(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】光コヒーレンストモグラフィにおけるエイリアシングを回避するためのkクロックによるデュアルエッジサンプリング
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
G01N21/17 630
(21)【出願番号】P 2020523412
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 IB2018058451
(87)【国際公開番号】W WO2019087040
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-01
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ピン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド アル-カイシ
(72)【発明者】
【氏名】フーカン レン
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第3704441(EP,B1)
【文献】米国特許第10767973(US,B2)
【文献】中国特許第111316058(CN,B)
【文献】特開2017-47110(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0340689(US,A1)
【文献】特表2015-513110(JP,A)
【文献】特開2016-38329(JP,A)
【文献】特開2017-9327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01、21/17-21/61
A61B 1/00-3/18
A61B 9/00-10/06
A61F 9/00-11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃引型光源OCT干渉信号に基づきOCT画像を生成する際に使用される光コヒーレンストモグラフィ(OCT)データ取得及び処理回路であって、
最小kクロック周波数から最大kクロック周波数までの範囲の複数のkクロック周波数のうちの任意の周波数においてkクロック信号を選択的に出力するように構成されたkクロックと、
前記掃引型光源OCT干渉信号を濾過し、濾過されたOCT干渉信号を生成するように構成され、前記最小kクロック周波数の2分の1より大きいが前記最小kクロック周波数未満であるカットオフ周波数を有するアンチエイリアスフィルタと、
サンプリングされたOCT干渉信号を生成するために、前記アンチエイリアスフィルタの出力に結合されるとともに前記kクロック周波数の2倍の周波数において前記濾過されたOCT干渉信号をサンプリングするように構成されたアナログデジタル(A/D)変換器回路と、を含むOCTデータ取得及び処理回路。
【請求項2】
前記A/D変換器回路は前記濾過されたOCT干渉信号を前記kクロック信号のすべての立上りエッジ及びすべての立下りエッジ上でサンプリングするように構成されたダブルサンプリングA/D変換器を含む、請求項1に記載のOCTデータ取得及び処理回路。
【請求項3】
前記A/D変換器回路は第1及び第2のA/D変換器を含み、
前記第1のA/D変換器は前記kクロック信号を使用して前記濾過されたOCT干渉信号を前記kクロック周波数においてサンプリングするように構成され、
前記第2のA/D変換器は、前記kクロック信号の位相シフトされたレプリカを使用して前記濾過されたOCT干渉信号を前記kクロック周波数において別個にサンプリングするように構成され、
前記A/D変換器回路はさらに、前記サンプリングされたOCT干渉信号を取得するために前記第1及び第2のA/D変換器からの前記サンプリングされた出力を合成するマルチプレクサを含む、請求項1に記載のOCTデータ取得及び処理回路。
【請求項4】
請求項1に記載の前記OCTデータ取得及び処理回路を含むOCTシステムであって、
掃引型光源と、
前記掃引型光源の出力へ結合された干渉計であって、前記干渉計は、前記干渉計により生成される光干渉信号から前記掃引型光源OCT干渉信号を生成するように構成された検出器回路を含む、干渉計と、をさらに含むシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の前記OCTデータ取得及び処理回路を含むOCTシステムであって、
前記サンプリングされたOCT干渉信号を処理してOCT画像を取得するように構成されたデジタル信号処理回路と、
前記OCT画像を表示するように構成されたディスプレイと、をさらに含むシステム。
