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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20220927BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20220927BHJP
   B05D 1/38 20060101ALI20220927BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20220927BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220927BHJP
   B05D 1/04 20060101ALI20220927BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D5/06 101A
B05D1/38
B05D3/02 Z
B05D7/24 301E
B05D1/04 C
B05D1/04 H
B05D1/04 A
B05D3/00 D
B05D3/00 F
B05D7/24 303A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020173030
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064413
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸嘉
(72)【発明者】
【氏名】中林 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大村 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】月森 隆雄
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/088201(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/044672(WO,A1)
【文献】特開平10-298458(JP,A)
【文献】特開平11-114489(JP,A)
【文献】特開2002-113410(JP,A)
【文献】特表2021-529656(JP,A)
【文献】特開2006-218426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/36
B05D 5/06
B05D 1/38
B05D 3/02
B05D 7/24
B05D 1/04
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(1):被塗物上に溶剤系中塗り塗料(V)を塗装して、未硬化の第1中塗り塗膜を形成する工程、
工程(2):前記未硬化の第1中塗り塗膜を加熱して硬化させる工程、
工程(3):前記硬化させた第1中塗り塗膜上に溶剤系中塗り塗料(W)を塗装して、未硬化の第2中塗り塗膜を形成する工程、
工程(4):前記未硬化の第2中塗り塗膜を加熱して硬化させる工程、
工程(5):前記硬化させた第2中塗り塗膜上に水性ベース塗料(X)を塗装して、未硬化のベース塗膜を形成する工程、
工程(6):前記未硬化のベース塗膜上に光輝性顔料分散体(Y)を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する工程、
工程(7):前記未硬化の光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z)を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、
工程(8):前記未硬化のベース塗膜、前記未硬化の光輝性塗膜及び前記未硬化のクリヤー塗膜を加熱して同時に硬化させる工程、を順次行う複層塗膜形成方法であって、
前記水性ベース塗料(X)が、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、シェーピングエア圧が0.15~0.25MPaの範囲内であり、かつ、塗料の塗出量が100~300cm3/分の範囲内である塗装条件で塗装され、
該水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度が、温度23℃及びせん断速度0.1sec-1の条件下で測定して90~160Pa・sの範囲内であり、かつ、塗着60秒後の固形分が、20~40質量%の範囲内であり、かつ、塗着60秒後の膜厚が17~35μmの範囲内であり、
前記光輝性顔料分散体(Y)が、平均厚さが1nm以上70nm未満の鱗片状アルミニウム顔料(A)、平均厚さが70nm~250nmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)、表面調整剤(E)及び水を含有し、かつ固形分含有率が2~9質量%の範囲内であり、
前記光輝性塗膜の硬化後の膜厚が、0.5~2.0μmである、複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種の被塗装物に塗料を塗装して形成される塗膜には、被塗装物を保護するとともに、その外観に意匠性(美観)を与え得ることが求められている。特に、自動車の外板に塗装される上塗り塗料には、高い質感と意匠性を有する上塗り塗膜を形成できることが求められる。
【0003】
自動車車体の塗装は、通常、被塗装物上に、電着塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗膜を順次形成させることによって実施される。従来の方法では、被塗装物を電着塗料中に浸漬することによって電着塗装した後、高温で焼付処理することにより塗料を硬化させて電着塗膜を形成させ、その後、電着塗膜上に中塗り塗料を塗装した後、焼付処理して中塗り塗膜を形成させ、さらに中塗り塗膜上に上塗り塗料を塗装した後、焼付処理して上塗り塗膜を形成させるのが一般的である。
【0004】
例えば、高級な意匠感をもつ上塗り塗膜として近年主流となっているメタリック塗色の複層塗膜は、上塗り塗料として、高い光輝性を得るための光輝性顔料を含む光輝性ベース塗料及び透明なクリア塗料を使用して形成される。なお、光輝性が高い塗膜は、光沢が高く、さらに、光輝性顔料が塗膜中に比較的均一に存在して、メタリックムラがほとんど見られない塗膜である。
【0005】
通常、光輝性顔料には、金属性の光沢を有するアルミニウムフレーク顔料が使用される。一般に、これらのメタリック塗色の複層塗膜は、焼付処理された中塗り塗膜上に、ベース塗料、光輝性顔料を含有する光輝性ベース塗料及びクリア塗料をウェット・オン・ウェットで順次塗装し、次いで、得られる未硬化塗膜を1回の焼付処理で硬化させることにより形成される。
【0006】
例えば、特許文献1には、(A)平均粒子径D50が13~40μm、平均厚さが0.4~2.5μmのアルミニウム顔料および(B)平均粒子径D50が4~30μm、平均厚さが0.02~0.4μm未満のアルミニウム顔料を含み、アルミニウム顔料(A)と(B)との固形分質量比(A/B)が90/10~10/90であり、樹脂固形分100質量部に対してアルミニウム顔料(A)と(B)との合計固形分質量(A+B)が5~50質量部である第1ベースのメタリック塗料、微小鱗片状顔料、または微小鱗片状顔料及びアルミニウム顔料(C)を配合してなる第2ベースの光輝性塗料、およびクリヤー塗料を順次塗装し、焼付け硬化させることを特徴とする、金属調光輝性塗膜形成方法により、下地隠蔽性に優れかつ高度の真珠光沢と金属光沢を併せ持つ光輝感ならびに立体的な光輝感を得る塗膜形成方法を提供することができることが記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、第2ベースの光輝性塗料により形成される塗膜の膜厚が比較的厚く、金属光沢が不十分であった。
【0008】
