(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】車両客室用のコマンドモジュール
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/80 20170101AFI20220927BHJP
B60Q 3/258 20170101ALI20220927BHJP
B60Q 3/74 20170101ALI20220927BHJP
B60Q 3/20 20170101ALI20220927BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220927BHJP
B60R 11/04 20060101ALN20220927BHJP
【FI】
B60Q3/80
B60Q3/258
B60Q3/74
B60Q3/20
B60K35/00 Z
B60R11/04
(21)【出願番号】P 2019558558
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2018060977
(87)【国際公開番号】W WO2018197710
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-27
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516000549
【氏名又は名称】ヴァレオ、コンフォート、アンド、ドライビング、アシスタンス
【氏名又は名称原語表記】VALEO COMFORT AND DRIVING ASSISTANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ-カミーユ、ペトルッチ
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ、グルロワ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、メルミヨ
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-146032(JP,A)
【文献】特開2012-032536(JP,A)
【文献】特開2017-013515(JP,A)
【文献】特開2015-115380(JP,A)
【文献】特開2006-310402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/80
B60Q 3/258
B60Q 3/74
B60Q 3/20
B60K 35/00
B60R 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両客室観察モジュールであって、
カメラ(101)と、
それぞれが、前記カメラ(101)の視野の1つの区分を照明する、2つの照明モジュール(103a、103b)と、
を含む、車両客室観察モジュールにおいて、
前記照明モジュール(103a、103b)それぞれが、前記カメラ(101)の前記視野の1つの特定の領域(E
1、E
2)を照明し、両方の前記照明モジュール(103a、103b)が、前記特定の領域(E
1、E
2)間に設けられている、前記視野の1つの共通の重畳領域(E
1∩2)を照明し、
前記照明モジュール(103a、103b)はそれぞれ、
2つの前記照明モジュール(103a、103b)の前記特定の領域(E
1、E
2)において、該2つの照明モジュール(103a、103b)に共通する基準値(E
0)にある均一な放射照度、および
2つの前記照明モジュール(103a、103b)の前記特定の領域(E
1、E
2)における前記基準値(E
0)から、他方の前記照明モジュール(103a、103b)の前記特定の領域(E
1、E
2)における0まで連続的に低下する放射照度、を生成し、
前記共通の重畳領域(E
1∩2)における2つの前記照明モジュール(103a、103b)の組み合わされた放射照度を一定にし、かつ前記基準値(E
0)に等しくする、ことを特徴とする、車両客室観察モジュール。
【請求項2】
前記照明モジュール(103a、103b)それぞれの照度は、前記重畳領域(E
1∩2)にわたり前記基準値(E
0)から0まで線形に低下する、請求項1記載の
車両客室観察モジュール。
【請求項3】
前記カメラ(101)は、前記カメラ(101)によって撮影された画像において、前記カメラ(101)の前記視野においてユーザ(U)が行った1つ以上の特定のジェスチャを特定するように構成された制御ユニット(105)に接続されている、請求項1または2記載の
