(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】荷重依存型スロットルを備えたシリンダ・ピストンユニット
(51)【国際特許分類】
F16F 9/508 20060101AFI20220927BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20220927BHJP
F16F 9/348 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
F16F9/508
F16F9/32 L
F16F9/348
(21)【出願番号】P 2020528295
(86)(22)【出願日】2018-11-24
(86)【国際出願番号】 DE2018000345
(87)【国際公開番号】W WO2019101258
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】102017010876.5
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509060154
【氏名又は名称】マルティン ツィマー
【氏名又は名称原語表記】Martin Zimmer
【住所又は居所原語表記】Im Salmenkopf 7, 77866 Rheinau, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】509060143
【氏名又は名称】ギュンター ツィマー
【氏名又は名称原語表記】Guenther Zimmer
【住所又は居所原語表記】Im Salmenkopf 11, 77866 Rheinau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ツィマー
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ツィマー
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-043231(JP,A)
【文献】特表2012-525516(JP,A)
【文献】特表2016-505122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(11)と、該シリンダ(11)の長手方向(5)に摺動可能な、ピストンロッド(41)を介して案内されるピストン(51)とを備えたシリンダ・ピストンユニット(10)であって、前記ピストン(51)は、少なくとも1つの第1のピストン溝(62)と、少なくとも1つの第2のピストン溝(63)とを有しており、前記第1のピストン溝(62)および前記第2のピストン溝(63)はそれぞれ、前記ピストン(51)の、補償室(93)に面した補償室側(56)を、前記ピストン(51)の、押退け室(91)に面した押退け室側(53)に接続しており、該押退け室側(53)では少なくとも1つのスロットル溝(68)が、少なくとも1つの前記第1のピストン溝(62)をピストン外周面(57)に接続しており、前記ピストン(51)はその前記押退け室側(53)に、長手方向(5)に向けられた前記ピストン(51)の中心軸線(55)に対して同心的に配置されたピストンピン(54)を有しており、該ピストンピン(54)は、長手方向(5)に摺動可能でありかつ弾性変形可能でありかつ前記スロットル溝(68)を少なくとも部分的に覆うピストンディスク(101)を支持している、シリンダ・ピストンユニット(10)において、
前記ピストンピン(54)を包囲している前記押退け室側(53)が、前記中心軸線(55)に対して垂直に位置するピストン端面の平面(72)とは異なる少なくとも1つのレリーフ部分(69)を有しており、
該レリーフ部分(69)は、前記中心軸線(55)に対して同心的に延在する複数の画定線(71)により、複数の側において画定されており、
前記画定線(71)はいずれも、連続して微分可能であり、
前記レリーフ部分(69)は、1つの半径方向平面内に延在する、連続して微分可能な少なくとも1つの上端線(77)により画定されており、
該上端線(77)は、直線でありかつ/または前記ピストン端面の平面(72)に対して垂直な方向で前記押退け室(91)の方に向けられた、少なくとも1つの最大距離点(78)を有している
ことを特徴とする、シリンダ・ピストンユニット(10)。
【請求項2】
前記レリーフ部分(69)は、端面隆起部(75)であるか、または前記押退け室側(53)の、前記ピストン溝(62,63)を包囲している外側領域(67)を半径方向に通走する通走凹部(76)である、請求項1記載のシリンダ・ピストンユニット(10)。
【請求項3】
少なくとも1つの端面隆起部(75)は、前記ピストンピン(54)と前記ピストン外周面(57)とを接続する半径方向ブリッジとして形成されている、請求項2記載のシリンダ・ピストンユニット(10)。
【請求項4】
前記中心軸線(55)に対して平行な前記レリーフ部分(69)の高さは、該レリーフ部分(69)の幅の円弧長よりも小さくなっている、請求項1記載のシリンダ・ピストンユニット(10)。
【請求項5】
前記シリンダ(11)のシリンダ内壁(18)は、長手方向(5)に向けられた、異なる長さの少なくとも2つのシリンダ溝(26~31)を有しており、前記シリンダ溝(26~31)の、長手方向(5)に向けられた寸法は、シリンダ内室(16)の長さよりも短くなっている、請求項1記載のシリンダ・ピストンユニット(10)。
【請求項6】
