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特許7146957中空容積および可撓性バンドを有する発泡体パッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】中空容積および可撓性バンドを有する発泡体パッド
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
A47C27/14 Z
A47C27/14 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020568557
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019063898
(87)【国際公開番号】W WO2019238420
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】LU100834
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】519460199
【氏名又は名称】バリオウェル・ディベロップメント・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Variowell Development GmbH
【住所又は居所原語表記】Klarissengasse 4, 48143 Munster, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キルヒホフ、トビアス
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/001980(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14
A47C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体パッド(10)が複数セクション(32,34)を有し、
各々のセクション(32、34)が前記パッド(10)の少なくとも1つの中空容積(12、14)を包含しており、
前記パッド(10)が、前記複数セクション(32,34)の中で過剰な熱エネルギの発生している中の少なくとも1つの第1のセクション(32)における少なくとも1つの中空容積(12)から、過剰な熱エネルギを含まない前記パッド(10)内の少なくとも1つの第2のセクション(34)における少なくとも1つの中空容積(14)へ向かって熱エネルギを伝達するための途切れの無い可撓性細長バンド(20)を含み、
前記途切れの無い可撓性細長バンド(20)は、少なくとも1つの前記第1のセクション(32)の中から他の異なる前記第2のセクション(34)へ伸長する規定のエリアを伴う連続的な導電層(22)を有し、そして少なくとも前記2つの中空容積(12、14)内に延在しており、ここで前記第2のセクション(34)は前記パッド(10)のエッジに位置しており、
前記可撓性細長バンド(20)はPE、PU、または他の安定化材料(24)で片面または両面をラミネートされており、
前記導電層(22)は、下記の(A)、(B)と(C)のうちのいずれかである、
(A)グラファイトで作られている、
(B)さらに上記(A)に加えて前記グラファイトが、99%を超える炭素含有量を有する、
(C)さらに上記(B)に加えて、前記バンドは、1%未満の灰含有量を有し、または高配向パイログラファイト(HOCG)のいずれかである、
発泡体パッド(10)。
【請求項2】
前記途切れの無い可撓性細長バンド(20)は、前記規定のエリアの30%以上が前記少なくとも1つの前記第1のセクション(32)の外側に位置するように配置される、請求項1に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項3】
前記第1のセクション(32)は、前記第2のセクション(34)よりも温かい傾向があり、および/または人体または人体の一部を支持するために用いられる傾向がある少なくとも1つのセクションである、請求項1および2のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項4】
前記途切れの無い前記可撓性細長バンド(20)は、幅4cm以上および/または長さ25cm以上の寸法を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項5】
前記セクション(32、34)は、少なくとも、0.08mまたは表面全体の10%に対応する前記パッド(10)の表面を覆うような寸法である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項6】
前記可撓性細長バンド(20)は、穿刺および/または穿孔されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項7】
ゲル注入発泡体を有する少なくとも1つのセクション(38)を備え、前記バンド(20)は、前記少なくとも1つのゲル注入発泡体を有するセクション(38)を通って伸長する、請求項1~のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項8】
少なくとも1つの断熱層を備え、好適には、前記断熱層は、前記第2のセクションが外部熱、特に体熱から遮蔽されるように、前記第2のセクション(34)に配置される、請求項1~のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項9】
前記可撓性細長バンド(20)は、前記規定のエリアの20%以上が露出し、または前記パッドの外側にあるように配置される、請求項1~のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項10】