車両客室観察モジュール。
【請求項4】
前記カメラは、前記カメラ(101)によって撮影された画像において、前記カメラ(101)の前記視野において
車両のドライバ(U)の覚醒のレベルの1つ以上の指標を特定するように構成された制御ユニット(105)に接続されている、請求項1から3
のうちのいずれか一項に記載の車両客室観察モジュール。
【請求項5】
前記ドライバ(U)の前記覚醒のレベルの前記指標は、前記ドライバの注視の向き、前記ドライバの目の開いた状態または閉じた状態、前記ドライバが瞬きをする頻度、前記ドライバが欠伸をする頻度、のうちの少なくとも1つを含む、請求項4記載の
車両客室観察モジュール。
【請求項6】
請求項1から5
のうちのいずれか一項に記載の
車両客室観察モジュー
ルのための照明モジュールであって、
光束を放出する光源(9)と、
発光ダイオード(9)から放出された前記光束を光ビームにして、前記カメラ(101)の前記視野に向ける反射器(11)と、
を含む、照明モジュールにおいて、
前記照明モジュールは、さらに、
前記光ビームに対して少なくとも部分的に透過性であり、かつ錐体状の前記光ビームの経路上に配置された構造化プレート(13)と、
前記構造化プレート(13)上に配置された、前記光ビームを構造化するための手段(15)と、
を含み、
前記構造化手段(15)は、前記反射器(11)から発せられた前記光ビームの放射照度の空間分布を偏向または減衰によって変更し、前記構造化プレート(13)の下流側における放射照度を、前記照明モジュールの特定の領域(E
1、E
2)にわたり前記基準値(E
0)で一定にし、かつ既存の機能に従い、前記特定の領域(E
1、E
2)における前記基準値(E
0)から0に連続的に低下させるように構成されている、ことを特徴とする、照明モジュール。
【請求項7】
前記放射照度は、前記特定の領域(E
1、E
2)における前記基準値(E
0)から0に線形に低下する、請求項6記載の照明モジュール。
【請求項8】
前記構造化プレート(13)によって支持された前記構造化手段(15)は、前記光源(9)から距離を置いてフレア状に広がる切頭放物面または錐台のマトリクスアレイを含み、前記照明モジュールの光軸(A)に対して平行である法線を備えた上流側の面(17)および下流側の面(19)を有する、請求項6または7記載の照明モジュール。
【請求項9】
前記構造化プレート(13)の前記構造化手段(15)は、可変の不透明度の塗料の1つ以上の層、バルク内の色相勾配、レンズを形成する湾曲した光屈折界面、1つ以上の回折格子、のうちの少なくとも1つを含む、請求項6または7記載の照明モジュール。
【請求項10】
前記反射器(11)は、切頭放物面反射器である、請求項6から9
のうちのいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項11】
車両客室観察モジュールのための
車両客室の照明モジュールを較正するための方法であって、
前記車両客室観察モジュールは、
カメラ(101)と、
それぞれが、前記カメラ(101)の視野の1つの区分を照明する、2つの照明モジュール(103a、103b)と、
を含み、
前記照明モジュール(103a、103b)それぞれが、前記カメラ(101)の前記視野の1つの特定の領域(E
1、E
2)を照明し、両方の前記照明モジュール(103a、103b)が、前記特定の領域(E
1、E
2)間に設けられている、前記視野の1つの共通の重畳フィールド(E
1∩2)を照明し、
前記照明モジュール(103a、103b)はそれぞれ、
2つの前記照明モジュール(103a、103b)の前記特定の領域において、該2つの照明モジュール(103a、103b)に共通する基準値(E
0)にある均一な放射照度、および
2つの前記照明モジュール(103a、103b)の前記特定の領域(E
1、E
2)における前記基準値(E
0)から、他方の前記照明モジュール(103a、103b)の前記特定の領域(E
1、E
2)における0まで連続的に低下する放射照度、を生成し、
前記重畳領域(E
1∩2)における2つの前記照明モジュール(103a、103b)の組み合わされた放射照度を一定にし、かつ前記基準値(E
0)に等しくする、方法において、
前記方法は、
第1の照明モジュール(103a)から放出された前記放射照度を、前記第1の照明モジュール(103a)の1つの特定の領域区分(E
1)において測定するステップと、
少なくとも1つの第2の照明モジュール(103b)から放出された前記放射照度を、前記第2の照明モジュール(103b)の特定の領域区分(E
2)において測定するステップと、
基準値よりも大きい放射照度差(δ)が、前記第1の照明モジュール(103a)の特定の領域(E
