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特許7146820宝飾品のセキュリティ分析用システム、方法およびコンピュータプログラム製品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】宝飾品のセキュリティ分析用システム、方法およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/254 20170101AFI20220927BHJP
   A44C 25/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
G06T7/254 A
A44C25/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019567404
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 IB2018050926
(87)【国際公開番号】W WO2018154415
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】519309762
【氏名又は名称】パリーク,アニケット バーラト
(73)【特許権者】
【識別番号】519309773
【氏名又は名称】パリーク,アルチャナ アニケット
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パリーク,アニケット バーラト
(72)【発明者】
【氏名】パリーク,アルチャナ アニケット
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0232432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
A44C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置を使って、宝飾品上に1つまたは複数の宝石を保持することを可能とする1つまたは複数の宝石保持部を標準的な寸法の物体と共に撮影した、前記宝飾品の静止画像、ビデオ画像、およびレーザーベースのトポグラフィモデルのうちの1つまたは複数を含む、前記宝飾品の第1画像セットを第1時間間隔で撮影することと、
前記撮像装置を使って、前記1つまたは複数の宝石保持部を標準的な寸法の物体と共に撮影した、前記宝飾品の静止画像、ビデオ画像、およびレーザーベースのトポグラフィモデルのうちの1つまたは複数を含む、前記宝飾品の第2画像セットを第2時間間隔で撮影することと、
ソフトウェアプログラムを実行することで設定されるコンピュータ装置により、前記第1画像セットおよび前記第2画像セットをそれぞれ処理して、前記1つまたは複数の宝石保持部のセッティングを含む、前記1つまたは複数の宝石保持部の物理的特性を抽出することと、
前記コンピュータ装置により、前記第1画像セットおよび前記第2画像セットに表されている前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングを少なくとも比較して、前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングにおける変化を示す変化量を特定することと、
前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングにおける前記変化量が所定の限界値以内であるか確認し、前記変化量のいずれかが前記限界値を超えている場合に、前記コンピュータ装置により、警告またはフラグを表示すること、
とを含む、宝飾品の検証方法。
【請求項2】
前記第1画像セットと前記第2画像セットを比較することが、前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングの前記変化に基づいて前記1つまたは複数の宝石の大きさまたは位置の変化を確認することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宝飾品の前記第1画像セットおよび前記第2画像セットを撮影することが、前記1つまたは複数の宝石のインクルージョン、ガードル、およびファセットのうちの1つまたは複数の画像、前記宝飾品の金属部および前記1つまたは複数の宝石の1つまたは複数の上の刻印の画像を撮影することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングを少なくとも比較することが、前記第1画像セットおよび前記第2画像セットからそれぞれ抽出された前記1つまたは複数の宝石保持部の前記物理的特性の間の差分を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1画像セットおよび前記第2画像セットの間で所与の画像セットを処理することが、
前記所与の画像セットから、ポイントツーポイント図および線図のうちの1つまたは複数である、前記宝飾品の図を生成すること、を含み、
前記宝石保持部および前記1つまたは複数の宝石を含む前記宝飾品の各物理的特性が前記生成された図から求められる、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングを少なくとも比較することが、
前記第1画像セットから生成された前記図を前記第2画像セットから生成された前記図へ重ね合わせることと、
前記重ねあわされた図に基づいて、ピクセルごとに比較する方法を使って前記セッティングにおける前記変化を示す前記変化量を計算すること、
とを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記宝飾品の所有者へセキュリティ用親鍵を提供することであって、前記宝飾品の前記図がデータベースに格納されていて前記親鍵に関連付けられている、提供することと、
前記宝飾品をある人から別の人へ譲渡するのに関連して、
前記第1画像セットと前記第2画像セットの前記比較結果に基づいて前記宝飾品を検証することと、
前記親鍵を新しい所有権を使って更新することと、
前記更新された親鍵を新しい所有者へ提供すること、
とをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記所与の画像セットを処理することが、前記宝飾品の前記1つまたは複数の宝石保持部および前記1つまたは複数の宝石をエッジ検出画像処理方法を使って分離すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記宝飾品の金属部および前記1つまたは複数の宝石の物理的識別データ、タイムスタンプ、前記第1画像セットおよび前記第2画像セットを撮影した場所のうちの1つまたは複数をデータベースに格納することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングの前記変化に基づいて前記宝飾品の金属部または前記1つまたは複数の宝石における変化を特定することと、
前記金属部または前記1つまたは複数の宝石における前記変化に基づいて前記宝飾品の査定額の変化を判定すること、
とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1画像セットおよび前記第2画像セットをデータベースに格納することであって、前記データベースが、ソフトウェアアプリケーションを実行することで設定されるコンピュータ装置を有する自動宝飾品鑑定システムに接続される、格納することと、
前記自動宝飾品鑑定システムにより、前記宝飾品の第1査定額を前記第1時間間隔で、前記宝飾品の第2査定額を前記第2時間間隔で、それぞれ前記第1画像セットおよび前記第2画像セットを使って見積もりを行うこと、
とをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
宝飾品を検証するためのシステムであって、
宝飾品上に1つまたは複数の宝石を保持することを可能とする1つまたは複数の宝石保持部を撮影した、前記宝飾品の静止画像、ビデオ画像、およびレーザーベースのトポグラフィモデルのうちの1つまたは複数を含む、前記宝飾品の第1画像セットおよび前記第2画像セットを、それぞれ第1時間間隔および第2時間間隔で標準的な寸法の物体と共に撮影するための撮像装置と、
前記第1画像セットおよび前記第2画像セットを格納するためのデータベースと、
前記第1画像セットおよび前記第2画像セットをそれぞれ処理して前記1つまたは複数の宝石保持部のセッティングを含む、前記1つまたは複数の宝石保持部の物理的特性を抽出し、また前記第1画像セットおよび前記第2画像セットに表されている前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングを少なくとも比較して前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングにおける変化を示す変化量を特定するための処理部と、
前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングにおける前記変化量が所定の限界値以内であるか確認し、前記変化量のいずれかが前記限界値を超えている場合に、警告またはフラグを表示する出力ディスプレイと、
含む、宝飾品の検証システム。
【請求項13】
前記データベースが、前記1つまたは複数の宝石のインクルージョン、ガードル、およびファセットの画像、金属部および前記1つまたは複数の宝石上の刻印の画像、前記金属部および前記1つまたは複数の宝石の物理的識別データ、前記第1画像セットおよび前記第2画像セットを撮影、記憶した日時を含む、前記第1画像セットおよび前記第2画像セットのタイムスタンプのうちの1つまたは複数をさらに格納する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
ソフトウェアアプリケーションを実行することで設定されるコンピュータ装置を有し、前記格納された画像および前記1つまたは複数の宝石保持部の前記セッティングにおける前記特定された変化のうち1つまたは複数を使って、前記宝飾品の査定額を見積もるように構成された自動宝飾品鑑定システムをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は宝飾品のセキュリティ面に関し、特に画像比較による宝飾品のセキュリティ分析に関する。
【背景技術】
【0002】
宝飾品類やダイヤモンドのような高額な品物は窃盗や詐欺に遭いやすい。こうした商品は安全対策により窃盗から守ることができるが、そうした商品の品質および価値は訓練を受けた専門家によってのみ判定可能であるため、詐欺の防止は複雑な作業である。貴金属やダイヤモンドの品質上の小さな差異であっても、その価値に大きな差を生じうる。例えば、多くの宝石は同じカット、色、形状、および大きさを有しているように見える。そのため、宝石が修理または査定のために宝石商へ預けられた場合に、顧客が知らないうちに同じ外観のより低い価値の宝石と交換されてしまう可能性がある。
【0003】
こうした高価な品物の純度および本物度合いを検出し、その真の価値を査定するために様々な手段が開発されてきた。従来からの熟練した宝石商の掌中での分析とは別に、作業をある程度自動化するためにソフトウェアアルゴリズムが開発されてきた。ソフトウェアは画像技術を使って異なる時間間隔で宝飾品を撮影し、インテリジェントなアルゴリズムにより写真を比較して変化を検出する。ソフトウェアは石の大きさ、テーブルファセット、角度、宝石内のインクルージョンなどを追跡することで宝飾品を分析する。また、裸眼では見えないレーザー刻印および識別マークも真贋の判定に使われる。さらに、真贋の判定のために宝飾品内部にRFIDタグも埋め込まれて隠されている。ソフトウェアアルゴリズムはこれらのパラメータを高価な品物の本物度合いおよび真正性を判定するのに使用する。
【0004】
米国特許出願第20140312017A1号には、品物の表面にレーザーマーキングを施すことにより貴石(カットされたダイヤモンドおよびカットされていないダイヤモンド)の真贋を判定するためのシステムおよび方法が記載されている。品物の表面には様々な波長のレーザー光が照射され、干渉像が記憶される。記憶されたデータは真贋確認用干渉像と比較されて、識別マークの真贋が判定される。
【0005】
国際特許出願第2015023230A1号には、宝石内のインクルージョンの画像を撮影することにより宝石を鑑別、検証するための方法およびシステムが記載されている。画像は証明書類上に表示され、光学装置を使ってこの画像を宝石と比較することで宝石が画像と一致するかを判定することができる。また、証明書類はx、y、z軸を用いたインクルージョンの場所、ならびに宝石の外観、形状、寸法、重量、測定値、色、屈折率、比重、および吸収スペクトルのような追加の物理的識別データも含むことがある。
