IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリタ分析センター株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-濾過器 図1
  • 特許-濾過器 図2
  • 特許-濾過器 図3
  • 特許-濾過器 図4
  • 特許-濾過器 図5
  • 特許-濾過器 図6
  • 特許-濾過器 図7
  • 特許-濾過器 図8
  • 特許-濾過器 図9
  • 特許-濾過器 図10
  • 特許-濾過器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】濾過器
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/01 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
B01D23/08
B01D29/04 510A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020054889
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2020163382
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019064940
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505193900
【氏名又は名称】クリタ分析センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】岡村 忠行
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 篤史
(72)【発明者】
【氏名】天野 昌江
(72)【発明者】
【氏名】清水 綾
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/075250(WO,A1)
【文献】特開平10-211403(JP,A)
【文献】特開平02-002816(JP,A)
【文献】特開平03-249926(JP,A)
【文献】特開2008-261743(JP,A)
【文献】実開昭50-068775(JP,U)
【文献】実開昭49-004265(JP,U)
【文献】特開昭58-061439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04、35/08-37/08
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から順に、試料貯留部、フィルタ部、及び、濾過液収容部、を備え、
前記試料貯留部は、その下部に設けられた連結部、扁平なリング状のフィルタ周縁押圧部、及び、扁平なリング状の緩衝部材を有し、
前記フィルタ部は、その上部に設けられた上部連結部、及び、フィルタホルダを有し、
前記フィルタ周縁押圧部と前記フィルタホルダとの間でフィルタが挟持され、
前記フィルタ周縁押圧部と前記フィルタとの間に前記緩衝部材が配置され、
前記フィルタ周縁押圧部は、前記試料貯留部と前記フィルタ部とを、前記連結部と前記上部連結部とにより螺合することにより、前記フィルタの周縁部に固定される、
濾過器。
【請求項2】
前記扁平なリング状の緩衝部材が、圧吸収性と摺動性とを有する材料のシートから構成される、請求項1に記載の濾過器。
【請求項3】
前記フィルタ部は、排気口を有する、請求項1又は2に記載の濾過器。
【請求項4】
前記フィルタ部は、濾過液を誘導する濾過液誘導部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の濾過器。
【請求項5】
前記濾過液収容部が、前記試料貯留部及び前記フィルタ部とは別部材からなり、前記濾過液収容部の開口部を被覆する着脱可能な蓋部材を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の濾過器。
【請求項6】
前記蓋部材が、蓋本体とこの蓋本体に形成された開口部と、この開口部を開閉可能な開閉部とを有する、請求項5に記載の濾過器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
環境、上下水道、超純水、食品、衛生、バイオ、医学、臨床分野等では、試料検査の際に、検液(試験液)作成を伴う溶出試験を行うことがある。検液の作成は、濾過器を用いることが多い。
【0003】
