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特許7146805太陽電池およびその太陽電池を備えた電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】太陽電池およびその太陽電池を備えた電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
H01L31/04 262
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019558019
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2018034360
(87)【国際公開番号】W WO2019111491
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2017232916
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】宇津 恒
(72)【発明者】
【氏名】口山 崇
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159286(JP,A)
【文献】特開2016-164930(JP,A)
【文献】特開2009-088203(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078164(WO,A1)
【文献】特開2009-076512(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158977(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179523(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056371(WO,A1)
【文献】特開2012-195453(JP,A)
【文献】特開2015-122475(JP,A)
【文献】特開2017-152510(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116746(WO,A1)
【文献】特開2015-108625(JP,A)
【文献】国際公開第2015/020313(WO,A1)
【文献】特開2011-146678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/119
H01L 31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の裏面側に配置された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層に対応する第1電極層および前記第2導電型半導体層に対応する第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、
前記第2電極層と複数の前記第1電極層とは、前記第1電極層が島状であり、前記第2電極層が海状である海島構造をなし、
前記半導体基板の裏面側と対向して配置され、複数の前記第1電極層に接続され、前記第2電極層に接続されていない板状電極を備え、
複数の前記第1電極層の一部と前記第2電極層とは、前記半導体基板の端面に面しており、
前記半導体基板の端面に面した前記第1電極層の少なくとも一部は、前記板状電極から乖離している、
太陽電池。
【請求項2】
前記第1電極層の高さは前記第2電極層の高さよりも高い、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記板状電極における前記半導体基板と対向する面には、前記第1電極層と接する凸部と、前記第2電極層と離間する凹部とが形成されている、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第2電極層上に形成され、前記第2電極層から電流を取り出すための取出電極を更に備え、
前記取出電極は、金属材料を含み、前記第2電極層上の一部に形成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記取出電極は、前記第2電極層の一部から、複数の前記第1電極層のうちの前記板状電極に接続されていない少なくとも1つに架け渡って形成される、
請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
複数の前記第1電極層は、前記半導体基板の裏面側において2次元状に配置され、
前記半導体基板の裏面に沿った第1方向に隣り合う第1電極層は、前記第1方向に直交する第2方向に互い違いに配置される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記半導体基板は第2導電型である、請求項1~6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項8】
隣り合う前記島状の前記第1電極層同士で挟まれた、または、前記島状の前記第1電極層と前記半導体基板の周辺との間の、前記第2電極層の幅は、6mm以下である、
請求項7に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記半導体基板は第1導電型であり、
前記第1電極層の幅は、6mm以下である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記板状電極と前記第2電極層との間に配置された絶縁層を更に備える、請求項1~9の何れか1項に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記半導体基板の端面には、レーザー痕がある、請求項1~10のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記半導体基板は貫通孔を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記板状電極に接続された全ての前記第1電極層は、前記半導体基板の端面から乖離している、請求項に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記板状電極はメッシュ状である、請求項1~13のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記板状電極はAg粒子を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記板状電極は金属製シートである、請求項1~15のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の太陽電池を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型(バックコンタクト型)(裏面接合型:バックジャンクション型ともいう。)の太陽電池、および、その太陽電池を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に電極が形成された両面電極型の太陽電池と、裏面側のみに電極が形成された裏面電極型の太陽電池とがある。両面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されるため、この電極により太陽光が遮蔽されてしまう。一方、裏面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されないため、両面電極型の太陽電池と比較して太陽光の受光率が高い。特許文献1および2には、裏面電極型の太陽電池が開示されている。