1)における前記第1の照明モジュール(103a)の放射照度と、前記第2の照明モジュール(103b)の特定の領域(E
2)における前記第2の照明モジュール(103b)の放射照度との間で観察されると、前記照明モジュールのうちの一方(103a、103b)の前記光源(9)の供給電力を低減または増大するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の機能を制御および調整するために使用されるような、特に車両客室用のコマンドモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドライバのジェスチャを認識するため、または自動車のドライバの覚醒の状態を監視するためのコマンドモジュールとの関係において、ドライバの特徴、同乗者の特徴、また場合によってはそれらの人が行うジェスチャを識別または定量化する制御ユニットに接続されたカメラ、特に広角カメラを使用することが公知である。
【0003】
カメラが十分に照明された画像を撮影できるようにするために、照明モジュールは、一般的に、カメラに関連付けられている。それらの照明モジュールは、光源、一般的には可視スペクトル外にある波長(赤外線)の光を放出する1つ以上のダイオードと、ダイオードから放出された光束をカメラの視野へと向ける、自由曲面を備えた(一般的には切頭放物面状の)反射器とを含む。
【0004】
広角カメラは、約120°~140°の最大開口角の視野を有しており、それに対して、照明モジュールは、約70°~80°の最大角度しか均一に照明できない。2つの照明モジュールを並置することで、この空間全体を照明することはできるが、しかしながら各照明モジュールによって照明される空間の境界部、特に視野の中心では、照明の均一性の問題が生じる。
【0005】
特に、例えばドライバの覚醒の状態を監視する場合には、放射照度レベルに応じて画像が区分されることによって、画像が解析される。この場合、種々の放射照度レベルが存在することで、解釈に際しアーチファクトが生じる可能性があり、それどころか複雑な補償が必要になる可能性もある。
【0006】
さらに、一般的に使用される各ダイオードは、多数の所定の公称放射照度の中で一致しない放射照度を示し、これによって、場合によっては、カメラの視野の左半分と右半分とで一致しない放射照度が生じる。この不一致は、前述の画像の解釈に際し、またもアーチファクトを生じさせる可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
前述の問題を少なくとも部分的に解決するために、本発明の1つの対象は、車両客室観察モジュールであり、この車両客室観察モジュールは、
〇 カメラと、
〇 それぞれが、カメラの視野の1つの区分を照明する、2つの照明モジュールと、
を含み、
照明モジュールそれぞれが、カメラの視野の1つの特定の領域を照明し、両方の照明モジュールが、特定の領域間に設けられている、前述の視野の1つの共通の重畳領域を照明し、
照明モジュールはそれぞれ、
・ 2つの照明モジュールの特定の領域において、それら2つの照明モジュールに共通する基準値にある均一な放射照度、および
・ 2つの照明モジュールの特定の領域における基準値から、他方の照明モジュールの特定の領域における0まで連続的に低下する放射照度、を生成し、
共通の重畳領域における2つの照明モジュールの組み合わされた放射照度を一定にし、かつ基準値に等しくする、ことを特徴とする。
【0008】
照明モジュールは、2つ以上の照明モジュールを含む車両客室観察モジュールとの関係において、カメラの視野全体において取得されるべき均一な放射照度を実現する。
【0009】
照明モジュールは、単独でまたは組み合わせで、以下の特徴のうちの1つ以上を有することができる。
【0010】
照明モジュールそれぞれの照度は、重畳領域にわたり基準値から0まで線形に低下する。
【0011】
カメラは、カメラによって撮影された画像において、カメラの視野においてユーザが行った1つ以上の特定のジェスチャを特定するように構成された制御ユニットに接続されている。
【0012】
カメラは、カメラによって撮影された画像において、カメラの視野において自動車のドライバの覚醒のレベルの1つ以上の指標を特定するように構成された制御ユニットに接続されている。
【0013】
ドライバの覚醒のレベルの指標は、ドライバの注視の向き、ドライバの目の開いた状態または閉じた状態、ドライバが瞬きをする頻度、ドライバが欠伸をする頻度、のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