【0006】
米国特許第9,373,011号には、無線自動識別(「RFID」)技術を使って貴金属および小さな宝飾品の識別および認証を行うためのシステムおよび方法が記載されている。RFIDタグは、金属または宝飾品内にある小さな空洞内のエポキシ樹脂の中の誘電性吸収媒質に埋め込むことができる。RFIDタグの情報は読取装置を介してコンピュータへ転送することができて、データベース内のあらかじめプログラムされた情報と照合することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
宝石を有する宝飾品のそれぞれは、一般にプロングとして知られる一連の「宝石保持部」を持ち、この宝石保持部が宝石を所定の場所に保持する。プロングは基本的に小さな金属製の棒で宝飾品の一部であり、折り曲げられて宝石を覆って所定の位置に保持する。プロングセッティングが多くの消費者に好まれる主な理由は、優れた安全性を提供しながらもダイヤモンドがより輝くように光が入射できるようにしているからである。それに加え、プロングは個人の選択に応じて、より高い位置(ダイヤモンドがより大きく見える)または低い位置(物に簡単に引っ掛かることがない)へと変更することも容易にできる。宝飾品の宝石保持部のセッティングは、プロングに加え、ベゼルやチャネルセットなどの様々な種類とすることができる。
【0008】
宝石の保持に使われるプロングセッティングは、修理または査定の最中に宝石商によって宝飾品または宝石に対して何らかの変更が行われたかを判断するのに重要な側面となる。現在の技術は、この目的でプロングセッティングを利用するのには合わない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、異なる時間間隔で撮影された宝石保持部のセッティングの画像を比較することで宝石を有する宝飾品を検証する、新らしい方法を記述する。金属部または宝石における変化は、宝石保持部のセッティングの変化に基づいて確認される。最終的に、宝飾品の査定額の変化は、金属部または宝石における変化に基づいて判定される。
【0010】
本発明の一態様では、宝飾品の検証方法を説明する。この方法は、宝飾品上に宝石を保持する1つまたは複数の宝石保持部を撮影した、宝飾品の第1画像セットを第1時間間隔で撮影することを含む。この方法はまた、宝石保持部を撮影した、宝飾品の第2画像セットを第2時間間隔で撮影することも含む。この方法はさらに、第1画像セットと第2画像セットを比較して宝石保持部のセッティングの変化を確認することを含む。
【0011】
本発明の別の態様では、宝飾品の査定額の変化を確認するための方法を説明する。この方法は、宝飾品上に宝石を保持する1つまたは複数の宝石保持部を撮影した、宝飾品の第1画像セットを第1時間間隔で撮影することを含む。この方法はまた、宝石保持部を撮影した、宝飾品の第2画像セットを第2時間間隔で撮影することも含む。撮影された画像はデータベースに格納される。この方法はさらに、第1画像セットと第2画像セットを比較して宝石保持部のセッティングの変化を確認すること、および宝石保持部のセッティングの変化に基づいて宝飾品の金属部または宝石の変化を確認することを含む。この方法はさらに、金属部または宝石における変化に基づいて宝飾品の査定額の変化を確認することを含む。
【0012】
本発明のもう一つの態様では、宝飾品の検証システムを説明する。このシステムは、宝飾品上に宝石を保持する1つまたは複数の宝石保持部を撮影した、宝飾品の第1画像セットおよび第2画像セットをそれぞれ第1時間間隔および第2時間間隔で撮影するための撮像装置を含む。このシステムはまた、第1画像セットおよび第2画像セットを格納するためのデータベースも含む。このシステムはさらに、第1画像セットと第2画像セットを比較して宝石保持部のセッティングの変化を確認するための処理部も含む。このシステムはまた、第1画像セットおよび第2画像セットならびに画像の比較結果を表示するための出力ディスプレイも含む。
【0013】
本発明の更なる態様では、複数のコードセクションを有する宝飾品検証用のコンピュータプログラムが記憶されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体を説明する。コードセクションはコンピュータにより実行可能で、宝飾品上に宝石を保持する1つまたは複数の宝石保持部の画像を含む、宝飾品の第1画像セットを第1時間間隔で受信するステップをコンピュータに行わせる。コードセクションははまた、宝石保持部の画像を含む、宝飾品の第2画像セットを第2時間間隔で受信するステップも実行する。コードセクションはさらに、第1画像セットと第2画像セットを比較して宝石保持部のセッティングの変化を確認するステップも実行する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の教示を具体化したシステムのブロック図を示す。
図2図2は例示の宝飾品検証方法における手順を示すフローチャートを示す。
図3図3は宝飾品のオンライン鑑定の手順を示すフローチャートを示す。
図4図4は宝石を有する宝飾品の画像を示す。
図5図5は米国宝石学会(Gemological Institute of America)の例示のダイヤモンド報告書を示す。
図6図6は宝飾品の線図を示す。
図7図7aは時間間隔T1における宝飾品の線図を示す。 図7bは時間間隔T1における宝飾品の線図を示す。 図7cは図7aと図7bが重ね合わされた画像を示す。
図8図8aは時間間隔T1における、プロングから宝石が取り外された宝飾品の線図を示す。 図8bは宝石をプロングの間にセットした後の、時間間隔T2における宝飾品の線図を示す。
図9図9aは時間間隔T1およびT2における、異なるプロング寸法を持つ宝飾品の線図を示す。 図9bは時間間隔T1およびT2における、異なるプロング寸法を持つ宝飾品の線図を示す。
図10図10はリング、宝石、および標準サイズのコインの画像を示す。
図11図11aは最初にセットされた宝石の付いた宝飾品の上面図を示す。 図11bは宝飾品内に同じ宝石が再度セットされた宝飾品の上面図を示す。
図12-1】図12aは宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。 図12bは宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。
