を引き起こし、その結果、泡をより濃くし、不均一で多分散性の高い泡を与える新しい大きい気泡を形成するからである。こうした泡は、X線像の品質に支障を来す。
【0099】
泡は、泡を構成する微泡間にいかなる明瞭に見える気泡も含むべきではない。したがって、泡が均一になるまで可視気泡なしで起泡させた。1~15単位などの少量の分離した可視気泡がクマの目(bear eye)で泡の表面に検出された場合、スプーンで又はパスツールピペットなどの吸引装置で気泡を除去した。除去し得ない多すぎる気泡が表面に存在し、及び/又はバルクで存在する場合、泡を廃棄しなければならない場合もある。あるいは、再度起泡させることができる。
【0100】
空気含有量40~60%の均一な泡約1.2Lを得る起泡プロセスは、約5±1分間かかる可能性がある。
【0101】
泡の特性分析
可食陰性造影剤を特徴づける5つのパラメータを測定した:空気量、気泡サイズ、pH、安定性及び粘稠度。
【0102】
-泡に取り込まれる空気量は、重量で測定されるオーバーラン(%)、又は体積で測定される空気含有量(%)で示すことができる。オーバーランを通気系における気体-液体割当量(ration)の割合として定義し、下式[式1]によって重量で測定した。
オーバーラン=[(W-W)/W]×100 [式1]
式中、Wは所与の体積の分散物の重量であり、Wは分散物と同じ体積の泡の重量である。分散物及び泡を4cLプラスチックカップに充填し、バルクでも表面でもないところに気泡も空気ポケットもなくスパチュラで平らにすることによって秤量した。空気含有量を泡の総体積中の空気体積の割合によって求めた[式2]。
空気含有量=(V空気/V)×100 [式2]
【0103】
-(3mLパスツールピペットを用いて)泡0.5mLを、ケイ素アイソレーター(2mm厚)を有するカバースライドに移し、スライドガラスで覆うことによって、気泡サイズ(直径、d)を測定した。CellA,Imaging Softwareに接続された光学顕微鏡を用いた光学イメージングで倍率を4×にして気泡サイズを測定した。試料をスクリーニングし、気泡サイズ分布が均一であることを確認した後、気泡サイズの平均値を3番目に大きい気泡であると考えた。
【0104】
-泡のpH及び温度を、温度センサを備えたpHメーターで測定した。
【0105】
-時間及び温度による安定性。上記3つのパラメータを種々の時間(時間0-泡形成直後-並びに5、10及び/又は20分ごとに少なくとも2時間まで)で室温(22~23℃)で測定することによって安定性を評価した。オーバーランの変化(evolution)、気泡サイズ及びpH変化の評価に加えて、経時的に肉眼で観察された排液を測定することによってガラスビーカー、PET容器及び/又はシリンダ中の泡の持続時間も評価した。排液を明瞭に検出し、何も無視しないようにするために、泡を白色自然光ランプに曝露し、底部に広がり見えない可能性があるどんな小量液体でも縁に移すことによって液体検出を容易にするためにビーカー又は容器を傾けた。
【0106】
-粘稠度(流動距離)。標準30cmスケールBostwick稠度計(CSC Scientific Co.24925-000.UNSPSCコード41112501.EAN0795871687145、0791836540258.UPC795871687145、791836540258)を用いてそのステップ5.2(撹拌)の省略を除いては、ASTM F1080-93(2013)に従って、泡の流動距離を測定した。手短に言えば、試料区画(幅b=5cm、高さH=4cm、b/H=1.3、V=bH=100cm)に泡(約100mL)を全体的に充填し、平らにした。流体の流動を促進するために、稠度計を通常無視されるある角度で置く。ゲートを素早く開き、30秒後に泡の先端及び側端がステンレス鋼トラック(長さ24cm、0.5cm目盛、及び幅5cm)を移動した距離を記録し、3~4回の連続測定を平均した。
【0107】
胃腸管における実現可能性、インビトロ研究
インビトロ消化試験を泡500mLに対して行った。結果を化学的応力(胃腸液)ではなく物理的応力(温度及び模倣蠕動運動)に曝露された泡対照の変化と常に比較した。
【0108】
材料
ブタ胃粘膜由来のペプシン(P6887、3200~4500U/mg)及びブタ膵臓由来のパンクレアチン(P7545、8xUSP)はSigma-Aldrichによって供給された。ウルソルフォーク(Ursolfalk)はDr.Falk Pharma GmbH(ドイツ)によって提供された。
【0109】
方法
ペプシン(2.64mg、37U/ml)をHCl(0.01M、0.5mL)に約30℃で溶解し、前もって安定化された泡(500mL)に水浴中で37℃で徐々に滴下した。添加された胃液を含む泡を、プラスチック製偏平幅広スパチュラで極めて穏やかに均質化し(手動撹拌40秒間)、80mot/分で軌道振盪下で30分又は1時間37℃で泡対照と一緒にインキュベーションした。次いで、ウルソフォーク(2mL)と混合されたNaHCO(0.1M、7mL)中のパンクレアチン(25mg、10U/ml)を泡に徐々に滴下し、幅広偏平プラスチックスパチュラで40秒間手動撹拌して均質化した。泡を、80mot/分で軌道振盪下で30分又は1時間37℃で泡対照と一緒にインキュベーションした。
【0110】