本発明の別の対象は、下記に規定するような、自動車客室観察モジュールのための関連付けられた照明モジュールであり、この照明モジュールは、
〇 光束を放出する光源と、
〇 発光ダイオードから放出された光束を光ビームにして、カメラの視野に向ける反射器と、
を含み、
照明モジュールは、さらに、
〇 光ビームに対して少なくとも部分的に透過性であり、かつ錐体状の光ビームの経路上に配置された構造化プレートと、
〇 構造化プレート上に配置された、光ビームを構造化するための手段と、
を含み、
構造化手段は、反射器から発せられた光ビームの放射照度の空間分布を偏向または減衰によって変更し、構造化プレートの下流側における放射照度を、照明モジュールの特定の領域にわたり基準値で一定にし、かつ既存の機能に従い、特定の領域における基準値から0に連続的に低下させるように構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
この場合、放射照度は特に、特定の領域における基準値から0に線形に低下する。
【0016】
構造化プレートによって支持された構造化手段は、光源から距離を置いてフレア状に広がる切頭放物面または錐台の形のマトリクスアレイを含むことができ、照明モジュールの光軸に対して平行である法線を備えた上流側の面および下流側の面を有する。
【0017】
代替的に、構造化プレートの構造化手段は、可変の不透明度の塗料の1つ以上の層、バルク内の染色の勾配、レンズを形成する湾曲した光屈折界面、1つ以上の回折格子、のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0018】
反射器は、切頭放物面反射器であってもよい。
【0019】
最後に、本発明は、上述したような観察モジュールとの関係において自動車客室の照明モジュールを較正するための方法にも関し、この方法は、
・第1の照明モジュールから放出された放射照度を、その第1の照明モジュールの1つの特定の領域区分において測定するステップと、
・少なくとも1つの第2の照明モジュールから放出された放射照度を、その第2の照明モジュールの特定の領域区分において測定するステップと、
・基準値よりも大きい放射照度差が、第1の照明モジュールの特定の領域における第1の照明モジュールの放射照度と、第2の照明モジュールの特定の領域における第2の照明モジュールの放射照度との間で観察されると、照明モジュールのうちの一方の光源の供給電力を低減または増大するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0020】
この場合、カメラの視野全体にわたり均一である放射照度プロファイルを有する観察モジュールを得ることができる。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的で説明を目的とした例が記載されている以下の記述および添付の図面に目を通すことによって、一層明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】車両客室におけるコマンドモジュールを概略的に示す。
【
図2】上から見た客室および観察モジュールを概略的に示す。
【
図5a】反射器から出力された角度放射照度分布を表すグラフを示す。
【
図5b】照明モジュールから出力された角度放射照度分布を表すグラフを示す。
【
図5c】構造化プレートのための構造化手段の一例を示す。
【
図5d】構造化プレートのための構造化手段の一例を示す。
【
図6】先行の図の2つの照明モジュールを組み合わせることで達成される放射照度分布を示す。
【
図7】先行の図の2つの照明モジュールを組み合わせることで達成される放射照度分布を示す。
【
図8】2つの照明モジュールを含む観察モジュールに関連付けられた較正方法の主なステップを説明するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
すべての図面において、同一の参照符号は、同一の構成要素を参照するために使用されている。
【0024】
図面を参照して説明する実施形態は例である。説明は、1つ以上の実施形態を参照するが、これは必ずしも、各参照が同一の実施形態に関すること、または各特徴が1つの単一の実施形態にのみ適用されることを意味しているのではない。種々の実施形態の単一の特徴を組み合わせて、別の実施形態をもたらすこともできる。
【0025】
用語「第1」、「第2」などは、本明細書において、類似の機能を有する構成要素を区別するために与えられている。したがって、それらの用語は、特定の優先順位を含むことなく、単に構成要素を参照するために用いられている。特に、「第1」、「第2」および同等の用語で表されている対象は、本発明の構想から逸脱することなく、相互に入れ替えることができる。
