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特許7146830低圧配電系統の電圧管理システム及び電圧管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】低圧配電系統の電圧管理システム及び電圧管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
H02J3/18 135
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020027530
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021132498
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 泰治
(72)【発明者】
【氏名】横井 瑛
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 達矢
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109103896(CN,A)
【文献】国際公開第2015/022724(WO,A1)
【文献】特開2018-074795(JP,A)
【文献】特開2016-036252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持するための電圧管理システムであって、
配電系統に接続されているとともに、前記配電系統の電圧が所定範囲外となったときに前記配電系統に無効電力を供給し、前記配電系統の電圧を所定範囲内に保持する電圧調整器と、
前記配電系統に有効電力を供給する分散電源に配置されており、前記配電系統に無効電力を供給することが可能なスマートインバータと、
前記スマートインバータと通信可能であるとともに、前記電圧調整器が前記配電系統に無効電力を供給して前記低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持した情報が入力され、その情報に基づいて前記スマートインバータに対して前記配電系統に無効電力を供給させる制御装置と、
を備えており、
前記電圧調整器が所定範囲外となった前記配電系統の電圧を所定範囲内に保持した後、前記スマートインバータによる前記配電系統への無効電力の供給と、前記電圧調整器から前記配電系統への出力の設定値までの低下と、が並行して実行される電圧管理システム。
【請求項2】
前記制御装置が、前記電圧調整器と別体に設けられており、前記電圧調整器と通信可能である請求項1に記載の電圧管理システム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記電圧調整器に取り付けられている請求項1に記載の電圧管理システム。
【請求項4】
配電系統の電圧が所定範囲外となったときに、前記配電系統に接続されている電圧調整器から前記配電系統に無効電力を供給し、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持する第1工程と、
前記第1工程に次いで、前記電圧調整器が前記配電系統に無効電力を供給して前記低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持した情報を制御装置で取得し、前記制御装置からスマートインバータに前記配電系統に対して無効電力を供給させる信号を送信する第2工程と、
前記第2工程に次いで、前記スマートインバータが前記制御装置から受信した信号に基づいて前記配電系統に無効電力を供給するとともに、前記電圧調整器から前記配電系統への出力が低下する第3工程と、
前記第3工程に次いで、前記電圧調整器の出力が設定値まで低下したときに、前記スマートインバータから前記配電系統に供給する無効電力の出力を保持する第4工程と、
を備える前記低圧配電系統の電圧管理方法。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2工程において、前記配電系統に供給する無効電力の出力保持値に関する情報を前記スマートインバータに送信する請求項4に記載の電圧管理方法。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第4工程において、前記電圧調整器の出力が所定値まで低下した情報を取得し、前記スマートインバータに前記配電系統に供給する無効電力の出力を保持させる信号を送信する請求項4に記載の電圧管理方法。
【請求項7】
