(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】交換可能なクラウン付き鋳造用ノズル
(51)【国際特許分類】
B22D 41/50 20060101AFI20220927BHJP
B22D 41/34 20060101ALI20220927BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B22D41/50 520
B22D41/50 530
B22D41/34 520
B22D11/10 320Z
B22D11/10 360Z
(21)【出願番号】P 2020512076
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2018061042
(87)【国際公開番号】W WO2018202626
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】102017109448.2
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519392351
【氏名又は名称】イーケーダブリュー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EKW GMBH
【住所又は居所原語表記】Bahnhofstr.16 67304 Eisenberg(DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハイカウス トーマス
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-109355(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/50
B22D 41/34
B22D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造炉(2)の出口からの溶融物を、ガイドチャネル(36)を介して鋳造ボックス(16)にガイドするための鋳造用ノズル(22)であって、
本体(24)と、前記本体(24)に取り付けられたクラウン(32)とを備え、
前記本体(24)及び前記クラウン(32)を通してガイドチャネル(36)が導かれ、
前記本体(24)は、
前記出口(12)に挿入可能な前側を有し且つ前記ガイドチャネル(36)が入るスタブ(26)と、
前記鋳造炉(2)に
付けるために前記前側と
対向する部位で前記スタブ(26)に接合されたフランジ(28)と、
前記クラウン(32)を搭載するために前記スタブ(26)と
対向する前記フランジ(28)に形成されたクラウンソケット(30)と
、を備え、
前記クラウン(32)が前記クラウンソケット(30)にフォームフィットにより支持され、該フォームフィットが、前記ガイドチャネル(36)に斜めに行うことを特徴とする鋳造用ノズル(22)。
【請求項2】
前記クラウン(32)は、熱分解可能な実装用接着剤によってクラウンソケット(30)に接着される、ことを特徴とする請求項1
に記載の鋳造用ノズル(22)。
【請求項3】
前記クラウンソケット(30)の境界面及び前記クラウン(32)の周りに配置された
バンデージ(34)を備える、ことを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用ノズル(22)。
【請求項4】
前記クラウン(32)が前記クラウンソケット(30)上に搭載される領域に、前記
バンデージ(34)を通る換気口(44)を備える、ことを特徴とする請求項
3に記載の鋳造用ノズル(22)。
【請求項5】
前記
バンデージ(34)の内側に形成され内方に向き、かつ前記クラウン(32)の境界面に係合する突起(46)を備える、ことを特徴とする
請求項3又は請求項4に記載の鋳造用ノズル(22)。
【請求項6】
前記突起(46)は前記
バンデージ(34)内に押し込まれる、ことを特徴とする請求項
5に記載の鋳造用ノズル(22)。
【請求項7】
クラウンソケット(30)で
バンデージ(34)を運搬するための運搬要素(50)を備える、ことを特徴とする
請求項3乃至請求項6のうちのいずれか一項に記載の鋳造用ノズル(22)。
【請求項8】
前記運搬要素(50)は、ガイドチャネル(36)の方向(8)へのバンデージ(34)とクラウンソケット(30)の相対的な動きを防止するために、
フォームフィットで前記
バンデージ(34)及び前記クラウンソケット(30)に係合するピンである、ことを特徴とする請求項
7に記載の鋳造用ノズル(22)。
【請求項9】
チャンバ(4)を有する加熱可能な炉容器と、請求項1乃至請求項
8のうちのいずれか一項に記載の鋳造用ノズルとを備える鋳造炉(2)であって、
前記チャンバ(4)は、入口(6)を介して溶融物で満たすことができ、かつ出口(12)を介して前記溶融物を鋳造ボックス(16)に押し込む圧力をロード可能であり、
前記鋳造用ノズルは前記出口(12)を前記鋳造ボックス(16)に接続するためものである、ことを特徴とする鋳造炉(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造炉用鋳造ノズル及び鋳造炉に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造用ノズル及び鋳造用ノズルを有する鋳造炉は、例えばEP 0 215 153 A1から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、既知の鋳造用ノズルを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立請求項の特徴によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0005】