【0026】
以下において使用されるような、「上流側」、「下流側」、「前」、「後」および同等の用語は、光源から車両の客室への光の伝播の方向を基準にして定義されている。
【0027】
車両客室1およびドライバUが、
図1に示されている。
【0028】
ドライバUは、ここでは車両の中央コンソール、つまり客室の前方においてドライバUと同乗者との間に設けられている垂直のまたは傾斜した面に配置されている観察モジュール100の視野内に位置している。代替的に、観察モジュール100は、車両の客室1の天井灯または中央のバックミラーに配置することもできる。例えば、観察モジュール100は、ジェスチャ認識コマンドモジュールとの関係において使用することができる。
【0029】
そのようなジェスチャ認識コマンドモジュールは、空調システム、オーディオシステム、電話システム、またはそれどころかナビゲーションシステムの機能のコマンドなどの、自動車のユニットの少なくとも1つの機能のコマンドを許可する。コマンドモジュールは、パワーウィンドウの位置決め、外部バックミラーの位置決め、またはそれどころか電動シートの移動、もしくは室内灯、セントラルロッキング、サンルーフ、ハザードランプ、アンビエントライト、またはハンドブレーキの制御のためのコマンドを送出するためにも使用することができる。
【0030】
ユーザUが、コマンドモジュール100の検出空間においてジェスチャを行うと、このコマンドモジュール100は、続いて、関連する機能モジュール(カーオーディオ、ナビゲーション支援、照明)のパラメータまたは動作を変更する。
【0031】
代替的に、観察モジュール100は、ドライバを監視するためのモジュールに統合することができ、このモジュールは、ドライバUの画像を形成し、ドライバUの覚醒の状態を診断するために、それらの画像を使用する。これを行うために、モジュールの画像処理ユニットは、例えば、ドライバUの注視の向き(窓の向こうを見ているか、または客室を見渡しているか)、目の開いた状態もしくは閉じた状態、欠伸をする頻度および/または瞬きをする頻度を確認して、疲労のレベルを評価することができる。
【0032】
観察モジュール100の視野は、
図2により詳細に示されている。
【0033】
図2は、上から見た車両の客室、ひいてはコマンドモジュール100を示す。
図2は、検出空間および/または観察空間の種々の区画と共に、上から見た車両の客室1をより詳細に示す。観察空間は、3つの部分E
1、E
2、E
1∩2に分割されている。
【0034】
2つの部分E
1、E
2は、単一の照明モジュール(
図3における103a、103b)によってそれぞれ照明される特定の空間に対応し、また部分E
1∩2は、両方の照明モジュール103a、103bのいずれによっても照明される重畳空間に対応する。
【0035】
検出空間の第1の部分E1は、ほぼ運転席3に合わせて設けられており、第2の部分E2は、助手席5に合わせて設けられている。重畳部分E1∩2は、中央コンソール7に合わせて、またシフトレバーとハンドブレーキに向けられて、前述の2つの部分の間に設けられている。
【0036】
観察モジュール100は、
図3により詳細に示されている。
【0037】
図3においては、観察モジュール100が、カメラ101、特に広角カメラと、2つの照明モジュール103a、103bとを含むことが見てとれる。観察空間の各特定の空間E
1、E
2は、それぞれ、照明モジュール103a、103bのうちの一方に関連付けられている。
【0038】
カメラ101は、垂直線でもって観察モジュール100についての対称面を規定している光軸Aを有する。照明モジュール103a、103bは、交差部分E1∩2も含む、照明された各空間部分E1、E2の中心に向けられており、したがってカメラ101の光軸Aに対して0ではない角度を成す、光軸A1、A2を有する。
【0039】
特に、約70°~80°の照明角度を有する照明モジュール103aによって、その照明モジュール103aの光軸A1と光学カメラの光軸Aとが成す角度は、約5°~30°になり、特に15°~20°になる。
【0040】
カメラ101は、カメラ101によって形成された画像を解析するように構成された制御ユニット105に接続されている。制御ユニット105は、特に、計算手段、例えば1つ以上のプロセッサと、車両の包括的な電子ネットワークを介して共有される、専用のメモリであるかまたは集積されたメモリである少なくとも1つの電子メモリとを含む。
【0041】
