(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】水車発電機の軸受構造
(51)【国際特許分類】
F03B 11/06 20060101AFI20220927BHJP
F03B 3/02 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
F03B11/06
F03B3/02
(21)【出願番号】P 2020212571
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】作野 真也
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085090(JP,A)
【文献】米国特許第04445592(US,A)
【文献】国際公開第2016/059852(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 11/06
F03B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車発電機のための軸受構造であって、
前記水車発電機の回転軸を支持する第1の軸受および第2の軸受と、
前記第1の軸受内に設けられ、前記第1の軸受の冷却のために供された冷却材を、前記第1の軸受内から外部へ移送する移送部と、
前記移送部によって移送された
すべての冷却材
の移送先であり、前記冷却材を冷却する冷却部とを備え、
前記冷却部によって冷却された冷却材は、前記第1の軸受および前記第2の軸受の冷却のために、前記第1の軸受と前記第2の軸受との両方に供給され、
前記第2の軸受の冷却のために供された冷却材は、前記第1の軸受へ移送され、前記第1の軸受の冷却のために供された冷却材と合流され、
前記第1の軸受は、水車側軸受であり、前記第2の軸受は、反水車側軸受である、軸受構造。
【請求項2】
前記第1の軸受および前記第2の軸受はそれぞれ、前記冷却のために供された冷却材を貯液するための貯槽を備えており、前記第2の軸受の貯槽における前記冷却材の液位を、前記第1の軸受の貯槽における前記冷却材の液位よりも高くすることによって、前記第2の軸受の貯槽から前記第1の軸受の貯槽へと前記冷却材を重力によって移送することを可能とした、請求項1に記載の軸受構造。
【請求項3】
前記第2の軸受の貯槽における前記冷却材の液位を、前記第1の軸受の貯槽における前記冷却材の液位よりも高く維持する液位維持部を備えた、請求項2に記載の軸受構造。
【請求項4】
前記冷却部によって冷却された前記冷却材の一部は、前記移送部の駆動力によって、前記第2の軸受内へ移送される、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の軸受構造。
【請求項5】
前記冷却材は、前記回転軸の回転のための潤滑油である、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の軸受構造。
【請求項6】
前記第1の軸受は、スラスト軸受を備え、
前記スラスト軸受を支えるスラスト軸受支台に、前記スラスト軸受を冷却した前記冷却材を、前記スラスト軸受の内周側へ導く導通穴を設け、
前記スラスト軸受を冷却した前記冷却材が、前記導通穴を通って、一部が、前記スラスト軸受の内周側へ導かれ、前記スラスト軸受の内周側を通った後に、前記スラスト軸受の冷却のために再循環される、請求項1に記載の軸受構造。
【請求項7】
前記冷却部によって冷却された前記冷却材を、前記第1の軸受へ導く第1の配管と、前記第2の軸受へ導く第2の配管とを備え、
前記再循環によって、
前記スラスト軸受の外周側を圧力源として前記内周側を加圧することにより、前記第1の配管内の圧力を、前記第2の配管内の圧力よりも高くする、請求項6に記載の軸受構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水車発電機の軸受構造に関し、特に、大型化および高速化された水車発電機の軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力供給において、地球温暖化防止の観点から、太陽光、風力、水力といった自然エネルギー発電やバイオマス発電といった再生可能エネルギーが注目され、導入促進が図られている。その1つである水力発電所の設置も、以前に増して盛んに行われている。
【0003】
