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特許7146798段階的多孔性構造体を備える流体の通過流のためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】段階的多孔性構造体を備える流体の通過流のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20220927BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20220927BHJP
   F28D 17/02 20060101ALI20220927BHJP
   F28F 23/00 20060101ALI20220927BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220927BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220927BHJP
   B01J 15/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B01J19/00 311Z
B01J19/24 A
F28D17/02
F28F23/00 Z
B01J35/02 F
B01J35/04 Z
B01J15/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019553538
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018058243
(87)【国際公開番号】W WO2018178312
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】17163707.7
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514195481
【氏名又は名称】フェート・エンフェー (フラームス・インステリング・フーア・テクノロジシュ・オンダーゾエク・エンフェー)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リディア・プロタソヴァ
(72)【発明者】
【氏名】フランス・スナイケルス
(72)【発明者】
【氏名】シムゲ・ダナシ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ベンガウエ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ボーラン
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-057803(JP,A)
【文献】特表2010-537679(JP,A)
【文献】特開2012-245511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/129640(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/102706(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
B01J 21/00-38/74
B01D 53/73
B01D 53/86-53/90
B01D 53/94、53/96
F28D 17/02
F28F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の通過流のためのデバイス(10)であって、
壁(111)、流体入口(12)および流体出口(13)を備える容器(11)であって、前記流体入口および前記流体出口は、全体的な流れ方向(14)を定める、容器(11)と、
前記容器において前記流体入口と前記流体出口との間に配置される相互に連結された細孔を有する一体の多孔性構造体(15)であって、前記多孔性構造体は、前記多孔性構造体と前記壁との間に熱伝導を提供するために前記壁(111)に結合され、前記多孔性構造体は、前記全体的な流れ方向に対して交差する第1の方向(17)に沿って気孔率勾配を備える、多孔性構造体(15)と、
を備えるデバイス(10)において、
前記気孔率勾配は、前記壁に近接した第1の場所(158)における第1の気孔率(P3)と、前記第1の場所に対して前記壁から離れた第2の場所(156)における、前記第1の気孔率より大きい第2の気孔率(P1)との間で、前記第1の方向に沿って発達し、前記第2の気孔率と前記第1の気孔率との間の差は、少なくとも4%であることを特徴とするデバイス(10)。
【請求項2】
