(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】非硬化脂肪組成物、使用およびプロセス
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220927BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20220927BHJP
A21D 13/16 20170101ALI20220927BHJP
A23D 9/02 20060101ALI20220927BHJP
A23G 3/54 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A23D9/00 502
A21D13/00
A21D13/16
A23D9/02
A23G3/54
(21)【出願番号】P 2020502570
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2018070226
(87)【国際公開番号】W WO2019020714
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518269740
【氏名又は名称】ブンゲ ロダース クロックラーン ビー.ヴィ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マー, チュン
(72)【発明者】
【氏名】デ フリント, フィンセント フベルトゥス コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】ノッペルス, ヨシェン マティルデ エリサベス
(72)【発明者】
【氏名】ペトルト, ラウル-フラビウ
(72)【発明者】
【氏名】フランクス, ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】エケス, ハンス
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/055102(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/031680(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/114914(WO,A1)
【文献】米国特許第06277433(US,B1)
【文献】特開2017-038571(JP,A)
【文献】横関油脂工業株式会社 化粧品主要製品 一覧,日本,2013年03月
【文献】GUNSTONE, Frank D.; HARWOOD, John L.; PADLEY, Fred B.,The Lipid Handbook,1986年,p.88, 100,ISBN: 0-412-24480-2
【文献】DANTHINE, Sabine et al.,Cystallization behaviour of binary fat blends containing shea stearin as hard fat,Eur. J. Lipid. Sci. Technol.,Vol.117, No.11,2015年11月,pp.1687-1699,DOI: 10.1002/ejlt.201400565
【文献】VINCENZO, Daria Di et al.,Regional Variation in Shea Butter Lipid and Triterpene Composition in Four African Countries ,J. Agric. Food Chem.,Vol.53, No.19,2005年08月19日,pp.7473-7479,DOI: 10.1021/jf0509759
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非硬化脂肪組成物であって、総C8-C24脂肪酸残基に基づいて28重量%超のステアリン酸(C18:0)脂肪酸残基、44重量%超のオレイン酸(C18:1)脂肪酸残基、10重量%未満のパルミチン酸(C16)脂肪酸残基、並びに(StOSt+StStO)/(StOO+OStO)の重量比が
0.7~
1.2である、
前記組成物中に存在する総グリセリドに基づいて30重量%超のStOSt、StStO、StOOおよびOStOトリグリセリドの合計量を含
み、
ISO8292-1に準じた安定化脂肪で測定して、25~40のN10、35未満のN20、15未満のN30、10未満のN35、および8未満のN40である固体脂肪含有量(SFC)を有する、非硬化脂肪組成物。
【請求項2】
前記組成物が、シアバターと
エステル交換シアオレインの混合物、又はシアバターとシアオレインのエステル交換混合物を含む、請求項
1に記載の脂肪組成物。
【請求項3】
混合物が、重量比10:90~90:10のシアバターおよびシアオレインからなる、請求項2に記載の脂肪組成物。