水力発電は水の流れにより水車を回し、その動力で発電機を回転させる水車発電機で電力を得る。
【0004】
水車発電機は水車の構造により、発電機軸が鉛直方向に設置される縦軸型と、発電機軸が水平方向に設置される横軸形とに大別される。
【0005】
図6は、従来の横軸形水車発電機の構成例を示す側断面図である。
【0006】
図6に例示する横軸形水車発電機10には、回転軸12に重量物として、水車14の羽根車16、発電機18の回転子20および励磁機22の回転子24、電磁ブレーキ26のブレーキリング28等が取り付けられており、回転軸12は、2基の軸受30、50で支持されている。
【0007】
2基の軸受30、50のうち、水車14と発電機18との間に配置された方を水車側軸受30、発電機18とブレーキリング28との間に配置された方を反水車側軸受50と称する。
【0008】
軸受30、50の内部にはそれぞれ、回転軸12の直径方向の荷重(以下、「ラジアル荷重」とも称する)を受けるジャーナル軸受が内蔵されている。
【0009】
軸受30、50はまた、軸受潤滑のための潤滑油を貯液する貯槽を備えている。軸受30はさらに、潤滑油を冷却するためのオイルクーラ34も備えている。
【0010】
図6に例示される水車14は、フランシス水車と呼ばれる最も一般的な水車であり、水を取り込むケーシングの中に羽根車16を設置し、放流管80に向かって流れる水の圧力により羽根車16を回転させて動力を得る。
【0011】
この種のフランシス水車に代表される反動水車は構造上、水圧によって発電機18の軸方向に、大きな力であるスラストカTが発生する。回転軸12の軸方向の移動を制限するため、スラストカTにより発生する軸方向の荷重(以下、「スラスト荷重」とも称する)を支持するスラスト軸受が必要となる。
【0012】
横軸形水車発電機10全体のコンパクト化のために、スラスト軸受はジャーナル軸受と同じ軸受、すなわち、水車側軸受30に配置されるのが一般的である。
【0013】
図7Aは、従来の水車側軸受の構成例を示す側断面図である。
【0014】
【0015】
水車側軸受30では、運転時、貯槽32内の潤滑油を、ポンプで圧送して、スラスト軸受31へ給油する必要がある。
【0016】
スラスト軸受31は、貯槽32の液位Lよりも高い位置にあるので、スラスト軸受31に潤滑油を充満させるために、粘性ポンプ33によって、潤滑油を持ち上げる。粘性ポンプ33の回転部となるスラストカラー33aの周囲には、スラストカラー33aと対面して溝部を形成する粘性ポンプ固定部33bと称される部材が配置され、スラストカラー33aの下端は、貯槽32内の潤滑油に浸かっている。
【0017】
図7Bに示すように、スラストカラー33aが回転することで、潤滑油の粘性により、前述の溝部、すなわち、粘性ポンプ固定部33bを潤滑油が上昇する粘性ポンプ33を実現している。
【0018】
図8Aは、水車側軸受における潤滑油の圧送経路を示す概念図である。
【0019】
水車側軸受30内の貯槽32の潤滑油は、回転軸12の回転により、
図7Bに示すように、粘性ポンプ吸込口33cから取り込まれ、粘性ポンプ33の作用で、粘性ポンプ吐出口33dへ圧送され、
図8Aに示すように、水車側軸受30の外部に設けられた、例えばオイルクーラのような熱交換器46に送られる。
【0020】
熱交換器46において潤滑油は、電動送風機47によって冷却された後に、水車側軸受30へ戻され、
図7Aに示すように、スラスト軸受31の中間にある軸受給油口35から、ホルダー41内部の給油路を通って、スラスト軸受31およびジャーナル軸受36に圧送給油される。
【0021】
潤滑油は、その後、スラスト軸受31を潤滑し、摩擦熱によって加熱された後に、スラスト軸受31、ジャーナル軸受36の最頂部より高い位置に設けられた排油口37から、貯槽32に排出される。
【0022】
また、ジャーナル軸受36を潤滑し、摩擦熱によって加熱された潤滑油は、定常運転時はオイルディスク給油穴38を通り、オイルディスク給油口39から排出される。
【0023】
また、オイルディスク給油口39は、運転初期に粘性ポンプ33による圧送によりジャーナル軸受36に給油されるまでの間、オイルディスク40でかきあげた潤滑油を、ジャーナル軸受36に給油する初期潤滑用の給油口になっている。
【0024】