前記第1の方向は、前記全体的な流れ方向に対して垂直な平面において延びる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2の気孔率と前記第1の気孔率との間の差は、少なくとも6%である、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記多孔性構造体は、50%から80%の間の平均気孔率を有する、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1の気孔率は、40%から85%の間であり、前記第2の気孔率は、45%から90%の間である、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記多孔性構造体は、前記全体的な流れ方向に沿って均一な気孔率を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記多孔性構造体は、前記全体的な流れ方向に沿って第2の気孔率勾配を備える、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第2の気孔率勾配は、前記流体入口(12)から前記流体出口(13)に向かって減少する気孔率を備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記多孔性構造体は、互いに付着させられる繊維(16)の配置を備え、前記繊維は、平行な層(151、152、153)で配置され、前記層同士は積み重ねられる、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記繊維は、20μmから20mmの間の直径を有する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
連続した層の繊維が互いに侵入し、前記連続した層の前記繊維の間の侵入深さ(c)と前記繊維の直径(a)との間の比率が、0.1から0.5の間である、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
同じ層の隣接する繊維同士の間の間隔(n)が、10μmから50mmの間である、請
求項9から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
少なくとも1つの層における前記繊維同士の間の前記間隔は、前記気孔率勾配を得るために前記第1の場所と前記第2の場所との間で変化する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
熱交換器である、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
化学反応器である、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記多孔性構造体は、触媒を備える、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
メタンへの二酸化炭素の変換のための、請求項15または16に記載のデバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が通過して流れ、熱伝達が流体との間で起こるデバイスに関する。非限定的な用途は、熱交換器および化学反応器である。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー-トロプシュ合成(FTS)、メタン水蒸気改質、メタン生成、メタノール合成、および燃焼反応などの発熱反応および吸熱反応は、有用な化学物質の生産にとって重要な反応である。これまで、触媒反応が、従来の触媒物質と共に、固定床反応器および流動床反応器において幅広く研究されてきた。充填床反応器は、最も一般的に使用される反応器の種類である。充填床反応器の主な欠点は、触媒床におけるホットスポットの形成、および、熱管理の問題(熱伝達の限界など)である。ホットスポットは、焼結および炭素堆積をもたらし、これらは活性部位の量における低下をもたらす。前述の限界に加えて、圧力損失および物質伝達は、効率的な反応についての限界パラメータである。
【0003】
近年、構造化された触媒反応器は、前述の限界(主に、温度の規制の限界、不十分な温度制御による規模拡大の限界、触媒の失活、および圧力損失)を克服することに大きな興味が引かれている。その例のうちの1つは、より良好な熱伝達特性のため、付加製造によって作られる金属のモノリスなど、金属に基づいて構造化された触媒の使用である。これらの材料は、触媒を含む様々な反応物質が不動とさせられるミクロンの大きさとされた高度に伝導性の繊維から作られる。マイクロファイバ材料は、温度制御を可能にし、高度な吸熱/発熱の化学反応の範囲のために均一な温度プロフィールを提供する。構造化されたモノリスの1つの利点は、気孔率および細孔の大きさの分配が制御され得ることである。これは、固有の大きい細孔の大きさの分配を有する充填床または発泡材料などとは対照的である。
【0004】