本発明の一態様によれば、鋳造炉の出口からの溶融物を、ガイドチャネルを介して鋳造ボックスにガイドするための鋳造用ノズルは、本体と、前記本体に取り付けられたクラウンとを備え、前記本体及び前記クラウンを通して前記ガイドチャネルが導かれ、前記本体は、前記出口に挿入可能な前側を有し且つ前記ガイドチャネルが入るスタブと、前記鋳造炉に適用するために前記前側と反対する部位で前記スタブに接合されたフランジと、前記クラウンを搭載するために前記スタブと反対する前記フランジに形成されたクラウンソケットとを備える。
【0006】
提供される鋳造用ノズルは、引け巣や他の介在物などの鋳造欠陥の発生、及び製造される鋳造部品の品質の低下を防止するために、溶融物が事前に定義された流体動力で鋳造チャンバに入る必要があるという問題に基づくものである。鋳造用ノズルは、この流体動力を保証するべきである。しかしながら、鋳造用ノズルを通過する際、溶融物は、ガイドチャネルの出口の領域での材料を除去し、ガイドチャネルの幾何学的構造を変えるだけでなく、砂又は空気の形態で上記の介在物の生成ももたらす。鋳造用ノズルのこの摩耗の結果は、事前に定義された流体動力がもはや保証されず、鋳造用ノズルが使用できなくなり、従って交換する必要があることである。
【0007】
交換するための運転費用をできるだけ低く維持するために、鋳造用ノズルを2つの部分で形成し、クラウンを有する鋳造チャンバに出口の領域でガイドチャネルを形成することが提案される。鋳造用ノズルの残りの部分と比較して、クラウンは明らかに管理が容易で、より費用効果の高い方式で交換できるため、提供される鋳造用ノズルで作業時間とコストを節約できる。
【0008】
クラウンをクラウンソケットに正確に配置するために、クラウンは、形状適合 (フォームフィット)(formschluss(独語):form fit(英語))の方式でクラウンソケット上に支持することができる。形状適合 (フォームフィット)(formschluss(独語):form fit(英語))は、ガイドチャネルに対して角度を付ける。
【0009】
特に鋳造の準備措置中、クラウンソケット上のクラウンの十分な位置安定性を保証するために、実装用接着剤によりクラウンをクラウンソケットに接着することができる。実装用接着剤は熱分解可能であるため、鋳造プロセス後にクラウンをクラウンソケットから取り外し、必要に応じて交換することができる。
【0010】
鋳造用ノズルの好ましい実施形態では、本体の材料はクラウンの材料とは異なる。それにより、鋳造用ノズルの特徴を局所的に変更して、特定の領域で最適な方式でそれぞれの需要領域に適合させることができる。
【0011】
Claim 4,
更なる実施形態では、提供される鋳造用ノズルは、クラウンソケットの境界面及びクラウンの周りに配置されたブレース(バンデージ)を備える。また、このようにして、クラウンソケット上のクラウンの位置安定性が確保される。
【0012】
好ましい実施形態では、提供される鋳造用ノズルは、クラウンがクラウンソケット上に搭載される領域に、ブレースを通る換気口を備える。このようにして、上記の実装用接着剤は、鋳造プロセス内の熱分解中に確実に排出することができる。
【0013】
別の実施形態では、提供される鋳造用ノズルは突起を備える。前記突起は、ブレースの内側に形成されて内方に向き、かつクラウンの境界面に係合する。それにより、ブレースをクラウンに簡単に固定することができる。
【0014】
提供される鋳造用ノズルのさらに別の実施形態では、突起はブレースに押し込まれる。それにより、バンデージは、簡単な打ち抜きとスタンピングのプロセスで作成できる。
【0015】
好ましい実施形態では、提供される鋳造用ノズルは、クラウンソケットでブレースを運搬するための運搬要素を備える。それにより、ブレースは、鋳造用ノズルの残りの本体に固定的に支持され、その結果、鋳造用ノズルの単一部分は、特に前述の突起と共にユニットを形成する。
【0016】
鋳造用ノズルの特に好ましい実施形態では、運搬要素は、ガイドチャネルの方向へのブレースとクラウンソケットの相対的な動きを防止するために、形状適合の方式でブレース及びクラウンソケットに係合するピンである。それにより、運搬要素を容易に実装や解放することができ、その結果、時間節約の方式で鋳造用ノズルを実装し、取り外すことができる。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、鋳造炉は、チャンバを有する加熱可能な炉容器と、前述の鋳造用ノズルの1つとを備え、チャンバは、入口を介して溶融物で満たすことができ、かつ出口を介して溶融物を鋳造ボックスに押し込むための圧力をロード可能であり、鋳造用ノズルは出口(12)を鋳造ボックス(16)に接続するためものである。
【0018】
本発明の上記の特徴、特性及び利点、ならびにそれらが達成される態様及び方式は、図面に関連してさらに詳細に説明される実施形態の以下の説明に基づいてさらに理解しやすくなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1の鋳造炉の鋳造用ノズルの断面の模式図である。
【0020】
図面では、同等の技術要素には同等の参照符号が付けられ、一回のみ説明される。図面は概略的な性質のものにすぎず、特に実際の幾何学的寸法を開示していない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、鋳造炉2の一部の模式分解図が示される。
【0022】
鋳造炉2は、基本的にEP0215153A1から知られ、さらに図示しない溶融物を受け取るための、回転軸3の周りに軸対称に形成されたチャンバ4を有する。チャンバ4は、入口6を介して溶融物で満たすことができる。チャンバ4内の溶融物の固化を防止するために、金型鋳造炉2は、深さ方向8に見られる底側に設置面10を含む。設置面10を介して鋳造炉2を加熱装置(図示せず)上に設置することができる。回転軸3から見ると、鋳造炉2は、入口6と反対する出口12を更に含み、出口12を介して、チャンバ4内の溶融物を、後述する鋳造ボックス16に供給することができる。