前記可撓性細長バンド(20)は、厚さ0.1mm~0.5mmであり、および/または幅4~10cmを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項11】
前記可撓性細長バンド(20)は、1g/cmを超える密度を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項12】
前記導電層(22)は、1800ppm未満の硫黄含有量を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項13】
前記導電層は、グラフェンで作られる、請求項1~10のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【請求項14】
前記パッド(10)はマットレスである、請求項1~13のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2018年6月12日に出願された、“A Padding having Hollow Volumes and a Flexible Band”と題されたルクセンブルク特許出願第LU100834号の利益および優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、中空容積および導電層を有する可撓性バンドを有する発泡体パッド、およびそのようなパッドのマットレスとしての使用に関する。導電層を有する可撓性バンドは、発泡体パッド内の中空容積およびその周囲の材料から過剰な熱エネルギを輸送することが可能であり、それによって、たとえば上記パッド上に横たわる身体の特定の部分における温度を下げることを可能にする。
【背景技術】
【0003】
様々な種類のパッドが知られている。最新技術において、通常、パッドに快適性を付与するために設けられた中空容積を備えるパッドが知られている。既知のパッドの一例は、いわゆるインナースプリングマットレスである。これらのインナースプリングマットレスは、内部及びスプリングの周囲に、開放性の高い空気充填空間を有する。いずれにしても、スプリングは、実際の熱的利益を一切有さず、少なくとも、1つの中空容積または空間から他の中空容積または空間へ熱的利益を伸長することはない。発泡体ベースのパッドにおいて、中空容積は大幅に小さく、実際に、パッドの1つのセクションが、多数のそのような中空空間を包含する。
【0004】
当技術分野において、冷却または加熱流体または推進空気を用いるいくつかのマットレスが提案されてきた。しかし、これらのアプローチは、実用性がないことが証明されている。
【0005】
パッドの他の例は、相変化材料を有する領域と、他の相変化材料領域に連結されたその下の銅層とを含む、長期的冷却のためのクッションを説明する、米国特許公開第US2015/034528号(Tempur-Pedic社)によって知られている。相変化材料は、ある所定の温度で融解することにより熱エネルギを吸収するパラフィンワックスで充填される。融解の瞬間、この相変化材料は「冷たく」感じられる。当然、融解後、相変化材料はもはや熱エネルギを吸収することができない。この特許出願は、この相変化材料を、この相変化材料の底部の下に位置する銅バンドと連結することによって、熱エネルギを相変化材料から離れる方向へ輸送することによって、融解相の持続期間を延長させる試みを教示するが、体熱は、相変化材料の上部から相変化材料内へ吸収される。
【0006】
温度を単独で考慮すると、この‘528特許出願において説明された概念は、相変化材料が「冷たく」感じられ、銅バンドが熱エネルギを輸送し得ることから、もっともらしく思われる。しかし、熱エネルギの流れを分析すると、この特許出願における欠点が明らかになる。体熱は、相変化材料内へ横断する熱エネルギを放出する。熱エネルギが相変化材料内へ横断するためには一定の抵抗が存在することが知られている。その後、この熱エネルギは、相変化材料を通過して銅バンドに到達する必要がある。しかし、相変化材料に用いられたパラフィンワックスは、非常に低い熱伝導率(0.2~0.8Wm-1-1)を有するのに対し、金属バンドの銅は、401Wm-1-1の熱伝導率を有する。パラフィンワックスの低い熱伝導率により、熱エネルギは全く、または非常に低い程度しか、この銅バンドに到達しない。この文献は、この銅バンドが、熱エネルギが流れる必要がある他のエリアに連結されなければならないことを教示する。また相変化材料もそのエリア内に位置し、熱エネルギは、再びより多くの相変化材料を横断する必要がある。
【0007】
この構成を分析すると、熱エネルギの流れは極めて小さく、熱エネルギの大部分は、相変化材料が融解するまで第1の相変化材料に自然に吸収されるだけにすぎないという結論が導かれる。相変化材料は、最大で9KJ/KGしか吸収することができない。
【0008】
更に、相変化材料は可撓性を有さないので、マットレスの快適性を低下させないためには少量しか用いることができない。
【0009】
身体は、8時間の間に約230KJの熱エネルギを放出することが知られている。したがって、相変化材料は、約20~30分後に融解していることが計算され得る。相変化材料が完全に融解した後、マットレスの構造は、0.2~0.8Wm-1-1の熱伝導率を有し、多かれ少なかれ断熱性である。
【0010】
他の例は、内部に凹部手段を有するプラスティック材料のパッド本体と、パッド本体を覆うカバー層とを備え、補強材のストリップがパッド本体とカバー層との間に挟まれ、ストリップの少なくとも選択された1つが凹部手段と位置を合わせられた、シートまたはマットレス用パッドを開示する米国特許第US4,043,544(Ismer社)である。熱は、凹部手段を通ってカバー層から放散し、パッドは、上記ストリップによって補強される。
【0011】