3D粉末印刷から高度に多孔性の三次元(3D)のセラミック物品を作ることが、2011年6月2日のBeallらへの米国特許出願公開第2011/0129640号から知られている。物品は、約48%~67%の見掛けの気孔率を有することができ、流れの用途に使用することができる。3D物品は、壁(例えば、固体、多孔性、または外被で覆われる)と、周辺におけるより大きいセルから中心近くのより小さいセルへと減少する段階的または漸進的とされた寸法を有する多孔性格子間隔を例えば有し得るマクロ気孔率を有するハニカム状の内部とを有して構築でき、これは、周辺での圧力損失に対抗するために径方向のプロフィールを作り出すことができる。この文献は、このような段階的とされた構造が流頭を均一化または均等化し、このような流れの用途における触媒または径方向の灰の分配の向上した利用をもたらすために使用することできることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2011/0129640号
【文献】WO2009/027525
【文献】PCT/EP2016/073443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大きな表面積、大きなマクロ気孔率、向上した熱および物質の伝達は、発熱および/または吸熱の過程のための効率的な反応器を設計するために重要である。しかしながら、上記の反応器は、反応器におけるホットスポット形成および触媒の失活に関する問題を解決していない。同じ理由が熱交換器にも当てはまり、所与の体積ついての熱伝達は最大化されるべきである。
【0007】
本発明の一目的は、伝導性の熱交換が起こる流体流れデバイスにおける単位体積当たりの熱伝達を最大化することである。本発明の一目的は、このような流体流れデバイスにおいて熱伝達の効率を向上させることである。
【0008】
また、本発明の一目的は、特に化学反応器において、ホットスポット形成および/または触媒の失活に関する問題に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1の態様によれば、添付の特許請求の範囲において提示されているようなデバイスが提供される。本デバイスは、壁と、流体入口と、流体出口とを備える容器を備える。本デバイスは、容器において流体入口と流体出口との間に配置される多孔性構造体をさらに備える。多孔性構造体は、相互に連結された細孔を備える。したがって、流体入口および流体出口は、多孔性構造体を通る全体的な流れ方向を定める。多孔性構造体は、有利には、壁に(熱的に)結合される。これは、多孔性構造体と壁との間に熱伝導を有利に提供する。さらなる手段が、壁と、例えば外部にあるさらなる媒体との間での熱伝達のために提供されてもよい。壁は、固体の壁とすることができ、この固体の壁は、有利には非多孔性であり、および/または、有利には流体に対して不浸透性である。あるいは、壁は多孔性とすることができる。
【0010】
一態様によれば、多孔性構造体は、勾配方向と称される方向に沿って気孔率勾配を備える。勾配方向は、有利には、全体的な流れ方向に対して交差する。勾配方向は、有利には、全体的な流れ方向に対して垂直な平面にある。
【0011】
別の態様によれば、気孔率勾配は、壁に近接した第1の場所における第1の気孔率と、第1の場所と比較して壁から離れた第2の場所における第2の気孔率との間で、勾配方向に沿って発達する。有利には、第1の気孔率(百分率で表された体積気孔率)と第2の気孔率(百分率で表された体積気孔率)との間の差は、少なくとも4%であり、有利には少なくとも5%であり、有利には少なくとも6%であり、有利には第2の気孔率は第1の気孔率より大きい。
【0012】
上記の種類の多孔性構造体を含むデバイスが、多孔性構造体の内側部分と、容器の壁に近い多孔性構造体の周辺部分との間に向上した伝導性の熱伝達を可能にすることが、観察されている。熱が、容器の壁に近接してより高密度の多孔性構造体のため、多孔性構造体の内側部分と容器の壁との間でより良好に伝達され得る。これは、両方向において、つまり、熱を流体から排出するためと熱を流体に加えるためとの両方において、熱伝達にとって有益である。さらに、このような気孔率勾配が、より大きい一様な気孔率を有する構造体と比較して、構造体を通じての流れ抵抗に些細な形のみで影響を与えることが、観察されている。
【0013】
上記の気孔率勾配が、向上した結果を提供するために、他の方向に沿っての気孔率勾配と組み合わされてもよいことは、留意されるべきである。例として、多孔性構造体には、具体的には、入口から出口に向かって減少する気孔率を有するものといった、容器における流れの方向に沿っての気孔率勾配が追加的に提供されてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、添付の特許請求の範囲において提示されているような上記の種類のデバイスの使用が提供される。このようなデバイスは、具体的には、メタンへの二酸化炭素の触媒変換などの発熱反応のために、化学反応器として使用することができる。
【0015】
