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特許7146897ホモシスチン尿症の治療のための酵素補充療法の最適化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ホモシスチン尿症の治療のための酵素補充療法の最適化
(51)【国際特許分類】
   C07K 17/08 20060101AFI20220927BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20220927BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20220927BHJP
   C12N 9/96 20060101ALI20220927BHJP
   C12N 15/60 20060101ALN20220927BHJP
【FI】
C07K17/08 ZNA
C07K14/47
C12N9/88
C12N9/96
C12N15/60
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020506311
(86)(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018027854
(87)【国際公開番号】W WO2018195006
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】62/486,246
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(73)【特許権者】
【識別番号】320003415
【氏名又は名称】トラヴェール セラピューティクス スウィツァランド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRAVERE THERAPEUTICS SWITZERLAND GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】マイタン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クラウス、ジャン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】バブリル、エレツ エム.
(72)【発明者】
【氏名】グラビン、フランク
(72)【発明者】
【氏名】セロス-モウラ、マルシア
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0051648(US,A1)
【文献】国際公開第2017/018742(WO,A1)
【文献】Bell SM et al.,Formulation and PEGylation optimization of the therapeutic PEGylated phenylalanine ammonia lyase for the treatment of phenylketonuria,PLoS One,2017年03月10日,12(3),e0173269
【文献】新井 悦郎,抗体医薬品開発及び品質管理におけるキャピラリー電気泳動法の応用,生物物理化学,2008年,52,139-144
【文献】Stephan Koza and Kenneth J. Fountain,サイズ排除および逆相UPLCによるPEG化タンパク質の分析,Application note, Waters The Science of What's possible.,2014年,APTN134761255
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00 - 9/99
15/00 - 15/90,104@Z
C07K 1/00 - 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有するヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質(htCBS C15S)をPEG化して、PEG化されたhtCBS C15Sを製造する方法であって、
(a)htCBS C15Sと複数のNHSエステルPEG分子とを約0倍までのモル過剰の前記NHSエステルPEG分子の溶液中でコンジュゲートさせてバッチを作出することであって、前記複数のNHSエステルPEG分子は、5kDa、10kDa、又は20kDaのNHSエステルPEG分子である、作出すること;
(b)前記バッチのサイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析からのクロマトグラフィープロファイルからの保持時間と、許容可能なPEG化を有するNHS PEG化htCBS C15Sの試料のSEC-HPLC分析からのクロマトグラフィープロファイルからの保持時間とを比較することであって、前記許容可能なPEG化を有するNHS PEG化htCBS C15Sの試料が、5つ以上のPEG化部位を有するhtCBS C15S分子を含む比較すること;及び
(c)前記バッチが、前記許容可能なPEG化を有するNHS PEG化htCBS C15Sの試料の保持時間よりも長い保持時間を有している場合、追加のNHSエステルPEG分子を前記バッチに添加して前記htCBS C15SのPEG化を増加させ、それにより前記htCBS C15SをPEG化することを含む方法。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有するヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質(htCBS C15S)をPEG化して、PEG化されたhtCBS C15Sを製造する方法であって、
(a)htCBS C15Sと複数のNHSエステルPEG分子とを約0倍未満のモル過剰の前記NHSエステルPEG分子の溶液中でコンジュゲートさせてバッチを作出することであって、前記複数のNHSエステルPEG分子は、5kDa、10kDa、又は20kDaのNHSエステルPEG分子である、作出すること;
(b)不十分なPEG化を同定するために前記バッチの非還元キャピラリー電気泳動(NR-CE)分析からの保持時間と、許容可能なPEG化を有するNHS PEG化htCBS C15Sの試料のNR-CE分析からの保持時間とを比較することであって、前記許容可能なPEG化を有するNHS PEG化htCBS C15Sの試料が、5つ以上のPEG化部位を有するhtCBS C15S分子を含む比較すること;及び
(c)前記バッチが、前記許容可能なPEG化を有するNHS PEG化htCBS C15Sの試料の保持時間よりも短い保持時間を有している場合、追加のNHSエステルPEG分子を前記バッチに添加して前記htCBS C15SのPEG化を増加させ、それにより前記htCBS C15SをPEG化することを含む方法。
【請求項3】
記複数のNHSエステルPEG分子が、5kDaのNHSエステル(5NHS)PEG分子からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
記複数のNHSエステルPEG分子が、10kDaのNHSエステル(10NHS)PEG分子からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
記複数のNHSエステルPEG分子が、20kDaのNHSエステル(20NHS)PEG分子からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のNHSエステルPEG分子のそれぞれが、約20kDa未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
記バッチの前記保持時間が、約9.50分間よりも長い、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
記バッチの前記保持時間が、約9.60分間~約9.70分間である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記バッチの前記保持時間が、約9.67分間よりも長い、請求項に記載の方法。
【請求項10】
許容可能なPEG化を有するNHS PEG化htCBS C15Sの試料の前記保持時間が、約9.53分間よりも短い、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古典的ホモシスチン尿症のための酵素補充療法としての、再現可能な製造及びさらなる臨床開発についての好適性を同定するためのPEG化ヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(htCBS)コンジュゲートの特徴付けに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS、KEGG酵素識別番号:EC4.2.1.22)は硫黄アミノ酸代謝の重要な酵素であり、その活性はメチオニン(Met)サイクルにおける硫黄の再循環又はトランススルフレーション経路を介するシステインの合成へのその転換のいずれかを決定する。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献1)参照。硫黄アミノ酸代謝の重要な中間体は非タンパク質構成アミノ酸ホモシステイン(Hcy)であり、それはMetシンターゼ若しくはベタインホモシステインメチルトランスフェラーゼの作用によりMetに再変換され、又はCBSによりトランススルフレーション経路を介するシステイン生合成に再指向され得る。CBSは、ピリドキサール5’-リン酸依存性ホモ四量体ヘムタンパク質であり、それは、シスタチオニン(Cth)及び水を形成するHcyとセリンとの縮合を触媒する。続いて、Cthは、シスタチオニンγ-リアーゼの作用によりシステイン(Cys)、α-ケト酪酸及びアンモニアに加水分解され、それが必須アミノ酸MetのCysへの変換を完了させる。CBSの活性、及びしたがってトランススルフレーション経路を介する硫黄のフラックスは、酵素のC末端調節ドメインの自己阻害機能により減衰される。このドメインへのS-アデノシルメチオニンの結合は、調節ドメインの立体構造的再構成、後続の自己阻害ブロック放出及び酵素の4~5倍の活性化をもたらす。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献2)参照。類似レベルのCBS活性化は、C末端調節ドメインの除去及び結果的な二量体の永久活性化ヒトトランケート酵素(htCBS)の形成により達成することができる。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献3)参照。
【0003】
CBS活性の欠落は、常染色体劣性遺伝性の希少代謝障害である古典的ホモシスチン尿症(HCU)をもたらす。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献4)参照。CBSの不活性化は、主にミスセンス病原性突然変異の存在に起因し、HCU患者の血漿試料におけるHcy、Met、及びS-アデノシルホモシステインの重度の上昇並びに逆にCthの欠落及びCysの減少を生じさせる。これらの生化学的続発症は、結合組織障害、例えば、水晶体脱臼、細長い四肢及び骨粗鬆症、血栓塞栓症、認知機能障害並びに他の臨床症状を伴う。(非特許文献4)参照。HCUの現行の治療は、大部分が対症療法であり、Met不含L-アミノ酸補給を有するタンパク質制限食により血漿及び組織におけるHcy濃度の低減を目的とする。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献5)参照。この食事介入は、HcyのMetに戻す再メチル化を促進するベタインと組み合わせられることが多い。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献6)参照。さらに、ピリドキサール5’-リン酸前駆体ピリドキシン(ビタミンB)の補給は、残留CBS活性を刺激し、したがって臨床的顕在化を軽減し、食事療法を緩和することによりHCU患者のほぼ50%において有効であると示された。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献7)参照。Met制限は一般に血漿Hcyレベルの低下において有効であるが、HCU患者の食事の順守がかなり不十分であり、結果的に症状の顕在化を招く。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献8)参照。したがって、厳密な食事を要求しないが、Hcyレベルの類似の低減を達成し、臨床症状の出現及び/又は深刻化を予防する代替療法が当分野において必要とされている。
【0004】
HCUのための酵素補充療法(ERT)は、近年、PEG化htCBSを使用して記載されている。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献9)及び(特許文献1)参照。PEG化は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分又は分子への目的のタンパク質のコンジュゲーションであり、種々の薬物の薬物動態プロファイルを変更してそれらの治療潜在性を改善するために十分認識され、受け入れられている方針である。参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献10)参照。非修飾htCBSは、疾患のマウスモデルの循環からの急速なクリアランスを呈した(IV投与後の排出半減期は2.7時間であった)。htCBSのPEG化は、IV投与後のPEG化htCBSの排出半減期を6~11倍だけ延長させ、「ヒューマンオンリー」(HO)マウスにおけるネズミホモシスチン尿症の血漿代謝プロファイルを改善し、肝損傷を予防することにより新生児致死からCBSノックアウト(KO)マウスをレスキューすることが観察されている。それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる(非特許文献9)参照。
【0005】
高い再現性及び製造の間の制御を呈し、長期効力を有するPEG化htCBSコンジュゲートを設計し、特徴付けすることが当分野において長きにわたり必要とされている。従来の研究において、htCBSへのC15S点突然変異の導入は、タンパク質凝集物及びより高次のオリゴマーの形成を縮小させることが観察され、20kDaの直鎖マレイミド活性化PEG分子についてのPEG化プロファイルを改善した。(非特許文献9)参照。マレイミド(MA)又はN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル活性化PEG分子のいずれかによりPEG化された種々のhtCBS C15Sコンジュゲート(さらにPEG-htCBS C15Sと称する)が、単回投与又はウォッシュアウト期間により中断される複数回の反復投与ラウンド後にネズミホモシスチン尿症の代謝プロファイルを補正するそれらの効能について本明細書において特徴付けされる。PEG-htCBS C15Sコンジュゲートを、それらの薬力学に基づき格付けした。さらに、PEG-htCBS調製の再現性及び一貫性並びにPEG分子により修飾される部位の特徴付けについての見識が得られた。htCBS C15SのPEG化の程度をモニタリングし、評価するためのアッセイを同定した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際出願第PCT/2016/061050号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】フィンケルシュタイン,J.D.(Finkelstein,J.D.)著、ジャーナル・オブ・ヌトリショナル・バイオケミストリー(J.Nutr.Biochem.)、1990年、第1巻、p.228~237
【文献】エレノ-オルベア(Ereno-Orbea)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2014年、第111巻、第37号、p.3845~52
【文献】ケリー(Kery)ら著、アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジクス(Arch Biochem Biophys)、1998年、第355巻、第2号、p.222~32
【文献】マッド(Mudd)ら著、「遺伝性疾患の代謝及び分子基礎(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease)」第8版における「トランススルフレーションの障害(Disorders of transsulfuration)」;スクリバー,C.R.(Scriver,C.R.);ボーデ,A.L.(Beaudet,A.L.);スライ,W.S.(Sly,W.S.);バレ,D.(Valle,D.);チャイルズ,B.(Childs,B.);キンズラー,K.(Kinzler,K.);フォーゲルシュタイン,B.(Vogelstein,B.)編、マグロウヒル(McGraw-Hill):ニューヨーク、2001年、p.2007~2056
【文献】コムロワー(Komrower)ら著、アーカイブス・オブ・ディジーズ・イン・チャイルドフッド(Arch Dis Child)、1966年、第41巻、第220号、p.666~71
【文献】スモリン(Smolin)ら著、ジャーナル・オブ・ペディアトリクス(J Pediatr)、第99巻、第3号、p.467~472(1981年)
【文献】バーバ(Barber)ら著、ジャーナル・オブ・ペディアトリクス(J Pediatr)、第75巻、第3号、p.463~778(1969年)
【文献】ウォルター(Walter)ら著、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ペディアトリクス(Eur.J.Pediatr.)、1998年、第157巻、補遺2、p.71~76
【文献】バブリル(Bublil)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2016年、第126巻、第6号、p.2372~84
【文献】フィッシュバーン(Fishburn)ら著、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(J Pharm Sci)、2008年、第97巻、第10号、p.4167~83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高い再現性及び製造の間の制御を呈し、長期効力を有するPEG化htCBSコンジュゲートを設計し、特徴付けすることが当分野において長きにわたり必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書における本発明の種々の実施形態は、配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有するヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)をPEG化する方法であって、(a)htCBS C15Sと1つ又は複数のNHSエステルPEG分子とを約40倍までのモル過剰のNHSエステルPEG分子の溶液中でコンジュゲートさせてバッチを作出すること(複数のNHSエステルPEG分子は、5kDa、10kDa、又は20kDaのNHSエステルPEG分子である);(b)バッチのサイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析からのクロマトグラフィープロファイルからの保持時間と、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15SのSEC-HPLC分析からのクロマトグラフィープロファイルからの保持時間とを比較して不十分なPEG化を同定すること(不十分なPEG化を有するバッチは、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15Sの保持時間よりも長い保持時間を有する);及び(c)追加のNHSエステルPEG分子をバッチに添加してバッチにおける不十分なPEG化の量を低減させ、それによりhtCBS C15SをPEG化することを含む方法を提供する。