制御ユニット105は、特に、車両の装備の種々の要素の給電および動作を、トランジスタ、マイクロプロセッサおよび/または特定用途向け集積回路(ASIC)によって制御することができる。
【0042】
ジェスチャ認識制御モジュールとの関係において、制御ユニット105は画像を解析して、その画像内での、ユーザU(ドライバまたは同乗者)の身体の部位、例えば腕および手を認識し、また身体のそれらの部位によって行われたジェスチャを解析して、特定のコマンドに対応する特定のジェスチャ(垂直方向または水平方向のスワイプ、円、四角形、十字、等)を識別する。続いて制御ユニットは、制御モジュールによって制御される車両の機能モジュールの動作を適合させる。
【0043】
ドライバの注意を評価するためのモジュールとの関係において、制御ユニット105は、カメラ101から出力された画像を解析し、ドライバが自身の周囲に対して払っている注意のレベルの指標を特定する。それらのマーカーは、疲労のレベルを示す、目の開いた状態もしくは閉じた状態、欠伸をする頻度、および/または瞬きをする頻度を含むことができる。
【0044】
続いて制御ユニット105は、例えば、ドライバを覚醒させることを意図して大音量の送出をトリガすることができる、スクリーン上に安全メッセージを表示することができる、または車両のマルチメディアデバイスによる安全メッセージの読み出しをトリガすることができる、車両の室内灯を点滅させることができる、また特に、運転しているドライバが休憩を取ること、または同乗者が運転を変わることを推奨することができる。
【0045】
客室1内で観察される対象までの距離は、数10センチメートル(cm)のオーダ、典型的には25cm~1mのオーダにあるので、観察モジュール100の寸法(幅および高さ)は、数cmのオーダにあり、この観察モジュール100を点状のものとみなすことができ、この場合、カメラ101の視野に対応する錐体と、照明モジュール103a、103bによって照明されるフィールドに対応する錐体とは、共通の頂点を有するとみなすことができる。
【0046】
各照明モジュール103a、103bによって、特定の領域E1およびE2のうちの一方が照明され、また両方の照明モジュール103a、103bによって、それら2つの特定の領域E1とE2との間に設けられている重畳領域E1∩2が照明される。各錐体の共通の頂点への接近によって、それらの領域は角度領域となる。
【0047】
図4には、照明モジュール103が、断面図で概略的に示されている。
【0048】
図示された照明モジュール103は、
図3の照明モジュール103aおよび103bそれぞれに対して使用される。
【0049】
照明モジュール103は、プリント回路基板PCB上に配置された、ここでは発光ダイオード9の形態を取る光源を含む。発光ダイオード9は、反射器11、特に切頭放物面の形状から形成された自由形状反射器内に配置されており、この反射器は、発光ダイオード9によって形成された光束を、錐体形のビームとして、例えば矩形の底面を有する角錐形(ピラミッド形)のビームとして、照明モジュール103の光軸Aに沿って、カメラ101の視野に向ける。
【0050】
発光ダイオード9は、特に、赤外線領域の光を放出する赤外線ダイオードであり、これによって、ドライバUが感知できないように客室を照明することができる。したがって、夜間走行時に注意を逸らす可能性がある光の放出は回避される。
【0051】
照明モジュール103は、さらに、反射器11から発せられた光ビームの経路上に配置された構造化プレート13を含む。構造化プレート13は、発光ダイオード9から放出された光のスペクトル範囲に対して少なくとも部分的に透過性である材料から成るプレートである。構造化プレート13は、例えば、ポリカーボネートなどの硬質プラスチックから成形(モールディング)によって作製される。
【0052】
構造化プレート13は、反射器11から発せられた光束の空間分布、ここでは角度分布を変更する、光ビームを構造化するための手段15を含む。
【0053】
これらの構造化手段15は、特に、可変の不透明度の塗料の層、ダイオード9のスペクトル範囲にある光を散乱させる顔料で形成されたバルク内の色相勾配、レンズを形成する湾曲した光屈折界面、1つ以上の回折格子を含むことができる。
【0054】
構造化プレート13の構造化手段15は、反射器11から発せられた光束の光線の偏向または減衰によって、光強度の空間分布を変更する。
図4には、ダイオード9から発せられた、破線で表されている複数の光線の経路も示されている。
【0055】
図5aおよび
図5bは、光強度の角度分布の変化を示す。
【0056】
図5aおよび
図5bは、ダイオード9から一定の距離にあり、かつダイオード9に対向する領域dSの構成要素によって受け取られた放射照度E
