(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】エアロゾル形成基体を誘導加熱するための多層サセプタ組立品
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20220927BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20220927BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F47/00
(21)【出願番号】P 2019553217
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2018058041
(87)【国際公開番号】W WO2018178218
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ロッソル アンドレアス ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フルサ オレク
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525341(JP,A)
【文献】特表昭58-501062(JP,A)
【文献】特許第5986326(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/177265(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/177045(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/184929(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/005705(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101045356(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-40/95
A24F 47/00
A24D 1/20
A24D 3/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体を誘導加熱するための多層サセプタ組立品であって、前記サセプタ組立品が少なくとも、
第一のサセプタ材料を含む第一の層と、
500℃より低いキュリー温度を有する第二のサセプタ材料を含む、前記第一の層に密接に連結された第二の層と、
前記第二の層に密接に連結された第三の層であって、特定の応力補償材料および特定の層厚さを含み、これによって前記層を相互に密接に連結した後、および/または多層サセプタ組立品の熱処理の後、前記第一の層によって第二の層の上へとかけられた圧縮応力または引張応力に対抗するために、少なくとも補償温度範囲内で前記第三の層が前記第二の層の上へと引張応力または圧縮応力をかけて、前記補償温度範囲が少なくとも前記第二のサセプタ材料の前記キュリー温度より20K低い温度から前記第二のサセプタ材料の前記キュリー温度にまで及ぶ、第三の層と、を備えるサセプタ組立品。
【請求項2】
前記第二のサセプタ材料の熱膨張係数が、前記第一のサセプタ材料の熱膨張係数より大きく、かつ前記応力補償材料の熱膨張係数より小さい、請求項1に記載のサセプタ組立品。
【請求項3】
前記第二のサセプタ材料が負の磁気歪み係数を有し、また前記第三の層の前記特定の応力補償材料および前記特定の層厚さが、前記層を相互に密接に連結した後、および/または前記多層サセプタ組立品の熱処理後、前記第三
の層が前記第二の層の上へと圧縮応力をかけて、前記第二の層が少なくとも前記補償温度範囲内で正味圧縮応力状態にあるようにする、請求項1または2のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項4】
前記第二のサセプタ材料の熱膨張係数が、前記第一のサセプタ材料の熱膨張係数より小さく、かつ前記応力補償材料の熱膨張係数より大きい、請求項1に記載のサセプタ組立品。
【請求項5】
前記第二のサセプタ材料が正の磁気歪み係数を有し、また前記第三の層の前記特定の応力補償材料および前記特定の層厚さが、前記層を相互に密接に連結した後、および/または前記多層サセプタ組立品の前記熱処理後、前記第三
の層が前記第二の層の上へと引張応力をかけて、前記第二の層が少なくとも前記補償温度範囲内で正味引張応力状態にあるようにする、請求項1または4のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項6】
前記第三の層の前記特定の応力補償材料および前記特定の層厚さが、前記層を相互に密接に連結した後、および/または前記多層サセプタ組立品の前記熱処理後、少なくとも前記サセプタ
組立品の前記温度が前記第二のサセプタ材料の前記キュリー温度に達した時、前記第二のサセプタ材料の電気抵抗の変化を高めるために、前記第三の層が引張応力または圧縮応力を前記第二の層の上へとかけるようにする、請求項1~5のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項7】
前記第三の層の前記特定の応力補償材料および前記特定の層厚さが、前記層を相互に密接に連結した後、および/または前記多層サセプタ組立品の前記熱処理後、少なくとも前記サセプタ
組立品の前記温度が前記第二のサセプタ材料の前記キュリー温度に達した時、前記第二のサセプタ材料の表皮厚さの変化を高めるために、前記第三の層が引張応力または圧縮応力を前記第二の層の上へとかけるようにする、請求項1~6のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項8】