オーバーラン、気泡サイズ、pH、安定性を測定し、更にCTイメージングによっても、最終的な泡を特徴づけた。
【0111】
胃処理と腸処理の両方で2時間の合計インキュベーション時間は、泡が急性腹部症状のない患者の胃及び近位小腸に通常滞在するであろう時間よりもかなり長かった。小腸全体における泡の予測インビボ時間を模倣するのに十分長く泡が確実に曝露されるように、インキュベーション時間を選択した。各段階で1時間は通常は固形食の消化の場合であるが、時間は液体の場合には各段階において約15~30分に著しく短縮される。固形食が胃で処理される所与の平均時間及び小腸全体を食塊として通過する時間は、各々約1時間である。これらの時間は、液体では著しく短くなる。
【0112】
CTイメージングによる泡安定性及び陰性造影評価
CTイメージング評価を、University Hospital in Malmoe(Bild-och Funktionsmedicin、SUS、Malmoe)のRadiology部門でSiemens Somatom 16(Siemens AG、Forcheim、ドイツ)CTを用いて行った。放射線量を、管電圧120kV及び参照mAs100で適用した。画像を0.75mm厚スライスで示し、冠状断及び矢状面観において再構築した。複数バッチの泡をインビトロで同時に試験し、胃及び十二指腸のストレス処置に曝露されなかったものを対照とした。泡をU形硬質プラスチックチューブに静かに注ぎ、それを体の密度を模倣するために30cmの水道水に体温(約37℃)で浸漬した。
【0113】
泡で満たされたチューブを有する容器を、臨床腹部CT検査に関して同じ曝露データを用いた断面検査のためにCT装置中に置いた。調査画像を軸方向、冠状面及び矢状面投影で示した。CTスキャン画像は、以下の評価を可能にした。
-チューブの底部における泡-液面(すなわち相分離)として示される泡不安定性。
-通常はクラスターでの、より大きい気泡サイズ形成の不在として示される泡均一性。
-泡で満たされたチューブの中央管腔におけるHU単位の密度を測定することによる泡コントラスト。
【0114】
胃腸管における実現可能性、インビボ研究。健常者における臨床試験
方法
健常な志願者は、この実現可能性調査に参加するそれらの同意書を提出した。当該志願者に陰性造影剤の臨床試験のために新たに調製された泡4杯を飲むように依頼した。飲んだ直後に全員を腹部のコンピュータ断層撮影法により撮像した。静脈内ヨード造影剤のない臨床腹部手順をSiemens Somatom 16(Siemens AG、Forcheim、ドイツ)中で仰臥位の個体に対して選択した。CT検査を、成体の最低可能放射線量を用いて管電圧120kV及び参照mAs40で行った。画像を1mm厚スライスで示し、冠状断及び矢状面観において再構築した。
【0115】
すべての泡成分は食品ベースであり、安全性限界内であったが、あらゆる高リン血症並びにナトリウム及びカリウム含有緩衝液由来の電解質異常を明らかにするために、血液試料を採取して、ナトリウム、カリウム及びリンの血清電解質レベルを調節した。さらに、高リン血症は低カルシウム血症を引き起こし得るので、カルシウムも調節した。血液試料を泡摂取の5~15分前、陰性造影剤の最初の一口の約1時間30分後、及び/又は最後の一口の5~45分後に採取した。
【0116】
軽い朝食の3時間後、志願者は、カップから直接又は直径1cmのストロー若しくはテーブルスプーンを用いて飲むことによって、複数用量(各0.30~0.37L)に分割された泡0.9~1.5Lを約1時間(1回の用量当たり12~15分)で途切れずに飲んだ。対象に摂取中少なくとも5~15分間歩くように勧め、腸管通過を促進するだけでなく、膨満感も減少させ、それによって全量を摂取できるように促した。膨満の場合、志願者は、最後の用量の摂取を控えることが許可された。
【0117】
腹部CTスキャン検査からの放射線画像上での陰性造影剤の特性を有する腸充填剤としての泡の評価及び実現可能性評価
陰性密度コントラスト値を3つの異なる点で測定し、胃腸管(胃、十二指腸、空腸、近位回腸、遠位回腸、回腸末端)の6箇所の各々及び結腸の盲腸部を平均した。小腸のループの画質及び泡充填も4ポイントスケールで評価した。同様に、嗜好性、飲用適性、膨満度、摂取の容易さ、副作用及び他のコメントを、摂取前及び摂取中、並びにCT検査直後及び24時間後に対象に問診して評価した。泡摂取前及びCT検査後の血清電解質の日常分析用に静脈血を各々採取した。
【実施例
【0118】
実施例1 処方1
泡を、食品等級成分、リン酸緩衝剤NaHPO:KHPO((75:25)、0.1M、pH7.3)、EWP(1重量%)、XG(0.25%)、香味剤(0.1~0.3重量%)を用いて調製した。
【0119】
可食陰性造影剤は、以下の特徴を示した。
-オーバーラン:約140%(空気含有量60%)
-気泡サイズ(直径):d=70~80μm
-pH7.3(22℃)
-粘稠度:9.8cm
-乾燥分:2.5%
-嗜好性:飲むことはできるが塩味の風味。
-安定性:アルミ箔で覆われたガラスビーカー中の泡は持続時間(全く排液なし)が約1時間5分であり、これは泡摂取とCT-abd検査の両方に必要な時間よりも長い時間である。
-インビトロ消化試験における実現可能性
【0120】