特許文献2には、下記の工程(1)~(5):(1)被塗物上に、着色塗料(W)を塗装し、加熱して着色塗膜を形成する工程、(2)工程(1)で形成される着色塗膜上に、ベース塗料(X)を塗装してベース塗膜を形成する工程、(3)工程(2)で形成されるベース塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程、(4)工程(3)で形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び(5)工程(2)~(4)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、を順次行うことにより複層塗膜を形成する方法であって、光輝性顔料分散体(Y)が、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含有し、且つ固形分含有率が0.5~10質量%である複層塗膜形成方法により、優れた金属調光沢を呈する複層塗膜を得ること出来ることが記載されている。
【0009】
特許文献2に記載の方法では、優れた金属調光沢を得ることができるが、光輝性塗膜の膜厚が薄いため、ベース塗膜の肌が悪い場合、光輝性塗膜が該ベース塗膜の肌を転写してしまい、複層塗膜の仕上がり外観が不十分な場合があった。
【0010】
さらに、特に自動車塗装等の分野においては、形成された塗膜によってもたらされる質感や意匠性がその商品性に大きく影響することから、タレやムラなどの不具合が除去又は低減された意匠性の高い複層塗膜を形成することができる塗膜形成方法の開発を行っていくことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2008-237939号公報
【文献】国際公開WO2018/092874
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、仕上がり外観及び光輝性に優れた複層塗膜を得ることができる複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下の項に記載の主題を包含する。
【0014】
項1.工程(1):被塗物上に溶剤系中塗り塗料(V)を塗装して、未硬化の第1中塗り塗膜を形成する工程、
工程(2):上記未硬化の第1中塗り塗膜を加熱して硬化させる工程、
工程(3):上記硬化させた第1中塗り塗膜上に溶剤系中塗り塗料(W)を塗装して、未硬化の第2中塗り塗膜を形成する工程、
工程(4):上記未硬化の第2中塗り塗膜を加熱して硬化させる工程、
工程(5):上記硬化させた第2中塗り塗膜上に水性ベース塗料(X)を塗装して、未硬化のベース塗膜を形成する工程、
工程(6):上記未硬化のベース塗膜上に光輝性顔料分散体(Y)を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する工程、
工程(7):上記未硬化の光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z)を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、
工程(8):上記未硬化のベース塗膜、上記未硬化の光輝性塗膜及び上記未硬化のクリヤー塗膜を加熱して同時に硬化させる工程、を順次行う複層塗膜形成方法であって、
上記水性ベース塗料(X)が、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、シェーピングエア圧が0.15~0.25MPaの範囲内であり、かつ、塗料の塗出量が100~300cm3/分の範囲内である塗装条件で塗装され、
該水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度が、温度23℃及びせん断速度0.1sec-1の条件下で測定して90~160Pa・sの範囲内であり、かつ、塗着60秒後の固形分が、20~40質量%の範囲内であり、かつ、塗着60秒後の膜厚が17~35μmの範囲内であり、
上記光輝性顔料分散体(Y)が、平均厚さが1nm以上70nm未満の鱗片状アルミニウム顔料(A)、平均厚さが70nm~250nmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)、表面調整剤(E)及び水を含有し、かつ固形分含有率が2~9質量%の範囲内であり、
上記光輝性塗膜の硬化後の膜厚が、0.5~2.0μmである、複層塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、仕上がり外観及び光輝性に優れた複層塗膜を得ることができる複層塗膜形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の複層塗膜形成方法は、
工程(1):被塗物上に溶剤系中塗り塗料(V)を塗装して、未硬化の第1中塗り塗膜を形成する工程、
工程(2):上記未硬化の第1中塗り塗膜を加熱して硬化させる工程、
工程(3):上記硬化させた第1中塗り塗膜上に溶剤系中塗り塗料(W)を塗装して、未硬化の第2中塗り塗膜を形成する工程、
工程(4):上記未硬化の第2中塗り塗膜を加熱して硬化させる工程、
工程(5):上記硬化させた第2中塗り塗膜上に水性ベース塗料(X)を塗装して、未硬化のベース塗膜を形成する工程、
工程(6):上記未硬化のベース塗膜上に光輝性顔料分散体(Y)を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する工程、
工程(7):上記未硬化の光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z)を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、
工程(8):上記未硬化のベース塗膜、上記未硬化の光輝性塗膜及び上記未硬化のクリヤー塗膜を加熱して同時に硬化させる工程、を順次行う複層塗膜形成方法であって、
上記水性ベース塗料(X)が、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、シェーピングエア圧が0.15~0.25MPaの範囲内であり、かつ、塗料の塗出量が100~300cm3/分の範囲内である塗装条件で塗装され、
該水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度が、温度23℃及びせん断速度0.1sec-1の条件下で測定して90~160Pa・sの範囲内であり、かつ、塗着60秒後の固形分が、20~40質量%の範囲内であり、かつ、塗着60秒後の膜厚が17~35μmの範囲内であり、
上記光輝性顔料分散体(Y)が、平均厚さが1nm以上70nm未満の鱗片状アルミニウム顔料(A)、平均厚さが70nm~250nmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)、表面調整剤(E)及び水を含有し、かつ固形分含有率が2~9質量%の範囲内であり、
上記光輝性塗膜の硬化後の膜厚が、0.5~2.0μmである、複層塗膜形成方法である。
【0017】
工程(1)
本発明の工程(1)は、被塗物上に溶剤系中塗り塗料(V)を塗装して、未硬化の第1中塗り塗膜を形成する工程である。
【0018】
[被塗物]
本発明における被塗物は、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0019】
上記被塗物の素材は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができる。なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0020】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
【0021】
塗膜が形成された被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。なかでも、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0022】
[溶剤系中塗り塗料(V)]
本明細書において、「溶剤系中塗り塗料(V)」は、塗膜の表面平滑性を確保し、且つ耐衝撃性及び耐チッピング性(小石などの障害物の衝突によって生じる塗膜の損傷に対する耐性)等の塗膜物性を強化するために使用される塗料である。
【0023】
本工程において使用される溶剤系中塗り塗料(V)は、当該分野で慣用されている溶剤系塗料であって、基体樹脂と、硬化剤と、有機溶剤とを含有する溶剤系塗料であることが好ましい。
【0024】
上記の基体樹脂及び硬化剤としては、当該分野で慣用されている公知の化合物を挙げることができる。基体樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0025】