ここで、本発明の態様が、同じ参照符号が同じ特徴を図示している添付の図面を参照して、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】容器が流体入口と流体出口とを有し、流体が通って流れるように構成される多孔性構造体が容器に配置されている、本発明の態様による流体の通過流のためのデバイスの長手方向の断面図である。
図2図1において示された容器に置かれ得る多孔性構造体の例を示す図である。
図3】容器に置かれ得る多孔性構造体を得るために繊維を積み重ねる代替の手法を示す図である。
図4】本発明の態様による径方向における多孔性構造体の気孔率勾配が示されている、図1のデバイスの長手方向の断面図である。
図5】より大きい細孔が中心領域にあり、より小さい細孔が周辺に向かっている、本発明の態様による図4の多孔性構造体のための第1の繊維配列スキームを示す図である。
図6】繊維層が図の平面と平行である、図5のスキームに従って作られた多孔性構造体の上面図である。
図7図5と同じ繊維配列スキームによるが、角柱の形を有する多孔性構造体の上面図である。
図8】より大きい細孔が中心領域にあり、より小さい細孔が周辺に向かっている、本発明の態様による図4の多孔性構造体のための第2の繊維配列スキームを示す図である。
図9図5のスキームに従った繊維配列において定められているような単位細孔セルを示す図である。
図10図5の繊維配列スキームに従った繊維配列スキームを各々の四分円が有する、4つの同一の四分円を伴う断面を有する多孔性構造体の上面図である。
図11】異なる種類の触媒担体についての温度に対する二酸化炭素変換のグラフである。
図12】触媒構造体が配置されている反応器の軸方向に沿った発熱反応の典型的な温度プロフィールのグラフである。
図13】異なる流れ速度における異なる多孔性構造体の圧力損失の実験結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、化学(連続流れ)反応器または熱交換器であり得る、本発明の態様によるデバイス10の典型的な設計を示している。デバイス10は容器11を備え、容器11は、有利には、流体入口12および流体出口13を除いて、必ずではないが閉じられている。流体入口および流体出口の位置は特に重要ではない。しかしながら、それらの位置は、入口12から出口13に向かう全体の流体流れの方向14を定める。容器11は、円筒または角柱など、任意の形を有し得る。
【0018】
有利には一体の多孔性構造体15が、入口12から容器に入る流体が出口13に到達する前に多孔性構造体15を通って流れるような方法で容器11の内側に配置される。そのため、多孔性構造体15の細孔は相互に連結されている。多孔性構造体15は容器11を完全または部分的に満たしてもよい。このような構成では、流体と構造体15の固体材料および容器11との間の熱伝達が、対流および放射からの寄与はそれほど重要でなく、伝導によって主に行われることになる。熱伝達のこれらの異なる機構からの寄与は、例えば構造的な形状および反応温度に依存する可能性がある。そのため、多孔性構造体15は、容器11の壁111との良好な熱接触において有利であり、その熱接触は、壁111への構造体15の適切な固定または付着によって得ることができる。そのため、多孔性構造体15は容器11において有利に不動とされている。冷却または加熱の通路112、または加熱/冷却フィン(図示せず)など、適切な熱伝達手段が容器の壁に一体化または付着されてもよい。
【0019】
本発明の態様が上記の種類のデバイスに限定されないことに留意することは都合がよく、例えば、多孔性構造体が付着される壁によって容器が置き換えられ、多孔性構造体が少なくとも3つ、有利には5つの側面において流体流れのために開放している他の形の熱交換デバイスが、企図されてもよい。
【0020】
構造体15は、有利には、容器11を通じての圧力損失を最小限にするために、高度に多孔性である。一体の高度な多孔性構造体は、三次元繊維堆積、三次元粉末堆積、または同様の固体自由造形技術など、よく知られている付加製造技術によって得ることができる。ほとんどの典型的な場合では、図2を参照すると、多孔性構造体15は層151、152、153などの積み重ねとして積み上げられ、各々の層は繊維16またはフィラメントの配置から形成される。これらの繊維またはフィラメントは、3-D繊維堆積での場合として、ノズルからペーストとして押し出され得る、または、例えば選択的に融解させられ得る(選択的レーザー焼結)か、もしくは接着剤で選択的に結合され得る粉末層から始まって、3-D印刷され得る(3-D印刷)。
【0021】