この文献は、発泡体に切り込まれた凹部が体圧下で完全に閉じ得ることによって凹部内部の空気が移動できずに温まるという問題を解決する。この文献は、スチールバンドで凹部を補強することによって、凹部が体圧下で潰れることを防止する方法を説明する。それでもなお、熱エネルギ負荷は、凹部を通り、スチールバンドを通らずに流れるものとして説明される。熱エネルギの流れは、身体の動きによる凹部内部の空気の「ポンピング」挙動によって起こる。身体の動きがなければ、熱エネルギの流れは存在しない。金属バンドの位置決めの定義はないため、金属バンドは、熱エネルギを自然にたまたま輸送するだけにすぎない。更に、この特許は、スチールバンドの各交点にプラスティック板が一体化されなければならないと教示することにより、熱エネルギの流れの可能性を、ほぼ無に低減する。
【0012】
当技術分野において説明された発泡体パッドのいずれも実用的ではなく、そのような発泡体パッドのユーザの快適性を向上させ得る改善された発泡体パッドの要望が存在する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、独立請求項において定義されるような改善されたパッドを提供し、好適な実施形態は従属請求項において定義される。本発明の一態様によると、パッドには、特許請求の範囲に記載のように配置された場合、ユーザがより快適に感じるように、たとえばマットレスなどのパッドにおける温度を少なくとも局所的に低減することを可能にするバンドが提供される。(多くの場合、少なくともある程度ポリウレタン発泡体で作られた)マットレスのユーザの過熱問題を解決するための最先端の発明とは異なり、本発明は、熱エネルギを移動するための媒体として空気を用いるものではない。空気を用いる(すなわち、換気装置または発泡体に切り込まれた空気流路を用いる)ことは、多くの場合、空気がユーザへ向かって上向きに移動する誘因となる。また、マットレスの典型的な使用状況は、長時間、一般に数時間にわたるマットレス上での睡眠であるため、本発明は、熱エネルギを吸収するための材料(すなわち、PCM、ゲル)を用いるものではない。使用中、体熱は一貫して大量の熱エネルギを放出するため、熱エネルギを吸収するだけの任意の材料は、使用を終えるよりも大幅に前に熱的に消耗する。
【0014】
本発明は、熱エネルギ負荷が実際に輸送され、単に蓄積されるだけではない解決策を考案するために行われた研究および多数の試験に基づくものであり、この解決策は、マットレスの快適性パラメータに悪影響を及ぼすことがないように機械的に可撓性であり、更に、中空容積の存在を考慮に入れており、この熱エネルギ輸送は長期間にわたり一貫したものである。
【0015】
パッドは一般に中空容積を組み込むことが分かった。これらは、スプリングによって生じるような大きな中空容積、あるいは全てのポリウレタン発泡体に存在するような小さな中空容積であり得る。これらの中空容積は、過剰な熱エネルギを緩慢に解放する空気を含むので、過剰な熱エネルギを蓄積し、経時的にそれらを緩慢に解放するだけにすぎない。本発明は、それらの中空容積内の過剰な熱エネルギを除去する方法を説明するものである。
【0016】
上記を実現するために、従来とは全く異なる方法で、高い熱伝導率を有する材料が用いられる。高い熱伝導率を有する材料をパッド全体に配合するのではなく、高い熱伝導率を有するバンドを製造することが提案され、このバンドは、良好な機械的柔軟性可能性を有する。熱エネルギを輸送することができるこのバンドは、非常に特殊な方法でマットレス内に配置される。留意すべき点として、特許請求の範囲に記載され本明細書で説明されるようにバンドを配置することでしか、熱エネルギの一貫した堅実な流れは実現されない。何らかの異なる方法でマットレス内に単にバンドを配置することは、効果がないだろう。このバンドの配置は、満足な結果を実現するためには、パッドの中空容積における熱エネルギの分布を熟知して、慎重に注意深く行う必要があることが着目されている。留意すべき点として、パッド(たとえばマットレス用のパッド)内の中空セクションにおける熱エネルギの分布は、使用中(体熱の影響中)、長期間にわたり分析される必要がある。バンドは、高い熱エネルギを有するマットレス内の中空容積を有するセクション(多くの場合、ユーザの身体の真下)に接触するように配置され、高い熱エネルギを有さない中空容積を有するマットレスのセクションまで途切れなく延在走行する必要がある。本発明において説明されるバンドは、導電材料の層を組み込み、この層自体も、途切れなく、すなわち連続している。導電層またはバンド自体のあらゆる中断は、バンドが熱的に作用することを妨げる。この規則の唯一の例外は、バンドに慎重に穿刺または穿孔することであり、これは、分かっているように熱効果を低減することはない。本発明は、更なる使用のバリエーション、特に、本発明と、従来既知である他の熱効果を持つ方法との有意義な組み合わせを説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はパッドの第1の実施形態を示す概略図。
図2図2はパッドの第2の実施形態を示す概略図。
図3図3はパッドの他の実施形態を示す概略図。
図4図4はラミネート層を有する可撓性バンドを示す図。
図5図5は他の実施形態を示す概略図。
図6図6は他の実施形態を示す概略図。
図7図7は説明された試験の試験構成を示す図。
図8図8はゲル注入発泡体を有する構成と有さない構成とを比較する試験結果を示す図。
図9図9は可撓性バンドを有する構成と有さない構成とを比較する試験結果を示す図。
図10図10はゲル注入発泡体を有し、可撓性バンドを有する構成と、ゲル注入発泡体を有し、可撓性バンドを有さない構成とを比較する試験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の態様が、図面に示すような好適な実施形態を参照して更に詳しく説明される。以下の説明は、例示を目的としたものにすぎず、添付の特許請求の範囲によって定めるような保護範囲を制限することは意図されていない。1つの実施形態に示す特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられてよく、当業者は、例示された実施形態が、発明概念のより良い理解のために提供されただけにすぎないことを理解する。
【0019】