【請求項6】
前記kクロック信号の位相シフトされたレプリカを生成するように構成されたkクロックダブラをさらに含む請求項3に記載のOCTデータ取得及び処理回路。
【請求項7】
その入力が前記アナログデジタル(A/D)変換器回路の出力へ結合されたデジタルシグナルプロセッサをさらに含む請求項2に記載のOCTデータ取得及び処理回路。
【請求項8】
前記第1のA/D変換器の出力及び前記第2のA/D変換器の出力へ結合されたマルチプレクサと、
前記マルチプレクサの出力へ結合されたデジタルシグナルプロセッサと、をさらに含む請求項3に記載のOCTデータ取得及び処理回路。
【請求項9】
最小kクロック周波数から最大kクロック周波数までの範囲の複数のkクロック周波数のうちの任意の周波数においてkクロック信号を選択的に出力するように構成されたkクロックと、
前記kクロック信号の位相シフトされたレプリカを生成するように構成されたkクロックダブラと、
掃引型光源OCT干渉信号を濾過し、濾過されたOCT干渉信号を生成するように構成され、前記最小kクロック周波数の2分の1より大きいが前記最小kクロック周波数未満であるカットオフ周波数を有するアンチエイリアスフィルタと、
第1及び第2のA/D変換器であって、前記第1のA/D変換器は前記kクロック信号を使用して前記濾過されたOCT干渉信号を前記kクロック周波数においてサンプリングするように構成され、前記第2のA/D変換器は前記kクロック信号の前記位相シフトされたレプリカを使用して前記濾過されたOCT干渉信号を前記kクロック周波数において別個にサンプリングするように構成され、前記A/D変換器回路はさらに、前記サンプリングされたOCT干渉信号を取得するために前記第1及び第2のA/D変換器からの前記サンプリングされた出力を合成するマルチプレクサを含む、第1及び第2のA/D変換器と、
その入力が前記アナログデジタル(A/D)変換器回路の出力へ結合されたデジタルシグナルプロセッサと、
前記第1のA/D変換器の出力及び前記第2のA/D変換器の出力へ結合されたマルチプレクサと、
前記マルチプレクサの出力へ結合されたデジタルシグナルプロセッサと、を含む光コヒーレンストモグラフィ(OCT)データ取得及び処理回路。
【請求項10】
請求項9に記載の前記OCTデータ取得及び処理回路を含むOCTシステムであって、
掃引型光源と、
前記掃引型光源の出力へ結合された干渉計であって、前記干渉計は前記干渉計により生成される光干渉信号から前記掃引型光源OCT干渉信号を生成するように構成された検出器回路を含む、干渉計と、をさらに含むシステム。
【請求項11】
請求項9に記載の前記OCTデータ取得及び処理回路を含むOCTシステムであって、
前記サンプリングされたOCT干渉信号を処理してOCT画像を取得するように構成されたデジタル信号処理回路と、
前記OCT画像を表示するように構成されたディスプレイと、をさらに含むシステム。
【請求項12】
最小kクロック周波数から最大kクロック周波数までの範囲の複数のkクロック周波数のうちの任意の周波数においてkクロック信号を選択的に出力するように構成されたkクロックと、
掃引型光源OCT干渉信号を濾過し、濾過されたOCT干渉信号を生成するように構成され、前記最小kクロック周波数の2分の1より大きいが前記最小kクロック周波数未満であるカットオフ周波数を有するアンチエイリアスフィルタと、
前記濾過されたOCT干渉信号を前記kクロック信号のすべての立上りエッジ及びすべての立下りエッジ上でサンプリングするように構成されたダブルサンプリングA/D変換器と、
前記ダブルサンプリングA/D変換器の出力と結合されたマルチプレクサと、
前記マルチプレクサの出力へ結合されたデジタルシグナルプロセッサと、を含む光コヒーレンストモグラフィ(OCT)データ取得及び処理回路。
【請求項13】
請求項12に記載の前記OCTデータ取得及び処理回路を含むOCTシステムであって、
掃引型光源と、
前記掃引型光源の出力へ結合された干渉計であって、前記干渉計は、前記干渉計により生成される光干渉信号から前記掃引型光源OCT干渉信号を生成するように構成された検出器回路を含む、干渉計と、をさらに含むシステム。
【請求項14】
請求項12に記載の前記OCTデータ取得及び処理回路を含むOCTシステムであって、
前記サンプリングされたOCT干渉信号を処理してOCT画像を取得するように構成されたデジタル信号処理回路と、
