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特許7146926CD4ヘルパーT細胞エピトープの融合ペプチドおよびそのワクチン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】CD4ヘルパーT細胞エピトープの融合ペプチドおよびそのワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220927BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220927BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220927BHJP
   C07K 14/045 20060101ALI20220927BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20220927BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20220927BHJP
   C12N 15/44 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 39/295 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20220927BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K7/08
C07K14/045
C07K14/11
C12N15/38
C12N15/44
A61K39/295
A61K39/245
A61K39/145
A61P37/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020539127
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 CN2018108331
(87)【国際公開番号】W WO2019062853
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/104401
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520108660
【氏名又は名称】ヴァクディアグン バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VACDIAGN BIOTECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】230-230A, A2 Building, Biobay, No.218 Xinghu Street, Suzhou Industrial Park, Suzhou, Jiangsu 215123, China
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ジエンチン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シアオイエン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-536326(JP,A)
【文献】特表2010-515444(JP,A)
【文献】特表2002-512778(JP,A)
【文献】特表2005-535627(JP,A)
【文献】特表2005-527506(JP,A)
【文献】国際公開第2008/157419(WO,A2)
【文献】特表2009-538630(JP,A)
【文献】国際公開第2013/093512(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/093514(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/046996(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/083963(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0180947(US,A1)
【文献】特表2013-503159(JP,A)
【文献】特表2006-503017(JP,A)
【文献】特表2010-535026(JP,A)
【文献】国際公開第2004/111080(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0063952(US,A1)
【文献】Viral Immunology, 2010, Vol.23, No.2, pp.169-180
【文献】Immunology, 2011, Vol.133, pp.246-256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD4ヘルパーT細胞エピトープの融合ペプチドであって、
前記エピトープの融合ペプチドが、配列番号34、44もしくは48に示されているエピトープの融合ペプチド、または、配列番号1~5もしくは配列番号11~18のエピトープを縦列に連結することによって形成されたエピトープの融合ペプチドである、CD4ヘルパーT細胞エピトープの融合ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のエピトープ融合ペプチドと標的免疫原とを含む融合タンパク質。
【請求項3】
前記標的免疫原が、ペプチド、抗原、ハプテン、炭水化物、タンパク質、核酸、アレルゲン、ウイルスもしくはウイルスの一部、細菌、寄生生物および他の丸ごとの微生物からなる群から選択される、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記抗原が、腫瘍抗原または感染関連抗原である請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記腫瘍抗原が、肺がん抗原、精巣がん抗原、黒色腫抗原、肝がん抗原、乳がん抗原および前立腺がん抗原からなる群から選択される1つまたは複数の腫瘍抗原である、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記腫瘍抗原が、LAGE抗原、MAGE抗原およびNY-ESO-1抗原からなる群から選択される1つまたは複数の腫瘍抗原である、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記LAGE抗原が、LAGE-1であり、
前記MAGE抗原が、MAGE-A3である、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記LAGE-1のアミノ酸配列が、配列番号24に示されているものであり、
前記MAGE-A3のアミノ酸配列が、配列番号25に示されているものであり、
前記NY-ESO-1のアミノ酸配列が、配列番号26に示されているものである、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記感染関連抗原が、HIV抗原、インフルエンザウイルス抗原およびHBV抗原からなる群から選択される1つまたは複数の感染関連抗原である、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、配列番号55~58のうちの1つで示される、請求項からのいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1に記載のエピトープ融合ペプチドまたは請求項から10のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
予防有効量または治療有効量の請求項1に記載のエピトープ融合ペプチド、請求項から10のいずれか一項に記載の融合タンパク質、および/または請求項11に記載のポリヌクレオチド、ならびに薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物。
【請求項13】
標的免疫原の免疫原性を増大させるための医薬の調製における、請求項1に記載のエピトープ融合ペプチド、請求項から10のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項11に記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項12に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項14】
請求項1に記載のエピトープ融合ペプチドを使用する標的免疫原の免疫原性を増大させるための医薬またはワクチンであって、
ワクチン対象または集団においてより強力な免疫応答を有するCD4ヘルパーT細胞エピトープを標的免疫原と融合することによって形成された融合タンパク質を含む、医薬またはワクチン。
【請求項15】
それを必要とする対象における状態を治療または予防するための医薬またはワクチンであって、請求項1に記載のエピトープ融合ペプチド、請求項から10のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項11に記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項12に記載の免疫原性組成物を含む医薬またはワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学および免疫学の分野に属する。特に、本発明は、CD4ヘルパーT細胞エピトープの融合ペプチド、特に、エピトープ融合ペプチドを含むワクチン、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Tヘルパー細胞(Th細胞)は、免疫系、特に適応免疫系において重要な役割を果たすT細胞である。Th細胞は、T細胞サイトカインを放出することによって他の免疫細胞の活性を促進する。これらの細胞は、免疫応答を阻害または調節するのに役立つ。これらは、B細胞抗体クラスの変換、細胞傷害性T細胞の活性化および成長、ならびにマクロファージなどの食細胞の殺菌活性の極大化に必須である。