前記シリンダ溝(26~31)のうちの最長のシリンダ溝(31)の、長手方向(5)に測定された長さは、前記シリンダ(11)に対して相対的な前記ピストン(51)の最大行程よりも短くなっている、請求項5記載のシリンダ・ピストンユニット(10)。
【請求項7】
前記画定線(71)は、2つの同じ極値(73;74)として、2つの最小部(74)または2つの最大部(73)を有しており、前記中心軸線(55)を中心とした円弧線に沿った前記2つの最小部(74)または2つの最大部(73)の間隔(d)は、前記レリーフ部分(69)の最大高さ(a)と、前記ピストンディスク(101)の厚さ(h)と、該ピストンディスク(101)の弾性率と、安全係数と、前記ピストンディスク(101)の材料の引張応力の逆数との積の9.6倍の正の平方根以上である、請求項1記載のシリンダ・ピストンユニット(10)。
【請求項8】
前記押退け室側(53)は、シリンダ底部(13)に面している、請求項1記載のシリンダ・ピストンユニット(10)。
【請求項9】
前記ピストンロッド(41)は、前記ピストン(51)に面状に支持された支持カラー(43)を有している、請求項1記載のシリンダ・ピストンユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダと、シリンダの長手方向に摺動可能な、ピストンロッドを介して案内されるピストンとを備えたシリンダ・ピストンユニットであって、ピストンは、少なくとも1つの第1のピストン溝と、少なくとも1つの第2のピストン溝とを有しており、第1のピストン溝および第2のピストン溝はそれぞれ、ピストンの、補償室に面した補償室側を、ピストンの、押退け室に面した押退け室側に接続しており、押退け室側では少なくとも1つのスロットル溝が、少なくとも1つの第1のピストン溝をピストン外周面に接続しており、ピストンはその押退け室側に、長手方向に向けられたピストンの中心軸線に対して同心的に配置されたピストンピンを有しており、ピストンピンは、長手方向に摺動可能でありかつ弾性変形可能でありかつスロットル溝を少なくとも部分的に覆うピストンディスクを支持している、シリンダ・ピストンユニットに関する。
【0002】
このようなユニットは、独国実用新案第202009004752号明細書から公知である。行程速度が低いと、遅延方向において極度に大きな減衰が行われる場合がある。
【0003】
本発明の根底を成す課題は、荷重に応じた減衰を伴うシリンダ・ピストンユニットを開発することにある。
【0004】
この課題は、独立請求項に記載の特徴により解決される。このためには、ピストンピンを包囲している押退け室側が、中心軸線に対して垂直に位置するピストン端面の平面とは異なる少なくとも1つのレリーフ部分を有している。レリーフ部分は、中心軸線に対して同心的に延在する複数の画定線により、複数の側において画定されている。これらの画定線はいずれも、連続して微分可能である。レリーフ部分は、1つの半径方向平面内に延在する、連続して微分可能な少なくとも1つの上端線により画定されている。さらにこの上端線は、直線でありかつ/またはピストン端面の平面に対して垂直な方向で押退け室の方に向けられた、少なくとも1つの最大距離点を有している。
【0005】
例えば液圧式のシリンダ・ピストンユニットでは、ピストンが、補償室に対して押退け室を仕切っている。ピストンが、ピストンに接続されたピストンロッドと共に押退け室に向かって移動させられると、ピストンの全行程のうちの一部の行程において、液圧オイルが押退け室からシリンダ溝を通り、補償室内へ押し退けられる。同時に、押退け室側に配置されたピストンディスクが、ピストンに押し付けられる。押退け室内で上昇する圧力に応じてピストン溝が多少なりとも閉じられ、このとき、全行程の間中、スロットル溝を形成している端面溝は開いたままである。ピストンの速度が高いと、ピストンディスクはレリーフ部分に密着するため、ピストン溝はスロットル溝を除いて閉じられることになる。ピストンが低速で押退け室に向かって移動すると、ピストンディスクの変形は全くまたは極僅かにしか行われないため、ピストン溝は開いたままである。つまり当該シリンダ・ピストンユニットは、荷重に応じた多段式の減衰手段を有している。補償室に向かう戻り行程において、ピストンディスクはピストン端面から持ち上げられるため、減衰媒体は概ね支障無く、補償室から押退け室内へ流入することができるようになっている。
【0006】
本発明の別の詳細は、下位請求項および概略的に図示する各実施形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】シリンダ・ピストンユニットの縦断面を示す図である。
【
図8】高荷重が加えられたときのピストンおよびピストンディスクを示す図である。
【
図9】低荷重が加えられたときのピストンおよびピストンディスクを示す図である。
【
図10】半径方向外側に向かって増大する端面隆起部を備えたピストンを示す図である。
【
図11】突起状の隆起部を備えたピストンおよびピストンディスクの断面を示す図である。
【
図12】通走凹部を備えたピストンを示す図である。
【
図13】
図4に示したピストンを上から見た図である。
【0008】
図1には、シリンダ・ピストンユニット(10)が示されている。シリンダ・ピストンユニット(10)はシリンダ(11)を有しており、シリンダ(11)内には、ピストンロッド(41)に取り付けられたピストン(51)が案内されている。シリンダ(11)は、ポット状に形成されている。シリンダ(11)のシリンダ壁(12)は、円環状の横断面を有している。シリンダ底部(13)は閉じられている。シリンダ(11)のヘッド(14)は、シリンダヘッドカバー(15)により閉じられている。シリンダヘッドカバー(15)を貫通して、ピストンロッド(41)が案内されている。