以下、本発明に係るパッドの実施形態としてのマットレスが、より詳しく説明される。マットレスの熱快適性は、快適な体験を得るために重要である。マットレス産業において、製品の表面付近の発泡体に含まれた革新的な相変化材料(PCM)または冷却ゲルの使用によってユーザへの冷却効果をもたらす新たな材料を利用するという動向が高まっている。これらの材料は、使用中の過熱を軽減し、または過剰な熱発生の原因となる症状に苛まれ得る人々に、より快適な環境を提供しようとするものである。
【0020】
睡眠中の快適な温度ウィンドウは、身体が98.6°F(または37℃)の核心体温を維持しようとする必要があるために、比較的狭い。Haexの報告によると、最適な断熱睡眠システムは、身体とベッドとの間の接触温度を30℃~35℃で安定させることを可能にする28℃~32℃のベッド温度を確実にしなければならない。高すぎるベッド断熱性は、温度の上昇をもたらし、過剰な発汗および相対湿度における増加を招く。一方、断熱性が低すぎる場合、身体が冷え、睡眠障害を伴う悪寒および同様の問題の原因となり得る。これらの断熱特性は、主に、芯材および設計に依存する。たとえばラテックスまたはPU製の芯は、スプリングマットレスよりも高い断熱値を持つ。芯とは別に、接触温度自体は、主に、上層およびその空気保持能力に依存する。
【0021】
マットレスの設計に関するこの問題への解決策は多くない。「暑く感じること」は温度の体感であるため、設計者は、温度を下げるための方法を模索する。設計者は、「冷却」を模索し、これは能動的または受動的であり得る。その結果、マットレスと結合された空気調和器、換気装置、発泡体に配合された高い熱結合性を有する材料、またはマットレスに沿って走行する発泡材に切り込まれた流路を用いた解決策に至る。これらの方法は、高費用である(空気調和器)か、騒音がある(換気装置)か、または全く効果がない(発泡体への熱伝導材料の配合、流路)。
【0022】
主な問題は、製品設計者が、温度を変更すべきパラメータとみなすため、「冷却」材料または方法に行き着くことである。しかし、温度は、他のパラメータの変更の結果でしかなく、それ自体が基本的なパラメータではない。任意の材料の温度は、
(Mat@t)=T(Mat@t-1)+E(therm-inflow)-E(therm-outflow)
の結果である。式中、T(Mat@t)は、所与の時間における所与の材料の温度であり、T(Mat@t-1)は、所与の時間より前のこの材料の温度であり、E(therm-inflow)は、t-1とtとの間に材料に到達する熱エネルギであり、E(therm-outflow)は、t-1とtとの間に材料から離れる熱エネルギである。この前提に基づくと、温度の変更は、材料自体の温度を変化させることによってではなく、むしろ材料に作用する熱エネルギの流れを分析し最適化することによってなされる。
【0023】
マットレス内の熱エネルギの流れの分析において、多くの製品設計者は、温かい空気が冷たい空気の中にある場合に上昇するように、熱エネルギが上向きに動くことを前提とする。本発明は、この前提が、優れた熱特性を有するマットレスの設計をもたらさないことを教示する。温かい空気が冷たい空気の中で上昇することは事実であるが、これは空気にしか作用しない。これは、直接に上昇する熱エネルギ自体ではなく、高レベルの熱エネルギを有する空気が低レベルの熱エネルギを有する空気よりも軽いという物理的作用である。空気分子は、容易に互いを通過して動き得るので、空気の密度が気体状である場合、軽い空気は重い空気よりも上へ上昇する傾向および能力を有する。しかし、熱エネルギ自体は重量を有さず、移動する熱エネルギに伴う重力は存在しない。また、ユーザは多くの場合、マットレスの上に横たわっているので、温かい空気を上向きに動くよう促すことは、上昇した熱エネルギをユーザから遠ざけるのではなくユーザに近付けるのみである。しかし、温度を低減するためのあらゆる方法は、熱エネルギをユーザの方向へではなく、ユーザから離れる方向へ動かさなければならない。
【0024】
上述した公式を用いると、材料における温度を下げるためには、熱エネルギの流入を少なくするか、または流出を多くする必要がある。典型的なマットレスにおいて、熱エネルギの最大流入は、体熱の影響によるものである。睡眠中の身体は、皮膚1qm当たり約40Wの熱流束を放出する。毎晩、1人当たり70~80Wが、230kJの流入に変換される。追加の熱エネルギ流入は、使用される暖房装置、または動的発泡体と関連して用いられる熱エネルギであり得る。マットレスへの熱エネルギの流入を低減するための現実的な方法は存在せず、この流入の量は、明らかに多い。
【0025】
本発明は、マットレスにおける熱エネルギの流出を多くする。これは、それ自体が可撓性の材料を用いるので、快適な使用感を損なうことなくマットレスに組み込まれ得る。本発明は、エネルギを使用するものではなく、温かい空気のように過剰な熱エネルギを上向きに輸送することはない。したがって本発明は、マットレスの側面または底面、またはユーザによって感知されない任意のセクションへ、過剰な熱エネルギを輸送するために用いられ得る。
【0026】
本発明は、製品内で熱エネルギが均一に分散しないという、多くが発泡体ベースである現代式のマットレスの特性を利用する。旧式のインナースプリングマットレスは、スプリングの周囲および内側に開放性の高い空気充填空間を有していた。熱エネルギは、マットレス内で自由に移動し得るので、体熱からの過剰な熱エネルギを、体熱による影響が少ない本体セクションへ分散させることにより、過剰な熱エネルギがユーザによって感知され得ない。しかし、現代式の発泡体ベースのマットレスは、この点に関して大きく異なる。ポリウレタン発泡体は一般に、多数の(一般にセルと呼ばれる)中空容積を有し、これらは、オープン(互いに連結された状態)またはクローズ(互いに連結されていない状態)のいずれかである。これらの中空容積は空気を含み、その空気は使用中に徐々に温かくなる。オープンセル発泡体の場合でも、この空気の動きは非常に制限され、やはり空気は、ユーザから離れる方向ではなくユーザの方向へ上向きに移動する。マットレス内での熱エネルギの輸送媒体として、空気の他にも、発泡材自体が熱エネルギの輸送媒体になり得る。しかし、発泡体は低い熱伝導率を有する。発泡材は、熱エネルギを良好に輸送することはできず、または全く輸送できない。より高い熱伝導率を有する材料を発泡体と配合することにより、その材料が熱エネルギを身体から離れる方向へ輸送し得るようにするという解決策がある。しかし、より高い熱伝導率を有する分子鎖は通常、熱エネルギの流れを止めるポリウレタンの分子鎖によって中断されるので、これらの配合材料は、熱エネルギを輸送することができない。よって、発泡体に配合された分子鎖は、過剰な熱エネルギをある程度吸収し得るが、輸送することはできない。マットレスは、最大10時間もの長期間使用されるので、熱エネルギは、吸収されるだけではなく、他の場所へ輸送される必要がある。