3D繊維堆積(3DFD: 3D Fibre Deposition)(ダイレクトライティングまたはロボキャスティングとも呼ばれる)は、金属またはセラミックの粒子が加えられた有利には非常に粘性のペーストの細いノズルを通じての押し出しを含む。この場合、ペーストは、金属粉末もしくはセラミック粉末、または金属粉末とセラミック粉末との組み合わせ、有機結合剤、任意選択でのレオロジー改質剤、および、コロイド状結合剤などの任意選択での無機結合剤などの粉末を含む。x方向、y方向、およびz方向におけるコンピュータ制御された移動によって、多孔性構造体が層ごとに積み上げられる。x方向およびy方向は典型的には層の平面を言及しており、z方向は層の積み重ねの方向(層の平面における垂直)である。この処理は、複数のノズルまたは単一のノズルを伴う可能性がある。上記の処理によって得られる未加工部が、1つまたは2つのステップ、つまり、任意選択の乾燥ステップと、続く焼結とにおいて後処理され得る。焼結は、例えば金属の場合における酸化を回避するために、真空条件の下で、または、不活性もしくは還元の雰囲気において、実行され得る。焼結の後、高度に再現可能で周期的な多孔性構造体が得られる。プロセス変量には、ノズル開口(繊維の太さまたは直径)、ノズルの種類(繊維の形)、繊維間距離(細孔の大きさ)、および層の積み重ね(構造体)が含まれる。繊維の微孔構造および表面粗さは制御され得る。3DFDのための機器は、例えばXYZテーブルまたはCNC機械といった3つ以上の軸の数値制御で装置に搭載される、ノズルを伴うペースト貯留部を典型的には備える。複数のノズルが、同様の部品の生産を加速させるために機器に搭載され得る。
【0022】
連続した層の繊維16は、有利には相互に横断方向に沿って延び、同じ層内の繊維は、有利には離間される。結果として、高度に多孔性の構造体を得ることができる。繊維は、有利には、必ずではないが秩序ある様態で配置される。例として、同じ層内の繊維16は、平行とできるか、円において同心とできるか、共通の中心から径方向に延びることができるか、または、螺旋状とできる。
【0023】
有利な多孔性構造体15は、構造体の一端(例えば、入口端154)から構造体の反対の端(例えば、出口端155)へと延びる長手方向の通路を備え得る。これらの長手方向の通路は真っ直ぐまたは蛇行であり得る。蛇行は、例えば図3に示されているように、繊維が相互に平行である層において繊維を互い違いにすることで定められ得る。長手方向の通路の大きさ、配列、および相互連結性は、多孔性構造体を通じての流動および圧力損失を広い範囲で定める。
【0024】
図2の構造体は、2つの連続した層から成る繰り返しパターンによって形成されている。1つの層における繊維は、他の層における繊維に対して垂直である。パターンは、繊維を互い違いにすることなく積み上げ方向において繰り返され、つまり、対応する繊維が積み上げ(鉛直)方向において並べられる。図3の構造体は、4つの連続した層から成る繰り返しパターンによって形成されている。連続した層の繊維は互いに対して垂直であり、同じ層内の繊維は互いと平行である。図2のパターンと異なり、繊維は、相互に平行な繊維を有するそれらの層において互い違いとされている。つまり、層34の繊維は層32の繊維に対して互い違いにされている。層31および33の繊維は、互い違いにされてもよく、または、互い違いにされなくてもよい。多くのさらなる構造体が、互い違いの距離を変えることによって得ることができることを留意することは、都合がよい。
【0025】
一態様によれば、気孔率勾配が多孔性構造体15において提供されている。つまり、勾配方向と称される方向に沿って、気孔率、延いては、構造体15の密度が、変化するように作られている。勾配方向は、有利には、例えば、流れの方向14に対して垂直または斜めの平面といった、流れの方向14に対して横断する平面にある。図4を参照すると、流れの方向14に対して直交する方向17における気孔率勾配が、構造体15では適用されている。方向17は径方向であり得る。例として、構造体15の中心領域156には気孔率P1が提供される。構造体15の周辺領域158には、P1と異なり得る気孔率P3が提供されている。領域156と158との間の中間領域157には気孔率P2が提供でき、P2はP1およびP3と異なる。一態様によれば、気孔率は、中心領域156における構造体15のより大きい気孔率P1、したがって、より小さい密度から、周辺領域158における構造体15のより小さい気孔率P3、したがって、より大きい密度へと、方向17に沿って変化する。有利には、気孔率勾配は、気孔率が構造体15の周辺に向かって減少するものである。別の言い方をすれば、P1>P2>P3である。
【0026】
多孔性構造体15の周辺に向かって減少する気孔率が多孔性構造体の中心領域と容器の壁111との間の熱伝達を向上することが、観察されている。結果として、例えば発熱反応のため、中心領域において発生した熱がより良好に消散でき、中心領域において温度の低下をもたらし、したがって触媒の失活を回避する。同様に、多孔性構造体15を通って流れる流体に向かっての熱伝達の場合、周辺領域の低減した気孔率、したがって、増加した密度は、中心領域に向かう熱流束の向上を可能にする。そのため、述べられた利点は、化学反応器に当てはまるだけでなく、流体と、例えば熱交換器といったデバイスとの間で、熱が伝達されるすべてのデバイスに主に当てはまる。
【0027】