図12-2】図12cは宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。 図12dは宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。
図12-3】図12eは宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。 図12fは宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。
図12-4】図12gは宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。 図12hは宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
開示される主題は様々な変更および代替形態が可能であるが、その詳細は図面において例として示され、詳細に説明される。ただし、本発明の態様を、説明される特定の実施形態に限る意図はないことを理解されたい。本発明の趣旨および範囲に含まれるすべての変更、均等物、および代替を網羅することが意図されている。
【0016】
以下の詳細な説明は、図を参照して行われる。例示の実施形態は本開示の主題を説明するために記述されており、請求項により規定される主題の範囲を制限するために記述されているわけではない。当業者であれば、記述される、および/または示される様々な要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせおよび様々な構成で配置されうることを理解するであろう。
【0017】
本明細書において、すべての数字または値は用語「およそ(about)」で修飾されることを想定している。端点による数値範囲の開示には、その範囲内に属しているすべての数字が含まれる(例えば、1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
【0018】
本明細書および添付の請求項で使用される場合、単数形の不定冠詞「a」、「an」および定冠詞「the」は、その内容が明確にそうでないと示していない限りは単数および複数の指示対象を含む、または対象にしていると考えられるべきである。言い換えれば、これらの冠詞は1つまたは複数の指示対象に適用される。本明細書および添付の請求項で使用される場合、用語「or」は、その内容が明確にそうでないと示していない限りは、概して「および/または(and/or)」を含む、または対象にしていると考えられるべきである。
【0019】
図1は本発明の教示を具体化したシステム100のブロック図を示す。システム100は宝飾品の画像を複数枚撮影するための撮像装置102を含む。撮像装置102は、宝石、金属部およびプロングを含む宝飾品を様々な角度から撮影する。外観、形状、大きさ、測定値(長さ、幅、および深さ)、ならびに色を含む宝飾品の物理的特性が画像を通じて捉えられる。撮影された画像は、宝飾品の静止画、ビデオ画像、またはレーザーベースのトポグラフィモデルの形態とすることができる。例示の撮像装置は、アナログもしくはデジタルの静止画カメラ、ビデオカメラ、光学カメラ、レーザーカメラ、レーザーもしくは3D画像スキャナー、または宝飾品の高精細画像を撮影可能な任意の他の装置を含む。また、撮像装置102はコンピュータ、ノートパソコン、または携帯電話などの通信装置に内蔵の高精細カメラとすることができる。
【0020】
例示の実施形態では、撮像装置は宝飾品の画像を複数枚撮影し、画像を縫い合わせて360°の視界を得ることができる。あるいは、360°の視界は、撮像装置102のパノラマ視界技術を使って捉えることができる。更に別の実施形態では、宝飾品のビデオ画像が撮影されて、静止画がビデオフレームから抽出される。図4は宝石402を有する宝飾品400の画像を示す。撮像装置102は金属部406、宝石402、およびプロング404の3D画像を撮影する。
【0021】
また、撮像装置102は宝飾品の宝石内のインクルージョンも撮影する。捕捉され得るインクルージョンの例として、1つまたは複数の固体、液体または気体の内包物、内部亀裂、割れ目、結晶成長領域、応力亀裂、気泡、劈開不良、羽状異物、円板状(halo)内包物、二相および三相内包物などが挙げられる。撮像装置102はさらに、宝飾品の金属部または宝石の表面の識別マークまたは刻印を撮影する。また、ニックス、引っかき傷、へこみ、配置、宝石のテーブルファセットおよび底部ファセット、照明条件下での色変化、ガードルファセット、ならびに厚さも画像を通じて捉えられる。
【0022】
撮像装置102を使って撮影された画像は記憶モジュール104に記憶される。記憶モジュール104は、日時を含むタイムスタンプおよび画像を撮影、記憶した場所も記憶する。記憶モジュール104は撮像装置102の内蔵記憶装置とすることができ、例えば、カメラ装置の内蔵メモリとすることができる。別の実施形態では、記憶モジュール104は、サーバコンピュータ、クライアントユーザのコンピュータ、パソコン(PC)、タブレットPC、ノート型コンピュータ、デスクトップコンピュータ、携帯電話、制御システム、およびネットワークルータ、スイッチ、またはブリッジのうちの1つまたは複数の記憶装置とすることができる。あるいは、記憶モジュール104は仮想クラウド環境のクラウドストレージとすることができる。
【0023】
記憶された画像は、画像から情報を抽出、処理して宝飾品のセキュリティを分析するために処理部106へ与えられる。ユーザ(本明細書では「ユーザ」は宝飾品類の所有者、製造会社、研究所の人間などを指し、以下の記述においてそのように見なされる)は入力システム108を介して処理部106へ宝飾品の追加情報を与えることができる。追加情報は、重量、体積、寸法、キャラット、カットのグレード、色の評価などの金属部および宝石の物理的特性と関連しうる。また、ユーザは宝飾品の値段、作業などに関する情報を入力することもできる。宝飾品の証明書または研究所の報告書を手動で入力、または入力システム108を介してアップロードすることもできる。図5は米国宝石学会の例示のダイヤモンド報告書を示す。報告書はダイヤモンドの物理的特性を画像とともに示している。入力システム108の例として、キーボード、タッチパネル、電子式または光学式マウス、ジェスチャー認識システム、および音声入力システムが挙げられる。入力システム108は、ソフトウェアのユーザインタフェース、ウェブサイト、またはモバイルアプリを介して追加情報を与える。