前記OCT画像を表示するように構成されたディスプレイと、をさらに含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される実施形態は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT:Optical Coherence Tomography)像のサンプリングされた光コヒーレンストモグラフィ干渉信号を提供する装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術、角膜内インレー、レーザ角膜切削形成術(LASIK:laser-assisted in situ keratomileusis)及びレーザ屈折矯正角膜切除術(PRK:photorefractive keratectomy)などの現在の眼科屈折外科手法は最良の屈折補正を処方するための眼球生体計測データに依存する。歴史的に、眼科外科的処置は眼の一部分を撮像するために超音波生体計測器を使用した。いくつかのケースでは、これらの生体計測器は、眼の所謂Aスキャン(通常は眼の光軸にアライメントされた(それと平行である又はそれとほんの僅かの角度をなすかのいずれかの)撮像軸に沿ったすべての界面からの音響エコー信号)を生成した。他の計測器は所謂Bスキャンを生成した(実質的には、生体計測器のヘッド又は先端が走査線に沿って走査されるにつれて逐次的に採取されるAスキャンの集合を組み立てた)。この走査線は通常は眼の光軸に対し横方向であった。これらの超音波A又はBスキャンは、眼球軸長、眼の前部深さ、又は角膜曲率半径などの生体計測データを測定し判断するために使用された。
【0003】
いくつかの外科的処置では、第2の別個の角膜測定器が角膜の屈折特性及び屈折データを測定するために使用された。超音波測定及び屈折データは、その後の白内障手術中に処方され挿入される最適な眼内レンズ(IOL:intra-ocular lens)の特性を計算するために半経験的式に組み込まれた。
【0004】
最近、超音波生体計測デバイスは、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の原理に基づいて構築される光学的撮像及び生体計測器に急速に取って代わられてきた。OCTは、人間の網膜、角膜又は白内障のマイクロメートルスケール高解像度断面撮像を可能にする技術である。光波が物体又は試料から反射され、コンピュータは、どのように波が反射に伴い変更されるかに関する情報を使用することにより試料の断面の画像又は3次元体積レンダリング(volume rendering)を生成する。
【0005】
OCTはフーリエ領域処理の時間領域処理に基づき行われ得る。後者の手法は、試料を照射するために使用される光信号のスペクトル成分が時間的に符号化される掃引型光源(swept-source)OCTとして知られた技術を含む。換言すれば、光源は光帯域全体にわたって掃引され(又は階段状にされ)、干渉信号が、光源信号と光帯域全体にわたるいくつかの点でサンプリングされた反射信号との合成により生成される。光帯域全体にわたって均等に離間された点で干渉信号をサンプリングするように通常は設計されるサンプリングクロックは「kクロック」と呼ばれ、光周波数領域又は「k空間」内のサンプルであるその結果のサンプルは「k空間」サンプルと呼ばれる。
【0006】
実際、光源は、撮像されている物体(例えば眼)の表面上の一連の点のそれぞれへ逐次的に向けられ、スペクトル帯域幅全体にわたるk空間サンプルがこれらの点のそれぞれで収集される。各点に対応するk空間サンプルは、撮像された物体内のある範囲の深度に対応する画像データを提供するために周知のデジタル信号処理技術(すなわち「Aスキャン」)を使用して処理される。一連の点全体にわたるAスキャンはBスキャンを生成するためにコンパイルされ、撮像された物体に沿った連続「行」に対応する複数のBスキャンは3次元画像データを形成するためにコンパイルされ得る。掃引型光源OCTにおいて使用されるフーリエ領域処理の理由でz軸スキャン(干渉の基準アームの長さが、撮像された物体内の様々な深度における情報を取得するために逐次的に変更される)は必要とされないということが理解される。むしろ、深度情報は、k空間サンプルのスペクトル周波数増分のサイズに逆に対応する深度の範囲全体にわたるk空間サンプルの処理から取得される。
【0007】
OCT技術は今や臨床診療において一般的に使用され、このようなOCT計測器は今やすべてのIOL処方箋ケースの80~90%において使用される。他にも理由はあるが、これらの成功は撮像の非接触性と超音波生体計測器より高い精度とによる。
【0008】
