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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 131/02 20060101AFI20220927BHJP
   C09J 157/00 20060101ALI20220927BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C09J131/02
C09J157/00
C09J11/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020572875
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019065487
(87)【国際公開番号】W WO2020001989
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】18180439.4
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
【住所又は居所原語表記】Velperweg 76, 6824 BM Arnhem, the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】レストルプ,ペル アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ラグネモ,ハンズ
(72)【発明者】
【氏名】グリーンウッド,ピーター ハリ ジョアン
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-161910(JP,A)
【文献】特開平08-143822(JP,A)
【文献】特表2015-527430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性コロイダルシリカとポリビニルアルコールを含む保護コロイドとを含む水性相を、開始剤の存在下で、カルボン酸アルケニル、アクリレート、アクリロニトリルおよびスチレンから選択される1種または複数のモノマーを含む有機相と接触させる、接着剤組成物を調製する方法であって、
前記1種または複数のモノマーの重合が起こってポリマー分散液を形成するように条件が維持され、
(i)前記ポリマー分散液が、ポリマー粒子の表面上に前記ポリビニルアルコールを含む保護コロイドを有するポリマー粒子を含み、
(ii)前記変性コロイダルシリカが、少なくとも1つの表面結合親水性オルガノシラン部分を有するコロイダルシリカ粒子を含み、および/または少なくとも1種の追加の元素をコロイダルシリカ粒子の表面上に有するコロイダルシリカ粒子を含み、前記元素が、+3もしくは+4の酸化状態を形式的にとることができ、
前記親水性オルガノシラン部分が、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、エステル、エポキシ、アシルオキシ、ケトン、アルデヒド、(メタ)アクリロキシおよびアミノから選択される少なくとも1つの基を含み、
前記追加の元素が、Ge、Sn、B、Al、Ga、In、Cr、Mn、Fe、Co、ZrおよびCeから選択され、
(iii)前記開始剤が、水に少なくとも部分的に可溶性である、
方法。
【請求項2】
少なくとも1種のモノマーが、式1:
【化1】
[式中、
各出現におけるRおよびRは、H、ハロゲン化物およびC1-20アルキルから独立して選択され、各C1-20アルキルは、ヒドロキシル、ハロゲン化物、酸素(すなわち、C=O部分を形成する)、-ORおよび-N(Rから選択される、1つまたは複数の基で任意選択で置換してもよく、
各出現におけるRは、Hおよび任意選択で置換されているC1-6アルキルから独立して選択され、ここで、前記任意選択の置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物、アミノ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノおよびC1-6ジアルキルアミノであり、
-(CZ-基において、各Zは、H、ハロゲン化物、C1-3アルキルおよびC1-3ハロアルキルから独立して選択され、fは、0~4の範囲の整数であり、
Xは、
【化2】
から選択され、
各出現におけるRは、ヒドロキシル、ハロゲン化物、-N(R、ニトリル、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C1-10アルコキシおよびC1-10ハロアルコキシから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換されている、C5-8アリールおよびC5-8ヘテロアリール基から独立して選択され、前記ヘテロアリール基は、環中に、O、SおよびNからそれぞれ独立して選択される、1つまたは複数のヘテロ原子を含み、
各出現におけるRは、H、任意選択で置換されているC1-20アルキルおよび任意選択で置換されているC1-20アルケニルから独立して選択され、前記任意選択の置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物および-N(Rの1つまたは複数から選択される]
によるモノマーである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種のモノマーが、任意選択で、請求項で定義される式1[式中、Xは、
【化3】
である]である、カルボン酸アルケニルである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
以下の条件:
(i)fが0である、
(ii)各RおよびRが、Hおよび非置換のC1-2アルキルから選択される、
(iii)Rが、ハロゲン化物では置換されない、任意選択で置換されているC1-12アルキルである
の1つまたは複数が該当する、請求項またはに記載の方法。
【請求項5】
1種または複数のコモノマーが存在し、以下の条件:
(i)少なくとも1種のコモノマーが、請求項で定義される式1である、
(ii)少なくとも1種のコモノマーが、任意選択でハロゲン化物で置換されているC1-8モノオレフィンである;
