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  • 特許-アジテータミル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】アジテータミル
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
B02C17/16 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020546399
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055428
(87)【国際公開番号】W WO2019170663
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】18160427.3
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501003320
【氏名又は名称】ビューラー・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Buehler AG
【住所又は居所原語表記】Gupfenstrasse 5, CH-9240 Uzwil, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアート ナーター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リーヒェ
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト ケルン
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム シュトゥルム
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-511255(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00504836(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第04029139(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/140486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00- 7/18
B02C 15/00-17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性の粉砕物を処理するためのアジテータミルであって、
-粉砕容器(2)と、容器壁(9)により画定されている粉砕室(8)とを備え、
-中心長手方向軸線(19)を中心として回転可能な、直径d351を有するロータ(35)を備えたアジテータを備え、
-前記ロータ(35)に、前記容器壁(9)の方向に延びる工具(38)が取り付けられていて、
-前記ロータ(35)の内側に配置されている内側ステータ(22)を備え、
-前記ロータ(35)と、前記内側ステータ(22)の外壁(23)との間に、粉砕物導出通路が形成されていて、
-前記粉砕室(8)が、直径cを有する粉砕体により少なくとも部分的に充填されていて、
かつ
-前記内側ステータ(22)の上方に、直径d30を有する粉砕体分離装置(30)が配置されている
アジテータミルにおいて、
前記中心長手方向軸線(19)と同軸に延びかつ間隔sを画定するギャップが形成されており、
前記ロータ(35)と前記粉砕体分離装置(30)との間の間隔sに、
s=0.5・(d351-d30)≦5・c
が適用されることを特徴とする、流動性の粉砕物を処理するためのアジテータミル。
【請求項2】
前記ロータ(35)と前記粉砕体分離装置(30)との間の間隔sに、
s=0.5・(d351-d30)≦3・c
が適用される、請求項1記載のアジテータミル。
【請求項3】
s≦2mmが適用される、請求項1または2記載のアジテータミル。
【請求項4】
前記粉砕体分離装置(30)は、円筒形の保護スクリーンを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のアジテータミル。
【請求項5】
前記ロータ(35)に取り付けられた前記工具(38)が、前記容器壁(9)に対して小さなギャップ(39)しか空けておらず、前記工具(38)と前記容器壁(9)との間の前記ギャップが、ギャップ幅bを有していて、該ギャップ幅bに、前記粉砕体の前記直径cに関して、4c≦b≦6cが適用され、最小ギャップ幅bとして、1.0mm≦b≦2.0mmが適用される、請求項1から4までのいずれか1項記載のアジテータミル。
【請求項6】
前記内側ステータ(22)において、前記ロータ(35)に向かって延びる複数のスクレーパ工具が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のアジテータミル。
【請求項7】
前記内側ステータ(22)に配置された前記スクレーパ工具が、前記中心長手方向軸線(19)の方向で互いにオーバラップし、かつ前記ロータ(35)の駆動時に、通流方向の衝撃を前記粉砕体に作用させるように、前記内側ステータ(22)に配置されている、請求項6記載のアジテータミル。