【0024】
処理部106は、異なる時間間隔で撮影された宝飾品の画像からソフトウェアプログラムを使って情報を抽出し、宝飾品の金属部または宝石の変化を検出するために情報を比較する。処理部106はデジタルカメラのような撮像装置102の内部CPUとすることができる。本発明の別の実施形態では、処理部106はサーバコンピュータ、クライアントユーザのコンピュータ、パソコン(PC)、タブレットPC、ノート型コンピュータ、デスクトップコンピュータ、携帯電話、制御システム、およびネットワークルータ、スイッチ、またはブリッジのうちの1つまたは複数の処理部とすることができる。処理部106からの処理済みの情報は記憶モジュール104または外部記憶装置112に記憶される。
【0025】
処理部106により処理された宝飾品の情報は、ユーザへ情報を表示する出力システム110へ送られる。出力システム110は、外観、形状、大きさ、体積、重量、測定値(長さ、幅および深さ)ならびに色を含む宝飾品の物理的特性に関する情報を表示することができる。宝石内のインクルージョン、金属部および宝石上の刻印、宝飾品およびプロングのニックス、引っかき傷、へこみ、配置および角度、石の品質、宝石のテーブルファセットおよび底部ファセット、ガードルファセット、厚さ、重量、ならびに/またはすべての既知の情報および宝飾品から推測される情報をユーザへ表示することができる。上記のすべての情報は、比較と参考のために異なる時間間隔で撮影された宝飾品の画像から抽出される。また、画像の撮影、記憶に関するタイムスタンプも出力システム100により表示される。本発明の好適な実施形態では、出力システム110は、宝石を保持する宝飾品のプロングセッティングの、修理のために発送する前と修理から受け取った後との差分も示す。処理部106は、宝飾品のプロングセッティングの変化に基づいて金属部および宝石における差分を計算する。また、金属部および宝石における差分は、実際の価値または差分の割合としてユーザへ示される。また、出力システム110は、処理部106により算出された差分が所定の限界値を超える場合に警告またはフラグを表示することもできる。出力システム110は、宝飾品の物理的特性および画像を含む証明書の形で情報を表示することもできる。出力システム110は、異なる時間間隔の画像から計算される宝飾品の査定額を示すこともできる。査定額の差分もユーザへ示される。
【0026】
リモートコンピュータ、ノートパソコン、携帯電話、ネットワークルータ、スイッチ、ブリッジ、またはクラウド環境内の仮想空間の記憶装置とすることができる外部記憶装置112は、オンライン商取引プラットフォーム114に接続される。オンライン商取引プラットフォーム114により、ユーザは宝飾品を表示し、他のウェブサイトの他の類似の宝飾品と比較することで査定を行い、宝飾品を販売することができる。オンライン商取引プラットフォーム114は宝飾品の物理的特性および売り値を表示する。また、ユーザはオンライン商取引プラットフォーム114から宝飾品を選択し、適切な支払い方法を用いて購入または販売することもできる。
【0027】
図2は宝飾品の検証手順を示すフローチャートを示す。プロセスはステップ202で始まり、宝石保持部(プロング)により保持される宝石を含む宝飾品がステップ204で取り上げられる。ステップ206で、撮像装置102は宝飾品の第1画像セットを時間間隔T1で撮影する。本発明の例示の実施形態では、時間間隔T1は宝飾品が修理のために宝石商へ送られる前の時間と考えられる。また、時間T1は、宝飾品の画像が撮影されて将来の参考のために記憶される任意の時間とすることもできる。また、画像は宝飾品の経時的な損傷を記録しておくためにユーザが一定の間隔で撮影することもできる。第1画像セットは宝飾品の金属部、宝石、およびプロングの画像を含む。宝石が宝飾品からなくなっている、または落下している場合、中身のないプロングの画像も撮影される。ユーザが宝飾品への取り付けのために宝石を個別に宝石商へ提供する場合、宝石商から返還後の宝飾品と比較するために、宝石の画像も撮影される。画像は、容易に閲覧、比較ができるように拡大可能とするため、高精細度で撮影される。撮影された画像は記憶モジュール104に記憶される。
【0028】
ステップ208で、第1画像セットは宝飾品の全体像を得るために縫い合わされる。画像は撮像装置102で縫い合わせることができる。あるいは、画像は処理部106で縫い合わせることができる。縫い合わされた画像も記憶モジュール104に記憶される。処理部106上で動作するソフトウェアアルゴリズムが第1画像セットから情報を抽出し、ステップ210で、エッジ検出方法を使って宝飾品の金属部、宝石、プロングを分離する。アルゴリズムはステップ212でプロングおよびファセット構造を含む宝飾品一式のポイントツーポイント図または線図を作成し、様々な部品を分離する。エッジ検出方法は当技術分野で周知であり、主題を簡潔にするため、ここではその詳細は述べない。ただし、宝飾品の様々な部品を分離するのに任意の他の技術を使うことができるということを当業者は理解されたい。アルゴリズムはステップ214で第1画像セットから以下の情報のうち1つまたは複数を抽出する。
・金属部の寸法、体積、角度、色および重量
・金属の品質/金純度
・金属部または宝石のニックス、引っかき傷、へこみ、亀裂
・宝石内のインクルージョン
・金属部または宝石上の識別マークまたは刻印
・宝石のテーブルファセット構造とガードル構造
・宝石の角度と高さ
・パビリオンの深さと角度
・クラウンの高さと角度
・宝石の重量と色
・宝石の表面積の被覆率、すなわち、短すぎないか(エッジに近い)、高すぎないか(テーブルに向かっている)、または的確な距離か
・プロング間の距離
・プロングがお互いに対して、また宝石に対してどう配置されているか
・プロングの高さと厚さ
・ファセット構造とプロングの角度
・プロングの曲面部の角度および他のプロングに対する(他のプロングに面する)角度
・宝石がプロングに対して、また他の宝石に対して相対的にどれだけ高くセットされているか
・落下した、または交換の必要がある宝石の大きさと品質
・プロングとの関係における宝石の配置
・宝石が互いに重なっていないか、または近すぎないか?