【0027】
これもまた、マットレスにおいてPCM(相変化材料)が効果的ではない理由である。PCMは、ある程度の熱エネルギ(すなわち9KJ/m)を吸収するが、通常夜間に放出される230kJには遠く及ばない。
【0028】
したがって、本発明は、中空容積内の空気から熱エネルギを吸収するのではなく、ユーザによって感知されない中空容積を有するセクションへ、または外気へ熱エネルギを効果的に輸送するものである。バンドが両寸法において可撓性を持つ形状であるという点で、本発明の形状因子はバンドである。本発明において導電層が用いられるが、バンドは一般に、材料を曲げるには幅が短すぎるため、(長さに沿って)一方向にしか曲げられない。水分または湿気がバンド間を容易に通過し得るように間に距離を有していくつかのバンドが用いられ得るので、バンドは、マットレス内のより大きなセクションにも作用し得る。
【0029】
バンドは、導電層を有することにより、高い熱伝導率を有する。このパラメータは、熱エネルギを実際に輸送するために十分ではないが、機能のために必要である。一般に、グラファイトなどの炭素成分を有する材料が好適であるが、たとえば限定はされないが銅またはアルミニウムなどの他の材料も用いられ得る。何らかの可撓性を実現するために、導電層の厚さは、0.5mm未満まで低減される必要があるが、一定の可撓性が実現されるのであれば、本発明において、より大きな厚さも許容される。
【0030】
バンド内のこの導電層は連続的でなくてはならず、すなわち、厚さ、組成、および幅が、バンドの全長にわたり最小値を超える必要がある。この条件は最も重要である。この原理に基づいて導電層を連結することによってのみ、以下の条件が満たされた場合、熱エネルギの一貫した流れが観測され得る。
【0031】
最後の条件は、バンドが、過剰な熱エネルギを有するセクション、すなわち身体または任意の暖房装置の真下における中空容積に接し、かつ、通常または低減された熱エネルギを有するセクションにおける途切れのない少なくとも1つの中空容積にも接するように、バンドを配置することである。これらのセクションは、どのマットレスにも存在し得る。
【0032】
低い熱エネルギのセクションは、マットレスの左右の側面、または足部分である。マットレスが、空気がマットレスの下側に到達することを可能にする表面に載置されている場合(すなわち、スレートフレーム、スプリングボックス)、この下側も用いられ得る。本発明を司る2つの原理が存在する。
1.両セクション間の熱エネルギ含有量の差が大きいほど、熱エネルギの流れは良好である。身体の下の熱エネルギはある程度固定されるので、より低い熱エネルギを有するセクションを慎重に探索することは有意義である。以下で説明するバリエーションのいくつかは、それらのセクションにおける熱エネルギレベルを低くすることに基づく。
2.マットレスの過剰な熱エネルギを有するセクションにおけるバンド部分に対し、マットレスのより低い熱エネルギ含有量を有するセクションにあるバンド部分が大きいほど、熱エネルギの流れは良好である。したがって本発明は、より低い熱エネルギを有するセクションにバンドの30%以上があることを推奨するが、特に温度差がさほど大きくない場合、50%が好適である。
【0033】
本発明の効果は、明確に測定され得る。図7は、使用される試験構成を表す。睡眠者は、連続的な導電層を有するバンドを有するパッドを含むマットレスに載置された。バンドは、マットレスの長さに沿って走行していた。3つの発泡体層が積み重ねられ、マットレスの最上部に発泡体層1、中心部に発泡体層2、最下部に発泡体層3があった。バンドは、層2と3との間に配置された。温度センサは、一方が身体のすぐ下にある発泡体層1の上の臀部領域、他方が層1と2との間の臀部領域である2つの位置の周囲に配置された。よってセンサは、身体と、1層下に位置するバンドとの間にあった。温度値は、睡眠者が上で寝ている状態で一晩中、毎分捕捉された。試験は、上述した試験構成、熱バンドを有さない試験構成、発泡体層1がゲル注入発泡体である(バンドを有する場合および有さない場合の)試験構成で行われた。図8図10の表は、常に2つの試験構成を互いに比較するデルタ温度値を示す。
【0034】
図8は、従来の発泡体を用いた構成と、層1がゲル注入発泡体で作られた構成とを比較する。上側の実線は、発泡体層1の上にあるセンサの平均デルタ値であり、下側の点線は、発泡体層1と2との間にあるセンサの平均デルタ値である。x軸(横)は分であり、y軸(縦)はケルビン単位のデルタ温度である。負の値は、従来の発泡材マットレスと比べて、ゲル注入発泡体が低い温度値を有することを示す。この結果は、ゲル注入発泡体が実際に、従来の発泡体と比べて低い温度値をもたらすことを論証するが、これは最初の1時間のみである。その時間を過ぎると、ゲルの熱容量は一杯になり、温度は再び上昇する。2時間後の温度値でも、従来の発泡体と比べてゲル発泡体の場合が高い。
【0035】