例えば、土壌汚染対策法に基づいて行われる土壌あるいは廃棄物の溶出試験法においては、検液作成の方法が規定されている。この溶出試験法は、一般に、採取した試料を、乾燥、分級、計量、溶媒による抽出、遠心分離、上澄液の濾過、得られた濾液(検液)の分析、という手順で行われる。
【0004】
このうち、上澄液の濾過は、吸引濾過器を用いて行われ、上澄液の注入、濾過液の回収、濾紙交換、濾過器の洗浄等の作業が手作業により行われる。このため、濾過作業時の取扱性及び作業性が良好で、組み立て及び分解が容易な濾過器が求められている。さらに、構成部品数が少なく安価な濾過器が求められている。
【0005】
このような濾過器としては、従来、以下のようなものが知られている。特許文献1には、細菌検査に用いる濾過器が記載されている。この濾過器は、サンプルを貯留するホルダの底部凹部をフィルタ台に被せ、フィルタ台外周の環状突起によりホルダとフィルタ台とを密着保持する。しかし、ホルダとフィルタ台とを密着保持する際、フィルタ台上のメンブランフィルタMの周縁部とホルダとの間に空隙が生じることがあり、減圧濾過を行うとメンブランフィルタMの周縁部が浮き上がり、濾過漏れが発生するおそれがある。さらに、濾過器の部品点数が多いため、濾過器の組み立て及び分解に手間がかかり、また、濾過器が高価なものとなる。
【0006】
特許文献2には、土壌検定に用いる簡易抽出濾過器が記載されている。この濾過器は、筒状の濾過本体と、濾過本体に接続し底部にそれぞれ脱気孔を有する一対の有底筒状容器とが液密に接続されている。濾過本体内中間部には、濾液落下部が貫通された濾紙支持板と、濾紙支持板上に濾紙が配置されている。しかし、濾紙の周縁部が固定されていないため、減圧濾過を行うと濾紙の周縁部が浮き上がり、濾過漏れが発生するおそれがある。
【0007】
特許文献3には、実験用ろ過器が記載されている。このろ過器は、試料を貯留するガラスファネルと、濾過液を収容吸引瓶に連結されたガラスベースとにより、濾紙及び濾過板をクランプで挟持する。しかし、ろ過器の安定性が悪く、取り扱い性や作業性に問題がある。また、クランプでの挟持部が動いて、ガラスファネルと濾紙との間に空隙が生じることがあり、減圧濾過を行うと濾紙の周縁部が浮き上がり、濾過漏れが発生するおそれがある。さらに、ろ過器の部品数が多いため、組み立て及び分解に手間がかかり、ろ過器が高価なものなる。ガラス製であることから、壊れやすい等の問題もある。
【0008】
特許文献4には、てんぷら油等の液中の不純物を濾過する簡易濾過器が記載されている。この濾過器は、受器と、支持筒と、濾過容器とを有し、支持筒中に収容されるエレメントの外縁部が、支持筒の通液性の底と、濾過容器が有する環状鍔とで圧縮される。しかし、この濾過器は、濾過容器の構造が複雑で製造に手間がかかり、濾過器が高価なものとなる。
【0009】
特許文献5には、懸濁溶液などを濾過するための濾過装置が記載されている。この濾過装置は、第1の濾過器と第2の濾過器とを有し、構造が複雑で部品点数が多いため、濾過装置の組み立て及び分解に手間がかかり、高価なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平8-257318号公報
【文献】実公平4-41922号公報
【文献】実開昭62-13505号公報
【文献】実公昭60-26765号公報
【文献】実開昭55-167408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、部品点数が少なくて組み立て及び分解が容易であり、安価に製造でき、作業性が良好な濾過器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、上から順に、試料貯留部、フィルタ部、及び、濾過液収容部、を備え、前記試料貯留部は、フィルタ周縁押圧部を有し、前記フィルタ部は、フィルタホルダを有し、前記フィルタ周縁押圧部と前記フィルタホルダとの間でフィルタが挟持される、濾過器を提供する(発明1)。
【0013】
かかる発明(発明1)によれば、部品点数が少なくて組み立て及び分解が容易であり、安価に製造でき、作業性が良好な濾過器とすることができる。
【0014】
上記発明(発明1)においては、前記フィルタ部は、排気口を有することが好ましい(発明2)。また、上記発明(発明1,2)においては、前記フィルタ部は、濾過液を誘導する濾過液誘導部を有することが好ましい(発明3)。
【0015】
かかる発明(発明2,3)によれば、排気口から吸引することで、効率良く濾過することができ、さらに、濾過液誘導部を有することで、濾過液が排気口に吸引されることを防ぐことができる。
【0016】
上記発明(発明1~3)においては、前記フィルタ周縁押圧部と前記フィルタとの間に緩衝部材を配置することが好ましい(発明4)。
【0017】