有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素、脂環族炭化水素を含む炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;エタノール、プロパノール、2-エチルヘキシルアルコール等のアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;アミド等の溶剤を挙げることができる。芳香族炭化水素を含む有機溶媒の例としては、スワゾール310、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製)等を挙げることができる。
【0026】
本発明の方法に使用される溶剤系中塗り塗料(V)は、上記の成分に加えて、所望により、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤、顔料等を適宜含有してもよい。
【0027】
上記のごとき構成からなる溶剤系中塗り塗料(V)を塗装することにより、塗装物の表面平滑性、耐衝撃性及び耐チッピング性を向上させることができる。
【0028】
溶剤系中塗り塗料(V)の塗装方法としては、当該分野で慣用されている通常の塗装方法を採用することができる。かかる塗装方法としては、例えば、刷毛又は塗装機を用いる塗装方法を挙げることができる。中でも塗装機を用いる塗装方法が好ましい。該塗装機としては、例えば、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機、塗料カセット式のような回転霧化式静電塗装機が好ましく、回転霧化式静電塗装機が特に好ましい。上記の塗料及び塗装方法を使用することにより、良好な塗装外観を有する未硬化の第1中塗り塗膜を得ることができる。
【0029】
工程(2)
本発明の工程(2)は、上記未硬化の第1中塗り塗膜を加熱して硬化させる工程である。
【0030】
未硬化の第1中塗り塗膜は焼付処理によって硬化させた塗膜とすることができる。焼付処理の温度は通常80~180℃、特に120~160℃の範囲内であることが好ましい。焼付処理の時間は10~60分間であることが好ましい。
【0031】
第1中塗り塗膜の膜厚は、硬化膜厚として10~50μmであることが好ましく、15~40μmの範囲内であることが特に好ましい。
【0032】
工程(3)
本発明の工程(3)は、上記硬化させた第1中塗り塗膜上に、溶剤系中塗り塗料(W)を塗装して未硬化の第2中塗り塗膜を形成する工程である。
【0033】
[溶剤系中塗り塗料(W)]
本明細書において、「溶剤系中塗り塗料(W)」は、塗膜の表面平滑性を確保し、且つ耐衝撃性及び耐チッピング性等の塗膜物性を強化するために使用される塗料である。
【0034】
本工程において使用される溶剤系中塗り塗料(W)は、当該分野で慣用されている溶剤系塗料であって、基体樹脂と、硬化剤と、有機溶剤とを含有する溶剤系塗料であることが好ましい。基体樹脂、硬化剤及び有機溶剤については溶剤系中塗り塗料(V)に関して説明したものを使用することができる。
【0035】
溶剤系中塗り塗料(W)の組成は溶剤系中塗り塗料(V)の組成と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
溶剤系中塗り塗料(W)は、溶剤系中塗り塗料(V)と同様の方法で製造することができる。
【0037】
溶剤系中塗り塗料(W)を塗装することによりさらに、塗装物の表面平滑性、耐衝撃性及び耐チッピング性を向上させることができる。
【0038】
溶剤系中塗り塗料(W)の塗装方法としては、当該分野で慣用されている通常の塗装方法を採用することができる。かかる塗装方法としては、例えば、刷毛又は塗装機を用いる塗装方法を挙げることができる。中でも塗装機を用いる塗装方法が好ましい。該塗装機としては、例えば、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機、塗料カセット式のような回転霧化式静電塗装機が好ましく、回転霧化式静電塗装機が特に好ましい。上記の塗料及び塗装方法を使用することにより、良好な塗装外観を有する未硬化の第2中塗り塗膜を得ることができる。
【0039】
工程(4)
本発明の工程(4)は、上記未硬化の第2中塗り塗膜を加熱して硬化させる工程である。
【0040】
未硬化の第2中塗り塗膜は焼付処理によって硬化させた塗膜とすることができる。焼付処理の温度は通常80~180℃、特に120~160℃の範囲内であることが好ましい。焼付処理の時間は10~60分間であることが好ましい。
【0041】
第2中塗り塗膜の膜厚は、硬化膜厚として10~50μmであることが好ましく、15~40μmの範囲内であることが特に好ましい。
【0042】
工程(5)
本発明の工程(5)は、上記硬化させた第2中塗り塗膜上に水性ベース塗料(X)を塗装して、未硬化のベース塗膜を形成する工程である。
【0043】
[水性ベース塗料(X)]
本明細書において、「水性ベース塗料(X)」は、水性塗料であって、光輝性を付与するとともに、下地となる電着塗膜及び中塗り塗膜を隠蔽し、仕上がり外観を向上するために使用される塗料を意味する。
【0044】
水性ベース塗料(X)としては、基体樹脂と、硬化剤と、水性媒体とを含有する水性塗料を好適に使用することができる。
【0045】
上記基体樹脂及び硬化剤としては、当該分野で慣用されている公知の化合物を挙げることができる。基体樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。基体樹脂は、好ましくはアクリル樹脂、より好ましくは水酸基含有アクリル樹脂を含み、水酸基含有アクリル樹脂は水酸基含有アクリルエマルションの形で提供されるのが好ましい。硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0046】
上記水性媒体としては、水及び/又は少なくとも1種類の親水性有機溶剤を使用することができ、該親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等を使用することができる。
【0047】
本発明の方法に使用される熱硬化性の第1水性ベース塗料は、上記の成分に加えて、所望により、光輝性顔料、着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、消泡剤、粘性調整剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有してもよい。
【0048】
上記光輝性顔料は、塗膜に光輝感を付与することを目的として使用される顔料であって、例えば、アルミニウムフレーク顔料、蒸着アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、マイカ(雲母)、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、雲母状酸化鉄、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆シリカ、酸化鉄被覆アルミナ等を挙げることができる。中でもアルミニウムフレーク顔料が好適である。アルミニウムフレーク顔料及び蒸着アルミニウムフレーク顔料については、光輝性顔料分散体(Y)の鱗片状アルミニウム顔料(A)及び鱗片状アルミニウム顔料(B)に関連してより詳しく説明する。
【0049】
上記光輝性顔料を配合する場合、その配合量は、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.1~30質量部の範囲内であることが好ましく、1~20質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0050】
上記着色顔料は、塗膜に所望の色彩を付与するための顔料であって、例えば、酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック等の黒色顔料;ペリレンマルーン、赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレッド、ジオキサジンバイオレッド等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルー等の青色顔料;フタロシアニングリーン等の緑色顔料等を挙げることができる。
【0051】