泡の特性分析を、全消化処理の最後に行って、温度、機械的応力、及び消化酵素の更なる変化の点で胃消化と腸消化の間を妨げないようにした。泡は、約20%のオーバーランの増加を示した。pHは安定なままであった(pH7.3)。排液が認められ、その大部分は試験中に添加された胃腸液9.5mLに相当する可能性があり、したがって、全泡体積のわずか1.3%が、腸の蠕動運動によって混合され均質化され得る、泡の連続水相から排出された液体であった。インビトロ試験が予想された1時間ではなく合計2時間行われたことは言及に値する。さらに、胃腸液の量は、以下の2つの理由で、添加されたものよりも著しく少ないと予想される:a)対象は絶食状態である、b)空気が多く卵タンパク質が少量である組成物は、胃腸液を産生する最小の粘膜刺激しか誘発しないと推定される。
【0121】
CTイメージング
横、冠状及び断面のX線像を腹窓で得た。腹窓は、診断及びHU測定に使用される窓である。
【0122】
泡はチューブに沿って均一に分布し、大きい気泡からの干渉は検出されず、測定された陰性密度コントラスト値はマイナス530~マイナス725HUであった。上記排液がチューブの底部に観察された。
【0123】
-インビボ試験(臨床試験)における実現可能性
25名の50~75歳の健常な志願者(表2a)が試験に参加した。40%は50~59歳、52%は60~69歳、8%は70~75歳であった(表2b)。性別に関しては、48%男性、52%女性であった。平均年齢は61歳であった。
【0124】
表2a 臨床試験に参加した特定の性別及び年齢範囲の健常な志願者の数
【表2】
【0125】
表2b 臨床試験に参加した健常な志願者の性別及び年齢
【表3】
【0126】
CTスキャン結果は大部分が、陰性造影剤で満たされていない又は不十分に満たされた短い部分を除いて、胃腸管全体にわたりマイナス400~マイナス700HUの一貫した陰性造影値を示した(表3a)。陰性造影剤の泡の劣化は、CT検査からは不明であった。関心領域(ROI:Region of interest)値(ROI直径6~8mm)を小腸の7つの亜区域の各々で計算した。泡の平均腔内HU値は、マイナス400HU~マイナス700HUの範囲であった。極端な値は、蠕動、既存の腸固体の取り込み、及びより低い区域に向かう内在気体の押出、すなわち増幅されたHU陰性によって説明することができる。測定平均値は、検査期間の薬剤安定性を示す。小腸の最初の部分、すなわち、十二指腸及び空腸の充填を改善する試みでは、最後の10名の志願者にその右側を下にして数分間休むように頼んだ。図2にCT画像の一例を示す。胃腸管の異なる部分における遠位及び軸位断面のCTスキャン画像から、CT画像の品質、並びに泡の充填及び分布を評価した(表3b.1~3)。さらに、以下の観察も注目された。
-腸の全長を泡で満たす最適な飲み時間は、1時間であると認められた。速すぎる若しくは不安すぎる及び/又は圧倒される飲み方は、不連続でまだらな分布を招き得る。陰性造影剤の滑らかで一定した均一な通過が乱される理由は、腸の生理及び性格の個人差に起因し得る。
-カップから連続的に均等に(1回の用量当たり12~15分)直接飲むことは、良好な腸充填及び連続分布をもたらすことが示された。ストロー又はテーブルスプーンの使用は、CTスキャン画像で内在空気として容易に検出される望ましくない空気の飲み込みを促進する可能性がある。さらに、嚥下された空気は、まだらで不連続な不均一泡分布及び小腸における空気閉塞を生じる可能性がある。
-1Lの陰性造影剤は、志願者の大部分において胃腸管を満たすのに最適であることが認められた。少数の対象においては、小腸の最遠位部分を完全に充填することが不可能であろう。この問題は、すべての胃腸放射線科医によく知られており、現在の技術でもこの問題を克服するには役立たない。腸の完全な充填の成功は、個体によって消化器系の生理及び心理状態(内在空気/液体量、腸運動性、消化剤通過、小腸の弛緩度など)がかなり異なるため不確かであると考えられる。実際、1.4Lを摂取したすべての志願者が完全な充填を示したわけではなく、別の志願者は、わずか0.9Lで腸ループが適切に満たされた。
-軽度の運動、すなわち摂取中の15~20分間の歩行は、泡の充填及び分布を全体的に改善した。
-必要量の泡を飲んだ後に15~20分間右側を下にして寝ることは、CT-abd検査前に十二指腸及び空腸の充填を高めた。
-軽い朝食後に最低3時間の絶食が必要である。
-重大な副作用は報告されなかった。志願者は、鼓脹、時々の膨満又はげっぷを経験したが、それらは特に不快でもなく、歩行、飲水又は飲食後1~2時間(又は2、3の例では約8時間)で消失した。
-血清リン酸レベルはすべての対象で増加した。平均増加は0.56mmol/L(53%)であり、正常性の上限である160%を超えて増加した対象はいなかった。2名の女性対象においては、血清リン酸が飲む前の1.5mmol/Lから飲んだ後の2.2及び2.4mmol/Lに増加し、正常な上限をそれぞれ0.7mmol/L及び0.9mmol/L超えた。ナトリウム、カルシウム又はカリウムの血清レベルに変化は見られず、すべて正常範囲内のままであった。
-食味及び泡の粘稠度は、すべての対象に許容されると思われた。6名の志願者が最後(4回目)のカップに困難を来し、そのうち2名は0.9L摂取した後に飲むのを控えた。