ホルダー41は、スラスト軸受31、ジャーナル軸受36、粘性ポンプ回転部33aを保持し、潤滑油経路を形成する。ホルダー41は、貯槽32およびカバー42内に固定された支持体(図示せず)によって上下から挟まれることによって支持される。支持体とホルダー41との当たり面は、球面加工されており、運転中の軸の変位に追従できるようになっている。
【0025】
水車側軸受30のジャーナル軸受36には、粘性ポンプ33により潤滑油が供給されるまでの初期潤滑のためにオイルディスク40が設けられており、オイルディスク40が回転することによって、貯槽32の潤滑油を、ジャーナル軸受36まで上げる。
【0026】
図8Bは、反水車側軸受における潤滑油の圧送経路を示す概念図である。
【0027】
反水車側軸受50には、
図8Bに示すように、スラスト軸受はなく、ジャーナル軸受56のみが内蔵されている。このように、反水車側軸受50が内蔵しているのはジャーナル軸受56だけなので、一般的な貯槽52表面だけで十分に冷却できる。しかし、反水車側軸受50では、回転軸12の軸周速が早く、軸受荷重の大きいものは摩擦による発熱が大きく、貯槽52表面だけでは十分に放熱できない。そこで、貯槽52内の潤滑油を、反水車側軸受50の外部に設けられた、例えばオイルクーラのような熱交換器76へ圧送し、例えば電動送風機77によって冷却した後、再度、反水車側軸受50に給油する必要がある。
【0028】
そこで、反水車側軸受50にも同様に粘性ポンプ53を搭載して、潤滑油を貯槽52→熱交換器76→ジャーナル軸受56→貯槽52へと循環させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかしながら、上述した従来の軸受構造の場合、水車発電機の高速化および大型化に伴い以下の2つの問題がある。
【0031】
第1の問題は、水車側軸受30と反水車側軸受50とがそれぞれ、熱交換器46、76を備えているので、設置面積の増加を招くことである。
【0032】
第2の問題は、水車側軸受30と反水車側軸受50とがそれぞれ、粘性ポンプ33、53を有しているので、それぞれの粘性ポンプ33、53を駆動する為の軸動力が必要となり、電気に変換される軸動力が減るので、発電効率の低減を招くことである。
【0033】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、水車発電機の高速化および大型化がなされた場合であっても、設置面積の増加を抑え、かつ、発電効率の低下も招くことのない軸受構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
実施形態の軸受構造は、水車発電機の回転軸を支持する第1の軸受および第2の軸受と、第1の軸受内に設けられ、第1の軸受の冷却のために供された冷却材を、第1の軸受内から外部へ移送する移送部と、移送部によって移送されたすべての冷却材の移送先であり、冷却材を冷却する冷却部とを備え、冷却部によって冷却された冷却材は、第1の軸受および第2の軸受の冷却のために、第1の軸受と第2の軸受との両方に供給され、第2の軸受の冷却のために供された冷却材は、第1の軸受へ移送され、第1の軸受の冷却のために供された冷却材と合流され、第1の軸受は、水車側軸受であり、第2の軸受は、反水車側軸受である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の水車発電機の軸受構造の構成例を説明するための潤滑油経路図である。
【
図2】
図2は、水車側軸受内のホルダーへの潤滑油の入出経路の一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、本実施形態におけるスラスト軸受の構成例を示す正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による水車側軸受内のホルダーへの潤滑油の入出経路を示す図である。
【
図5】
図5は、オイルボックスの構成例を示す概念図である。
【
図6】
図6は、従来の横軸形水車発電機の構成例を示す側断面図である。
【
図7A】
図7Aは、従来の水車側軸受の構成例を示す側断面図である。
【
図8A】
図8Aは、水車側軸受における潤滑油の圧送経路を示す概念図である。
【
図8B】
図8Bは、反水車側軸受における潤滑油の圧送経路を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の実施形態の水車発電機の軸受構造を、図面を参照して説明する。
【0037】