【0010】
本明細書における本発明の種々の実施形態は、配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有するヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)をPEG化する方法であって、(a)htCBS C15Sと1つ又は複数のNHSエステルPEG分子とを約40倍未満のモル過剰のNHSエステルPEG分子の溶液中でコンジュゲートさせてバッチを作出すること(複数のNHSエステルPEG分子は、5kDa、10kDa、又は20kDaのNHSエステルPEG分子である);(b)バッチの非還元キャピラリー電気泳動(NR-CE)分析からのクロマトグラフィープロファイルからの保持時間と、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15SのNR-CE分析からのクロマトグラフィープロファイルからの保持時間とを比較して不十分なPEG化を同定すること(不十分なPEG化を有するバッチは、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15Sの保持時間よりも短い保持時間を有する);(c)追加のNHSエステルPEG分子をバッチに添加してバッチにおける不十分なPEG化の量を低減させ、それによりhtCBS C15SをPEG化することを含む方法を提供する。
【0011】
ある実施形態において、NHSエステルPEG分子は、約10倍のモル過剰で存在する。ある実施形態において、NHSエステルPEG分子は、約20倍のモル過剰で存在する。或いは、NHSエステルPEG分子は、20倍未満、10倍未満、5倍未満、又は2倍未満のモル過剰で存在する。ある実施形態は、複数のNHSエステルPEG分子が約5kDaのNHSエステル(5NHS)PEG分子からなることを提供する。ある実施形態において、複数のNHSエステルPEG分子は、約20kDaのNHSエステル(20NHS)PEG分子からなる。ある実施形態において、複数のNHSエステルPEG分子は、約20kDa未満である。例えば、複数のNHSエステルPEG分子は、約10kDaのNHSエステル(10NHS)PEG分子からなる。ある実施形態において、不十分なPEG化を有するhtCBS C15Sは、15個未満、10個未満、5つ未満、又は1つ未満のPEG化アミノ酸を含む。ある実施形態において、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15Sは、少なくとも1つのPEG化アミノ酸を含む。
【0012】
ある実施形態において、不十分なPEG化を有するhtCBS C15Sのバッチの保持時間は、約9.50分間、約9.75分間、約10.00分間、及び約10.25分間よりも長い。ある実施形態において、不十分なPEG化を有するhtCBS C15Sのバッチの保持時間は、約9.60分間~約9.70分間である。ある実施形態において、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15Sの保持時間は、約9.50~約9.60分間の範囲内である。ある実施形態において、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15Sの保持時間は、約9.53分間よりも短い。例えば、不十分なPEG化を有するPEG化htCBS C15Sは、0個のPEG化アミノ酸を含む。
【0013】
本明細書における本発明の種々の実施形態は、治療の継続期間全体にわたり対象におけるホモシスチン尿症のための治療の効力を維持する方法であって、上記の方法を使用してPEG化された、配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有する治療有効量のヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)を対象に投与するステップを含む方法を提供する。ある実施形態において、治療の効力は、2週間まで、1ヵ月間まで、6ヵ月間まで、又は1年間まで維持される。或いは、治療の効力は、1年間よりも長く維持される。
【0014】
本明細書における本発明の種々の実施形態は、ホモシスチン尿症を有する対象におけるホモシステイン(Hcy)のレベルを低減させる方法であって、上記方法を使用してPEG化された、配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有する治療有効量のヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)を対象に投与することを含む方法を提供する。ある実施形態において、Hcyのレベルは、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、及び約90%~約100%から選択される範囲の群から選択される範囲で低減される。
【0015】
本明細書における本発明の種々の実施形態は、ホモシスチン尿症を有する対象におけるシステイン(Cys)のレベルを増加させる方法であって、上記方法を使用してPEG化された、配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有する治療有効量のヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)を対象に投与するステップを含む方法を提供する。ある実施形態において、バリアントは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を共有する。ある実施形態において、投与ステップから生じる治療効果は、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、又は少なくとも24時間維持される。
【0016】
本明細書における本発明の種々の実施形態は、上記方法を使用してPEG化された、配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有するヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S);及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態において、医薬組成物中のバリアントは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を共有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】非修飾htCBS C15Sタンパク質と比較した複数の20NHS PEG-htCBS C15Sバッチの非還元キャピラリー電気泳動(NR-CE)プロファイルを示す。
図2】緩やかな塩勾配(5%、10~110mMのNaCl)を使用したDEAEセファロース(Sepharose)上の400MA PEG-htCBS C15S種のクロマトグラフィー分離を示す。直線は280nmにおける吸光度を表す一方、ピークは移動相の伝導度の変化を示す。両方の線は、バイオ-ラッド(BIO-RAD)(登録商標)バイオロジックLPデータビューソフトウェア(Biologic LP Data View Software)バージョン1.03を有するバイオ-ラッド(BIO-RAD)(登録商標)バイオロジックLP(Biologic LP)クロマトグラフィーシステムを使用して作成した。「S」は、ポンプの開始及びソフトウェアプログラムによる記録の時点を表し、「E」は、ポンプの作動終了及びソフトウェアプログラムによる記録の時点を表す。「M」は、図中の標識により示されるプール1及びプール2のモニタリングの開始の手作業により指定された時点を表す。
図3A】Lys-C消化を使用するマレイミドPEG化マッピングを示す。これらの図は、参照としての非修飾htCBS C15S(図3A)、ホモPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P1)(図3B)、及びヘミPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P2)(図3C)タンパク質のLys-C消化後の還元アルキル化LC-MSペプチドマップを示す。
図3B】Lys-C消化を使用するマレイミドPEG化マッピングを示す。これらの図は、参照としての非修飾htCBS C15S(図3A)、ホモPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P1)(図3B)、及びヘミPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P2)(図3C)タンパク質のLys-C消化後の還元アルキル化LC-MSペプチドマップを示す。
図3C】Lys-C消化を使用するマレイミドPEG化マッピングを示す。これらの図は、参照としての非修飾htCBS C15S(図3A)、ホモPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P1)(図3B)、及びヘミPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P2)(図3C)タンパク質のLys-C消化後の還元アルキル化LC-MSペプチドマップを示す。
図4A】NTCB消化を使用するマレイミドPEG化マッピングを示す。これらの図は、参照としての非修飾htCBS C15S(図4A)、ホモPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P1)(図4B)、及びヘミPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P2)(図4C)タンパク質試料のNTCB処理後のLC-MSペプチドマップを示す。
図4B】NTCB消化を使用するマレイミドPEG化マッピングを示す。これらの図は、参照としての非修飾htCBS C15S(図4A)、ホモPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P1)(図4B)、及びヘミPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P2)(図4C)タンパク質試料のNTCB処理後のLC-MSペプチドマップを示す。
図4C】NTCB消化を使用するマレイミドPEG化マッピングを示す。これらの図は、参照としての非修飾htCBS C15S(図4A)、ホモPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P1)(図4B)、及びヘミPEG化400MA PEG-htCBS C15S(P2)(図4C)タンパク質試料のNTCB処理後のLC-MSペプチドマップを示す。
図5】非修飾htCBS C15Sと比較した種々のNHS PEG-htCBS C15SコンジュゲートのCBS比活性を示す。バーは3つの別個の計測からの平均を表し、エラーバーは標準誤差(SEM)を指定する。
図6】ウォッシュアウト実験における5NHS PEG-htCBS C15Sの評価を示す。HOマウスにおける5NHS PEG-htCBS C15S(SC、7.5mg/kg)の反復投与後のHcy(四角)、Cth(丸)及びCys(菱形)の血漿レベル。点は個々のHOマウス(n=6)からの平均値を表し、エラーバーはSEMを示す。
図7A】PBS注射+/-雄(実線及び四角)及び雌(点線及び四角)と比較した20NHS PEG-htCBS C15S処理CBS KO雄(実線及び丸)及び雌(点線及び丸)マウスの体重(図7A)及び重量増加(図7B)を示す。それぞれの群における対象数をプロット中に示す。マウスは、2日齢から7.5mg/kgの皮下注射を週3回受けた。
図7B】PBS注射+/-雄(実線及び四角)及び雌(点線及び四角)と比較した20NHS PEG-htCBS C15S処理CBS KO雄(実線及び丸)及び雌(点線及び丸)マウスの体重(図7A)及び重量増加(図7B)を示す。それぞれの群における対象数をプロット中に示す。マウスは、2日齢から7.5mg/kgの皮下注射を週3回受けた。
図8A】改善された血漿硫黄アミノ酸プロファイルを持続する20NHS PEG-htCBS C15SによるI278Tマウスの長期処理の効果を示す。図8Aは、20NHS PEG-htCBS C15S(SC、7.5mg/kg)により約9ヵ月間、週3回処理された離乳(21日目)I278Tマウス(n=3)における代謝産物濃度を示す。21日目は、処理開始前のHcy(実線及び四角)、Cth(点線及び円)、及びCys(点線及び菱形)の血漿レベルを示す一方、28及び63日目は、それぞれ3回目及び18回目の注射の72時間後の血漿レベルを説明する(すなわち、週末ウォッシュアウト)。全ての後続の時点は、投薬の24時間後の血漿硫黄アミノ酸を示す。
図8B】改善された血漿硫黄アミノ酸プロファイルを持続する20NHS PEG-htCBS C15SによるI278Tマウスの長期処理の効果を示す。図8Bは、26週齢から20NHS PEG-htCBS C15S(SC、7.5mg/kg)を約6ヵ月の期間、週3回注射された成体完全症候性I278Tマウス(n=10)についての結果を示す。182日目は処理前の初回レベルを示し、全ての後続の時点は投薬の24時間後の血漿代謝産物を表す。記号は個々のマウスからの平均値を表し、エラーバーは標準誤差(SEM)を示す。
図9A】20NHS PEG-htCBS C15Sの、スプラーグ・ドーリ(Sprague Dawley)ラットへの単回投与後及び反復投与後の薬物動態を示す。図9Aは、8mg/kg(実線)又は24mg/kgの20NHS PEG-htCBS C15S(点線)の単回SC投与後の雄(黒色四角、それぞれの群でn=11)及び雌ラット(灰色丸、それぞれの群でn=8)の血漿におけるCBS比活性の片対数プロットを示す。4mg/kg(図9B)又は24mg/kgの20NHS PEG-htCBS C15S(図9C)の反復SC注射後の雄(黒色、n=8)及び雌ラット(灰色、n=8)の血漿におけるCBS比活性。灰色矢印は、2日毎に投与された合計9回の用量についての投薬時点を指定する。全てのプロットにおけるデータ点は平均値を表し、エラーバーはSEMを示す。
図9B】20NHS PEG-htCBS C15Sの、スプラーグ・ドーリ(Sprague Dawley)ラットへの単回投与後及び反復投与後の薬物動態を示す。図9Aは、8mg/kg(実線)又は24mg/kgの20NHS PEG-htCBS C15S(点線)の単回SC投与後の雄(黒色四角、それぞれの群でn=11)及び雌ラット(灰色丸、それぞれの群でn=8)の血漿におけるCBS比活性の片対数プロットを示す。4mg/kg(図9B)又は24mg/kgの20NHS PEG-htCBS C15S(図9C)の反復SC注射後の雄(黒色、n=8)及び雌ラット(灰色、n=8)の血漿におけるCBS比活性。灰色矢印は、2日毎に投与された合計9回の用量についての投薬時点を指定する。全てのプロットにおけるデータ点は平均値を表し、エラーバーはSEMを示す。
図9C】20NHS PEG-htCBS C15Sの、スプラーグ・ドーリ(Sprague Dawley)ラットへの単回投与後及び反復投与後の薬物動態を示す。図9Aは、8mg/kg(実線)又は24mg/kgの20NHS PEG-htCBS C15S(点線)の単回SC投与後の雄(黒色四角、それぞれの群でn=11)及び雌ラット(灰色丸、それぞれの群でn=8)の血漿におけるCBS比活性の片対数プロットを示す。4mg/kg(図9B)又は24mg/kgの20NHS PEG-htCBS C15S(図9C)の反復SC注射後の雄(黒色、n=8)及び雌ラット(灰色、n=8)の血漿におけるCBS比活性。灰色矢印は、2日毎に投与された合計9回の用量についての投薬時点を指定する。全てのプロットにおけるデータ点は平均値を表し、エラーバーはSEMを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.導入
CBSの損失に起因するホモシスチン尿症(HCU)は、ホモシステイン(Hcy)の蓄積及びシステイン(Cys)の枯渇を引き起こす。原因となる酵素欠損に対処する最適化された標的治療が当分野において長きにわたり必要とされており、したがって、PEG化ヒトトランケートCBS(PEG-htCBS)に基づく酵素補充療法の開発を本明細書において探索した。効能の減衰が観察され、これは、いくつかの異なるPEG-htCBS C15Sコンジュゲートのスクリーニングを保証した。ウォッシュアウトにより中断される反復投与後のネズミホモシスチン尿症の血漿代謝産物プロファイルを補正する効力に基づき、PEG-htCBS C15Sコンジュゲートを格付けした。CBSは、マレイミドPEG分子と一貫性なくカップリングすることが観察された。対照的に、20kDaの直鎖NHS-PEGを有するPEG-htCBS C15Sコンジュゲートは効能の極めてわずかな損失を示し、それはペプチド当たり平均5つのPEG化部位で修飾された種をもたらす再現可能なPEG化に起因する可能性が高かった。さらに、CBS PEG化の程度をモニタリングするためのアッセイを開発した。これらの結果は、製造及び臨床開発に最も好適な分析されたもののPEG-htCBS C15Sコンジュゲートを同定した。
【0019】
任意の新規治療開発努力の不可欠な部分は、それが小分子薬物か生物剤かにかかわらず、臨床試験にエントリーするためのリード候補の選択、最適化及び特徴付けである。食事制限を介してメチオニン(Met)取り込みを低減させるためのHCUの治療は、有効であるが従うことが極めて困難であり、深刻な患者の順守問題をもたらす。参照により全体として本明細書に組み込まれるウォルター(Walter)ら著、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ペディアトリクス(Eur.J.Pediatr.)、1998年、第157巻、補遺2、p.71~76参照。現在利用可能なHCUのための治療、すなわち、制限食、ピリドキシン、及び/又はベタイン補給の治療目的は、血漿Hcyレベルを低減させ、又は正常化することである。それというのも、Hcyの変動及び高レベルは、重度の合併症、特に血栓塞栓イベントを伴うことが多いためである。参照により全体として本明細書に組み込まれるモリス(Morris)ら著、「シスタチオニンβ-シンターゼ欠損の診断及び管理についての指針(Guidelines for the diagnosis and management of cystathionine beta-synthase deficiency)」、ジャーナル・オブ・インヘリテッド・メタボリック・ディジーズ(J Inherit Metab Dis)、2016年参照。代替治療、例えば、ERTの開発は、食事制限への依存を低減させ、又は排除し、それによりHCU患者及びその家族はより良好な生活の質に近づくことができる。この治療目的(すなわち、Hcyの血漿レベルの低減又は正常化)を達成するため、htCBS C15Sバリアントが20kDaの直鎖マレイミド活性化PEG分子により既に修飾されており、概念実証はHCUのネズミモデルを使用して提供された。参照により全体として本明細書に組み込まれるバブリル(Bublil)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2016年、第126巻、第6号、p.2372~84及び国際出願第PCT/2016/061050号明細書参照。
【0020】