上記着色顔料を配合する場合、その配合量は、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.1~30質量部の範囲内であることが好ましく、1~20質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
上記粘性調整剤は、塗料に所望の粘度を付与するための材料であって、例えば、セルロース系粘性調整剤、ポリアミド系粘性調整剤、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤等を使用することができ、中でもポリアクリル酸系粘性調整剤が好適である。
【0053】
上記粘性調整剤を配合する場合、その配合量は、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.1~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.5~5質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0054】
水性ベース塗料(X)は、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、シェーピングエア圧が0.15~0.25MPaの範囲内であり、かつ、塗料の塗出量が100~300cm3/分の範囲内である塗装条件で塗装する。
【0055】
上記条件で塗装することにより、タレなどの不具合を抑制でき、ベース塗膜の肌が良好となり、形成される複層塗膜の仕上がり外観及び光輝性が良好となる。
【0056】
上記条件で塗装した水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度が、温度23℃及びせん断速度0.1sec-1の条件下で測定して90~160Pa・sの範囲内であり、かつ、塗着60秒後の固形分が、20~40質量%の範囲内であり、かつ、塗着60秒後の膜厚が17~35μmの範囲内であることにより、形成される複層塗膜の仕上がり外観及び光輝性が良好となる。
【0057】
本明細書において、上記水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度は、水性ベース塗料(X)を、縦45cm×横30cm×厚さ0.8mmのブリキ板に塗装し、水性ベース塗料(X)がブリキ板に塗着して60秒経過後の塗膜の一部をへらなどで掻きとって採取し、粘弾性測定装置を用いて、温度23℃において、せん断速度を10,000sec-1から0.001sec-1まで変化させたときの0.1sec-1で測定したときの粘度である。粘弾性測定装置としては、例えば、「HAAKE RheoStress RS150」(商品名、HAAKE社製)を用いることができる。水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度は、例えば、水性ベース塗料(X)中の粘性調整剤の配合量及び固形分を調節することによって調整することができる。
【0058】
水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度が、温度23℃及びせん断速度0.1sec-1の条件下で測定して90Pa・s未満であると、形成される複層塗膜の塗膜外観が、肌、タレ及びムラの少なくともいずれかの点で劣る場合がある。水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度が160Pa・sを超えると、形成される複層塗膜の塗膜外観が、肌の点で劣る場合がある。
【0059】
本明細書において、上記水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の固形分は、水性ベース塗料(X)を予め質量(M1)を測定しておいたアルミホイル上に塗装し、水性ベース塗料(X)がアルミホイルに塗着して60秒経過後に該アルミホイルを回収し、質量(M2)を測定し、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(M3)を測定し、以下の式に従って求めた固形分である。
【0060】
固形分(質量%)={(M3-M1)/(M2-M1)}×100
本明細書において、上記塗着60秒後の膜厚は、水性ベース塗料(X)を予め質量を測定しておいたアルミホイル上に塗装し、水性ベース塗料(X)がアルミホイルに塗着して60秒経過後の質量を測定し、下記式により算出することができる。
式:x=sc/sg/S*10000
x:塗着して60秒後の膜厚[μm]
sc:塗着して60秒経過後の質量[g]
sg:塗料比重[g/cm3
S:塗着質量の評価面積[cm2
本発明における「水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の粘度」、「水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の固形分」、及び「塗着60秒後の膜厚」は、本発明の複層塗膜形成方法の工程(5)において、上記に定義した測定方法により水性ベース塗料(X)をブリキ板及びアルミホイル上のそれぞれに塗装して測定することができる。
【0061】
水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の膜厚が17μm未満であると、形成される複層塗膜の塗膜外観が、肌の点で劣る場合がある。水性ベース塗料(X)の塗着60秒後の膜厚が35μmを超えると、形成される複層塗膜の塗膜外観が、肌、タレ及びムラの少なくともいずれかの点で劣る場合がある。
【0062】
水性ベース塗料(X)により得られるベース塗膜の硬化膜厚は、仕上がり外観及び光輝性に優れた複層塗膜を得るなどの観点から、好ましくは4~14μm、さらに好ましくは6~13μmである。
【0063】
水性ベース塗料(X)を塗装することにより得られる未硬化のベース塗膜は、例えば常温で15~30分間放置したり、50~100℃の温度で30秒~10分間加熱せしめた後に光輝性顔料分散体(Y)を塗装することができる。
【0064】
工程(6)
本発明の工程(6)は、上記未硬化のベース塗膜上に光輝性顔料分散体(Y)を塗装して、未硬化の光輝性塗膜を形成する工程である。
【0065】
[光輝性顔料分散体(Y)]
本明細書において、「光輝性顔料分散体(Y)」は、平均厚さが1nm以上70nm未満の鱗片状アルミニウム顔料(A)、平均厚さが70nm~250nmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料(B)、水酸基含有アクリル樹脂(C)、粘性調整剤(D)、表面調整剤(E)及び水を含有し、かつ固形分含有率が2~9質量%の範囲内である水性塗料であって、光輝性を付与するために使用される塗料である。
【0066】
平均厚さが1nm以上70nm未満の鱗片状アルミニウム顔料(A)としては、例えば、蒸着アルミニウムフレーク顔料等を挙げることができる。
【0067】
蒸着アルミニウムフレーク顔料は、ベース基材上にアルミニウム膜を蒸着させ、ベース基材を剥離した後、蒸着アルミニウム膜を粉砕することにより得られる。上記基材としては、例えばフィルム等を挙げることができる。
【0068】
蒸着アルミニウムフレーク顔料は、表面がシリカ処理されていることが、貯蔵安定性、及び金属調光沢に優れた塗膜を得る等の観点から好ましい。
【0069】
上記蒸着アルミニウムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「METALURE」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Hydroshine WS」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Decomet」シリーズ(商品名、シュレンク社製)、「Metasheen」シリーズ(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
【0070】
平均厚さが1nm以上70nm未満の鱗片状アルミニウム顔料(A)の含有量は光輝性顔料分散体(Y)中の固形分100質量部を基準として、15~60質量部であることが好ましく、30~50質量部であることがさらに好ましい。
【0071】
上記平均厚さが70nm~250nmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料(B)としては、例えば、アルミニウムフレーク顔料等を挙げることができる。