図9は、可撓性バンドを有する従来の発泡体を用いた構成と、従来の発泡体が可撓性バンドを含まない構成とを比較する。上側の実線は、発泡体層1の上にあるセンサの平均デルタ値であり、下側の点線は、発泡体層1と2との間にあるセンサの平均デルタ値である。x軸は分であり、y軸はケルビン単位のデルタ温度である。負の値は、バンドを有さない従来の発泡材マットレスと比べて、バンドを有する発泡体が低い温度値を有することを示す。初期の小さな温度増加を除き、夜間を通して、バンドを有さない場合よりも有する場合に値は大幅に低いことが分かる。通常の発泡材マットレスは温かくなるので、この効果は時間とともに更に増加する。この効果は、6時間後、-2°Kと顕著である。
【0036】
図10は、両方とも層1がゲル注入発泡体で作られており、一方の構成は可撓性バンドを含み、他方の構成は可撓性バンドを含まない2つの構成を比較する。上側の実線は、発泡体層1の上にあるセンサの平均デルタ値であり、下側の点線は、発泡体層1と2との間にあるセンサの平均デルタ値である。x軸は分であり、y軸はケルビン単位のデルタ温度である。負の値は、バンドおよびゲル注入発泡体を有する発泡体が、従来のマットレスよりも低い温度値を有することを示す。表3は、ゲル注入発泡体の即時的な効果および本発明において説明されたバンドの長期的な効果という両方の効果が併用され得ることを示す。オフセットは、バンドの温度低減効果がゲル注入発泡体によって低減される点である。
【0037】
バンド自体は小さいので、湿気がマットレスを通過することへの妨害にはならない。しかし、湿気がバンドを通過しなければならない場合、バンドは、規則的パターンの穴を十分に穿刺され得る。熱エネルギの流れはこれらの穴の周囲を通り、中断されることはない。穿刺は、本発明においてこちらも許容される穿孔と同様の高密度であってよい。穴は、可能な限り小さく保つことが推奨される。
【0038】
可撓性、かつ全体が導電材料で構成されるバンドは、一般に、穿刺の衝撃を受けやすく、その作用で亀裂が生じる。亀裂は、熱エネルギの流れの中断をもたらすため、特に避けなければならない。非常に薄い(<0.18mmの厚さの)PE層のラミネートは、バンドの亀裂を防止するために十分であることが分かっている。このラミネートは、当然、両面に付与されてもよいが、通常、必要ではない。また、材料が可撓性、すなわちポリウレタンであれば、安定性を加える他の材料が付与されてよい。
【0039】
過剰な熱エネルギおよび低い熱エネルギを有する2つのセクションを連結するバンドは、ゲル注入発泡体で充填されたマットレスのセクションを通過し、またはセクション内で途切れてよい。ゲル注入発泡体(「ゲル発泡体」)は、通常、ユーザが暑すぎると感じることを防ぐために用いられるので、同様の問題に答えるものである。ただし一般に、本明細書において説明される本発明は、ゲル注入発泡体よりも大幅に大きな熱エネルギの流れをもたらす。この組み合わせは、ゲル注入発泡体および本明細書で説明されるバンドの熱性能を足し合わせるものである。
【0040】
更なるバリエーションは、低い熱エネルギを有するセクションにおける熱エネルギレベルが可能な限り低くなければならないという所見に基づく。マットレスの特定の形状に基づいて、このセクションさえも身体からの熱エネルギを通す場合がある。よって、上記セクションと身体との間の任意の熱シールド(断熱層)は、このセクションにおける熱エネルギレベルを低くし、上記セクションと過剰な熱エネルギを有するセクションとの間の熱エネルギ差を大きくすることにより、バンド内の熱エネルギの流れを増加させる。
【0041】
バンドは、完全にマットレス内に配置され得るが、バンドが、過剰な熱エネルギのセクションから身体の外側、すなわちマットレスの側面または下側に沿って、または完全に外側を(すなわち、マットレスから下にあるスプリングボックス内へ)走行するように配置されてもよい。一般に、外側の熱エネルギレベルは、室温によって決定され、この温度は、過剰な熱エネルギのセクションの温度よりも大幅に低い。この熱エネルギレベルの差は、バンドを通る熱エネルギの優れた流れをもたらすために十分なほど大きいことが認められ得る。マットレスの外側20%またはマットレスの側面に沿ったバンドのセクションは、熱エネルギの流れを最適値に高めるために十分足りる。
【0042】
説明されるバンドは、0.1mm~0.5mmの厚さを有さなければならない。薄いバンドは、可撓性が高いが壊れやすく、厚いバンドはその反対である。また、熱エネルギを吸収および輸送するバンドの能力は、バンドの厚さに影響を及ぼされ得る。
【0043】
バンドは、幅が4cm~10cmである場合、マットレス内に良好に適合することが認められたが、より小さいまたは幅広の寸法も許容される。より幅広の寸法が用いられる場合、マットレス内の湿度の流れを低減しないように、穿刺または穿孔バリエーションが好適である。
【0044】
バンドの最も優れた熱効果は、一般に好まれる導電層としてグラファイトを用いた時に認められた。グラファイトが多様なバリエーションで生じる時、良好な結果は、99%を超える炭素含有量および/または1%未満の灰含有量および/または1g/qcmを超える密度および/または1,800ppm未満の硫黄含有量を有するグラファイトを用いて実現された。
【0045】
また、多様な種類の利用可能なグラファイトが存在する。高配向パイログラファイト(HOCG)と呼ばれる種類は、特殊分子構造に基づいて、熱エネルギを輸送する能力が非常に高い。高配向パイログラファイト(HOCG)は、非常に純粋な合成グラファイトの秩序系である。これは、小さなモザイク拡がり角を特徴とし、すなわち、個々のグラファイト結晶子が互いによく揃っている。最適なHOPGサンプルは、1度未満のモザイク拡がりを有する。このグラファイト種は、熱エネルギの輸送において非常に良好な結果をもたらすことが分かっている。
【0046】
本発明の他のバージョンにおいて、導電層は、グラフェンで作られる。この材料は、1つの原子が各頂点を成す2次元原子スケール六角格子形状の炭素の同素体を有する。これは、グラファイト、木炭、カーボンナノチューブ、およびフラーレンを含む他の同素体の基本構成要素である。またこれは、板状多環芳香族炭化水素類の最終的な例である、無限の大きな芳香族分子とも考えられ得る。グラフェンは、1,000W/mKを超える熱伝導率を有するので、同じ熱性能を有する通常のグラファイトの導電層を有する可撓性バンドよりも大幅に小さくなり得る。