治療巨大分子のPEG化においてコンジュゲート異性体の異種混合物から単一修飾形態に向かう傾向、例えば、産物の特徴付け/同定及び製造プロセスの再現性が存在する。参照により全体として本明細書に組み込まれるパスト(Pasut)ら著、ジャーナル・オブ・コントロール・リリース(J Control Release)、2012年、第161巻、第2号、p.461~72参照。マレイミドPEG分子を使用するアクセス可能なCys残基の改変は、部位選択的PEG化に最も一般的に使用されるアプローチの1つである。htCBS中の最もアクセス可能なシステイン残基15のセリンへの突然変異誘発(C15S)にもかかわらず、非修飾酵素の分画に加えて複数のPEG化種が観察された。参照により全体として本明細書に組み込まれるフランク(Frank)ら著、バイオケミストリー(Biochemistry)、2006年、第45巻、第36号、p.11021~9参照。個々の種はクロマトグラフィーにより分離可能であるが、そのような操作はかなりの損失を確実にもたらし、及び/又はプロセスを経済的に存続し得なくする可能性が高い。C272及びC275残基を含有するペプチドにhtCBS C15SのマレイミドPEG化をマッピングし、前者の残基が修飾のための主な部位であった。いずれかのCys残基の突然変異誘発がPEG化の再現性を増加させた可能性が最も高いが;しかしながら、ヘム飽和及び触媒活性のかなりの低減が予期された。参照により全体として本明細書に組み込まれるタオカ(Taoka)ら著、バイオケミストリー(Biochemistry)、2002年、第41巻、第33号、p.10454~61参照。
【0021】
PEG化のための類似の方針が、フェニルアラニンアンモニア-リアーゼ(PAL)に基づくフェニルケトン尿症のためのERTの開発において用いられた。本明細書に記載のCBSとは異なり、PALは、シアノバクテリア及び真菌種に由来する四量体非哺乳動物酵素である。参照により全体として本明細書に組み込まれるサルキシャン(Sarkissian)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2008年、第105巻、第52号、p.20894~9参照。したがって、このような外来タンパク質の免疫原性はかなりの懸念を表し、PALについて種々のPEG化プロトコルが試験された。参照により全体として本明細書に組み込まれるガメス(Gamez)ら著、「分子療法(Molecular therapy)」、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ソサエティ・オブ・ジーン・セラピー(journal of the American Society of Gene Therapy)、2005年、第11巻、第6号、p.986~9参照。PALは、直鎖5kDaから分枝鎖40kDaサイズまでの範囲のNHSエステルPEGとコンジュゲートされ、直鎖20kDaのPEG-PALコンジュゲートが性能の増加を実証し、最良に免疫原性をマスクした。PEG-PAL免疫原性の低減は、PALサブユニットに付着しているPEGの数に正比例し、ゲルベース推定値のPAL単量体当たり6~8つのPEGが最も効率的に免疫応答を抑制した。ガメス(Gamez)ら参照。
【0022】
PEG-PALがPKUマウスモデルに投与された場合、血漿フェニルアラニンレベルは、短期試験において0に下がり、初回免疫応答の克服後、長期試験においても0に下がった。参照により全体として本明細書に組み込まれるサルキシャン(Sarkissian)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA)、2008年、第105巻、第52号、p.20894~9参照。Hcy代謝及び病態生理学を考慮することが必要である。Hcyは、フェニルアラニンとは異なり、種々の化学形態(総Hcyプールの率として):チオラクトン形態(<1%)、遊離還元形態(約2%)、ジスルフィド形態(約18%)、及びタンパク質結合形態(約80%)で血漿中に存在する酸化還元活性チオール基含有分子である。それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれるレフサム(Refsum)ら著、クリニカル・ケミストリー(Clin Chem)、1985年、第31巻、p.624~628;ラスムッセン(Rasmussen)ら著、アヌルズ・オブ・クリニカル・バイオケミストリー(Ann Clin Biochem)、2000年、第37巻、第5部、p.627~48;ジャクボウスキー,H.(Jakubowski,H.)著、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal Biochem)、2002年、第308巻、第1号、p.112~9。
【0023】
遊離Hcyは、HCUにおいて総血漿Hcyの10~25%にかなり増加される。マンスール(Mansoor)ら著、メタボリズム(Metabolism)、1993年、第42巻、p.1481~1485参照。さらに、Hcyは、ホモシスチン尿症において、血漿アルブミンに結合しているCysとかなり置き換わり、それはHCUに見出される血漿Cysのレベルの減少に寄与し得る。参照により全体として本明細書に組み込まれるバーオ(Bar-Or)ら著、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem Biophys Res Commun)、2004年、第325巻、第4号、p.1449~53参照。アルブミンはもっぱら肝臓中で合成され、健常ヒトにおける33~52g/lのその血漿濃度は約40%にのみ相当する一方、残りの約60%のアルブミンは血管外空間中に留まる。参照により全体として本明細書に組み込まれるボルト(Boldt)ら著、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・アネスセジア(Br J Anaesth)、2010年、第104巻、第3号、p.276~84参照。理論的には、遊離HcyのみがCBSについての基質を表す。したがって、20NHS PEG-htCBS C15Sの連続投与時のHOマウスにおける総Hcyの50~80%の減少は、他の形態(ジスルフィド及びタンパク質結合)と比較して遊離Hcyを優先する代謝産物の均衡へのシフトにより説明することができる。参照により全体として本明細書に組み込まれるバブリル(Bublil)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2016年、第126巻、第6号、p.2372~84及び国際出願第PCT/2016/061050号明細書参照。循環中の20NHS PEG-htCBS C15Sは、過剰のHcyのための「シンク」として機能してHcy血漿レベルを改善する。レベルを正常化し得ない考えられる理由は、細胞内Hcyの継続的なフラックス(特に、新たに合成されたアルブミンに結合しているHcyとして肝臓から)、血管内及び外Hcyプール間の動的均衡(大部分がアルブミンにより媒介される)、並びに総Hcyプールのジスルフィド及びタンパク質結合形態を優先するホモシスチン尿症誘導酸化促進性環境であり得た。それにもかかわらず、近年公開されたHCUの診断及び管理についての指針は、重度の合併症の進行及び/又は発生を予防するために100μM未満の血漿総Hcyの保持を推奨した。参照により全体として本明細書に組み込まれるモリス(Morris)ら著、「シスタチオニンβ-シンターゼ欠損の診断及び管理についての指針(Guidelines for the diagnosis and management of cystathionine beta-synthase deficiency)」、ジャーナル・オブ・インヘリテッド・メタボリック・ディジーズ(J Inherit Metab Dis)、2016年参照。値は、食餌1kg当たり4~5gのMet(タンパク質の18~19%に対応する)を含有する標準的な未制限通常食を給餌されたホモシスチン尿症HOマウスからの本明細書における結果から外挿される。20NHS PEG-htCBS C15SのヒトHCU患者への投与は、いかなる追加の治療もなしで指針により推奨される血漿における総Hcyレベルをもたらす。本明細書における結果に基づき、HCUのためのERTとして20NHS PEG-htCBS C15Sを使用するヒトにおけるGLP毒性(GLP-tox)試験が開始された。
【0024】
II.PEG化htCBS C15Sを特徴付けする方法
A.htCBS C15SのPEG化(PEG-htCBS C15S)の程度
ある実施形態において、htCBS C15SのPEG化の程度を使用して個々のPEG-htCBS C15Sについての判定基準を定義することができる。一部の実施形態において、PEG分子は、ME-200GS(20NHSとしても公知)である。
【0025】
ある実施形態において、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、処理の間のPEG-htCBS C15Sのバッチを非修飾htCBS C15Sと比較する。不十分にPEG化されたhtCBSバッチは、許容可能なPEG化についての保持時間よりも長い保持時間により同定される。ある実施形態において、約9.5分間、約9.75分間、約10分間、及び約10.25分間よりも長い保持時間は、不十分なPEG化(<1つのPEG/タンパク質又は<5つのPEG/タンパク質)を示す。例えば、9.6~9.7分間、例えば、9.67分間の保持時間は、不十分なPEG化を示し得る。
【0026】
ある実施形態において、約9.6分間、約9.4分間、約9.2分間、及び約9分間よりも短い保持時間は、許容可能なPEG化(少なくとも1つのPEG/タンパク質)を示すことが決定された。例えば、9.5~9.6分間、例えば、9.53分間の保持時間は、許容可能なPEG化を示し得る。
【0027】
一部の実施形態において、追加のPEG分子を不十分なPEG化バッチについて反応混合物に添加してPEG化の程度を潜在的にレスキューすることができる。SEC-HPLCによる比較は、PEG化プロセスの間に複数回実施することができる。或いは、SEC-HPLCによる比較は、PEG化プロセスの間に1回実施することができる。
【0028】
ある実施形態において、非キャピラリー電気泳動を使用して複数のPEG-htCBS C15S種を定量する。PEG-htCBS C15Sの不十分にPEG化されたバッチを、非修飾酵素の存在及び低分子量PEG-htCBS C15S種の発生の増加により同定した。ある実施形態において、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を使用してペプチド当たりのPEG分子数を推定する。ある実施形態において、少なくとも7つのPEG化リジンが、許容可能なPEG化を有するPEG化htCBS C15S中で修飾されていると観察される。例えば、htCBS C15SのK25、K30、K211、K247、K271、K405、及びK406をPEG化することができる。リジンは、変動するPEG化の程度を有し得る。より具体的には、htCBS C15SのK25及びK30を完全な程度にPEG化することができる一方、他のリジンを部分的にPEG化することができる。
【0029】
ある実施形態において、許容可能なPEG化は、htCBS C15Sタンパク質当たり約5つのPEG化部位と定義される。或いは、許容可能なPEG化は、htCBS CBSタンパク質当たり1~5つのPEG化部位、3~7つのPEG化部位、及び5~9つのPEG化部位の少なくとも1つの範囲から選択することができる。例えば、htCBS C15Sの許容可能なPEG化は、タンパク質当たり1つのPEG化リジンを含み得る。或いは、htCBS C15Sの許容可能なPEG化は、タンパク質当たり約5つのPEG化リジンを含み得る。
【0030】
B.PEGコンジュゲーションの最適化
種々のアプローチ、例えば、修飾酵素の収量を向上させるためのPEG化前のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)によるアクセス可能なシステインの還元又はプロセスにおける一貫性を得るための複数のPEG化スキームが、PEG化の一貫性を部分的に改善することが既に観察されている。
【0031】
htCBSのマレイミドPEG化は、部位特異的であり得る。ある実施形態において、htCBS C15Sは、マレイミドPEG化の間に最初にC272においてPEG化される。或いは、htCBS C15Sは、マレイミドPEG化の間にC272及びC275においてPEG化される。
【0032】
或いは、htCBS C15Sは、5、10、又は20kDaの直鎖NHSエステルPEG分子の少なくとも1つによりPEG化することができる。ある実施形態において、NHSエステルPEG分子によるhtCBS C15SのPEG化は、再現可能なパターンをもたらす。ある実施形態において、PEG化は、CBSタンパク質に対して20倍過剰までのPEG分子により実施される。例えば、htCBS C15SのPEG化は、約10倍~20倍過剰の5kDaのNHSエステルPEG(5NHS)、10kDaのNHSエステルPEG(10NHS)、又は20kDaのNHSエステルPEG(20NHS)分子により実施される。
【0033】
或いは、PEG化は、CBSタンパク質に対して約40倍~約60倍過剰のPEG分子により実施される。一態様において、htCBS C15SのPEG化は、約40倍過剰の5kDaのNHSエステルPEG(5NHS)、10kDaのNHSエステルPEG(10NHS)、又は20kDaのNHSエステルPEG(20NHS)分子により実施される。或いは、htCBS C15SのPEG化は、約40倍過剰未満の5kDaのNHSエステルPEG(5NHS)、10kDaのNHSエステルPEG(10NHS)、又は20kDaのNHSエステルPEG(20NHS)分子により実施される。
【0034】
ある実施形態において、クロマトグラフィー精製からの残留硫酸アンモニウムをCBSタンパク質の非修飾バッチ、例えば、非修飾htCBS C15Sから除去し、残留硫酸アンモニウムを含有する混合物におけるhtCBS C15SのPEG化パターンの再現性と比較してPEG化パターンの再現性を増加させる。例えば、硫酸アンモニウムは、緩衝液交換技術を使用して除去することができる。
【0035】
PEG化後、透析濾過膜の表面積を増加させることにより未反応PEG分子をPEG化混合物から除去してその粘度を低減させる。例えば、表面積は、約2倍、約3倍、又は約4倍だけ増加される。或いは、粘度は、PEG化混合物を希釈することにより低減させることができる。例えば、PEG化混合物を約2倍だけ希釈する。ある実施形態において、未反応PEG分子又は非修飾htCBS C15Sを混合物から除去して免疫原性を低減させる。
【0036】
III.PEG化htCBS C15Sによる処理
ある実施形態において、哺乳動物に、5kDaのエステルNHS PEG分子又は20kDaのエステルNHS PEG分子によりPEG化されたhtCBS C15Sを投与することができる。例えば、5NHS PEG-htCBS C15S又は20NHS PEG-htCBS C15S。5NHS PEG-htCBS C15S又は20NHS PEG-htCBS C15Sの投与は、血漿中又は腎臓、肝臓、若しくは脳組織中のHcyのレベルを少なくとも40%だけ低減させる。例えば、Hcyレベルは、40%超、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも99%だけ低減される。5NHS PEG-htCBS C15S又は20NHS PEG-htCBS C15Sの投与は、血漿中又は腎臓、肝臓、若しくは脳組織中のCthのレベルを少なくとも70%だけ増加させる。例えば、Cthレベルは、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも99%だけ増加される。5NHS PEG-htCBS C15S又は20NHS PEG-htCBS C15Sの投与は、血漿中又は腎臓、肝臓、若しくは脳組織中のCysのレベルを少なくとも30%だけ増加させる。例えば、Cysレベルは、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも99%だけ増加される。
【0037】
20NHS PEG-htCBS C15Sの投与は、血漿中又は腎臓、肝臓、若しくは脳組織中のホモランチオニン(Hlth)のレベルを少なくとも50%だけ低減させ得る。例えば、Hlthレベルは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも99%だけ低減される。
【0038】
20NHS PEG-htCBS C15Sの投与の治療効果は、少なくとも24時間の少なくとも12時間、少なくとも48時間、又は少なくとも72時間継続し得る。具体的には、治療効果は、約24時間継続し得る。
【0039】
S-アデノシルメチオニン(SAM)及びS-アデノシルホモシステイン(SAH)は、メチオニンサイクルの隣接部分の間でメチオニンのホモシステインへの変換に関与する代謝産物である。本明細書における参照により全体として本明細書に組み込まれるクリジト(Krijt)ら著、ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー B アナリティカル・テクノロジーズ・イン・ザ・バイオメディカル・アンド・ライフサイエンシズ(J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.)、2009年、7月15日、第877巻、第22-3号、p.2061~2066参照。ある実施形態において、ホモシスチン尿症は、S-アデノシルメチオニン(SAM)とS-アデノシルホモシステイン(SAH)との比(SAM/SAH)の低減をもたらし、それはメチル化能の減少を示す。ある実施形態において、SAM/SAH比は、対象へのPEG-htCBS C15Sの投与により増加させ、又は正常化することができる。例えば、20NHS PEG-htCBS C15Sコンジュゲートの投与は、SAH蓄積を低減させ、したがって、SAM/SAH比を増加させ、それにより対象における代謝産物の均衡を正常化する。
【0040】
IV.投薬及び投与
ある実施形態において、PEG-htCBS C15Sは、非経口投与により対象に投与することができる。
【0041】
ある実施形態において、PEG-htCBS C15Sは、皮下(SC)、静脈内(IV)又は腹腔内(IP)注射により対象に投与することができる。非限定的な例として、PEG-htCBS C15Sは、皮下投与により対象に投与することができる。非限定的な例として、PEG-htCBS C15Sは、静脈内投与により対象に投与することができる。非限定的な例として、PEG-htCBS C15Sは、腹腔内投与により対象に投与することができる。
【0042】
ある実施形態において、PEG-htCBS C15Sは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は20回超、対象に投与することができる。
【0043】
ある実施形態において、PEG-htCBS C15Sの投与は、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、4ヵ月間、5ヵ月間、6ヵ月間、7ヵ月間、8ヵ月間、9ヵ月間、10ヵ月間、11ヵ月間、1年間、13ヵ月間、14ヵ月間、15ヵ月間、16ヵ月間、17ヵ月間、又は18ヵ月間ごとに反復することができる。
【0044】
ある実施形態において、PEG-htCBS C15Sの投与は、数分間、数時間、数日間又は数週間空けた投与系列であり得る。投与系列の回数は、2、3、4、5又は6回であり得る。非限定的な例として、対象は、24時間空けて3回投与で投与される。別の非限定的な例として、対象は、12時間空けて5回投与で投与される。
【0045】
ある実施形態において、PEG-htCBS C15Sの投与は、第1の投与系列及び第2の投与系列間の間隔を有する投与系列の投薬スケジュールに従い得る。投与間の間隔は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、12ヵ月、13ヵ月、14ヵ月、15ヵ月、16ヵ月、17ヵ月、又は18ヵ月であり得る。投与系列の回数は、2、3、4、5又は6回であり得る。非限定的な例として、対象に、5回の第1投与系列を12時間空けて投与することができ、次いで第1投与の14日後、対象に5回の第2投与系列を12時間空けて投与する。別の非限定的な例として、対象に、2つの投与系列を8週間の期間にわたり投与し、第1の系列は、2週間、週2回、1回の投与であり、第2の投与系列は、6週間、週3回である。