【0003】
タンパク質CD4を発現する成熟Th細胞は、CD4T細胞として公知である。そのようなCD4T細胞は、ヘルパーT細胞として、一般には免疫系内で所定のプロセスに供される。例えば、抗原提示細胞がMHCクラスII上に抗原を提示(express)すると、CD4細胞は、細胞間相互作用(例えば、CD40(タンパク質)とCD40L)とサイトカインを組み合わせることによってこれらの細胞を補助する。
【0004】
ヘルパーT細胞の重要性は、CD4T細胞に主に感染するウイルスであるHIVに関して見ることができる。HIV感染の後期には、機能的なCD4T細胞の喪失により、後天性免疫不全症候群(AIDS)として公知の感染症状の段階に至る。HIVウイルスが早期に血液中または他の体液中に見いだされた場合には、連続的な治療により、AIDSの発症を遅延させることができる。AIDSが発症した場合にも、治療によりAIDSの過程をより良好に管理することができる。リンパ球減少症などの他の稀な疾患の結果、CD4T細胞の喪失または機能障害がもたらされる。これらの疾患では同様の症状が生じ、その多くは致死的なものである。
【0005】
抗原エピトープ(antigenic epitope)、略して「エピトープ」(epitope)は、「抗原性決定因子」(antigenic determinant)としても公知であり、抗原特異性を決定する抗原の表面上の化学基を指す。抗原エピトープは、免疫系、特に、抗体、B細胞またはT細胞が認識することができる。抗原エピトープを認識することができる抗体の部位は、「パラトープ」または「抗体決定因子」と称される。抗原エピトープは、通常は外来タンパク質の一部分などを指すが、自己免疫系が認識することができるエピトープも抗原エピトープに分類される。
【0006】
タンパク質抗原のエピトープは、それらの構造およびパラトープとの相互作用に応じてコンフォメーショナルエピトープと直鎖状エピトープとに分けられる。コンフォメーショナルエピトープは抗原のアミノ酸配列の別個の部分からなるので、パラトープの抗原エピトープとの相互作用は、抗原の三次元的特性および表面の形状または三次構造に基づく。大多数の抗原エピトープはコンフォメーショナルエピトープに属する。対照的に、直鎖状エピトープは抗原の連続したアミノ酸配列からなり、抗原との相互作用はその一次構造に基づく。
【0007】
T細胞エピトープ(T cell epitope)は、主に8~17アミノ酸の短いペプチドからなり、抗原提示細胞(antigen-presenting cell、APC)上に存在し、抗原エピトープとして主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)と結合して複合体を形成し、対応するT細胞エピトープ受容体に結合し、それにより、T細胞が活性化され、対応する細胞性免疫応答が生じる(Shimonikevitz他、1984;Babbitt他、1985;Buus他、1986;TownsendおよびBodmer、1989)。エピトープに結合するMHC分子には2つの主要なクラスがある。それらの中で、主要組織適合性遺伝子複合体クラスIは通常8~11アミノ酸の長さのポリペプチドからなるT細胞抗原エピトープを提示し、一方、主要組織適合性遺伝子複合体クラスIIは13~17アミノ酸からなる比較的長いT細胞抗原エピトープを提示する。
【0008】
T細胞エピトープの中で、ヘルパーT細胞エピトープ(Th epitope、即ちThエピトープ)は、MHC分子に結合し、CD4ヘルパーT細胞受容体が認識することができる複合体を形成するT細胞エピトープのクラスを指す。Thエピトープは、MHCクラスII遺伝子によってコードされ、抗原提示細胞(antigen-presenting cell、APC)の表面上に存在する分子に主に結合する。次いで、クラスII分子およびペプチドエピトープの複合体がTヘルパーリンパ球の表面上の特異的なT細胞受容体(TCR)によって認識される。このように、MHC分子との関連で抗原エピトープを提示するT細胞が活性化され、Bリンパ球分化に必須のシグナルがもたらされ得る。伝統的に、ペプチド免疫原のTヘルパーエピトープの供給源はペプチドと共有結合によりカップリングした担体タンパク質であるが、カップリングプロセスには、カップリングプロセス中の抗原性決定因子の改変およびペプチドに対する抗体をなおざりにして、担体に対する抗体を誘導するなどの他の問題が伴い得る(Schutze,M.P.、Leclerc,C.Jolivet,M.Audibert,F.Chedi,L.Carrier-induced epitopic suppression,a major issue for future synthetic vaccines.J Immunol.1985、135、2319-2322;DiJohn,D.、Torrese,J.R.Murillo、J.Herrington,D.A.他、Effect of priming with carrier on response to conjugate vaccine.The Lancet.1989、2、1415-1416)。さらに、無関連のタンパク質を調製に使用することには品質管理上の問題が伴い得る。ペプチドワクチンの設計において重要である適切な担体タンパク質の選択は、毒性および大規模生産の実現性などの因子によって限定される。この方法には、カップリングすることができるペプチドの負荷サイズおよび安全に投与することができる担体の用量を含めた他の限定が存在する(Audibert,F.a.C.、L.1984.Modern approaches to vaccines.Molecular and chemical basis of virus virulence and immunogecnicity.、Cold Spring Harbor Laboratory、New York.)。担体分子は、強力な免疫応答を誘導することができるものであるが、これらには抗ペプチド抗体応答の阻害などの有害作用も伴う(Herzenberg,L.A.およびTokuhisa,T.1980.Carrier-priming leads to hapten-specific suppression.Nature 285:664;Schutze,M.P.、Leclerc,C.、Jolivet,M.、Audibert,F.、およびChedid,L.1985.Carrier-induced epitopic suppression,a major issue for future synthetic vaccines.J Immunol 135:2319;Etlinger,H.M.、Felix,A.M.、Gillessen,D.、Heimer,E.P.、Just,M.、Pink,J.R.、Sinigaglia,F.、Sturchler,D.、Takacs,B.、Trzeciak,A.、および他、1988.Assessment in humans of a synthetic peptide-based vaccine against the sporozoite stage of the human malaria parasite,Plasmodium falciparum.J Immunol 140:626)。
【0009】
一般に、免疫原は、細胞傷害性T細胞上に存在する表面Igまたは受容体によって認識されるエピトープに加えて、ヘルパーT細胞エピトープを含有しなければならない。これらの型のエピトープは全く異なるものであり得ることが理解されよう。B細胞エピトープに関しては、B細胞受容体はネイティブな免疫原に直接結合するので、コンフォメーションが重要である。対照的に、T細胞によって認識されるエピトープは、エピトープのコンフォメーション完全性とは無関係であり、CTLに対する約9アミノ酸の短い配列と、ヘルパーT細胞に対するわずかに長い(長さの制限が少ない)配列と、からなる。これらのエピトープには、それぞれクラスIまたはクラスII分子の結合性くぼみに適応させることのみが要求され、その結果、複合体はT細胞受容体に結合することができる。クラスII分子の結合性部位は両端が開いており、8アミノ酸残基という短さの報告されているエピトープ(Fahrer,A.M.、Geysen,H.M.、White,D.O.、Jackson,D.C.およびBrown,L.E.Analysis of the requirements for class II-restricted T-cell recognition of a single determinant reveals considerable diversity in the T-cell response and degeneracy of peptide binding to HEd J.Immunol.1995.155:2849-2857)に結合するペプチドの長さに大きな変動が許容される(Brown,J.H.、T.S.Jardetzky、J.C.Gorga、L.J.Stern、R.G.Urban、J.L.StromingerおよびD.C.Wiley.1993.Three-dimensional structure of the human class II histocompatibility antigen HLA-DR1.Nature 364:33)。
【0010】