【0072】
アルミニウムフレーク顔料は、一般にアルミニウムをボールミル又はアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。該アルミニウムフレーク顔料の製造工程における粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。上記粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0073】
上記アルミニウムフレーク顔料は、粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。本発明の光輝性顔料分散体においては、耐水性に優れ、かつハイライトで高い光沢度を有し、粒子感が小さく緻密な金属調塗膜を形成する観点からノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料としては、表面を特に処理していないものも使用できるが、表面を樹脂で被覆せしめたもの、シリカ処理を施したもの及びリン酸やモリブデン酸、シランカップリング剤で表面を処理したものも使用することができる。以上の各種表面処理の中から一種の処理をせしめたものを使用することができるが、複数種類の処理をせしめたものを使用してもよい。
【0074】
平均厚さが70nm~250nmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料(B)の含有量は光輝性顔料分散体(Y)中の固形分100質量部を基準として、15~60質量部であることが好ましく、30~50質量部であることがさらに好ましい。
【0075】
平均厚さが1nm以上70nm未満の鱗片状アルミニウム顔料(A)と平均厚さが70nm~250nmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料(B)の配合の質量比は、9/1~1/9であることが好ましく、2/8~8/2であることがさらに好ましい。
【0076】
平均厚さが1nm以上70nm未満の鱗片状アルミニウム顔料(A)及び平均厚さが70nm~250nmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料(B)の平均厚さは、該光輝性顔料を含む塗膜断面を顕微鏡にて観察して厚さを画像処理ソフトを使用して測定し、100個以上の測定値の平均値として定義するものとする。
【0077】
上記水酸基含有アクリル樹脂(C)は、例えば、水酸基含有不飽和モノマー及び該モノマーと共重合可能な他の不飽和モノマーを包含する少なくとも1種の不飽和モノマー成分を通常の条件で(共)重合せしめることによって製造することができる。
【0078】
水酸基含有不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0079】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
【0080】
上記水酸基含有不飽和モノマーと共重合可能な他の不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ-トなどのアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートなどのイソボルニル基を有する不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチル基を有する不飽和モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィンなどのフッ素化アルキル基を有する不飽和モノマー;マレイミド基などの光重合性官能基を有する不飽和モノマー;N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物などの含窒素不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩などのスルホン酸基を有する不飽和モノマー;2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどのリン酸基を有する不飽和モノマー;2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性基を有する不飽和モノマー;4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどの紫外線安定化性能を有する不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)などのカルボニル基を有する不飽和モノマー化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0081】
水酸基含有アクリル樹脂(C)の含有量は光輝性顔料分散体(Y)中の固形分100質量部を基準として、10~40質量部であることが好ましく、15~35質量部であることがさらに好ましい。
【0082】
上記粘性調整剤(D)は、例えば、セルロース系粘性調整剤、ポリアミド系粘性調整剤、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤等を使用することができ、中でもセルロース系粘性調整剤を使用することが好ましい。
【0083】
上記セルロース系粘性調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタル等を挙げることができ、なかでも、セルロースナノファイバーを使用することが好ましい。
【0084】
上記セルロースナノファイバーは、数平均繊維径が、好ましくは2~500nm、より好ましくは2~250nm、さらに好ましくは2~150nmの範囲内であり、数平均繊維長が、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.1~15μm、さらに好ましくは0.1~10μmの範囲内である。
【0085】
上記数平均繊維径及び数平均繊維長は、例えば、セルロースナノファイバーを水で希釈した試料を分散処理し、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像から測定算出される。
【0086】
上記セルロースナノファイバーは、セルロース原料を解繊し、水中で安定化させたものを使用することができる。ここでセルロース原料は、セルロースを主体とした様々な形態の材料を意味し、具体的には例えば、パルプ(木材パルプ、ジュート、マニラ麻、ケナフなどの草本由来のパルプなど);微生物によって生産されるセルロースなどの天然セルロース;セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体などの何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース;及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミルなどの機械的処理などをすることによってセルロースを解重合した微細セルロース;などが挙げられる。
【0087】
上記セルロースナノファイバーとしては、アニオン変性セルロースナノファイバーを使用することもできる。アニオン変性セルロースナノファイバーとしては、例えば、カルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシルメチル化セルロースナノファイバー、スルホン酸基含有セルロースナノファイバー、リン酸基含有セルロースナノファイバーなどが挙げられる。上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、例えば、セルロース原料に、カルボキシル基、カルボキシルメチル基などの官能基を公知の方法により導入し、得られた変性セルロースを洗浄して変性セルロースの分散液を調製し、この分散液を解繊して得ることができる。上記カルボキシル化セルロースは酸化セルロースとも呼ばれる。
【0088】
上記酸化セルロースは、例えば、上記セルロース原料を、N-オキシル化合物、臭化物、及びヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することによって得ることができる。
【0089】