【0046】
一実施形態において、PEG-htCBS C15Sは、対象にベタインを投与した後に少なくとも1回投与することができる。ベタイン投与及びPEG-htCBS C15S間の時間は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、4ヵ月間、5ヵ月間、6ヵ月間、7ヵ月間、8ヵ月間、9ヵ月間、10ヵ月間、11ヵ月間、12ヵ月間、13ヵ月間、14ヵ月間、15ヵ月間、16ヵ月間、17ヵ月間、又は18ヵ月間であり得る。非限定的な例として、PEG-htCBS C15Sは、対象にベタインを投与して14日後に投与することができる。別の非限定的な例として、対象にベタインを投与した後に2回投与で対象に投与することができる。PEG-htCBS C15S突然変異体は、ベタイン投与の14及び15日後に投与することができる。
【0047】
一実施形態において、PEG-htCBS C15S突然変異体は、ベタインとの組合せで対象に投与することができる。組合せは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回又は15回超投与することができる。
【0048】
一実施形態において、PEG-htCBS C15S突然変異体は、対象が最初にベタインを受けた後にベタインとの組合せで対象に投与することができる。組合せ治療及び最初のベタイン投与間の時間は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、4ヵ月間、5ヵ月間、6ヵ月間、7ヵ月間、8ヵ月間、9ヵ月間、10ヵ月間、11ヵ月間、12ヵ月間、13ヵ月間、14ヵ月間、15ヵ月間、16ヵ月間、17ヵ月間、又は18ヵ月間であり得る。非限定的な例として、組合せは、対象に最初にベタインを投与して14日後に投与することができる。別の非限定的な例として、対象に最初にベタインを投与した後に2回投与で対象に投与することができる。組合せは、ベタイン投与の14及び15日後に投与することができる。
【0049】
一実施形態において、対象に投与されるPEG-htCBS C15S突然変異体の用量は、0.01mg/kg~1mg/kg、例えば、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg若しくは1mg/kg、又は5~8mg/kg、例えば、5mg/kg、5.5mg/kg、6mg/kg、6.5mg/kg、7mg/kg、7.5mg/kg若しくは8mg/kgであり得る。或いは、対象に投与されるPEG-htCBS C15S突然変異体の用量は、約2mg/kg~約8mg/kg、約4mg/kg~約16mg/kg、約6mg/kg~24mg/kgであり得る。例えば、用量は、約24mg/kg又は約8mg/kgである。
【0050】
一実施形態において、PEG-htCBS C15Sは、CBSDHを治療するための別の治療薬と同時投与することができる。本明細書において使用される「同時投与する」は、2つ以上の構成成分の投与を意味する。同時投与のための構成成分としては、限定されるものではないが、PEG-htCBS C15S、ベタイン又はビタミンB6が挙げられる。同時投与は、同時又は投与間の時間差、例えば、1秒間、5秒間、10秒間、15秒間、30秒間、45秒間、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、20分間、21分間、22分間、23分間、24分間、25分間、26分間、27分間、28分間、29分間、30分間、31分間、32分間、33分間、34分間、35分間、36分間、37分間、38分間、39分間、40分間、41分間、42分間、43分間、44分間、45分間、46分間、47分間、48分間、49分間、50分間、51分間、52分間、53分間、54分間、55分間、56分間、57分間、58分間、59分間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、1.5日間、2日間又は3日間超の時間差での2つ以上の構成成分の投与を指す。
【0051】
V.定義
本明細書において使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、複数の参照対象を含む。したがって、例えば、「ポリマー」への言及は、単一ポリマー及び同一又は異なるポリマーの2つ以上を含み、又は「賦形剤」への言及は、単一の賦形剤及び同一又は異なる賦形剤の2つ以上などを含む。
【0052】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限及び下限間のそれぞれの介在値並びにその記述範囲内の任意の他の記述又は介在値が本開示内に包含され、具体的に開示されることが意図される。例えば、1μm~8μmの範囲が記述される場合、1μm以上の値の範囲及び8μm以下の値の範囲だけでなく、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、及び7μmも明示的に開示されることが意図される。
【0053】
「組換え体」は、例えば、細胞、核酸、ポリペプチド、発現カセット又はベクターに関して使用される場合、新たな部分の導入若しくは既存の部分の変更により改変されており、若しくはそれらと同一であるが、合成材料から産生され、若しくはそれに由来する材料、又はその材料の天然若しくは天然形態に対応する材料を指す。例えば、組換え細胞は、その細胞の天然(非組換え)含む形態内で見出されない遺伝子(すなわち、「外因性核酸」)を発現し、又は他では異なるレベルにおいて発現され、典型的には、過少発現され、若しくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0054】
組換え技術としては、例えば、発現系、例えば、発現ベクター中への挿入のためのタンパク質又はアンチセンス配列をコードする組換え核酸、例えば、cDNAの使用を挙げることができ;得られる構築物を細胞中に導入し、細胞は、適宜、核酸、及びタンパク質を発現する。組換え技術は、融合タンパク質の発現、タンパク質の構成的発現、又はタンパク質の誘導性発現のための1つの発現カセット又はベクター中への異なる資源からのコード又はプロモータ配列への核酸のライゲーションも包含する。
【0055】
用語「対象」、「個体」又は「患者」は、本明細書において互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物を指す。哺乳動物としては、限定されるものではないが、ヒトが挙げられる。
【0056】
「関連する」は、疾患、病態又は表現型の発生又は顕在化との一致を指す。関連は、限定されるものではないが、変更が種々の疾患及び病態についての下地を提供し得るハウスキーピング機能を担う遺伝子、特定の疾患、病態又は表現型に関与する経路の一部であるもの及び疾患、病態又は表現型の顕在化に間接的に寄与するものに起因し得る。
【0057】
「生理学的条件」又は「生理学的溶液」は、インタクトな哺乳動物細胞中の、又は生存哺乳動物の組織空間若しくは器官中の条件に実質的に類似するイオン強度、pH、及び温度を有する水性環境を指す。典型的には、生理学的条件は、約150mMのNaCl、pH6.5~7.6、及び約22~37℃の温度を有する水溶液を含む。一般に、生理学的条件は、生物学的巨大分子の分子間会合に好適な結合条件である。例えば、150mMのNaCl、pH7.4、37℃の生理学的条件が一般に好適である。
【0058】
「薬学的に許容可能な賦形剤又は担体」は、場合により、本発明の組成物中に含めることができ、患者に対する顕著な有害毒性効果を引き起こさない賦形剤を指す。この用語は、活性化合物(たとえば、PEG-htCBS C15S)と会合させて哺乳動物対象の体内に取り込むことができ、対象に対する顕著な有害毒性効果を示さない賦形剤を指す。
【0059】
本明細書において使用される用語「賦形剤」又は「ビヒクル」は、それ自体は治療剤でなく、治療剤の送達のための担体として使用され、対象、例えば、哺乳動物への投与に好適であり、又は取扱若しくは貯蔵特性を改善するため、若しくは経口投与に好適な個別の製品、例えば、カプセル剤又は錠剤への組成物の投与単位の形成を許容若しくは容易にするために医薬組成物に添加される任意の物質を意味する。賦形剤及びビヒクルは、非毒性であり、組成物の他の構成成分との有害的な相互作用を示さない当分野において公知の任意のそのような材料、例えば、任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などを含む。投与は、経口投与、吸入、腸内投与、摂食又は静脈内注射による摂取を意味し得る。賦形剤としては、標準的な医薬賦形剤を挙げることができ、ヒト及び/又は動物消費用の食料及び飲料、飼料又は餌配合物又は他の食材を調製するために使用することができる任意の構成成分を挙げることもできる。
【0060】
「浸透剤」、「薬物」、及び「薬理学的に活性な薬剤」又は任意の他の類似用語は、限定されるものではないが、(1)生物に対する予防効果を有すること及び不所望な生物学的効果を予防すること、例えば、感染の予防、(2)疾患により引き起こされる病態を軽減すること、例えば、疾患の結果として引き起こされる疼痛若しくは炎症を軽減すること、並びに/又は(3)生物から疾患を軽減、低減、若しくは完全に排除することのいずれかを例として挙げることができる所望の生物学的又は薬理学的効果を誘導する当分野において既に公知の方法による、並びに/又は本開示において教示される方法による投与に好適な任意の化学又は生物学的材料又は化合物、例として、ペプチドを意味する。効果は局所的であり得、例えば、局所麻酔効果の提供、又は全身性であり得る。本開示は、新規浸透剤に関するものでも、新たなクラスの活性剤に関するものでもない。むしろ、本開示は、技術水準に存在し、又は活性剤として後に確立され得、本開示による送達に好適な薬剤又は浸透剤の送達の方式に限定される。
【0061】
用語「約」は、特に、所与の量に関して、5パーセントの範囲のずれを包含することを意味する。
「任意選択」又は「場合により」は、続いて記載される状況が、存在してもしなくてもよく、生じても生じなくてもよく、その結果、記載がその状況が存在し、又は生じる場合及びその状況が存在もせず、生じもしない場合を含むことを意味する。
【0062】
ある特徴部又は実体の「実質的に不存在」又は「実質的に有さない」は、特徴部又は実体のほぼ完全に又は完全に不存在であることを意味する。例えば、PEG-htCBS C15Sが投与された対象について、観察可能な副作用の実質的な不存在は、このような副作用が検出不能であり、又は無視可能な程度、例えば、未治療患者において観察される同一の副作用の頻度又は強度のいずれかと比較して約50%以上だけ低減する程度又は頻度でのみ生じることを意味する。
【0063】
本組成物に関する用語「薬理学的有効量」又は「治療有効量」は、治療すべき対象における血流中又は作用部位(例えば、細胞内)における所望レベルを提供するため、及び/又は所望の生理学的、生物物理学的、生化学的、薬理学的又は治療応答、例えば、ホモシスチン尿症の顕在化の改善を提供するための活性剤(又は活性剤を含有する組成物)の非毒性であるが十分な量を指す。要求される正確な量は対象ごとに変動し、多数の因子、例えば、活性剤、組成物の活性、用いられる送達デバイス、組成物の物理的特徴、意図される患者使用(すなわち、1日当たりの投与用量の回数)、並びに患者の検討事項、例えば、対象の種、年齢、及び全身状態、治療される病態の重症度、対象により摂取される追加の薬物、投与方式などに依存する。これらの因子及び検討事項は、本明細書において提供される情報に基づき当業者により容易に決定することができる。任意の個々の症例における適切な「有効」量は、本明細書において提供される情報に基づき定型的な実験を使用して当業者により決定することができる。
【0064】
用語「生物学的活性」は、当業者により典型的に核酸又はタンパク質に帰属される任意の生物学的活性を指す。生物学的活性の例は、酵素活性、二量体化、フォールド又は別のタンパク質若しくは核酸分子に結合する能力などである。
【0065】
用語「核酸」は、RNAの形態又はDNAの形態であり得、それとしては、メッセンジャーRNA、合成RNA及びDNA、cDNA、及びゲノムDNAが挙げられる。DNAは、二本鎖又は一本鎖であり得、一本鎖の場合、コード鎖又は非コード(アンチセンス、相補)鎖であり得る。
【0066】
本明細書において使用される「バリアント」は、公的配列データベース、例えば、ジェンバンク(GenBank)における配列により例示される野生型核酸又はアミノ酸配列と同一でないが、その全長にわたり顕著な相同性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有する核酸、タンパク質又はポリペプチドである。本明細書において使用される「タンパク質、ポリペプチド又はそれらのペプチド断片」は、全長タンパク質又は通常、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15アミノ酸長のアミノ酸配列を有するその一部を意味するが、ジペプチド、トリペプチド及びテトラペプチドも本開示により企図及び包含される。
【0067】
本明細書において使用される「突然変異体」は、グリコシル化、タンパク質安定化及び/又はリガンド結合に関する特性又は機能を変更するように設計又は遺伝子操作される突然変異タンパク質である。
【0068】
所与の細胞、ポリペプチド、核酸、形質又は表現型に関する本明細書において使用される用語「天然」又は「野生型」は、天然において典型的に見出される形態を指す。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」及び「ペプチド」は、それらの慣習的な意味を有し、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、脂質化、ミリスチル化、ユビキチン化など)にかかわらず、アミド結合により共有結合している少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを示すために互換的に使用される。さらに、本明細書に記載のポリペプチドは規定の長さに限定されない。この定義内に、D-及びL-アミノ酸、並びにD-及びL-アミノ酸の混合物が含まれる。この用語はまた、天然存在及び非天然存在の両方のポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、並びに当分野において公知の他の修飾を指さず、排除もしない。ポリペプチドは、タンパク質全体、又はその下位配列であり得る。ポリペプチドは、ポリペプチドの免疫原性特性を実質的に担い、免疫応答を誘発し得るエピトープ、すなわち、抗原決定基を含むアミノ酸下位配列も指し得る。
【0069】
「に対応する位置」は、別の参照核酸分子又はタンパク質中の位置に対する核酸分子又はタンパク質中の目的の位置(すなわち、塩基番号又は残基番号)を指す。対応する位置は、例えば、配列間の同一性が90%超、95%超、96%超、97%超、98%超又は99%超になるように、配列を比較及びアラインしてマッチするヌクレオチド又は残基の数を最大化することにより決定することができる。次いで、目的の位置に、参照核酸分子において割り当てられる番号を付与する。例えば、遺伝子Xの特定の多型が配列番号Xのヌクレオチド2073において生じる場合、別のアレル又は単離株中の対応するヌクレオチドを同定するため、配列をアラインし、次いで2073と一致する位置を同定する。種々のアレルが異なる長さであり得るため、2073と命名される位置は、ヌクレオチド2073であるとは限らないが、その代わり、参照配列中の位置に「対応する」位置である。
【0070】
「配列同一性の割合」及び「相同性の割合」は、ポリヌクレオチド間及びポリペプチド間の比較を指すために本明細書において互換的に使用され、2つの最適にアラインされた配列を比較窓にわたり比較することにより決定され、比較窓中のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適アラインメントのために参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。割合は、同一核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列中で生じる位置の数を決定してマッチ位置の数を得ること、マッチ位置の数を比較窓中の位置の総数により割ること、及び結果に100を掛けて配列同一性の割合を得ることにより計算することができる。或いは、割合は、同一の核酸塩基若しくはアミノ酸残基が両方の配列中で生じ、又は核酸塩基若しくはアミノ酸残基がギャップを用いてアラインされる位置の数を決定してマッチ位置の数を得ること、マッチ位置の数を比較窓中の位置の総数により割ること、及び結果に100を掛けて配列同一性の割合を得ることにより計算することができる。当業者は、2つの配列をアラインするために利用可能な多くの確立されたアルゴリズムが存在することを認識する。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、スミス(Smith)及びウォーターマン(Waterman)著、アドバンシズ・イン・アプライド・マスマティクス(Adv.Appl.Math.)、第2巻、p.482、1981年のローカルホモロジーアルゴリズムにより、ニードルマン(Needleman)及びブンシュ(Wunsch)著、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、第48巻、443、1970年のホモロジーアラインメントアルゴリズムにより、ピアソン(Pearson)及びリップマン(Lipman)著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA)、第85巻、p.2444、1988年の類似性検索方法により、それらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(GCGウィスコンシンソフトウェアパッケージ(GCG Wisconsin Software Package)中のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、又は目視調査(一般に、カレント・プロトコルズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology)、F.M.オースベル(F.M.Ausubel)ら編、カレント・プロトコルズ(Current Protocols)、グリーン・パブリッシング・アソシエイツ有限会社(Greene Publishing Associates,Inc.)及びジョン・ウィリー・アンド・サンズ有限会社(John Wiley & Sons,Inc.)のジョイントベンチャー(1995年、補遺)(オースベル(Ausubel))参照)により実施することができる。配列同一性パーセント及び配列類似性の決定に好適なアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、それぞれアルツシュール(Altschul)ら著、1990年、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、第215巻、p.403~410及びアルツシュール(Altschul)ら著、1977年、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、p.3389~3402に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センターのウェブサイトを介して公的に利用可能である。このアルゴリズムはまず、データベース配列中の同一長さのワードとアラインした場合にある程度の正の値の閾値スコア「T」にマッチし、又はそれを満たすクエリー配列中の長さ「W」の短いワードを同定することにより、高スコアリング配列ペア(HSP)を同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と称される(アルツシュール(Altschul)ら、上記を参照)。これらの最初の隣接ワードヒットはそれらを含有する、より長いHSPを見出す探索を開始するための「シード」として作用する。次いで、累積的アラインメントスコアを増加させることができる限り、それぞれの配列に沿って両方向へ文字ヒットを延長させる。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチする残基対のためのリワードスコア;常に>0)及びN(ミスマッチの残基のためのペナルティースコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列については、累積スコアを計算するためにスコアリングマトリックスを使用する。ワードヒットのそれぞれの方向への延長は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ減少した場合;1以上の負のスコアの残基のアラインメントの蓄積に起因してその累積スコアがゼロ以下になった場合;又はいずれかの配列が終わりに達した場合に停止する。ブラスト(BLAST)アルゴリズムパラメータW、T及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。ブラストN(BLASTN)プログラム(ヌクレオチド配列用)はデフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、ブラストP(BLASTP)プログラムは、デフォルトとしてワード長(W)3及び期待値(E)10、並びにブロサム62(BLOSUM62)スコアリングマトリックス(ヘニコフ(Henikoff)及びヘニコフ(Henikoff)著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第89巻、p.10915、1989年を参照)を使用する。