Thエピトープは、ヘルパーT細胞を刺激し、活性化することができ、したがって、CD8T細胞およびB細胞の活性化を促進し、最終的に免疫応答を増大させることができる。本質的に、Thエピトープは、それ自体に対する免疫応答を活性化することができることに加えて、それらに関連する他の抗原またはエピトープに対する免疫応答の補助にも有効である。したがって、異種の強力なThエピトープを標的免疫原と融合し、それにより、標的免疫原の免疫原性を増大させることができる。PADRE(汎HLA DR結合性エピトープ(pan HLA DR-binding Epitope))と称される人工的な強力なThエピトープが、関連性のある免疫原に対する免疫応答のレベルを上昇させるための多数のワクチンの融合物構築において使用されている(del Guercio他、Vaccine、1997、15:441.;Franke,E.D.他、Vaccine、1999、17:1201;Jeff Alexander他、J Immunol、2000、164(3)1625-1633;Jeff Alexander他、Vaccine、2004、22:2362.;La Rosa、Corinna他、The Journal of infectious diseases、2012、205:1294-304)。さらに、破傷風毒素(Tetanus toxin)に由来する強力なThエピトープとして、P2も、免疫原性を増強するための標的免疫原とのカップリングに一般に使用される(Panina-Bordignon P他、Eur J Immunol、1989、19:2237-42;La Rosa、Corinna他、The Journal of infectious diseases、2012、205:1294-304)。
【0011】
しかし、一般に、免疫原性を増大させるためのThエピトープは、通常、異種である。言い換えれば、ワクチン対象においてThエピトープ自体に対する高レベルの免疫応答は生じない。したがって、ワクチン対象に上記の強力なThエピトープをワクチン接種すると、ワクチン対象の免疫系がそのようなThエピトープに最初に曝露され、レシピエント免疫系におけるそのようなThエピトープおよび標的免疫原の両方に対する活性化がほぼ同時に起こり、そのようなThエピトープに対するT細胞の発生時間および数は、標的免疫原に対するものと同様である。このように、標的免疫原の補助に対する効果はそれゆえ限定される。特に、免疫原性が弱い腫瘍抗原については、そのようなThエピトープの助力の効果を発揮させることがより難しい。実際に、強力なThエピトープの直接使用では、腫瘍抗原を活性化することはできるが、腫瘍ワクチンの要求に見合わない低いレベルの細胞性免疫応答が引き出される(Ghaffari-Nazari H他、PLoS ONE、2015、10(11):e0142563)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、標的免疫原、特に、腫瘍抗原などのいくらか弱い免疫原の免疫原性を増強するために、新しいThエピトープ戦略が必要とされている。
【0013】
本発明の目的の一つは、標的免疫原の免疫原性を増強するCD4ヘルパーT細胞エピトープの融合ペプチドを提供することである。
【0014】
さらに、本発明では、標的免疫原の免疫原性を増強するためのエピトープ融合ペプチドを得るために、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus、CMV)およびインフルエンザ(Influvirus、Flu)ウイルス(インフルウイルス)に由来する強力なThエピトープを利用する。
【0015】
本発明の目的に関して、次の用語を以下に定義する。
【0016】
「エピトープ融合ペプチド」は、いくつかのエピトープを接合することによって形成されるペプチドを指す。
【0017】
「標的免疫原」は、抗原、好ましくはタンパク質などの免疫学的活性を有する物質を含めた、ある特定の免疫応答を実現するために使用される免疫原を指す。
【0018】
本発明の目的のもう一つは、エピトープ融合ペプチドと標的免疫原の融合タンパク質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を実現するために、本発明は、CMVエピトープおよび/またはインフルエンザウイルスエピトープを含むCD4ヘルパーT細胞エピトープの融合ペプチドを提供する。
【0020】
本発明の一実施形態では、エピトープ融合ペプチドは、配列番号1~10に示されているものから選択されるCMVエピトープのうちの1つもしくは複数、および/または配列番号11~23に示されているものから選択されるインフルエンザウイルスエピトープのうちの1つもしくは複数を含む。
【0021】
本発明の一実施形態では、エピトープ融合ペプチドは、配列番号1~10に示されているものから選択されるCMVエピトープのうちの1つもしくは複数、および/または配列番号11~23に示されているものから選択されるインフルエンザウイルスエピトープのうちの1つもしくは複数からなる。エピトープ融合ペプチドは、例えば配列番号34または44に示されているエピトープ融合ペプチドなど、5種もしくは10種のCMVエピトープ、および/または8種もしくは13種のインフルエンザウイルスエピトープからなることが好ましい。エピトープ融合ペプチドは、例えば配列番号48に示されているエピトープ融合ペプチドなど、13種のインフルエンザウイルスエピトープからなることが最も好ましい。
【0022】
エピトープ融合ペプチドは、液性または細胞性免疫応答を誘導するものであることが好ましい。
【0023】
本発明は、エピトープ融合ペプチドと標的免疫原の融合タンパク質も提供する。
【0024】
本発明は、エピトープ融合ペプチドおよび/または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドも提供する。
【0025】
本発明の一実施形態では、標的免疫原は、任意の1つまたは複数の免疫原である。標的免疫原は、ペプチド、抗原、ハプテン、炭水化物、タンパク質、核酸、アレルゲン、ウイルスもしくはウイルスの一部、細菌、寄生生物または他の丸ごとの微生物(whole microorganism)であることが好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態では、抗原は、腫瘍抗原または感染関連抗原である。
【0027】
本発明の一実施形態では、腫瘍抗原は、肺がん抗原、精巣がん抗原、黒色腫抗原、肝がん抗原、乳がん抗原または前立腺がん抗原から選択される1つまたは複数の腫瘍抗原である。
【0028】
本発明の一実施形態では、腫瘍抗原は、LAGE抗原、MAGE抗原またはNY-ESO-1抗原から選択される1つまたは複数の腫瘍抗原である。LAGE抗原はLAGE-1であり、MAGE抗原はMAGE-A3であることが好ましい。腫瘍抗原は、LAGE-1、MAGE-A3およびNY-ESO-1を含むことがさらに好ましい。LAGE-1のアミノ酸配列は配列番号24に示されているものであり、MAGE-A3のアミノ酸配列は配列番号25に示されているものであり、また、NY-ESO-1のアミノ酸配列は配列番号26に示されているものであることが好ましい。
【0029】
本発明の一実施形態では、感染関連抗原は、HIV抗原、Fluウイルス抗原またはHBV抗原から選択される1つまたは複数の感染関連抗原である。
【0030】
融合タンパク質は、配列番号55~58のうちの1つで示されるものであることが好ましい。
【0031】
本発明の別の目的は、治療有効量の本発明によるエピトープ融合ペプチド、融合タンパク質および/またはポリヌクレオチド、ならびに薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物を提供することである。
【0032】
免疫原性組成物はワクチンであることが好ましい。
【0033】
本発明の別の目的は、本発明によるエピトープ融合ペプチド、融合タンパク質、ポリヌクレオチドおよび/または免疫原性組成物、およびそれらの使用の指示を含むキットを提供することである。
【0034】
本発明は、標的免疫原の免疫原性を増大させるための医薬またはワクチンの製造における、本発明によるエピトープ融合ペプチド、融合タンパク質、ポリヌクレオチドおよび/または免疫原性組成物の使用も提供する。
【0035】
本発明は、本発明によるエピトープ融合ペプチドを使用して標的免疫原の免疫原性を増大させるための方法であって、ワクチン対象または集団においてより強力な免疫応答を有するCD4ヘルパーT細胞エピトープを標的免疫原と融合させて融合タンパク質を形成することを含む方法も提供する。当該方法は、具体的には、以下のステップ:
(1)1つまたは複数のCD4ヘルパーT細胞エピトープを選択するステップであって、該エピトープをMHC分子と組み合わせることによって形成される複合体をCD4ヘルパーT細胞受容体が認識することができ、また、ワクチン接種前にワクチン対象において該エピトープの少なくとも1つに対するT細胞免疫応答が生じている、該エピトープを選択するステップと、
(2)エピトープを融合してエピトープ融合ペプチドを調製し、エピトープ融合ペプチドを標的免疫原と融合して融合タンパク質を調製し、融合タンパク質を発現させ、それでワクチンを調製するステップであって、発現ベクターが、DNAワクチンベクター、タンパク質ワクチンベクターまたはウイルスワクチンベクターの形態であり得る、ワクチンを調製するステップと、
(3)ワクチン対象に上記のワクチンおよびワクチン接種のために選択することができる不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、または水酸化アルミニウムアジュバントなどの適切なアジュバントをワクチン接種するステップと
を含む。
【0036】
さらに、当該方法のステップ(1)は、ワクチン対象のMHC表現型を検査するステップをさらに含む。ワクチン対象のMHC表現型を検査するステップは、ワクチン対象のMHCクラスII遺伝子サブタイプを検査することを含むことが好ましい。
【0037】