かかる発明(発明4)によれば、フィルタ周縁押圧部の押圧力がフィルタに伝播するのを緩衝部材が緩和することにより、フィルタにひずみなどが生じることを防止することができる。
【0018】
上記発明(発明1~4)においては、前記濾過液収容部が、前記試料貯留部及び前記フィルタ部とは別部材からなり、前記濾過液収容部の開口部を被覆する着脱可能な蓋部材を有することが好ましい(発明5)。特に上記発明(発明5)においては、前記蓋部材が、蓋本体とこの蓋本体に形成された開口部と、この開口部を開閉可能な開閉部とを有することが好ましい(発明6)。
【0019】
かかる発明(発明5,6)によれば、濾過液収容部に濾過液を貯留したら、この濾過液収容部に蓋部材を取り付けることで、容易に濾過液を持ち運んだり、保管したりすることができる。特に蓋部材に開口部を形成して、この開口部を開閉部により開閉することにより、濾過液収容部蓋部材を取り付けたまま濾過液を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、部品点数が少なくて組み立て及び分解が容易であり、安価に製造でき、作業性が良好な濾過器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一の実施形態に係る濾過器の正面図である。
図2】前記第一の実施形態に係る濾過器の断面図である。
図3図2における要部拡大図である。
図4】前記第一の一実施形態に係る濾過器の上面図である。
図5】本発明の第二の実施形態に係る濾過器の緩衝部材を示す平面図である。
図6】前記第二の実施形態に係る濾過器のフィルタ周縁押圧部を示す平面図である。
図7】前記第二の実施形態に係る濾過器のフィルタと緩衝部材とフィルタ周縁押圧部の積層構造を示す概略図である。
図8】前記第二の実施形態に係る濾過器のフィルタと緩衝部材とフィルタ周縁押圧部の積層状態を示す縦断面図である。
図9】本発明の第三の実施形態に係る濾過器において、濾過液収容部に蓋部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
図10】前記第三の実施形態に係る濾過器の蓋部材の別例を示す平面図である。
図11】前記第三の実施形態に係る濾過器の蓋部材の別例を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一の実施形態]
以下、図面を参照してさらに詳細に説明する。図1~4は、本発明の第一の実施形態による濾過器を示している。図1に示すように、濾過器1は、試料貯留部2、フィルタ部3、及び、濾過液収容部4、を少なくとも備えている。また、図2~4に示すように、試料貯留部2は、フィルタ周縁押圧部21を、フィルタ部3は、フィルタホルダ31を、少なくとも有する。
【0023】
<試料貯留部>
試料貯留部2は、濾過する試料を貯留するもので、フィルタ周縁押圧部21を少なくとも有する。
【0024】
試料貯留部2は、図2図3に示すように試料を受け入れる上部開口部22、フィルタと連接する下部開口部23、上部開口部と下部開口部の間に形成されている周壁24、上部開口部22と下部開口部23と周壁24とで画定される貯留部25、連結部26、の1つ以上を有していてもよい。
【0025】
この試料貯留部2の形状は、特に限定されず、例えば、筒状、好ましくは円筒状とされる。この試料貯留部2に貯留される試料としては、例えば、土壌の溶出試験法において、検液を作成するための試料液等があげられる。
【0026】
フィルタ周縁押圧部21は、フィルタ周縁を押圧するもので、例えば、下部開口部23の近傍に、フィルタ部3に対向して設けられる。フィルタ周縁押圧部21は、連結部26と上部連結部35とを連結した際に、試料貯留部2とフィルタ部3とを液密に連結するためのシール部材として機能させてもよい。これにより、部品数を削減することができる。
【0027】
フィルタ周縁押圧部21は、濾過を行う際に、フィルタFの周縁部がめくり上がり濾過漏れが起こることを防止する。特に、フィルタFの周縁部がめくり上がることが多い、吸引濾過を行う際に有効である。
【0028】
フィルタ周縁押圧部21は、試料貯留部2とフィルタ部3とを、連結部26と上部連結部35とで連結した際、圧縮されてフィルタFを押圧する。これにより、フィルタ周縁押圧部21は、フィルタFの周縁部を固定することができる。
【0029】
このようなフィルタ周縁押圧部21は、ゴムやエラストマー等の弾力のある材料から構成される。例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、ウレタンゴム、ポリオレフィンエラストマー等の材料から構成される。
【0030】
フィルタ周縁押圧部21の形状は、フィルタの形状に合わせたものとされる。例えば、濾紙等の円形のフィルタFの周縁を押圧する場合は、リング状等の形状とすればよい。
