(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム、独立システム、及び独立システムの運用方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20220927BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220927BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20220927BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J3/38 180
H02J3/46
H02J7/34 F
(21)【出願番号】P 2020552967
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036035
(87)【国際公開番号】W WO2020080006
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2018196370
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】八田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩幸
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-176234(JP,A)
【文献】特開2015-076907(JP,A)
【文献】特開2015-208129(JP,A)
【文献】特開2010-051074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/46
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電機と、蓄電池と、制御機器と、負荷とを備える独立システムの、エネルギーマネジメントシステムであって、
前記再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測値と、前記制御機器の需要電力の予測値と、所定の電力供給制限のもとで電力が供給されたと仮定した場合の前記負荷の需要電力の予測値とから、前記蓄電池の充放電電力の予測値を演算する演算部と、
前記蓄電池の充放電電力の予測値に一致する電力での前記蓄電池の充放電が可能であるか否かを判定する判定部と、
前記蓄電池の充放電が可能でないと判定された場合に、前記負荷への前記電力供給制限が強まるように前記電力供給制限の内容を変更する変更部と、
前記蓄電池の充放電が可能であると判定された場合に、前記電力供給制限の内容が記録された制限データを出力する制限データ出力部と、
を備え
、
前記制御機器は、前記蓄電池を制御する蓄電池制御機器を備え、
前記変更部は、前記蓄電池の充放電が可能でないと判定された場合に、前記蓄電池制御機器の消費電力が少なくなるように前記電力供給制限の内容を変更する
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記電力供給制限を強くすることは、前記負荷に備えられる個別負荷への電力の供給を停止することを含む
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記電力供給制限を強くすることは、前記負荷に備えられる個別負荷に供給される電力の電力値を設定された上限値以下に制限することを含む
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記制限データ出力部は、前記蓄電池の充放電が可能でないと判定されたが、前記電力供給制限が既に最も強い電力供給制限である場合は、前記電力供給制限が最も強い電力供給制限であることが記録された制限データを出力する
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記独立システムは、前記再生可能エネルギー発電機でない発電機をさらに備え、
前記演算部は、前記再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測値と、前記制御機器の需要電力の予測値と、前記所定の電力供給制限のもとで電力が供給されたと仮定した場合の前記負荷の需要電力の予測値と、前記発電機の発電可能電力の予測値とに基づいて、前記蓄電池の充放電電力の予測値を演算する
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項6】
請求項
5に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記蓄電池は、ナトリウム-硫黄電池であり、
前記蓄電池制御機器は、前記ナトリウム-硫黄電池を冷却する冷却ファンを備え、
前記ナトリウム-硫黄電池の放電時間を短くすること、及び前記ナトリウム-硫黄電池の放電電力を少なくすることの少なくとも一方により、前記冷却ファンが動作することを抑制することによって、前記蓄電池制御機器の消費電力が少なくなるようにする、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項
6のいずれかに記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記制御機器に含まれており、
かつ、
前記制御機器がさらに、前記再生可能エネルギー発電機を制御する発電機制御機器と、前記蓄電池を制御する蓄電池制御機器とを備える、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項8】
再生可能エネルギー発電機と、蓄電池と、制御機器と、負荷とを備える独立システムの、エネルギーマネジメントシステムであって、