なお、以下の実施形態の説明において、既に説明した部分と同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避ける。
【0038】
図1は、本発明の実施形態の水車発電機の軸受構造の構成例を説明するための潤滑油経路図である。
【0039】
すなわち、本発明の実施形態の横軸形水車発電機のための軸受構造は、横軸形水車発電機の回転軸12を支持する第1の軸受(以降、「水車側軸受」と称する)30および第2の軸受(以降、「反水車側軸受」と称する)50を備えている。
【0040】
水車側軸受30は、水車側軸受30においてスラスト軸受31とジャーナル軸受36との冷却のために供された潤滑油を貯えるための貯槽32と、貯槽32に貯液された潤滑油を、水車側軸受30内から外部へ圧送する移送部である粘性ポンプ33とを内部に備えている。
【0041】
水車側軸受30の外部には、粘性ポンプ33によって移送された潤滑油を冷却する冷却部であるオイルクーラ34を備えている。オイルクーラ34は、熱交換器46および電動送風機47を備えている。熱交換器46には、粘性ポンプ33によって、潤滑油が移送される。熱交換器46へ移送された潤滑油は、電動送風機47からの冷却用空気によって空冷される。
【0042】
このようにして熱交換器46において冷却された潤滑油は、熱交換器46からの戻り配管H0上に設けられた分岐部Cによって分岐されることによって、水車側軸受30と反水車側軸受50との両方に供給される。すなわち、熱交換器46において冷却された潤滑油は、粘性ポンプ33の駆動力によって、一部は、分岐部Cから配管H2を介して、反水車側軸受50内へ移送され、残りは、分岐部Cから配管H1を介して、水車側軸受30内へ移送される。
【0043】
これによって、潤滑油は、反水車側軸受50では、ジャーナル軸受56の冷却のために供される。また、水車側軸受30では、スラスト軸受31およびジャーナル軸受36の冷却のために供される。
【0044】
反水車側軸受50は、ジャーナル軸受56の冷却のために供された潤滑油を貯えるための貯槽52を内部に備えている。
【0045】
本発明の実施形態の水車発電機の軸受構造はさらに、水車側軸受30内の粘性ポンプ33を用いて、熱交換器46へ圧送した潤滑油を、分岐部Cから配管H2を介して、反水車側軸受50に良好に供給できるように、以下のような工夫を講じている。
【0046】
図2は、水車側軸受内のホルダーへの潤滑油の入出経路の一例を示す図である。
【0047】
図3Aは、スラスト軸受の構成例を示す正面図である。
【0048】
【0049】
【0050】
スラスト軸受31を冷却した潤滑油は、スラスト軸受31の外周部から排油される。このとき、潤滑油は、回転軸12の旋回により周方向に仕事を加えられ、遠心力により、スラスト軸受31の内周から外周部へ押し出される。この効果により、スラスト軸受31の内径側(「内周側」とも称する)は負圧になる。
【0051】
したがって、反水車側軸受50への配管H2の内部圧力P4よりも、スラスト軸受31の内径側の圧力P3の方が低くなり(P3<P4)、反水車側軸受50に潤滑油を移送できない状態になる。
【0052】
この効果は、スラストカラー33aの周速が高くなるに伴い大きくなる。
【0053】
これを防ぐために、
図3Aおよび
図3Bに示すように、スラスト軸受31を支えるためにスラスト軸受31間に設けられたスラスト軸受支台44の外周側に、スラスト軸受31を冷却した潤滑油を、スラスト軸受の内周側に導く、すなわち、摺動面の反対側に潤滑油を逃がすための通油穴48を設ける。
【0054】
通油穴48を通過した潤滑油は、
図3Cに示すように、一方はスラスト軸受31の外部へ、もう一方はスラスト軸受31の内周側に送られ、スラスト軸受31の冷却のために再循環される。
【0055】
図4は、本発明の実施形態による水車側軸受内のホルダーへの潤滑油の入出経路を示す図である。
【0056】
回転部であるスラストカラー33aの旋回により周方向に仕事を加えられた潤滑油は、外周部でホルダー41と衝突し静圧が上がる。これにより、潤滑油は、
図4に示すように、スラスト軸受支台44の通油穴48から裏側に通過する。スラスト軸受支台44の裏側の溝に抜けた潤滑油の一部は、ホルダー41外に排出され、一部はスラスト軸受31の内周部に送られる。これによって、
図2を用いて説明したようなスラスト軸受内周部が負圧となる現象(P
3<P
4)を防ぎ、P
3>P