前記第三の層の前記特定の応力補償材料および前記特定の層厚さが、前記層を相互に密接に連結した後、および/または前記多層サセプタ組立品の前記熱処理後、少なくとも前記補償温度範囲内で、前記第一の層によって前記第二の層の上へとかけられた圧縮応力または引張応力を本質的に補償するために、前記第三の層が引張応力または圧縮応力を前記第二の層の上へとかけるようにする、請求項1、2、または4のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項9】
前記第一のサセプタ材料が、アルミニウム、鉄、または鉄合金、特にグレード410、グレード420、またはグレード430のステンレス鋼を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項10】
前記第二のサセプタ材料が、ニッケルまたはニッケル合金を含
む、請求項1~9のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項11】
前記応力補償材料がオーステナイトステンレス鋼を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項12】
前記第三の層の層厚さが、前記第一の層の層厚さの0.5~1.5倍、特に0.75~1.25倍の範囲であり、好ましくは前記第三の層の層厚さが前記第一の層の層厚さと等しい、請求項1~11のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項13】
前記第一の層、前記第二の層、および前記第三の層が、前記多層サセプタ組立品の隣接した層である、請求項1~12のいずれか一項に記載のサセプタ組立品。
【請求項14】
エアロゾル形成基体と、請求項1~13のいずれか一項に記載のサセプタ組立品と、を備える、エアロゾル発生物品。
【請求項15】
前記サセプタ組立品が、前記エアロゾル形成基体内に位置する、請求項14に記載のエアロゾル発生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基体を誘導加熱するための多層サセプタ組立品に関し、ならびにこうした加熱される多層サセプタ組立品およびエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱に伴い吸入可能なエアロゾルを形成するエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品は、先行技術から一般的に周知である。基体を加熱するために、エアロゾル発生物品は、電気ヒーターを備えるエアロゾル発生装置の中に受容されてもよい。ヒーターは、誘導源を備える誘導ヒーターであってもよい。誘導源は、熱を発生する渦電流および/またはヒステリシス損失をサセプタ内に誘起する交流電磁場を発生する。サセプタ自体は、加熱されるエアロゾル形成基体と熱的に近接している。特に、サセプタは、エアロゾル形成基体と直接的に物理的接触をしている物品内に統合されてもよい。
【0003】
基体の温度を制御するために、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料でそれぞれ作製された第一の層および第二の層を備える二層サセプタ組立品が提案されてきた。第一のサセプタ材料は、熱損失に関して、それ故に加熱効率に関して最適化されている。対照的に、第二のサセプタ材料は温度マーカーとして使用される。このために、第二のサセプタ材料は、第一のサセプタ材料のキュリー温度より低いがサセプタ組立品の所定の加熱温度に対応するキュリー温度を有するように選ばれる。そのキュリー温度で第二のサセプタの透磁率は1へと低下し、第二のサセプタの磁性の強磁性から常磁性への変化につながり、第二のサセプタの電気抵抗の一時的な変化が付随して起こる。それ故に、誘導源によって吸収された電流の対応する変化を監視することによって、第二のサセプタ材料がそのキュリー温度に達した時に、およびそれ故に、所定の加熱温度に達した時に、その変化を検知することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サセプタ材料の所望の特性は典型的に、組み立てられていない状況で個別の材料に関して選ばれる。しかしながら、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を相互に組み立てて二層サセプタ組立品を形成する時、層の特定の特性、特に磁性は、組み立てられていない状態と比較して変化する場合がある。多くの場合において、層を結合し、さらに組立品を加工することは、本来の望ましい特性および層材料の効果をなお損なう場合があることが観察されてきた。
【0005】
従って、先行技術の解決策の利点を有しながらも、それらだけにとどまらない、エアロゾル形成基体の誘導加熱のための多層サセプタ組立品を有することが望ましいことになる。特に、多層サセプタ組立品の結合された性質およびその加工の考慮のために調整された特定の層特性および効果を提供する多層サセプタ組立品を有することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、少なくとも第一の層および第一の層に密接に連結された第二の層を含むエアロゾル形成基体を誘導加熱するための多層サセプタ組立品が提供されている。第一の層は第一のサセプタ材料を含む。第二の層は、500℃(摂氏温度)より低いキュリー温度を有する第二のサセプタ材料を含む。
【0007】