【0009】
シリンダ(11)とシリンダヘッドカバー(15)とにより画定されたシリンダ内室(16)内で、ピストン(51)は押退け室(91)と補償室(93)とを仕切っている。押退け室(91)は、この実施例ではピストン(51)とシリンダ底部(13)との間に配置されている。補償室(93)は、この構成ではピストン(51)とシリンダヘッドカバー(15)との間に位置している。補償室(93)を、ピストン(51)とシリンダ底部(13)との間に配置することも考えられる。この場合、押退け室(91)は、ピストンロッドシールを支持しているピストンヘッドカバー(15)とピストン(51)との間に位置することになる。
【0010】
押退け室(91)内には、圧縮ばね(92)が配置されている。圧縮ばね(92)は、シリンダ底部(13)と、ピストン(51)に取り付けられたピストンアタッチメント(114)とに支持されている。荷重が除去された状態では、この圧縮ばね(92)の長さは、ピストン(51)の行程よりも大きくなっている。つまり組込み状態において、圧縮ばね(92)には予荷重が加えられている。圧縮ばね(92)は、以下で戻しばね(92)とも呼ばれている。
【0011】
図1に示す図では、ピストン(51)はストッパディスク(81)に当接している。このストッパディスク(81)は、シリンダ(11)内で位置固定されている。例えばストッパディスク(81)は、シリンダ(11)の係止溝(17)に係合する環状の係止リング(82)を有している。ストッパディスク(81)は、ピストンロッド(41)が貫通案内された中心の貫通孔(83)を有している。このストッパディスク(81)により、補償室(93)に向かうピストン(51)の行程が制限されている。
【0012】
補償室(93)内でピストンロッド(41)には軸シールリング(85)が被せ嵌められている。軸シールリング(85)の、ピストンロッド(41)にシール式に当接している内側のシールリップ(86)は、ピストン(51)の方を向いている。軸シールリング(85)はさらに、シリンダ内壁(18)にシール式に当接している外側のシールリップ(87)を有している。シリンダ内壁(18)は、この領域では円筒形に形成されている。軸シールリング(85)は、シリンダ内壁(18)とピストンロッド(41)に沿って、シリンダ・ピストンユニット(10)の長手方向(5)に摺動可能である。
図1に示す図では、軸シールリング(85)はピストン(51)に面した終端位置に位置している。補償室(93)は、この図ではその最小容積を有している。
【0013】
軸シールリング(85)は、ピストンロッド(41)の表面上で案内される支持リング(88)により支持されている。支持リング(88)とシリンダヘッドカバー(15)とには、補償ばね(94)が支持されている。
図1に示す図では、圧縮ばね(94)として形成された補償ばね(94)が僅かに圧縮されている。
【0014】
図2には、シリンダ(11)が縦断面で示されている。シリンダ(11)の外周面(19)は概ね円筒形に形成されており、周方向に延在する広幅の把持溝(21)を有している。シリンダ壁(12)の厚さは、押退け室(91)の領域では、シリンダ(11)の直径の18%である。
【0015】
シリンダ内壁(18)は、シリンダヘッド(14)に続くカバー収容領域(22)、シール部材案内領域(23)およびピストン行程領域(24)を有している。シール部材案内領域(23)とピストン行程領域(24)との間には、係止溝(17)を備えた係止リング収容部(25)が配置されている。係止溝(17)の直径は、シール部材案内領域(23)の直径よりも小さくなっている。
【0016】
カバー収容領域(22)は、截頭円錐状に形成されている。仮想円錐の先端角度は、例えば24度である。仮想円錐の先端は、シリンダ底部(13)の方に向けられている。シリンダヘッドカバー(15)の外周面も、同様に截頭円錐状に形成されている。
【0017】
截頭円錐の小さい方の直径は、シール部材案内領域(23)の直径に等しい。シール部材案内領域(23)は円筒形に形成されている。シール部材案内領域(23)の長さは、この実施例ではピストンの行程長さの30%である。ピストン行程は、ストッパディスク(81)における第1の終端位置からシリンダ底部(13)における第2の終端位置へ移動したときの、長手方向(5)に向けられたピストン(51)の移動距離である。
【0018】
ピストン行程領域(24)は、その、シリンダ底部(13)とは反対の側の領域に、例えば長手方向(5)に向けられた8つのシリンダ溝(26~31)を有している。これらのシリンダ溝(26~31)は、半径方向において互いにずらされてシリンダ内壁(18)に配置されている。シリンダ溝(26~31)は、例えば1つの共通の円弧上に位置しており、長手方向(5)に対して垂直な1つの平面内に、それぞれ同じ断面積を有している。この断面積は、例えばシリンダ(11)の、シリンダ底部(13)に隣接する領域の内部断面積の、それぞれ5/1000である。溝底部(32)は、係止リング収容部(25)と整合している。この実施例では、全てのシリンダ溝(26~31)(
図2にはそのうちの5つを図示)がそれぞれ異なる長さを有している。この場合、最長のシリンダ溝(31)は、最短のシリンダ溝の2.4倍の長さである。最長のシリンダ溝(31)の長さは、この実施例ではピストン行程の57%である。シリンダ底部(13)に隣接する領域は円筒形に形成されており、シリンダ溝(26~31)間のシリンダ内壁(18)と整合している。