前記再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測値と、前記制御機器の需要電力の予測値と、所定の電力供給制限のもとで電力が供給されたと仮定した場合の前記負荷の需要電力の予測値とから、前記蓄電池の充放電電力の予測値を演算する演算部と、
前記蓄電池の充放電電力の予測値に一致する電力での前記蓄電池の充放電が可能であるか否かを判定する判定部と、
前記蓄電池の充放電が可能でないと判定された場合に、前記負荷への前記電力供給制限が強まるように前記電力供給制限の内容を変更する変更部と、
前記蓄電池の充放電が可能であると判定された場合に、前記電力供給制限の内容が記録された制限データを出力する制限データ出力部と、
を備え、
前記制御機器に含まれており、
かつ、
前記制御機器がさらに、前記再生可能エネルギー発電機を制御する発電機制御機器と、前記蓄電池を制御する蓄電池制御機器とを備える、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記制御機器が、前記負荷に備えられる個別負荷への電力の供給を停止する動作、及び前記負荷に備えられる個別負荷に供給される電力の電力値を設定された上限値以下に制限する動作の少なくとも一方を実行することができる制限機構を備えており、
かつ、
前記電力供給制限を前記負荷に適用する動作を前記制限機構に行わせる制御信号を前記制限データから生成し、前記制御信号を前記制限機構に対して出力する制御信号出力部をさらに備える
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項10】
前記再生可能エネルギー発電機と、前記蓄電池と、前記制御機器と、前記負荷と、を備える独立システムであって、
前記制御機器が請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のエネルギーマネジメントシステムを含む
独立システム。
【請求項11】
再生可能エネルギー発電機と、蓄電池と、制御機器と、負荷と、を備える独立システムであって、
前記制御機器が、前記独立システムのエネルギーマネジメントシステムを含んでおり、
前記エネルギーマネジメントシステムが、
前記再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測値と、前記制御機器の需要電力の予測値と、所定の電力供給制限のもとで電力が供給されたと仮定した場合の前記負荷の需要電力の予測値とから、前記蓄電池の充放電電力の予測値を演算する演算部と、
前記蓄電池の充放電電力の予測値に一致する電力での前記蓄電池の充放電が可能であるか否かを判定する判定部と、
前記蓄電池の充放電が可能でないと判定された場合に、前記負荷への前記電力供給制限が強まるように前記電力供給制限の内容を変更する変更部と、
前記蓄電池の充放電が可能であると判定された場合に、前記電力供給制限の内容が記録された制限データを出力する制限データ出力部と、
を備える
独立システム。
【請求項12】
再生可能エネルギー発電機と、蓄電池と、制御機器と、負荷とを備える独立システムの運用方法であって、
前記再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測値と、前記制御機器の需要電力の予測値と、所定の電力供給制限のもとで電力が供給されたと仮定した場合の前記負荷の需要電力の予測値とから、前記蓄電池の充放電電力の予測値を演算する工程と、
前記蓄電池の充放電電力の予測値に一致する電力での前記蓄電池の充放電が可能であるか否かを判定する工程と、
前記蓄電池の充放電が可能でないと判定された場合に、前記負荷への前記電力供給制限が強まるように前記電力供給制限の内容を変更する工程と、
前記蓄電池の充放電が可能であると判定された場合に、前記電力供給制限の内容を示す制限データを出力する工程と、
を備え
、
前記制御機器は、前記蓄電池を制御する蓄電池制御機器を備え、
前記蓄電池の充放電が可能でないと判定された場合、前記蓄電池制御機器の消費電力が少なくなるように前記電力供給制限の内容を変更する
独立システムの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーマネジメントシステム、独立システム及び独立システムの運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独立システムは、離島、遠隔地等に構築され、他の系統に連系していない。独立システムは、独立系統、独立電力系統等とも呼ばれる。
【0003】
独立システムは、多くの場合は、再生可能エネルギー発電機、蓄電池、制御機器及び負荷を備える。再生可能エネルギー発電機、蓄電池及び制御機器は、電力を供給する電源システムを構成する。制御機器は、再生可能エネルギー発電機及び蓄電池を制御する。再生可能エネルギー発電機は、電力を発電する。蓄電池は、再生可能エネルギー発電機により発電された電力により充電される。制御機器及び負荷には、再生可能エネルギー発電機により発電された電力、及び蓄電池が放電した電力が供給される。
【0004】
特許文献1に記載された独立システムは、風力発電装置、ナトリウム-硫黄電池、ヒータ及び制御機器を有する(段落0043)。風力発電装置は、電力を制御機器及びヒータに供給する(段落0043-0044)。ナトリウム-硫黄電池は、風力発電装置により発電された電力の出力変動を補償し、電力をヒータ及び制御機器に供給する(段落0045)。ナトリウム-硫黄電池の充放電は、制御機器等で残存容量を管理及び監視し風力発電装置のリミッタを変更することによって、充電末又は放電末に至らないように制御される(段落0046)。
【0005】