-認められた副作用はすべて軽度であり、介入する必要はなかった。おくびが7名の健常者によって報告され、腹部膨満が4名、悪心が3名、腹部不快感が1名、膨満が飲んでいる間に2名、飲んだ後に更に2名によって報告された。2名の健常者は、軟便が朝に1回発生したと述べた。すべての関連する副作用を表3b.4に示す。すべての対象で、その夜の睡眠は妨げられず、一般的な副作用もなかった。毎日の食習慣に影響はなかった。
【0127】
表3a.1 CTスキャン検査における健常な志願者の胃腸管の最初の部分に沿って測定された陰性密度コントラスト値
【表4】
【0128】
表3a.2 CTスキャン検査における健常な志願者の回腸に沿って測定された陰性密度コントラスト値
【表5】
[a]これらの平均値間の平均値。腸の膨張がないために部分的な体積効果が存在する。
【0129】
表3a.3 CTスキャン検査中の追加情報
【表6】
【0130】
表3a.4 処置後の胃腸管の7つの部分における平均腔内ROI値。数字は、ハウンスフィールド単位を表す。ROIを典型的に直径6mmに設定した。範囲は、1区域当たりで記録された最高及び最低HUを表す。
【表7】
【0131】
表3b.1 胃腸管の最初の部分のCTスキャン画像における画質及び泡外観の評価
【表8】
[a]CTスキャン画像の品質。均一:1、分離:2、内在気体:3、内在液体:4。
[b]充填。なし:0、良好:1、極めて良好:2、悪い:3。
【0132】
表3b.2 胃腸管の最終部分のCTスキャン画像における画質及び泡外観の評価
【表9】
[a]CTスキャン画像の品質。均一:1、分離:2、内在気体:3、内在液体:4。
[b]充填。なし:0、良好:1、極めて良好:2、悪い:3。
【0133】
表3b.3 CTスキャン画像における画質及び泡外観の評価
【表10】
[a]分布:連続:1、良好:2、不連続/まだら:3
[b]エンテログラフィー:有:1、無:2、疑わしい:3
【0134】
表3b.4 基本語(MedDRA)による関連(研究者の評価)AEの処置対象数及び処置後の重症度(N=25)
【表11】
1)報告された用語は、緩い朝の運動の単一の発生であった。
【0135】
実施例2 緩衝剤の評価
一リン酸塩:二リン酸塩比
リン酸二ナトリウム:リン酸一カリウム(NaHPO:KHPO)(50:50)は、酸性環境とアルカリ性環境の両方で良好な緩衝能の緩衝pH6.8を与え、リン酸二ナトリウム:リン酸一カリウム(NaHPO:KHPO)(75:25)は、アルカリ性よりも酸性環境においてかなり良好な緩衝能の緩衝pH7.3を与える。2番目の比は以下の理由で選択された。
a)卵白タンパク質機能性は、pH7.3で改善が認められたその分散性を高めることによって強化される。
b)小腸及び腸液pHは中性pHよりもわずかに低いが、胃pHはかなり酸性である(pH1~3)。したがって、緩衝能は、アルカリ性環境よりも酸により強く対抗することができる。
【0136】
これらの2つの理由により、75:25比の一リン酸塩:二リン酸塩を最適緩衝剤として選択した。実験結果は、インビトロ消化試験(胃及び腸液への対応する曝露、体温、並びに模倣蠕動運動)後に、更にインビボ研究後にも、最適なタンパク質分散物調製及び泡の安定性を確認した。インビトロ研究では、pH、オーバーラン及び排液を経時的に測定した。インビボでは、腹部CTスキャン画像を評価することによって泡安定性を評価した。
【0137】
濃度
リン酸二ナトリウム:リン酸一カリウム(NaHPO:KHPO)(75:25)緩衝剤を0.02、0.04、0.05及び0.1Mで含む分散物から泡を調製した。最後のものは、泡1~1.5Lの摂取を安全な摂取の範囲内であるが、適切な当局(すなわち、WHO、EFSA、FDA)によって推奨されたナトリウム、カリウム及びリン酸塩の安全な取り込みに近いものにした。0.1Mによって示される最高の緩衝能という理由から、胃腸管に沿った厳しい条件(主に、胃におけるかなり低いpH)に対抗するための泡調製、並びに卵白タンパク質機能性及び泡安定性の最適条件を与える最適pH(pH7.3)のために、この緩衝剤を選択した。
【0138】
幾つかの緩衝剤濃度を、NaHPO:KHPO緩衝剤(0.02、0.04、0.05、0.1M)を用いて試験した。pH値は0.02及び0.04M緩衝剤濃度における泡のインビトロ消化処理後に安定なままであったが、そのどちらも室温(23±1℃)でそれぞれ20及び50分間静置後に排液を示した。緩衝剤濃度0.1Mで調製された泡は、消化及び室温で少なくとも1時間5分静置後に安定な泡を与えた。しかし、0.1Mは嗜好性において塩気が多すぎ、実施例1で調べた25名の志願者の大部分において泡摂取中に不快な食感を与え、塩気の食感は最高1~3時間も続くことさえあった。これに加えて、0.1M緩衝剤濃度の泡1~1.5Lのナトリウム(Na)及びカリウム(K)含有量は、安全な摂取レベル範囲内であり、摂取後に血清レベルの増加を示さなかったが、血清リン酸レベルが正常範囲(0.8~1.5mmol/L)を超える平均1.7mmol/L(25名の健常な志願者の平均値)に上昇した。この上昇は警戒すべきほどではないが(警戒が正常範囲の最大値の2倍であることを考えれば)、リン酸血清レベルは、理想的には、泡全体を摂取した後に正常範囲内のままであるべきである。
【0139】