【0003】
図1は、このような従来の裏面電極型の太陽電池を裏面側からみた図である。図1に示す太陽電池1Xは、半導体基板11の裏面側に第1導電型半導体層25Xおよび第2導電型半導体層35Xを有する。第1導電型半導体層25Xは、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当するバスバー部とを有する。バスバー部は、半導体基板11の一方の辺部に沿ってX方向に延在し、フィンガー部は、バスバー部から、X方向に交差するY方向に延在する。同様に、第2導電型半導体層35Xは、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部と、櫛歯の支持部に相当するバスバー部とを有する。バスバー部は、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿ってX方向に延在し、フィンガー部は、バスバー部から、Y方向に延在する。第1導電型半導体層25Xのフィンガー部と第2導電型半導体層35Xのフィンガー部とは、X方向に交互に並んでいる。これにより、第1導電型半導体層25Xの形成領域と第2導電型半導体層35Xの形成領域とは互いに噛み合う櫛歯状に設けられている。このような構造により、受光面側からの入射光により半導体基板11内で誘起された光キャリアを、効率的にそれぞれの半導体層で回収できる。
【0004】
第1導電型半導体層25Xおよび第2導電型半導体層35X上には、回収された光キャリアを外部に取り出すための第1電極層27Xおよび第2電極層37Xが設けられている。第1電極層27Xは、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部27fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部27bとを有する。バスバー部27bは、半導体基板11の一方の辺部に沿ってX方向に延在し、フィンガー部27fは、バスバー部27bから、X方向に交差するY方向に延在する。同様に、第2電極層37Xは、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部37fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部37bとを有する。バスバー部37bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿ってX方向に延在し、フィンガー部37fは、バスバー部37bから、Y方向に延在する。フィンガー部27fとフィンガー部37fとは、X方向に交互に並んでいる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
バスバー部27b,37bには、配線部材がそれぞれ接続される。これらの配線部材を介して、複数の太陽電池1Xを直列または並列に接続することにより、モジュール化される。
なお、バスバー部27b,37bおよび配線部材に代えて、配線シートを用いてフィンガー部27f、37fをそれぞれ接続すると共に、複数の太陽電池1Xを直列または並列に接続することにより、モジュール化を行う技術もある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-200267号公報
【文献】特開2010-092981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ウェアラブル機器または腕時計などの電子機器では、デザイン性が高い製品が求められ、様々な形状の製品が設計されることが予想される。そのため、このような電子機器に搭載される太陽電池においても、電子機器の形状に合った様々な形状の製品が求められると考えられる。しかし、電子機器ごとに様々な形状の太陽電池を生産するような多品種少量生産は現実的でない。
【0008】
この点に関し、顧客側で、太陽電池を任意の形状にカットすることが考えられる。しかし、図1に示す従来の裏面電極型の太陽電池1Xでは、任意の形状にカットされると、第1電極層27Xのフィンガー部27fは分断され、バスバー部27bに接続された配線部材もないことがある。そのため、第1電極層27Xで回収されたキャリアを取り出すこと、すなわち太陽電池1Xの出力を取り出すことが困難となる。
【0009】
本発明は、任意の形状に切断加工されても出力取り出しが容易な太陽電池、および、その太陽電池を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る太陽電池は、半導体基板と、半導体基板の裏面側に配置された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、第1導電型半導体層に対応する第1電極層および第2導電型半導体層に対応する第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、第2電極層と複数の第1電極層とは、第1電極層が島状であり、第2電極層が海状である海島構造をなし、半導体基板の裏面側と対向して配置され、複数の第1電極層に接続され、第2電極層に接続されていない板状電極を備える。
【0011】
本発明に係る他の太陽電池は、半導体基板と、半導体基板の裏面側に配置された第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と、第1導電型半導体層に対応する第1電極層および第2導電型半導体層に対応する第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、第2電極層と複数の第1電極層とは、第1電極層が島状であり、第2電極層が海状である海島構造をなし、複数の第1電極層を露出させ、第2電極層を覆う絶縁層を備える。
【0012】
本発明に係る電子機器は、上記した太陽電池を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、任意の形状に切断加工されても出力取り出しが容易な太陽電池、および、その太陽電池を備えた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の太陽電池を裏面側からみた図である。