・プロングが宝石に接触しているか、または固定されていないか
・プロングの隣、周囲および他の領域にあるプロングの大きさと形状を確認。同一のものか、または似通った大きさで類似の種類の宝石用か?
・同じ種類のプロングか?いくつの種類があるか?それぞれの種類がいくつあるか?
上記の情報は例示であり、本発明の範囲を制限するものではない。アルゴリズムが第1画像セットから宝飾品の検証に必要な任意の他の情報を抽出可能であることは明確に理解されるべきである。
【0029】
宝飾品400の正面像が図4に示されている。アルゴリズムは宝飾品400の画像から様々な部品の寸法を求める。例示の寸法には、宝石のガードルとテーブルファセットおよび配置(408)、折り曲げられている場合のプロングの角度、プロングの先端および面の色認識および/または輪郭、ならびにプロングの高さ(410)、側面図から見たプロングの厚さおよび曲げの角度(412)、体積および変化確認用の2点間のマーキング(414)、ならびに、プロングを用いているリングの外表面認識、ファセット配置およびマーカーとしてのインクルージョンなど(416)を含む。
【0030】
図6は処理部106により第1画像セットから作成された宝飾品600の線図を示す。線図から求められる例示の寸法の一部として、宝石のガードル直径(602)、テーブル直径(604)、パビリオン深さ(606)、クラウン高さ(608)、パビリオン角度(610)、およびクラウン角度(612)、ならびにプロングの角度(614)およびプロングの幅(616)が挙げられる。
【0031】
ステップ216で、画像、図および抽出された情報が記憶モジュール104に記憶される。ステップ218で、第2画像セットが撮像装置102により時間間隔T2で撮影される。本発明の好適な実施形態では、時間間隔T2は宝飾品が修理後に宝石商から戻ってきた時間である。また、時間T2は、宝飾品の画像が撮影されて、例えば宝飾品の損傷を確認するために参考のため記憶される任意の時間とすることもできる。ステップ220で、金属部、宝石、およびプロングを分離して画像から情報を抽出するために、第1画像セットのためのステップと同様のステップが第2画像セットのために続く。また、第2画像セット、図、および抽出された情報も記憶モジュール104に記憶される。
【0032】
本発明の別の実施形態では、金属部および宝石の損傷を確認するために、宝飾品の別の画像セットを一定の間隔で撮影することができる。この画像セットは宝飾品のDNAマップとして機能して、そのうち発生する変化を特定することができる。画像データは親鍵と共に宝飾品の次の所有者/取扱業者へと渡される。宝飾品の更新、または最初の写真と現物引き渡しの受領の間の宝飾品の変化の確認(再確認)は、宝飾品の受け取りの前に、新しい写真を使ってアプリケーションを実行し、真贋を検証することで行うことができる。古い写真と新しい写真が一致して受け取りが確定したら、親鍵を新しい所有権を使って更新することができる。これらの画像は、保険会社、警察、質屋、見込み購入者などへ提供することができる。また、保険会社などは、製品構成要素の真贋、一連の所有権、および正確な内訳を検証できるように、宝飾品のユーザから親鍵を得ることができる。プロングおよび宝石を照合する確認により、買い手は金属部および宝石をずっと厳密でより正確に支払いまたは評価を行うことができる。また、これにより、紛失した、または盗まれた宝飾品が発見された場合に警察や保険会社がデータベースを検索できる。さらに、これにより、質屋や貸金業者は、宝飾品を受け取ったり質入れしたりした際にリスクを小さくできるように、所有権に対するよりよい理解が得られる。製造会社が同じ装飾品を複数個作った場合、製造会社はすべての個体を正確に追跡できるようになる。
【0033】
ステップ222で、第1画像セットおよび第2画像セットならびに画像から作成された線図が時間間隔T1とT2の間の画像の変化を確認するために重ね合わせられる。図7a、7bは、それぞれ第1画像セットおよび第2画像セットから作成された宝飾品の線図を示す。図7cは、ステップ224で宝飾品のプロングセッティングの変化を確認するために重ね合わされた図7a、7bの画像を示す。例えば、プロング間の距離、プロングの高さおよび厚さ、宝石に対するプロングの位置、プロングの曲面部の角度および他のプロングに対する角度、プロング間の高さ、ならびに台座寸法比などの変化である。上記のパラメータは例示であり、アルゴリズムはプロングセッティングの変化を確認するのに必要な他の様々なパラメータを考慮することができることは明確に理解されるべきである。アルゴリズムは重ね合わされた画像からピクセルごとにこうした変化を計算し、すべての変化を出力システム110上に表示する。アルゴリズムは、ステップ226で変化が所定の限界値以内であるかを確認し、変化のいずれかが限界値を超えている場合に、ステップ228で警告またはフラグを生成する。プロングにおける変化に基づいて、アルゴリズムはステップ230で宝飾品の金属部および宝石の変化を計算する。例えば、宝石の寸法(クラウン高さ、パビリオン深さ、テーブル直径、パビリオン角度、クラウン角度など)、金属部の大きさおよび体積などの変化である。これによりユーザは、修理中に宝飾品にどんな変更が行われ、そうした変更が許容限界以内であるかどうかを知ることができる。例示の実施形態では、宝飾品において宝石を交換する必要がある場合、ユーザは交換された宝石が以前の宝石の価値および大きさと一致するかどうかを出力情報から確認することができる。大きさがアルゴリズム的な値を超えて変化している場合、宝石を交換した宝石商へ質問することができる。アルゴリズムが宝飾品の自動鑑定の機能を含む場合、ステップ232においてアルゴリズムは時間間隔T2で宝飾品の査定額を見積もり、査定額を出力システム110上でユーザへ表示する。これにより、ユーザは時間T2での宝飾品の査定額を時間T1での既知の査定額と比べることができる。プロセスはステップ234で終了する。