本発明は、本発明のエピトープ融合ペプチド、融合タンパク質、免疫原性組成物および/またはポリヌクレオチドを治療有効量で投与することを含む、それを必要とする対象における状態を治療または予防するための方法も提供する。状態は、悪性腫瘍、ならびに細菌およびウイルス慢性感染から選択される1つまたは複数の状態であることが好ましい。悪性腫瘍は、乳がんまたは結腸がんであることが好ましい。当該方法において、免疫を免疫誘導するためにDNAワクチンベクターを使用し、免疫を免疫増強するためにタンパク質ワクチンベクターを使用することが好ましい。免疫誘導のためにpVKD1.0-CI-LMNB DNAワクチンを使用し、免疫増強のためにLMNB-I13タンパク質を使用することがより好ましい。本発明によって提供されるエピトープ融合ペプチドは、標的免疫原、特に、弱い免疫原に対する細胞性免疫応答のレベルを実質的に改善することができるものであり、抗原、特に腫瘍抗原または感染関連抗原に対する免疫系の免疫寛容を克服するための有効な手段であり、また、ワクチンの有効性を効率的に増強するために適切である。
【0038】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原のコード配列を運ぶDNAワクチンベクターpVKD1.0-hLMNのプラスミドマップである。
図2】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原のコード配列を運ぶDNAワクチンベクターpVKD1.0-hLMNを同定するための2重酵素消化のマップである。
図3】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶDNAワクチンベクターpVKD1.0-hLMN-CTBのプラスミドマップである。
図4】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶDNAワクチンベクターpVKD1.0-hLMN-CTBを同定するための2重酵素消化のマップである。
図5】CMVおよびFluウイルス由来CD4エピトープのコード配列を運ぶDNAワクチンベクターpVKD1.0-CIのプラスミドマップである。
図6】CMVおよびFluウイルス由来CD4エピトープのコード配列を運ぶDNAワクチンベクターpVKD1.0-CIを同定するための2重酵素消化のマップである。
図7】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、コレラ毒素サブユニットB、ならびにCMVおよびFluウイルス由来CD4エピトープのコード配列を運ぶDNAワクチンベクターpVKD1.0-CI-LMNBプラスミドマップである。
図8】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、コレラ毒素サブユニットB、ならびにCMVおよびFluウイルス由来CD4エピトープのコード配列を運ぶDNAワクチンベクターpVKD1.0-CI-LMNBを同定するための2重酵素消化のマップである。
図9】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原のコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-LMNのプラスミドマップである。
図10】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原のコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-LMNを同定するための2重酵素消化のマップである。
図11】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-LMN-CTBのプラスミドマップである。
図12】LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-LMN-CTBを同定するための2重酵素消化のマップである。
図13】CMV由来エピトープのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV Thのプラスミドマップである。
図14】CMV由来エピトープのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV Thを同定するための2重酵素消化のマップである。
図15】CMV由来エピトープ、LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV10-LMNBのプラスミドマップである。
図16】CMV由来エピトープ、LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV10-LMNBを同定するための2重酵素消化のマップである。
図17】それぞれFluウイルス由来エピトープのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV Thのプラスミドマップならびに当該原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV Thを同定するための2重酵素消化のマップである。
図18】Fluウイルス由来エピトープのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV Thを同定するための2重酵素消化のマップである。
図19】Fluウイルス由来エピトープ、LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-インフル8-LMNBのプラスミドマップである。
図20】Fluウイルス由来エピトープ、LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-インフル8-LMNBを同定するための2重酵素消化のマップである。
図21】Fluウイルス由来エピトープ、LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-インフル13-LMNBのプラスミドマップである。
図22】Fluウイルス由来エピトープ、LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-インフル13-LMNBを同定するための2重酵素消化のマップである。
図23】動物免疫実験における細胞性免疫応答の検出結果を示す図である。
図24】CMV由来エピトープ、LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV5-LMNBのプラスミドマップである。
図25】CMV由来エピトープ、LAGE-1抗原、MAGE-A3抗原およびNY-ESO-1抗原、ならびにコレラ毒素サブユニットBのコード配列を運ぶ原核生物ベクターpET-30a(+)-CMV5-LMNBを同定するための2重酵素消化のマップである。
図26】実施例12の動物免疫実験における細胞性免疫応答の検出結果を示すグラフである。
図27】実施例13におけるマウスの腫瘍成長を示すグラフである。
図28】実施例13におけるマウスの無腫瘍生存期間を示すグラフである。
図29】実施例13におけるマウスの全生存期間を示すグラフである。
図30】4T1-hNY-ESO-1マウス腫瘍モデルについての各処置群におけるマウスの腫瘍成長を示すグラフである。
図31】CT26-hLAGE-1マウス腫瘍モデルについての各処置群におけるマウスの腫瘍成長を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
特定の実施形態を参照して本発明を以下にさらに詳細に記載する。実施例は単に本発明を例示する目的で示され、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0041】
DNAワクチンpVKD1.0-hLMNの構築
LAGE-1、MAGE-A3およびNY-ESO-1のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号24~26に示す。オンラインコドン最適化ソフトウェア(http://www.jcat.de/)を利用し、それぞれ配列番号27~29に示されている哺乳動物コドン使用優先のヌクレオチド配列を上記の抗原アミノ酸配列に基づく最適化によって得た。ヌクレオチド配列を、Shanghai Generay Biotech Co.,Ltd.で合成し、次いで、DNAワクチンベクターpVKD1.0(Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkにより供給を受けた)上の多重クローニング部位Sal IとBamH Iの間に当技術分野で周知の方法によってクローニングして、融合タンパク質を抗原として発現させることができるDNAワクチンベクターpVKD1.0-hLMN(プラスミドマップが図1に示されている)を構築し、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpVKD1.0-hLMNを制限エンドヌクレアーゼSal IおよびBamH I(酵素消化系が表1に示されている)によって同定した。検証のための酵素消化マップが図2に示されている。
【0042】
【表1】
【実施例2】
【0043】
DNAワクチンpVKD1.0-hLMN-CTBの構築
コレラ毒素サブユニットB(Cholera toxin subunit B、CTB)のアミノ酸配列(配列番号30)の哺乳動物コドン最適化配列(配列番号31)およびその真核生物発現ベクターpVKD1.0-CTBについて、Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受けた。pVKD1.0-CTBを鋳型として使用することによってプライマーを設計した(表2参照)。CTB遺伝子断片をPCRによって増幅し、次いで、対応する断片をゲルから回収した。CTB断片を直線化されたベクターpVKD1.0-hLMN上の対応する位置に相同組換え法によって挿入して、DNAワクチンベクターpVKD1.0-hLMN-CTB(プラスミドマップが図3に示されている)を構築し、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpVKD1.0-hLMN-CTBを制限エンドヌクレアーゼSal IおよびBamH Iによって同定した(酵素消化系が表3に示されている)。検証のための酵素消化マップが図4に示されている。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【実施例3】