第一のサセプタ材料はエアロゾル形成基体を誘導加熱するために構成されていて、かつ第二のサセプタ材料はサセプタ組立品の温度を監視するために構成されていることが好ましい。このために、第二のサセプタ材料のキュリー温度は、サセプタ組立品の所定の加熱温度に対応することが好ましい。
【0008】
本明細書で使用される「密接に連結された」という用語は、特に層構造と平行な方向に二つの層の間で機械的力が伝達されうるような、多層組立品内の二つの層の間の機械的連結を指す。連結は、層状、二次元的、区域的、または全面積結合、すなわち2つの層のそれぞれの対向する表面にわたる結合とすることができる。連結は直接的であってもよい。特に、相互に密接に連結された二つの層は、相互に直接接触していてもよい。別の方法として、連結は間接的であってもよい。特に、二つの層は、少なくとも一つの中間層を介して間接的に連結されてもよい。
【0009】
第二の層は、第一の層の上に、かつ密接に連結されることが好ましく、特に第一の層と直接的に接続されることが好ましい。
【0010】
本発明によると、相互に密接に連結された複数の層を備えるサセプタ組立品の加工は、一つの層が圧縮応力または引張応力を別の層の上へとかけるのを引き起こす場合があることが認識されている。これは、様々な層材料の熱膨張の間の特異的な差異に起因する場合がある。例えば、上述の通りの二層サセプタ組立品の加工は、両方の層材料を所与の温度で相互に密接に接続することを含む場合がある。層を接続する後に、組み立てられたサセプタの熱処理(アニーリングなど)が続いてもよい。サセプタ組立品の冷却中などの、その後の温度の変化中、個々の層は、組立品の結合している性質に起因して自由に変形することができない。その結果、第二の層が第一の層の熱膨張係数より大きい熱膨張係数を有する場合、冷却に伴い第二の層の中に引張応力状態が発生する場合がある。この引張応力状態は結果として、磁気歪みに起因して第二のサセプタ材料の磁気的な感受性に影響を与える場合がある。Ni(ニッケル)などの負の磁気歪み係数を有する第二のサセプタ材料の場合、それ故に磁気的な感受性は低下する場合がある。特に、第二のサセプタ材料のキュリー温度の周囲の関連する温度範囲では、低減された磁気的感受性は表面薄層の深さの変化を引き起こす場合があり、それ故に第二のサセプタ材料の抵抗の一時的な変化があまり顕著ではなくなる。このことは結果として、望ましくないことに温度マーカーとしての第二の層の機能性を損なう場合がある。同様に、第二の層が第一の層の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を有し、かつNi(ニッケル)およびFe(鉄)が主要な成分である多数の合金などで、正の磁気歪み係数を有する場合には、感受性の低減という類似の好ましからざる効果が観察される。
【0011】
これに対抗するために、本発明によるサセプタ組立品は、第二の層に密接に連結された第三の層をさらに含む。多層サセプタ組立品の加工後、特に層を相互に密接に連結した後、および/または多層サセプタ組立品の熱処理の後、例えば熱処理の後、第三の層が少なくとも補償温度範囲内で引張応力または圧縮応力を第二の層の上へとかけるように、第三の層は特定の応力補償材料を含み、かつ特定の層厚さを備える。補償温度範囲は、少なくとも第二のサセプタ材料のキュリー温度より20K低い温度から、第二のサセプタ材料のキュリー温度にまで及ぶ。
【0012】
こうして、第三の層によって第二の層の上へとかけられた引張応力または圧縮応力は、有利なことに加工後に第一の層によって第二の層の上へとかけられた圧縮応力または引張応力に対抗する。それに応じて、第三の層は有利なことに、第二の層の本来の所望の特性および機能性、例えば温度マーカー機能を保つことを可能にする。特に、第三の層は有利なことに、サセプタ組立品内に組み込まれていないかのように、第二のサセプタ材料の磁気的な感受性を維持することを可能にする。これは結果として、サセプタ組立品内の第二のサセプタ材料の抵抗の一時的な変化を、組み立てられていない状況と比較して同じぐらい顕著に保持するために特に有利であることを示す。
【0013】
本明細書で使用される、多層サセプタ組立品の加工は、層材料を所与の温度で相互に密接に連結させること、またはアニーリングなどの多層サセプタ組立品の熱処理のうちの少なくとも一つを含んでもよい。特に、サセプタ組立品は熱処理されたサセプタ組立品であってもよい。いずれの場合でも、加工中に本明細書で呼ばれる場合、層の温度または組立品の温度はそれぞれ、エアロゾル形成基体を誘導加熱するために使用される時のサセプタ組立品の動作温度とは異なる。典型的には、層材料を相互に密接に接続する間の温度および多層サセプタ組立品の熱処理の間の温度は、誘導加熱のためのサセプタ組立品の動作温度より高い。
【0014】
一例として、第一の層は、エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのフェライトステンレス鋼を含んでもよく、また第二の層は、不純物の性質に依存して、約354℃~360℃(すなわち、627K~633K)の範囲のキュリー温度をそれぞれ有する温度マーカーとしてのNi(ニッケル)を含んでもよい。このキュリー温度は、エアロゾル形成基体の加熱に関してほとんどの用途に良好に適合している。加工上の理由のために、サセプタ組立品はアニーリングされてもよい。後続の冷却中、第一の層は、ニッケルよりフェライトステンレス鋼の熱膨張係数がより低いことに起因して、ニッケルの上へと望ましくない引張応力をかける場合がある。望ましくない引張応力に対抗するために、第三の層が第二の層の上に、第一の層とは反対側に提供され、応力補償材料を有し、また熱処理後の組立品の冷却に伴い、少なくともニッケル層のキュリー温度より20K低い温度からニッケル層のキュリー温度までの温度範囲において、第三の層がニッケル層の上へと対抗する圧縮応力をかけるように、層厚さが特に選ばれる。第三の層は、ニッケルより大きい熱膨張係数を有するオーステナイトステンレス鋼を含むことが好ましい。