実施形態
図1は、本発明の一般概念を示す。いくつかの中空容積12および14を有するパッド10が示される。通常、そのようなパッド10は、部分的にユーザに占有され、パッドにおいて熱勾配が存在し得る。そのような状況下で、いくつかの中空容積は過剰な熱エネルギを含み12、いくつかは含まない14ということが起こり得る。示された実施形態において、連続的な導電層22を有する可撓性バンド20は、熱勾配が平滑化され得るように少なくとも2つの中空容積へ伸長するように延在している。バンド20は、それぞれ1つの中空容積内で途切れるように示されるが、留意すべき点として、バンドは、その伸長が少なくとも、中空容積12、14のいくつかまたは少なくとも2つが互いに連結され、1つの単一中空容積の範囲を越える、または好適には1つの中空容積から他の中空容積への熱エネルギ伝達を可能にするものである限り、それらを越えて伸長してもよい。導電性バンド20はこのように提供され、各々がパッドの少なくとも1つの中空容積を包含するセクションを有するパッドを改善することができるように構成される。実際に、バンド20は、過剰な熱エネルギが生じると、中空容積を有する第1のセクションから、過剰な熱エネルギを含まない、パッド内の中空容積を有する少なくとも1つの第2のセクションへ熱エネルギを伝達するために、可撓性かつ細長い。バンドは、少なくとも1つの第1のセクションから他の異なる第2のセクションへ伸長する規定のエリアを有する連続的な導電層を有するので、パッドにおける熱勾配は平滑化され、そのようなパッドを使用するユーザの快適性は、パッドの他の快適特徴を実質的に損なうことなく著しく改善され得る。主な利点の1つは、バンドが、たとえば電源、流体駆動デバイスなどの任意の追加の要素を必要としない受動熱素子である点である。バンドは好適には、第1のセクション内の少なくとも1つの中空容積またはその向こう側から、他のセクション内の他の中空容積またはその向こう側へ伸長するので、熱エネルギは、それぞれのセクション間で、かつ好適にはそれぞれの中空容積間でも容易に伝達され得る。留意すべき点として、実際には、セクションは、多数の中空容積を含む。更に留意すべき点として、本発明は、1または複数の中空容積がどちらのセクションにも伸長し得る場合を除外しない。
【0047】
図2は、本発明の可能な構成を示す。マットレス30は、パッド10を含む。パッド10において、たとえば睡眠者の臀部が位置するセクションなど、過剰な熱エネルギのセクション32がある。したがって、このセクションは、同じく過剰な熱エネルギ12を含むいくつかの中空容積12を有する。マットレス30およびそれに伴うパッド10の縁部は、睡眠者の身体および熱エネルギの放射力による影響を受けない。したがって、これらの縁部は、過剰な熱エネルギを有さないセクション34であり、過剰な熱エネルギを有さない1または複数の中空容積を有する。連続的な導電層22を有する2つのバンド20は、過剰な熱エネルギを有するセクション32において互いに交差する位置にある。両方のバンド20は、縁部から縁部へ走行し、過剰な熱エネルギを有する第1の中空容積12を含む少なくとも1つのセクションを、過剰な熱エネルギを有さない他の中空容積14を少なくとも含む第2のセクションと少なくとも連結する。そのような構成を用いることにより、交差するバンドが使用されることによる改善された熱分散が可能である。過剰な熱エネルギを有する中空容積12を有するセクション32内の二重層は、過剰な熱エネルギを吸収するための2つのバンド20、およびこのエネルギを輸送するための4つの異なる方向を有する。最も低い熱エネルギ負荷を有する中空容積(14)を有するセクション(34)は、一般に、熱効率に良い影響をもたらすこのような構成において最も多い熱エネルギを受け取る。
【0048】
図3は、本発明のパッドの他の実施形態として、発泡体で作られた上層36と、マットレス30の下側セクションを充填するパッド10とを有するマットレス30を示す。過剰な熱エネルギを有する中空容積12を有する、過剰な熱エネルギを有するセクション32は、マットレス30の中央にある可能性が高い。連続的な導電層22を有するバンド20は、パッド10を通ってマットレス30の外側へ走行し、側面に沿って連続する。体熱による影響を受けないこの側面は、過剰な熱エネルギを有さない中空容積14を有するセクション、すなわち、過剰な熱エネルギを有さない中空容積14を有する、過剰な熱エネルギを有さないセクション34である可能性が高い。バンド20は、両方のセクション32、34を連結する。
【0049】
図4は、連続的な導電層22を有するバンド20が、導電層22を安定させるために、当該バンドの全長および全幅に沿ってPE層24にラミネートされている様を示す。そのようなバンドは、上述の実施形態において実装され得る。
【0050】
図5は、ボックススプリング基部42およびパッド10を有するマットレス30で作られたベッド40全体を示す。両方の部材30、42は、一体に固定されることを前提とする。過剰な熱エネルギを有する中空容積12を含む、過剰な熱エネルギを有するセクション32は、マットレス30の中央に位置する。導電層22を有する2つのバンド20は、マットレス30のパッド10を横断して走行し、基部42の内側セクションへ連続する。身体から遠くにあるこの基部は、過剰な熱エネルギを有さない少なくとも1つの中空容積14を有する、過剰な熱エネルギを有さない少なくとも1つのセクション34を有する可能性が高い。正しく配置することにより、バンド20は、両方のセクション32、34を通って走行し、それらを互いに連結する。
【0051】
図6は、ゲル注入発泡体で作られたセクション38がパッド10の一部である様を示す。連続的な導電層22を有するバンド20は、過剰な熱エネルギを有する中空容積12を有する、過剰な熱エネルギを有するセクション32を通り、過剰な熱エネルギを有さない中空容積14を有する、過剰な熱エネルギを有さないセクション34である、ゲル注入発泡体で作られたセクション38を通って走行する。