図2に示す図では、例えば追加的なシリンダ長手方向溝(33)は、ピストン行程領域(24)の長さを有している。
【0019】
シリンダ溝(26~31)は、例えば対を成すように、同じ長さを有していてもよい。また、シリンダ溝(26~31)を、例えばシリンダ内壁(18)にらせん状に配置することも考えられる。
【0020】
図3には、ピストンロッド(41)が示されている。ピストンロッド(41)の長さは、例えばピストン行程の1.6倍である。ピストンロッド(41)は、例えば金属材料から製造されている。ピストンロッド(41)は、円筒形に形成された挿入領域(42)、支持カラー(43)および案内領域(44)を有している。挿入領域(42)の長さは、例えばピストンロッド(41)の長さの6.7%である。挿入領域(42)および案内領域(44)の直径は、例えばシリンダ底部(13)に隣接する領域のシリンダ内室(16)の直径の37%である。支持カラー(43)の直径は、この直径の1.5倍である。支持カラー(43)の長さは、この実施例ではピストンロッド(41)の長さの4%である。
【0021】
図4には、ピストン(51)が等角投影図で示されている。
図5においてこのピストン(51)は、等角投影断面図で示されている。ピストン(51)は、概ね円筒形のピストンボデー(52)を有しており、ピストンボデー(52)は、補償室(93)の方向では補償室側(56)により画定されており、押退け室(91)の方向では押退け室側(53)により画定されている。
【0022】
ピストン(51)は、その押退け室側(53)に、ピストンボデー(52)に着座したピストンピン(54)を有している。ピストンピン(54)は、ピストン(51)の長手方向(5)に向けられた中心線(55)に対して同軸的に配置されている。長手方向(5)に向けられたピストンピン(54)の長さは、例えばピストン(51)の長さの38%である。ピストンピン(54)の直径は、ピストン(51)の直径に対して同じ比率を有している。ピストンピン(54)には取付け状態において、長手方向(5)に摺動可能なピストンディスク(101)およびピストンアタッチメント(114)が被せ嵌められている。この場合、押退け室側(53)とピストンアタッチメント(114)とが、ピストンディスク(101)の摺動距離を制限している。
【0023】
ピストンボデー(52)は、周方向に延在するリング溝(58)を備えた円筒形の外周面(57)を有している。このリング溝(58)には、ピストン(51)の取付け状態においてピストンシールリング(111)およびスラストワッシャ(112)が着座している。この場合、スラストワッシャ(112)は、リング溝(58)の、補償室側(93)の方を向いた端部に配置されている。
図1に示した図では、Oリングとして形成されたピストンシール部材(111)は、その環状の案内線に沿って楕円形の横断面を有している。
【0024】
補償室側(56)は、挿入凹部(59)を有している。この挿入凹部(59)の、長手方向(5)に向けられた長さは、ピストンロッド(41)の挿入領域(42)よりも僅かに長くなっている。挿入凹部(59)は、挿入されたピストンロッド(41)と共に例えばプレス嵌め部を形成しており、この場合は取付け時に空気抜き通路(61)を介して空気を抜くことができるようになっている。
【0025】
補償室側(56)と押退け室側(53)とは、この実施例では3つのピストン溝(62~64)を介して互いに接続されている。これらのピストン溝(62~64)は、ピストンボデー(51)を長手方向(5)に貫通している。ピストン溝(62~64)は、長手方向(5)に対して垂直な1つの平面内で1つの共通の円弧上に位置している。この円弧の直径は、例えばピストン(51)の直径の56%である。全てのピストン溝(62~64)は、長手方向(5)に沿って一定の、腎臓形の横断面を有している。長手方向(5)に対して垂直な1つの平面内の、個々のピストン溝(62~64)の断面積は、この実施例では、長手方向(5)に対して垂直な1つの平面内の、ピストン(51)の最大断面積の3.2%である。
【0026】
押退け室側(53)において、この実施例ではピストン溝(62~64)は、例えばスタンピングされた複数の環状溝部分(65)を介して互いに接続されている。各1つの環状溝部分(65)が、隣り合う2つのピストン溝(62,63;62,64;63,64)を接続している。個々の環状溝部分(65)は、矩形の横断面を有している。環状溝部分(65)の、長手方向(5)に向けられた深さは、押退け室側(53)の半径方向に向けられた幅の1/2である。この幅は、同一平面内のピストン溝(62~64)の幅に相当する。
【0027】
ピストン溝(62~64)および環状溝部分(65)は、押退け室側(53)を、内側領域(66)と外側領域(67)とに分けている。内側領域(66)はピストンピン(54)に隣接しており、ピストン溝(62~64)および環状溝部分(65)により包囲される。外側領域(67)は、ピストン外周面(57)により画定される。ピストン(51)は、環状溝部分(65)無しで形成されていてもよい。内側領域(66)と外側領域(67)とは両方共、ピストン(51)の中心軸線(55)に対して垂直なピストン端面の平面(72)内に概ね位置している。
【0028】