緩衝剤濃度0.05Mで調製された泡(更に実施例7~9参照)は、少なくとも1時間5分間排液を示さなかった。同様に、それは、対応する化学的応力(胃及び小腸のそれぞれ酸性及び中性pHにおける胃液の存在)及び物理的応力(体温、37℃及び模倣蠕動運動)に対するインビトロ消化試験において安定なpH及び安定な泡を示した。インビトロ消化試験の結果は、インビボ試行及び腹部CTスキャン画像の対応する評価によって確認された。さらに、0.05Mは、食感の塩気をかなり減少させ(ほぼなくなった)、証明された証拠はないものの、濃度が0.1Mから半分に減少したので、リン酸血清レベルを正常範囲内のままにする可能性もある。
【0140】
したがって、0.05Mの緩衝剤濃度は、最適な泡安定性、及び電解質レベルの低下によるより安全な摂取を示しただけでなく、塩気の著しい減少による嗜好性の改善も示した。
【0141】
カウンターイオン
リン酸緩衝剤におけるpH及び緩衝能の程度は、リン酸アニオン種の比及び濃度によって与えられるが、ナトリウム及びカリウムは、電気的中性を維持するよりもカチオン性カウンターイオンである。したがって、最適なpH及び緩衝能が見いだされたら、生成物における塩気の減少又は抑制などの他の目的でカウンターイオンを改変することができる。
【0142】
したがって、Na(塩気指数、基準として1)及びK(塩気指数、0.6)の塩気指数を考慮して、KHPO:NaHPO(75:25)、0.05Mリン酸緩衝剤をNaHPO:KHPO(75:25)、0.05Mの代替として試験し、結果は塩気の完全な中和を示した。
【0143】
したがって、最適な緩衝剤を得る研究から、KHPO:NaHPO(75:25)、0.05Mリン酸緩衝剤が、安定な中性pHを有する安定な泡だけでなく、好ましい美味な泡を得るのにも最高の条件を与えると結論することができる。
【0144】
上記相違を除いては、緩衝剤濃度及びカウンターイオンの異なる泡すべてが同じ起泡能力、外観、気泡サイズ、オーバーラン、多分散性及び粘稠度を示した。すべての泡が同じ条件下でオーバーランに達し、オーバーラン約130~140%(空気含有量約60%)、気泡サイズ約70~80μm及び粘稠度10.6cmを示した。
【0145】
実施例3 EWPのタイプの評価
起泡性及び泡安定性が最良のEWPを決定するために、4つの異なるタイプの卵アルブミン粉末(レギュラー高ゲルインスタント、超高ゲルインスタント及び高起泡インスタント)を同じ実験室条件及び手順で泡調製に使用した。統計学的理由のため、また、再現性及び得られた結果を確認するために、3種の泡を各EWPタイプで調製した。
【0146】
リン酸緩衝剤(NaHPO:KHPO(75:25)、0.1M、pH7.3)に分散され、NPUプロテアーゼで酵素的に処理された、EWP(1重量%)を含むEWP分散物。キサンタンガム(0.25重量%)を安定剤として添加し、液体香味剤(0.15~0.3重量%)も添加した。香味剤は、好ましくは0.25~0.3重量%であった。
【0147】
同じEWPを用いた実験間のばらつきは、実験誤差(粉末添加速度、撹拌/粉末分散条件、肉眼で完全分散とみなされたときに停止された撹拌時間)及びその添加前に粉末粒子の凝集に影響し得る雰囲気の湿度などの外因によるものであり得る。凝集は、粉末の分散を妨げ、したがって系に完全に分散されず、取り込まれなかったという事実によって、成分の機能性を低下させる。
【0148】
超高ゲルは、粉末状態でより高い凝集傾向を示し、したがって溶液に十分分散させるのにより長時間を要した。これは、完全な粉末分散の成功確率を低下させる可能性がある。レギュラー、高ゲルインスタント、超高ゲルインスタント及び高起泡インスタントは、同様の粉末外観、添加及び分散手順を示した。
【0149】
異なるタイプのEWPを使用したときに差は認められなかった。すべての泡は、同じ起泡プロセスを施す同様の時間で目的のオーバーランに達し、すべての泡は、大きい気泡を分解して均一な泡を得ると同じ外観を示した。異なるタイプのEWPを用いて調製された4種の泡は、起泡後の色、粘稠度及び気泡サイズ分布が極めて類似した泡であった。それらの差は、裸眼では識別できなかった。
【0150】
異なるEWP粉末間の主な差は、泡の持続時間(安定性)にある。排液を経時的に評価し、試験は、安定性が以下の順で増加することを示した:超高ゲル(相分離は35分後に観察された)、高起泡インスタント(相分離は50分後に観察された)、レギュラー(相分離は1時間10分後に観察された)、及び高ゲルインスタント(相分離は1時間20分後に観察された)。安定性は、オーバーランを経時的に測定することによっても評価され、すべての泡が排液に関して同じ安定性傾向を示したと言うことができる。しかし、平均値及び明確な傾向を3つの実験から求めることは極めて困難であった。高ゲルインスタント(及び2番目にレギュラー)は、オーバーランにおいて経時的に最低の増加値、したがってより高い安定性を示すと思われたが、統計学的により良好で信頼できる結論的な傾向にはより多くの実験が必要かもしれない。
【0151】
これらの実験から、高ゲルインスタントEWPが最良の泡安定性結果を示したと結論することができる。
【0152】
実施例4 EWP濃度及びEWP:XG比の評価