上記セルロースナノファイバーの市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のレオクリスタ(登録商標)、王子ホールディングス株式会社製のアウロ・ヴィスコ(登録商標)などが挙げられる。
【0090】
粘性調整剤(D)の含有量は光輝性顔料分散体(Y)中の固形分100質量部を基準として、10~40質量部であることが好ましく、15~35質量部であることがさらに好ましい。
【0091】
上記表面調整剤(E)としては、例えばシリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレンジオール系表面調整剤などの表面調整剤が挙げることができ、なかでも、アセチレンジオール系表面調整剤が好ましい。
【0092】
表面調整剤(E)の市販品は例えば、エボニックインダストリーズ社製のDynolシリーズ、サーフィノールシリーズ、Tegoシリーズ、ビックケミー社製のBYKシリーズ、共栄社化学社製のグラノールシリーズ、ポリフローシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズなどが挙げられる。
【0093】
表面調整剤(E)の含有量は光輝性顔料分散体(Y)中の固形分100質量部を基準として、5~25質量部であることが好ましく、10~20質量部であることがさらに好ましい。
【0094】
光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率が2~9質量%の範囲内にある。固形分含有率が2~9質量%の範囲内であることにより、光輝性に優れた複層塗膜を得ることができる。
【0095】
光輝性顔料分散体(Y)は、さらに必要に応じて、水酸基含有アクリル樹脂(C)以外の樹脂、着色顔料、体質顔料、有機溶剤、顔料分散剤、顔料誘導体、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを適宜含有しても良い。
【0096】
光輝性顔料分散体(Y)の塗装方法としては、当該分野で慣用されている通常の塗装方法を採用することができる。かかる塗装方法としては、例えば、刷毛又は塗装機を用いる塗装方法を挙げることができる。中でも塗装機を用いる塗装方法が好ましい。該塗装機としては、例えば、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機、塗料カセット式のような回転霧化式静電塗装機が好ましく、回転霧化式静電塗装機が特に好ましい。上記の塗料及び塗装方法を使用することにより、良好な塗装外観を有する未硬化の光輝性塗膜を得ることができる。
【0097】
光輝性顔料分散体(Y)により得られる光輝性塗膜の硬化膜厚は、0.5~2.0μmである。光輝性塗膜の硬化膜厚が、0.5~2.0μmであることにより、光輝性に優れた複層塗膜を得ることができる。
【0098】
光輝性顔料分散体(Y)を塗装することにより得られる未硬化の光輝性塗膜は、常温で15~30分間放置したり、50~100℃の温度で30秒~10分間加熱せしめた後にクリヤー塗料(Z)を塗装することができる。
【0099】
工程(7)
本発明の工程(7)は、上記未硬化の光輝性塗膜上にクリヤー塗料(Z)を塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程である。
【0100】
[クリヤー塗料(Z)]
本明細書において、「クリヤー塗料(Z)」は、ベース塗膜及び光輝性塗膜を保護するために使用される透明な塗料である。
【0101】
本工程において使用されるクリヤー塗料(Z)は、当該分野で慣用されている塗料であって、基体樹脂と、硬化剤と、水又は有機溶剤からなる媒体とを含有する塗料であることが好ましい。ここで上記の基体樹脂及び硬化剤としては、当該分野で慣用されている公知の化合物を使用することができる。基体樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂等を挙げることができる。硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を使用することができる。
【0102】
有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素、脂環族炭化水素を含む炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;エタノール、プロパノール、2-エチルヘキシルアルコール等のアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;アミド等の溶剤を挙げることができる。芳香族炭化水素を含む有機溶媒の例としては、スワゾール310、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製)等を挙げることができる。
【0103】
本発明の方法に使用されるクリヤー塗料(Z)は、上記の成分に加えて、所望により、着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有してもよい。
【0104】
上記の如き構成からなるクリヤー塗料(Z)を塗装することによりベース塗膜及び光輝性塗膜の保護に十分な乾燥膜厚を有し、且つ表面平滑性に優れたクリヤー塗膜塗膜を得ることができる。
【0105】
クリヤー塗料(Z)の塗装方法としては、当該分野で慣用されている通常の塗装方法を採用することができる。かかる塗装方法としては、例えば、刷毛又は塗装機を用いる塗装方法を挙げることができる。中でも塗装機を用いる塗装方法が好ましい。該塗装機としては、例えば、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機、塗料カセット式のような回転霧化式静電塗装機が好ましく、回転霧化式静電塗装機が特に好ましい。上記の塗料及び塗装方法を使用することにより、良好な塗装外観を有する未硬化のクリヤー塗膜を得ることができる。
【0106】
クリヤー塗料(Z)により得られるクリヤー塗膜の硬化膜厚は、仕上がり外観及び光輝性に優れた複層塗膜を得るなどの観点から、好ましくは15~60μm、特に好ましくは25~45μmである。
【0107】
工程(8)
本発明の工程(8)は、上記未硬化のベース塗膜、上記未硬化の光輝性塗膜及び上記未硬化のクリヤー塗膜を加熱して同時に硬化させる工程である。
【0108】
上記加熱は、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などであることができ、加熱温度は、80~160℃が好ましく、100~140℃がより好ましい。加熱時間は、10~60分間が好ましく、15~40分間がより好ましい。
【実施例
【0109】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、これら製造例、実施例及び比較例は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するためのものではない。製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【0110】
水酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水128部、「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0111】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量、及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を、反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて反応容器内に滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%の水酸基含有アクリル樹脂エマルション(R-1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂エマルション(R-1)は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0112】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR-1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部、及びn-ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0113】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR-1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部、及びn-ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0114】