図2】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図3A図2の太陽電池におけるIIIA-IIIA線断面図である。
図3B図2の太陽電池におけるIIIB-IIIB線断面図である。
図4A】従来の太陽電池を円形形状に切断する様子を示す図である。
図4B】従来の太陽電池を円形形状に切断する様子を示す図である。
図5A】本実施形態に係る太陽電池を円形形状に切断する様子を示す図である。
図5B】本実施形態に係る太陽電池を円形形状に切断する様子を示す図である。
図6A】本実施形態に係る太陽電池(取出電極あり)を裏面側からみた図である。
図6B図6Aの太陽電池におけるVIB-VIB線断面図である。
図7A】本実施形態の変形例に係る太陽電池(取出電極あり)を裏面側からみた図である。
図7B図7Aの太陽電池におけるVIIB-VIIB線断面図である。
図8A】本実施形態に係る太陽電池の作製順序の一例を示す図である。
図8B】本実施形態に係る太陽電池の作製順序の一例を示す図である。
図8C】本実施形態に係る太陽電池の作製順序の一例を示す図である。
図9】本実施形態の第1変形例に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図10】本実施形態の第2変形例に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図11】本実施形態の第3変形例に係る太陽電池の断面図である。
図12】本実施形態の第4変形例に係る太陽電池の断面図である。
図13】本実施形態の第5変形例に係る切断後の太陽電池を裏面側からみた図である。
図14】本実施形態の第6変形例に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングおよび部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0016】
図2は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図であり、図3Aは、図2の太陽電池におけるIIIA-IIIA線断面図である。また、図3Bは、図2の太陽電池におけるIIIB-IIIB線断面図である。
図2図3Aおよび図3Bに示すように、太陽電池1は、裏面電極型(裏面接合型)の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において複数の第1導電型領域7と1つの第2導電型領域8とを有する。
【0017】
第1導電型領域7および第2導電型領域8は海島構造を形成する。海島構造において、海領域は、物理的に一つの連なった領域であり、電気的には一つの電気特性(プラスまたはマイナス)を有する領域である。一方で、島領域は、海領域において浮かぶ(孤立する)領域で、その海領域の電気特性に対し相反する電気特性を有する領域である。そして、第1導電型領域7が島領域であり、第2導電型領域8が海領域である(以下では、第1導電型領域7を島領域ともいい、第2導電型領域8を海領域ともいう。)。
島領域7は、例えば、半導体基板11の主面の平面視で円形形状をなしている。なお、島領域7の形状はこれに限定されず、帯形形状または多角形形状(例えば四角形形状)であってもよい(例えば、後述の第2変形例参照)。島領域7は、半導体基板11の主面において2次元状に配置される。より具体的には、島領域7は、直交格子の交点(格子点)上に略等間隔で配置される。
海領域8は、半導体基板11の主面において、島領域7および半導体基板11の周縁部を除く全ての領域を占める。なお、海領域8は、半導体基板11の周縁部にも配置されてもよい。これにより、有効発電面積を拡大でき、光電変換効率を向上できる。
【0018】
太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層されたパッシベーション層13と反射防止層15とを備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側の島領域7に順に積層されたパッシベーション層23と、第1導電型半導体層25と、第1電極層27とを備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の海領域8に順に積層されたパッシベーション層33と、第2導電型半導体層35と、第2電極層37とを備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側において、島領域7の第1電極層27上に積層された板状電極40を備える。なお、図2では、板状電極40を破線で示すと共に、板状電極40において太陽電池1の積層構造を透過して示している。
【0019】
<半導体基板>
半導体基板11としては、導電型単結晶シリコン基板、例えばn型単結晶シリコン基板またはp型単結晶シリコン基板が用いられる。これにより、高い光電変換効率が実現する。
半導体基板11は、n型単結晶シリコン基板であると好ましい。これにより、結晶シリコン基板内のキャリア寿命が長くなる。また、p型単結晶シリコン基板では、光照射によってp型ドーパントであるB(ホウ素)が影響して再結合中心となるLID(Light Induced Degradation)が起こる場合があるが、n型単結晶シリコン基板ではLIDがより抑制される。
【0020】
半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
また、半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
【0021】
半導体基板11の厚さは、50μm以上200μm以下であると好ましく、60μm以上180μm以下であるとより好ましく、70μm以上180μm以下であると更に好ましい。このように、半導体基板11の厚さが薄いことにより、太陽電池1の開放電圧を向上させられ、また材料コストを低減できる。
なお、半導体基板11として、導電型多結晶シリコン基板、例えばn型多結晶シリコン基板またはp型多結晶シリコン基板を用いてもよい。この場合、より安価に太陽電池が製造される。
【0022】
<反射防止層>
反射防止層15は、半導体基板11の受光面側にパッシベーション層13を介して形成されている。パッシベーション層13は、真性シリコン系層で形成される。パッシベーション層13は、半導体基板11の表面欠陥を終端し、キャリアの再結合を抑制する。
反射防止層15としては、屈折率1.5以上2.3以下程度の透光性膜が好適に用いられる。反射防止層15の材料としては、SiO、SiN、またはSiON等が好ましい。反射防止層15の形成方法は特に限定されないが、精密な膜厚制御が可能なCVD法を用いると好ましい。CVD法による製膜によれば、材料ガスまたは製膜条件のコントロールで膜質制御が可能である。