前記電圧調整器及び前記スマートインバータは、前記低圧配電系統に無効電力を供給する請求項4から6のいずれか一項に記載の電圧管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、低圧配電系統の電圧管理システム及び低圧配電系統の電圧管理方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、配電系統に電圧変動が生じた際、配電系統に無効電力を供給し、配電系統の電圧変動を抑制する(基準電圧に復帰させる)技術が開示されている。特許文献1では、SVC(Static Var Compensator)、STATCOM(Static Synchronous Compensator)といった電圧調整器(無効電力補償装置)を用いて配電系統に無効電力を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-019516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、太陽光発電システム等の分散電源が急速に普及している。配電系統に接続される分散電源の数が増加すると、配電系統において短周期の逆潮流が頻繁に発生し、電圧調整器の調整幅を超えることがある。その結果、低圧配電系統(変圧器より下流の配電系統)の電圧を管理値(基準電圧)に維持できなくなることが起こり得る。一方、分散電源の急速な普及に対策するため、各分散電源にスマートインバータを取り付け、スマートインバータから配電系統(高圧配電系統または低圧配電系統)に無効電力を供給することが検討されている。しかしながら、スマートインバータから配電系統に無効電力を供給する際は、配電系統の電圧が急激に変化することを防止するため、無効電力の出力をゆっくりと一定速度で上昇(ソフトランプ応答)させる規定を導入することが検討されている。例えば米国では、スマートインバータから配電系統に無効電力を供給する際は、ソフトランプ応答させることが規格化されている(UL規格1741SA11)。しかしながら、ソフトランプ応答では、配電系統の急激な電圧変化に対応することができない。そのため、新たな電圧管理システム(電圧管理方法)を構築することが必要とされている。本明細書は、低圧配電系統の新たな電圧管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する電圧管理システムは、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持するために用いられる。この電圧管理システムは、電圧調整器と、スマートインバータと、制御装置を備えていてよい。電圧調整器は、配電系統に接続されているとともに、配電系統の電圧が所定範囲外となったときに配電系統に無効電力を供給し、配電系統の電圧を所定範囲内に保持してよい。スマートインバータは、配電系統に有効電力を供給する分散電源に配置されており、配電系統に無効電力を供給することが可能であってよい。制御装置は、スマートインバータと通信可能であるとともに、電圧調整器が配電系統に無効電力を供給して低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持した情報が入力され、その情報に基づいてスマートインバータに対して配電系統に無効電力を供給させてよい。
【0006】
本明細書で開示する低圧配電系統の電圧管理方法は、4つの工程(第1~第4工程)を備えていてよい。第1工程では、配電系統の電圧が所定範囲外となったときに、配電系統に接続されている電圧調整器から配電系統に無効電力を供給し、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持してよい。第2工程では、電圧調整器が配電系統に無効電力を供給して低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持した情報を制御装置で取得し、制御装置からスマートインバータに配電系統に対して無効電力を供給させる信号を送信してよい。第3工程では、スマートインバータが、制御装置から受信した信号に基づいて配電系統に無効電力を供給してよい。第4工程では、電圧調整器の出力が設定値まで低下したときに、スマートインバータから配電系統に供給する無効電力の出力を保持してよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電圧管理システムの概略図を示す。
図2】電圧調整器、スマートインバータ及び制御装置の関係を示す。
図3】第1電力管理方法のフローチャートを示す。
図4】配電系統に対する電圧調整器及びスマートインバータの出力を示す。
図5】第1電力管理方法のフローチャートを示す。