【請求項8】
前記スクレーパ工具と前記ロータ(35)との間に、ギャップが形成されていて、該ギャップのギャップ幅eに、前記粉砕体の前記直径cに関して、4c≦e≦6cが適用され、最小ギャップ幅eに、1.0mm≦c≦2.0mmが適用される、請求項7記載のアジテータミル。
【請求項9】
前記容器壁(22)に、前記ロータ(35)の方向に延びる第2の工具(74)が配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のアジテータミル。
【請求項10】
前記アジテータ(20)内に、前記粉砕体分離装置(30)の領域から前記粉砕室(8)へと前記粉砕体(43)を戻すための粉砕体戻し通路(55)が形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のアジテータミル。
【請求項11】
前記粉砕体の前記直径cに、
c≦0.65m
が適用される、請求項1から10までのいずれか1項記載のアジテータミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の形式のアジテータミル(撹拌ミル)に関する。
【0002】
本発明は、欧州特許出願公開第1992412号明細書に関する。前掲の明細書からは、このような形式のアジテータミルが知られている。アジテータミルは、スラリー、つまり固体を液体中に分散させるために使用される。これは、たとえば接着材、印刷インク、コスメティックまたは薬剤の製造において使用される。このためには、粉砕物が供給通路を介して、アジテータミルの、ロータの外壁と容器壁との間に形成された粉砕室内へとガイドされ、以下で粉砕体とも呼ばれる、たとえばセラミックボールのような粉砕補助体と一緒に、かつ工具によって粉砕される。工具は、ロータに、かつ/または容器壁に配置されている。撹拌運動により、凝集物が分散され、結晶構造が粉砕される。100~500μmである元々の粒子サイズを3μm未満に減じることができる。次いで完成した製品は、粉砕物導出通路を介して、特に保護スクリーンの形の粉砕体分離装置を通って排出管路へと変向される。ロータは、分離装置を中心とした一種の回転ケージを形成する。
【0003】
このような形式のアジテータミルでは、粉砕体は、できるだけロータと容器壁との間の粉砕室内のみに位置していることが望ましい。粉砕体は、ロータに取り付けられた、容器壁の近傍にまで延びる工具により、かつ発生する遠心力により外方に向かって加速され、拡散される。容器壁に工具が配置されている場合、この工具は、ロータの方向に延びている。場合によっては容器壁に配置されている工具は、好適には、ロータに取り付けられた工具に対してずらされて配置されている。これによりロータに取り付けられた工具は、ロータの回転時に、容器壁に配置された工具の間を通過することができる。粉砕物は、この密な粉砕体-充填物をロータ軸線の方向に通流する。粉砕室内での粉砕体の拡散により、粉砕体が粉砕物導出通路に到達することを十分に阻止することができる。環状の外側の粉砕室内における粉砕体の拡散に対して付加的に、粉砕物導出通路内には、分離装置への粉砕体の通流を阻止することが望ましい装置が設けられている。
【0004】
したがって、通常はロータの内部に配置されていて、ロータと内側ステータとにより画定される粉砕物導出通路内には、できるだけ粉砕体が存在していないか、または極めて僅かな粉砕体しか存在していない。それにもかかわらず、分離装置において粉砕体が堆積することによって、繰り返しアジテータミル内で高められた圧力が発生する。この圧力は、製品流の減少、またはそれどころか、アジテータミルを損傷させないための自動的な停止にすらつながる。先行技術におけるアジテータミル内では、分離装置上にスクレーパが取り付けられていてよい。スクレーパは、粉砕体を分離装置から遠ざける。しかし、これは熱的に繊細な物質、特に爆薬または別の危険物質を分散する場合には望ましくないことがある。なぜならばスクレーパにより粉砕物内で熱が引き起こされてしまうからである。
【0005】
本発明の根底を成す課題は、牽引力(Schleppkraefte)に基づく粉砕体分離装置における粉砕体の堆積、およびこれに付随する分離装置の詰まりを阻止することにある。
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴により解決される。本発明の核心は、分離装置における粉砕体の集合が、ロータと分離装置との間の間隔の減少により効果的に阻止されることにある。これは、分離装置の直径の拡大により、つまり特にスクリーン直径の拡大により達成することができる。特に、ロータと分離装置との間の間隔は、単純にアジテータミルの構造サイズに依存するのではなく、粉砕体の直径に依存して選択することができる。さらに、間隔のために、粉砕体サイズとは関係のない最大値を規定することができる。この措置により、牽引力に基づいて分離装置に堆積した粉砕体の集合を減少させることができる。したがって、増大された製品流と、分散すべき製品中の粗粒の迅速な減少が保証される。
【0007】