特許文献2に記載された独立型電力供給システムは、太陽光発電装置、蓄電装置、制御装置及び負荷装置を備える(段落0013)。太陽光発電装置は、直流電力を発電し、発電した直流電力を交流電力に変換する(段落0014)。蓄電装置では、太陽光発電装置の発電電力を充電する(段落0017)。負荷装置には、太陽光発電装置及び蓄電装置の両者で合成出力が供給される(段落0017)。制御装置は、発電量が不足し充電状態SOC(t)が最小充電電力量Sminを下回る場合に、負荷装置の需要電力Pdを制限して蓄電装置の充電量を増加することにより、充電状態SOC(t)が不足することを防止する(段落0023及び0045)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-51074号公報
【文献】特開2013-176234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
独立システムにおいては、再生可能エネルギー発電機の発電電力が、制御機器及び負荷の需要電力の合計と同程度以下となる場合がある。例えば、負荷となる機器が増加し需要電力が増加した場合、再生可能エネルギー発電機が故障した場合、天候不順等により再生可能エネルギー発電機の発電電力が減少した場合等がこれに該当する。その場合は、蓄電池の蓄電量が減少する。
【0008】
一方、蓄電池の蓄電量が減少し、制御機器への電力の供給が絶たれた場合は、電源システムに備えられる機器の故障、劣化等が生じる可能性がある。
【0009】
また、蓄電池の蓄電量が減少し、制御機器への電力の供給が絶たれた場合は、電源システムを再起動する操作が行われない限り、電源システムの運転を再開することができない。しかし、電源システムを再起動する操作は、電源システムの操作に習熟した人でなければ行うことができない。一方で、独立システムが構築される離島、遠隔地等には、多くの場合は、電源システムの操作に習熟した人が常駐していない。このため、独立システムが構築された離島、遠隔地等に電源システムの操作に習熟した人が到着し電源システムを再起動する操作を行うまでに要する時間は長くなりがちであり、電源システムの運転を再開するのに要する時間は長くなりがちである。
【0010】
特許文献1に記載された独立システムにおいては、風力発電装置の発電電力が、ヒータと制御機器とを含む負荷の全体における需要電力の合計より十分に多い場合は、負荷の全体に電力を供給することができる。しかし、風力発電装置の発電電力が、上記の需要電力の合計と同程度以下である場合は、負荷の全体に電力を供給することができなくなり、ヒータ及び制御機器への電力の供給が絶たれる。
【0011】
特許文献2に記載された独立型電力供給システムにおいては、制御装置への電力の供給が考慮されていない。このため、当該独立型電力供給システムは、上述した問題を解決することができない。
【0012】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされた。本発明が解決しようとする課題は、独立システムにおいて制御機器への電力の供給を維持することができる可能性を高くし、独立システムを安定して運用することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、独立システムのエネルギーマネジメントシステムに向けられる。
【0014】
独立システムは、再生可能エネルギー発電機、蓄電池、制御機器及び負荷を備える。制御機器は、蓄電池を制御する蓄電池制御機器を備える。
【0015】
エネルギーマネジメントシステムは、演算部、判定部、変更部及び制限データ出力部を備える。
【0016】
演算部は、独立システムについて、再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測値と、制御機器の需要電力の予測値と、所定の電力供給制限のもとで電力が供給されたと仮定した場合の負荷の需要電力の予測値から、蓄電池の充放電電力の予測値を演算する。
【0017】
判定部は、蓄電池の充放電電力の予測値に一致する電力での蓄電池の充放電が可能であるか否かを判定する。
【0018】
変更部は、蓄電池の充放電が可能でないと判定された場合に、負荷への電力供給制限が強まるように電力供給制限の内容を変更する。その際には、蓄電池制御機器の消費電力が少なくなるように電力供給制限の内容を変更する。
【0019】
制限データ出力部は、蓄電池の充放電が可能であると判定された場合に、電力供給制限の内容を示す制限データを出力する。
【0020】
本発明は、当該エネルギーマネジメントシステムを備える独立システム、及び独立システムの運用方法にも向けられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、独立システムにおいて制御機器及び負荷の全体に電力を供給することができないと予測される場合に、制御機器への電力の供給を維持するために負荷に適用しなければならない電力供給制限の内容を制限データから特定することができる。このため、独立システムにおいて制御機器への電力の供給を維持することができる可能性が高くなり、独立システムを安定して運用することができる。
【0022】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
独立システムを図示するブロック図である。
【
図2】
独立システムに備えられるエネルギーマネジメントシステムを図示するブロック図である。
【
図3】
独立システムにおいて再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【
図4】
独立システムにおいてディーゼル発電機の発電可能電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【
図5】
独立システムにおいて貯水式水力発電機の発電可能電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【
図6】
独立システムにおいて制御機器の需要電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【
図7】
独立システムにおいて負荷の需要電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【