付加製造技術は、所望の気孔率勾配を有する一体の構造体を容易に効果的に作ることを可能にする。繊維の配置から現れる積み上げられた多孔性構造体について、気孔率勾配を得る最も容易な方法は、一部または全部の層内において(平行な)繊維同士の間の間隔を変化させることによるものである。一例が図5に示されており、層に対して直交する方向から見たときの繊維の配列を示している。図5では、同じ層内の繊維が互いと平行に配列されており、連続した層の繊維51と52とは互いに対して直交している。各々の層において、隣接する繊維同士の間の間隔が、構造体の中心から周辺に向かって、つまり、繊維の長手方向の軸に対して直交する方向において縮小されていることが、観察され得る。このような繊維配列の例は、円筒の構造体については図6に示されており、角柱の構造体については図7に示されている。例えば図5を参照して、隣接する繊維同士の間の間隔が、2つ以上の交互に並ぶ層のうちの1つだけにおいて変化する代替のスキームが企図されてもよく、交互の層に配置され、繊維51に対して交差して延びる繊維52が一定の間隔で配置される一方で、繊維51を示されているような変化する(段階的な)間隔で配置することが企図できる。
【0028】
上記の図では、細孔が、内側領域から周辺に向かう方向に沿って縮小する大きさを有することが、観察され得る。この点において、細孔は、図9に示されているように、繊維によってすべての側において画定されたセルとして見なすことができる。
【0029】
代替または追加で、気孔率勾配は、例えば、螺旋状の繊維、ジグザグの繊維など、繊維の適切な配列の手法を通じて得ることができる。図8は、繊維81が1つの層において螺旋状に配列されている繊維配置の一例を示している。連続した層では、繊維82は、互いと平行に、または、任意の他の指名された配列に従って、配列できる。本発明の一態様によれば、螺旋状の繊維81は、構造体の周辺に向かって、隣接する螺旋の周回同士の間に縮小していく間隔を有する。同じくこれらの繊維配列であれば、構造体の内側領域においてより大きい細孔があり、周辺に向かってより小さい細孔がある。
【0030】
本発明の態様による繊維のまた別の可能な配置は、図10に示されている。ここでは、多孔性構造体の断面は、4つの四分円101~104に分割されており、図5のスキームが4つの四分円の各々に適用されている。そのため、本発明の態様は、構造体の任意の適切な内側領域から周辺に向かって減少する気孔率を有する気孔率勾配も企図している。
【0031】
本発明の態様によれば、勾配方向に沿っての気孔率(百分率として表される)における差(つまり、変化)は、少なくとも4%であり、有利には少なくとも5%であり、有利には少なくとも6%であり、有利には少なくとも8%であり、有利には少なくとも10%である。別の言い方をすれば、勾配方向に沿う第1の場所において気孔率がP1(%)であり、第2の場所においてP2(%)であると仮定して、気孔率における差はΔP(%)=P1-P2である。勾配は、壁の近くで有利には50%から75%の間である40%から85%の間の気孔率から、壁から離れた場所で有利には55%から80%の間である45%から90%の間の気孔率まで展開し得る。
【0032】
局所的な気孔率は、図9に示されて定められたような単位細孔セル90の形状に基づいて決定され得る。積み重ね因数cは、連続した層の繊維同士の間の相互に侵入した深さを指している。積み重ね因数は、例えば3DFD構造体の積み上げの間に得られるが、先の層の上において新たな層を開始するとき、繊維直径より小さい量で(鉛直方向の)積み上げ高さを増加させることで他の付加製造処理と類似している。繊維直径は、材料の断面の光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡の撮像によって決定でき、3DFD装置のノズル直径、印刷条件、および焼結における収縮によって主に決定される。積み重ね因数cは、ペーストの組成(例えば、粘度)、繊維の太さ、繊維間の距離、および、温度や湿度といった印刷条件によって影響され得る。積み重ね因数は、機械的な強度、および、繊維を通じた熱伝導性に強い影響力を有するが、マクロ孔のマクロ気孔率および相互連結性にも影響する。以下に提示されている実施例では、c約0.068mmが走査型電子顕微鏡の撮像を用いて測定された。さらに、a=M-nが繊維直径(mm)であり、nは繊維間距離(mm)であり、Mは2つの繊維間の軸方向中心間隔(mm)である。セルのマクロ気孔率(P、%)は次のように計算でき、SSAは比表面積(SSA、mm/mm)であり、Sは2つの連結された繊維の表面積の目減り(mm)であり、Sfは2つの繊維の表面積(mm)であり、Vcellは単位セルの体積(mm)であり、Vfibreは繊維の体積(mm)である。
【0033】
【数1】
【0034】
は同じ繊維直径aを有する2つの繊維の共通部分の体積である。
【0035】
は積み重ね因数cに依存する。積み重ね因数cは0≦c≦aの範囲にあり得る。c=aである一方で、Vは「シュタインメッツ立体(Steinmetz solid)」である。そのため、