【0023】
本実施形態では、受光面側に電極が形成されていないため(裏面電極型)、太陽光の受光率が高く、光電変換効率が向上する。
【0024】
<第1導電型半導体層および第2導電型半導体層>
第1導電型半導体層25は、半導体基板11の裏面側の島領域7にパッシベーション層23を介して形成されており、第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側の海領域8にパッシベーション層33を介して形成されている。これにより、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35は海島構造をなし、第1導電型半導体層25は島状の半導体層であり、第2導電型半導体層35は海状の半導体層である。
【0025】
第1導電型半導体層25は、第1導電型シリコン系層、例えばp型シリコン系層で形成される。第2導電型半導体層35は、第1導電型と異なる第2導電型のシリコン系層、例えばn型シリコン系層で形成される。なお、第1導電型半導体層25がn型シリコン系層であり、第2導電型半導体層35がp型シリコン系層であってもよい。
p型シリコン系層およびn型シリコン系層は、非晶質シリコン層、または、非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む微結晶シリコン層で形成される。p型シリコン系層のドーパント不純物としては、B(ホウ素)が好適に用いられ、n型シリコン系層のドーパント不純物としては、P(リン)が好適に用いられる。
【0026】
第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の形成方法は特に限定されないが、CVD法を用いると好ましい。材料ガスとしては、例えばSiHガスが好適に用いられ、ドーパント添加ガスとしては、例えば、水素希釈されたBまたはPHが好適に用いられる。また、光の透過性を向上させるために、例えば、酸素または炭素といった不純物を微量添加してもよい。その場合、例えば、COまたはCHといったガスをCVD製膜の際に導入する。
第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の形成方法の他の一例としては、熱拡散ドーピング法、レーザードーピング法等が挙げられる。
【0027】
裏面電極型の太陽電池では、受光面側で受光し、生成したキャリアを裏面側で回収するため、第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とは同一面内に形成される。第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とを同一面内において所定形状に形成(パターニング)する方法としては特に限定されず、マスクを利用したCVD法を採用してもよいし、或いは、レジスト、エッチング液またはエッチングペースト等を利用したエッチング法を採用してもよい。
【0028】
第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とは、接合されていないと好ましい。そのため、これらの層の間に絶縁層(不図示)が設けられてもよい。例えば、p型シリコン系薄膜とn型シリコン系薄膜との境界部分に絶縁層を設ける場合、酸化シリコン等の絶縁層をCVD法により製膜すれば、製膜工程を簡素化でき、プロセスコストの低減および歩留まりの向上を図れる。
【0029】
<パッシベーション層>
パッシベーション層23,33は、真性シリコン系層で形成される。パッシベーション層23,33は、半導体基板11の表面欠陥を終端し、キャリアの再結合を抑制する。これにより、キャリアのライフタイムが向上するために、太陽電池の出力が向上する。
【0030】
<第1電極層および第2電極層>
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に形成されており、第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に形成されている。これにより、第1電極層27および第2電極層37は海島構造をなし、第1電極層27は島状の電極層であり、第2電極層37は、海状の電極層である。第1電極層27と第2電極層37は離間している。
【0031】
第1電極層27および第2電極層37は、透明導電性材料からなる透明導電層で形成される。透明導電性材料としては、透明導電性金属酸化物、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタンおよびそれらの複合酸化物等が用いられる。これらの中でも、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物が好ましい。高い導電率と透明性の観点からは、インジウム酸化物が特に好ましい。更に、信頼性またはより高い導電率を確保するため、インジウム酸化物にドーパントを添加すると好ましい。ドーパントとしては、例えば、Sn、W、Zn、Ti、Ce、Zr、Mo、Al、Ga、Ge、As、Si、またはS等が挙げられる。
このような透明電極層の形成方法としては、スパッタリング法等の物理気相堆積法、または有機金属化合物と酸素または水との反応を利用した化学気相堆積法(例えばCVD法)等が用いられる。
【0032】
なお、第1電極層27および第2電極層37は、透明電極層に限定されず、透明電極層上に積層された金属電極層を有していてもよい。すなわち、透明電極層と金属電極層とが積層した、積層型の第1電極層および第2電極層であってもよい。また、第1電極層および第2電極層のうち、一方が積層型の電極層であり、他方が単層型の透明電極層であってもよい。また、第1電極層27および第2電極層37の両方が、単層型の透明電極層であっても構わないし、単層型の金属電極層であっても構わない。
なお、金属電極層は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金が用いられる。
金属電極層の形成方法としては、例えばAgペーストを用いたスクリーン印刷等の印刷法、または例えばCuを用いた電解メッキ等のメッキ法等が用いられる。
【0033】
第1電極層27の幅は第1導電型半導体層25の幅より小さく、第2電極層37の幅は第2導電型半導体層35の幅よりも小さいと好ましい。
なお、海状の第2電極層37の幅とは、所定方向に隣り合った2つの島状の第1電極層27で挟まれた部分の所定方向の幅(例えば、X方向に隣り合った2つの島状の第1電極層27で挟まれた部分のX方向の幅、Y方向に隣り合った2つの島状の第1電極層27で挟まれた部分のY方向の幅、または、X方向及びY方向に対して45度傾斜した45度方向に隣り合った2つの島状の第1電極層27で挟まれた部分の45度方向の幅)、または、島状の第1電極層27と半導体基板11の周辺との間の部分の幅である。