(iii)請求項で定義される式1において、XがRであり、少なくとも1種のコモノマーが、式(RC=CR-CR=C(Rである
の1つまたは複数が該当する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保護コロイドが、70~100モル%の範囲の加水分解度を有する、鹸化された、または部分的に鹸化されたポリビニルアルコールである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記オルガノシラン部分が、エポキシ基または少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記開始剤が、無機過酸化物、有機過酸化物、ペルオキシジカーボネートおよびアゾ化合物から選択され、水に少なくとも部分的に可溶性である、1種または複数の化合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
以下の条件:
(i)前記接着剤組成物のシリカ含有量が、0.01~15wt%の範囲にある、
(ii)前記接着剤組成物におけるポリマーの量が、20~80wt%の範囲にある、
(iii)前記接着剤組成物中のポリマー粒子の体積基準メジアン粒径が、1.5μm未満である、
(iv)前記接着剤組成物の20℃での粘度が、1000~40000mPasの範囲にある
の1つまたは複数が該当する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水性ポリマー分散液および変性コロイダルシリカ粒子を含む接着剤組成物であって、
(i)前記ポリマー分散液が、ポリマー粒子の表面上にポリビニルアルコールを含む保護コロイドを有するポリマー粒子を含み、前記ポリマー粒子が、カルボン酸アルケニル、アクリレート、アクリロニトリルおよびスチレンから選択される1種または複数のモノマーの重合から形成され、
(ii)前記変性コロイダルシリカが、少なくとも1つの表面結合親水性オルガノシラン部分を有するコロイダルシリカ粒子を含み、および/または、少なくとも1種の追加の元素をコロイダルシリカ粒子の表面上に有するコロイダルシリカ粒子を含み、前記元素が、+3もしくは+4の酸化状態を形式的にとることができ、
前記親水性オルガノシラン部分が、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、エステル、エポキシ、アシルオキシ、ケトン、アルデヒド、(メタ)アクリロキシおよびアミノから選択される少なくとも1つの基を含み、
前記追加の元素が、Ge、Sn、B、Al、Ga、In、Cr、Mn、Fe、Co、ZrおよびCeから選択され、
(iii)前記コロイダルシリカ粒子の少なくとも一部が、保護コロイドと化学的に相互作用する
接着剤組成物。
【請求項11】
少なくとも1種のモノマーが、式1:
【化4】
[式中、
各出現におけるRおよびRは、H、ハロゲン化物およびC1-20アルキルから独立して選択され、各C1-20アルキルは、ヒドロキシル、ハロゲン化物、酸素(すなわち、C=O部分を形成する)、-ORおよび-N(Rから選択される、1つまたは複数の基で任意選択で置換してもよく、
各出現におけるRは、Hおよび任意選択で置換されているC1-6アルキルから独立して選択され、ここで、前記任意選択の置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物、アミノ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノおよびC1-6ジアルキルアミノであり、
-(CZ-基において、各Zは、H、ハロゲン化物、C1-3アルキルおよびC1-3ハロアルキルから独立して選択され、fは、0~4の範囲の整数であり、
Xは、
【化5】
から選択され、
各出現におけるRは、ヒドロキシル、ハロゲン化物、-N(R、ニトリル、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C1-10アルコキシおよびC1-10ハロアルコキシから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換されている、C5-8アリールおよびC5-8ヘテロアリール基から独立して選択され、前記ヘテロアリール基は、環中に、O、SおよびNからそれぞれ独立して選択される、1つまたは複数のヘテロ原子を含み、
各出現におけるRは、H、任意選択で置換されているC1-20アルキルおよび任意選択で置換されているC1-20アルケニルから独立して選択され、前記任意選択の置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物および-N(Rの1つまたは複数から選択される]
によるモノマーである、請求項10に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
少なくとも1種のモノマーが、任意選択で、請求項11で定義される式1[式中、Xは、
【化6】
である]である、カルボン酸アルケニルである、請求項11に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
以下の条件:
(i)fが0である、
(ii)各RおよびRが、Hおよび非置換のC1-2アルキルから選択される、
(iii)Rが、ハロゲン化物では置換されない、任意選択で置換されているC1-12アルキルである
の1つまたは複数が該当する、請求項11または12に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
1種または複数のコモノマーが存在し、以下の条件:
(i)少なくとも1種のコモノマーが、請求項11で定義される式1である、
(ii)少なくとも1種のコモノマーが、任意選択でハロゲン化物で置換されているC1-8モノオレフィンである;
(iii)請求項11で定義される式1において、XがRであり、少なくとも1種のコモノマーが、式(RC=CR-CR=C(Rである
の1つまたは複数が該当する、請求項1113のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記保護コロイドが、70~100モル%の範囲の加水分解度を有する、鹸化された、または部分的に鹸化されたポリビニルアルコールである、請求項1014のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