図8】電力供給制限が負荷に適用されない場合の需要電力、発電電力、充放電電力、温度及び蓄電量の時間変化の例を示すグラフである。
【
図9】電力供給制限が負荷に適用された場合の需要電力、発電電力、充放電電力、温度及び蓄電量の時間変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1 独立システム
図1は、
本実施形態の独立システムを図示するブロック図である。
【0025】
図1に図示され
る独立システム1000は、再生可能エネルギー発電機1020、蓄電池1022、ディーゼル発電機1024、制御機器1026、負荷1028及び配電線1030を備える。制御機器1026は、再生可能エネルギー発電機1020を制御する制御機器1040、蓄電池1022を制御する制御機器1042、ディーゼル発電機1024を制御する制御機器1044、制限機構1046及びエネルギーマネジメントシステム(EMS)1048を備える。負荷1028は、個別負荷1066及び1068を備える。制限機構1046は、分離/制限機構1086及び1088を備える。
【0026】
再生可能エネルギー発電機1020、蓄電池1022、ディーゼル発電機1024、制御機器1040、制御機器1042、制御機器1044、分離/制限機構1086、分離/制限機構1088及びEMS1048は、配電線1030に電気的に接続されている。個別負荷1066及び1068は、それぞれ分離/制限機構1086及び1088を介して、配電線1030に電気的に接続されている。これにより、再生可能エネルギー発電機1020及びディーゼル発電機1024により発電された電力で蓄電池1022を充電することができる。また、再生可能エネルギー発電機1020及びディーゼル発電機1024により発電された電力、並びに蓄電池1022が放電した電力を、制御機器1040、制御機器1042、制御機器1044、分離/制限機構1086、分離/制限機構1088及びEMS1048に供給することができ、分離/制限機構1086及び1088を介して個別負荷1066及び1068に供給することができる。個別負荷1066及び1068への電力の供給は、それぞれ分離/制限機構1086及び1088により制御される。
【0027】
再生可能エネルギー発電機1020は、太陽光発電機、風力発電機、流れ込み式水力発電機、地熱発電機、太陽熱発電機、バイオマス発電機等である。
【0028】
蓄電池1022は、ナトリウム-硫黄電池、レドックスフロー電池、リチウムイオン電池、鉛電池、ニッケル水素電池等であり、望ましくはナトリウム-硫黄電池である。
【0029】
ディーゼル発電機1024が、再生可能エネルギー発電機1020でない発電電力を調整することができる他の種類の発電機に置き換えられてもよい。例えば、ディーゼル発電機1024が、ガスタービン発電機、貯水式水力発電機、調整池式水力発電機等に置き換えられてもよい。
【0030】
制御機器1040及び1044の各々は、通信機器、出力調整機器等を備える。制御機器1042は、通信機器、双方向変換器、空調機、ヒーター、温度調節器等を備える。
【0031】
分離/制限機構1086及び1088は、それぞれ、個別負荷1066及び1068を配電線1030から電気的に分離し個別負荷1066及び1068への電力の供給を停止する動作を実行することができ、個別負荷1066及び1068に供給される電力の電力値を設定された上限値以下に制限する動作を実行することができる。分離/制限機構1086及び1088の各々が、専ら前者の動作を実行することができる分離機構に置き換えられてもよく、専ら後者の動作を実行することができる制限機構に置き換えられてもよい。前者の動作は、例えば、ブレーカー、半導体素子を備えるAC/DC/AC変換器等により実行される。後者の動作は、負荷1028に備えられる装置の運転台数、運転設定等を制御する装置により実行される。装置は、ポンプ、空調機、工作機械等である。装置がポンプである場合は、装置設定は流量等である。装置が空調設備である場合は、装置設定は設定温度等である。装置が工作機械である場合は、装置設定は処理速度等である。
【0032】
EMS1048は、再生可能エネルギー発電機1020の発電電力、蓄電池1022の充放電電力、ディーゼル発電機1024の発電電力、制御機器1026の需要電力及び負荷1028の需要電力を測定し、再生可能エネルギー発電機1020の発電電力、蓄電池1022の充放電電力、ディーゼル発電機1024の発電電力、並びに分離/制限機構1086及び1088を制御する。
【0033】
独立システム1000が上述した要素とは異なる要素を備えてもよい。独立システム1000が、追加の再生可能エネルギー発電機及びその制御機器、追加の蓄電池及びその制御機器、追加のディーゼル発電機及びその制御機器の少なくとも1つを備えてもよい。ディーゼル発電機1024及びその制御機器1044が省略されてもよい。独立システム1000が、追加の個別負荷及び当該個別負荷と組をなす分離/制限機構を備えてもよい。個別負荷1066と分離/制限機構1086との組と、個別負荷1068と分離/制限機構1088との組の片方が、省略されてもよい。
【0034】
2 エネルギーマネジメントシステムによる制御の内容
図2は
、独立システムに備えられるエネルギーマネジメントシステムを図示するブロック図である。
【0035】
EMS1048は、発電電力予測部1100、発電可能電力予測部1102、制御機器1026の需要電力を予測する需要電力予測部1104、負荷1028の需要電力を予測する需要電力予測部1106、測定部1108、演算部1110、判定部1112、変更部1114、制限データ出力部1116及び制御信号出力部1118を備える。これらの要素は、コンピュータにプログラムを実行させることにより構成される。これらの要素の全部又は一部がプログラムを実行しないハードウェアにより構成されてもよい。
【0036】
発電電力予測部1100は、未来の予測期間内の各時刻における再生可能エネルギー発電機1020の発電電力を予測してその予測値(再生可能エネルギー発電予測値)を得、得た再生可能エネルギー発電予測値を演算部1110に対して出力する。