【0046】
DNAワクチンpVKD1.0-CI-LMNBの構築
サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus、CMV)およびインフルエンザ(Influvirus、Flu)ウイルスに由来する強力なThエピトープ(表4参照)を免疫エピトープデータベース(IEDB、http://www.iedb.org)から得た。CMVの強力なThエピトープには、pp65-11、pp65-71、pp65-92、pp65-123、pp65-128、pp65-57、pp65-62、pp65-30、pp65-112およびpp65-104が含まれ、Fluウイルスの強力なThエピトープには、HA203、NP438、NS1-84、M1-181、HA375、NP24、NP95、NP221、HA434、HA440、NP324、M1-127およびM1-210が含まれている。表4の選択されたエピトープは、ヒトおよびマウスの双方におけるMHCクラスII分子の大多数のサブタイプを包含する。次いで、選択されたエピトープpp65-11、pp65-71、pp65-92、pp65-123、pp65-128、HA203、NP438、NS1-84、M1-181、HA375、NP24、NP95、NP221を縦列に連結して、配列番号34に示されているアミノ酸配列を有するCMVウイルスエピトープおよびFluウイルスエピトープの融合ペプチドを形成した。エピトープ融合ペプチドを哺乳動物コドン最適化に供して配列番号35に示されている核酸配列を得、それを合成のためにSuzhou Synbio Technologies Co.,Ltdに送付し、次いで、DNAワクチンベクターpVKD1.0(Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Park)に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入して、ベクターpVKD1.0-CI(プラスミドマップが図5に示されている)を形成し、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpVKD1.0-CIを制限エンドヌクレアーゼPst IおよびBgl IIによって同定した(酵素消化系が表5に示されている)。検証のための酵素消化マップが図6に示されている。
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
最後に、実施例2のベクターpVKD1.0-hLMN-CTBを鋳型として使用することによってプライマーを設計した(表6参照)。標的遺伝子断片hLMN-CTBをPCRによって増幅し、次いで、pVKD1.0-CIベクター上の制限部位Not IとBam HIの間に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入してDNAワクチンベクターpVKD1.0-CI-LMNBを構築し(プラスミドマップが図7に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpVKD1.0-CI-LMNBを制限エンドヌクレアーゼBam HIおよびEcoR Vによって同定した(酵素消化系が表7に示されている)。検証のための酵素消化マップが図8に示されている。
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【実施例4】
【0052】
LMN原核生物発現ベクターの構築
LAGE-1、MAGE-A3およびNY-ESO-1のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号24~26に示す。オンラインコドン最適化ソフトウェア(http://www.jcat.de/)を利用し、それぞれ配列番号38~40に示されているE.coliコドン使用優先のヌクレオチド配列を抗原アミノ酸配列に基づく最適化によって得た。ヌクレオチド配列をSuzhou Synbio Technologies Co.,Ltd.で合成し、次いで、原核生物発現ベクターpET-30a(+)(Novagen、Cat番号69909)上の多重クローニング部位Nco IとXho Iの間に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入して原核生物発現構築物pET-30a(+)-LMNを構築し(プラスミドマップが図9に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpET-30a(+)-LMNを制限エンドヌクレアーゼNco IおよびXho Iによって同定した(酵素消化系が表8に示されている)。検証のための酵素消化マップが図10に示されている。
【0053】
【表8】
【実施例5】
【0054】
LMN-CTB原核生物発現ベクターの構築
コレラ毒素サブユニットB(CTB)のアミノ酸配列(配列番号30)およびその原核生物コドン最適化核酸配列(配列番号41)についてVacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受けた。プライマーを設計し(表9参照)、CTBコード配列を含有する核酸断片を、pET-30a(+)-CTB(Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Park)を鋳型として使用してPCR法によって増幅し、具体的な方法についてはEx Taq Enzyme Reagent(タカラバイオ株式会社、Cat番号RR001B)の指示を参照した。次いで、核酸断片をpET-30a(+)-LMNベクターに相同組換えによって挿入してpET-30a(+)-LMN-CTBベクターを構築し(プラスミドマップが図11に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpET-30a(+)-LMN-CTBを制限エンドヌクレアーゼNco IおよびXho Iによって同定した(酵素消化系が表10に示されている)。検証のための酵素消化マップが図12に示されている。
【0055】
【表9】
【0056】
【表10】
【実施例6】
【0057】
LMN-CTBおよびCMV Thエピトープの融合タンパク質を含有する原核生物発現ベクターの構築
10種のCMV由来Thエピトープ、pp65-11、pp65-71、pp65-92、pp65-123、pp65-128、pp65-57、pp65-62、pp65-30、pp65-112およびpp65-104を表4から選択し、縦列に連結して配列番号44に示されているアミノ酸配列を形成した。配列番号44内の配列セグメント「EFELRRQ」は、融合および構築のために一般的な技法に属する酵素制限部位の導入に起因して形成される。オンラインコドン最適化ソフトウェア(http://www.jcat.de/)を利用し、E.coliコドン使用優先のヌクレオチド配列(配列番号45)をThエピトープのアミノ酸配列に基づいた最適化によって得た。ヌクレオチド配列をShanghai Generay Biotech Co.,Ltd.で合成し、次いで、原核生物発現ベクターpET-30a(+)(Novagen、Cat番号69909)上の多重クローニング部位Nco IとXho Iの間に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入して、融合タンパク質を抗原として発現させることができる原核生物発現構築物pET-30a(+)-CMV Thを構築し(プラスミドマップが図13に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpET-30a(+)-CMV Thを制限エンドヌクレアーゼMlu IおよびXho Iによって同定した(酵素消化系が表11に示されている)。検証のための酵素消化マップが図14に示されている。
【0058】
図13に示されている通り、CMV Th1は、pp65-11、pp65-71、pp65-92、pp65-123およびpp65-128からなる5種のCMV Thエピトープを縦列に含有し、CMV Th2は、pp65-57、pp65-62、pp65-30、pp65-112およびpp65-104からなる5種のCMV Thエピトープを含有する。EcoR I、Sac IおよびSal Iなどの3つの制限酵素部位をCMV Th1とCMV Th2の間に導入した。
【0059】
【表11】
【0060】
プライマーを設計し(表12参照)、LMN-CTBコード配列を含有する核酸断片を実施例5のpET-30a(+)-LMN-CTBを鋳型として使用してPCR法によって増幅し、具体的な方法についてはEx Taq Enzyme Reagent(タカラバイオ株式会社、Cat番号RR001B)の指示を参照した。次いで、核酸断片を実施例6のpET-30a(+)-CMV Thベクター上のNot IとXho Iの間に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入してpET-30a(+)-CMV10-LMNBベクターを構築し(プラスミドマップが図15に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpET-30a(+)-CMV10-LMNBを制限エンドヌクレアーゼBamH IおよびXho Iによって同定した(酵素消化系が表13に示されている)。検証のための酵素消化マップが図16に示されている。図15に示されている通り、pET-30a(+)-CMV10-LMNBは、CMV Th1断片およびCMV Th2断片、すなわち、表4のCMV Thエピトープ10種全てを含有する。これらのエピトープは、pp65-11、pp65-71、pp65-92、pp65-123、pp65-128、pp65-57、pp65-62、pp65-30、pp65-112およびpp65-104である。