【0031】
この試料貯留部2とフィルタ周縁押圧部21とは、嵌合、接着、一体成型等の公知の手段により、着脱可能又は着脱不可能に固定されていてもよい。
【0032】
周壁24には、作業性の向上等のために、図示されない取手を設けることもできる。また、周壁24には、貯留された試料の量を示す目盛りを設けることができる。
【0033】
貯留部25の容量は、特に限定されず、例えば、500~2000mlとすればよい。
【0034】
連結部26は、試料貯留部の下部に設けることができる。例えば、周壁24の外周面又は内周面に設けることができる。図2に示される一実施形態では、連結部26は、周壁24の下端を延長した雌ネジ部として設けられ、上部連結部35である雄ネジ部と螺合される。
【0035】
<フィルタ部>
フィルタ部3は、フィルタFを用いて試料貯留部の試料を濾過するもので、フィルタホルダ31を少なくとも有する。フィルタ部3は、図2図3に示すように、排気口32、濾過液誘導部33、周壁34、上部連結部35、下部連結部36を有していてもよい。また、ホルダ支持部37を有していてもよい。
【0036】
フィルタFは、フィルタホルダ31により支持され、試料貯留部2に受け入れられた試料を濾過する。フィルタFは、紙、不織布、ガラスフィルタ等のフィルタ材料から構成される。例えば、濾紙があげられる。フィルタFは、例えば、孔径が0.1~1μmで、直径が50~200mmのシート状とすることができる。
【0037】
このようなフィルタFの形状は、特に限定されず、例えば、円板状等のシート状、円錐状等の三次元形状等の任意の形状とすることができる。濾過の際、フィルタFは、適宜交換して用いられる。
【0038】
フィルタホルダ31は、試料貯留部と濾過液収容部とを連通する孔を1つ以上有する。例えば、全面又はその一部が、網、多孔板、多孔質体等により形成されている。フィルタホルダ31は、フィルタFの全面又は一部分を支持し、フィルタFとともに、試料貯留部2と濾過液収容部4との間に挟持される。
【0039】
フィルタホルダ31がフィルタFの全面を支持する場合、フィルタ周縁押圧部21は、フィルタFが薄い濾紙等の自立性がないものでも確実にフィルタ周縁部を押圧することができる。このため、ズレや周縁部の浮き上がり等が生じることなく、減圧濾過を行える。
【0040】
フィルタホルダ31の形状は、特に限定されず、フィルタFを支持しつつ、試料貯留部2のフィルタ周縁押圧部21がフィルタFの周縁を押圧できる形状とされる。例えば、フィルタFを平面状のまま支持する板状等があげられる。
【0041】
このようなフィルタホルダ31は、例えば、厚さ0.5~10mm、直径50~120mm、多孔率10~60%の円盤とすることができる。図3では、フィルタホルダ31は、フィルタFの形状より大きくされているが、フィルタFの形状より小さくすることもできる。フィルタホルダ31には、フィルタFを支持する部分に、フィルタFの位置ずれ防止等のために、凹部、凸部、切り欠き、表示等を設けることができる。
【0042】
フィルタホルダ31は、周壁34で支持されていてもよい。例えば、周壁34の上端部に載置されてもよく、嵌合、接着、一体成型等の公知の手段により、着脱可能又は着脱不可能に周壁34に固定されていてもよい。この場合、ホルダ支持部37は設ける必要がない。また、フィルタホルダ31は、濾過液誘導部33と離れていてもよく、接していてもよい。
【0043】
また、フィルタホルダ31は、ホルダ支持部37で支持されていてもよい。例えば、ホルダ支持部37に載置されていてもよく、ホルダ支持部37と嵌合、接着、一体成型等の公知の手段により、着脱可能又は着脱不可能に固定されていてもよい。この場合、ホルダ支持部37は、濾過液誘導部33と一体化されていてもよく、濾過液誘導部33と一体化されていなくてもよく、周壁34と一体化されていてもよい。
【0044】
排気口32は、ホース等によって、真空ポンプ等の吸引手段に連結され、濾過器内を負圧にするものである。排気口32は、任意の場所に1つ以上設けることができる。排気口32は、フィルタFに偏りなく吸引力が作用するように設けることが好ましい。
【0045】
濾過液誘導部33は、フィルタF及びフィルタホルダ31を通過した濾過液を、濾過液収容部4に誘導するものである。例えば、漏斗状や円筒状の形状とすることができる。濾過液誘導部33は、フィルタホルダ31、周壁34及びホルダ支持部37の1つ以上と一体化されていてもよい。
【0046】
濾過液誘導部33は、例えば、漏斗状の形状の下端部が、濾過液収容部4の開口部41と連通していてもよい。また、濾過液誘導部33の内面には、フィルタホルダ31を支える凸部38を有していてもよい。
【0047】