【0015】
第二のサセプタ材料のキュリー温度より20K低い温度から第二のサセプタ材料のキュリー温度までの補償温度範囲は、エアロゾルを発生するために使用されるサセプタ組立品の動作温度の典型的な範囲に対応する。
【0016】
有利なことに、補償温度範囲の幅は20Kより大きくてもよい。それに応じて、補償温度範囲は、第二のサセプタ材料のキュリー温度より少なくとも50K、特に100K、好ましくは150K低い温度から、第二のサセプタ材料のキュリー温度にまで及んでもよい。最も好ましくは、補償温度範囲は、少なくとも周囲室温から第二のキュリー温度にまで延びてもよい。同様に、補償温度範囲は、150℃と第二のサセプタ材料のキュリー温度との間の温度範囲、特に100℃と第二のサセプタ材料のキュリー温度との間の温度範囲、好ましくは50℃と第二のサセプタ材料のキュリー温度との間の温度範囲、最も好ましくは周囲室温と第二のサセプタ材料のキュリー温度との間の温度範囲に対応する場合がある。
【0017】
第二のキュリー温度に下から近づく時、第二のサセプタ材料内の磁化および従って任意の磁気歪み効果が消滅する。従って、補償温度範囲の上限は、第二のサセプタ材料のキュリー温度に対応することが好ましい。しかしながら、補償温度範囲の上限はまた、第二のサセプタ材料のキュリー温度より高くてもよい。例えば、補償温度範囲の上限は、第二のサセプタ材料のキュリー温度より少なくとも5K、特に少なくとも10K、好ましくは少なくとも20K高くてもよい。
【0018】
第二のサセプタ材料の熱膨張係数は、第一のサセプタ材料の熱膨張係数より大きく、応力補償材料の熱膨張係数より小さくてもよい。この構成は、第一の層、第二の層、および第三の層が隣接する層である場合、または少なくともこの順序で配置される場合に特に、有利であることを示す場合がある。
【0019】
特に、この構成では、しかし他の構成でも、第二のサセプタ材料は、負の磁気歪み係数および特定の応力補償材料を有することが好ましい場合がある。この場合、第三の層の特定の層厚さは、好ましくは多層サセプタ組立品の加工後、第三の層が圧縮応力を第二の層の上へとかけて、第二の層が少なくとも補償温度範囲内で正味の圧縮応力状態になるようにする場合がある。
【0020】
別の方法として、第二のサセプタ材料の熱膨張係数は、第一のサセプタ材料の熱膨張係数より小さく、応力補償材料の熱膨張係数より大きくてもよい。
【0021】
特に、この構成では、しかし他の構成でも、第二のサセプタ材料は、正の磁気歪み係数を有することが好ましい場合がある。この場合、特定の応力補償材料および第三の層の特定の層厚さは、多層サセプタ組立品の加工後、第三の層が引張応力を第二の層の上へと加えて、第二の層が少なくとも補償温度範囲内で正味の引張応力状態になるようにする場合がある。
【0022】
第三の層は、対抗するだけでなく、第一の層によって第二の層の上へとかけられた圧縮応力または引張応力を本質的に補償するように構成されていることが好ましい。それに応じて、第三の層の特定の応力補償材料および特定の層厚さは、多層サセプタ組立品の加工後に、少なくとも補償温度範囲内で、第一の層によって第二の層の上へとかけられた圧縮応力または引張応力を本質的に補償するために、第三の層が引張応力または圧縮応力を第二の層の上へとかけるようにする場合がある。
【0023】
上述の通り、サセプタ組立品が第二のサセプタ材料のキュリー温度に達する時、第二のサセプタ材料の磁性は強磁性から常磁性に変化する。この磁性の変化には、その電気抵抗の一時的な変化が付随して起こり、その電気抵抗の一時的な変化は結果として、サセプタ組立品の所定の加熱温度に達した時を検出するために使用される場合がある。本発明の好ましい態様によると、第三の層は、第二のサセプタ材料の抵抗の一時的な変化を保持するのを可能にするだけでなく、それぞれの抵抗の変化を高めるのも可能にするように構成される場合がある。この文脈において、第二のサセプタ材料の電気抵抗の変化を高めることは、組み立てられていない状況と比較して、すなわち他のいかなる層とも連結していない第二の層と比較して理解されるべきである。この本発明の好ましい態様によると、第三の層の特定の応力補償材料および特定の層厚さは、多層サセプタ組立品の加工の後に、少なくともサセプタの温度が第二のサセプタ材料のキュリー温度に達した時、第二のサセプタ材料の電気抵抗の変化を高めるために、第三の層が引張応力または圧縮応力を第二の層の上へとかけるようにする場合がある。特に、第二のサセプタ材料の抵抗の変化は、少なくとも補償温度範囲内で高められてもよい。別の方法として、第二のサセプタ材料の抵抗の変化は、少なくとも第二のサセプタ材料のキュリー温度の周りの少なくとも±5Kの温度範囲、好ましくは少なくとも±10Kの温度範囲、さらにより好ましくは少なくとも±20Kの温度範囲において高められる場合がある。
【0024】
上述の通り、第二のサセプタ材料の抵抗の変化は、そのキュリー温度に達した際の表皮効果と、それ故に第二のサセプタ材料内の表皮厚さの変化と密接に関連する。それ故に、本発明のさらなる態様によると、第三の層の特定の応力補償材料および特定の層厚さは、多層サセプタ組立品の加工の後に、少なくともサセプタの温度が第二のサセプタ材料のキュリー温度に達した時、第二のサセプタ材料の表皮厚さの変化を高めるために、第三の層が引張応力または圧縮応力を第二の層の上へとかけるようにする場合がある。この文脈において、第二のサセプタ材料の表皮厚さの変化を高めることは、組み立てられていない状況と比較して、すなわち他のいかなる層とも連結していない第二の層と比較して理解されるべきである。特に、第二のサセプタ材料の表皮厚さの変化は、少なくとも補償温度範囲内で高められてもよい。別の方法として、第二のサセプタ材料の表皮厚さの変化は、少なくとも第二のサセプタ材料のキュリー温度の周りの少なくとも±5Kの温度範囲、好ましくは少なくとも±10Kの温度範囲、さらにより好ましくは少なくとも±20Kの温度範囲において高められる場合がある。