【0071】
上記アルゴリズム及びプログラムの全てが配列アラインメント及び%配列同一性の決定に好適である一方、本明細書における開示の目的のため、%配列同一性の決定は、典型的には、GCGウィスコンシンソフトウェアパッケージ(GCG Wisconsin Software package)中のベストフィット(BESTFIT)又はギャップ(GAP)プログラム(アクセルリス(Accelrys)(登録商標)、マディソン、ウィスコンシン)を使用して、提供されるデフォルトパラメータを使用して実施する。
【0072】
用語「L又はD型アミノ酸」は、本明細書に記載のペプチドに関連して使用することができる。当業者により認識されるとおり、本発明の化合物を構成する種々のX残基は、それらのCα炭素についてのL-又はD-立体配座のいずれかであり得る。一実施形態において、特定の化合物のCα炭素の全ては、同一の立体配座である。本発明の一部の実施形態において、化合物は、1つ以上のCα炭素についての規定のキラリティを含み、及び/又は化合物に規定の特性を付与するよう規定の位置における非ペプチド結合を含む。例えば、全部又は一部がD-アミノ酸により構成されるペプチドがそれらの対応するL-ペプチド相当物よりもプロテアーゼに耐性であることは周知である。したがって、一実施形態において、化合物は、全部又は一部がD-アミノ酸により構成されるペプチドである。或いは、プロテアーゼに対する良好な安定性を有する化合物としては、規定の位置における逆極性のペプチド結合を含むペプチドアナログを挙げることができる。例えば、トリプシン様プロテアーゼに対する安定性を有する化合物としては、それぞれのL-Arg又はL-Lys残基前の逆極性のペプチド結合を有するペプチドアナログが挙げられ;キモトリプシン様プロテアーゼに対する安定性を有する化合物としては、それぞれの小及び中サイズのL-脂肪族残基又はL-非極性残基前の逆極性のペプチド結合を有するペプチドアナログが挙げられる。別の実施形態において、プロテアーゼに対する安定性を有する化合物としては、全部が逆極性のペプチド結合から構成されるペプチドアナログが挙げられる。プロテアーゼに対する安定性を有する他の実施形態は、当業者に明らかである。化合物の追加の具体的な実施形態は、本明細書において記載される。
【0073】
PEG-htCBS C15Sタンパク質の設計、調製、製造及び/又は配合のための組成物、方法、プロセス、キット及び装置が本明細書に記載される。本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の添付の詳細な説明に記載される。本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の材料及び方法を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい材料及び方法を目下記載する。本発明の他の特徴部、目的及び利点は、詳細な説明から明らかである。詳細な説明において、単数形は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り複数形も含む。特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解される意味と同一の意味を有する。矛盾する場合、本詳細な説明が優先される。
【0074】
本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。
(実施例)
実施例1
実験手順
A.化学薬品
特に記述のない限り、全ての材料はシグマ-アルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)(登録商標)又はフィッシャー・サイエンティフィック(FISHER SCIENTIFIC)(商標)から購入した。L-[14C]-セリンはパーキン・エルマー(PERKIN ELMER)(登録商標)ライフ・サイエンシズ(Life Sciences)から入手した。
【0075】
B.動物
全ての動物手順は、AAALACインターナショナル(AAALAC INTERNATIONAL)(登録商標)認可(番号00235)、公衆衛生局保証(番号A3269-01)及びUSDAライセンス許諾(番号84-R-0059)機関である、コロラド大学デンバー校動物実験委員会(University of Colorado Denver Institutional Animal Care and Use Committee ))(IACUC)による動物プロトコル番号B-49414(03)1Eのもと承認された。「ヒューマンオンリー」(HO)マウスを事前に生成し、参照により全体として本明細書に組み込まれるマクリーン(Maclean)ら著、モレキュラー・ジェネティクス・アンド・メタボリズム(Mol.Genet.Metab.)、2010年、第101巻、第2-3部、p.153~62;バブリル(Bublil)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2016年、第126巻、第6号、p.2372~84;及び国際出願第PCT/2016/061050号明細書に記載のとおり繁殖させ、ゲノタイピングした。動物をテクラッド・グローバル・ロデント・ダイエッツ(TEKLAD GLOBAL RODENT DIETS)(登録商標)(ハーラン(Harlan)、リバーモア、カリフォルニア、米国)製の押出成形標準食2918、2919、又は2920X上で維持した。ゲルを有するキャピジェクト(CAPIJECT)(登録商標)T-MLHGリチウムヘパリン(12.5IU)チューブ(テルモ・メディカル・コーポーレーション(Terumo Medical Corporation)、ニュージャージ、米国)中への血液回収に顎下線採血用の使い捨てランセットを使用した。次いで、チューブを1,200×gにおいて10分間遠心分離し、次いで血漿を1.5mlチューブに移し、-80℃において貯蔵した。
【0076】
C.代謝産物濃度の測定
既に記載されている安定同位体希釈ガスクロマトグラフィー質量分析により、血漿代謝産物を測定した。アレン(Allen)ら著、メタボリズム(Metabolism)、1993年、第42巻、p.1448~1460参照。分析は、動物ゲノタイプ及び/又は治療レジメンを不明にする盲検様式で実施した。
【0077】
D.サイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)
バイオSEC(BioSEC)-5 7.8×300mm、1000Åポアサイズカラム(アジレント(Agilent)、カリフォルニア、米国)上でCBS及びPEG-htCBS C15S調製物を分離した。カラムを100mMのリン酸ナトリウム、pH6.8、150mMのNaCl中で平衡化し、1ml/分の流速において室温において操作した。10μlの試料ループを介して、移動相中で2mg/mlの最終濃度に希釈されたタンパク質試料をカラム上でロードし、UV検出器を225nmの波長において使用して検出した。クロマトグラムを記録し、32カラット(32karat)ソフトウェア(ベックマン・コールタ(BECKMAN COULTER)(登録商標)、カリフォルニア、米国)を使用して分析した。
【0078】
E.非還元キャピラリー電気泳動(NR-CE)
30cmの長さ、50μmのIDの裸溶融シリカキャピラリーを備えたPA800キャピラリー電気泳動システム(ベックマン・コールタ(BECKMAN COULTER)(登録商標)、カリフォルニア、米国)上でCBS及びPEG-htCBS C15S調製物を分析した。キャピラリーを切断して試料導入インレットから検出窓まで約20cmの距離で全長30cmを提供し、100×800μmの開口部を有するカートリッジ中に設置した。キャピラリーを、0.1MのNaOH洗浄液とそれに続く0.1MのHCl洗浄液によりプレコンディショニングしてからそれを水によりリンスし、SDS MW試料緩衝液により最終平衡化した。10mg/ml未満の濃度の、及び高濃度塩を含有する配合物中のタンパク質試料を水中で2回緩衝液交換して(毎回約7倍希釈)マトリックス干渉を除去し、1mg/mlの最終濃度に希釈し、80℃において5分間加熱することにより変性させた。20秒間の継続時間で電気的注入(5kV)を使用する高分解方法により試料をロードし、15kVの電圧下で50分間分離した。電気泳動図を220nmのUV波長において記録し、32カラット(32karat)ソフトウェア(ベックマン・コールタ(BECKMAN COULTER)(登録商標)、カリフォルニア、米国)を使用して分析した。
【0079】
F.タンパク質精製及びPEG化
参照により全体として本明細書に組み込まれるバブリル(Bublil)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2016年、第126巻、第6号、p.2372~84、国際出願第PCT/2016/061050号明細書に記載のとおり、C15S突然変異を担持するヒトトランケートCBS(htCBS C15S)を発現させ、精製した。精製酵素を配合し、ペリコン(PELLICON)(登録商標)XL50ウルトラセル(ULTRAcel)30カートリッジ(再生セルロース30kDa分子量カットオフ(MWCO)膜)を備えたラブスケール(LABSCALE)(商標)タンジェンシャルフローフィルタ(Tangential Flow Filter)(TFF)システム(EMDミリポア(EMD Millipore)、マサチューセッツ、米国)を使用して200mMのリン酸カリウム、pH6.5又は100mMのリン酸ナトリウム、pH7.2中に濃縮した。マレイミド又はNHSエステルカップリング基のいずれかを有する活性化PEG分子をNOFコーポーレーション(NOF Corporation)(日本)から購入した。マレイミド及びNHSエステルPEG分子によるhtCBS C15SのPEG化は、所望のモル比(典型的にはCBSタンパク質:PEG=1:10)で5mg/mlの最終タンパク質濃度にミリQ(MILLIQ)(登録商標)精製水中で溶解させたPEG分子を添加することにより、100mMのリン酸カリウム、pH6.5及び50mMのリン酸ナトリウムpH7.2中でそれぞれ実施した。反応を4℃において一晩実施した。続いて、反応混合物をミリQ(MILLIQ)(登録商標)精製水により2回希釈し、ギブコ(Gibco)1×PBS(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)、マサチューセッツ、米国)中に緩衝液交換し、ペリコン(PELLICON)(登録商標)XL50バイオマックス(Biomax)100カートリッジ(ポリエーテルスルホン100kDa MWCO膜)を有するラブスケール(LABSCALE)(商標)TFFシステムを使用して濃縮した。最終PEG-htCBS C15Sコンジュゲートを濾過滅菌し(ミリポア(Millipore)製0.2μmPVDF膜フィルタ)、アリコート化し、液体窒素中で急速冷凍し、-80℃において貯蔵した。
【0080】
G.タンパク質ゲル電気泳動
ブラッドフォードアッセイ(サーモ・ピアース(Thermo Pierce)、マサチューセッツ、米国)により製造業者の推奨に従ってウシ血清アルブミン(BSA)を標準として使用してタンパク質濃度を測定した。10%ミニ-プロティアン(Mini-PROTEAN)(登録商標)トリス-グリシン拡大(Tris-glycine extended)(TGX)ゲル(バイオラッド(BIORAD)(登録商標)、カリフォルニア、米国)を使用するSDS-PAGEにより変性タンパク質を分離した一方、ネイティブ試料を4-15%ミニ-プロティアン(Mini-PROTEAN)(登録商標)TGXゲル中でネイティブPAGEにより分離した。可視化のため、ゲルをシンプルブルー(Simple Blue)(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア、米国)により染色した。参照により全体として本明細書に組み込まれるクルフルスト(Kurfurst)ら著、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal Biochem)1992年、第200巻、第2号、p.244~8に記載のとおり、ヨウ化バリウム染色を使用して遊離PEG分子及びPEG化htCBS C15Sを可視化した。
【0081】
H.CBS活性アッセイ
標識基質としてL-[14C]-セリンを使用する既に記載されている放射性同位体アッセイにより以下の改変でCBS活性を測定した。それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれるクラウス(Kraus)ら著、メソッズ・イン・エンジモロジー(Methods Enzymol)、1987年、第143巻、p.388~94;バブリル(Bublil)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2016年、第126巻、第6号、p.2372~84参照。4又は5μlの未希釈血漿を、100μlの総容量で30分間アッセイした。20μlの反応混合物を5μLの冷過ギ酸(30%のH:100%のギ酸=1:9)と混合することにより反応を終了させ、元のプロトコルに記載のとおりさらに処理した。
【0082】
I.PEG化マッピング
ESI-QTOF質量分析器モデル6538(アジレント(Agilent)、カリフォルニア、米国)を使用してhtCBS C15Sのマレイミド及びNHSエステルPEG化のマッピングを実施した。対照としての非修飾酵素及びPEG化CBSをそのまま使用し(非修飾htCBS C15S、20NHS PEG htCBS-C15S、及び400MA PEG-htCBS C15S)、又は試料をpH 11.5で37℃において22時間インキュベートすることにより脱PEG化した(20NHS PEG-htCBS C15S)。全ての試料を消化前に緩衝液交換し、変性させ、10mMのDTTにより還元し、30mMのヨードアセトアミドによりアルキル化した。400MA PEG-htCBS C15S及び20NHS PEG-htCBS C15Sを、それぞれLys-C及びAsp-N(1:50(w/w)比、37℃)により一晩消化した。20NHS PEG-htCBS C15Sコンジュゲートはさらに2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸(NTCB)を使用して化学消化してどのシステイン残基が修飾されたかをさらに区別した。UV検出を有するRP-HPLCを使用するC18カラム(Xブリッジ(Xbridge)BEH130 3.5μm、4.6×150mm)(アジレント(Agilent))上でペプチドを分離し、マスハンター(MassHunter)ソフトウェア(アジレント(Agilent)、カリフォルニア、米国)を使用してLC/UV/MS/MSクロマトグラムを分析した。ペプチドマッピング及び配列マッチングは、バイオコンファーム(BioConfirm)パッケージ(アジレント(Agilent)、カリフォルニア、米国)を使用し、正確なアサインメントを確保するように手作業で検証して実施した。
【0083】
J.統計的分析
全てのデータは、平均±標準誤差(SEM)として提示する。2つの群の統計的比較は、対応のない両側スチューデントt検定を使用して実施した。3つ以上の因子レベルの統計的分析は、ANOVAとそれに続くテューキの多重比較検定により実施して有意性を決定した。0.05未満のp値を、統計的有意性に対応すると決定した。
【0084】
実施例2
htCBS C15SのPEG化の最適化
PEG化パターンを理解するため、及びより均一な修飾を生じさせるようにコンジュゲーション反応を最適化するため、個々のPEG-htCBS C15S種を分離し、ME-400MAマレイミドPEG分子により標的化された残基を後に同定した(図2)。第1に、低い伝導度及びより高pHを有する緩衝液(10mMのトリス.HCl pH8.5)中で平衡化されたDEAEセファロース(Sepharose)カラム上にPEG化反応物をロードして全ての400MA PEG-htCBS C15S種の結合を向上させ、緩やかな塩勾配(5%、10~110mMのNaCl)上でランさせてタンパク質を溶出させた。図2は、このようなラン及び2つのプールの回収のクロマトグラムを示し、続いてそれらを非修飾htCBS C15S及び400MA PEG-htCBS C15S反応混合物とともにSDS-PAGE及びネイティブPAGE上で分析した。プールのゲル分析は、400MA PEG-htCBS C15Sが少なくとも3つの異なるPEG-htCBS C15S種からなるという証拠を提供した。
【0085】
プール1(P1)は、プール2(P2)において回収されたものよりも弱い負電荷(図2)及びそれよりも多い付着PEG部分を有する形態で濃縮された。P1中の優勢な400MA PEG-htCBS C15Sコンジュゲートは、それぞれのタンパク質が同一程度にME-400MAにより修飾された二量体htCBS C15Sからなるものであり、CBS二量体当たり2つのPEGである可能性が最も高かった(ホモPEG化二量体)。さらに、P1は、追加の1又は2つのPEG分子を有する微量の400MA PEG-htCBS C15S種を含有した。他方、P2の主要な400MA PEG-htCBS C15S形態は、タンパク質の一方のみがPEGにより修飾された、すなわち、CBS二量体当たり1つのPEGの二量体酵素(ヘミPEG化二量体)を含有した。個々の400MA PEG-htCBS C15S種の分離により、LC-MSを使用するマレイミドPEG化の部位の同定が可能となった。
【0086】
第I相について、非修飾htCBS C15S、P1及びP2をLys-Cにより消化した。LC-MSの結果を図3A図3B、及び図3Cに示す。還元/アルキル化LC-MSペプチドマップから同定された8つのシステイン含有ペプチドのうち、7つのそのようなペプチドが3つ全ての試料における類似の相対存在量を生じさせ、それらのペプチドがPEG化された可能性が低いことを示した。2つのシステイン残基(C272及びC275)を含有する1つのペプチドのみ(272-322;配列番号31)は、2つの400MA PEG-htCBS C15S種(P1及びP2)のそれぞれにおいて有意な減少を示した。
【0087】