【請求項4】
混合物が、重量比20:80~80:20のシアバターおよびシアオレインからなる、請求項3に記載の脂肪組成物。
【請求項5】
パーム油又はパーム油画分の脂肪酸残基を含まないか、本質的に含まない、請求項1~請求項4のいずれか
一項に記載の脂肪組成物。
【請求項6】
総C8-C24脂肪酸残基に基づいて10重量%未
満のC12脂肪酸残基を含む、請求項1~請求項
5のいずれか
一項に記載の脂肪組成物。
【請求項7】
前記組成物が、総C8-C24脂肪酸残基に基づいて5重量%未満のC12脂肪酸残基を含む、請求項6に記載の脂肪組成物。
【請求項8】
ステアリン酸対パルミチン酸の重量比が、2.5
超である、請求項1~請求項7のいずれか
一項に記載の脂肪組成物。
【請求項9】
ステアリン酸対パルミチン酸の重量比が、4超である、請求項8に記載の脂肪組成物。
【請求項10】
ベーカリーでの用途のための、請求項1~請求項
9のいずれか
一項に記載の
脂肪組成物の使用。
【請求項11】
ベーカリーでの用途が、ショートニングとしてである、請求項
10に記載の使用。
【請求項12】
ベーカリーでの用途が、パイ生地である、請求項
10に記載の使用。
【請求項13】
菓子用
途のための請求項1~請求項
9のいずれか
一項に記載の
脂肪組成物の使用。
【請求項14】
菓子フィリング脂肪のための、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
シアバターとシアオレインを10:90~90:1
0の重量比で混合することを含む、トリグリセリド組成物の調製方法。
【請求項16】
シアバターとシアオレインを20:80~80:20の重量比で混合することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シアオレインが、エステル交換シアオレインである、請求項
15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
混合後、シアバターおよびシアオレインが化学的又は酵素的にエステル交換される、請求項
15~請求項
17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非硬化脂肪組成物、その使用、およびそのような脂肪組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シアバターは、シアの木(Butyrospermum parkii)の実から採られる。シアバターは、StOSt(1,3-ジステアロイル2-オレオイルグリセリド)の原料として商業的に使用されている。シアバターは、ステアリン酸とオレイン酸が比較的豊富である。シアバターを分別して、CBEとして使用できる可能性のある高融点画分、および低融点シアオレイン画分のシアステアリンを調製することができる。シアステアリンは、StOStが豊富だが、StOOやStLSt(Lはリノール酸を表す)などの他のトリグリセリドも含んでいる。シアオレインは、一般的に商業的価値が低い。
【0003】
国際公開第2013/131862号(Loders Croklaan)は、シアオイルから得られるトリグリセリドおよびジグリセリドを含むグリセリド組成物を記載している。
【0004】
国際公開第2012/052471号(不二製油)は、シアバター又はシアステアリンを油脂と組み合わせて含むことができる組成物を含む、油の様々なラウリン油混合物について記載している。
【0005】
米国特許第6277433号(Loders Croklaan)は、パイ生地に使用されるエステル交換シアオレインを含む脂肪混合物について記載している。
【0006】
国際公開第2017/055102号(Loders Croklaan)は、菓子用途にシアオレインを使用した温度耐性脂肪について記載している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の目的は、ベーカリーおよび/又は菓子屋などの食品用途に適した、好ましくはシアオレイン画分を含む、脂肪組成物を可能にすることである。
【0008】
本発明の別の目的は、特に冷却条件下で良好な加工性を有する脂肪組成物を提供することである。
【0009】
本発明は、総C8-C24脂肪酸残基に基づいて28重量%超のステアリン酸(C18:0)脂肪酸残基、44重量%超のオレイン酸(C18:1)脂肪酸残基、10重量%未満のパルミチン酸(C16)脂肪酸残基、並びに(StOSt+StStO)/(StOO+OStO)の重量比が0.6~1.5である、組成物中に存在する総グリセリドに基づいて30重量%以上のStOSt、StStO、StOOおよびOStOトリグリセリドの合計量を含む非硬化脂肪組成物に関する。そのような組成物は、良好な加工性を有し、ベーカリーおよび/又は菓子屋などの食品用途に適している。脂肪組成物は、例えばシアバター又はその画分から、好ましくはシアバターとシアバターオレインの混合から得られる。