同様に、海状の第2導電型半導体層35の幅とは、所定方向に隣り合った2つの島状の第1導電型半導体層25で挟まれた部分の所定方向の幅(例えば、X方向に隣り合った2つの島状の第1導電型半導体層25で挟まれた部分のX方向の幅、Y方向に隣り合った2つの島状の第1導電型半導体層25で挟まれた部分のY方向の幅、または、X方向及びY方向に対して45度傾斜した45度方向に隣り合った2つの島状の第1導電型半導体層25で挟まれた部分の45度方向の幅)、または、島状の第1導電型半導体層25と半導体基板11の周辺との間の部分の幅である。
【0034】
第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35で回収された光キャリアを効率よく取り出すためには、第1電極層27および第2電極層37の幅はできる限り大きいと好ましい。そのため、第1電極層27の幅は、第1導電型半導体層25の幅の0.5倍よりも大きいと好ましく、0.7倍よりも大きいと更に好ましい。同様に、第2電極層37の幅は、第2導電型半導体層35の幅の0.5倍よりも大きいと好ましく、0.7倍よりも大きいと更に好ましい。
なお、第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35との境界部分に絶縁層やその他の層が設けられて、第1電極層27と第2電極層37とが離間している場合には、第1電極層27および第2電極層37の幅は、それぞれ、第1導電型半導体層25の幅および第2導電型半導体層35の幅より大きくてもよい。
【0035】
一方、半導体基板11における光キャリアを第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35で効率よく回収するためには、第1電極層27および第2電極層37の幅はある程度小さいと好ましい。
少数キャリアが多数キャリアと再結合することなく半導体基板11内を移動できる距離は、基板の抵抗率等に依存するが、一般的に太陽電池に使用されるシリコン基板では約3mm以下である。
半導体基板11の導電型がn型であり、島状の第1導電型半導体層25がp型半導体層であり、海状の第2導電型半導体層35がn型半導体層である場合、島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27はホールを回収し、海状の第2導電型半導体層35および第2電極層37は電子を回収する。
海状の第2導電型半導体層35下の半導体基板11でホールが発生することを想定した場合、図3Bに示すように、島状の第1電極層27の端から海状の第2電極層37の中心までの距離L2がホールの移動可能距離3mm以下であると好ましく、更には1mm以下であると好ましく、特に0.5mm以下であるとより好ましい。換言すれば、海状の第2電極層37の幅W2は6mm以下であると好ましく、更には2mm以下であると好ましく、特に1mm以下であるとより好ましい。また、この場合、島状の第1電極層27の幅W1はどのような値であってもよいが、半導体基板11の抵抗ロスを考慮すると海状の第2電極層37の幅W2と同程度であることが好ましい。
なお、海状の第2電極層37の幅W2および距離L2は、図2において最も島間の距離が離れている(キャリアの移動距離が最も長い)IIIB-IIIB線上の距離であり、海状の第2電極層37の中心は、このIIIB-IIIB線上の中心である。
【0036】
半導体基板11の導電型がn型であり、島状の第1導電型半導体層25がn型半導体層であり、海状の第2導電型半導体層35がp型半導体層である場合、島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27は電子を回収し、海状の第2導電型半導体層35および第2電極層37はホールを回収する。
島状の第1導電型半導体層25下の半導体基板11でホールが発生することを想定した場合、図3Bに示すように、海状の第2電極層37の端部から島状の第1電極層27の中心までの距離L1がホールの移動可能距離3mm以下であると好ましく、更には1mm以下であると好ましく、特に0.5mm以下であるとより好ましい。換言すれば、島状の第1電極層27の幅W1は6mm以下であると好ましく、更には2mm以下であると好ましく、特に1mm以下であるとより好ましい。また、この場合、海状の第2電極層37の幅W2はどのような値であってもよいが、半導体基板11の抵抗ロスを考慮すると島状の第1電極層27の幅W1と同程度であることが好ましい。
【0037】
また、このように島状の第1導電型半導体層25がn型半導体層である場合、板状電極40と島状の第1電極層27との接続不良が発生し、この孤立した島状の第1電極層27で電子が回収できない状況であっても、移動可能距離の長い電子は、隣り合った他の島状の第1電極層27までたどり着けるようになり、接触不良によるロスを抑制できるメリットがある。このように、半導体基板11の導電型と島状の第1導電型半導体層25の導電型とを同じにすると、島状の第1電極層27により多数キャリアが回収されるため、板状電極40と島状の第1電極層27との接続不良が発生した場合においても、他の島状の第1電極層27で多数キャリアが回収され、接触不良によるロスが抑制される。
以上のように、半導体基板11の導電型がn型である場合を例に電極層幅に関して説明したが、半導体基板11の導電型がp型である場合も同様に、多数キャリアであるホールを収集する側の電極層幅が6mm以下であると好ましく、更には2mm以下であると好ましく、特に1mm以下であるとより好ましい。
【0038】
図3Aに示すように、第1電極層27の高さH1は、第2電極層37の高さH2よりも高い。これにより、板状電極40と第2電極層37とを接触させることなく、板状電極40と第1電極層27との接続が容易となる。
第1電極層27の高さH1と第2電極層37の高さH2との差分は、1μm以上であると好ましく、1μm以上150μm以下であるとより好ましく、5μm以上80μm以下であると更に好ましい。
第1電極層27を第2電極層37よりも高く形成する方法は特に限定されないが、例えば、第2電極層37を形成した後、第1電極層27領域に印刷またはメッキを行ってもよい。第1電極層27の嵩高部分の材料は、他の電極層領域の材料と同一でもよく、異なっていてもよい。
【0039】
第2電極層37の高さを高くすれば、面方向に流れる電流に対する断面積が増大するため、直列抵抗を低減できる。しかし、電極層の高さを高くすると、半導体層と電極層との界面の応力が大きくなり、電極剥がれが生じる場合がある。更に、裏面電極型太陽電池では、電極が片面にしか設けられていないため、電極層の高さが大きくなると、基板表裏の応力が不均衡となり、太陽電池の反り等の変形が生じ易く、太陽電池が破損する場合がある。また、電極界面の応力に起因して太陽電池が変形すると、モジュール化の際に、位置ズレまたは短絡等の不具合が生じる場合がある。これより、第2電極層37の高さH2は、100μm以下であると好ましく、60μm以下であるとより好ましく、30μm以下であると更に好ましい。