【0061】
【表12】
【0062】
【表13】
【実施例7】
【0063】
LMN-CTBおよびインフルThエピトープの融合タンパク質を含有する原核生物発現ベクターの構築
Fluウイルスに由来するThエピトープ13種、HA203、NP438、NS1-84、M1-181、HA375、NP24、NP95、NP221、HA434、HA440、NP324、M1-127およびM1-210を表4から選択し、縦列に連結して配列番号48に示されているアミノ酸配列を形成した。オンラインコドン最適化ソフトウェア(http://www.jcat.de/)を利用し、E.coliコドン使用優先のヌクレオチド配列(配列番号49)を、FluウイルスThエピトープを含有するアミノ酸配列に基づく最適化によって得た。ヌクレオチド配列をShanghai Generay Biotech Co.,Ltd.で合成し、次いで、原核生物発現ベクターpET-30a(+)(Novagen、Cat番号69909)上の多重クローニング部位Nco IとXho Iの間に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入して、融合タンパク質を抗原として発現させることができる原核生物発現構築物pET-30a(+)-インフルThを構築し(プラスミドマップが図17に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpET-30a(+)-インフルThを制限エンドヌクレアーゼNco IおよびXho Iによって同定した(酵素消化系が表14に示されている)。検証のための酵素消化マップが図18に示されている。
【0064】
図17に示されている通り、インフルTh1は、HA203、NP438、NS1-84、M1-181、HA375、NP24、NP95およびNP221からなる8種のFluウイルスThエピトープを縦列に含有し、インフルTh2は、HA434、HA440、NP324、M1-127およびM1-210からなる5種のFluウイルスThエピトープを含有する。EcoR I、Sac IおよびSal Iといった3つの制限部位をインフルTh1とインフルTh2の間に導入した。
【0065】
【表14】
【0066】
プライマーを設計し(表15参照)、LMN-CTBコード配列を含有する核酸断片を実施例5のpET-30a(+)-LMN-CTBを鋳型として使用してPCR法によって増幅し、具体的な方法についてはEx Taq Enzyme Reagent(タカラバイオ株式会社、Cat番号RR001B)の指示を参照した。次いで、核酸断片を実施例7のpET-30a(+)-インフルThベクター上のNot IとSal Iの間に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入してpET-30a(+)-インフル8-LMNBベクターを構築し(8種のFluウイルスThエピトープを含有する;プラスミドマップが図19に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpET-30a(+)-インフル8-LMNBを制限エンドヌクレアーゼBamH IおよびXho Iによって同定した(酵素消化系が表16に示されている)。検証のための酵素消化マップが図20に示されている。図19に示されている通り、pET-30a(+)-インフル8-LMNBベクターは、インフルTh1セグメント、すなわち、表4のHA203、NP438、NS1-84、M1-181、HA375、NP24、NP95、およびNP221を含めた8種のFluウイルスThエピトープを含有する。
【0067】
【表15】
【0068】
【表16】
【0069】
プライマーを設計し(表17参照)、LMN-CTBコード配列を含有する核酸断片を実施例5のpET-30a(+)-LMN-CTBを鋳型として使用してPCR法によって増幅し、具体的な方法についてはEx Taq Enzyme Reagent(タカラバイオ株式会社、Cat番号RR001B)の指示を参照した。次いで、この核酸断片を実施例6のpET-30a(+)-インフルThベクター上のNot IとXho Iの間に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入してpET-30a(+)-インフル13-LMNBベクターを構築し(13種のFluウイルスThエピトープ含有する;プラスミドマップが図21に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpET-30a(+)-CMV10-LMNBを制限エンドヌクレアーゼBamH IおよびXho Iによって同定した(酵素消化系が表18に示されている)。検証のための酵素消化マップが図22に示されている。
【0070】
図21に示されている通り、pET-30a(+)-インフル13-LMNBベクターは、インフルTh1セグメントおよびインフルTh2セグメントの両方、すなわち、表4のHA203、NP438、NS1-84、M1-181、HA375、NP24、NP95、およびNP221を含めた8種のFluウイルスThエピトープ、ならびに表4のHA434、HA440、NP324、M1-127およびM1-210を含めた5種のFluウイルスThエピトープを含有する。当該ベクターは、表4の全部で13種のFluウイルスThエピトープの全てを含む。
【0071】
【表17】
【0072】
【表18】
【実施例8】
【0073】
融合タンパク質の発現および精製
実施例4において構築された原核生物発現ベクターpET-30a(+)-LMN、実施例5において構築された原核生物発現ベクターpET-30a(+)-LMN-CTB、実施例6において構築された原核生物発現ベクターpET-30a(+)-CMV5-LMNBおよびpET-30a(+)-CMV10-LMNB、実施例7において構築された原核生物発現ベクターpET-30a(+)-インフル8-LMNBおよびpET-30a(+)-インフル13-LMNBをそれぞれpET System Manual(TB055 第8版 02/99、Novagen)に従ってBL21(DE3)コンピテント細胞に導入してそれを形質転換して(Tiangen Biotech(Beijing)Co.,Ltd.、Cat番号CB105;形質転換方法についてはコンピテント細胞の指示を参照した)、それぞれ組換えタンパク質LMN(アミノ酸配列が配列番号59に示されている)、LMNB(アミノ酸配列が配列番号54に示されている)、LMNB-C10(アミノ酸配列が配列番号58に示されている)、LMNB-18(アミノ酸配列が配列番号55に示されている)、およびLMNB-13(アミノ酸配列が配列番号56に示されている)を調製し、これらを、サブパッケージング後に-80℃で保管した。
【0074】
調製された組換えタンパク質の濃度はBCA法(Beyotime Institute of Biotechnology、Cat番号P0009)によって検出して1mg/mLに調製され、検出方法については検出キットの指示を参照した。調製された組換えタンパク質中の内毒素の含有量は、ゲル法(Chinese horseshoe crab Reagent Manufactory Co.Ltd.、Xiamen、Cat番号G011000)によって測定して1EU/mg未満であり、これは動物実験の要件を満たす。検出方法についてはカブトガニ薬剤の指示を参照した。
【実施例9】
【0075】
動物免疫実験
実施例2、3および8において調製されたワクチンに関する情報が表19に示されている。DNAワクチンベクターpVKD1.0についてVacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受け、DNAワクチンpVKD1.0-NP(発現はウイルス株A/Shanghai/02/2013(H7N9)に由来する)のFlu抗原NP(NCBI参照配列:YP_009118476.1)についてVacdiagn Biotechnology Co.,Ltd..Suzhou Industrial Parkから供給を受け、タンパク質ワクチンVP1(エンテロウイルス71のVP1タンパク質、中国特許出願第201310088364.5号を参照されたい)についてVacdiagn Biotechnology Co.,Ltd..Suzhou Industrial Parkからの供給を受けた。
【0076】
6~8週齢雌BAL B/cマウス16匹をLaboratory Animal Center of Suzhou Universityから購入し、Laboratory Animal Center of Suzhou UniversityのSPF動物舎で飼育した。実験動物の群分けおよびワクチン接種スキームが表20に示されている。全てのDNAワクチンを動物当たり100μgで幼獣の前脛骨筋に注射した。全てのタンパク質ワクチンを完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いて完全に乳化し、動物当たり10μgで背中に皮下注射した。最後の免疫の2週間後、マウスを屠殺し、それらの血清および脾細胞をそれぞれ酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイおよび酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のために採取した。マウスIFN-γ ELISPOTキットをBD、USA(Cat番号551083)から購入し、当該方法に関してBDからのIFN-γ ELISPOTキットの指示を参照した。刺激用ペプチドは、Shanghai Science Peptide Biological Technology Co.,Ltd.により合成されたNY-ESO-1 41#ペプチド(WITQCFLPVFLAQPP)であり、最終濃度は10μg/mLであった。正の刺激ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(phorbol-12-myristate-13-acetate、PMA)およびイオノマイシンをSigma、USAから購入した。