【0010】
「非硬化(non-hydrogenated)」という用語は、脂肪組成物又はその成分脂肪のいずれかが、水素化(hydrogenation)のステップにさらされていないという当技術分野における通常の意味を有する。典型的には、非硬化とは、脂肪組成物が総C8-C24脂肪酸残基に基づいて1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満のトランス脂肪酸を含むことを意味する。
【0011】
本明細書で使用される「脂肪酸(fatty acid)」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖の飽和又はは不飽和(モノ、ジ、ポリ不飽和を含む)カルボン酸を指す。脂肪酸残基は、ISO12966-2およびISO12966-4に従ってGC-FAME(脂肪酸メチルエステル)で測定することができる。トリグリセリド組成物は、GC(ISO23275)で測定することができる。分析には、StOO、StOSt、StStStなどのトリグリセリドが含まれ、ここで、Stはステアリン酸残基、Oはオレイン酸残基である。
【0012】
好ましくは、脂肪組成物は、安定化脂肪中の40未満のN10を有する固体脂肪含量(SFC)を有する。N10は、ISO8292-1に準じた安定化脂肪のNMRを使用して測定した10℃のSFCである。そのような脂肪は、特に脂肪組成物が典型的には8℃以下の温度にある冷却貯蔵庫から取り出される場合、良好な加工性を示す。より好ましくは、脂肪組成物は、25~40のN10、35未満のN20、15未満のN30、10未満のN35、および8未満のN40を有する。
【0013】
好ましい実施形態において、組成物は、シアバターとシアオレインの混合物、又はシアバターとシアオレインのエステル交換混合物を含む。好ましくは、混合物は、重量比10:90~90:10、より好ましくは20:80~80:20のシアバターおよびシアオレインからなる。他の脂肪画分をこのような混合物と混合してもよく、また用途に応じて乳化剤などの添加物を加えてもよい。
【0014】
さらに別の好ましい実施形態では、組成物は、パーム油又はパーム油画分の脂肪酸残基を含まないか、本質的に含まない。「本質的に含まない(essentially free)」とは、組成物がパーム油又はパーム油画分の脂肪酸残基を1重量%未満含むことを意味する。
【0015】
重量比(StOSt+StStO)/(StOO+OStO)は、0.7~1.2であることが好ましい。
【0016】
好ましい実施形態では、組成物は、総C8-C24脂肪酸残基に基づいて10重量%未満、好ましくは5重量%未満のC12脂肪酸残基を含む。ラウリン脂肪酸残基は、特定の用途では望ましくなく、特に、ココアバターとの非相溶性がある場合がある。
【0017】
好ましくは、ステアリン酸とパルミチン酸の重量比は、2.5超、より好ましくは4超である。
【0018】
本発明は、ベーカリー用の発明による組成物の使用にも関する。
【0019】
好ましい実施形態では、ベーカリー用途はショートニングとしてである。ショートニングは、生地又は積層脂肪としてのパイ生地、ケーキおよび/クッキーなどのさまざまなベーカリー用途で使用するために、通常はボテーション(votation)手段によって可塑化される100%の脂肪からなる製品である。
【0020】
本発明の脂肪組成物を含むベーカリー組成物は、典型的には小麦粉および任意の水も含む。
【0021】
別の好ましい実施形態では、ベーカリーでの用途はパイ生地である。そのような脂肪組成物は、パイ生地での用途で高く評価されている特定の特性、特に、生地の薄い層に脂肪を適用させることを可能にする加工性を有する。パイ生地製品を作るには、通常、ショートニングを生地に丸めて折り畳み、脂肪と生地の交互の層を作る。このようなパイ生地の層状材料を焼くと、「パフ(puff)」と呼ばれる多くのガスポケット(gaseous pocket)を備えた焼き製品になる。
【0022】
本発明はさらに、菓子用途、特に菓子フィリング脂肪のための前記請求項のいずれかに記載のトリグリセリド組成物の使用に関する。本発明の組成物を含む菓子組成物は、典型的には糖も含み、さらにココアパウダーを含んでもよい。
【0023】
本発明はまた、シアバターとシアオレインを重量比10:90~90:10、好ましくは20:80~80:20で混合することを含む、トリグリセリド組成物の調製方法に関する。非エステル交換混合物は、菓子の用途、特にフィリング脂肪としての用途に特に適している。
【0024】
好ましい実施形態では、シアオレインはエステル交換されたシアオレインである。
【0025】
別の好ましい実施形態では、混合後のプロセスにおいて、シアバターおよびシアオレインは化学的又は酵素的にエステル交換される。エステル交換混合物は、パイ生地の用途に特に適している。
【0026】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。