なお、電極の高さは、基板の主面から電極の頂点までの距離である。半導体層形成のためのエッチング等により、部分的に基板の厚みが小さくなっている領域が存在する場合は、基板の主面に平行な基準面を定め、当該基準面から電極の頂点までの距離を電極の高さと定義すればよい。
<板状電極>
板状電極40は、半導体基板11と対向して設けられ、複数の島状の第1電極層27と接続されている。板状電極40は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金が用いられる。
板状電極40の形成方法としては、例えばAgペーストを用いたスクリーン印刷等の印刷法、または例えばCuを用いた電解メッキ等のメッキ法等が用いられる。或いは、板状電極40は、予め形成された銅箔、配線シートなどの金属製シートを積層することにより、形成されてもよい。この場合、板状電極40と複数の島状の第1電極層27とを接着剤等で接着してもよい。
例えば、板状電極40は、Agペーストを用いたスクリーン印刷で形成される場合、Ag粒子を含む電極となる。
なお、板状電極40は、格子状またはメッシュ状の平板であってもよい。
【0040】
(切断)
次に、上述した太陽電池1を任意の形状に切断する場合について説明する。太陽電池1の切断は、顧客が行ってもよいし、製造者が出荷前に行ってもよい。
図4Aおよび図4Bは、図1に示す従来の太陽電池1Xを円形形状にカットする様子を示す図である。図4Aに示す円形形状の切断線Cに沿って太陽電池1Xを切断すると、図4Bに示すように円形形状の太陽電池が得られる。
図4Aに示すように、従来の太陽電池1Xでは、第1電極層27Xのフィンガー部27fはバスバー部27bで接続されている状態であるが、図4Bに示すように、切断後の太陽電池1Xでは、第1電極層27Xのフィンガー部27fは分断され、バスバー部27bに接続された配線部材もない。そのため、第1電極層27Xで回収されたキャリアを取り出すこと、すなわち太陽電池1Xの出力を取り出すことが困難である。
【0041】
図5Aおよび図5Bは、図2に示す本実施形態の太陽電池1を円形形状に切断する様子を示す図である。図5Aに示す円形形状の切断線Cに沿って太陽電池1を切断すると、図5Bに示すように円形形状の太陽電池が得られる。
図5Aに示すように、本実施形態の太陽電池1では、複数の第1導電型半導体層25および複数の第1電極層27が島状に配置されており、複数の第1電極層27は板状電極40で接続されている。そのため、図5Bに示すように、切断後の太陽電池1でも、複数の第1電極層27は板状電極40で接続される。これにより、複数の第1電極層27で回収されたキャリアを板状電極40を介して取り出すこと、すなわち太陽電池1の出力を取り出すことができる。
【0042】
また、本実施形態の太陽電池1では、第2電極層37が海状に形成されているため、カットされた太陽電池1でも、第2電極層37が分断されることがない。これにより、第2電極層37で回収されたキャリアを取り出すこと、すなわち太陽電池1の出力を取り出すことができる。
なお、カットされた太陽電池1の周縁の端部では、島状の第1導電型半導体層25の一部と海状の第2導電型半導体層35とが露出している。また、島状の第1電極層27の一部と海状の第2電極層37とは、カットされた太陽電池1の周縁の端部に面している。
【0043】
太陽電池1を任意の形状に切断する方法としては、特に限定されないが、例えばレーザーダイシングまたはブレードダイシングが挙げられる。特に、複雑な形状または曲面を切り出すことができることから、レーザーダイシングが好ましい。レーザーを用いる場合、切断後の太陽電池1の周縁の端部(切断面)には、レーザー痕が形成される。
【0044】
<取出電極>
次に、取出電極の形成方法について説明する。取出電極の形成は、顧客が行ってもよいし、製造者が出荷前に行ってもよい。
図6Aは、本実施形態に係る太陽電池(取出電極あり)を裏面側からみた図であり、図6Bは、図6Aの太陽電池におけるVIB-VIB線断面図である。図6Aおよび図6Bに示すように、第1取出電極43は板状電極40上に形成され、第2取出電極45は、第2電極層37上に形成される。なお、図6Aでは、第1取出電極43を破線で示すと共に、第1取出電極43において太陽電池1の積層構造を透過して示している。
第1取出電極43および第2取出電極45は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金が用いられる。第1取出電極43および第2取出電極45の形成方法としては、例えばAgペーストを用いたスクリーン印刷等の印刷法、または例えばCuを用いた電解メッキ等のメッキ法等が用いられる。或いは、第1取出電極43および第2取出電極45は、ハンダなどによって形成されてもよい。
【0045】
一般に、高照度環境下で使用される(大電力発電用)裏面電極型太陽電池では、太陽電池の面方向の電気輸送の際の電気抵抗ロスを低減するために、電極層は透明電極層に加え金属電極層を含む。
これに対して、ウェアラブル機器または腕時計などの電子機器のための低照度環境下で主に使用される(小電力発電用)裏面電極型太陽電池では、高照度環境下で使用される裏面電極型太陽電池ほど面方向の電気抵抗を低減する必要がない。そのため、本実施形態の太陽電池1では、海状の第2電極層37は透明電極層のみで形成され、金属電極、すなわち取出電極45は透明電極層上の一部に小さく形成されている。
なお、低照度環境下においても、海状の第2電極層37の電気抵抗を小さくする必要がある場合には、第2電極層37は透明電極層に加え金属電極層を含んでいてもよい。
【0046】
また、通常の太陽電池パネルでは、タブ線またはスマートワイヤーなどの配線部材を用いて太陽電池の面方向における電気輸送を行うことが、電気抵抗ロスを抑制する上で必須となる。一方で、本実施形態の裏面電極型太陽電池では、特にウェアラブル用途(腕時計またはスマートウォッチ、センサー)などの低照度環境下で主に使用される電子機器に使用されることが好ましい。この場合、通常照射される光が弱く、太陽電池パネルほど電気抵抗ロスが大きくない。そのため、太陽電池の面内に置ける面方向の電気輸送は板状電極40および第2電極層37によって主に行われる点で、通常の太陽電池パネルと異なる。面方向の電気輸送は板状電極40および第2電極層37によって主に行われることにより、太陽電池を任意の形状に切り出し加工する上で配線部材が制限とならない点も、本実施形態の太陽電池を低照度用途に使用される上でメリットである。
なお、本実施形態では、島状の第1電極層27の電気輸送のために板状電極40を用い、海状の第2電極層37の電気輸送のためには板状電極を用いない。すなわち、本実施形態では、板状電極は単一の極性のみを有する。
【0047】
(取出電極の変形例)