【0034】
図8aは時間間隔T1における、プロングから宝石が取り外された宝飾品の線図を示す。処理部106上で動作するソフトウェアアルゴリズムはプロング間の距離802、プロングの幅804、プロングの曲面部の角度806を計算する。また、アルゴリズムはプロングの間に最もよく合わせることができる宝石の大きさおよび重量を見積もることもできる。算出された値は記憶モジュール104に記憶される。例示の実施形態では、宝飾品の画像、線図800、および算出された値は、宝石商が必要な大きさおよび重量の宝石を持っているかどうかを知るために宝石商へ送られる。必要な宝石が在庫にある場合、宝石商は参考のために宝石の画像をユーザへ送る。そして、宝飾品はプロングの間に宝石をセッティングするために宝石商へ送られる。宝飾品は宝石が取り付けられて宝石商から受け取られ、その画像が再度撮影される。図8bは、宝石をプロングの間にセットした後の、時間間隔T2における宝飾品の線図を示す。ソフトウェアアルゴリズムは再度プロング間の距離812、プロングの幅814、プロングの曲面部の角度816を計算する。算出された値は記憶モジュール104に記憶される。アルゴリズムは記憶された対応する値の間の差分を計算して変化を確認し、出力システム110上に表示する。差分が所定の値を(宝石をセッティング中の損傷を考慮して)超える場合、警告またはフラグが生成される。そのようなシナリオでは、ユーザは取り付けられた宝石と金属部の目減りを確認するために宝石商に質問することができる。
【0035】
図9a、9bは、それぞれ時間間隔T1およびT2における宝飾品900の線図を示す。プロングの寸法904は、宝飾品が修理後に宝石商から受け取られた際に時間間隔T2で変更されている。ソフトウェアアルゴリズムはプロングの寸法902と904の間の差分を計算し、それに応じて警告を生成する。
【0036】
別の実施形態では、ユーザは宝石を宝飾品に取り付けている。ユーザは、宝飾品および宝石が標準サイズの物体(例えばコイン)と共にある画像をクリックする。これにより、ユーザは宝飾品および宝石の実寸法を、画像のズーム寸法に関わらず、標準サイズのコインと比較することで知ることができる。図10は、リング1002、宝石1004、および標準サイズのコイン1006の画像を示す。リング1002および宝石1004の実寸法は、コイン1006と比較することで容易に知ることができる。また、処理部106上で動作するソフトウェアアルゴリズムは、宝石1004内のインクルージョンならびにリング1002および宝石1004上の識別マーク(もしあれば)の情報を取り出す。アルゴリズムは情報を比較し、時間間隔T1とT2の間のリング1002および宝石1004の変化を確認する。
【0037】
更なる実施形態では、本発明は電子商取引プラットフォームを介した宝飾品の購入におけるセキュリティを提供する。電子商取引プラットフォームは、宝石、金属部、およびプロングを含む宝飾品の360°画像を買い手に提供できる。買い手は記憶モジュール104に画像を記憶させて、処理部106上で動作するソフトウェアアルゴリズムを使ってその画像を処理することができる。アルゴリズムは画像からすべての情報を抽出して記憶モジュール104に記憶させることができる。買い手が宝飾品を実際に受け取った後に、画像が再度撮影されて情報がアルゴリズムにより抽出される。抽出された情報は、同一の宝飾品が受け取られたかを検証するために、記憶された情報と比較される。これは電子商取引プラットフォームの会社による詐欺、または宝飾品の運送時の不正を発見するのに役立つ。
【0038】
図11aは、最初にセットされた宝石の付いた宝飾品の上面図を示す。図11bは、宝飾品内に同じ宝石が再度セットされた宝飾品の上面図を示す。図11a、11bは、宝石およびプロングの様々な寸法を示している。また、プロングの先端は、図11a、11bで示されるように、ダイヤモンドの再セットの前後で変更されている。図は例示目的であり、縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。
ダイヤモンド寸法(ダイヤモンド研究所の報告書から得たとおり): 6.36-6.39×4.13mm
ダイヤモンド寸法比 = 6.36/6.39 = 0.995305

宝石の対角線を通過する線の比率:
E’/E = 12.70/10.00 = 1.27
F’/F = 12.80/10.10 = 1.267

算出された値とダイヤモンド寸法の間の差分の百分率を計算し、12.80×0.995305 = 12.734
百分率誤差(%)= (12.80-12.734)/12.80×100 = 0.549 < 1%

したがって、プロングセッティングにおける偏差は、図11a、11bの対応する値の差分が1%より小さい場合は許容できる。
図11aのプロング間の距離を検討すると、

1. A: 5.55×(1.27,1.267) = Average(7.0485,7.03185)±1% = 6.969
2. B: 6.50×(1.27,1.267) = Average(8.255,8.2355)±1% = 8.327
3. C: 6.00×(1.27,1.267) = Average(7.62,7.602)±1% = 7.687
4. D: 6.50×(1.27,1.267) = Average(8.255,8.2355)±1% = 8.327

上記の式1、2、3、4から算出された値を図11bのプロング間の距離と比較して、

1. A’: (6.80-6.969)/6.80×100 = 2.49%(1%を超える許容できない値)