第II相においてC272及び/又はC275のいずれが修飾されたかをさらに区別するため、この2つの残基を異なるペプチド中に分離する必要がある。試薬NTCBは、N末端で遊離システイン残基に開裂させる。非修飾参照、ホモPEG化、及びヘミPEG化タンパク質のLC-MSの結果を図4A図4B、及び図4Cに示す。
【0088】
1つのペプチドのみ(244-271;配列番号32)が、同様に処理された非修飾htCBS C15Sと比較して400MA PEG-htCBS C15S形態において(P2についてよりもP1において)有意な減少を示した。244-271ペプチドについての収量は、ホモPEG化400MA PEG-htCBS C15S P1試料において低下し、ヘミPEG化400MA PEG-htCBS C15S P2においてより小さい程度で低下した。
【0089】
ペプチド回収はC272が遮断されていることを特定し、したがって、400MA PEG-htCBS C15S形態中の244-271ペプチドのより低い収量は、C272がマレイミドPEG化のための主な部位であることを特定する。システイン残基C272及びC275の両方が、P1中で低い存在量で存在するより高分子量の種のPEG化に関与することが考えられる。低いNTCB消化効率は、回収されたペプチドの低い存在量をもたらした。
【0090】
実施例3
NHSエステルPEG分子を有するhtCBS C15SのPEG化の再現性
マレイミドPEGによるhtCBS C15SPEG化の再現性についての課題は、他のPEG化化学反応、特にNHSエステル活性化PEGの使用の分析をもたらした。最初に、htCBS C15Sの修飾を、3つのNHSエステルPEG分子により評価して酵素活性に対するそれらの影響を決定した。4、3及び2つの異なるPEG:CBSモル比を、それぞれ5、10及び20kDaの直鎖NHSエステルPEG分子によるPEG化において試験した。NHSエステルPEG分子は、部位選択的マレイミドPEG化とは異なり、ネイティブPAGE又はSEC-HPLCによってだけではなくSDS-PAGEを使用して実質的に分離不能な高度に修飾された異性体の再現可能な混合物を生じさせた。
【0091】
例えば、3つの直鎖5、10、及び20kDaのNHSエステルPEG分子(5NHS、10NHS、及び20NHS)によりCBSタンパク質に対して異なるモル過剰のPEG分子で修飾されたhtCBS C15Sを、SDS-PAGE(バイオラッド(BIORAD)(登録商標)10%ミニ-プロティアン(Mini-PROTEAN)(登録商標)TGXゲル)又はネイティブPAGE(バイオラッド(BIORAD)(登録商標)4-15%ミニ-プロティアン(Mini-PROTEAN)(登録商標)TGXゲル)上で分離し、セーフ・ステイン(Safe Stain)(インビトロジェン(Invitrogen))により製造業者の推奨に従って染色した。NR-CEを使用してのみ、部分的な分離を達成し(図1)、それは20NHS PEG-htCBS C15S生成バッチを「フィンガープリントする」方法として機能した。
【0092】
CBSタンパク質に対して10~20倍モル過剰のPEG分子は、CBS活性に対してわずかの影響しか有さないNHS PEG-htCBS C15S種を生じさせた一方、より過剰のPEG、例えば、40及び60倍の5kDaのNHS PEG並びに40倍の10kDaのNHS PEGは、それぞれのNHS PEG-htCBS C15Sコンジュゲートの顕著に低減した活性をもたらした(図5)。したがって、20倍以下のPEG:CBSのモル過剰でのPEG化反応におけるNHS PEG分子のいずれかによるhtCBS C15Sのコンジュゲーションは、本質的に完全に保持された活性を有する高度に修飾されたバルキーなNHS PEG-htCBS C15Sコンジュゲートを生じさせた。htCBS C15Sタンパク質に対して20倍モル過剰まで使用されるリジンを標的化する5、10又は20kDaのNHSエステルPEGによるhtCBS C15SのPEG化は、酵素の比活性に有意に影響せず(図5)、マレイミドPEGと特性を共有した(参照により全体として本明細書に組み込まれるバブリル(Bublil)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2016年、第126巻、第6号、p.2372~84及び国際出願第PCT/2016/061050号明細書に示されるマレイミドPEG化データ)。
【0093】
20NHSエステルPEG分子によるhtCBS C15SのPEG化は、再現性を示した。同様に、マレイミドPEGについて行ったとおり、20NHS PEG(10倍のPEG:CBSのモル過剰)によるhtCBS C15S PEG化の再現性を評価した。初回バッチは、高度に変動するPEG化の程度を有した(データ示さず)。しかしながら、変動の主な原因は、非修飾htCBS C15S中の残留硫酸アンモニウムと同定された。広範な緩衝液交換スキームをクロマトグラフィー精製(15~20透析濾過容量)の終了時に用いて酵素をPEG化前緩衝液中に配合し、それは再現可能なPEG化パターンをもたらした。
【0094】
精製非修飾htCBS C15Sの4つのバッチを20NHS PEG分子によりPEG化し、4つの20NHS PEG-htCBS C15Sコンジュゲートを生じさせた。非修飾酵素(前)及び20NHS PEG-htCBS C15Sコンジュゲート(後)のそれぞれの4つのペアを、LAB、10L、TR1及びTR2と命名した。タンパク質試料をSDS-PAGE(バイオラッド(BIORAD)(登録商標)10%ミニ-プロティアン(Mini-PROTEAN)(登録商標)TGXゲル)又はネイティブPAGE(バイオラッド(BIORAD)(登録商標)4-15%ミニ-プロティアン(Mini-PROTEAN)(登録商標)TGXゲル)中で分離し、セーフ・ステイン(Safe Stain)(インビトロジェン(Invitrogen))により製造業者の推奨に従って染色し、又はヨウ素染色してPEGを検出した。非修飾htCBS C15S及び遊離未反応PEG分子も観察した。
【0095】
全ての従来のPEG-htCBS C15Sコンジュゲートと比較すると、20NHS PEG-htCBS C15Sは粘度の増加を示し(データ示さず)、したがって、最終(PEG化後)緩衝液交換の間の十分な遊離未反応PEG分子の除去が懸念された。実際、初回バッチ(例えば、LAB及び10L)の処理は、最終産物にキャリーオーバーされる大量の未反応PEG分子を生じさせた。補正措置は、混合物からの20%のDMSOの除去、TFFユニットについてのより高度なMWCO膜カートリッジ(100対30kDa)、緩衝液交換前の3倍大きな表面積及びPEG化混合物の2倍希釈を含み、全て、粘度を低減させるのに役立ち、最終配合の間の遊離PEG分子のより良好なクリアランスを支援した(TR1及びTR2)。
【0096】
実施例4
NHSエステルPEG分子を使用するPEG化の程度の特徴付け
SDS及びネイティブPAGEは、個々の20NHS PEG-htCBS C15S種を十分に分離することが観察されなかった。生成におけるPEG化の迅速な評価を可能とし、産物についての判定基準の定義を提供する、htCBS C15Sが20NHS PEG分子により修飾される程度の特徴付けのための2つの追加の方法を開発した(図1)。
【0097】
一方の方法は、表1に示される、非修飾htCBS C15Sのものと比較した個々の20NHS PEG-htCBS C15SバッチのSEC-HPLCクロマトグラフィープロファイルの比較に依存した。
【0098】
【表1-1】
【0099】
【表1-2】
【0100】
【表1-3】
【0101】
【表1-4】
【0102】
【表1-5】
【0103】
【表1-6】
【0104】
【表1-7】
【0105】
【表1-8】
【0106】
【表1-9】
【0107】
【表1-10】
【0108】
【表1-11】
【0109】
【表1-12】
【0110】
【表1-13】
【0111】
【表1-14】
【0112】
【表1-15】
【0113】
【表1-16】
【0114】
【表1-17】
【0115】
【表1-18】
【0116】
【表1-19】
【0117】
【表1-20】
【0118】
【表1-21】
【0119】
SEC-HPLC分析の利点は、例えば、htCBS C15Sタンパク質当たり5つ未満のPEG化部位を含有する、及び/又は任意の非修飾htCBS C15Sを含有する不十分にPEG化されたバッチが所望のものよりも長い保持時間により特徴付けされ、さらなるPEG分子を反応混合物に添加することによるレスキューのために迅速に同定されることであった(PEG化のインプロセスモニタリング)。非修飾htCBS C15S試料は、11.97分間の保持時間を有することが観察された。6-70及び8-23バッチからの試料は、9.67分間の保持時間を有することが観察された。6-89バッチからの試料は、9.88分間の保持時間を有することが観察された。8-22バッチからの試料は、9.95分間の保持時間を有することが観察された。したがって、9.67分間よりも長い保持時間が、不十分なPEG化を示すことが決定された。
【0120】
8-14バッチからの試料は、9.57分間の保持時間を有することが観察された。8-15バッチからの試料は、9.53分間の保持時間を有することが観察された。8-16バッチからの試料は、9.55分間の保持時間を有することが観察された。8-24バッチからの試料は、9.55分間の保持時間を有することが観察された。8-25バッチからの試料は、9.58分間の保持時間を有することが観察された。したがって、9.53分間よりも短い保持時間が、許容可能なPEG化を示すことが決定された。
【0121】
別の方法は、複数の20NHS PEG-htCBS C15S種の分離及び定量を可能とする非還元キャピラリー電気泳動に基づいた(図1)。バッチの不十分なPEG化は、非修飾酵素の存在及び低分子量20NHS PEG-htCBS C15S種の発生増加により特徴付けされた。したがって、この方法は、20NHS PEG-htCBS C15S最終産物についての厳密な判定基準を定義するのに好適であることが見出された。
【0122】
htCBS C15Sのタンパク質配列は30個のリジン残基を含有し、それらは全てNHSエステルPEG化のための潜在的部位を表す。PEG化に関与するリジン残基を同定するため、LC-UV-MSを3つの20NHS PEG-htCBS C15Sバッチについて実施した。脱PEG化後、事前にPEG化されたリジンは、非修飾リジンからのそれらの区別及びAsp-Nエンドペプチダーゼによる開裂後のペプチドマッピングを介する定量及び同様に処理された非修飾htCBS C15Sとの比較を可能とするリンカーとともに残った。LC-MS分析は、参照タンパク質(対照)としての非修飾htCBS C15SのAsp-N消化後に実施した。
【0123】
表2は、LC/MS/MSにより同定されたペプチドの相対存在量を示し、それを使用して参照酵素、アルキル化、非修飾htCBS C15Sについてのペプチド当たりのPEG数を計算した(RT=保持時間)。
【0124】
【表2】
【0125】
理論分子質量(モノアイソトピック)は、マスハンター・バイオコンファーム(MassHunter BioConfirm)ソフトウェア(アジレント(Agilent)、サンタクララ、カリフォルニア)を使用して計算した。観察質量(モノアイソトピック)は、それらの理論値の5ppm以内であった。存在量は、マスハンター(MassHunter)ソフトウェア(アジレント(Agilent)、サンタクララ、カリフォルニア)を使用して測定した。ペプチド120-128は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド179-197は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド198-220は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド221-233は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド221-233は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。249-269は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド388-400は、1酸化の修飾を有することが観察された。
【0126】
LC-MS分析は、還元、アルキル化、PEG化20NHS PEG-htCBS C15S(バッチ番号1)のAsp-N消化後に実施した。表3は、LC/MS/MSにより同定されたペプチドの相対存在量を示し、それを使用して還元、アルキル化、PEG化20NHS PEG-htCBS C15S(バッチ番号1)のAsp-N消化についてのペプチド当たりのPEG数を計算した。
【0127】
【表3-1】
【0128】
【表3-2】
【0129】
さらに、1つのリジン残基が一貫性なくPEG化されていることが見出された、2つのリジンを有する5つのペプチド及び4つのリジンを有する1つのペプチドが同定された:K36/39、K72/75、K82/83、K94/97/98/102、K322/325及びK394/398。PEGの推定数/ペプチドは、以下の式を使用して計算した:推定(PEG/ペプチド)比=(存在量(1リンカー)+2存在量(2リンカー))/((存在量(リンカーなし)+存在量(1リンカー)+存在量(2リンカー))。PEGは、顕著な溶媒和エンベロープ及びしたがって流体力学半径の増加に起因してゲルにおいてもクロマトグラフィー適用においてもそれらの分子量に従って移動しないことが当分野において公知であるため、PEG化の程度は、CBS単量体当たり5.0±0.5個のPEGの範囲であることが推定された。具体的には、ペプチド当たりのPEG分子数は、2-34について1.29個、9-34について1.30個、35-46について0.22個、47-78について0.37個、79-85及び198-220について0.03個、86-106について0.63個、245-248について0.49個、270-301について0.39個、321-327について0.31個、並びに388-400について0.05個であることが推定された。
【0130】
ペプチド2-34は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド2-34は、2リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド9-34は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド9-34は、2リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド35-46は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド47-78は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド79-85は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド86-106は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド86-106は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド120-128は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド179-197は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド198-220は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド198-220は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド221-233は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド221-233は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド245-248は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド249-269は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド270-301は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド321-327は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド388-400は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド388-400は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド401-413は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド401-413は、2リンカーの修飾を有することが観察された。
【0131】
LC-MS分析は、還元、アルキル化、PEG化20NHS PEG-htCBS C15S(バッチ番号2)のAsp-N消化後に実施した。表4は、LC/MS/MSにより同定されたペプチドの相対存在量及び還元、アルキル化、PEG化20NHS PEG-htCBS C15S(バッチ番号2)のAsp-N消化についてのペプチド当たりのPEGの推定数を示す。
【0132】
【表4-1】
【0133】
【表4-2】
【0134】
ペプチド当たりのPEG分子数は、2-24について1.06個、9-34について0.84個、35-46について0.17個、47-78について0.26個、79-85及び198-220について0.02個、86-106について0.54個、245-248について0.39個、270-301について0.27個、321-327について0.21個、388-400について0.04個、並びに401-413について0.59個であることが推定された。ペプチド2-34は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド2-34は、2リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド9-34は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド9-34は、2リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド35-46は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド47-78は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド79-85は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド86-106は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド86-106は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド120-128は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド179-197は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド198-220は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド198-220は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド221-233は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド221-233は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド245-248は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド249-269は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド270-301は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド321-327は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド388-400は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド388-400は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド401-413は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド401-413は、2リンカーの修飾を有することが観察された。