【0037】
発電可能電力予測部1102は、未来の予測期間内の各時刻におけるディーゼル発電機1024の発電可能電力を予測してその予測値(ディーゼル発電予測値)を得、得たディーゼル発電予測値を演算部1110に対して出力する。ディーゼル発電機1024が省略される場合は、発電可能電力予測部1102も省略される。
【0038】
需要電力予測部1104は、未来の予測期間内の各時刻における制御機器1026の需要電力を予測してその予測値(制御機器需要予測値)を得、得た制御機器需要予測値を演算部1110に対して出力する。
【0039】
需要電力予測部1106は、未来の予測期間内の各時刻における負荷1028の需要電力を予測してその予測値(負荷需要予測値)を得、得た負荷需要予測値を演算部1110に対して出力する。負荷需要予測値は、下述する電力供給制限が負荷1028に適用されたと仮定した場合の予測値である。
【0040】
測定部1108は、蓄電池1022の状態を測定し、測定した蓄電池1022の状態を演算部1110に対して出力する。測定される蓄電池1022の状態は、蓄電池1022の温度、蓄電量等を含む。
【0041】
演算部1110は、独立システム1000について、入力された再生可能エネルギー発電予測値、ディーゼル発電予測値、制御機器需要予測値、負荷需要予測値及び蓄電池1022の状態から、未来の予測期間内の各時刻における蓄電池1022の充放電電力の予測値(蓄電池充放電予測値)を演算する。再生可能エネルギー発電予測値、ディーゼル発電予測値、制御機器需要予測値、負荷需要予測値及び蓄電池1022の状態の全部又は一部が、EMS1048の外部から取得されてもよい。ディーゼル発電機1024が省略される場合は、ディーゼル発電予測値は考慮されない。
【0042】
判定部1112は、演算された蓄電池充放電予測値に一致する電力での蓄電池1022の充放電が可能であるか否かを判定する。判定部1112は、例えば、未来の予測期間内の各時刻における蓄電池1022の温度及び蓄電量を予測してそれらの予測値を得、予測期間内において、得た予測値が設定されている範囲に収まる場合に、蓄電池1022の充放電が可能であると判定する。
【0043】
変更部1114は、判定部1112により蓄電池1022の充放電が可能でないと判定された場合に、負荷1028への電力供給制限が強まるように電力供給制限の内容を変更し、変更後の電力供給制限の内容を制限データに記録する。変更後の電力供給制限は、直ちに負荷1028に適用されるわけではない。電力供給制限を強くすることは、個別負荷1066及び1068の少なくとも一方への電力の供給を停止すること、個別負荷1066及び1068の少なくとも一方に供給される電力の電力値を設定された上限値以下に制限すること等を含む。
【0044】
変更後の電力供給制限の内容が記録された制限データは、負荷1028の需要電力を予測する需要電力予測部1106に入力される。需要電力予測部1106は、当該制限データが入力されるのに連動して、未来の予測期間内の各時刻における負荷1028の需要電力を再予測し、負荷需要予測値を再出力する。再出力される負荷需要予測値は、変更後の電力供給制限が負荷1028に適用されたと仮定した場合の負荷1028の需要電力の予測値である。
【0045】
演算部1110は、負荷需要予測値が再出力されるのに連動して、未来の予測期間内の各時刻における蓄電池充放電予測値を再演算する。判定部1112は、蓄電池充放電予測値が再演算されるのに連動して、再演算された蓄電池充放電予測値に一致する電力での蓄電池1022の充放電が可能であるか否かを再判定する。
【0046】
制限データ出力部1116は、判定部1112により蓄電池1022の充放電が可能であると判定された場合に、電力供給制限の内容が記録された制限データを出力する。また、制限データ出力部1116は、判定部1112により蓄電池1022の放電が可能でないと判定されたが、電力供給制限が既に最も強い電力供給制限である場合は、電力供給制限が最も強い電力供給制限であることが記録された制限データを出力する。
【0047】
個別負荷1066及び1068の少なくとも一方への電力の供給を停止することにより電力供給制限が強くされる場合は、予測期間内の全部の時刻において全部の個別負荷1066及び1068への電力の供給が停止されたときに、電力供給制限が最も強い電力供給制限になる。
【0048】
個別負荷1066及び1068の少なくとも一方に供給される電力の電力値を設定された上限値以下に制限することにより電力供給制限が強くされる場合は、予測期間内の全部の時刻において全部の個別負荷1066及び1068に供給される電力の電力値が設定された上限値以下に制限されたときに、電力供給制限が最も強い電力供給制限になる。
【0049】
制御信号出力部1118は、出力された制限データに記録された内容を有する電力供給制限を制限機構1046に行わせる制御信号を制限データから生成し、生成した制御信号を制限機構1046に対して出力する。
【0050】
独立システム1000においては、蓄電池充放電予測値に一致する電力での蓄電池1022の充放電が可能でないと判定された場合は、蓄電池充放電予測値に一致する電力での蓄電池1022の充放電が可能であると判定することができるようになるまで、電力供給制限が強くされる。
【0051】
これにより、独立システム1000において再生可能エネルギー発電機1020、蓄電池1022及びディーゼル発電機1024からの電力の供給が不足し、制御機器1026及び負荷1028の全体に電力を供給することができないと予測される場合に、制御機器1026への電力の供給を維持するために負荷1028に適用しなければならない電力供給制限の内容を制限データから特定することができる。このため、独立システム1000において制御機器1026への電力の供給を維持することができる可能性が高くなり、独立システム1000を安定して運用することができる。
【0052】