【0025】
本発明によると、第三の層は第二の層に密接に連結されている。この文脈において、「密接に連結された」という用語は、第一の層および第二の層に関して上記で定義したものと同様に使用される。
【0026】
本明細書で使用される「第一の層」、「第二の層」、および「第三の層」という用語は、単に名目上のものであり、それぞれの層の特定の順序または配列を特定する必要性はない。
【0027】
第三の層は、第二の層の上に配置され、かつ第二の層に密接に連結されることが好ましく、これは次に、第一の層の上に配置され、かつ第一の層に密接に連結されてもよい。
【0028】
別の方法として、第三の層は、第一の層を介して第二の層に密接に連結されてもよい。この場合、第一の層は、第三の層と第二の層との間の中間層となる場合がある。特に、第二の層は第一の層の上に配置され、かつ第一の層に密接に連結されてもよく、これは次に、第一の層に配置され、かつ第一の層に密接に連結されてもよい。
【0029】
第一の層、第二の層、および第三の層は、多層サセプタ組立品の隣接した層であることが好ましい。この場合、第一の層、第二の層、および第三の層は、相互に直接的に密接に物理的に接触していてもよい。特に、第二の層は第一の層と第三の層との間に挟まれていてもよい。
【0030】
別の方法として、サセプタ組立品は、少なくとも一つのさらなる層、特に第一の層、第二の層、および第三の層のうちの二つのそれぞれの層の間に配置されている少なくとも一つの中間層を備えてもよい。
【0031】
第一の層または第三の層のうちの少なくとも一つは、多層サセプタ組立品の端層であってもよい。
【0032】
サセプタ組立品の加工に関して、特に様々な層の組み立てに関して、層の各々は、それぞれの隣接する層の上にメッキ、堆積、コーティング、クラッディング、または溶接されてもよい。特に、これらの層のうちのいずれかは、スプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、電気メッキ、またはクラッディングによって、それぞれの隣接した層の上に施されてもよい。これは、特に第一の層、第二の層、および第三の層、ならびに存在する場合、少なくとも一つの中間層に対して保持される。
【0033】
どちらにしても、上述の構成または層構造のうちのいずれも、本明細書で使用される、および上記でさらに定義された「密接に連結された」という用語に収まる。
【0034】
本明細書で使用される「サセプタ」という用語は、変化する電磁場に供された時に電磁エネルギーを熱へと変換する能力を有する要素を指す。これは、サセプタ材料の電気特性および磁性に依存して、サセプタ材料内で誘起されるヒステリシス損失および/または渦電流の結果である場合がある。サセプタ組立品の材料および幾何学的形状は、所望の発熱を提供するように選ぶことができる。
【0035】
第一のサセプタ材料はまた、キュリー温度を有することが好ましい。有利なことに、第一のサセプタ材料のキュリー温度は、第二のサセプタ材料のキュリー温度とは別のものであり、特に第二のサセプタ材料のキュリー温度より高い。従って、第一のサセプタ材料は第一のキュリー温度を有してもよく、また第二のサセプタ材料は第二のキュリー温度を有してもよい。キュリー温度は、フェリ磁性または強磁性材料がこれより高い温度ではそれぞれそのフェリ磁性または強磁性を失い、常磁性になる温度である。
【0036】
第二のサセプタ材料がキュリー温度を有し、かつ第一のサセプタ材料がキュリー温度を有しないか、または第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料が各々互いとは別のキュリー温度を有するかのいずれかである、少なくとも第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料を有することによって、サセプタ組立品は、誘導加熱および加熱温度の制御などの複数の機能性を提供する場合がある。特に、これらの機能性は、少なくとも二つの異なるサセプタの存在に起因して分離されてもよい。
【0037】
第一のサセプタ材料は、エアロゾル形成基体を加熱するために構成されていることが好ましい。このために、第一のサセプタ材料は、熱損失に関して、それ故に加熱効率に関して最適化されてもよい。第一のサセプタ材料は、400℃を超えるキュリー温度を有してもよい。
【0038】
第一のサセプタ材料は腐食防止材料で作製されていることが好ましい。従って、第一のサセプタ材料は有利なことに、いかなる腐食性の影響に対しても耐性があり、特にサセプタ組立品が、エアロゾル形成基体と直接的に物理的接触をしているエアロゾル発生物品内に包埋されている場合に、耐性がある。
【0039】
第一のサセプタ材料は強磁性金属を含んでもよい。その場合、渦電流のみによって熱を発生することができないだけでなく、ヒステリシス損失によっても熱を発生することはできない。第一のサセプタ材料は鉄(Fe)もしくは鉄合金(鋼など)、または鉄ニッケル合金を含むことが好ましい。特に、第一のサセプタ材料はステンレス鋼、例えばフェライトステンレス鋼を含んでもよい。第一のサセプタ材料は、グレード410のステンレス鋼、またはグレード420のステンレス鋼、またはグレード430のステンレス鋼、または類似のグレードのステンレス鋼などの、400シリーズのステンレス鋼を含むことが特に好ましい場合がある。