特に本発明の課題は、以下の特徴を有するアジテータミルにより解決される。アジテータミルは、粉砕容器と、容器壁により画定されている粉砕室と、中心長手方向軸線を中心として回転可能な、内径d351を有するロータを備えたアジテータ(撹拌機)とを有している。ロータには、容器壁の方向に延びる工具が取り付けられている。さらに、容器壁には、ロータの方向に延びる第2の工具が配置されていてよい。アジテータミルは、ロータの内側に配置されている内側ステータをさらに有している。ロータと、内側ステータの外壁との間に、粉砕物導出通路が形成されている。粉砕物導出通路により、粉砕物が分離装置へとガイドされ、その後に排出管路へとガイドされる。粉砕室は、直径cを有する粉砕体により少なくとも部分的に充填されている。内側ステータの上方に、直径d30を有する分離装置が配置されている。ロータの内径と、分離装置の直径との差に基づいて、ロータと分離装置との間の間隔sのサイズが決定される。本発明によれば、この間隔sは、粉砕体の直径cに依存して選択し、s=0.5・(d351-d30)≦5・cであることが望ましい。別の好適な実施形態では、間隔sは、粉砕体の直径cに依存して、s≦3・cである。さらに、本発明の1つの実施形態によれば、間隔sは、粉砕体のサイズとは関係なしに、2mmの値を上回らないことが望ましい。
【0008】
好適には、ロータに取り付けられた工具は、容器壁9に対して小さなギャップしか空けておらず、ギャップは、ギャップ幅bを有している。このギャップ幅bに、粉砕体の直径cに関して、4c≦b≦6cが適用される。最小ギャップ幅bとして、1.0mm≦b≦2.0mmが適用される。
【0009】
内側ステータにおいて、ロータに向かって延びる複数のスクレーパ工具が配置されていてよい。好適には、このスクレーパ工具は、存在する場合には、中心長手方向軸線の方向で互いにオーバラップし、かつロータの駆動時に通流方向の衝撃を粉砕体に作用させるように、内側ステータに配置されている。
【0010】
スクレーパ工具とロータとの間には、好適には、ギャップが形成されている。このギャップのギャップ幅eに、粉砕体の直径cに関して、4c≦e≦6cが適用される。最小ギャップ幅eに、1.0mm≦c≦2.0mmが適用される。
【0011】
さらに、アジテータ内には、分離装置の領域から粉砕室内に粉砕体を戻すための粉砕体戻し通路が形成されている。
【0012】
粉砕体の直径cには、好適には、c≦0.65mmが適用され、好適には0.02mm≦c≦0.3mmが適用される。
【0013】
別の特徴、利点および詳細は、図面に関連した本発明の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態によるアジテータミル(撹拌ミル)の一部を鉛直方向の縦断面図として示す図である。
【0015】
図1に図示されたアジテータミルは、通常の形式で、内側に位置する粉砕室8を備えた粉砕容器2を有している。粉砕室8は、直径cを有する粉砕体43(図示せず)により少なくとも部分的に充填されている。アジテータミルは、内側ステータ22と、中心長手方向軸線19を中心として回転可能な、直径d351を有するロータ35とをさらに有している。ステータ22の外壁23とロータ35との間には、粉砕物導出通路47が形成されている。ロータ35には、粉砕室8内に突入する工具38が取り付けられている。さらに、容器壁9には、ロータ35に取り付けられた工具に対してずらされて、第2の工具74が配置されている。ステータ22の上方には、分離装置として、保護スクリーン30が位置している。この保護スクリーン30は、中心長手方向軸線19に対して回転対称的に形成されている。保護スクリーン30は、後置された排出管路31内への粉砕体43の通流を阻止する。排出管路31は、内側ステータ22内に位置している。保護スクリーン30とロータ35との間には、間隔sが形成される。ここで、間隔sは、
s=0.5・(d351-d30)
として記載することができ、特に保護スクリーン30の直径d30の選択により調節することができる。
【0016】
アジテータミルの寸法の拡大時に、従来は保護スクリーン30とロータ35との間の間隔sも対応して大きく選択されていた。しかしこれは、予想に反して、製品流の比例的な増大につながらない。むしろ製品流は期待値を下回ることになる。これは、運転中に、牽引力に基づいて、かつ粉砕体43を留めるための装置があるにもかかわらず、粉砕体43が保護スクリーン30に堆積してしまうことに関連する。これは、通流量の低下またはスクリーンの完全な詰まりにつながってしまう。
【0017】
このことを効果的に阻止するために、保護スクリーン30とロータ35との間の間隔sが減じられる。ここで、間隔sは、アジテータミルの構造形式とは関係なしに、粉砕体の直径cに依存して選択することができる。これは、アジテータミルの高められた通過性をもたらす。なぜならば、保護スクリーン30における粉砕体43の堆積の恐れが減少し、これにより分散すべき製品中の粗粒の迅速な減少をもたらすからである。
【0018】
本発明によれば、保護スクリーン30とロータ35との間の間隔sは、粉砕体直径cに依存して、
s≦5・c
もしくは
0.5・(d351-d30)≦5・c
である。
【0019】
別の好適な実施形態では、間隔sには、粉砕体直径cに関連して、
s≦3・c
が適用される。
【0020】
別の好適な実施形態では、間隔sが、粉砕体のサイズとも関係なしに、2mm未満である。
【0021】
上述の実施例は鉛直方向の中心長手方向軸線19を有するアジテータミルに関係しているが、説明された構成は、水平位置でも、または鉛直位置と水平位置との間の位置でも簡単に使用可能である。
図1