【0036】
【数2】
【0037】
である。cが0<c<aである一方で、円錐体積が、実質的な楕円錐の体積の近似値であるVの計算を単純化するために仮定されてもよい。円錐体積を仮定すると、
【0038】
【数3】
【0039】
である。
【0040】
本記述における気孔率への言及は、例えば、繊維の気孔率または繊維内の気孔率に無関係の繊維同士の間の気孔率といった、マクロ気孔率に関する。有利には、マクロ孔は、直径において、少なくとも10μmの細孔の大きさを有し、有利には少なくとも25μm、有利には少なくとも50μm、有利には少なくとも100μmの細孔の大きさを有する。本発明の態様による構造体における絶対(マクロ)気孔率の値は、特に制限はない。有利な値は、40%から90%の間の気孔率であり、有利には50%から80%の間である。本態様による多孔性構造体の平均(マクロ)気孔率は、有利には50%から80%の間であり、有利には55%から75%の間である。
【0041】
本発明の態様による多孔性構造体では、繊維は、20μmから20mmの間、有利には40μmから10mmの間、有利には60μmから5mmの間の範囲にある直径を有利に有し、有利な値は、80μm、100μm、200μm、400μm、600μm、800μm、1mm、2mmである。構造体の同じ層内のすべての繊維は典型的には同じ直径を有し、繊維直径は構造体のすべての層において同じであり得る。例えば同じ層内の、繊維間距離nは、0μmから50mmの間で変わってもよく、有利には10μmから25mmの間であり、有利には25μmから10mmの間であり、有利には50μmから5mmの間であり、有利には100μmから2.5mmの間であり、有利には1.5mm以下であり、または、1mm以下である。繊維間距離は、典型的には、気孔率勾配を得るために1つの層内で変化する。積み重ね因数cは、0から繊維直径aの間で変わってもよく、有利には0.01a≦c≦0.99aであり、有利には0.02a≦c≦0.90aであり、有利には0.03a≦c≦0.50aであり、有利には0.05a≦c≦0.20aである。有利には、比率c/aは、少なくとも0.075であり、少なくとも0.1であり、少なくとも0.125であり、少なくとも0.15である。積み重ね因数は、典型的には1つの層内において一定であり、層同士の間で変化してもよい。
【0042】
図6および図7では、局所的な気孔率の値が指示されている。両方の図で、層の平面において径方向の気孔率勾配がある。中心と周辺との間での気孔率における変化は8%になる。
【0043】
繊維自体が、例えば、先に指示されているようなマクロ孔の大きさより小さい細孔の大きさでの気孔率といった、微孔構造を備え得る。微孔性の繊維は、例えば2009年3月5日のWO2009/027525に記載されているように、繊維を転相過程に置くことで得ることができる。微孔性の繊維は、触媒被覆などの繊維における被覆のより良好な接着のため、有利であり得る。そうでない場合、(微孔性の)繊維は中実の繊維であり、つまり、有利には中空でない。
【0044】
本発明の態様による多孔性構造体が作られる材料には、金属、セラミック、および複合材料があり、具体的には、それらの材料は良好な熱伝導性を有する。触媒担体として意図されている多孔性構造体では、触媒は、例えば、繊維を押し出すために使用されるペーストと触媒を混合することで、構造体において埋め込まれてもよい。適切な材料および触媒は、例えば、2016年9月30日に出願されたPCT/EP2016/073443に記載されている。他の適切な材料は、例えば、2009年3月5日のVITO NVへのWO2009/027525、および、2011年6月2日のBeallらへの米国特許出願公開第2011/0129640号において記載されている。
【実施例1】
【0045】
反応変換
図6に示された段階的な構造体(平均(マクロ)気孔率66%で、式1から計算されるように、中心における72%から周辺における64%までの気孔率変化)が、COメタン化反応において、均一の(マクロ)気孔率と充填床の従来の触媒粉末とを伴う3DFD一体構造体(それぞれ70%および74%)と実験的に比較された。触媒粉末は、レーザー回折法によって測定されるD90粒径=25μm(つまり、25μm以下の大きさを有する粒子の体積で90%)を有する。メタンへの二酸化炭素のメタン化または触媒変換(水素化)は、サバチエ反応とも呼ばれる。この反応は、よく知られている触媒の高度に発熱の処理(ΔH298K=-165kJ/mol)である。74%の気孔率を有する3DFD構造体は、ステンレス鋼粉末を含む繊維を0.4mmの直径のノズル(繊維直径aに等しい)で押し出し、層内の隣接する繊維同士の間に1mmの一定の間隔nを有する図2にあるような繊維を積み重ねることによって製造された。70%の気孔率を有する構造体は、n=0.8mmを除いて、74%の構造体と同じ処理パラメータで製造された。ステンレス鋼構造体は、浸漬被覆によって12wt%のNi/Alで被覆された。