濾過液誘導部33は、フィルタホルダ31と排気口32との間に形成できる。これにより、濾過液が排気口32に吸引されることを防ぐことができる。
【0048】
上部連結部35は、試料貯留部2の連結部26と連結し、試料貯留部2とフィルタ部3とを一体化する。上部連結部35は、例えば、排気口32よりも上部に設けることができる。図2に示される一実施形態では、上部連結部35は、周壁34の外周面に雄ネジ部として設けられ、試料貯留部2の連結部26の雌ネジ部と螺合される。
【0049】
下部連結部36は、濾過液収容部4の連結部43と連結し、フィルタ部3と濾過液収容部4とを一体化する。下部連結部36は、例えば、排気口32よりも下部に設けることができる。図2に示される一実施形態では、下部連結部36は、周壁34の下端を延長した雌ネジ部として設けられ、濾過液収容部4の連結部43の雄ネジ部と螺合される。
【0050】
ホルダ支持部37は、フィルタホルダ31を支持する。図3に示される一実施形態では、ホルダ支持部37は、周壁34の内周面から突出した形状とされ、その上面においてフィルタホルダ31を支持する。ホルダ支持部37は、濾過液誘導部33及び/又は周壁34と一体化されていてもよい。
【0051】
ホルダ支持部37において、フィルタホルダ31を支持する部分には、フィルタホルダ31の位置ずれ防止等のために、凹部、凸部、切り欠き、表示等を設けることができる。
【0052】
<濾過液収容部>
濾過液収容部4は、フィルタで濾過された濾過液を収容するものである。濾過液収容部4は、図2に示すように、濾過液を受け入れる開口部41、濾過液を収容する収容部42、連結部43、を少なくとも有する。この濾過液収容部4の形状は、特に限定されず、例えば、開口部41を上部に有するカップ状、フラスコ状等の任意の形状の容器とされ、好ましくは、有底の円筒状容器である。濾過液収容部4の側面には、作業性の向上等のために、取手44を少なくとも1つ設けてもよい。また、濾過液収容部4の側面には、収容部42に収容された濾過液の量を示す目盛りを設けることができる。
【0053】
収容部42の容量は、特に限定されず、例えば、500~2000mlとされる。また、連結部43は、フィルタ部3の下部連結部36と連結される。
【0054】
<濾過器の構成材料>
濾過器1は、プラスチック、ガラス、金属等の任意の材料で構成される。プラスチックとしては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、ポリスルホンやポリイミド等の耐熱性樹脂、フッ素樹脂、アクリル系樹脂等があげられる。金属としては、ステンレスやアルミニウムがあげられる。
【0055】
濾過器1の構成材料をプラスチックとすると、安価に製造でき、軽量で破損等が起こりにくいため取扱いが容易であり、濾過液の金属汚染を防止できる。濾過器1は、内容物や量が確認できる材料(例えば透明材料等)で形成されていてもよく、内容物や量が確認できない材料で形成されていてもよい。加熱殺菌可能とするために、耐熱性樹脂で形成されていてもよい。
【0056】
<連結部の連結手段>
本発明の濾過器における各連結部は、作業者の手作業による又は工具等を利用する連結手段等を有する。連結手段としては、例えば、ネジ機構、係合機構(雄差込部材と雌差込部材を組み合わせたバックル式の留め具と同じ構造を有するもの等)、バヨネットロック機構、ボルトによる締付機構等の1種以上の機構を用いた手段があげられる。また、接着や一体成型等の手段でもよい。洗浄等のメンテナンスを考慮すると、濾過器1は、着脱可能に組み立てられたものとすることができる。
【0057】
<濾過器の組み立て・分解>
本発明の濾過器1の組み立て・分解の方法は、特に限定されない。例えば、図1~4に示される濾過器1の場合、次の方法(1)~(5)により、組み立てることができる。
(1)フィルタ周縁押圧部21を、試料貯留部2と一体化する。
(2)フィルタ部3のホルダ支持部37と、濾過液収容部4とを、下部連結部36と連結部43とにより一体化する。
(3)フィルタホルダ31を、ホルダ支持部37で支持する。
(4)フィルタFをフィルタホルダ31で支持する。
(5)試料貯留部2と、フィルタ部3とを、連結部26と上部連結部35とにより一体化する。
【0058】
濾過器1を組み立てた後に、排気口32と排気装置(真空ポンプ等)とをホース等で連結する。その後、試料貯留部2の上部開口部22から試料を投入し、排気装置を駆動させることで吸引濾過を行うことができる。なお、濾過器1を分解する際は、例えば、上記の組み立て方法と逆の順序で行えばよい。
【0059】
[第二の実施形態]