【0023】
鋳造炉2は、低圧鋳造炉である。鋳造炉2の動作中において、チャンバ4には、チャンバ4内の溶融物が出口12を介して鋳造ボックス16に押し込まれるように、炉蓋18を介して圧力(例えばEP0215153A1から知られている)が添加される。溶融物が冷却された後、完成した成形品20を取り出すことができる。
【0024】
事前に定義された品質を有する成形品を製造するために、出口12を出て鋳造ボックス16に入るときに溶融物用の事前に定義された流体境界条件を与えて、空気介在物やその他の介在物などの鋳造欠陥を防止する必要がある。これらの流体境界条件を保証するために、鋳造用ノズル22は、自体が鋳造ボックス16に係合する出口に挿入される。鋳造用ノズル22は、前述の流体境界条件が満たされるように幾何学的に構成される。
【0025】
以下、鋳造用ノズル22について、
図2及び3に基づいて説明する。
【0026】
鋳造用ノズル22は、さらなる回転軸23を中心に基本的に軸対称であり、深さ方向8に見られる本体24の底側に配置されたスタブ26を備えた本体24を含む。スタブ26の上側にはフランジ28が接合され、フランジ28には、さらに、クラウンソケット30がスタブ26の反対側に形成される。クラウンソケット30には、分離した素子としてクラウン32が搭載される。クラウンソケット30が
図3の斜視図で見えないように、クラウンソケット30及びクラウン32はブレース
(バンデージ)34によって囲まれる。
【0027】
ガイドチャネル36が本体24及びクラウン32を通して深さ方向8に平行に延在し、ガイドチャネル36を介して、鋳造ボックス16の動作中に溶融物を出口12から鋳造ボックス16にガイドすることができる。溶融物の流路38は、
図2に破線の矢印で示される。
【0028】
図2の流路38の表示からわかるように、溶融物は、ガイドチャネル36を出るときに鋳造用ノズル22の材料を除去し、特にガイドチャネル36からの出口でその幾可学的形状を変化させる。この幾何学的変化は、
図2に破線の三角形で示され、参照記号40で示される。
【0029】
しかしながら、幾何学的変化40は、鋳造ボックス16への溶融物の入り口のための前述の流体境界条件をもはや維持できないという効果をもたらす。それぞれ、鋳造用ノズル22を交換して成形品20の品質を保証しなければならないように、前述の鋳造欠陥が予想されるはずである。
【0030】
しかしながら、本実施形態では、鋳造用ノズル22上に載っているクラウン32を容易に取り外して新しいものと交換できるため、鋳造用ノズル22を完全に交換する必要がない。物質の性質上、クラウン32は、鋳造用ノズル22全体よりも著しく小さく、したがって、オペレーターが最短時間で交換することができる。その点で、通常の動作中の機械のダウンタイムを防止することができるだけでなく、鋳造用ノズル22全体を設置するのに通常必要とされるクラウン32のみを設置する専門のオペレーターも不要である。残りの鋳造用ノズル22から分離されたクラウン32のさらなる利点は、クラウンを交換し、異なる鋳造用途に適合させることができることから分かる。その点で、鋳造プロセス中の要求変更に簡単に対応することができる。例えば、鋳鋼に変更する場合、化学掘削などに個別に反応することができる。
【0031】
以下、ソケット上のクラウンの固定について詳細に説明する。
【0032】
ブレース
(バンデージ)34とは独立するソケット30上のクラウン32の固定を保証するために、クラウン32は、深さ方向8とは反対に延びる凹部40を含むことができ、ソケット
30上の突起42は、深さ方向8に対して角度のあるクラウン32の動きを防止するように、凹部40に形状適合
(フォームフィット)(formschluss(独語):form fit(英語))の方式で係合することができる。実際、凹部40及び突起42は、それぞれソケット30、したがってクラウン32にも反対の方式で配置することができる。しかしながら、突起42は、クラウン32に追加の重量を加え、交換の場合にクラウン32を不必要に重いものにする。これに関しては、
図2に示す解決策が最適である。
【0033】
固定をさらに強化するために、クラウン32を実装用接着剤でソケット30に接着することができる。この実装用接着剤は、鋳造プロセス中に再分解して、鋳造プロセス後にクラウン32をソケット30から解放できるように、熱分解可能であることが好ましい。鋳造プロセス中に分解する実装用接着剤がブレース34から逃げることを可能にするために、ブレース34は、その境界面を貫通する換気口44を含む。換気口44は、回転軸23の周りに回転対称に配置され、鋳造炉2の動作中に分解する実装用接着剤の可能な限りの排出を可能にする。
【0034】
クラウン32で可能な限り固定するようにブレース34を支持するために、内側に向いた突起46は、換気口44の上方で、深さ方向8に見られるブレース34に押し込むことができる。突起46は、クラウン32をブレース34と一緒に取り付けたり取り外したりできるように、クラウン32をソケット30上に取り付ける際に、ブレース34をクラウン32上で固定的に保持することを可能にする。
【0035】
ソケット30上のブレース34の安全な位置のために、ピン50の形態の保持要素は、ブレース34における長孔48を通してソケット30に挿入することができる。長孔48は、回転軸23を中心としたソケット30上のクラウン32の回転位置を設定することを可能にする。ピン50はさらに、その端部で曲げられた形態で形成され、ソケット30から突出して、インストーラに良好なグリップを提供し、設置を容易にする。