図6】電圧調整器、スマートインバータ及び制御装置の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示する電圧管理システムは、配電系統への負荷接続、分散電源による配電系統への有効電力の供給等により低圧配電系統の電圧が所定範囲外になったときに、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に回復(復帰)させ、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に維持するために用いられる。なお、分散電源の一例として、太陽光発電装置が挙げられる。電圧管理システムは、電圧調整器とスマートインバータと制御装置を備えていてよい。電圧調整器は、配電系統の電圧変動に応じて配電系統に無効電力を供給することが可能な機器であってよい。電圧調整器として、例えば、SVC、STATCOM等が挙げられる。電圧調整器は、配電系統の電圧が所定範囲外になったときに、能動的に(制御装置の指令を受けずに)配電系統に無効電力を供給してよい。電圧調整器から配電系統に無効電力を供給することにより、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に回復することができる(第1工程)。電圧調整器は、変圧器より上流の高圧配電系統に接続されていてもよいし、変圧器より下流の低圧配電系統に接続されていてもよい。すなわち、電圧調整器は、高圧配電系統に無効電力を供給してもよいし、低圧配電系統に無効電力を供給してもよい。
【0009】
電圧調整器は、配電系統に無効電力を供給した情報(信号)を制御装置に送信してよい(第2工程)。電圧調整器から制御装置に送信する情報は、配電系統に供給した無効電力量(配電系統に対する出力)、配電系統に無効電力量を供給した後の無効電力の残量(さらに出力可能な無効電力量)等の情報を含んでいてよい。また、電圧調整器は、配電系統に無効電力を供給した直後に1度だけ制御装置に情報を送信してもよい。あるいは、電圧調整器は、配電系統に無効電力を供給した情報を制御装置に送信した後、さらに、無効電力の残量の変動を制御装置に送信し続けてもよい。また、電圧調整器は、無効電力の残量が設定値にまで回復した情報を制御装置に送信してもよい。なお、「設定値」は、再度配電系統の電圧が所定範囲外になったときに、配電系統の電圧を所定範囲内に回復し得る容量が確保される値に設定されていてよい。設定値は、電圧調整器の能力に応じて決められた固定値であってもよいし、配電系統の過去(例えば1週間)の電圧変動に応じて決定する変動値であってもよい。
【0010】
スマートインバータは、配電系統に有効電力を供給することが可能な分散電源に設けられていてよい。配電系統に複数の分散電源が接続されている場合、スマートインバータは、複数の分散電源の各々に設けられていてよいし、複数の分散電源のうちの一部の分散電源に設けられていてもよい。スマートインバータは、受動的に(制御装置の指令を受けて)、配電系統に無効電力を供給してよい(第3工程)。なお、スマートインバータは、電圧調整器と同じ配電系統、すなわち、電圧調整器が高圧配電系統に無効電力を供給する場合は高圧配電系統に、電圧調整器が低圧配電系統に無効電力を供給する場合は低圧配電系統に無効電力を供給してよい。スマートインバータは、電圧調整器と比較して、ゆっくりとした速度(ソフトランプ応答)で配電系統に対する出力(供給する無効電力量)を上昇させてよい。具体的には、電圧調整器は、数m秒から十数m秒で無効電力の出力を目的の出力まで上昇させてよい。一方、スマートインバータは、数百m秒から数十秒で無効電力の出力を目的の出力まで上昇させてよい。スマートインバータが出力を上昇させる時間は、電圧調整器が出力を上昇させる時間と比較して、10~10000倍長くてよい。
【0011】
典型的に、高圧配電系統の電圧が所定範囲外(管理基準値外)に変動すると、低圧配電系統の電圧も所定範囲外(管理基準値外)に変動する。そのため、電圧調整器、及び/又は、スマートインバータが高圧配電系統に接続(高圧配電系統に無効電力を供給)する場合であっても、高圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持することにより、結果として低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持することができる。
【0012】
制御装置は、スマートインバータと通信可能であるとともに、電圧調整器からの情報が入力されるように構成されていてよい。なお、電圧調整器から入力される情報として、電圧調整器が配電系統に無効電力を供給したこと、電圧調整器が配電系統に供給した無効電圧量、電圧調整器の無効電圧の残量等であってよい。制御装置は、電圧調整器に取り付けられていてよい。この場合、制御装置は、電圧調整器の制御装置自体であってもよいし、電圧調整器の制御装置とは別であってもよい。あるいは、制御装置は、電圧調整器と別体に設けられており、電圧調整器と通信可能であってもよい。この場合、制御装置は、発電施設のサーバ等であってよい。
【0013】