しかし、これらの最新の進歩をもってしても、かなりのさらなる成長及び発展が生体計測器及び撮像装置の機能性及び性能のために必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示されるのは、掃引型光源OCT干渉信号に基づきOCT画像を生成する際に使用される光コヒーレンストモグラフィ(OCT)データ取得及び処理回路の実施形態である。様々な実施形態では、OCTデータ取得及び処理回路は、最小kクロック周波数から最大kクロック周波数までの範囲の複数のkクロック周波数のうちの任意の周波数においてkクロック信号を選択的に出力するように構成されたkクロック回路、及び掃引型光源OCT干渉信号を濾過し、濾過されたOCT干渉信号を生成するように構成されたアンチエイリアスフィルタを含む。アンチエイリアスフィルタは、最小kクロック周波数の2分の1より大きいが最小kクロック周波数未満であるカットオフ周波数を有する。OCTデータ取得及び処理回路はさらに、濾過されたOCT干渉信号をkクロック周波数の2倍の周波数においてサンプリングし、サンプリングされたOCT干渉信号を生成するように結合され構成されたアナログデジタル(A/D)変換器回路を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、A/D変換器回路は、濾過されたOCT干渉信号をkクロック信号のすべての立上りエッジ及びすべての立下りエッジ上でサンプリングするように構成される。他の実施形態では、A/D変換器回路は第1及び第2のA/D変換器を含み、第1のA/D変換器は、kクロック信号を使用して、濾過されたOCT干渉信号をkクロック周波数においてサンプリングするように構成され、第2のA/D変換器は、kクロック信号の位相シフトされたレプリカを使用して、濾過されたOCT干渉信号をkクロック周波数において別個にサンプリングするように構成される。これらの後者の実施形態では、A/D変換器回路はさらに、サンプリングされたOCT干渉信号を取得するために、第1及び第2のA/D変換器からのサンプリングされた出力を合成するマルチプレクサを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、OCTデータ取得及び処理回路はさらに、掃引型光源と掃引型光源の出力へ結合された干渉計とを含み、干渉計は、干渉計により生成される光学的干渉信号から掃引型光源OCT干渉信号を生成するように構成された検出器回路を含む。いくつかの実施形態では、OCTデータ取得及び処理回路はさらに、サンプリングされたOCT干渉信号を処理してOCT画像を取得するように構成されたデジタル信号処理回路と、OCT画像を表示するように構成されたディスプレイとを含む。
【0012】
本明細書に説明される実施形態は、最適化されたOCT性能をいくつかの異なる応用モード毎に実現するオールインワンデバイスを提供及び/又は操作するために使用され得る。上記要約された実施形態の他の利点及び変形形態が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】例示的掃引型光源光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムの部品を示す。
【
図2】本開示の発明のいくつかの実施形態に合致する例示的デジタル取得及び処理回路の部品を示す。
【
図3】本開示の発明の他の実施形態に合致する別の例示的デジタル取得及び処理回路の部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、いくつかの実施形態を説明することにより特定の詳細が記載される。しかし、開示される実施形態はこれらの特定の詳細のいくつか又はすべてが無くても実施され得るということは当業者にとって明らかである。提示される特定の実施形態は例示的であるが限定的でないように意図されている。当業者は、特に本明細書において説明されないが本開示の範囲及び精神に入る他の材料を理解し得る。
【0015】
本開示の技術及び装置の実施形態は顕微鏡搭載及び顕微鏡一体型光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムにおいて採用され得る。
【0016】
眼科用途では、OCTのような低コヒーレンス干渉分光技術が眼層の間隔に関する情報を提供するために使用される。眼科生体計測法は、全眼長に対して行われる測定だけでなく、眼の前部からの解剖学的及び光学的パラメータを測定することも必要とする。しかし、眼の全長を測定することは、より浅い深度の測定を必要とする前部測定を行うことに対しいくつかの性能トレードオフを必要とする。
【0017】
OCTシステムが眼の前眼房と眼全体との両方を撮像することを可能にするためのいくつかの方法が実証された。これらの方法は、例えば、長い光学遅延又はデュアル光学遅延を使用する工程と、数値的再サンプリングを行う工程と、OCTデータのデジタル信号処理において鏡像曖昧性を除去する工程と、OCTデータから鏡像曖昧性を除去する工程(すなわちOCTデータから画像のエイリアス成分の折り返しを解除する工程)とに関与する。しかし、これらの方法のそれぞれは、システム性能の妥協を必要とするか又はシステム設計制約に影響を与えるかのいずれかである。