【0040】
別の方法として、第一のサセプタ材料は適切な非磁性材料、特に常磁性の導電性材料(アルミニウム(Al)など)を含んでもよい。常磁性導電性材料では、誘導加熱は渦電流に起因する抵抗加熱によってのみ生じる。
【0041】
別の方法として、第一のサセプタ材料は、非導電性のフェリ磁性セラミックなどの非導電性のフェリ磁性材料を含んでもよい。その場合、熱はヒステリシス損失によってのみ発生する。
【0042】
対照的に、第二のサセプタ材料はサセプタ組立品の温度を監視するために最適化および構成されてもよい。第二のサセプタ材料は、第一のサセプタ材料の所定の最高加熱温度に本質的に対応するキュリー温度を有するように選択されてもよい。所望の最高加熱温度は、エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生するために、サセプタ組立品が加熱されるべき温度とほぼ同じ温度であるように定義されてもよい。しかしながら、所望の最高加熱温度は、エアロゾル形成基体の局所的な過熱または燃焼を回避するために十分に低い温度であるべきである。第二のサセプタ材料のキュリー温度はエアロゾル形成基体の発火点より低いべきであることが好ましい。第二のサセプタ材料は、500℃未満、好ましくは400℃以下、特に370℃以下の検知可能なキュリー温度を有するように選択される。例えば、第二のサセプタは、150℃~400℃の、特に200℃~400℃の特定のキュリー温度を有してもよい。キュリー温度および温度マーカー機能は第二のサセプタ材料の一次的な特性であるが、これはまた、サセプタ組立品の加熱にも貢献する場合がある。
【0043】
第二のサセプタは高密度層として存在することが好ましい。高密度層は多孔性の層よりも高い透磁率を有し、キュリー温度での微細な変化を検知することをより容易にする。
【0044】
第二のサセプタ材料は、ニッケル(Ni)などの強磁性金属を含むことが好ましい。ニッケルは、不純物の性質に依存して、約354℃~360℃、すなわち627K~633Kの範囲のキュリー温度を有する。この範囲のキュリー温度は、エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生させるためにサセプタを加熱するべき温度とほぼ同一であるが、エアロゾル形成基体の局所的な過熱または燃焼を回避するために依然として十分に低い温度であるため、理想的である。
【0045】
別の方法として、第二のサセプタ材料はニッケル合金、特にFe-Ni-Cr合金を含んでもよい。有利なことに、Fe-Ni-Cr合金は腐食防止性である。一例として、第二のサセプタは、Phytherm 230またはPhytherm 260のような市販の合金を含んでもよい。これらのFe-Ni-Cr合金のキュリー温度はカスタマイズすることができる。Phytherm 230は、50重量%のNi、10重量%のCr、および残部がFeである組成(重量%で示す)を有する。Phytherm 230のキュリー温度は230℃である。Phytherm 260は、50重量%のNi、9重量%のCr、および残部がFeである組成を有する。Phytherm 260のキュリー温度は260℃である。
【0046】
同様に、第二のサセプタ材料は、Fe-Ni-Cu-X合金を含んでもよく、式中、Xは、Cr、Mo、Mn、Si、Al、W、Nb、V、Tiから取られる一つ以上の元素である。
【0047】
第三の層に関しては、応力補償材料はオーステナイトステンレス鋼を含んでもよい。例えば、第三の層は、X5CrNi18-10(EN(欧州標準)命名法による、材料番号1.4301、V2A鋼としても知られる)またはX2CrNiMo17-12-2(EN(欧州標準)命名法による、材料番号1.4571または1.4404、V4A鋼としても知られる)を含んでもよい。オーステナイトステンレス鋼は熱膨張係数がニッケルより大きく、結果としてフェライトステンレス鋼より大きい熱膨張係数を有するため、第一のサセプタ材料がフェライトステンレス鋼を含み、かつ第二のサセプタ材料がニッケルを含む場合に、オーステナイトステンレス鋼が使用されることが好ましい。さらに、その常磁性および高い電気抵抗に起因して、オーステナイトステンレス鋼は、第二のサセプタ材料を第一のサセプタおよび第二のサセプタに加えられる電磁場から弱く遮蔽するのみである。
【0048】
第三の層の層厚さは、第一の層の層厚さの0.5~1.5倍、特に0.75~1.25倍の範囲であってもよい。これらの範囲内の第三の層の層厚さは、第一の層によって第二の層の上へとかけられた圧縮応力または引張応力に対抗するために、またはこれを補償するためにさえも有利であることを示す場合がある。第三の層の層厚さは、第一の層の層厚さと等しいことが好ましい。
【0049】
本明細書で使用される「厚さ」という用語は、上側と下側との間、例えば層の上側と下側との間、または多層サセプタ組立品の上側と下側との間に延びる寸法を指す。本明細書で使用され「幅」という用語は、二つの対向する側方側面の間に延びる寸法を指す。本明細書で使用される「長さ」という用語は、正面と背面との間、または幅を形成する二つの対向する側方側面と直角な他の二つの対向する側面の間に延びる寸法を指す。厚さ、幅、および長さは相互に直角であってもよい。
【0050】
多層サセプタ組立品は、5mm~15mmの長さ、3mm~6mmの幅、および10μm~500μmの厚さを有する細長いサセプタ組立品であってもよい。一例として、多層サセプタ組立品は、12mmの長さ、4mm~5mm例えば4mmの幅、および10μm~50μm例えば25μmなどの厚さを有するグレード430のステンレス鋼の細片である、第一の層を有する細長い細片であってもよい。グレード430のステンレス鋼は、第二のサセプタ材料として5μm~30μm例えば10μmの厚さを有するニッケルの第二の層でコーティングされてもよい。第二の層の上には、第一の層の反対側にオーステナイトステンレス鋼で作製された第三の層がコーティングされてもよい。