【実施例1】
【0027】
シアオレイン/シアバター混合物
【0028】
本明細書で使用される、シアバターおよびエステル交換シアオレインの典型的な組成物を以下に示す。
上記の表において、
Cx:yは、x個の炭素原子とy個の二重結合を持つ脂肪酸を指し、GC-FAME(ISO12966-2およびISO12966-4)によってレベル測定される。
IVFAMEは、計算されたヨウ素値を指す。
FFAは、遊離脂肪酸の量を指す。
トランスは、トランス脂肪酸を指す。
SAFAは、飽和脂肪酸を指す。
O、P、St、L、およびAは、それぞれオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、およびアラキジン酸を指す。
トリグリセリド組成物:POSt、およびその他のトリグリセリドはGC(ISO23275)により測定され、各GCピークには、異なる位置に同じ脂肪酸を持つトリグリセリドが含まれる。例えば、POStは、PStOおよびStPOと同じシグナルピークにある。
【0029】
化学的にエステル交換されたシアオレインは、80/20(w/w)と60/40(w/w)の2つの異なる比率を使用してシアバターと混合された。脂肪組成物は、漂白および脱臭後の混合から得られた。製菓用途試験の基準脂肪として、オランダのIOI Loders Croklaan BVから入手した市販の脂肪Biscuitine300を使用した。ベーカリー用途試験の基準脂肪として、比率50/50(w/w)のパーム油とパームステアリン(IV~35)の脂肪混合物を使用した。基準脂肪および本発明の脂肪組成物の分析結果を表1に示す。
脂肪組成物80/20エステル交換シアオレイン/シアバター、Biscuitine300、60/40エステル交換シアオレイン/シアバター、および50/50パーム油/パームステアリン。
上記の表において、
Cx:yは、x個の炭素原子とy個の二重結合を持つ脂肪酸を指し、GC-FAME(ISO12966-2およびISO12966-4)によってレベル測定される。
IVFAMEは、計算されたヨウ素値を指す。
SAFAは、飽和脂肪酸を指す。
トランスは、トランス脂肪酸を指す。
O、P、St、L、およびAは、それぞれオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、およびアラキジン酸を指す。
トリグリセリド組成物:POSt、およびその他のトリグリセリドはGC(ISO23275)により測定され、各GCピークには、異なる位置に同じ脂肪酸を持つトリグリセリドが含まれる。例えば、POStは、PStOおよびStPOと同じシグナルピークにある。
S20-Nxは、x℃(ISO8292-1)で20℃安定化脂肪のNMRで測定された固体脂肪含有量を指す。
【実施例2】
【0030】
エステル交換シアオレイン/シアバター配合
【0031】
60重量%のシアオレインと40重量%のシアバターの混合物200kgを、ナトリウムメトキシドを使用して化学的にエステル交換した後、漂白と脱臭を行った。この脂肪を、実施例1.3とする。脂肪組成物は、次の組成物である(表2)。
60/40シアオレイン/シアバターにエステル交換された脂肪組成物
上記の表において、
Cx:yは、x個の炭素原子とy個の二重結合を持つ脂肪酸を指し、GC-FAME(ISO12966-2およびISO12966-4)によってレベル測定される。
IVFAMEは、計算されたヨウ素値を指す。
SAFAは、飽和脂肪酸を指す。
トランスは、トランス脂肪酸を指す。
O、P、St、L、およびAは、それぞれオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、およびアラキジン酸を指す。
トリグリセリド組成物:POSt、およびその他のトリグリセリドはGC(ISO23275)により測定され、各GCピークには、異なる位置に同じ脂肪酸を持つトリグリセリドが含まれる。例えば、POStは、PStOおよびStPOと同じシグナルピークにある。
S20-Nxは、x℃(ISO 8292-1)で測定した20℃安定化脂肪のNMRで測定された固体脂肪含有量を指す。
【実施例3】
【0032】
菓子フィリング
【0033】
ココア含有菓子フィリングは、ボールミルを使用して240rpmで40分間、表3の以下の成分を混合して調製した。脂肪混合物1.1を使用した。基準フィリング脂肪として、脂肪混合物を基準フィリング脂肪であるオランダウォルメルフェールのLoders Croklaan BVから入手したBiscuitine300に置き換えた。
ココア・フィリングのレシピ
【0034】
ヘーゼルナッツ入り菓子フィリングは、ボールミルを使用して240rpmで40分間、以下の成分を混合して調製した。脂肪混合物1.1を使用した。基準フィリング脂肪として、脂肪混合物を基準フィリング脂肪であるオランダウォルメルフェールのLoders Croklaan BVから入手したBiscuitine300に置き換えた。