4を実現することができる。したがって、熱交換器46からの潤滑油の一部は、配管H
2を介して反水車側軸受50に確実に圧送される。
【0057】
また、各スラスト軸受31間の通油穴48により、各スラスト軸受31間を通過する油量が均一になるので、各スラスト軸受31への冷却効果は均一となる。
【0058】
貯槽52と貯槽32との間には、オイルボックス60が設けられている。
【0059】
図5は、オイルボックスの構成例を示す概念図である。
【0060】
オイルボックス60は、貯槽52の下部側に接続された配管H4と、貯槽32に接続された配管H5とによって形成された堰61を備えており、貯槽52と貯槽32とを縁切りしている。
【0061】
さらに、堰61によって、貯槽52における潤滑油の液位L1を、貯槽32における潤滑油の液位L2よりも十分高く維持している。すなわち、オイルボックス60は、貯槽52における潤滑油の液位L1が、貯槽32における潤滑油の液位L2よりも十分高くなるように維持する液位維持部である。
【0062】
このような構成により、貯槽52から貯槽32へ潤滑油を重力によって移送することが可能となり、貯槽52から配管H4を介してオイルボックス60に到達した潤滑油は、堰61を越流した後、逆流することなく、配管H5を経由して貯槽32へ移送される。これによって、貯槽52からの潤滑油は、スラスト軸受31およびジャーナル軸受36の冷却のために供された潤滑油と、貯槽32において合流する。
【0063】
このようなオイルボックス60の構成によって、配管H5下側は液相(油相)となり、H5上側は気相(空気)となる。堰61の最上部の高さを、貯槽52の液位L1と同じとすることにより、配管H5の液位を、貯槽32の液位L2と同じとすることができる。
【0064】
ところで、
図1に示すように、水車側軸受30への配管H
1に比べ、反水車側軸受50への配管H
2は長い。このため、配管H
2内では、静止時に蓄積する空気の容積も大きい。この配管H
2内の空気は、運転開始初期、潤滑油とともに反水車側軸受50に押し出される。この空気は気泡Gとなって、貯槽52の表面に蓄積する。
【0065】
運転開始初期に生じる気泡Gは、潤滑油とともに、貯槽52内に落下する。これによって、気泡Gは貯槽52の上側に蓄積し、いずれ消失する。これによって、貯槽52の下部の、気泡Gの無い潤滑油だけが、配管H4を介してオイルボックス60に流れ込み、堰61を越流した後に、貯槽32に流れ込む。これにより、反水車側軸受50で生じた気泡Gは貯槽32に入ることはない。
【0066】
万が一、気泡Gが貯槽32に入ってしまい、粘性ポンプ33に吸い込まれると、気泡Gは細かくなり消失しにくくなり、結果的に、粘性ポンプ33の吐出量を低下させてしまうが、本実施形態では、上述したように、気泡Gが同伴されていない潤滑油を、貯槽32へ移送するので、粘性ポンプ33の吐出量を低下させることはない。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の軸受構造によれば、従来、水車側軸受30と反水車側軸受50との両方に設置されていた熱冷却器を、1つの熱冷却器で共用できるので、設置面積の増加をもたらすことはない。
【0068】
また、それに伴って、従来、水車側軸受30と反水車側軸受50との両方に設置されていた粘性ポンプ33を、水車側軸受30だけに設ければよくなるので、粘性ポンプ33を駆動する為の軸動力も低減でき、電気に変換される軸動力の低減を抑制し、発電効率の低減を抑えることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10 横軸形水車発電機
12 回転軸
14 水車
16 羽根車
18 発電機
20 回転子
22 励磁機
24 回転子
26 電磁ブレーキ
28 ブレーキリング
30 水車側軸受
31 スラスト軸受
32 貯槽
33 粘性ポンプ
33a スラストカラー
33b 粘性ポンプ固定部
33c 粘性ポンプ吸込口
33d 粘性ポンプ吐出口
34 オイルクーラ
35 軸受給油口
36 ジャーナル軸受
37 排油口
38 オイルディスク給油穴
39 オイルディスク給油口
40 オイルディスク
41 ホルダー
42 カバー
44 スラスト軸受支台
46 熱交換器
47 電動送風機
48 通油穴
50 反水車側軸受
52 貯槽
53 粘性ポンプ
56 ジャーナル軸受
60 オイルボックス
61 堰
76 熱交換器
77 電動送風機
80 放流管