制御装置は、電圧調整器が配電系統に無効電力を供給して配電系統の電圧を所定範囲内に保持した情報を取得したときに、スマートインバータに対して配電系統に無効電力を供給させる指令を与えてよい(第2工程)。具体的には、制御装置は、スマートインバータに対して、配電系統に無効電力を供給させる信号を送信してよい。スマートインバータが配電系統に無効電力を供給すると、電圧調整器は、配電系統の電圧を所定範囲内に保持するために出力(無効電力の供給量)を低下させる。そのため、スマートインバータの出力が上昇するに従って、電圧調整器の出力が低下する。制御装置は、直接的にはスマートインバータの制御を行い、間接的に(結果的に)電圧調整器の出力を制御する。制御装置は、電圧管理システムにおける上位システムと捉えることができる。制御装置は、電圧調整器の出力が設定値に低下する(電圧調整器の無効電力が設定値に回復する)まで、スマートインバータに対して配電系統に無効電力の供給を継続させてよい。また、スマートインバータは、電圧調整器の無効電力が設定値に回復したときに、配電系統に対する出力を保持してよい(第4工程)。
【0014】
上記したように、配電系統に電圧調整器を接続することにより、配電系統の急激な電圧変動に対応することができる(低圧配電系統の電圧を所定範囲内に回復することができる)。しかしながら、電圧調整器は、常に余力(出力可能な無効電力)を確保しておかないと、配電系統に急激な電圧変動が発生したときに無効電力出力が不足し、配電系統の電圧を管理値(基準電圧)に維持できなくなることが起こり得る。しかしながら、本明細書で開示する電圧管理システムは、スマートインバータが配電系統に無効電力を供給することにより、電圧調整器が常に余力を確保した状態を維持することができる。すなわち、上記した一連の工程(第1~第4工程)を実施することにより、電圧調整器は,配電系統の電圧調整を行うために必要な無効電力量を常に確保することができる。
【0015】
なお、電圧管理システムが複数のスマートインバータを含む場合、制御装置は、全てのスマートインバータに無効電力の供給を開始させてもよいし、一部(1個又は複数)のスマートインバータに無効電力の供給を開始させてもよい。また、複数のスマートインバータが配電系統に無効電力を供給する場合、制御装置は、全てのスマートインバータの出力が同じになるように各スマートインバータを制御してもよいし、スマートインバータ毎に出力が異なるように各スマートインバータを制御してもよい。
【0016】
制御装置は、電圧調整器から配電系統に無効電力を供給した情報を1度だけ受信する場合、電圧調整器の出力と電圧調整器の設定値の差に応じて、スマートインバータ(スマートインバータが複数の場合は各スマートインバータ)に出力させる無効電力量を算出してもよい。この場合、制御装置は、スマートインバータに対し、無効電力の供給を開始させる信号を送信するとともに配電系統に供給する無効電力の出力保持値(無効電力の出力上昇を停止し、一定の出力に保持する値)を含む情報を送信してもよい。また、制御装置は、電圧調整器から無効電力の残量の変動を受信し続ける場合、スマートインバータに対し、無効電力の供給を開始させる信号を送信した後、電圧調整器の出力が設定値まで低下(無効電力の残量が十分に回復するまで上昇)したときにスマートインバータに対して出力を保持させる信号を送信してもよい。
【実施例
【0017】
図1を参照し、電圧管理システム100について説明する。電圧管理システム100は、制御装置50と、STATCOM(電圧調整器)20と、複数のスマートインバータ12を備えている。STATCOM20及びスマートインバータ12は、低圧配電系統32に接続されている。低圧配電系統32は、変圧器(ポールトランス)Trを介して高圧配電系統30に接続されている。一例として、日本では、高圧配電系統30の電圧は6.6kVであり、低圧配電系統32の電圧は100Vまたは200Vである。また、一例として、米国では、高圧配電系統30の電圧は12kVであり、低圧配電系統32の電圧は120Vまたは240Vである。なお、高圧配電系統30及び低圧配電系統32には、各々負荷34,36が接続される。スマートインバータ12は、太陽光発電装置10に取り付けられている。全てのスマートインバータ12が低圧配電系統32に無効電力を供給可能であり、全ての太陽光発電装置10が低圧配電系統32に発電した有効電力を供給可能である。
【0018】
STATCOM20は、低圧配電系統32に供給する無効電力の出力を変化させ、低圧配電系統32の電圧を所定範囲内に維持する。そのため、STATCOM20は、低圧配電系統32に対する負荷36の接続、あるいは、低圧配電系統32に対する太陽光発電装置10からの有効電力の供給により、低圧配電系統32の電圧が所定範囲外に変動すると、低圧配電系統32に無効電力を供給し、低圧配電系統32の電圧を所定範囲内に維持する。また、STATCOM20は、低圧配電系統32にスマートインバータ12から無効電力が供給された場合も、出力を変化(低下)させ、低圧配電系統32の電圧を所定範囲内に維持する。
【0019】
(第1電圧管理方法)