EWP濃度を増加させ(0.2、0.5、1、2及び3重量%)、キサンタンガム(0.25、0.375、0.5、0.625、0.75重量%)を添加して、分散物を調製し、分散物を起泡させて空気含有量60%又は40%の泡を得た。泡安定性を評価するために、EWP濃度の評価をXG濃度変化と組み合わせる必要があった。というのは、タンパク質:安定剤比も表4及び更なる実施例5に見られるように安定性に影響するからである。
【0153】
表4 泡安定性におけるEWP濃度、XG濃度及び空気含有量の効果
【表12】
【0154】
XGより高い比の、増加量のEWPは、均一な泡形成及び安定性がより良好であった。EWP濃度が高いほど、起泡時に空気を取り込む第1の段階で形成される気泡が小さく、第2のステップ中に起泡させて均一な泡を得る間にそれらを分解することがより容易である。したがって、XG濃度がEWP濃度よりも低いとすれば、EWP濃度を増加させると、多分散性の低い均一な流動性泡がより容易に、より速く得られた。XGをEWPより高い比で添加すると、得られる泡は、空気を取り込むときにかなり大きい気泡を示し、これらの気泡は、それらを分解することがかなり困難であるために、均一な泡の形成を阻止し、妨害した。
【0155】
同様に、EWP及びXGの濃度が高いほど、泡安定性も高い。系のタンパク質が多いほど、連続水相中に分散した気泡を安定化するのに多量の安定剤が必要である。行われた実験から、EWP:XG(4:1)比がより良好な泡安定性に最適な一つであることが認められた。(タンパク質:安定剤比についての更なる情報を実施例5に見つけることができる)。
【0156】
空気含有量の減少(60%から40%へ)は、EWPとその対応するXG比(4:1)の両方の増加を必要とする。したがって、EWP1重量%及びXG0.25重量%並びに空気含有量60%の泡は、EWP2重量%及び0.5重量%並びに空気含有量40%の泡と同様の安定性を示した。両方の泡は、界面活性剤と安定剤の両方のより高い濃度のために、空気含有量40%の泡のより高い液体含有量にもかかわらず同じ流体挙動を示したが、粘稠度は、主にXG濃度の増加による影響を受けた。
【0157】
EWP2重量%及びXG0.5重量%を含む分散物において起泡性と泡安定性の両方が著しく改善される。流体および気泡サイズの小さい均一な泡を急速に(2.5分間の起泡後でも)得ることができ、アルミ箔でわずかに覆われた開放ビーカー中で2時間45分安定なままであった。
【0158】
しかし、EWP濃度を2.5及び3重量%にその対応するXG添加(それぞれ0.625及び0.75重量%(EWP:XG、4:1)と共に増加させると、多分散性の低い均一な泡を起泡中に得ることが明らかに困難であった。大きい気泡が表面及びバルクで形成され、5分間起泡後に分解することができなかった。さらに、粘稠度がかなり減少し、単に1回の用量(300mL)でも飲み干すことが困難になった。
【0159】
実施例5 安定剤(キサンタンガム)濃度の評価
増加量のキサンタンガム(0、0.15、0.20、0.25、0.31重量%)を高ゲルインスタントEWPに添加して、安定な流動性泡を得る最適量を評価した。安定剤の最適量を検討し、決定するために、泡を同じ条件及び手順で調製した。すべての試験を2回行って、再現性及び得られた結果を確認した。
【0160】
EWP分散物は、リン酸緩衝剤(NaHPO:KHPO(75:25)、0.1M、pH7.3)に分散されてNPUプロテアーゼで酵素的に処理されたEWP(1重量%)を含んだ。キサンタンガムを安定剤として添加し、液体香味剤(0.15~0.3重量%)も添加した。
【0161】
すべての泡を、キサンタンガムの濃度を除いて同じ手順及び処方に従って調製した。
【0162】
キサンタンガム(0、0.15重量%)を含む分散物は、目的のオーバーラン(空気含有量)に達するためにより長い時間を必要とすることによってかなり低い起泡性を示した。分散物及び形成された泡は、より高いキサンタンガム濃度の泡よりも著しく低粘稠性であり、水のようなものに近すぎることが認められ、低粘度によってブレンダーを安定に維持することが困難になり、ブレンダーが特にがたついた。0.20、0.25重量%を含む分散物は、極めて類似した起泡能力及び極めて類似した泡外観、並びに気泡サイズ及びオーバーランにおいて極めて類似した値を示した。それに対して、0.31重量%を含む分散物は、明らかにより粘稠性の分散物及びより硬い泡を起泡プロセスの出発点から示した。大きすぎる気泡が形成され、それらを分解しようとすると、均一な泡を得るのに障害があった。実際、最終的な泡は、肉眼で直接観察することができる著しく高い多分散性を示した。したがって、0.31重量%は、均一な流動性泡の形成を阻止し、妨害した。
【0163】
0、0.15、0.20及び0.25重量%のXGを含み、空気含有量約60%の泡は、気泡サイズ約-70~80μmの流動性泡となった。しかし、XG0.31重量%及び空気40%を含む泡は、著しく濃い(より高い液体含有量にもかかわらずスプーンですくうことができる)多分散の泡を示した。
【0164】
0、0.15、0.31重量%を含む分散物においては泡形成直後に、キサンタンガムを0.20重量%で添加したときには泡形成の15分後に、それぞれ液相が観察されたので、キサンタンガム(0、0.15、0.20、0.31重量%)を含む泡は明らかに不安定であった。平均1時間15分間安定であった均一な流動性泡を得ることができるキサンタンガム0.25重量%の場合、明確な発生が認められた。