【0018】
掃引型光源OCT(SSOCT:swept-source OCT)では、光周波数領域内のサンプルステップサイズに対応するkクロック周期の選択がOCT撮像性能に影響を与える。一般的に言えば、例えば、人間の眼などの試料内のより大きな深度全体にわたる撮像は、光帯域内のより細かなステップサイズに対応するより高いサンプリング率を必要とする。
【0019】
以下に続くこれらの技術の詳細説明の文脈を提供するために、
図1が最初に説明される。
図1は、掃引型光源100、干渉計200、検出システム150、kクロック源300、及び表示システム180を含む例示的SSOCTシステム10を示す。本明細書に示される詳細は単なる例であるということが理解されることになり、他のシステムは周知のやり方で変わり得る。
【0020】
掃引型光源100は通常、1キロヘルツ(kHz)以上の走査繰り返し率で所定光学的チューニング範囲全体にわたって(例えば100nm以上の光波長範囲全体にわたって)繰り返し走査する掃引型光信号を生成する波長チューニング用に設計される。光学的放射の帯域すなわち全幅半値(FWHM:full-width half-maximum)幅は通常10GHz未満である。kクロック源300は、掃引型光源100からの出力が掃引型光源100のチューニング帯域全体にわたって掃引されるので、均等に離間された光周波数サンプリング間隔でkクロック信号を生成するように構成される。この特別な例では例えば約1310nmの光波長での動作用に設計されたMach-Zehnderタイプ干渉計として実現される干渉計200が、撮像された物体5(人間の眼であり得る)から反射された光信号を解析するために使用される。干渉計200は異なる波長用に設計される際は異なる設計に基づき得るということが理解される。
【0021】
同図に見られるように、掃引型光源100から掃引された光出力は光ファイバ110を介し干渉計内の光ファイバ結合器210へ結合される。光ファイバ結合器210は例えば90/10光ファイバ結合器であり得る。掃引された光信号は結合器210により基準アーム220とサンプルアーム212との間に割り当てられる。
【0022】
基準アーム220の光ファイバはファイバ端面224で終端する。図示された実施形態では、基準アームファイバ端面224から出た光102Rは、レンズ226により平行にされ、ミラー228により反射される。一例では、ミラー228は調整可能ファイバツーミラー(fiber-to-mirror)距離を有する。この距離は、撮像されている深度範囲内の基準点(すなわち基準アーム220とサンプルアーム212との間のゼロ経路長差の試料5内の位置)を判断する。この距離は、いくつかの実施形態では、様々なサンプリングプローブ及び/又は撮像される試料に関し調整され得る。基準ミラー228から戻る光は、基準アームサーキュレータ222へ戻され、50/50ファイバ結合器240へ導かれる。
【0023】
サンプルアーム212上のファイバはサンプルアームプローブ216で終端する。出射する掃引された光信号102Sはプローブ216により試料5上へ焦点を合わせられる。試料5から戻る光は、サンプルアームサーキュレータ214へ戻され、50/50ファイバ結合器240へ導かれる。基準アーム信号及びサンプルアーム信号は光干渉信号を生成するためにファイバ結合器240内で合成される。
【0024】
光干渉信号は検出システム150内で検出され処理される。特に、
図1に示す実施形態では、2つの光検出器を含む平衡型受信器152がファイバ結合器240の出力のそれぞれに位置する。平衡型受信器152からの電子的干渉信号はデータ取得及び処理回路155Aによる処理のための干渉信号158を生成するために増幅器154により増幅される。
【0025】
検出システム150のデータ取得及び処理回路155Aは、増幅器154から出力される干渉信号をサンプリングするために使用される。kクロック源300からのkクロック信号は、光学的掃引型光源システム100のシステムデータ取得と周波数チューニングとを同期させるためにデータ取得回路155Aにより使用される。光学的掃引型光源システム100の光学的チューニングは時間に関し線形ではない場合があるので、kクロック信号は、不規則周期を有し、したがって基本周波数を有さず、むしろ本開示の目的のためにはkクロック周波数と見なされ得る平均周波数により特徴付けられる周波数範囲を有するということに留意されたい。
【0026】