clがワット毎平方メートル(W/m
2)の単位で表されたグラフである。前述の構成要素は、照明モジュール103の光軸Aを基準にして考慮されたラジアン(rad)の単位で表された観察角度αに設けられている。
【0057】
図5aは、構造化プレート13の上流側において、反射器11から出力された、放射照度E
clの分布を示す。視野区分E
1およびE
1∩2に対応する角度領域は、x軸の下に示されている。
【0058】
放射照度Eclは、従来の反射器11から出力された分布を示す、y軸について対称的なガウス型の曲線を表す。反射器11は、特に、照明装置103の要求に応じて曲線をシフトさせることができるようにするために非対称的に形成することができる。反射器11の一般的な形状、反射率、曲率、切頭部の全長および全高は、構造化プレート13の上流側における光ビームの事前の成形および拡大のために使用することができる。
【0059】
図5bは、構造化プレート13の下流側における放射照度E
clの分布を示す。
【0060】
放射照度Eclは、特に、視野区分E1、E1∩2外では0であり、これは使用される赤外線に対して不透明であるフレームを適用することによって達成することができる。放射照度Eclは、特定の視野区分E1にわたり基準値E0において一定であり、またこの実施例では、重畳視野区分E1∩2にわたり値E0から0まで線形に低下する。
【0061】
したがって、放射照度Eclを表す曲線は、左端(カメラ101の視野の側端)から出発して、0から値E0への段状の経過を経て、特定の角度領域E1の領域に入り、続けて前述の領域E1全体にわたり、基準値E0において水平であるプラトーを表す。重畳角度領域E1∩2に入ると、曲線は曲がって、一定の下降傾斜でもって、値0に向かって線形に下降し、特定の角度領域E1から最も遠い、重畳角度領域E1∩2の境界において値0に達する。
【0062】
代替的に、照明モジュール103の放射照度Eclを、集合関数f(α)に従い、その照明モジュール103の特定の領域E1において採用された基準値E0から、観察モジュール100に関連付けられた別の照明モジュール103の特定の領域E1における0まで連続的に低下させることができる。関連付けられた照明モジュールは、続いて、重畳領域E1∩2にわたり、E0-f(α)に従い増加する放射照度を生成する。
【0063】
制御された角度プロファイル、またはより一般的には空間プロファイルに従う放射照度E
clのこの変更は、例えば、
図5cおよび
図5dに示したような構造化プレート13および構造化手段15を使用して達成される。
【0064】
図5cは、構造化プレート13の1つの区分の概略的な斜視図である。構造化プレート13は、例えば、ポリカーボネートから成り、オプションとして、観察可能な光学領域(400~800nm)において着色されており、またダイオード9に使用されるスペクトル領域、ここでは赤外線領域では透過性である。
【0065】
構造化プレート13は、切頭放物面または錐台の形状で形成された、また特に格子配列または千鳥配列で配置された構造化手段15のマトリクスアレイを担持している。前述の切頭放物面または錐台は、ダイオード9から距離を置いてフレア状に広がっている。
【0066】
構造化手段15は、特に、構造化プレート13と一体的に形成することができ、また構造化プレート13と同じ材料から、例えばその構造化プレート13の射出成形中に形成することができる。
【0067】
切頭放物面形状のそのような構造化手段15は、
図5dにより詳細に示されている。
【0068】
図5dにおいては、構造化手段15が、光軸Aに対して平行な法線を備えた上流側の面17および下流側の面(または底部)19と、
図5dの実施形態においては回転放物面である側面21またはスカートとを有していることが見てとれる。
【0069】
上流側の面17の面積と下流側の面19の面積との比は、20%~40%に収まり、特に約30%である。切頭放物面の高さは、下流側の面19の直径または最大範囲の約半分に等しい。
【0070】
図5dには2本の光線が示されており、それらの光線は、
図5dの描写では、最初は光軸Aに対して平行であり、上から下に向かっている。
【0071】
光線のうちの一方は、0の入射角度で上流側の面17に入射して、この上流側の面17を通過する。したがって、この一方の光線は、屈折による偏向が生じることなく、上流側の面17を通過する。続いて、この一方の光線は、放物面を通り、やはり0の入射角度で下流側の面19に入射して、この下流側の面19を介して出射する。したがって、この一方の光線は、屈折による偏向が生じることなく、下流側の面19を通過する。したがって、第1の光線は、偏向が生じることなく、放物面を真っ直ぐに通過する。