【0165】
これらの実験から、0.25重量%キサンタンガムが、空気60%を含む泡において最適な起泡能力、泡安定性及び外観(気泡サイズ約-70~80μmの均一で多分散の低い流動性泡)を与える最適量であると結論することができる。
【0166】
実施例6 起泡条件の評価
速度
HPO:NaHPOリン酸緩衝剤(75:25)、0.05M(加水分解性酵素処理なし)中に高インスタントゲルEWP(1重量%)及びXG(0.25重量%)を含む分散物を、平刃を備えたブレンダーBamix(登録商標)Gastro350を用いて18000rpm及び23000rpmで起泡させて、系にかかる機械力の影響を検討した。オーバーランの変化の測定によって、また、底部に存在し得る液相を無視しないように泡を白色自然灯に曝露し(ビーカーを傾け)ている間の肉眼による排液の検出によって、すべての泡を経時的に特徴づけた。
【0167】
異なるブレード速度で形成された泡の起泡性でも、泡安定性でも、気泡サイズでも、多分散性でも、粘稠度でもない差は認められなかった。
【0168】
温度
HPO:NaHPO(75:25)、0.05Mリン酸緩衝剤中に高ゲルインスタントEWP(1重量%)及びXG(0.25重量%)並びに香味剤(0.3重量%)を含む泡を調製して、起泡性及び安定性における起泡プロセス中の分散物の温度の影響を評価した。2つの分散物を調製し、冷蔵庫に2~3時間貯蔵して、分散物を約9℃に冷却した。次いで、分散物を氷水浴中に置いて、それらを冷却状態で維持し、ほぼ5分間18000rpmで起泡させた。並行して、2つの分散物を調製し、約20℃にわずかに冷却し、室温でほぼ5分間18000rpmで起泡させた。同様に、23℃の分散物を室温でほぼ5分間18000rpmで起泡させた。
【0169】
すべての泡は、極めて類似した良好な起泡性を示した。すべての分散物は、目的の空気含有量に達するのに同じ起泡時間を要した。起泡プロセス中の第1の段階中に形成されたすべての大きい気泡は、容易に分解して、オーバーラン(120~140%)又は空気含有量(約60%)、気泡サイズ(約-70~80μm)及びこれら2つのパラメータの経時的変化の値が類似した均一な多分散の低い流動性泡を生成することができた。同様に、粘稠度は10.3cmと測定され、これは、室温で得られた泡の粘稠度(10.6cm)と著しく類似している。
【0170】
5、10、15又は20分毎に2時間の排液評価によって泡安定性を評価した。排液は、すべての泡の底部においてそれらの調製の1時間5分後に検出され始めた。したがって、分散温度は起泡性にも泡安定性にも影響しないと結論することができる。
【0171】
実施例7 処方2
泡を、食品等級成分、リン酸緩衝剤KHPO:NaHPO((75:25)、0.05M、pH7.3)、EWP(1重量%)、XG(0.25重量%)、香味剤(0.1~0.3重量%)を用いて調製した。
【0172】
処方2並びに更なる処方3及び4(下記参照)におけるEWPは、NPUで酵素的に処理されなかった。というのは、泡がタンパク質分解処理なしで同じ挙動及び性質を示したからである。
【0173】
可食陰性造影剤は、以下の特徴を示した。
-オーバーラン:約140%(空気含有量約60%)
-気泡サイズ:d=70~80μm
-pH7.3(22℃)
-粘稠度:10.6cm
-嗜好性:飲むことはできるがあいまいな風味。
-安定性:泡はアルミ箔で覆われたガラスビーカー中で持続時間(全く排液なし、及び一定の全泡体積)が約1時間15分であり、これは泡摂取とCT-abd検査の両方に必要であると認められた合計時間(約50分)よりも長い時間である(合計約60分、実施例1、インビボ試験参照)。
【0174】
-インビトロ消化試験における実現可能性:
泡の特性分析を胃及び腸の消化処理後に行った。泡を体温(37℃)、機械的応力及び消化酵素に曝露した。泡は、約20%のオーバーランの増加を示した。pHは安定なままであった(pH7.3)。排液が認められ、その大部分は消化処理中に添加された胃腸液9.5mLに相当する可能性があり、したがって、全泡体積のわずか1.3%が泡の連続水相から排出された液体であった。インビトロ試験が1時間(流動食の消化時間)ではなく合計2時間(固形食の消化時間)行われたことは言及に値する。さらに、胃腸液の量は、以下の2つの理由で、添加されたものよりも著しく少ないと予想される:a)対象は絶食状態である、b)空気が多く卵タンパク質が少量である組成物は、胃腸液を産生する最小の粘膜刺激しか誘発しないと推定される。
【0175】
実施例8 処方3
泡を、食物ベースの成分、リン酸緩衝剤KHPO:NaHPO((75:25)、0.05M、pH7.3)、EWP(2重量%)、XG(0.5重量%)、香味剤(0.1~0.3重量%)を用いて調製した。
【0176】
処方3のEWPは、処方2及び4と同様にNPUで酵素的に処理されなかった。
【0177】
可食陰性造影剤は、以下の特徴を示した。
-オーバーラン:70~100%
-空気含有量:43~50%
-気泡サイズ:d=70~120μm
-pH7.3(22℃)
-粘稠度:7.4~9.3cm
-乾燥分:2.9%
-嗜好性:飲みやすくあいまいな風味。