2. B’: (8.30-8.327)/8.30×100 = 0.333%(1%を下回る許容できる値)
3. C: (7.20-7.687)/7.20×100 = 6.765%(1%を超える許容できない値)
4. D’: (8.40-8.327)/8.40×100 = -0.860%(1%を下回る許容できる値)
【0039】
概して、宝飾品から宝石を取り除くためには2つのプロングを開く必要がある。再セット後のプロング間の距離における変化の割合で、修理中にどのプロングが開かれたかを判断できる。算出された値で、上記の式で1%を超える偏差があるものに対して、処理部106上で動作するソフトウェアアルゴリズムは出力システム110上に表示される警告またはフラグを生成する。
【0040】
図3は、宝飾品のオンライン鑑定の手順を示すフローチャートを示す。プロセスはステップ302で始まり、宝飾品がステップ304で取り上げられる。ステップ306で宝飾品の画像のセットが撮像装置を使って撮影される。画像は、標準サイズのコインのような標準的な寸法の物体と共に撮影される。こうすることで、宝飾品の正確な寸法および撮影された写真の角度を、画像のズーム表示に関係なく計算することができる。画像のセットは宝飾品の全体像を捉えている。ステップ308で、撮影された画像は自動宝飾品鑑定システムにアップロードされる。自動宝飾品鑑定システムは、サーバコンピュータ、クライアントユーザのコンピュータ、携帯電話、制御システム、およびネットワークルータ、スイッチ、またはブリッジ上で動作するソフトウェアアプリケーションとすることができる。あるいは、ソフトウェアアプリケーションはクラウド環境の仮想コンピューティングシステム上で動作することができる。ステップ310で、ユーザは自動宝飾品鑑定システムに手動で入力することができる。例えば、ユーザは重量、体積、寸法、キャラット、カットのグレード、色の評価などのような、金属部および宝石の物理的特性を入力することができる。また、ユーザはステップ312で、米国宝石学会(Gemological Institute of America)、インターナショナル・ジェモロジカル・インスティテュート(International Gemological Institute)、ヨーロピアン・ジェモロジカル・ラボラトリ(European Gemological Laboratory)などのような宝石鑑定機関から入手した、宝石鑑定実験報告書をアップロードすることもできる。ステップ314で、ソフトウェアアプリケーションは宝飾品の金属部および宝石を自動的に検出する。ソフトウェアアプリケーションは、例えばエッジ検出技術、または任意の他の方法を使って、宝飾品のポイントツーポイント図または線図を作成することができる。ステップ316で、ソフトウェアアプリケーションは大きさ、重量、キャラット、色の等級、クラリティ、カットのプロポーション、研磨状態(ポリッシュ)などのような情報を画像からさらに抽出する。自動宝飾品鑑定システムは、Zeales、Kitcoなどのような様々なオンライン宝石データベースまたはウェブサイトにアクセスして、色の等級、プロングの様式、金属の種類、デザイン様式などのようなパラメータが類似の宝飾品や宝石を見つけることができる。こうした類似の宝飾品のデータや査定額がステップ318で受け取られ、ユーザの宝飾品と比較される。そして、ソフトウェアアプリケーションはステップ320で、すべての抽出された情報に基づいて宝飾品の査定額を見積もる。ステップ322で、宝石または宝飾品の画像および査定額が宝飾品を表示、販売するためにオンライン商取引プラットフォームへ送られる。プロセスはステップ324で終了する。
【0041】
図12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12hは、宝飾品の購入および販売のためのオンライン商取引プラットフォームの例示のモバイルアプリを示す。宝飾品の買い手または売り手は、モバイルアプリ内で自身のプロフィールを作成することができて、図12aに示されるように認証情報を使ってログインすることができる。プラットフォームは、図12bに示されるように、様々な売り手から入手可能な宝石および宝飾品を購入するための「市場(マーケットプレイス)」、自分の宝石および宝飾品を販売するための「あなたの商品を販売」、宝石および宝飾品の画像や研究所証明書をアップロードするための「スキャン」などのような様々な機能を、買い手または売り手に提供する。図12cは、買い手または売り手が、様々な売り手によりプラットフォームへ出品されたダイヤモンドや宝飾品の詳細および値付けを閲覧することができるオンライン商取引プラットフォームのマーケットプレイスを示す。図12dは、クリックして画像をアップロードすることでダイヤモンドや宝飾品を販売できる機能を示す。また、売り手は米国宝石学会のような宝石鑑定機関により提供された証明書や鑑定報告書をスキャン、アップロードすることができる。また、宝飾品の売り値は売り手が入力できる。図12eは、製品を販売するためにプラットフォームへ出品するための製品詳細の入力用のユーザインタフェースを示す。図12fは、製品の製造会社が証明書や鑑定報告書をスキャンおよびアップロードするための製造会社用のコーナーを示す。図12gは、オンライン商取引プラットフォームから製品を購入する機能を示す。入手可能な製品を選択すると、買い手は製品のすべての詳細を見ることができて、製品を購入することができる。また、買い手または売り手は宝飾品または宝石の製品コードをスキャンまたは入力して、図12hに示されるようにプラットフォーム上でオンラインで入手可能な類似の製品の値段比較やユーザレビューといった製品情報を見つけることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】