【0135】
LC-MS分析は、還元、アルキル化、PEG化20NHS PEG-htCBS C15S(バッチ番号3)のAsp-N消化後に実施した。表5は、バッチ番号3についてLC/MS/MSにより同定された、ペプチドの相対存在量及びペプチド当たりのPEGの推定数を示す。
【0136】
【表5-1】
【0137】
【表5-2】
【0138】
ペプチド当たりのPEG分子数は、2-34について1.24個、9-34について0.98個、35-46について0.18個、47-78について0.31個、79-85及び198-220について0.03個、86-106について0.61個、245-248について0.48個、270-301について0.29個、321-327について0.21個、388-400について0.05個、並びに401-413について0.71個であると推定された。
【0139】
ペプチド2-34は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド2-34は、2リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド9-34は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド9-34は、2リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド35-46は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド47-78は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド79-85は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド86-106は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド86-106は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド120-128は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド179-197は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド198-220は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド198-220は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド221-233は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド221-233は、1脱アミド化の修飾を有することが観察された。ペプチド245-248は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド249-269は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド270-301は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド321-327は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド388-400は、1酸化の修飾を有することが観察された。ペプチド388-400は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド401-413は、1リンカーの修飾を有することが観察された。ペプチド401-413は、2リンカーの修飾を有することが観察された。
【0140】
7つのリジン(K25、K30、K211、K247、K271、K405及びK406)が、ある程度にPEG化されることが明らかに同定され、そのうち、K25及びK30残基は、3つのバッチのうち完全な程度に常に修飾される唯一の残基と考えられた。
【0141】
全ての従来のPEG-htCBS C15Sコンジュゲートと比較すると、20NHS PEG-htCBS C15Sは粘度の増加を示し(データ示さず)、したがって、最終(PEG化後)緩衝液交換の間の十分な遊離未反応PEG分子除去が懸念された。実際、初回バッチ(例えば、LAB及び10L)の処理は、最終産物にキャリーオーバーされる大量の未反応PEGを生じさせた。補正措置は、混合物からの20%のDMSOの除去、TFFユニットについてのより高度なMWCO膜カートリッジ(100対30kDa)、緩衝液交換前の3倍大きな表面積及びPEG化混合物の2倍希釈を含み、全て、粘度を低減させるのに役立ち、最終配合の間の遊離PEGのより良好なクリアランスを支援した(TR1及びTR2)。
【0142】
実施例5
HOマウスにおける200MA PEG-htCBS C15S効力の減衰
HOマウスにおける反復投与は、第1の投薬週の間の5日間連続の7.5mg/kgの200MA PEG-htCBS C15Sの皮下注射と定義した。投薬は10日間の期間中断し、第2の投薬週において追加の5回連続注射を再開した。血漿試料を、ベースライン値について最初の投薬前、両方の投薬週における2回目、4回目、及び5回目の注射の24時間後に回収して酵素の効力を追跡し、ウォッシュアウト期間の間に回収してベースライン値の回復を把握した(両方の投薬週における最後の投薬の1週間後、第2の投薬週の1回目の投薬前及び最後の投薬の2週間後)。この試験は、第1の投薬週と比較して第2の投薬週における200MA PEG-htCBS C15S効力の明らかな減衰を示した(表7参照)。
【0143】
よりバルキーなマレイミドPEG分子は、ウォッシュアウト実験におけるPEG-htCBS C15S効力の減衰を解消しなかった。利用可能なスルフヒドリル残基を特異的に標的化するマレイミドPEGの使用は十分に定義された種を生じさせることが公知であったため、ウォッシュアウト実験における200MA PEG-htCBS C15S効力の損失を低減させるための初期のアプローチは、よりバルキーなマレイミドPEGによるhtCBS C15Sタンパク質の被覆を増加させることであった。既に公開されているデータは、より大きなマレイミドPEG分子によるhtCBSのPEG化がインビトロで触媒活性に影響しないこと並びに40kDaの直鎖(ME-400MA)又は分枝鎖(GL4-400MA)マレイミドPEG分子が200MA PEG-htCBS C15Sと比較してHOマウスにおける単回注射後に類似の薬物動態及び薬力学を有することを示した。参照により全体として本明細書に組み込まれるバブリル(Bublil)ら著、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)、2016年、第126巻、(6)、p.2372~84及び国際出願第PCT/2016/061050号明細書参照。表6は、htCBS C15SのPEG化がPEG部分サイズ及び標的基にかかわらず酵素の触媒活性に実質的に影響しないことを示す。
【0144】
【表6】
【0145】
免疫応答を誘発するように投薬レジメンを特別に設計してコンジュゲートをそれらの免疫原性特性に基づき格付けした。ホモシスチン尿症HOマウスへの200MA PEG-htCBS C15Sの反復非中断投薬は、効力の保持及び2ヵ月の間の注射の24時間後の血漿Hcyレベルの有意な減少をもたらすことが既に示されているが、血漿Hcyのベースラインレベル(注射の72時間後)及び200MA PEG-htCBS C15Sのピーク効果(注射の24時間後)の両方は経時的に減少していた。このような活性の減衰についての最も妥当な説明は、効力及び安全性の両方に悪影響を与え得、承認治療酵素のうち比較的共通する宿主の免疫応答である。参照により全体として本明細書に組み込まれるバルド(Baldo)ら著、バイオドラッグス(BioDrugs)、「臨床免疫治療薬、生物医薬及び遺伝子療法(clinical immunotherapeutics,biopharmaceuticals and gene therapy)」、2015年、第29巻、第1号、p.31~55参照。
【0146】
免疫原性は、微量の非修飾酵素又は部位選択的マレイミドPEG分子コンジュゲーションにより不十分にマスクされたhtCBS C15Sに由来し得る。したがって、非修飾酵素の完全な不存在及びPEG化の増加による免疫系からのPEG-htCBS C15Sコンジュゲートの潜在的な免疫原性エピトープのより広範なマスクは、効力の減少を予防することが予測される。
【0147】
実施例6
HOマウスにおける20NHS PEG-htCBSの効力の保持
ME-050GS(5NHS PEG-htCBS C15S)及びME-200GS(20NHS PEG-htCBS C15S)により修飾されたNHSエステルPEG-htCBS C15Sコンジュゲートをウォッシュアウト実験において分析し、結果をマレイミドPEG化コンジュゲートの同様の分析からの結果と比較した。表7は、3週間にわたる異なるPEG-htCBS C15Sコンジュゲートの投与から生じた代謝産物の変化パーセントを提供する(W1=1週間、W2=2週間、及びW3=3週間)。
【0148】
【表7】
【0149】
5NHS PEG-htCBS C15Sは、1回目の一連の注射後に優れた薬力学的応答を示したが、後続の投薬週においてHcyについて効力の有意な損失が観察された。Hcyレベルは、投薬週1/2/3において48/80/111μM(ベースラインレベル:192/175/201μM)に降下し、同時にCthレベルが43/35/37μM(ベースラインレベル:4/4/4μM)に増加し、並行してCysレベルが219/225/174μM(ベースラインレベル:129/137/146μM)に増加した(図6及び表7)。
【0150】
20NHS PEG-CBSは、3つ全ての投薬週において均衡応答を示した:血漿Hcy濃度は、投薬週1/2/3においてベースラインレベル164/165/143μMから38/49/56μMに降下し、続いてCthレベルが40/30/27μM(ベースラインレベル:5/4/4μM)に増加し、並行してCysレベルが234/237/222μM(ベースラインレベル:147/149/148μM)に増加した。対照実験として、200MA PEG-htCBS C15Sの2つの追加のバッチをウォッシュアウト実験において分析し、後続の投薬週における効力の減衰がここでも観察された:投薬週1/2/3において、血漿Hcyは44/88/112μM(ベースラインレベル:224/215/224μM)に降下し、結果的にCthレベルが40/31/43μM(ベースラインレベル:4/3/4μM)に増加し、並行してCysレベルが219/219/196μM(ベースラインレベル:124/118/144μM)に増加した。20NHS PEG-CBSは、HOマウスへのPEG化酵素の反復投与後の血漿代謝産物に対する薬力学的効果の最小減衰を示した(表7)。
【0151】
実施例7
20NHS CBS-PEGによる処理によるKOマウスの表現型のレスキュー
KOマウスの全身健康及び発育に対する20NHS PEG-htCBS C15S処理の潜在的に有益な効果を評価するため。
【0152】
20NHS PEG-htCBS C15S処理マウス(n-16M+11F)の体重及び重量増加を離乳(21日目)から35日齢まで1日おきに決定し、性別及び日齢一致PBS処理ヘテロ接合性+/-マウス(n-14M+13F)と比較した。マウスは、2日齢から7.5mg/kgの皮下注射を週3回受けた。20NHS PEG-htCBS C15S処理CBS KO雄(灰色実線及び丸)及び雌(灰色点線及び丸)マウスの体重(図7A)及び重量増加(図7B)を、PBS注射+/-雄(黒色実線及び四角)及び雌(黒色点線及び四角)と比較する。
【0153】
離乳時(21日目)、PBS又は20NHS PEG-htCBS C15Sのいずれかを受けたヘテロ接合性又はKOマウス間及び雄又は雌間の両方で、20NHS PEG-htCBS C15S注射の雌に対する雄(p<0.01)を除き体重の有意差は見出されなかった。2日後(23日目)、試験マウスのうち体重の有意差は見出されなかった。25日目以降、+/-雄は、+/-雌及び20NHS PEG-htCBS C15S処理KO雄又は雌よりも体重が有意に増加し(p<0.001)、したがって、それらよりも多く体重を増加させる。KOマウスにおいて、離乳は、より小さな重量増加により特徴付けされる短時間のより緩慢な成長をもたらし(23及び25日目)、体重を事実上維持し、続いて着実に重量増加させた。20NHS PEG-htCBS C15Sにより処理されたKO雄及び雌の重量増加は本質的に同一であり、33及び35日目にそれらの体重は増加し、処理KO雌の体重はPBS注射ヘテロ接合性雌のものと同等であった一方、KOマウスはそれらのヘテロ接合性相当マウスよりもわずかに下がった。まとめると、20NHS PEG-htCBS C15S処理KOマウスは雄よりも雌について着実に体重が増加し、5週間の処理期間の終了時において体重に関してPBS処理ヘテロ接合性マウスと同等であった。
【0154】
実施例8
20NHS PEG-htCBS C15Sによる処理による改善された血漿レベルの持続
I278Tマウスの臨床症状、例えば、顔面脱毛症又は骨粗鬆症は、発症及び治療による補正に時間を要する。本実施例において、20NHS PEG-htCBS C15SによるI278Tマウスの処理は、根本的な代謝不均衡を有意に改善し、又は正常化し、それを長期間にわたり持続することが示された。図8A及び図8Bは、I278Tマウスモデルにおける血漿硫黄アミノ酸に対する20NHS PEG-htCBS C15Sの効力の持続を示す。図8Aは、約9ヵ月間の期間、3回の週1回SC注射(7.5mg/kg)により3週齢以降処理された3週齢の非症候性離乳I278Tマウス(n=3)における血漿Hcy、Cth、及びCysレベルの改善の持続を示した。21日目における1回目の投薬前に記録された初回レベルは高度に上昇したHcy(288μM)、正常Cysレベルのほぼ半分(129μM)及び低い血漿Cth(1.4μM)を示した。3回目(28日目)及び18回目(63日目)の投薬の72時間後に測定された血漿代謝産物はそれぞれ、週末の間の投薬の欠落が初回レベルと比較していくらかの類似のプロファイルをもたらし、但し20NHS PEG-htCBS C15S活性のマーカのCthを除き、それはその緩慢な腎クリアランスに起因して血漿濃度の上昇が持続する可能性が最も高いことを説明した。
【0155】
逆に、20NHS PEG-htCBS C15S投与の24時間後に測定された血漿レベル(例えば、64日目において、及び全ての後続の時点に当てはまる)は、初回値と比較して実質的に及び有意に減少したHcyレベル(105μM、p<0.001)、正常化された血漿Cys(209μM、p<0.001)及び上昇したCth(43μM、p<0.001)を実証する。同様に、図8Bは、疾患の複数の臨床徴候を示し、約6ヵ月間の期間、26週齢以降処理された(週3回、SC、7.5mg/kg)26週齢I278Tマウス(n=10)における血漿硫黄アミノ酸の持続的な補正を例示する。182日目における1回目の投薬前に記録された初回レベルは、高度に上昇したHcy(321μM)、正常Cysレベルのほぼ半分(127μM)及び低い血漿Cth(0.3μM)を示した。20NHS PEG-htCBS C15Sの初回投与の24時間後(184日目)、処理前値と比較した血漿Hcyの顕著で有意な減少(143μM、p<0.001)、血漿Cysの正常化(246μM、p<0.001)及びCthの上昇(54μM、p<0.001)をもたらした。改善された血漿代謝産物プロファイルは、約6ヵ月間の期間の定期的なERT施与により維持された。まとめると、20NHS PEG-htCBS C15Sの定期的なSC注射は、I278Tマウスにおける改善された血漿代謝産物プロファイルの持続を生じさせ、したがって長期投与を要求する効力試験を許容した。
【0156】
実施例9
組織代謝産物レベルの正常化及び代謝産物の均衡の改善
20NHS PEG-htCBS C15Sの投与は組織代謝産物の補正をもたらすことが観察され、それは成体I278Tマウスにおける血漿代謝産物均衡の改善と相関した。3週間の期間、20NHS PEG-htCBS C15S(SC、7.5mg/kg)により処理された約2ヵ月齢I278Tマウス(n=3)の肝臓、腎臓及び脳ホモジネート中の硫黄含有代謝産物の濃度及び対応する血漿レベルを、月齢一致健常ヘテロ接合性マウス(n=3)及び未処理I278Tマウス(n=3)と比較して計測した。硫黄含有代謝産物は、ホモシステイン(Hcy)、システイン(Cys)、シスタチオニン(Cth)、ホモランチオニン(Hlth)、及びランチオニン(Lth)を含んだ。総ホモシステイン及びシステインを血漿中で測定した一方、それらのチオールの非タンパク質結合分画を組織ホモジネート中で計測した。I278T若齢マウス(n=3)を3週間の期間、20NHS PEG-htCBS C15S(週3回、SC、7.5mg/kg)により処理し、齢一致未処理I278Tマウス(n=3)及び未処理健常ヘテロ接合性対照(n=3)と比較した。ANOVAとそれに続くテューキの事後検定を使用してデータを比較して有意性を決定した:p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns-非有意。結果を、nmol/g組織におけるμM又はpmol/g組織におけるnMにより記載する。
【0157】
総Hcy及び非タンパク質結合Hcyは、ヘテロ接合性対照(血漿における12μM及びnmol/g肝臓/腎臓/脳における8/6/4μM)及び20NHSのPEG-htCBS C15S処理I278Tマウス(血漿における54μM及びnmol/g肝臓/腎臓/脳における8/4/1μM、血漿についてp<0.001及び組織について<0.01)の両方と比較して未処理I278Tマウス(血漿における310μM及びnmol/g肝臓/腎臓/脳における29/21/12μM)においてそれぞれ血漿及び肝臓/腎臓/脳ホモジネート中で大幅に上昇した。処理I278Tマウスの血漿中の総Hcyの4.5倍の上昇、組織中の非タンパク質結合Hcyは、健常ヘテロ接合性マウスにおけるレベルと有意に異なるものではなかった。
【0158】
総Cysは、血漿中でかなり減少した(91μM)が、未処理I278Tマウスの肝臓/腎臓/脳ホモジネート中の非タンパク質結合Cys(nmol/g肝臓/腎臓/脳における21/432/44μM)は、20NHS PEG-htCBS C15S処理I278Tマウス(血漿における224μM及びnmol/g肝臓/腎臓/脳における36/265/51μM、血漿についてp<0.01及び組織について非有意)と比較して異なるとは観察されなかった。処理I278TマウスにおけるCysレベルは、健常ヘテロ接合性対照のものと類似した(血漿における255μM及びnmol/g肝臓/腎臓/脳における81/322/44μM、p=非有意)。
【0159】