-安定性:泡はアルミ箔でわずかに覆われたガラスビーカー中で持続時間(全く排液なし、及び一定の総体積)が約7時間であった。液相は、泡で満たされた密閉ガラス瓶中で少なくとも26時間検出されなかったが、気泡サイズの増加が認められた。
【0178】
-インビトロ消化試験における実現可能性
シミュレートされた胃及び腸の消化処理後に泡の特性分析を行った。泡を体温(37℃)、機械的応力及び消化酵素に曝露した。流動性泡は健常な志願者のインビボ試験(処方1)中に1時間未満で大腸に達することが認められたので、泡を胃及び腸の消化酵素と一緒に各段階で30分間インキュベーションした。泡は、オーバーランが約0~5%増加し(これは実験誤差内の値である)、100mLガラスシリンダ中で一定の全泡体積(100mL)を示し、安定なpH(pH7.3)を示した。排液がビーカーの底部に観察されたが、体積は、連続水相にある程度取り込まれたままかもしれない、腸において蠕動運動によって混合され均質化され得る、添加胃腸液の体積(9.5mL)よりはるかに少なかった。さらに、インビボの胃腸液の量は、以下の2つの理由で、インビトロ試験中に添加されたものよりも著しく少ないと予想される:a)対象は絶食状態である、b)空気が多く卵タンパク質が少量である組成物は、胃腸液を産生する最小の粘膜刺激しか誘発しないと推定される。
【0179】
CTイメージング
CT画像の1.25mm厚のスライスを主に横方向で示した。矢状断及び冠状断画像を軸位像から再構築した。画像のデフォルト表示を腹窓に設定する。反転像表示及び肺野表示は、精密診断のオプションである。
【0180】
腹部(CT-abd用の通常の診断グレースケール)と肺野(肺のCTを読むための明るいグレースケール)の両方で得られたCTスキャン画像によれば、泡は、チューブに沿って安定に均一に分布したことが示された。平均気泡サイズは経時的に消化後に増加したが、泡の不安定性のために、分離した不釣合いな大きい気泡からの干渉は検出されなかった。さらに、負のHUの造影密度が冠状及び横断面の異なる点で測定され、平均値約マイナス400であった。
【0181】
-インビボ試験(臨床試験)における実現可能性
3名の健常な志願者が泡処方3約900mLを摂取した。というのは、900mLは、小腸を満たすのに十分であると認められたからである。従った手順は、処方1の臨床試験下のインビボ試験と同じであった。
【0182】
CTスキャン画像(図3)は、小腸においてほぼ連続な良好で均一な分布を示した。表5は、胃腸管の異なる部分で得られた造影密度[HU]値を示す。
【0183】
3名の志願者は、泡が極めて飲みやすく、嚥下しやすく(処方1及び2よりも好ましい)、食感及び食味がなめらかで十分容認されるとみなした。副作用は報告されなかった。
【0184】
表5 処方3の泡で満たされた胃腸管の異なる部分で得られた造影密度
【表13】
【0185】
実施例9 処方4
欧州薬局方(Ph.Eur.)に含まれる成分、リン酸緩衝剤KHPO:NaHPO((75:25)、0.05M、pH7.3)、EWP(2重量%)、XG(0.5重量%)、香味剤(0.1~0.3重量%)を用いて泡を調製した。
【0186】
処方4のEWPは、処方2及び3と同様にNPUで酵素的に処理されなかった。
【0187】
処方3と4の唯一の相違は、成分の供給業者及び用途であり、処方3で使用されたのは食品等級であり、処方4で使用されたのはPh.Eur.に含まれるものである。
【0188】
可食陰性造影剤は、以下の特徴を示した。
-オーバーラン:75~115%
-空気含有量:43~50%
-気泡サイズ:d=100~140μm
-pH7.3(22℃)
-粘稠度:7.5~8.6cm
-嗜好性:飲みやすくあいまいな風味。
-安定性:泡は開放ジャー中で持続時間(全く排液なし、及び一定の総体積)が少なくとも7時間であった。
【0189】
アルゴンで分散物の最上部と容器の蓋の間の空気を置換した密閉PET容器に5±3℃の制御温度下で貯蔵された分散物に対する微生物学的分析によって分散物安定性も評価した。微生物学的分析を、総好気性微生物数(TAMC:total aerobic microbial count)、総酵母/カビ数(TYMC:total yeast/mold count)、サルモネラ、大腸菌(Escherichia coli)及び胆汁耐性グラム陰性細菌について定期的に行った。処方3の分散物は、表6に示すように、少なくとも3か月間安定であった。
【0190】
表6 アルゴンで満たされた密閉容器中に5±3℃で貯蔵された分散物の微生物学的分析結果
【表14】
【0191】
Ph.Eur.に含まれる成分を含む処方4で得られた泡は、製造中と特性分析中の両方で処方3の泡と同じ外観及び性質を示した。さらに、アルゴン及び冷却(5±3℃)下で貯蔵された処方4で調製された分散物に対して行われた微生物学的分析は、少なくとも3か月の安全な品質保持期間を示した。したがって、処方4から得られた泡は、病院における医療用製品の適切な使用の徴候を示した。
【0192】
さらに、処方4の泡の結果から確認されるところによれば、生成物製造と特性分析の両方の高度の再現性は、すべてのパラメータ(オーバーラン、空気含有量、気泡サイズ、pH、粘稠度、嗜好性、安定性)が泡の目的の適用例における良好な結果の限定的な範囲内にあることを示した。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b