次に本発明の第二の実施形態の濾過器について説明する。本実施形態の濾過器は、基本的には前述した第一の実施形態の濾過器1と同じ構成を有するので、同一の構成についてはその詳細な説明を省略する。本実施形態においては、図5~8に示すようにフィルタホルダ31により支持されたフィルタF上に扁平なリング状の緩衝部材27と扁平なリング状のフィルタ周縁押圧部21とを積層した構造を有する。これにより、フィルタFとフィルタ周縁押圧部21との間に緩衝部材27を介在させた構造となっている。
【0060】
この緩衝部材27は、発泡性樹脂性シート等の圧吸収性と摺動性とを有する材料のシートから構成される。例えば、発泡スチレン、発泡ポリエチレン等の材料から構成される。
【0061】
このような構成を採用することにより、フィルタFから収容部42へ試料液が漏洩することを好適に防止することが可能となる。これは以下のような理由による。すなわち、前記第一の実施形態においては、フィルタFをフィルタホルダ31で支持したら、試料貯留部2とフィルタ部3とを、連結部26と上部連結部35とにより螺合することにより、フィルタ周縁押圧部21は、フィルタFの周縁部に固定しているが、このときフィルタFはシリコーンゴム製などのフィルタ周縁押圧部21と密着しているので、試料貯留部2を螺合する際に、フィルタFを回動する方向に応力が生じ、フィルタFにシワ、たるみなどが生じることにより、フィルタFから収容部42へ試料液が漏洩することが起こることがある。これに対し、本実施形態においては、フィルタFとフィルタ周縁押圧部21との間に緩衝部材27を介在させているので、試料貯留部2をフィルタ部3に螺合する際のフィルタ周縁押圧部21からフィルタFに伝達される押圧及び回動圧力を、この緩衝部材27が圧吸収性と回動応力放散性を発揮することで緩和し、フィルタFにシワ、たるみなどが生じることを防止することができるからである。
【0062】
[第三の実施形態]
さらに本発明の第三の実施形態の濾過器について説明する。本実施形態の濾過器は、基本的には前述した第一の実施形態の濾過器1と同じ構成を有するので、同一の構成についてはその詳細な説明を省略する。本実施形態においては、図9に示すように濾過液を収容する収容部42の連結部43の雄ネジ部と螺合可能な蓋部材5を設けたものである。
【0063】
これにより収容部42に濾過液を貯留したら、この収容部42に蓋部材5を取り付けることで、容易に濾過液を持ち運んだり、保管したりすることができる。
【0064】
また、図10及び図11に示すように、蓋部材5Aとして、蓋本体51とこの蓋本体51に形成された開口部52と、この開口部52を開閉可能な開口受部54を有する開閉部53とを有するものを用いてもよい。このような蓋部材5Aを用いることにより、収容部42に蓋部材5Aを取り付けたら、開閉部53により開口部52を開閉することにより、収容部42に蓋部材5を取り付けたまま濾過液を取り出すことができる。
【0065】
<他の実施形態(変形例)>
以上、本発明の濾過器について、前記各実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、前記各実施形態に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば、試料貯留部2とフィルタ部3と濾過液収容部4とは、前記各実施形態のようにそれぞれ別部材であってもよいが、接着や一体成型等により一体化されていてもよく、具体的にはフィルタ部3と濾過液収容部4とを一体化してもよい、また、フィルタ部3において、フィルタホルダ31とホルダ支持部37とは、接着や一体成型等により一体化されていてもよい。さらに、フィルタ部3をあらかじめ一体化しておき、フィルタカートリッジの形態として用いることで、フィルタ交換作業を簡略化することができる。さらにまた、試料貯留部2とフィルタ部3と濾過液収容部4とは、螺合により接合する必要はなく、嵌合により接合してもよい。あるいは、試料貯留部2とフィルタ部3と濾過液収容部4のそれぞれの接合部にフランジ部を形成して当接させ、このフランジ部をクランプなどの挟圧部材により圧接することで接合してもよい。この場合、本発明の濾過器のろ過器は樹脂製で軽量であることから、挟圧部材としては、できるだけ小型のものを選定することが好ましい。
【符号の説明】
【0066】
1 濾過器
2 試料貯留部
21 フィルタ周縁押圧部
22 上部開口部
23 下部開口部
24 周壁
25 貯留部
26 連結部
27 緩衝部材
3 フィルタ部
F フィルタ
31 フィルタホルダ
32 排気口
33 濾過液誘導部
34 周壁
35 上部連結部
36 下部連結部
37 ホルダ支持部
38 凸部
4 濾過液収容部
41 開口部
42 収容部
43 連結部
44 取手
5 蓋部材
5A 蓋部材
51 蓋本体
52 開口部
53 開閉部
54 開口受部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11