任意の形状に太陽電池を切断することを考えると、島状の第1電極層27のサイズはある程度小さいことがロスを低減する上で望ましい。島状の第1電極層27のサイズが小さい場合、板状電極40に覆われていない海状の第2電極層37の領域が小さくなり、第1電極層27および板状電極40を避けて海状の第2電極層37上のみに第2取出電極45を形成することが難しい場合もある。このような場合は、図7Aおよび図7Bに示すように、第2取出電極45は、海状の第2電極層37の一部から、島状の第1電極層27の一部に架け渡って形成されてもよい。
このとき、板状電極40は、第2取出電極45および第2取出電極45が形成された第1電極層27に接続されないように形成される。
【0048】
第2取出電極45の形成は、切断前に行われてもよいし、切断後に行われてもよい。また、第2取出電極45の形成は、板状電極40の形成前に行われてもよいし、板状電極40の形成後に行われてもよい。図8A図8Cを参照して、切断前および板状電極40の形成前に第2取出電極45の形成を行う一例について説明する。図8A図8Cは、本実施形態に係る太陽電池の作製順序の一例を示す図である。
まずは、図8Aに示すように、半導体基板11の受光面側にパッシベーション層13および反射防止層15を形成し、半導体基板11の裏面側の島領域7にパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を形成し、半導体基板11の裏面側の海領域8にパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を形成した太陽電池1を用意し、第2電極層37上の所望の位置に第2取出電極45を形成する。図8Aでは、海状の第2電極層37の一部から、島状の第1電極層27の一部に架け渡って第2取出電極45を形成している。
【0049】
次に、図8Bに示すように、第2取出電極45および第2取出電極45が形成された第1電極層27に接しないように、複数の第1電極層27上に板状電極40を形成する。また、板状電極40上の所望の位置に第1取出電極43を形成する。次に、切断線Cに沿って太陽電池1を切断する。このようにして、図8Cに示されるように、切断後の太陽電池1を得ることができる。
なお、製造者は、図8Aに示した太陽電池の取出電極形成前の状態の太陽電池を顧客に提供することにより、顧客は自由な設計で取出電極または太陽電池形状を設計し、上述した太陽電池の作製順序に沿って所望の形状の太陽電池を得ることができる。
また、図8Bでは、1枚の基板から1つの太陽電池を切り出す例を示したが、1つの基板から複数の太陽電池を切り出してもよい。
【0050】
(第1変形例)
図9は、本実施形態の第1変形例に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図9に示す太陽電池1は、図2に示す太陽電池1において島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27の配置の点で本実施形態と異なる。
本実施形態では、図2に示すように、直交格子の交点上に、島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27を配置した。第1変形例では、図9に示すように、千鳥状(staggered)に、島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27を配置する。より具体的には、第1変形例では、Y方向(第1方向)に隣り合う島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27は、X方向(第2方向)に互い違い(staggered)に配置されている。これにより、島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27を最密に配置できる(最密充填構造)。この場合、隣り合った全ての第1電極層27の距離を等しくでき、光キャリアの移動距離を均一にできる。
【0051】
(第2変形例)
図10は、本実施形態の第2変形例に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図10に示す太陽電池1は、図2に示す太陽電池1において島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27の形状の点で本実施形態と異なる。
図10に示すように、島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27は、Y方向に延在する帯状(バンド状)に形成され、X方向に配列されてもよい。これにより、太陽電池1を切断線Cに沿って短冊形状(ストリップ形状)に切断することが容易となる。
このように、切断形状に応じて、島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27の形状を適宜変更してもよい。このとき、切断の任意性として短冊の幅を任意に設定することができる。
【0052】
(第3変形例)
図11は、本実施形態の第3変形例に係る太陽電池の断面図である。図11に示す太陽電池1は、図3Aに示す太陽電池1において絶縁層50を更に備える点で本実施形態と異なる。
図11に示すように、絶縁層50は、海領域8、すなわち海状の第2電極層37と板状電極40との間に設けられている。絶縁層50の材料としては、絶縁性を有すれば種々の材料を用いてもよく、例えばフォトレジスト、熱硬化樹脂、または紫外線硬化樹脂などを用いることができる。
絶縁層50の形成方法としては、特に、印刷法を用いて第1電極層27以外の領域にパターン形成することが、生産性の観点からも好ましい。例えば、島状の第1電極層27を露出させ、海状の第2電極層37を覆うように、第1電極層27以外の領域に絶縁層50を形成した状態の太陽電池を顧客に提供し、顧客側で板状電極を形成する場合、印刷法またはメッキ法を用いて板状電極40を容易に形成できる。
【0053】
また、顧客側で第2取出電極45を形成する場合、絶縁層50の下に配置される第2電極層37を部分的に露出させ、第2取出電極45と接続させる必要がある。絶縁層50の形成後に第2電極層37と第2取出電極45とを接続する方法は、特に限定されないが、例えば、ハンダにより第2取出電極45を形成する場合、樹脂等により形成した絶縁層50を熱により突き破って接続を行ってもよい。また、絶縁層50としてフォトレジストを用いた場合、露光と現像により、絶縁層50に部分的に開口部を形成して第2電極層37を露出させて、第2電極層37と第2取出電極45との接続を行ってもよい。
【0054】
(第4変形例)
図12は、本実施形態の第4変形例に係る太陽電池の断面図である。図12に示す太陽電池1は、図3Aに示す太陽電池1において第1電極層27と板状電極40との構造の点で本実施形態と異なる。
図12に示すように、板状電極40における半導体基板11と対向する主面には、島状の第1電極層27と接する凸部と、海状の第2電極層37と離間する凹部とが形成されている。このような板状電極40は、銅箔、配線シートなどの金属製シートで実現可能である。この場合、島状の第1電極層27の高さは、海状の第2電極層37の高さよりも高くなくてもよく、第2電極層37の高さと同等であってもよいし、或いは第2電極層37の高さよりも低くてもよい。