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート29部、2-ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を、4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(R-2)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂溶液(R-2)は、酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/g、重量平均分子量が58,000であった。
【0115】
製造例3
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25.0部、n-ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20.0部、4-ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15.0部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10.0部、t-ブチルパーオキシオクタノエート4.0部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt-ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20.0部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間撹拌熟成して固形分50%の水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂溶液(R-3)を得た。得られた水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂溶液(R-3)は酸価が83mgKOH/g、水酸基価が29mgKOH/g、重量平均分子量が10,000であった。
【0116】
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41.0部を入れ、90℃まで昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間撹拌熟成した。その後、イソプロパノ-ル59.0部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
【0117】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6-ヘキサンジオール141部、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部、及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃迄3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2-エチル-1-ヘキサノールで希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(R-4)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂(R-4)は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。
【0118】
ブロックポリイソシアネート化合物の製造
製造例5
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN-3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、スミジュールは登録商標、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)360部、「ユニオックスM-550」(商品名、日油社製、ユニオックスは登録商標、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約550)60部及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃にて3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル252部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.12モル/kgであった。これに4-メチル-2-ペンタノール683部を加え、系の温度を80~85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物(R-5)1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが95部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物(R-5)の固形分濃度は60%であった。
【0119】
着色顔料分散液の製造
製造例6
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(R-2)5.5部(樹脂固形分3部)、「カーボンMA-100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック顔料)0.2部、及び脱イオン水20部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.2に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して着色顔料分散液(P-1)を得た。
【0120】
体質顔料分散液の製造
製造例7
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(R-2)5.5部(樹脂固形分3部)、「バリファインBF-20」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム顔料)10部、「サーフィノール104A」(商品名、エアープロダクツ社製、消泡剤、固形分50%)0.6部(固形分0.3部)、及び脱イオン水20部を混合し、ペイントシェーカーで1時間分散して体質顔料分散液(P-2)を得た。
【0121】
光輝性顔料分散液の製造
製造例8
撹拌混合容器内において、「アルペースト TCR2060」(商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、アルミニウム含有量75%)8部(固形分6部)、2-エチル-1-ヘキサノール35.0部並びに製造例3で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂溶液(R-3)8部(固形分4部)を均一に混合して、光輝性顔料分散液(P-3)を得た。
【0122】
水性ベース塗料(X)の製造
製造例9
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂エマルション(R-1)116.7部(固形分35部)、製造例4で得たポリエステル樹脂溶液(R-4)35.7部(固形分25部)、製造例5で得たブロックポリイソシアネート化合物(R-5)25部(固形分15部)、製造例6で得た着色顔料分散液(P-1)23.8部、製造例7で得た体質顔料分散液(P-2)34.2部、製造例8で得た光輝性顔料分散液(P-3)19部、メラミン樹脂(重量平均分子量1,200、固形分70%)21.4部(固形分15部)及び「プライマル ASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、増粘剤、固形分28%)5.4部(固形分1.5部)を均一に混合し、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノール、及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分が23%、温度23℃で測定した塗料粘度「B6値」が4500mPa・sの水性ベース塗料(X-1)を得た。B6値はB型粘度計で測定するローター回転速度6rpmで1分後の粘度であり、B型粘度計として「デジタル式ビスメトロン粘度計VDA型」(芝浦システム社製)を使用した。