ヘーゼルナッツ・フィリングのレシピ
【0035】
菓子フィリングを表5にまとめる。
上記レシピによる菓子フィリング
【実施例4】
【0036】
貯蔵試験
【0037】
実施例3に従って調製した菓子フィリングを、ダークチョコレートシェルに入れ(実施例1.1では23~26℃、基準1.1では30~33℃)、固定冷却キャビネット(12℃)で少なくとも15分間冷却した。最初の冷却後、チョコレートシェルの底にダークチョコレートを入れ、固定冷却キャビネット(12℃)で少なくとも15分間冷却した。その後、フィリングを含むチョコレートシェルを、さらに評価するために異なる温度で保管した。チョコレートシェルは、15℃で12時間、25℃で12時間の温度サイクル条件下で、20℃、25℃で保管された。
【0038】
次の表で示すとおり、1日後、2週間後、1か月後、3か月後に外観を評価した。外観は、光沢およびブルームで評価された。
【0039】
光沢およびブルーム
【0040】
光沢は、1~5の範囲の光沢係数で示され、1はマット(光沢なし)、5は非常に光沢であることを示す。ブルームは、A~Cの範囲のブルーム係数で示され、Aはブルームなし、Cは大きなブルームであることを示す。
【0041】
結果を表6a、6b、6c、および6dに示す。
1日後の光沢とブルーム
2週間後の光沢とブルーム
1か月後の光沢とブルーム
3か月後の光沢とブルーム
【実施例5】
【0042】
パイ生地への脂肪混合物の適用
【0043】
5.1ショートニング準備
【0044】
ショートニングは、実施例1.2と基準1.2を使用して調製した。ショートニングには、乳化剤、染料、香料、その他の添加物は含まれていない。
【0045】
実施例1.2のショートニングは、30%のスループットを備えたA-C-A-B構成のボテーション(votation)機器を使用して試験規模で調製された。この構成において、Aユニットは削り面熱交換器を表し、Bユニットは静止チューブを表し、Cユニットは当技術分野で知られているピンローターマシンを表す。脂肪を融解し、融点+10℃に等しい温度で平衡化した。最初のAユニットは1,000rpm、2番目のAユニットは150rpm、Cユニットは20rpmに設定された。製品温度は、最初のAユニットの後で41.8℃、Cユニットの後で34.5℃と測定された。ショートニングは周囲条件下で梱包された。さらにショートニングについて、18℃で24時間調温され、その後22℃で保管された。
【0046】
幅広い温度範囲で積層脂肪として使用するのに適した可塑性ショートニングが得られた。実施例1.2で調製されたショートニングは、調査した2か月間でポスト硬化が見られず、117±8gの一定の硬度(コーン貫入法、45°、テクスチャーアナライザー)であった。
【0047】
5.2パイ生地製品の調製
【0048】
得られたショートニングは、次のようにパイ生地の調製に使用された。
パイ生地のレシピ
【0049】
生地が調製され、スパイラル生地ニーダーで8分間ゆっくりと混練した。その後、生地を周囲温度(20℃)で10分間休ませた。積層は、1/2French(3折り)と第1ステップの1/2Dutch(4折り)の2段階で行われた。生地を4℃で30分間休ませた後、第1の積層ステップを繰り返し、生地をさらに30分間休ませた。最終的な積層生地の厚さは、10mmだった。この生地から、四角いパイ生地を93×93mmのステンレス製の生地カッターで切り取った。パイ生地を、190℃の従来のベーキングオーブンで20分間焼いた。実施例1.2で調製されたショートニングは、積層中の優れた可塑性および取り扱いを示した。
【0050】
基準ショートニングと比較して、実施例1.2ショートニングで焼いたパイ生地は、強化された特性を持っていた。
・ 優れた高さ(基準:47.5mm;混合物1:59.2mm)
・ 改善されたテクスチャ(より優れた層の区別)
・ 消費者受け入れテスト:優れた外観と全体的な印象
【実施例6】
【0051】
多目的ショートニング
【0052】
実施例1.3からショートニングが開発された。ショートニングには、乳化剤、染料、香料、その他の添加物は含まれていない。
【0053】
実施例1.3のショートニングは、1つのAユニット、1つのBユニット、および1つのCユニットで構成されるボテーション(votation)セットを通じて、試験規模で調製された。システムのスループットは40%に設定され、冷却は-20℃に設定された。脂肪を融解し、50℃で平衡化した。Aユニットは1000rpmに設定され、Cユニットは140rpmに設定された。静止チューブの出口での製品温度は約15℃だった。ショートニングは周囲条件下で梱包された。さらにショートニングについて、18℃で24時間調温され、その後22℃で保管された。
【0054】
幅広い温度範囲と用途で積層脂肪として使用するのに適した可塑性ショートニングが得られた。ショートニングは、破裂したり生地に吸収されたりすることなく、複数の積層ステップ(つまりシーティング)に耐えるのに十分な可塑性があることが観察された。