【0077】
ELISA法は、当業者には周知であり、簡単に述べると下記の通りである。96ウェルELISAプレートをJianghai Glass Instrument General Factoryから購入した。組換えLMNおよびNY-ESO-1の双方について、Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受けた。プレートを、NaHCO緩衝剤(pH9.6)に加えたタンパク質を用い、4℃で一晩、コーティング濃度10μg/mLでコーティングし、その後、0.1%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin、BSA)を加えたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用い、37℃で30分にわたってブロッキングし、次いで、0.5%のTween20を加えたリン酸緩衝食塩水(PBST)で5回洗浄した。マウス血清と一緒に室温で1時間、最初の希釈度1:100でインキュベートし、PBSTを用いて5回洗浄し、ヤギ抗マウスHRP二次抗体(Santacruz、USA)と一緒に1:5000、37℃で30分間さらにインキュベートした。PBSTで5回洗浄した後、基質を、3,3,5,5-テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて37℃で15分にわたって発色させ、2Mの希釈硫酸を用いて停止し、次いで、マイクロプレートリーダー(Thermo、USA)を使用して吸光度(A)値を450nmにおいて読み取った。陰性対照値Aの2.1倍の値を陽性であると判断し、陽性値に関して最高希釈度の逆数を血清抗体力価と定義した。最高希釈度が最初の希釈度1:100未満の場合には力価を50と定義した。
【0078】
【表19】
【0079】
【表20】
【0080】
細胞性免疫応答アッセイの結果が図23に示されている。それらの中で、pVKD1.0-CI-LMNB DNAワクチンを用いて免疫誘導し、LMNB-I13タンパク質を用いて免疫増強した群(すなわち、実施例8における群D)が最良の免疫効果を有し、これは、並行対照群(群B)およびLMNB-I8を用いて免疫増強した群(群C)の免疫効果よりも有意に高かった。さらに、LMNB-I13タンパク質を用いて免疫増強した群における細胞性免疫応答のレベルは、並行対照群(群B)における細胞性免疫応答のレベルのほぼ3倍であった。結果から、13種のFluウイルスThエピトープの負荷(群D)により、弱い免疫原に対する細胞性免疫応答レベルを有意に増大させることができることが示された。
【実施例10】
【0081】
LMN-CTBおよびCMV Thエピトープの融合タンパク質を含有する原核生物発現ベクターの構築
プライマーを設計し(表21参照)、LMN-CTBコード配列を含有する核酸断片を実施例5のpET-30a(+)-LMN-CTBを鋳型として使用してPCR法によって増幅し、具体的な方法についてはEx Taq Enzyme Reagent(タカラバイオ株式会社、Cat番号RR001B)の指示を参照した。次いで、核酸断片を実施例6のpET-30a(+)-CMV Thベクター上のNot IとSal Iの間に当技術分野で周知の分子生物学的方法によって挿入して、pET-30a(+)-CMV5-LMNBベクターを構築し(プラスミドマップが図24に示されている)、これを、同定のために配列決定した後、保管した。ベクターpET-30a(+)-CMV5-LMNBを制限エンドヌクレアーゼBamH IおよびXho Iによって同定した(酵素消化系が表22に示されている)。検証のための酵素消化マップが図25に示されている。図24に示されている通り、pET-30a(+)-CMV5-LMNBは、CMV Th1断片、すなわち、表4の最初の5種のCMV Thエピトープを含有する。これらのエピトープは、pp65-11、pp65-71、pp65-92、pp65-123およびpp65-128である。
【0082】
【表21】
【0083】
【表22】
【実施例11】
【0084】
融合タンパク質の発現および精製
実施例8に記載の通り、実施例10において構築した原核生物発現ベクターpET-30a(+)-CMV5-LMNBを、pET System Manual(TB055 第8版 02/99、Novagen)に従ってBL21(DE3)コンピテント細胞に導入してそれを形質転換して(Tiangen Biotech(Beijing)Co.,Ltd.、Cat番号CB105;形質転換方法についてはコンピテント細胞の指示を参照した)、組換えタンパク質LMNB-C5(アミノ酸配列が配列番号57に示されている)を調製し、それをサブパッケージング後に-80℃で保管した。
【0085】
調製された組換えタンパク質の濃度は、BCA法(Beyotime Institute of Biotechnology、Cat番号P0009)によって検出して1mg/mLに調製された。検出方法については検出キットの指示を参照した。調製された組換えタンパク質中の内毒素の含有量は、ゲル法(Chinese Horseshoe Crab Reagent Manufactory Co.,Ltd.、Xiamen、Cat番号G011000)によって測定して1EU/mg未満であり、これは動物実験の要件を満たすものであった。検出方法についてはカブトガニ薬剤の指示を参照した。
【実施例12】
【0086】
動物免疫実験
ワクチン情報が表19に示されている。DNAワクチンpVKD1.0-CI(実施例3)についてVacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受けた。
【0087】
6~8週齢雌BAL B/cマウス20匹をLaboratory Animal Center of Suzhou Universityから購入し、Laboratory Animal Center of Suzhou UniversityのSPF動物舎で飼育した。実験動物の群分けおよびワクチン接種スキームが表23に示されている。全てのDNAワクチンを動物当たり100μgで幼獣の前脛骨筋に注射した。全てのタンパク質ワクチンを完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いて完全に乳化し、および動物当たり10μgで背中に皮下注射した。最後の免疫の2週間後、マウスを屠殺し、血清および脾細胞をそれぞれ酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイおよび酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のために採取した。マウスIFN-γ ELISPOTキットをBD、USA(Cat番号551083)から購入し、当該方法に関してBDからのIFN-γ ELISPOTキットの指示を参照した。刺激用ペプチドは、Shanghai Science Peptide Biological Technology Co.,Ltd.により合成されたNY-ESO-1 41#ペプチド(WITQCFLPVFLAQPP)であり、最終的な刺激濃度は10μg/mLであった。正の刺激ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)およびイオノマイシンをSigma、USAから購入した。
【0088】
ELISA法は、当技術分野で周知であり、簡単に述べると下記の通りである。96ウェルELISAプレートをJianghai Glass Instrument General Factoryから購入した。組換えLMNおよびNY-ESO-1の双方について、Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受けた。プレートを、NaHCO緩衝剤(pH9.6)に加えたタンパク質を用い、4℃で一晩、コーティング濃度10μg/mLでコーティングし、その後、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を加えたリン酸緩衝食塩水(PBS)を用い、37℃で30分にわたってブロッキングし、次いで、0.5%のTween20を加えたリン酸緩衝食塩水(PBST)で5回洗浄した。マウス血清と一緒に最初の希釈度1:100で、室温で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄した。ヤギ抗マウスHRP二次抗体(Santacruz、USA)と一緒に1:5000、37℃で30分間さらにインキュベートし、PBSTで5回洗浄した。次いで、基質を3,3,5,5-テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて37℃で15分にわたって発色させ、2Mの希釈硫酸を用いて停止し、マイクロプレートリーダー(Thermo、USA)を使用して吸光度(A)値を450nmにおいて読み取った。陰性対照値Aの2.1倍の値を陽性であると判断し、陽性値に関して最高希釈度の逆数を血清抗体力価と定義した。最高希釈度が最初の希釈度1:100未満の場合には力価を50と定義した。
【0089】
【表23】
【0090】