【0123】
製造例10~14
製造例9において、配合組成、塗料固形分及び粘度を後記の表1に示すものとする以外は、製造例9と同様にして、pH8.0の水性ベース塗料(X-2)~(X-6)を得た。なお表1に示す配合組成は、固形分質量による。
【0124】
【表1】
【0125】
光輝性顔料分散体(Y)の製造
製造例15
攪拌混合容器に、アセチレンジオール系表面調整剤(固形分0.3部)、「Hydroshine WS-3001」(商品名、水性用蒸着アルミニウムフレーク顔料、Eckart社製、平均粒子径D50:13μm、平均厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)(固形分1.2部)、「アルペースト EMR-B6360」(商品名、ノンリーフィングアルミニウムフレーク、東洋アルミ社製、平均粒子径D50:10.3μm、平均厚さ:0.19μm、表面がシリカ処理されている)(固形分0.4部)、リン酸基含有セルロースナノファイバー水分散液(数平均繊維径4nm、リン酸基導入量が1.50mmol/g)(固形分0.5部)、製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂エマルション(R-1)(固形分0.6部)、トリアジン系紫外線吸収剤(固形分0.1部)、ヒンダードアミン系光安定剤(固形分0.1部)、製造例5で得た着色顔料分散液(P-1)(固形分0.1部)を添加して撹拌混合した。次いで、水/イソプロピルアルコールの混合液(水/イソプロピルアルコール=6/1)を添加し、固形分3.3%の光輝性顔料分散体(Y-1)を調整した。塗料粘度「B6値」は2300mPa・sであった。
【0126】
溶剤系中塗り塗料(V)の調整
溶剤系中塗り塗料(V-1):「TP-90 No.8101 グレー」(商品名、関西ペイント社製、水酸基/メラミン及びブロックイソシアネート基硬化型1液型有機溶剤型塗料)を、溶剤系中塗り塗料(V-1)として用いた。
【0127】
溶剤系中塗り塗料(W)の調整
溶剤系中塗り塗料(W-1):「TP-58 No.1C0 カラーベース」(商品名、関西ペイント社製、水酸基/メラミン硬化型1液型有機溶剤型塗料)を、溶剤系中塗り塗料(W-1)として用いた。
【0128】
クリヤー塗料(Z)の調整
クリヤー塗料(Z-1):「KINO6510」(商品名、関西ペイント株式会社製、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を、クリヤー塗料(Z-1)として用いた。
【0129】
試験用被塗装物の作製
リン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、「エレクロンGT-10」(商品名、関西ペイント社製、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させて、試験用被塗装物とした。
【0130】
(試験用塗装板の作製)
実施例1
上記試験用被塗装物に、溶剤系中塗り塗料(V-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚40μmとなるように静電塗装して第1中塗り塗膜を形成し、7分間放置後、140℃で30分間加熱して、第1中塗り塗膜を硬化させた。
【0131】
次いで、第1中塗り塗膜上に、溶剤系中塗り塗料(W-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装して第2中塗り塗膜を形成し、7分間放置後、140℃で30分間加熱して、第2中塗り塗膜を硬化させた。
【0132】
次いで、上記第2中塗り塗膜上に、製造例9で得た水性ベース塗料(X-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、吐出量200cm3/分、シェ-ピングエア圧0.2MPaで、乾燥膜厚9μmとなるように塗装し、90秒間放置して、未硬化のベース塗膜を形成した。ここで、後述するように、粘度測定用のブリキ板、固形分測定用のアルミホイル及び膜厚測定用のアルミホイルの上にも製造例9で得た水性ベース塗料(X-1)を同じ塗装条件で塗装し、それぞれ後記の粘度、固形分及び膜厚の測定を行った。
【0133】
次いで、未硬化のベース塗膜上に、製造例15で得た光輝性顔料分散体(Y-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜の膜厚が1.0μmとなるように塗装した。3分間放置し、その後、80℃にて3分間プレヒートし、光輝性塗膜を形成した。
【0134】
次いで、該未硬化の光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜の膜厚が35μmとなるように塗装しクリヤ塗膜を形成した。塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
【0135】
実施例2~6、比較例1~4
表2に記載の塗料、吐出量、シェーピングエアー圧及び乾燥膜厚とする以外は全て実施例1と同様にして試験板を得た。
【0136】
(塗着60秒後の塗料状態)
粘度
縦45cm×横30cm×厚さ0.8mmのブリキ板に、水性ベース塗料(X-1)~(X-6)を表2に記載の吐出量、シェーピングエアー圧及び膜厚となるように塗装し、水性ベース塗料がブリキ板に塗着して60秒経過後の塗膜の一部をへらなどで掻きとって採取し、「HAAKE RheoStress RS150」(商品名、HAAKE社製)を用いて、温度23℃において、せん断速度を10,000sec-1から0.001sec-1まで変化させたときの0.1sec-1の粘度を測定した。
【0137】
固形分
予め質量(M1)を測定しておいたアルミホイル上に、水性ベース塗料(X-1)~(X-6)の各々を表2に記載の吐出量、シェーピングエアー圧及び膜厚となるように塗装し、水性ベース塗料(X-1)~(X-6)がアルミホイルに塗着して60秒経過後に該アルミホイルを回収し、質量(M2)を測定した。次いで、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(M3)を測定し、以下の式に従って固形分を求めた。
固形分(質量%)={(M3-M1)/(M2-M1)}×100
【0138】
膜厚
予め質量を測定しておいたアルミホイル上に、水性ベース塗料(X-1)~(X-6)の各々を塗装し、水性ベース塗料がアルミホイルに塗着して60秒経過後の重量を測定し、下記式より算出した。
式:x=sc/sg/S*10000
x:塗着して60秒経過後の膜厚[μm]
sc:塗着して60秒経過後の質量[g]
sg:塗料比重[g/cm3
S:塗着質量の評価面積[cm2
【0139】
(塗膜評価)
上記のようにして得られた各試験板を下記の項目について評価し、表2にその結果を示した。
【0140】
60°鏡面光沢度(60°グロス)
上記で得られた試験板について、光沢計(micro-TRI-gloss、BYKGardner社製)を用いて60°グロス値を測定した。値が高い方が良好である。
【0141】
仕上がり外観(肌)
各試験板を肉眼で観察し、肌の程度を下記基準で評価した。
【0142】
合格:肌が良好であり、優れた塗膜外観を有する、
不合格:肌が悪く、塗膜外観が劣る。
【0143】
仕上がり外観(タレ)
各試験板を肉眼で観察し、タレの発生程度を下記基準で評価した。
【0144】
合格:タレが認められず、優れた塗膜外観を有する、
不合格:タレが認められ、塗膜外観が劣る。
【0145】
仕上がり外観(ムラ)
各試験板を肉眼で観察し、ムラの発生程度を下記基準で評価した。
【0146】
合格:ムラが認められず、優れた塗膜外観を有する、
不合格:ムラが認められ、塗膜外観が劣る。
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】