例えば、再生可能エネルギー発電機1020、蓄電池1022、ディーゼル発電機1024、制御機器1040、制御機器1042及び制御機器1044を備える電源システムを再起動する回数を減らし、当該電源システムの稼働率を上げることができる。また、独立システム1000における停電の回数を減らし、独立システム1000に備えられる機器の故障及び劣化を抑制することができる。
【0053】
また、独立システム1000においては、電力供給制限が最も強くされても蓄電池充放電予測値に一致する電力での蓄電池1022の充放電が可能であると判定することができない場合は、電力供給制限が最も強い電力供給制限にされる。これにより、制御機器1026への電力の供給を維持することができない場合であっても、制御機器1026への電力の供給を維持することができなくなるタイミングを先送りすることができる。
【0054】
変更部1114は、望ましくは、蓄電池1022を制御する制御機器1042の消費電力が少なくなるように電力供給制限を変更する。
【0055】
例えば、蓄電池1022がナトリウム-硫黄電池であり、制御機器1042がナトリウム-硫黄電池を加熱するヒーター、及びナトリウム-硫黄電池を冷却する冷却ファンを備える場合は、ナトリウム-硫黄電池の温度が上昇して冷却ファンが動作することが抑制されるように、電力供給制限を強くする変更を行う。
【0056】
ナトリウム-硫黄電池の温度が上昇することを抑制することは、ナトリウム-硫黄電池の放電時間を短くすること、ナトリウム-硫黄電池の放電電力を少なくすること等により行うことができる。冷却ファンが動作することを抑制することは、冷却ファンの消費電力を減らすことに寄与するだけでなく、ヒーターの消費電力を減らすことにも寄与する。冷却ファンによる放熱量が少なくなった場合は、ヒーターによる加熱量も少なくなるからである。
【0057】
加えて、冷却ファンが動作することを抑制することは、制御機器1042への電力の供給が絶たれた後にナトリウム-硫黄電池の温度を高温に維持することができる時間を長くし、ナトリウム-硫黄電池の故障を減らすことにも寄与する。
【0058】
また、蓄電池1022がリチウムイオン電池であり、制御機器1042がリチウムイオン電池を冷却するクーラー、冷却ファン、空調機等の冷却機構を備える場合は、リチウムイオン電池の温度が上昇して冷却機構が動作することが抑制されるように電力供給制限を強くする。リチウムイオン電池の温度が上昇することを抑制することは、リチウムイオン電池の充放電電力を少なくすること等により行うことができる。
【0059】
3 再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測の基礎となるデータ
図3は
、独立システムにおいて再生可能エネルギー発電機の発電電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【0060】
発電電力予測部1100は、
図3に図示される気象予測データ1200、発電電力実績データ1202、運転可否データ1204等に基づいて、将来の予測期間内の各時刻における再生可能エネルギー発電機1020の発電電力の予測値
(再生可能エネルギー発電予測値)を得る。
【0061】
気象予測データ1200は、将来の予測期間内の各時刻における気象の予測値を示す。発電電力実績データ1202は、過去の記録期間内の各時刻における再生可能エネルギー発電機1020の発電電力の実績値を示す。運転可否データ1204は、将来の予測期間内における、定期メンテナンス、既に発生している故障等による再生可能エネルギー発電機1020の発電の停止の有無を示す。
【0062】
運転可否データ1204は、予測期間内に発電の停止が予定されていない場合は、予測期間の全期間について再生可能エネルギー発電機1020の発電の停止がなく再生可能エネルギー発電機1020を運転することができることを示すデータであってもよいし、故障の起こりやすさに応じて推測される、予測期間の一部の期間について再生可能エネルギー発電機1020を運転することができないことを示すデータであってもよい。
【0063】
例えば、発電電力予測部1100は、発電電力実績データ1202により示される再生可能エネルギー発電機1020の発電電力の実績値を、気象予測データ1200及び運転可否データ1204によりそれぞれ示される気象の予測値及び再生可能エネルギー発電機1020の発電の停止の有無を用いて補正することにより、再生可能エネルギー発電予測値を得る。
【0064】
4 ディーゼル発電機等の発電可能電力の予測の基礎となるデータ
図4は
、独立システムにおいてディーゼル発電機の発電可能電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【0065】
発電可能電力予測部1102は、
図4に図示される運転可否データ1220、備蓄燃料データ1222、燃料補給予定データ1224等に基づいて、将来の予測期間内の各時刻におけるディーゼル発電機1024の発電可能電力の予測値
(ディーゼル発電予測値)を得る。
【0066】
運転可否データ1220は、将来の予測期間内における、定期メンテナンス、既に発生している故障等によるディーゼル発電機1024の発電の停止の有無を示す。運転可否データ1220は、予測期間内に発電の停止が予定されていない場合は、予測期間の全期間についてディーゼル発電機1024の発電の停止がなくディーゼル発電機1024を運転することができることを示すデータであってもよいし、故障の起こりやすさに応じて推測される、予測期間の一部の期間についてディーゼル発電機1024を運転することができないことを示すデータであってもよい。
【0067】
備蓄燃料データ1222は、備蓄されておりディーゼル発電機1024が発電に用いることができる燃料の量を示す。燃料補給予定データ1224は、ディーゼル発電機1024に対し発電に用いる燃料の補給が行われることが予定された予定日を示す。
【0068】