【0055】
(第5変形例)
図13は、本実施形態の第5変形例に係る切断後の太陽電池を裏面側からみた図である。図13に示す切断後の太陽電池1は、図5Bに示す切断後の太陽電池1において主に板状電極40の形状の点で本実施形態と異なる。
上述したようにレーザーダイシング等により太陽電池1を切断する場合、第1導電型半導体層25または第2導電型半導体層35にレーザー光が照射されると、第1導電型半導体層25または第2導電型半導体層35がダメージを受け、太陽電池1の出力が僅かに低下する。例えば図13に示すように、太陽電池1を円形形状に切断した場合、切断後の太陽電池1の周縁の端部(切断面)において、第1導電型半導体層25または第2導電型半導体層35がダメージを受ける。
第5変形例の太陽電池1では、太陽電池1の周縁の端部においてレーザー光が照射され、少なくとも1個以上の切断された島状の第1導電型半導体層25に対応する第1電極層27(斜線箇所)(すなわち、太陽電池1の周縁の端部に面した第1電極層27)が生じる。このような場合、すなわち、半導体基板11の端面に少なくとも1個以上の第1電極層27が面した場合に、そのうちの少なくとも一部が板状電極40に接続されないように形成されることが好ましい。更に、板状電極40は、切断された島状の第1導電型半導体層25に対応する第1電極層27(すなわち、太陽電池1の周縁の端部に面した第1電極層27)の全てと接続されないように形成されることが特に好ましい。すなわち、板状電極40に接続された第1電極層27は、太陽電池1の端面(切断面)から乖離している。これにより、レーザー光のダメージによる太陽電池1の出力の低下が抑制される。
【0056】
特に、pn接合部にレーザー光が照射されると太陽電池の出力低下が大きいため、pn接合を形成する半導体層を島状の第1導電型半導体層25とし、板状電極40に接続しないことが好ましい。すなわち、半導体基板11は、島状の第1導電型半導体層25と異なり、海状の第2導電型半導体層35と同一の第2導電型であると好ましい。
なお、pn接合を形成しない第2導電型半導体層35にレーザー光が照射された場合、太陽電池の出力低下が生じるものの軽微である。
【0057】
特に、島領域7、すなわち島状の第1導電型半導体層25および第1電極層27のサイズを可能な限り小さくすると、切断される島状の第1導電型半導体層25の面積が小さくなり、太陽電池の出力低下を更に抑制できる。
なお、板状電極40と切断された島状の第1導電型半導体層25とを分離する方法としては、顧客側または製造者側において太陽電池を切断した後に、切断された島状の第1導電型半導体層25に対応する第1電極層27(すなわち、太陽電池の周縁の端部に面した第1電極層27)を避けるように板状電極40を形成してもよい。或いは、顧客側または製造者側において太陽電池を切断する前に、切断工程にて切断される島状の第1導電型半導体層25に対応する第1電極層27(すなわち、太陽電池の周縁の端部に面した第1電極層27)を避けるように板状電極40を形成してもよい。
【0058】
(第6変形例)
図14は、本実施形態の第6変形例に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図14に示す太陽電池1は、図2に示す太陽電池1において主に貫通孔が形成されている点で本実施形態と異なる。
図14に示すように、太陽電池1は、任意の位置に貫通孔60が形成されてもよい。貫通孔60の形成方法としては、上述したようにレーザーダイシングなどが挙げられる。貫通孔60は、ウェアラブル機器または腕時計等の電子機器において、太陽電池1の下部に設けられた表示部の覗き窓、または腕時計の針の軸等のための孔である。
この場合にも、上述したように、板状電極40は、太陽電池1の貫通孔60側の端部(破線で示す)においてレーザー光が照射され、切断された島状の第1導電型半導体層25に対応する第1電極層27(斜線箇所)(すなわち、太陽電池1の貫通孔60側の端部に面した第1電極層27)の少なくとも一部、より好ましくは全部に接続されないように形成されてもよい。すなわち、板状電極40に接続された第1電極層27は、太陽電池1の貫通孔60側の端面(切断面)から乖離している。これにより、レーザー光のダメージによる太陽電池1の出力の低下が抑制される。
【0059】
(電子機器)
本実施形態の太陽電池1は、実用化に際して、モジュール化されることが好ましい。太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、陽極と陰極の両方の取出電極43,45に配線またはコンタクトピンなどを接続することによって、電気取出しを行うことができる。また、裏面電極型太陽電池は、封止剤およびガラス板により封止されることによりモジュール化が行われる。このようにしてモジュール化された太陽電池は、ウェアラブル用途(腕時計またはスマートウォッチ、センサー)の電子機器に搭載されることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、ヘテロ接合型の太陽電池を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池に適用可能である。
【0061】
また、上述した実施形態では、半導体基板11の裏面側の島領域(第1導電型領域)7に順に積層されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27と、半導体基板11の裏面側の島領域7を除く海領域(第2導電型領域)8に順に積層されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37とを備える裏面電極型の太陽電池1を例示した。しかし、本発明の特徴は、このような太陽電池1に限らず、第1導電型半導体層の少なくとも一部と第2導電型半導体層の少なくとも一部とが重なっている裏面電極型の太陽電池にも適用可能である。この場合、第1導電型半導体層に対応する第1電極層が上述した第1電極層27のように島状であり、第2導電型半導体層に対応する第2電極層が上述した第2電極層37のように海状であり、これらの第1電極層と第2電極層とが海島構造であればよい。
【符号の説明】
【0062】
1,1X 太陽電池
7 第1導電型領域(島領域)
8 第2導電型領域(海領域)
11 半導体基板
13,23,33 パッシベーション層
15 反射防止層
25,25X 第1導電型半導体層
27,27X 第1電極層
27b,37b バスバー部
27f,37f フィンガー部
35,35X 第2導電型半導体層
37,37X 第2電極層
40 板状電極
43 第1取出電極
45 第2取出電極
50 絶縁層
60 貫通孔
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14