【0051】
本発明によるサセプタ組立品は、交流の、特に高周波の電磁場によって駆動されるように構成されていることが好ましい場合がある。本明細書で言及される通り、高周波電磁場は500kHz~30MHz、特に5MHz~15MHz、好ましくは5MHz~10MHzの範囲であってもよい。
【0052】
サセプタ組立品は、エアロゾル発生物品の一部であるエアロゾル形成基体を誘導加熱するためのエアロゾル発生物品のサセプタ組立品であることが好ましい。
【0053】
本発明によると、エアロゾル形成基体と、基体を誘導加熱するための、本発明による、および本明細書に記載のサセプタ組立品とを備えるエアロゾル発生物品も提供されている。
【0054】
サセプタ組立品はエアロゾル形成基体内に位置している、または包埋されていることが好ましい。
【0055】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾル形成基体の加熱に伴いエアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。エアロゾル形成基体は好都合なことに、エアロゾル発生物品の一部であってもよい。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよく、または液体エアロゾル形成基体であってもよい。両方の場合において、エアロゾル形成基体は固体成分と液体成分の両方を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。エアロゾル形成基体はまた、その他の添加物および成分(ニコチンまたは風味剤など)を含んでもよい。エアロゾル形成基体はまた、ペースト様の材料、エアロゾル形成基体を含む多孔性材料のサシェ、または例えばゲル化剤または粘着剤と混合されたルースたばこであってもよく、これはグリセリンなどの一般的なエアロゾル形成体を含むことができ、これはプラグへと圧縮または成形される。
【0056】
エアロゾル発生物品は、誘導源を備える電気的に作動するエアロゾル発生装置と係合するように設計されていることが好ましい。誘導源、またはインダクタは、変動電磁場内に位置する時にエアロゾル発生物品のサセプタ組立品を加熱するための変動電磁場を発生する。使用時に、エアロゾル発生物品は、インダクタによって発生される変動電磁場の中にサセプタ組立品が位置するように、エアロゾル発生装置と係合する。
【0057】
本発明によるエアロゾル発生物品のさらなる特徴および利点については、サセプタ組立品に関して説明されており、繰り返さない。
【0058】
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、本発明による多層サセプタ組立品の例示的な実施形態の概略的な斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1によるサセプタ組立品の概略的な側面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明によるエアロゾル発生物品の例示的な実施形態の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1および
図2は、エアロゾル形成基体を誘導加熱するために構成された本発明によるサセプタ組立品1の例示的な実施形態を概略的に図示する。
図3に関して下記により詳細に説明する通り、サセプタ組立品1は、加熱されるエアロゾル形成基体と直接接触するエアロゾル発生物品内に包埋されるように構成されていることが好ましい。物品自体は、交流の、特に高周波の電磁場を生成するために構成された誘導源を備えるエアロゾル発生装置の中に受容されるように適合されている。変動電磁場は、サセプタ組立品1の中に渦電流および/またはヒステリシス損失を発生させ、組立品を加熱させる。エアロゾル発生物品内のサセプタ組立品1の配置およびエアロゾル発生装置内のエアロゾル発生物品の配置は、サセプタ組立品1が誘導源によって発生した変動電磁場の中に正確に位置付けられるようにする。
【0061】
図1および
図2に示す実施形態によるサセプタ組立品1は、三層サセプタ組立品1である。組立品は、第一のサセプタ材料を含む基層としての第一のサセプタ層l0を備える。第一の層10、すなわち第一のサセプタ材料は、熱損失に関して、それ故に加熱効率に関して最適化されている。本実施形態において、第一の層10は、400℃を超えるキュリー温度を有する強磁性ステンレス鋼を含む。加熱温度を制御するために、サセプタ組立品1は、第一の層の上に配置され、かつ第一の層に密接に連結された中間層または機能層として第二の層20を備える。第二の層20は、第二のサセプタ材料を含む。本実施形態において、第二のサセプタ材料は、約354℃~360℃、すなわち627K~633Kの範囲のキュリー温度を有するニッケルである(不純物の性質に依存する)。このキュリー温度は、エアロゾル形成基体の温度制御および制御加熱の両方に関して有利であることを示す。加熱中にサセプタ組立品1がニッケルのキュリー温度に達すると、第二のサセプタ材料の磁性は強磁性から常磁性に変化し、その電気抵抗の一時的な変化が付随して起こる。それ故に、誘導源によって吸収された電流の対応する変化を監視することによって、第二のサセプタ材料がそのキュリー温度に達した時に、およびそれ故に、所定の加熱温度に達した時に、その変化を検知することができる。