細胞性免疫応答アッセイの結果が図26に示されている。それらの中で、pVKD1.0-CI-LMNB DNAワクチンを用いて免疫誘導し、LMNB-C5タンパク質を用いて免疫増強した群(すなわち、実施例11における群C)およびLMNB-C10タンパク質を用いて免疫増強した群(すなわち、実施例11における群D)が最良の免疫効果を有し、これは、並行対照(群B)における免疫効果よりも有意に高かった。結果から、5種のCMVウイルスThエピトープの負荷(群C)および10種のCMVウイルスThエピトープの負荷(群D)により、弱い免疫原に対する細胞性免疫応答を有意に改善することができることが示された。
【実施例13】
【0091】
腫瘍予防のための動物実験
実施例2、3および8において調製されたワクチンに関する情報が表19に示されている。DNAワクチンベクターpVKD1.0についてVacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受け、DNAワクチンpVKD1.0-NP(発現がウイルス株A/Shanghai/02/2013(H7N9)に由来する)のFlu抗原NP(NCBI参照配列:YP_009118476.1)についてVacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受け、タンパク質ワクチンVP1(エンテロウイルス71のVP1タンパク質、中国特許出願第201310088364.5号を参照されたい)についてVacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkから供給を受けた。
【0092】
6~8週齢雌BAL B/cマウス60匹をLaboratory Animal Center of Suzhou Universityから購入し、Laboratory Animal Center of Suzhou UniversityのSPF動物舎で飼育した。実験動物の群分けおよびワクチン接種スキームが表24に示されている。全てのDNAワクチンを動物当たり100μgで幼獣の前脛骨筋に注射した。全てのタンパク質ワクチンを完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いて完全に乳化し、動物当たり10μgで背中に皮下注射した。最後の免疫の2週間後、マウスに、4T1-hNY-ESO-1(Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkにより供給を受けた)を安定にトランスフェクトした細胞株をマウス当たり細胞1×10個の接種用量で皮下接種し、接種後に腫瘍成長を連続して観察し、測定した。腫瘍体積を以下の方程式に従って算出した:腫瘍体積(mm)=長さ×幅/2。腫瘍体積が2000mmを超えたらマウスを屠殺した。
【0093】
【表24】
【0094】
各群の免疫したマウスの腫瘍成長が図27に示されている。それらの中で、対照群(群A)の全てのマウスで腫瘍攻撃後(すなわち、腫瘍接種後)14日目に腫瘍が発生し、腫瘍は急速に成長した。各免疫群のマウスの腫瘍成長は対照群の腫瘍成長よりも遅延し、ここで、LMNB-I13を用いて免疫増強した群のマウス(群D)およびLMNB-I13とLMNB-C10の混合物を用いて免疫増強した群のマウス(群E)の腫瘍成長が最も遅く、したがって、これらの2つの群のワクチンの効果が最良であった。
【0095】
さらに、マウスについて無腫瘍生存期間の分析を実施した。結果が図28に示されている。対照群Aのマウスの無腫瘍生存期間(TFS)の中央値は14日間であった。ワクチンで免疫した各群のマウスの無腫瘍生存期間は、対照群の無腫瘍生存期間よりも有意に高く、これにより、全てのワクチンにより免疫したマウスの無腫瘍生存期間を増大させることができたことが示される。それらの中で、I13エピトープ融合ペプチドを用いた群D、ならびにI13およびC10エピトープ融合ペプチドを用いた群Eおよび群Fで効果が最良であり、マウスの無腫瘍生存期間は最大で2倍であった。I13エピトープ融合ペプチドを用いたワクチン群(群D)では、無腫瘍生存期間が従来のワクチン群(群B)と比較して約40%有意に増大し、これにより、13種のFluウイルスのThエピトープまたは10種のCMVのThエピトープの負荷により、腫瘍ワクチンの腫瘍に対する保護効果を有意に改善することができたことが示される。
【0096】
最後に、マウス全生存期間の分析も実施した。結果が図29に示されている。それらの中で、対照群Aのマウスの全生存期間(OS)の中央値は35日間であった。ワクチンで免疫した各群のマウスの全生存期間は対照群の全生存期間よりも有意に高く、これにより、全てのワクチンによりマウスの免疫後の生存を増大させることができたことが示される。それらの中で、I13エピトープ融合ペプチドを用いた群DならびにI13およびC10エピトープ融合ペプチドを用いた群EおよびFで効果が最良であり、全生存率が83%上昇した。従来のワクチン群(群B)と比較して、I13エピトープ融合ペプチドを用いたワクチン群(群Dおよび群F)では無腫瘍生存期間が最大で28%有意に増大し、これにより、13種のFluウイルスThエピトープまたは10種のCMV Thエピトープの負荷により腫瘍ワクチンの保護効果を著しく改善することができたことが示される。
【実施例14】
【0097】
腫瘍処置実験
使用したワクチンは実施例9に示されている。6~8週齢雌BAL B/cマウス30匹をLaboratory Animal Center of Suzhou Universityから購入し、Laboratory Animal Center of Suzhou UniversityのSPF動物舎で飼育した。実験動物の群分けおよびワクチン接種スキームが表25に示されている。全てのDNAワクチンを動物当たり100μgで幼獣の前脛骨筋に注射した。全てのタンパク質ワクチンを完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いて完全に乳化し、動物当たり10μgで背中に皮下注射した。最後の免疫の2週間後、マウスに、腫瘍細胞4T1-hNY-ESO-1(Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkにより供給を受けた)を安定にトランスフェクトした細胞株をマウス当たり細胞1×10個の用量で皮下接種し、対応するマウスにタンパク質ワクチンをそれぞれ腫瘍細胞接種後1日目、8日目および15日目に皮下接種した。接種後に腫瘍成長を連続して観察し、測定した。腫瘍体積を以下の方程式に従って算出した:腫瘍体積(mm)=長さ×幅/2。腫瘍体積が2000mmを超えたらマウスを屠殺した。
【0098】
【表25】
【0099】
各群の免疫したマウスの腫瘍成長が図30に示されている。それらの中で、対照群(群A)の全てのマウスで腫瘍攻撃後(すなわち、腫瘍接種後)14日目に腫瘍が発生し、腫瘍は急速に成長した。LMNB-I13タンパク質ワクチン処置群(群C)のマウスの腫瘍成長は無処置の対照群(群A)と比較して最も遅かった。さらに、腫瘍攻撃後22日目のLMNB-I13タンパク質ワクチン処置群のマウスの腫瘍サイズは対照群(群A)の腫瘍サイズよりも有意に小さく、30日目まで2つの群間で腫瘍サイズになお有意差があった。35日目までに、群Cにおけるマウスの腫瘍成長が加速し始め、これは、おそらくLMNB-I13タンパク質ワクチンのワクチン接種を終了したことに関連する。結果から、LMNB-I13タンパク質ワクチンによりマウスにおける腫瘍成長を阻害することができることが示された。
【実施例15】
【0100】
腫瘍処置実験
使用したワクチンは実施例9に示されている。30匹の6~8週齢雌BAL B/cマウスをLaboratory Animal Center of Suzhou Universityから購入し、Laboratory Animal Center of Suzhou UniversityのSPF動物舎で飼育した。実験動物の群分けおよびワクチン接種スキームが表26に示されている。全てのDNAワクチンを動物当たり100μgで幼獣の前脛骨筋に注射した。全てのタンパク質ワクチンを完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いて完全に乳化し、動物当たり10μgで背中に皮下注射した。最後の免疫の2週間後、マウスに、腫瘍細胞CT26-hLAGE-1(Vacdiagn Biotechnology Co.,Ltd.、Suzhou Industrial Parkにより供給を受けた)を安定にトランスフェクトした細胞株をマウス当たり細胞1×10個の接種用量で皮下接種し、対応するマウスにタンパク質ワクチンをそれぞれ腫瘍細胞接種後1日目、8日目および15日目に皮下接種した。接種後に腫瘍成長を連続して観察し、測定した。腫瘍体積を以下の方程式に従って算出した:腫瘍体積(mm)=長さ×幅/2。腫瘍体積が2000mmを超えたらマウスを屠殺した。
【0101】
【表26】
【0102】
各群の免疫したマウスの腫瘍成長が図31に示されている。無処置の対照群(群A)の一部のマウスへの腫瘍接種が失敗したので、腫瘍攻撃後(すなわち、腫瘍接種後)、そのようなマウスは分析には含めず、並行対照ワクチン群(群B)およびLMNB-I13処置群(群C)を比較した。群Bと比較して、群Cのマウスの腫瘍成長はより遅く、また、腫瘍攻撃後22日目のLMNB-I13タンパク質ワクチン処置群のマウスの腫瘍サイズは並行対照ワクチン群(群B)の腫瘍サイズよりも有意に小さかった。30日目まで2つの群間で腫瘍サイズになお有意差があった。同様に、群Cにおけるマウスの腫瘍成長の増大もCT26マウスモデルにおいて後期に観察され、これは、おそらくLMNB-I13タンパク質ワクチンのワクチン接種を終了したことに関連する。これらの結果から、LMNB-I13タンパク質ワクチンによりマウスにおける腫瘍成長を阻害することができることが示された。
図1
図2
図3
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【配列表】
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