例えば、発電可能電力予測部1102は、備蓄燃料データ1222から、燃料補給予定データ1224により示される燃料の補給の予定日までのディーゼル発電機1024の発電可能電力を算出する。そして、発電可能電力予測部1102は、算出したディーゼル発電機1024の発電可能電力を、運転可否データ1220により示されるディーゼル発電機1024の発電の停止の有無を用いて補正することにより、ディーゼル発電予測値を得る。独立システム1000が複数のディーゼル発電機1024を備える場合は、発電可能電力予測部1102は、運転することができるディーゼル発電機1024の数を考慮して最大の発電可能電力を算出する。
【0069】
図5は
、独立システムにおいて貯水式水力発電機の発電可能電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【0070】
ディーゼル発電機1024が貯水式水力発電機に置き換えられた場合は、発電可能電力予測部1102は、
図5に図示される運転可否データ1240、貯水量データ1242、降雨予測データ1244等に基づいて、将来の予測期間内の各時刻における貯水式水力発電機の発電可能電力の予測値
(貯水式水力発電予測値)を得る。
【0071】
運転可否データ1240は、将来の予測期間内における定期メンテナンス、既に発生している故障等による貯水式水力発電機の発電の停止の有無を示すデータである。運転可否データ1240は、予測期間内に発電の停止が予定されていない場合は、予測期間の全期間について貯水式水力発電機の発電の停止がなく貯水式水力発電機を運転することができることを示すデータであってもよいし、故障の起こりやすさに応じて推測される、予測期間の一部の期間について貯水式水力発電機を運転することができないことを示すデータであってもよい。貯水量データ1242は、貯められており貯水式水力発電機が発電に用いることができる水の量を示す。降雨予測データ1244は、貯水式水力発電機が発電に用いる水を増やす降雨が予想される予想日時を示す。
【0072】
例えば、発電可能電力予測部1102は、貯水量データ1242から、降雨予測データ1244により示される降雨が予想される予想日時までの貯水式水力発電機の発電可能電力を算出する。そして、発電可能電力予測部1102は、算出した貯水式水力発電機の発電可能電力を、運転可否データ1240により示される貯水式水力発電機の発電の停止の有無を用いて補正することにより、貯水式水力発電予測値を得る。独立システム1000が複数の貯水式水力発電機を備える場合は、発電可能電力予測部1102は、運転することができる貯水式水力発電機の数から最大の発電可能電力を算出する。降雨予測データ1244により示される降雨が予想される予想日時に代えて、給水予定データにより示される給水が予定された予定日時が用いられてもよい。
【0073】
5 制御機器の需要電力の予測の基礎となるデータ
図6は
、独立システムにおいて制御機器の需要電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【0074】
需要電力予測部1104は、
図6に図示される定格消費電力データ1260、消費電力実績データ1262、充放電電力予測データ1264等に基づいて、将来の予測期間内の各時刻における制御機器1026の需要電力の予測値
(制御機器需要予測値)を得る。
【0075】
定格消費電力データ1260は、制御機器1040、制御機器1042、制御機器1044、分離/制限機構1086、分離/制限機構1088及びEMS1048の定格消費電力を示す。消費電力実績データ1262は、過去の記録期間内の各時刻における制御機器1040、制御機器1042、制御機器1044、分離/制限機構1086、分離/制限機構1088及びEMS1048の消費電力の実績値を示す。充放電電力予測データ1264は、演算部1110により演算された蓄電池充放電予測値を示す。
【0076】
例えば、蓄電池1022を制御する制御機器1042が空調機、ヒーター、温度調節器等を備える場合について考える。
【0077】
この場合は、需要電力予測部1104は、定格消費電力データ1260により示される制御機器1040、制御機器1042、制御機器1044、分離/制限機構1086、分離/制限機構1088及びEMS1048の定格消費電力の合計を算出する。また、需要電力予測部1104は、充放電電力予測データ1264により示される蓄電池充放電予測値から蓄電池1022の発熱量の予測値を算出し、算出した予測値から空調機、ヒーター、温度調節器等の消費電力の予測値を算出する。
【0078】
そして、需要電力予測部1104は、算出した定格消費電力の合計を、算出した消費電力の予測値を用いて補正することにより、制御機器需要予測値を得る。定格消費電力の合計に代えて、消費電力実績データ1262により示される制御機器1040、制御機器1042、制御機器1044、分離/制限機構1086、分離/制限機構1088及びEMS1048の消費電力の実績値の時間平均値の合計が用いられてもよい。
【0079】
6 負荷の需要電力の予測の基礎となるデータ
図7は
、独立システムにおいて負荷の需要電力の予測の基礎となるデータを図示する図である。
【0080】
需要電力予測部1106は、
図7に図示される気象予測データ1280、消費電力実績データ1282、制限データ1284等に基づいて、負荷1028の需要電力の予測値
(負荷需要予測値)を予測する。
【0081】
気象予測データ1280は、将来の予測期間内の各時刻における気象の予測値を示す。消費電力実績データ1282は、過去の記録期間内の各時刻における個別負荷1066及び1068の消費電力の実績値を示す。制限データ1284は、上述した電力供給制限の内容を示す。
【0082】
例えば、需要電力予測部1106は、消費電力実績データ1282から、制限データ1284に記録された内容を有する電力供給制限が負荷1028に適用されたと仮定した場合の負荷1028の需要電力の仮定値を算出する。また、需要電力予測部1106は、算出した負荷1028の需要電力の仮定値を、気象予測データ1280により示される気象の予測値を用いて補正することにより、負荷需要予測値を得る。