【0062】
しかしながら、第一の層10および第二の層20が相互に密接に連結されているという事実は、第二のサセプタ材料の電気抵抗の変化に影響を与える場合がある。これは主に、以下に説明される通り、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料の熱膨張の間の特異的な差異に起因する。サセプタ組立品1の加工中に、第一の層10および第二の層20は、典型的にはアニーリングなどの熱処理に続いて、所与の温度にて相互に接続される。サセプタ組立品1の冷却中などの、その後の温度の変化中、個々の層10、20は、組立品1の結合している性質に起因して自由に変形することができない。結果として、第二の層20の中のニッケル材料が、第一の層10の中のステンレス鋼の熱膨張係数より大きい熱膨張係数を有するため、冷却に伴い第二の層20の中に引張応力状態が発生する場合がある。この引張応力状態は結果として、ニッケルが負の磁気歪みの係数を有するため、磁気歪みに起因してニッケル材料の磁気的な感受性を低減させる場合がある。特に、ニッケル材料のキュリー温度の周囲の関連温度範囲では、低減された磁気的感受性が表面薄層の深さの変化、およびそれ故にニッケル材料の電気抵抗の一時的な変化を引き起こし、あまり顕著ではなくなる。このことは結果として、望ましくないことに温度マーカーとしての第二の層の機能性を損なう場合がある。
【0063】
第一の層10によって第二の層20の上へとかけられた望ましくない引張応力に対抗するために、本発明によるサセプタ組立品1は、第二の層20に密接に連結された第三の層30をさらに含む。第三の層は、多層サセプタ組立品1の加工後、例えば熱処理後に、第三の層30が少なくともある特定の補償温度範囲内で特定の圧縮応力を第二の層20の上へとかけるように特異的に選択された、特定の応力補償材料を含み、かつ特定の層厚さT30を備える。補償温度範囲は、少なくともニッケルのキュリー温度より20K低い温度から、ニッケルのキュリー温度にまで及ぶ。それに応じて、第三の層30は有利なことに、第二の層20の本来の所望の特性および機能性を保つことを可能にする。
【0064】
本実施形態において、第三の層は、応力補償材料として、オーステナイトステンレス鋼(例えば、V2aまたはV24ステンレス鋼)を含む。有利なことに、オーステナイトステンレス鋼は、第二の層20のニッケル材料および第一の層10の強磁性ステンレス鋼より大きい熱膨張係数を有する。さらに、その常磁性および高い電気抵抗に起因して、オーステナイトステンレス鋼は、第二の層20のニッケル材料をそれらに加えられる電磁場から弱く遮蔽するのみである。
【0065】
図1および
図2に示す実施形態に関して、サセプタ組立品1は、12mmの長さLおよび4mmの幅Wを有する細長い細片の形態である。すべての層は、12mmの長さLおよび4mmの幅Wを有する。第一の層10は、35μmの厚さT10を有するグレード430のステンレス鋼の細片である。第二の層20は、10μmの厚さT20を有するニッケルの細片である。層30は、35μmの厚さT30を有するオーステナイトステンレス鋼の細片である。サセプタ組立品1の総厚さTは80μmである。サセプタ組立品1は、ニッケルの細片20をステンレス鋼の細片10にクラッディングすることによって形成されている。その後、オーステナイトステンレス鋼の細片30がニッケルの細片20の上にクラッディングされる。
【0066】
第一の層10および第三の層30はステンレス鋼で作製されているため、これらは有利なことに、第二の層20におけるニッケル材料のための腐食防止被覆を提供する。
【0067】
図3は、本発明によるエアロゾル発生物品100の例示的な実施形態を概略的に図示する。エアロゾル発生物品100は、同軸に整列して配置された四つの要素、すなわちエアロゾル形成基体102、支持要素103、エアロゾル冷却要素104、およびマウスピース105を備える。これらの四つの要素の各々は実質的に円筒状の要素であり、各々は実質的に同一の直径を有する。これらの四つの要素は連続的に配置されていて、また外側ラッパー106によって囲まれていて円筒状ロッドを形成する。この特定のエアロゾル発生物品、特に四つの要素のさらなる詳細は、国際特許公開公報第2015/176898 A1号に開示されている。
【0068】
細長いサセプタ組立品1はエアロゾル形成基体102の中に、エアロゾル形成基体102と接触して位置する。
図3に示す通りのサセプタ組立品1は、
図1および
図2によるサセプタ組立品1に対応する。
図3に示す通りのサセプタ組立品の層構造は大きく図示されているが、エアロゾル発生物品のその他の要素に関して実寸に比例してはいない。サセプタ組立品1はエアロゾル形成基体102の長さとほぼ同一の長さを有し、またエアロゾル形成基体102の半径方向の中心軸に沿って位置する。エアロゾル形成基体102は、ラッパーによって囲まれた、捲縮され均質化したたばこ材料のシートの集合体を含む。均質化したたばこ材料の捲縮したシートはエアロゾル形成体としてグリセリンを含む。
【0069】
サセプタ組立品1は、エアロゾル形成基体を形成するために使用されるプロセス中に、エアロゾル発生物品を形成するための複数の要素の組み立ての前に、エアロゾル形成基体102の中に挿入されてもよい。
【0070】
図3に図示されたエアロゾル発生物品100は、電気的に作動するエアロゾル発生装置と係合するように設計されている。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品をエアロゾル発生装置と係合させるのに伴い、エアロゾル発生物品のサセプタ組立品が位置している、交流の、特に高周波の電磁場を発生するための誘導コイルまたはインダクタを有する誘導源を備えてもよい。