【0052】
図7は、上述したような本発明の利益を論証するための以下の更なる説明を詳述するために用いられる試験状況を示す。
【0053】
図8は、ゲル注入発泡体で一部が構成された発泡体パッドと、ゲル注入発泡体を用いない発泡体パッドとを比較して、人体が載置されている夜間の温度値における差を示す。
【0054】
図9は、導電バンドを用いる発泡体パッドと、導電バンドを用いない発泡体パッドとを比較して、人体が載置されている夜間の温度値における差を示す。
【0055】
図10は、導電バンドを用いる、ゲル注入発泡体で一部が構成された発泡体パッドと、導電バンドを用いない、ゲル注入発泡体で一部が構成された発泡体パッドとを比較して、人体が載置されている夜間の温度値における差を示す。
付記
以下は、出願当初の請求項を記載する。
(請求項1)発泡体パッド(10)であって、各々が前記パッド(10)の少なくとも1つの中空容積(12、14)を包含するセクション(32、34)を有し、過剰な熱エネルギの発生時、前記セクションの第1のセクション(32)における少なくとも1つの中空容積(12)から、過剰な熱エネルギを含まない前記パッド(10)内の第2のセクション(34)における少なくとも1つの中空容積(14)へ熱エネルギを伝達するための可撓性細長バンド(20)を含み、前記バンド(20)は、少なくとも1つの第1のセクション(32)から他の異なる第2のセクション(34)へ伸長する規定のエリアを伴う連続的な導電層(22)を有する、発泡体パッド(10)。
(請求項2)前記バンド(20)は、前記規定のエリアの30%以上が前記第1のセクション(32)の外側に位置するように配置される、請求項1に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項3)前記第1のセクション(32)は、前記第2のセクション(34)よりも温かい傾向があり、および/または人体または人体の一部を支持するために用いられる傾向があり、前記第2のセクション(34)はそうではない、請求項1および2のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項4)前記バンド(20)は、幅4cm以上および/または長さ25cm以上の寸法を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項5)前記セクション(32、34)は、少なくとも、0.08mまたは表面全体の10%に対応する前記パッド(10)の表面を覆うような寸法である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項6)前記バンド(20)は、穿刺および/または穿孔されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項7)前記バンド(20)は、PE、PU、または他の安定化材料(24)で片面または両面をラミネートされる、請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項8)ゲル注入発泡体を有する少なくとも1つのセクション(38)を備え、前記バンド(20)は、前記少なくとも1つのゲル注入発泡体を有するセクション(38)を通って伸長する、請求項1~7のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項9)少なくとも1つの断熱層を備え、好適には、前記断熱層は、前記第2のセクションが外部熱、特に体熱から遮蔽されるように、前記第2のセクション(34)に配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項10)前記バンド(20)は、前記規定のエリアの20%以上が露出し、または前記パッドの外側にあるように配置される、請求項1~9のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項11)前記バンド(20)は、厚さ0.1mm~0.5mmであり、および/または幅4~10cmを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項12)前記導電層(22)は、グラファイトで作られ、好適には、前記グラファイトは、99%を超える炭素含有量を有し、更に好適には、前記バンドは、1%未満の灰含有量を有し、または高配向パイログラファイトである、請求項1~11のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項13)前記バンド(20)は、1g/cmを超える密度を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項14)前記導電層(22)は、1800ppm未満の硫黄含有量を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項15)前記導電層は、グラフェンで作られる、請求項1~13のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
(請求項16)前記パッド(10)はマットレスである、請求項1~15のいずれか1項に記載の発泡体パッド(10)。
【符号の説明】
【0056】
10 パッド
12 (過剰な熱エネルギを有する)第1の中空容積
14 (過剰な熱エネルギを有さない)第2の中空容積
20 可撓性バンド
22 可撓性バンドにおける導電層
24 可撓性バンドへのラミネーション
30 マットレス
32 過剰な熱エネルギを有するセクション
34 過剰な熱エネルギを有さないセクション
36 マットレスの上発泡体層
38 ゲル注入発泡体を有するマットレスのセクション
40 ベッド
42 ベッドのボックススプリング基部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10