ピストン外周面(57)と第1のピストン溝(62)とは、押退け室側(53)においてスロットル溝(68)を介して互いに接続されている。この、押退け室側(53)にスタンピングされたスロットル溝(68)の長さは、例えばピストン(51)の半径の90%である。曲線状に形成されたこの端面溝(68)の断面積は、この実施例では1つの環状溝部分(65)の断面積の3/4である。スロットル溝(68)は、半径方向において第1のピストン溝(62)とピストン外周面(57)の両方に開口している。
【0029】
押退け室側(53)はさらに、ピストン端面の平面(72)とは異なるレリーフ部分(69)を有している。この実施例では、レリーフ部分(69)は端面隆起部(75)である。端面隆起部(75)は、
図4に示す図では、ブリッジ(75)の形状を有している。このブリッジ(75)は、中心軸線(55)を含む半径方向の平面に対して対称に配置されており、例えば第2のピストン溝(63)をピストン外周面(57)に接続している。ブリッジ(75)は、半径方向に向けられたその長さにわたり、例えば一定の横断面を有している。端面隆起部(75)は、ピストンピン(54)をピストン外周面(57)に接続していてもよい。この場合、ウェブ(Steg)(75)は例えば第2のピストン溝(63)にオーバラップしていてよい。
【0030】
端面隆起部(75)は、2つのピストン溝(62,63;63,64;62,64)の間に配置されていてもよい。端面隆起部(75)を、外側領域(67)または内側領域(66)のみに配置することも考えられる。ブリッジに代えて、端面隆起部(75)は球冠、突起等として形成されていてもよい。
【0031】
図6には、ピストン(51)の外周面(57)に沿ったピストン(51)の展開図が示されている。端面隆起部(75)は、この図では連続して微分可能な画定線(71)により画定されている。横座標がピストン(51)の外周線でありかつ縦座標が中心線(55)に対して平行に向けられている座標系において、横座標の各値は、縦座標の所定の値に正確に割り当てられている。前記画定線(71)は、接線方向において隣接するピストン端面の平面(72)の領域に移行している。画定線(71)の最大部(73)における接線は、ピストン端面の平面(72)に対して平行であり、ピストン端面の平面(72)に対して押退け室(91)の方向に離れている。
図6に示す図では、画定線(71)は、最大部(73)における縦座標に対して対称な余弦曲線の1つの完全な周期の形状を有している。この実施例の2つの最小部(74)は、ピストン端面の平面(72)に位置している。これらの最小部は、画定線(71)の2つの同じ極値(74)を形成している。最大部(73)、つまり別の極値(73)は、端面隆起部(75)の頂点を形成している。最大部(73)は、点に代えて例えば扁平にされた領域として形成されていてもよい。例えば、ピストン(51)の中心線(55)を中心として同心的な、端面隆起部(75)にオーバラップしているピストン(51)の画定線(71)はいずれも、連続して微分可能な線として形成されていてよい。ブリッジ(75)の、長手方向(5)に向けられた高さは、例えば周方向に向けられたブリッジ幅の円弧長の3/8未満である。例えばブリッジ(75)の断面積は、スロットル溝(68)の断面積に相当する。また、画定線(71)の別の形状も考えられる。
【0032】
図13には、押退け室側(53)からピストン(51)を見た平面図が示されている。
図14には、ピストン(51)の半断面図が示されている。この図の断面は、半径方向平面である。レリーフ部分(69)は、この半径方向平面内に延在する上端線(77)により画定されている。この上端線(77)は、連続して微分可能な線である。上端線(77)は、ピストン端面の平面(72)に対して垂直な最大距離点(78)を有している。この最大距離点(78)は、押退け室(91)の方に向けられている。この実施例では、半径方向平面内に位置する上端線(77)はいずれも、ピストン端面の平面(72)に対して平行に位置する直線、上昇する直線または下降する直線であるか、あるいは押退け室(91)の方向においてピストン端面の平面(72)とは相対的に異なる曲線である。
【0033】
図7には、ピストンディスク(101)が示されている。これは、互いに平行な平面の2つの端面(102)と、中心の孔(103)とを備えたリングディスク(101)である。ピストンディスク(101)の内径は、この実施例ではピストンピン(54)の外径よりも10%だけ大きくなっている。ピストンディスク(101)の外径は、例えばピストン(51)の外径の93%である。図示の実施例では、ピストンディスク(101)は0.3ミリメートルの厚さを有している。この厚さは、例えば端面隆起部(75)の高さの2倍である。
【0034】
ピストンディスク(101)は、例えばポリオキシメチレン(POM)から成っている。この材料は、2800メガパスカルの弾性率(E)を有しており、その引張応力(δs)は67メガパスカルであり、EN ISO 868 Dスケールに準拠したショア硬さは81である。
【0035】
画定線(71)の2つの同じ極値(73;74)の間隔(d)は、ピストンディスク(101)に応じて、ピストン(51)の中心軸線(55)を中心とした円弧線に沿って選択されていてよい。例えばこの間隔(d)は、
d>=(9.6*a*h*E*S/δs)1/2
となる。
【0036】
この場合、
dは、同じ極値(73;74)の間隔(mm)
aは、レリーフ部分(69)の最大高さ(mm)
hは、ピストンディスク(101)の厚さ(mm)
Eは、ピストンディスク(101)の弾性率(Mpa)
Sは、故障に対する安全係数(-)
δsは、ピストンディスク(101)の引張応力(Mpa)
を意味する。
【0037】