通常、試料5の上の合焦されたプローブビーム点の各点でのスペクトル応答が掃引型光源100の周波数チューニングから生成されるように、合焦されたプローブビーム点を空間的に(例えばx-y的やり方又はθ-z的やり方で)ラスター走査することにより試料5の完全なデータセットが収集されると、データ取得及び処理回路155Aは、試料5の画像を再構築して2D又は3Dトモグラフィ再構築を行うために周知技術に従ってフーリエ変換をデータに対し行う。次に、データ取得及び処理回路155Aにより生成される情報が映像モニターなどの表示システム180により表示され得る。
【0027】
図2は、本開示のいくつかの実施形態において見出される可能性があるような例示的データ取得及び処理回路155Aのさらなる詳細を示す。同図に見られるように、データ取得及び処理回路155Aは、kクロック信号302をサンプリングクロックとして使用することにより干渉信号158をサンプリングするように構成されたアナログデジタル(A/D)変換器15を含む。これは、サンプリングされたOCT信号をサンプリングチャネル17上に生成し、サンプリングされたOCT信号はフーリエ処理及び画像再構築のためにデジタルシグナルプロセッサ回路20へ提供される。
【0028】
しかし、A/D変換器回路15へ提供される前に干渉信号158はアンチエイリアスフィルタ12により最初に濾過される。このアンチエイリアスフィルタ12は、標本化信号が系のサンプリング率の2分の1を超える周波数において信号エネルギーを含む場合に発生するエイリアシング(デジタルサンプリング回路においてよく知られた現象である)を防止するように選択されたカットオフ周波数fcを有する。このナイキスト周波数を超えるエネルギーが入力信号内に存在すれば、このエネルギーはサンプリング過程においてより低い周波数エネルギー上に「折り返され」、したがって入力信号の歪んだ表現をデジタルサンプル内に与える。この現象を防止するために、アンチエイリアスフィルタのカットオフ周波数fcは通常、サンプリング率の2分の1を十分に下回るように選択され、その結果、当該周波数を超えるいかなるエネルギーもA/D変換器へ到達する前にフィルタにより十分に減衰される。フィルタのカットオフ周波数の様々な特別な定義が産業界では使用されるということが理解される。したがって、明瞭性及び明確性の目的のために、本明細書におけるこの用語は電力半値点(すなわちフィルタの減衰がフィルタの定格通過帯域減衰の-3dBである周波数)を指すために使用される。
【0029】
上に指摘したように、光周波数領域内のサンプルステップサイズに対応するkクロック周期の選択は、ある範囲の用途のOCTの使用を促進するようにOCT撮像性能に影響を与え、現在のOCTシステムは最小kクロック周波数及び最大kクロック周波数を有する可変速度kクロックを含み得る。しかし、これらのシステムでは、アンチエイリアスフィルタはfc<fmax/2となるように最大kクロック周波数fmaxに関し設計される。この結果、より低いkクロック周波数が(例えば最小kクロック周波数fminにおいて)使用されると、アンチエイリアスフィルタはA/D回路によりサンプリングされる信号がサンプリング率の2分の1を超える入力周波数を含むことを許容することになるのでエイリアシングが発生し得る(すなわちfc>fmin/2の場合)。
【0030】
本開示の発明の実施形態は、A/D回路15へ提供される信号をkクロック周波数の2倍の周波数でサンプリングすることにより(例えばkクロックの立上りエッジと立下りエッジとの両方においてサンプリングすることにより)この問題に対処する。アンチエイリアスフィルタ12のカットオフ周波数fcは最小kクロック周波数fmin未満であるカットオフ周波数を有するように選択されるが、カットオフ周波数は2倍サンプリング率の理由で最小kクロック周波数fminの2分の1未満である必要が無い(最小サンプリング率は2倍サンプリング率の理由で2×fminである)。したがって、実際上、アンチエイリアスフィルタ12のカットオフ周波数fcは最小kクロック周波数の2分の1より大きいが最小kクロック周波数未満であり得る。
【0031】
この手法により、kクロック周波数の全域で性能の付随トレードオフを有し、両極限においてエイリアシングが無い。より高いkクロック周波数では、干渉信号はkクロック信号の2倍の周波数でサンプリングされるので効果的にオーバーサンプリングされるが、このより高いサンプリング率及び信号処理率は既存のA/D変換器回路及びデジタル信号処理回路により容易に対処される。標本化信号の間引きが必要に応じ利用され得る。
【0032】
図2に示すデータ取得及び処理回路では、A/D変換器回路15は、例えばkクロック信号302の立上りエッジと立下りエッジとの両方において(又は、等価的には、kクロック信号302のすべてのゼロ交差点において)入力信号をサンプリングするダブルサンプリングA/D変換器として構成される。