予測のとおり、未処理I278Tマウスの血漿及び組織の両方におけるCthレベルは縮小した:血漿における0.3μM及びnmol/g肝臓/腎臓/脳における0.4/1.2/0.8μM。20NHSのPEG-htCBS C15Sによる処理は、未処理I278Tマウスと比較して血漿(39μM)及び腎臓ホモジネート(nmol/g組織における36μM)中のCthの有意な上昇並びに肝臓及び脳ホモジネート(nmol/g組織における5及び3μM)中のより低い増加をもたらした(血漿及び組織ホモジネートの両方についてp<0.05)。Cthの血漿及び腎臓レベルは、健常ヘテロ接合性対照(血漿における1μM、p<0.01及びnmol/g腎臓における1.2μM、p<0.01)と比較して処理I278Tマウスにおいてかなり高く、これは循環中の20NHS PEG-htCBS C15Sの活性に起因する可能性が高かったが、それらは、肝臓(nmol/g組織における20μM、非有意)及び脳ホモジネート(nmol/g組織における8μM、p<0.05)における健常レベルに完全に正常化されなかった。
【0160】
未処理I278Tマウス、20NHS PEG-htCBS C15S処理I278Tマウス及び健常ヘテロ接合性対照のうちMetもGSHもその血漿及び組織レベルにおいて有意差は観察されなかった。
【0161】
血漿及び組織ホモジネート中のチオエーテルのホモラチオニン(homolathionine)(Hlth)及びランチオニン(Lth)のレベルも、HS生合成の新たな代理マーカとして同定されている。Hlthのレベルは、未処理I278Tマウスの血漿(143nM)及び肝臓/腎臓/脳ホモジネート(pmol/g組織における6351/3324/1065nM)において顕著に上昇し、20NHS PEG-htCBS C15S処理は、血漿における45nM(非有意)及びpmol/g肝臓/腎臓/脳組織における170/1317/520nM(p<0.05/0.05/0.01)へのそれらのレベルのかなりの補正をもたらした。興味深いことに、健常ヘテロ接合性マウスにおける肝臓Hlthは処理I278Tマウスと比較して有意に高かった(pmol/g組織における996nM、p<0.01)一方、処理は、ヘテロ接合性マウスにおいて見出されたものと比較して残りのコンパートメントにおけるHlthレベルの部分的低減をもたらしたにすぎなかった:血漿における8nM(p<0.05)及びpmol/g腎臓/脳組織における247/22nM(p<0.01/0.001)。
【0162】
第2のチオエーテルLthに関して、処理I278Tにおいて血漿レベルのみが非処理のものと比較して有意に上昇した(75対17nM、p<0.01)一方、組織ホモジネートにおけるLthのレベルは、Lthについての低い組織浸透性又は特異的トランスポーターの欠落に起因して類似のままであった(pmol/g肝臓/腎臓/脳組織における21/113/110対14/92/104nM)。健常ヘテロ接合性マウスにおける血漿Lthは、処理I278Tマウスにおいて観察されたレベルと比較して有意に低かった(32nM、p<0.01)一方、その組織レベルは、肝臓(pmol/g組織における122nM、p<0.05)及び脳(pmol/g組織における304nM、p<0.001)中で上昇し、又は腎臓(pmol/g組織における145nM)中で類似のままであった。したがって、20NHS PEG-htCBS C15Sの投与は、処理I278Tマウスの血漿及び組織における代謝均衡を改善し、又は復帰させた。
【0163】
実施例10
20NHS PEG-htCBS CBSにより処理されたKO、HO、及びI278Tマウスのうちのメチル化能の比較
I278T及びKOにおけるマウスにおけるSAM/SAH比の血漿及び組織レベルを、健常ヘテロ接合性対照マウス及び未処理マウスにおける比と比較した。I278T若齢マウス(n=3)を3週間の期間、PEG-htCBS C15S(週3回、SC、7.5mg/kg)により処理し、日齢一致未処理I278Tマウス(n=3)及び未処理健常ヘテロ接合性対照(n=3)と比較した。処理KOマウスに2日齢から7.5mg/kgを週3回投与した。それぞれの群は、少なくとも3匹の18日齢マウスからなるものであった。多変量ANOVAとそれに続くテューキの事後検定を使用して全てのデータを比較して有意性を決定した:p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns-非有意。
【0164】
未処理I278Tマウスのメチル化能は、血漿(0.4)及び肝臓/腎臓/脳ホモジネート(0.3/0.4/0.2)におけるSAM/SAH比に基づきかなり減少し、処理群において血漿における3(p<0.001)及び肝臓/腎臓/脳ホモジネートにおける0.7/2.1/1.5(肝臓については非有意;しかし、腎臓及び脳組織の両方についてはp<0.01)の比にかなり改善された。20NHS PEG-htCBS C15S処理I278Tマウスの改善されたメチル化能は、健常ヘテロ接合性マウス血漿(5、p<0.01)及び肝臓/腎臓/脳ホモジネート(1.3/3.9/2.0、肝臓及び脳については非有意、しかし、腎臓についてはp<0.05)において決定されたものに近づき、又はさらにはそれを正常化した。
【0165】
20NHS PEG-htCBS C15Sの投与は、処理KOマウスの血漿及び組織におけるSAM/SAH比を未処理KOマウスと比較して有意に改善するが、それを健常ヘテロ接合性対照において見られたレベルに正常化しないことも観察された。SAM/SAH比は、血漿及び他の組織レベルと比較してWT対照の肝臓において完全に小さく、より重要なことに、KOマウスにおいて見出されたレベルと同等であった(対照健常ヘテロ接合性及びKOにおいて0.78及び0.94、p=ns)。さらに、20NHS PEG-htCBS C15S処理は、処理KOマウスにおいてSAM/SAH比を未処理KOマウスと比較してさらに有意に減少させた(0.28、p<0.01)。したがって、20NHS PEG-htCBS C15Sの投与は、処理KOマウスの血漿及び組織における代謝均衡を改善し、又は復帰させた。
【0166】
実施例11
ラットにおける20NHS PEG-htCBS C15Sの薬物動態
20NHS PEG-htCBS C15Sの薬物動態特性も、野生型スプラーグ・ドーリ(Sprague Dawley)ラットにおいて決定した。8mg/kg(実線)又は24mg/kgの20NHS PEG-htCBS C15S(点線)の単回SC投与後の雄(黒色、それぞれの群でn=11)及び雌ラット(灰色、それぞれの群でn=8)の血漿におけるCBS比活性を、図9Aに対数スケールで示す。
【0167】
20NHS PEG-htCBS C15Sのバイオアベイラビリティは、異なる用量(8及び24mg/kg)においてほぼ同一であることが観察され、それは観察されたラットにおける吸収差が性的二型性に起因する可能性が高いことを示唆した。20NHS PEG-htCBS C15Sの排出期は、全てのコホートにおいて対数線形であり、一次キネティクスに一致し、それは20NHS PEG-htCBS C15S活性の濃度の半分が血漿からクリアランスされるのに要求される時間が一定であることを意味した。群にわたる排出半減期の平均値は、42±2時間であった。雄及び雌ラット間の差にかかわらず、SC投薬後の20NHS PEG-htCBS C15活性の血漿レベルから推定されるPKパラメータは、24mg/kgに用量比例的であった。
【0168】
ラットにおける性的二型性に起因する差は、ラットが4、8、及び24mg/kgの20NHS PEG-htCBS C15Sの48時間空ける合計9回の注射を受ける反復投薬試験においても観察された(図9B及び図9C)。一般に、血漿における20NHS PEG-htCBS C15S活性の初期及び定常状態レベルは、同一用量レベルにおいて雄ラットよりも雌において高く、それは単回投薬試験についての観察と相関した。反復投薬後の20NHS PEG-htCBS C15Sの血漿レベルは、たとえ半分をわずかに超える20NHS PEG-htCBS C15Sのみが血漿からクリアランスされた場合に用量を投与しても、いかなる用量レベルにおいても蓄積をほとんど又は全く実証しなかった(48時間の投薬間隔対平均t1/2-E=42時間)。これらの予測されない観察の理解を支援するため、定常状態及び予測定常状態血漿レベルへの接近は、PKソフトウェアにおけるシミュレーション関数を使用して仮定反復投薬後に計算した。複数回投薬後、20NHS PEG-htCBS C15S活性の観察血漿レベルは、表8に示されるとおり、定常状態におけるピーク及びトラフについての予測値の15~52%及び0~35%であった(N/A=適用せず)。
【0169】
【表8】
【0170】
観察cmax及びcminは、2回目の投薬後に血漿中で観察された20NHS PEG-htCBS C15Sの最高及び最低濃度に対応する。予測値は、単回投薬PK試験からの時間-濃度曲線を使用するシミュレーションからのものである。反復投薬後の血漿レベルは、両方の性において8mg/kg用量よりも24mg/kg用量においてそれらの予測値に近いことが観察された。
【0171】
均等物及び範囲
当業者は、定型以下の実験を使用して本明細書に記載の本発明による具体的な実施形態の多くの均等物を認識し、又は確認することができる。本発明の範囲は、上記の詳細な説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されるものである。
【0172】
特許請求の範囲において、冠詞、例えば、「a」、「an」、及び「the」は、そうでないことが示されない限り、又は文脈からそうでないことが明らかでない限り、1つ又は2つ以上を意味し得る。群の1つ以上のメンバー間に「又は」を含む特許請求の範囲又は詳細な説明は、そうでないことが示されない限り、又は文脈からそうでないことが明らかでない限り、1つ、2つ以上、又は全ての群メンバーが所与の産物又はプロセス中で存在し、用いられ、又はそうでなければそれに関連する場合、充足されるとみなされる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが所与の産物又はプロセス中で存在し、用いられ、又はそうでなければそれに関連する実施形態を含む。本発明は、2つ以上、又は群メンバー全体が所与の産物又はプロセス中で存在し、用いられ、又はそうでなければそれに関連する実施形態を含む。
【0173】
用語「含む」は、開放的であるものとし、追加の要素又はステップの包含を許容するが要求はしないことも留意される。用語「含む」が本明細書において使用される場合、用語「~からなる」も包含され、開示される。
【0174】
範囲が挙げられる場合、終点が含まれる。さらに、そうでないことが示されない限り、又は文脈及び当業者の理解からそうでないことが明らかでない限り、範囲として表現される値は、本発明の異なる実施形態における任意の規定値又は記述値内の下位範囲を、文脈がそうでないことを明示しない限り、その範囲の下限値の単位の10分の1まで想定し得ることを理解すべきである。
【0175】
さらに、従来技術の範囲内に収まる本発明の任意の特定の実施形態は、特許請求の範囲の任意の1つ以上から明示的に除外され得ることを理解すべきである。このような実施形態は当業者に公知であると考えられるため、その除外が本明細書に明示的に記載されていない場合であっても、それらは除外され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療又は活性成分;任意の生成方法;任意の使用方法など)は、従来技術の存在に関連するか否かを問わず、任意の1つ以上の特許請求の範囲から除外され得る。
【0176】
使用された語は、限定的なものではなく説明的な語であること、及び添付の特許請求の範囲の範囲内で、より広い態様において本発明の真性の範囲及び主旨から逸脱せずに変更を行うことができることを理解すべきである。
【0177】
本発明をある長さにおいて、及びいくつかの記載される実施形態に関してある特定性で記載してきた一方、任意のそのような特定物にも実施形態にも任意の特定の実施形態にも限定すべきものではないが、添付の特許請求の範囲を参照して従来技術に照らしてそのような特許請求の範囲の最も広く考えられる解釈を提供し、したがって、本発明の目的とする範囲を有効に包含するように解釈すべきである。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有するヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)をPEG化する方法であって、
(a)htCBS C15Sと1つ又は複数のNHSエステルPEG分子とを約40倍までのモル過剰の前記NHSエステルPEG分子の溶液中でコンジュゲートさせてバッチを作出することであって、前記複数のNHSエステルPEG分子は、5kDa、10kDa、又は20kDaのNHSエステルPEG分子である、作出すること;
(b)前記バッチのサイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析からのクロマトグラフィープロファイルからの保持時間と、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15SのSEC-HPLC分析からのクロマトグラフィープロファイルからの保持時間とを比較して不十分なPEG化を同定することであって、不十分なPEG化を有する前記バッチは、許容可能なPEG化を有する前記htCBS C15Sの保持時間よりも長い保持時間を有する、同定すること;及び
(c)追加のNHSエステルPEG分子を前記バッチに添加して前記バッチにおける不十分なPEG化の量を低減させ、それにより前記htCBS C15SをPEG化することを含む方法。
[項目2]
配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有するヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)をPEG化する方法であって、
(a)htCBS C15Sと1つ又は複数のNHSエステルPEG分子とを約40倍未満のモル過剰の前記NHSエステルPEG分子の溶液中でコンジュゲートさせてバッチを作出することであって、前記複数のNHSエステルPEG分子は、5kDa、10kDa、又は20kDaのNHSエステルPEG分子である、作出すること;
(b)前記バッチの非還元キャピラリー電気泳動(NR-CE)分析からの保持時間と、許容可能なPEG化を有するhtCBS C15SのNR-CE分析からの保持時間とを比較して不十分なPEG化を同定することであって、不十分なPEG化を有する前記バッチは、許容可能なPEG化を有する前記htCBS C15Sの保持時間よりも短い保持時間を有する、同定すること;及び
(c)追加のNHSエステルPEG分子を前記バッチに添加して前記バッチにおける不十分なPEG化の量を低減させ、それにより前記htCBS C15SをPEG化することを含む方法。
[項目3]
前記NHSエステルPEG分子が、約10倍のモル過剰で存在する、項目1又は2に記載の方法。
[項目4]
前記NHSエステルPEG分子が、約20倍のモル過剰で存在する、項目1又は2に記載の方法。
[項目5]
前記NHSエステルPEG分子が、20倍未満、10倍未満、5倍未満、又は2倍未満のモル過剰で存在する、項目1又は2に記載の方法。
[項目6]
前記1つ又は複数のNHSエステルPEG分子が、5kDaのNHSエステル(5NHS)PEG分子からなる、項目1又は2に記載の方法。
[項目7]
前記1つ又は複数のNHSエステルPEG分子が、10kDaのNHSエステル(10NHS)PEG分子からなる、項目1又は2に記載の方法。
[項目8]
前記1つ又は複数のNHSエステルPEG分子が、20kDaのNHSエステル(20NHS)PEG分子からなる、項目1又は2に記載の方法。
[項目9]
前記複数のNHSエステルPEG分子のそれぞれが、約20kDa未満である、項目1又は2に記載の方法。
[項目10]
不十分なPEG化を有するhtCBS C15Sが、15個未満、10個未満、5つ未満、又は1つ未満のPEG化アミノ酸を含む、項目1又は2に記載の方法。
[項目11]
許容可能なPEG化を有するhtCBS C15Sが、少なくとも1つのPEG化アミノ酸を含む、項目1又は2に記載の方法。
[項目12]
不十分なPEG化を有するhtCBS C15Sの前記バッチの前記保持時間が、約9.50分間、約9.75分間、約10.00分間、及び約10.25分間よりも長い、項目1に記載の方法。
[項目13]
不十分なPEG化を有するhtCBS C15Sの前記バッチの前記保持時間が、約9.60分間~約9.70分間である、項目12に記載の方法。
[項目14]
許容可能なPEG化を有するhtCBS C15Sの前記保持時間が、約9.50~約9.60分間の範囲内である、項目14に記載の方法。
[項目15]
許容可能なPEG化を有するhtCBS C15Sの前記保持時間が、約9.53分間よりも短い、項目14に記載の方法。
[項目16]
治療の継続期間全体にわたり対象におけるホモシスチン尿症のための治療の効力を維持する方法であって、(a)項目1又は2に記載の方法を使用してPEG化された、配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有する治療有効量のヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)を対象に投与することを含む方法。
[項目17]
前記治療の前記効力が、2週間まで、1ヵ月間まで、6ヵ月間まで、又は1年間まで維持される、項目16に記載の方法。
[項目18]
前記治療の前記効力が、1年間よりも長く維持される、項目16に記載の方法。
[項目19]
ホモシスチン尿症を有する対象におけるホモシステイン(Hcy)のレベルを低減させる方法であって、
(a)項目1若しくは2に記載の方法を使用してPEG化された、配列番号1のアミノ酸15位のシステインのセリンへの突然変異を含有する治療有効量のヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)を対象に投与することを含む方法。
[項目20]
Hcyの前記レベルが、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、及び約90%~約100%から選択される範囲の群から選択される範囲で低減される、項目19に記載の方法。
[項目21]
ホモシスチン尿症を有する対象におけるシステイン(Cys)のレベルを増加させる方法であって、
(a)項目1又は2に記載の方法を使用してPEG化された、配列番号1のアミノ酸15位のシステインのセリンへの突然変異を含有する治療有効量のヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S)を対象に投与することを含む方法。
[項目22]
前記バリアントが、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を共有する、項目1、2、又は12~21のいずれか一項に記載の方法。
[項目23]
前記投与ステップから生じる治療効果が、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、又は少なくとも24時間維持される、項目16~20のいずれか一項に記載の方法。
[項目24]
項目1又は2に記載の方法を使用してPEG化された、配列番号1のアミノ酸15位におけるシステインのセリンへの突然変異を含有するヒトトランケートシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)タンパク質又はそのバリアント(htCBS C15S);及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物。
[項目25]
前記バリアントが、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を共有する、項目24に記載の医薬組成物。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
【配列表】
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