よって、2つの同じ極値(73;74)の間隔(d)は、レリーフ部分(69)の最大高さ(a)と、ピストンディスク(101)の厚さ(h)と、ピストンディスク(101)の弾性率と、安全係数と、ピストンディスク(101)の材料の引張応力の逆数との積の9.6倍の正ルート以上である。この実施例では、間隔(d)は、2つの最小部(74)の間隔である。
【0038】
取付けに際して、ピストン(51)には例えば最初にピストンシールリング(111)およびスラストワッシャ(112)が設けられる。ピストンピン(54)にはピストンディスク(101)が被せ嵌められ、ピストンアタッチメント(114)が取り付けられる。ピストン(51)の挿入凹部(59)には、ピストンロッド(41)の挿入領域(42)が挿入されて固定される。挿入領域(42)は、例えば接着される。その後、ピストンロッド(41)の支持カラー(43)は、ピストン(51)に面状に支持されることになる。この実施例では、支持カラー(43)はピストン(51)の補償室側(56)に接着されている。この事前組立てユニットは、戻しばね(92)と共に、例えばオイル(95)で予め満たされたシリンダ(11)内に挿入される。次いで、ストッパディスク(81)がシリンダ(11)内で位置固定され、軸シールリング(85)がピストンロッド(41)に被せ嵌められる。支持リング(88)の挿入後に、補償ばね(94)がピストンロッド(41)に被せ嵌められ、シリンダ(11)が、シリンダヘッドカバー(15)により閉じられる。別の取付け順序も考えられる。
【0039】
シリンダ・ピストンユニット(10)の作動に際して、ピストンロッド(41)は出発位置に位置しており、ピストン(51)は
図1に示した位置に位置している。押退け室(91)はその最大容量を有している。補償室(93)は、その最小容積を有している。ピストンロッド(41)に荷重が加えられると、ピストンロッド(41)はシリンダ(11)に対して相対的に、行程方向(6)で押退け室(91)に向かって移動させられる。
【0040】
押退け室(91)が圧縮される。このときオイル(95)がまず、全てのシリンダ溝(26~31)と、例えばシリンダ長手方向溝(33)とを通り、押退け室(91)から補償室(93)内へ押し退けられる。ピストンロッド(41)の移動速度が高くかつ/またはピストンロッド(41)に加えられる荷重が高いと、ピストンディスク(101)がピストン(51)の押退け室側(53)に押し付けられる。
図8には、ピストンディスク(101)が当接したピストン(51)が示されている。ピストンディスク(101)は、押退け室側(53)の、ピストン端面の平面(72)内に位置する面と、端面隆起部(75)とに密着している。例えば、第2のピストン溝(63)が押退け室側で完全に閉じられている。しかしまた第2のピストン溝(63)は、スロットル溝(68)の横断面を含む残留横断面を除いて閉じられていてもよい。第3のピストン溝(64)は、押退け室側で閉じられている。しかしまた第3のピストン溝(64)は、第1のピストン溝(62)または第2のピストン溝(63)と同様に形成されていてもよい。第1のピストン溝(62)はスロットル溝(68)を介して押退け室(91)と接続されているため、オイル(95)は、スロットル溝(68)と第1のピストン溝(62)の両方を通流する。オイル(95)は、環状溝部分(65)を介して第2のピストン溝(63)と第3のピストン溝(64)にも流入する。ピストン(51)およびピストンロッド(41)の動きが極僅かに遅くされ、これにより衝突ノイズが生じなくなる。
【0041】
行程方向(6)でのピストンロッド(41)の行程の増大と共に、シリンダ溝(26~31)は個々に終わる。押退け室(91)と補償室(93)との間の通流横断面が減少する。ピストンディスク(101)は引き続き、ピストン(51)の押退け室側(53)に当接している。ピストン(51)およびピストンロッド(41)の遅れが増大する。押退け室(91)内では戻しばね(92)が圧縮される。補償室(93)内では、軸シールリング(85)および支持リング(88)がシリンダヘッド(14)に向かって移動させられ、このとき補償ばね(94)が圧縮される。
【0042】
ピストンロッド(41)およびピストン(51)が引き続き行程方向(6)に移動すると、シリンダ溝(26~31)の断面積の和が減少する。ピストンディスク(101)は引き続き、押退け室側のピストン端面(53)に当接している。ピストン(51)およびピストンロッド(41)の遅れは引き続き増大し、このときピストン(51)の速度はさらに低下する。
【0043】
ピストン(51)が長手方向溝(26~31)の領域を脱すると直ちに、ピストンシールリング(111)が支持ディスク(112)とシリンダ内壁(18)とに、例えば十分にシールするように当接する。ピストンディスク(101)は、引き続きピストン(51)に押し付けられており、スロットル溝(68)を除いて押退け室側(53)を閉じている。押退け室(91)からオイル(95)がスロットル溝(68)およびピストン溝(62~64)ならびに例えばピストン長手方向溝(33)を通って補償室(93)内へ流入する。ここでは軸シールリング(85)がさらに、ピストンロッド(41)およびシリンダ(11)に対して相対的に、シリンダヘッドカバー(15)に向かって摺動させられる。押退け室(91)内では戻しばね(92)がさらに圧縮される。補償室(93)内では補償ばね(94)がさらに圧縮される。
【0044】
ピストンロッド(41)に作用する荷重と、押退け室(91)内の反力との間に均衡が生じると直ちに、ピストン(51)およびピストンロッド(41)はシリンダ(11)に対して相対的に停止する。場合により、戻しばね(92)が部分的に弛緩することがあり、この場合、戻しばね(92)はピストン(51)をシリンダヘッドカバー(15)に向かって摺動させる。