図3は、本開示の発明のいくつかの実施形態に合致するデータ取得及び処理回路155Bの別の例を示す。
図3に見られるように、データ取得及び処理回路155Bは、アンチエイリアスフィルタ12によりサンプリングした後それぞれが干渉信号158を別々にサンプリングするように構成されるように並列に構成された2つのA/D変換器55を含む。第1のA/D変換器へのクロック(CLK)入力と第2のA/D変換器へのクロック(CLK)入力はそれぞれ、クロック信号58A、58Bとしてそれぞれ図に示されるkクロック信号の2つの異なるレプリカにより駆動され、一方のクロック信号(58B)は他方のクロック信号(58A)に対して位相シフト(すなわち遅延)される。図示の例では、この位相シフトは、様々な位相シフトが(例えばk領域内で一様なサンプリング間隔を提供するために)採用され得るが、約180度である。第1及び第2のkクロック信号58A、58Bは、kクロックダブラ回路57により
図3に示す回路において生成される。第1のA/D変換器55の出力と第2のA/D変換器55の出力は、サンプリングチャネル37を介しデジタルシグナルプロセッサ回路40へ提供されるサンプリングされたOCT干渉信号を生成するためにマルチプレクサ(MUX)60により合成される。
図3に示す回路の場合と同様に、デジタル信号処理回路40は、ハーフレートモードとフルレートモードそれぞれに対応して半深度OCT画像又は全深度OCT画像を選択的に生成するために、再び周知技術を使用して、サンプリングチャネル37を介し提供されるサンプリングされたOCT干渉信号に基づきフーリエ処理及び画像再構築を行う。
【0033】
図2と
図3は、上述のように、掃引型光源OCT干渉信号に基づきOCT画像を生成する際に使用されるOCTデータ取得及び処理回路の具体例を示す。これら及びこれらの変形形態は、例えば
図1に示すもののようなSSOCTシステムにおいて使用され得るが、当然、種々の設計及び構成を有するシステムにおいて使用され得る。したがって、図示された回路は、最小kクロック周波数から最大kクロック周波数までの範囲の複数のkクロック周波数のうちの任意の周波数においてkクロック信号を選択的に出力するように構成されたkクロック回路と、掃引型光源OCT干渉信号を濾過し、濾過されたOCT干渉信号を生成するように構成されたアンチエイリアスフィルタであって、最小kクロック周波数の2分の1より大きいが最小kクロック周波数未満であるカットオフ周波数を有するアンチエイリアスフィルタと、濾過されたOCT干渉信号をkクロック周波数の2倍の周波数においてサンプリングし、サンプリングされたOCT干渉信号を生成するように結合され構成されたA/D変換器回路と、を含むOCTデータ取得及び処理回路の特別な例である。
【0034】
本明細書に開示されるようなデータ取得及び処理回路のいくつかの実施形態ではA/D変換器回路は濾過されたOCT干渉信号をkクロック信号のすべての立上りエッジ及びすべての立下りエッジ上でサンプリングするように構成されるということが理解されることになる。他の実施形態では、A/D変換器回路は第1及び第2のA/D変換器を含み、第1のA/D変換器は、kクロック信号を使用して、濾過されたOCT干渉信号をkクロック周波数においてサンプリングするように構成され、第2のA/D変換器は、kクロック信号の位相シフトされたレプリカを使用して、濾過されたOCT干渉信号をkクロック周波数において別個にサンプリングするように構成される。これらの後者の実施形態では、A/D変換器回路はさらに、サンプリングされたOCT干渉信号を取得するために、第1及び第2のA/D変換器からのサンプリングされた出力を合成するマルチプレクサを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなOCTデータ取得及び処理回路を含むOCTシステムはさらに、掃引型光源と掃引型光源の出力に結合された干渉計とを含み、干渉計は、干渉計により生成される光学的干渉信号から掃引型光源OCT干渉信号を生成するように構成された検出器回路を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなOCTデータ取得及び処理回路を含むOCTシステムはさらに、サンプリングされたOCT干渉信号を処理してOCT画像を取得するように構成されたデジタル信号処理回路と、OCT画像を表示するように構成されたディスプレイとを含み得る。
【0036】
上述の特別の実施形態は本発明を例示するものであるが本発明を制限しない。上述のようにそして以下に請求されるように本発明の原理にしたがって多くの修正、変更が可能であることも理解すべきである。