【0072】
第2の光線は、0ではない入射角度で、放物面の側面21を介して、放物面に入射する。したがって、光線は、放物面内に進入した際の屈折によって偏向される。続いて、光線は下流側の面19に到達するが、放物面内に進入した際の偏向に起因して、0ではない入射角度で、この下流側の面19に入射する。したがって、光線は放物面から出射する際に再び偏向される。したがって、当該の第2の光線は、放物面を通過する際の経路から偏向される。
【0073】
放物面の寸法(面17の面積と面19の面積との比、全高、切頭部の高さ、底部19の直径、円形に代わる楕円形または多角形の母線が描く面)、それらの放物面を成す材料の屈折率、それらの放物面の側面21の放物線の曲率、および構造化プレート13にわたる放物面の分布(パターンおよび密度)を変更することによって、ダイオード9によって生成された光ビームを制御して、カメラ101の視野内で分布させることが可能である。この場合、特に、
図5bに記載されているような放射照度E
clのプロファイルを取得することが可能である。
【0074】
図6は、2つの照明モジュール103a、103bを組み合わせることによって観察される放射照度E
clを示し、この放射照度E
clは、共通の基準値E
0における最大光強度と、重畳する一定傾斜区分とを有し、それによって重畳フィールドE
1∩2が規定される。
【0075】
重畳フィールドにおける第1の照明モジュール103aの下降傾斜および重畳フィールドにおける第2の照明モジュール103bの上昇傾斜によって、カメラ101の視野全体にわたり、つまり3つの領域E1、E1∩2、E2によって覆われるフィールド全体にわたり、基準値E0での一定の総光強度を保証することが可能になる。
【0076】
図7は、E
0において最大強度を有する第1の照明モジュール103aと、E
0-δ(ただし、δは光強度における最大の差)においてより低い最大強度を有する第2の照明モジュール103bとを用いる、実生活により近い場合を示す。
【0077】
この場合、総放射照度Eclの曲線は、第1の特定の角度領域E1全体にわたり値E0にある第1のプラトーの形状と、重畳角度領域E1∩2におけるE0からE0-δまで下降する傾斜の形状と、第2の特定の角度領域E1において値E0-δにある第2のプラトーの形状とを取る。
【0078】
光強度差δが過度に大きい絶対値の差である場合には、例えば
図8に示すような較正方法200を適用することができる。
【0079】
図8は、方法200の主なステップを示すフローチャートである。
【0080】
第1のステップ201では、基準値を設定するために、照明モジュール103aから放出された光強度が、その照明モジュール103aの特定の角度領域区分E1にわたり測定される。
【0081】
第2のステップ203では、第2の照明モジュール103bから放出された放射照度Eclが、その第2の照明モジュール103bの特定の角度領域区分E2にわたり測定される。
【0082】
第3のステップ205では、2つの特定の領域E1、E2における各放射照度Eclが比較され、差δが確認される。その差が、カメラ101の特性および制御ユニットによって適用される画像処理方法の特性によって規定される最大許容値よりも大きい場合には、放射照度差δを許容可能な値の範囲にするために、後続のステップ207において、例えば、適切な抵抗値の抵抗器をダイオード9の給電回路に追加することによって、第2の照明モジュール103bの光源9の供給電力が低減または増大される。
【0083】
続いて、放射照度Eclの均一性を検証するオプションとしての付加的なステップ209が、特に、特定の角度領域E1、E2における各強度を測定するステップ201および203を繰り返すことによって適用される。
【0084】
照明モジュール103a、103bの較正200を行うことによって、構造化プレート13における潜在的な不一致(厚さ、透過性)を補償することができ、またそれと同時に、発光ダイオード9の出力の差から生じる不一致も補償することができる。
【0085】
したがって、本発明は、照明フィールドが部分的に重畳する2つの照明モジュール103a、103bを用いることによって、カメラ101の視野全体にわたり取得されるべきより均一な放射照度を実現する。
【0086】
また、観察モジュール100においては、放射照度Eclが線形に低下する照明モジュール103a、103bの構造は同一であり、一方が単純に他方に対して反対に設置されることに留意されたい。照明モジュール103a、103bおよびそれらのコンポーネントの製造および輸送が簡略化され、したがって予想されるコストは、それによって低下する。