【0045】
荷重が除去されると、戻しばね(92)がピストン(51)およびピストンロッド(41)を、行程方向(6)とは反対に向けられた戻り行程方向(7)に押し出す。オイル(95)は、補償室(93)から全てのピストン溝(62~64)を通って流出し、ピストンディスク(101)を押退け室側のピストン端面(53)から持ち上げる。例えば、ピストンディスク(101)はピストンアタッチメント(114)に当接する。弛緩した補償ばね(94)は、支持リング(88)と軸シールリング(85)とを、ストッパディスク(81)の方に押圧する。ピストン(51)がシリンダ溝(26~31)の領域に到達すると直ちに、補償室(93)からオイル(95)がこれらのシリンダ溝(26~31)を通って押退け室(91)に追加的に流入する。ピストン(51)がストッパディスク(81)に当接すると、戻り行程は終了する。今、ピストンロッド(41)は完全に進出した状態にある。シリンダ・ピストンユニット(10)は今再び、
図1に示したその出発位置に到達したことになる。
【0046】
荷重が小さくかつ/またはピストンロッド(41)の移動速度が低いと、ピストンディスク(101)は端面隆起部(75)に当接する(
図9参照)。ピストンディスク(101)は全くまたは僅かにしか変形されず、例えばピストン端面の平面(72)に対して平行にまたは傾斜して位置している。押退け室(91)から押し退けられたオイル(95)は、まずシリンダ溝(26~31)も、全てのピストン溝(62~64)も通って補償室(93)内へ流入する。ピストン(51)およびピストンロッド(41)は、極僅かに遅くされる。この場合も、行程方向(6)でのピストン(51)の行程の増大と共に、シリンダ溝(26~31)の断面積の和が減少し、これにより、ピストン(51)およびピストンロッド(41)の遅れが増大させられる。
【0047】
ピストン(51)がシリンダ溝(26~31)の領域を脱すると直ちに、ピストンシールリング(111)はその外周線でもってシリンダ内壁(18)に当接する。ピストンディスク(101)は、ピストン端面の平面(72)に対して相対的なその位置に留まっていてよい。しかしまた、上述したように、押退け室(91)内で上昇する圧力が、ピストンディスク(101)をピストン(51)の押退け室側(53)に押し付けてもよい。ピストン(51)の押退け室側(53)に対して相対的なピストンディスク(101)の位置に応じて、押退け室(91)から押し退けられたオイル(95)は、スロットル溝(68)を介してのみピストン溝(62~64)に流入するか、またはピストン溝(62~64)に直接に流入するようになっている。
【0048】
ピストン(51)およびピストンロッド(41)の戻り行程が、上述したように行われる。
【0049】
図10には、端面隆起部(75)の1つの別の実施形態が示されている。ブリッジ状に形成された端面隆起部(75)の断面積が、半径方向において内側から外側に向かって増大している。この増大部は、例えば線形に形成されている。ピストン外周面(57)において端面隆起部(75)の断面は、例えば
図1~
図9、
図13および
図14に示す実施例の対応する面に等しくなっている。
図10に示す実施例では、上述した最小部(74)の間隔(d)は、例えば端面隆起部(75)の、中心軸線(55)を中心として同心的に位置する全ての画定線(71)と見なされる。この実施例では、例えば端面隆起部(75)の、半径方向平面内に位置する上端線(77)は全て直線である。この直線は、ピストン外周面(57)においてピストン端面の平面(72)に対して垂直な最大距離を有している。
【0050】
このピストン(51)の挿入は、前の実施例に関して説明した方法と同様に行われる。高荷重が加えられると、ピストンディスク(101)はこの実施例でも押退け室側のピストン端面(53)に押し付けられる。この場合、ピストンディスク(101)はその孔(103)に隣接する領域において、外側領域におけるよりも僅かに変形されるようになっている。
【0051】
低荷重が加えられた場合、ピストンディスク(101)はピストン(51)に対して相対的に傾いてよい。次いで、ピストンディスク(101)は端面隆起部(75)と、押退け室側(53)の、ピストン端面の平面(72)内に位置する領域とに当接する。ピストンピン(54)と孔(103)との間の大きな遊びが、ピストンディスク(101)のねじれを防ぐ。
【0052】
図11には、突起状の端面隆起部(75)を備えたピストン(51)およびピストンディスク(101)の断面が示されている。この図では、端面隆起部(75)は押退け室側(53)の外側領域(67)に配置されている。端面隆起部(75)は、ここでは第2のピストン溝(63)とピストン外周面(57)との間に位置している。しかしまた端面隆起部(75)は、環状溝部分(65)とピストン外周面(57)との間に配置されていてもよい。端面隆起部(75)は、環状溝部分(65)および/またはピストン溝(63)を部分的に覆い隠していてもよい。端面隆起部(75)を押退け室側(53)の内側領域(66)に配置することも同様に考えられる。
【0053】
突起(75)は、その最大部(73)において球セグメント状に形成されている。突起(75)は、全ての側面において接線方向でピストン端面の平面(72)に移行している。レリーフ部分(69)を複数の側において画定し、ピストン(51)の中心軸線(55)に対して同心的に延在する画定線(71)は全て、2つの最小部(74)と1つの最大部(73)とを有する、連続して微分可能な曲線である。同じことが、半径方向平面内に位置する上端線(77)にも当てはまる。