図2から図4を参照し、電圧管理システム100を利用した電力管理方法を説明する。低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0(所定範囲V1~V2の間)に維持されている場合、STATCOM20の出力は、出力B1(var)に保持されている(ステップS2,タイミングt0~t1)。出力B1は、低圧配電系統32に電圧変動が生じたときに、電圧変動を補償(回復)する余力(無効電力の残量)を有した状態に設定されている。STATCOM20は、常に低圧配電系統32の電圧を検出しており、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0を満足している間(ステップS4:YES)、出力を出力B1に保持し続ける。なお、出力B1は、例えば0varであってよいし、一定の値であってもよい。また、STATCOM20の出力が出力B1に保持されている間(タイミングt0~t1)、スマートインバータ12の出力は、出力A1(var)に保持されている。出力A1も、例えば0varであってよいし、一定の値であってもよい。
【0020】
STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧が所定範囲V1~V2外になったことを検知すると(ステップS4:NO,タイミングt1)、低圧配電系統32に無効電力を供給し、低圧配電系統32の電圧を所定範囲V1~V2内に回復させる(ステップS6,タイミングt1~t2)。ステップS6は、第1工程の一例である。なお、STATCOM20による低圧配電系統32への無効電力の供給(タイミングt1~t2)は、数十m秒以内に行われる。
【0021】
次に、STATCOM20は、第1情報を含む信号22を制御装置50に送信する(ステップS8)。第1情報には、低圧配電系統32に無効電力を供給したこと、及び、低圧配電系統32の電圧を所定範囲V1~V2に維持するために出力している出力B2の値が含まれている。
【0022】
制御装置50は、第1情報(信号22)を受信した後、STATCOM20の出力を出力B2から出力B1に低下させるための無効電力量を算出し、各スマートインバータ12から低圧配電系統32に供給する無効電力量(各スマートインバータ12の出力)を決定する。そして、制御装置50は、第2情報を含む信号24をスマートインバータ12に送信する(ステップS10,タイミングt2~t3)。第2情報には、低圧配電系統32に対して無効電力の供給を開始する指令、及び、無効電力の供給量(出力保持値)の情報が含まれている。ステップS10は、第2工程の一例である。
【0023】
スマートインバータ12は、制御装置50から第2情報(信号24)を受信すると、低圧配電系統32に無効電力の供給を開始する(ステップS12,タイミングt3)。ステップS12は、第3工程の一例である。スマートインバータ12は、低圧配電系統32への出力が第2情報に含まれていた出力保持値に達するまで低圧配電系統32に無効電力を供給し続ける(ステップS14:NO,タイミングt3~t4)。スマートインバータ12から低圧配電系統32に無効電力が供給されると、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧を所定範囲V1~V2に維持するために、出力を低下させていく(タイミングt3~t4)。スマートインバータ12による低圧配電系統32への無効電力の供給(タイミングt3~t4)は、数百m秒~数十秒行われる。スマートインバータ12は、低圧配電系統32に対する出力をゆっくりと一定速度で上昇(ソフトランプ応答)させる。
【0024】
スマートインバータ12は、低圧配電系統32に対する出力が出力保持値に達したときに、その出力を保持する(ステップS16,タイミングt4以降)。上述したように、制御装置50は、STATCOM20の出力が出力B1(設定値)に低下するように、スマートインバータ12の出力保持値(無効電力の供給量)を決定する。そのため、スマートインバータ12の出力が出力保持値に達し、スマートインバータ12の出力が保持されると、STATCOM20の出力も出力B1に保持される。すなわち、ステップS16は第4工程の一例である。
【0025】
第1電圧管理方法によると、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0(所定範囲V1~V2)を外れたときに、STATCOM20が、低圧配電系統32の電圧を即座に管理基準値V0に回復させる。また、スマートインバータ12を用いて低圧配電系統32に無効電力を供給することによって、低圧配電系統32の電圧を管理基準値V0に維持したまま、STATCOM20の出力を低下させることができる。これにより、低圧配電系統32の電圧が再度管理基準値V0を外れたときに、STATCOM20は、無効電力を低圧配電系統32に確実に供給することができる。すなわち、スマートインバータ12を用いてSTATCOM20の調整能力(低圧配電系統32の電圧を管理基準値V0に維持する能力)を回復することにより、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧補償を行える状態を常に維持することができる。