石英管型反応器(直径24mm、長さ100mm)が使用され、連続した温度測定のために石英管の入口側および出口側に設置されたK型熱電対が搭載された。触媒は、反応器の真ん中に充填され、石英ウールで固定された。反応器は炉の真ん中に置かれた。異なるマクロ気孔率を有する試料の公平な比較を行うために、同じ量の触媒が各々の実験に対して使用された。反応試験の前に、触媒が、100ml/minの全速度および450℃の温度(10℃/minの加熱速度)において、大気圧の下で2時間にわたってH/He(80/20%)の連続流れの下で活性化された。還元の後、炉の温度がヘリウムの連続流れの下で反応温度まで調節された。メタン化反応が、大気圧の下で250℃から450℃の間の温度で実施された。二酸化炭素および水素が、ヘリウム搬送ガスと共に、C0:H:He=1:4:15の送り込み組成において、100ml/minの全速度で反応器に連続的に送り込まれた。
【0046】
図11は、COメタン化反応における変換結果を示している。温度が二酸化炭素の変換に相当に影響を与えることが分かる。約340℃を上回る温度において、すべての3DFD構造とされた触媒は、粉末化された触媒(約66%)の変換より高い変換(最大90%)を示しており、一方、より低い温度では、段階的な構造体だけが向上したCO変換を示した。これは、その増加した熱伝達特性によって説明できる。段階的な気孔率を有する構造化された触媒は、350℃において約85%のCO変換を示し、一方、一様な気孔率で構造化された触媒および粉末化された触媒は約72%および71%のCO変換をそれぞれ示した。
【0047】
反応器における軸方向(流れの方向14)に沿っての発熱反応の典型的な温度プロフィールは、図12に示されているように展開し、入口から温度が上昇し、入口と出口との間のある場所で最高温度まで上昇し、次に、軸方向距離と共に温度が低下する領域となる。図11の結果から引き出され得る重要な結論は、段階的な多孔性構造体が入口帯域においてより素早い反応を可能にすることである。同時に、構造体15の内側部分と壁111との間での向上した熱伝導性を有する帯域はより良好な熱除去を提供する(発熱反応の場合)。これは、反応が効率的な熱除去を伴う熱力学的平衡を達成しない限り、ギブズの自由エネルギー(ΔG)を負に保つのを助ける。結果として、反応器における最高温度は、反応の一部がすでに起こっているため、より低くなる。これは、それを上回ると触媒が不活性化される温度未満に温度をより容易に制御するのを可能にする。別の重要な利点は、より効率的な使用が多孔性構造体(延いては、触媒)の体積から行われ、そのため、流体の通過流が同じ体積の触媒構造に対して増加させることができることである。
【0048】
また、反応器の容器の壁に隣接する構造体の周辺帯域においてより大きな密度を気孔率勾配に提供することは、壁への熱の排出を増加させることができる。結果として生じるより低い温度は、本明細書で提示された態様による段階的な構造体がこれらのより低い温度でより高い変換を可能にするため、変換の速さに悪影響を与えない。
【実施例2】
【0049】
圧力損失
異なる種類の多孔性構造体を通じての圧力損失Δpが、電子マイクロマノメータを使用して空塔速度の関数として測定された。3つの構造体、すなわち、3mmの直径のアルミナビーズが充填されたもの、実施例1のものと同一の段階的な構造体、実施例1のものと同一の74%の均一な気孔率を有する構造体が調べられた。
【0050】
空気が流れガスとして使用され、実験は室温で実施された。試料(直径20mm、長さ20mm)が21mmの直径の管において中心に置かれた。試料は、バイパス流を防止するために、テフロン(登録商標)テープ帯で包まれた。管の入口は、一様な流れを得るためにグラスウールで覆われた。試料の上および下における4mmの直径を有する2つの孔が、マイクロマノメータに連結された。マノメータの精度は±0.05Paであった。入口流量は質量流量制御デバイスによって制御された。空気空塔速度は0.1m/sから2.7m/sの間の範囲とされた。
【0051】
図13は、異なる速度における圧力損失実験結果を示している。圧力損失が試料の(マクロ)気孔率の低下と共に増加することが観察された。段階的な気孔率の試料は、一様な74%の(マクロ)気孔率を有する試料と比較して、より小さい平均(マクロ)気孔率にも拘らず、非常に小さい圧力損失を示している。
【符号の説明】
【0052】
10 デバイス
11 容器
12 流体入口
13 流体出口
14 全体の流体の流れの方向
15 多孔性構造体
16 繊維
17 流れの方向14に対して直交する方向
31、32、33、34 層
51、52 繊維
81、82 繊維
90 単位細孔セル
111 壁
112 冷却または加熱の通路
151、152、153 層
154 入口端
155 出口端
156 中心領域
157 中間領域
158 周辺領域
P1、P2、P3 気孔率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13