【0083】
7 独立システムの状態の時間変化の例
図8及び
図9は、需要電力、発電電力、充放電電力、温度及び蓄電量の時間変化の例を示すグラフである。
図8は、電力供給制限が負荷に適用されない場合の時間変化の例を示すグラフである。
図9は、電力供給制限が負荷に適用された場合の時間変化の例を示すグラフである。
【0084】
図8(a)及び
図9(a)には、制御機器1026の需要電力1300、並びに制御機器1026及び負荷1028の需要電力の合計1302の時間変化の例が示されている。
図8(b)及び
図9(b)には、再生可能エネルギー発電機1020及びディーゼル発電機1024の発電電力の合計1320の時間変化の例が示されている。
図8(c)及び
図9(c)には、蓄電池1022の充放電電力1340の時間変化の例が示されている。
図8(d)及び
図9(d)には、蓄電池1022の温度1360の時間変化の例が示されている。
図8(e)及び
図9(e)には、蓄電池1022の蓄電量1380の時間変化の例が示されている。
【0085】
図8(a)に示される
場合においては、電力供給制限が負荷1028に適用されないために、1日目の13時頃から24時頃までの間において、負荷1028の需要電力が増加することにより制御機器1026及び負荷1028の需要電力の合計1302が増加している。
これに伴い、同じく1日目の13時頃から24時頃までの間に、
図8(c)に示されるように、蓄電池1022の放電電力1340が増加しており、
図8(d)に示されるように、蓄電池1022の温度1360が上昇しており、
図8(e)に示されるように、蓄電池1022の蓄電量1380が減少している。
【0086】
そして、
図8(e)に示されるように、
2日目の2時頃に蓄電池1022の蓄電量1380が0
まで減少した以降は、
図8(c)
に示される
ように、蓄電池1022の
放電電力1340
も0となり、本来は図8(c)において破線にて示す時間変化に沿って行われるべき蓄電池1022の充放電が
、行われなくなっている。また、図8(a)に破線で示される需要電力の合計1302を制御機器1026及び負荷1028に供給すること
もできなくなっており、
図8(b)に破線で示される再生可能エネルギー発電機1020及びディーゼル発電機1024の発電電力の合計1320を利用
することも、できなくなっている。当該発電電力を利用することができなくなるのは、制御機器1026に電力を供給することができなくなるためである。
【0087】
また、
図8(d)
の1日目の13時頃から24時頃までの間のように
、蓄電池1022の温度1360が上昇
した場合、冷却ファンを運転しなければならなくなり、制御機器1042の消費電力が多くなる。
【0088】
これに対して
、図9(a)に示される
場合に
おいては、1日目の13時頃から24時頃までの間に電力供給制限が負荷1028に適用されることによって、負荷1028の需要電力の増加が抑制
されており、これによって、制御機器1026及び負荷1028の需要電力の合計1302の増加が抑制されている。
これに伴い、同じく1日目の13時頃から24時頃までの間に
おいて、
図9(c)に示されるように、蓄電池1022の放電電力1340の増加が抑制されており、
図9(d)に示されるように、蓄電池1022の温度1360の上昇が抑制されており、
図9(e)に示されるように、蓄電池1022の蓄電量1380の減少が抑制されている。
【0089】
その結果として、2日目の2時頃以降に
おいても、
図9(e)に示されるように、蓄電池1022の蓄電量1380が0に
はなっておらず、
図9(c)に示される充放電電力1340での蓄電池1022の充放電が可能
となっている。また、
図9(a)に示され
る需要電力の合計1302を制御機器1026及び負荷1028に供給することができるように
もなっており、
図9(b)に示される再生可能エネルギー発電機1020及びディーゼル発電機1024の発電電力の合計1320を利用
することも、できるようになっている。
【0090】
また、この場合、
図9(d)に示されるように
、1日目の13時頃から24時頃までの間においても蓄電池1022の温度1360の上昇
は抑制される
ため、冷却ファンを運転
する必要がなく、制御機器1042の消費電力
は少なく
保たれる。
【0091】
8 先行技術との対比
特開2013-176234号公報に記載された独立型電力供給システムは、発電量が不足し充電状態SOC(t)が最小充電電力量Sminを下回る場合に、負荷装置の需要電力Pdを制限して蓄電装置の充電量を増加することにより、充電状態SOC(t)が不足することを防止する(段落0023及び0045)。
【0092】
これに対して、独立システム1000は、制御機器1026への電力の供給が絶たれないように負荷1028への電力の供給を制限する。したがって、独立システム1000においては、最小充電電力量を確保することができない場合であっても、再生可能エネルギー発電機1020及び/又はディーゼル発電機1024から負荷1028に電力を供給することできるときは、問題とはならない。
【0093】
なお、特開2013-176234号公報に記載された独立型電力供給システムにおいては、負荷装置が調整用負荷及び負荷を備えるが、制御機器1026に相当する要素が調整用負荷及び負荷のいずれに含まれるのかが不明である。
【0094】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0095】
1000 独立システム
1020 再生可能エネルギー発電機
1022 蓄電池
1024 ディーゼル発電機
1026 制御機器
1028 負荷
1030 配電線
1040,1042,1044 制御機器
1046 制限機構
1048 エネルギーマネジメントシステム(EMS)
1066,1068 個別負荷
1086,1088 分離/制限機構
1110 演算部
1112 判定部
1114 変更部
1116 制限データ出力部
1118 制御信号出力部