【0026】
(第2電圧管理方法)
図5を参照し、第2電圧管理方法について説明する。第2電圧管理方法は、第1電圧管理方法の変形例である。そのため、以下の説明において、第1電圧管理方法と実質的に同一の工程については、重複説明を省略することがある。なお、第2電圧管理方法においても、低圧配電系統32に対するSTATCOM20及びスマートインバータ12の出力は、図4に示すタイミングチャートのように変化する。以下の説明では、必要に応じて図4も参照する。
【0027】
第2電圧管理方法において、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0に維持されている間はSTATCOM20の出力を出力B1に保持し、低圧配電系統32の電圧が所定範囲V1~V2外になったときにSTATCOM20が低圧配電系統32に無効電力を供給するまでの工程(ステップS22~ステップS26,タイミングt0~t2)は、第1電圧管理方法のステップS2~ステップS6と同一である。すなわち、本電圧管理方法では、ステップS26が第1工程の一例である。
【0028】
STATCOM20は、低圧配電系統32に無効電力を供給した後、制御装置50に第1情報を含む信号22を送信する(ステップS28)。第1情報には、低圧配電系統32に無効電力を供給した情報が含まれている。制御装置50は、第1情報を受信した後、スマートインバータ12に第2情報を含む信号24を送信する(ステップS30,タイミングt2~t3)。第2情報には、低圧配電系統32対して無効電力の供給を開始する情報(指令)が含まれている。ステップS30は、第2工程の一例である。
【0029】
スマートインバータ12は、制御装置50から第2情報を受信すると、低圧配電系統32に無効電力の供給を開始する(ステップS32,タイミングt3)。ステップS12は、第3工程の一例である。スマートインバータ12から低圧配電系統32に無効電力が供給されるに従い、STATCOM20の出力が低下していく(タイミングt3~t4)。
【0030】
STATCOM20は、低圧配電系統32に対する出力が出力B1(設定値)に達すると(ステップS34:YES,タイミングt4)、制御装置50に第3情報を含む信号22を送信する(ステップS36)。第3情報には、低圧配電系統32に対する出力が出力B1に達した情報が含まれている。
【0031】
制御装置50は、STATCOM20から第3情報(信号22)を受信すると、スマートインバータ12に第4情報を含む信号24を送信する(ステップS38)。第4情報には、スマートインバータ12の出力上昇を停止し、低圧配電系統32に対する出力を保持する情報が含まれている。スマートインバータ12は、第4情報を受信すると、低圧配電系統32に対する出力を保持する(ステップS40)。ステップS38及びS40は、第4工程の一例である。なお、STATCOM20の出力が出力B1に達するまでの間(出力B1まで低下していない場合,ステップS34:NO)、スマートインバータ12は、低圧配電系統32に対する出力をゆっくりと一定速度で上昇(ソフトランプ応答)させ続ける。
【0032】
第2電圧管理方法においても、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0(所定範囲V1~V2)を外れたときに、STATCOM20が低圧配電系統32の電圧を即座に管理基準値V0に回復させることができる。また、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧が再度管理基準値V0を外れた場合に備え、低圧配電系統32の電圧補償を行える状態を常に維持することができる。なお、第2電圧管理方法において、STATCOM20は、第1情報を送信してから第3情報を送信するまでの間に、低圧配電系統32に対する出力を制御装置50に送信し続けてもよい。
【0033】
(変形例)
図6は、制御装置50がSTATCOM20に内蔵されている形態を示している。すなわち、STATCOM20の制御装置50aが、電圧管理システム100の制御装置50を兼ねている。この場合、上記電圧管理方法における第1情報,第3情報は、STATCOM20内で内部処理される。そのため、制御装置50がSTATCOM20に内蔵されている場合、STATCOM20がスマートインバータ12の駆動(無効電力の供給)を制御すると捉えることもできる。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
10:分散電源
12:スマートインバータ
20:電圧調整器(STATCOM)
30:高圧配電系統
32:低圧配電系統
50:制御装置
100:電圧管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6