【0054】
このピストン(51)をシリンダ・ピストンユニット(10)において使用する場合、高荷重が行程方向(6)に作用すると、ピストンディスク(101)は、押退け室側(53)の、ピストン端面の平面(72)内に位置する領域と、端面隆起部(75)とに押し付けられる。ピストンディスク(101)は変形して、ピストン(51)の押退け室側(53)に密着する。ピストン(51)は、スロットル溝(68)を除いて閉じられる。
【0055】
低荷重のみが加えられる場合には、ピストンディスク(101)は少なくとも概ね変形されない状態に保たれる。例えばピストンディスク(101)は、ピストン(51)の中心軸線(55)に対して垂直な平面に対して相対的に傾く。このときオイル(95)は概ね支障無く、押退け室(91)から補償室(93)に流入することができる。
【0056】
図12には、レリーフ部分(69)を備えた別のピストンが示されている。この実施例では、レリーフ部分(69)はピストン端面の平面(72)とは異なる通走凹部(76)として形成されている。この通走凹部(76)は、押退け室側のピストン端面(53)にスタンピングされている。通走凹部(76)は、外側領域(67)を例えば半径方向に通走している。通走凹部(76)は、例えば第2のピストン溝(63)をピストン外周面(57)に接続している。通走凹部(76)は、中心軸線(55)に対して同心的に延在する、連続して微分可能な複数の画定線(71)により画定されている。これらの画定線(71)はいずれも、中心線がピストンの中心軸線(55)と合致する各仮想円筒の外周面上にそれぞれ延在している。これらの画定線(71)は、この実施例では最大部(73)として形成された2つの同じ極値(73)を有している。最大部(73)の間には、別の極値(74)として最小部(74)が位置している。最大部(73)と最小部(74)の両方において、横座標が中心軸線(55)を中心とした円弧の一部である座標系では、接線はピストン端面の平面(72)に対して平行である。2つの最大部(73)の間隔は、例えば上述した形式の間隔(d)に相応する。
【0057】
ピストン(51)の、中心軸線(55)を含む1つの半径方向平面内で、通走凹部(76)は上端線(77)により画定されている。少なくとも、画定線(71)の最小部(74)を含む上端線(77)は直線である。
【0058】
高荷重が加えられてシリンダ・ピストンユニット(10)が作動すると、ピストンディスク(101)は押退け室側(53)に押し付けられる。この場合、ピストンディスク(101)は通走凹部(76)に密着し、これにより、通走凹部(76)は例えば閉じられることになる。戻り行程方向(7)に移動する際に、ピストンディスク(101)は持ち上げられる。
【0059】
低荷重のみが加えられる場合には、ピストンディスク(101)は概ね変形せずに押退け室側(53)に当接する。通走凹部(76)は露出したままであり、押退け室(91)から押し退けられたオイル(95)が通走凹部(76)を通流することができるようになっている。
【0060】
単一のレリーフ部分(69)に代えて、ピストン(51)は複数のレリーフ部分(69)を有していてもよい。これらのレリーフ部分(69)は互いに同一にまたは異なって形成されていてよい。
【0061】
個々の実施例を組み合わせることも考えられる。
【符号の説明】
【0062】
5 長手方向
6 行程方向
7 戻り行程方向
10 シリンダ・ピストンユニット
11 シリンダ
12 シリンダ壁
13 シリンダ底部
14 (11)のヘッド、シリンダヘッド
15 シリンダヘッドカバー
16 シリンダ内室
17 係止溝
18 シリンダ内壁
19 外周面
21 把持溝
22 カバー収容領域
23 シール部材案内領域
24 ピストン行程領域
25 係止リング収容部
26 シリンダ溝
27 シリンダ溝
28 シリンダ溝
29 シリンダ溝
31 シリンダ溝、最長のシリンダ溝
32 溝底部
33 シリンダ長手方向溝
41 ピストンロッド
42 挿入領域
43 支持カラー
44 案内領域
51 ピストン
52 ピストンボデー
53 押退け室側、押退け室側のピストン端面
54 ピストンピン
55 中心線、中心軸線
56 補償室側
57 外周面、ピストン外周面
58 リング溝
59 挿入凹部
61 空気抜き通路
62 ピストン溝、第1のピストン溝
63 ピストン溝、第2のピストン溝
64 ピストン溝、第3のピストン溝
65 環状溝部分
66 内側領域
67 外側領域
68 スロットル溝、端面溝
69 レリーフ部分
71 画定線
72 ピストン端面の平面
73 最大部、(71)の極値
74 最小部、(71)の極値
75 端面隆起部、ブリッジ、突起
76 通走凹部
77 上端線
78 (72)に対して垂直な最大距離点
81 ストッパディスク、当接ディスク
82 係止リング
83 貫通孔
85 軸シールリング
86 (22)の内側のシールリップ
87 (22)の外側のシールリップ
88 支持リング
91 押退け室
92 圧縮ばね、戻しばね
93 補償室
94 補償ばね、圧縮ばね
95 オイル
101 ピストンディスク、リングディスク
102 (101)の端面
103 孔
111 ピストンシールリング、ピストンシール部材
112 スラストワッシャ
114 ピストンアタッチメント
a レリーフ部分(69)の最大高さ
d 同じ極値(74)の間隔
h ピストンディスク(101)の厚さ