前記オルガノシラン部分が、エポキシ基または少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、請求項1015のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
以下の条件:
(i)前記接着剤組成物のシリカ含有量が、0.01~15wt%の範囲にある、
(ii)前記接着剤組成物におけるポリマーの量が、20~80wt%の範囲にある、
(iii)前記接着剤組成物中のポリマー粒子の体積基準メジアン粒径が、1.5μm未満である、
(iv)前記接着剤組成物の20℃での粘度が、1000~40000mPasの範囲にある
の1つまたは複数が該当する、請求項1016のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、特に分散ポリマーを含む水性接着剤組成物に関する。本発明はまた、接着剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤組成物は、ラテックス、すなわちポリマー粒子の水性乳濁液または水性分散液をベースとすることが多い。例としては、コポリマーを含めて、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレートおよびスチレン-ブタジエンゴムをベースとするものが挙げられる。しかしながら、広く使用されたが、達成できる改善がまだある。例えば、乾燥した接着剤にとって、強く、経時的に安定であり、水に耐性を示すことが重要である。接着性を改善するために配合物へ任意の修正をする場合、貯蔵安定性を確実にし、貯蔵寿命が影響されないことも重要である。
【0003】
ナノコンポジット粒子は、ラテックス接着剤の特性を改善しようとして使用されてきた、1つのタイプの添加物である。例えば、ポリ酢酸ビニルラテックスの特性を修正するために、無機添0加物、例えば、シリカがポリ酢酸ビニルラテックスに添加される、有機-無機ハイブリッドナノコンポジット材料が報告されている。Bonnefond et al.; Macromol. React. Eng. 2013, 7, 527-537は、ポリビニルアルコール安定化ポリ酢酸ビニルにおける、シリカ、およびシリコーン-変性シリカまたはビニル-変性シリカの使用を記述している。IN4396/CHE/2011は、ポリビニルアルコール安定化ポリ酢酸ビニル接着剤配合物における、ナノ-コロイダルシリカの使用を記述している。国際公開第2014/005753号パンフレットは、接着剤を含む様々な組成物における、無機ナノ粒子および有機ポリマーの使用を記述している。米国特許出願公開第2007/0292683号明細書は、ポリ酢酸ビニルおよび1~400nmの平均径を有するシリカ粒子を含む水性ポリマー分散液、ならびに接着剤およびコーティングとしてのそれらの使用に関係している。
【0004】
これらの文献は、すべて、ナノコンポジット材料を合成する異なる方法に言及しており、例えば、いくつかの場合、ラテックスが形成される前、すなわち、モノマーの重合の前に無機材料が添加され、乳化されたポリマー粒子を形成する。いくつかの方法では、重合が始まる前に無機材料を有機モノマー含有相に添加することができ(例えば、Bonnefond他および国際公開第2014/005753号パンフレット)、一方他の方法(例えば、IN4396/CHE/2011)では、それは水性相に添加される。さらなる方法(例えば米国特許出願公開第2007/0292683号明細書)では、無機材料は、単に合成後のラテックスに添加またはブレンドされる。
【0005】
改善された接着剤組成物およびそれらの調製方法の必要性が残っている。
【0006】
以下の議論では、ポリ酢酸ビニルは時にPVAcと呼ばれ、ポリビニルアルコールは時にPVOHと呼ばれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、変性コロイダルシリカを含む水性相を、開始剤の存在下で、1種または複数のモノマーを含む有機相と混合する、接着剤組成物を調製する方法であって、1種または複数のモノマーの重合が起こって水性ポリマー分散液を形成するように条件が維持され、
(i)水性ポリマー分散液が、ポリマー粒子の表面上に保護コロイドを有するポリマー粒子を含み、
(ii)変性コロイダルシリカが、少なくとも1つの表面結合親水性オルガノシラン部分を有するコロイダルシリカ粒子を含み、および/または少なくとも1種の追加の元素をコロイダルシリカ粒子の表面上に有するコロイダルシリカ粒子を含み、前記元素が+3もしくは+4の酸化状態を形式的にとることができ、
(iii)開始剤が、水に少なくとも部分的に可溶性である、
方法を対象とする。
【0008】
本発明はまた、水性ポリマー分散液および変性コロイダルシリカ粒子を含む接着剤組成物であって、
(i)水性ポリマー分散液が、ポリマー粒子の表面上に保護コロイドを有するポリマー粒子を含み、
(ii)変性コロイダルシリカが、少なくとも1つの表面結合親水性オルガノシラン部分を有するコロイダルシリカ粒子を含み、および/または
少なくとも1種の追加の元素をコロイダルシリカ粒子の表面上に有するコロイダルシリカ粒子を含み、前記元素が、+3もしくは+4の酸化状態を形式的にとることができ、
(iii)コロイダルシリカ粒子の少なくとも一部は、保護コロイドと化学的に相互作用する、
接着剤組成物を対象とする。
【0009】
こうした接着剤組成物は、上述の方法によって調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】乾燥した接着剤組成物の剪断強度対加圧時間のプロットを示すグラフである。表面は80℃の温度で一緒に加圧した。
図2】乾燥した接着剤組成物の剪断強度対加圧時間のプロットを示すグラフである。表面は120℃の温度で一緒に加圧した。
図3】乾燥した接着剤組成物の剪断強度を比較する棒グラフである。表面は110℃で120秒間一緒に加圧した。
図4】乾燥した接着剤組成物の、水中浸漬後だが再乾燥前の剪断強度を比較する棒グラフである。表面は、80℃で300秒および480秒間一緒に加圧した。
図5】乾燥した接着剤組成物の、水中浸漬後だが再乾燥前の剪断強度を比較する棒グラフである。表面は、110℃で30秒および120秒間一緒に加圧した。
図6図5の棒グラフに対応するが、追加試料を示す棒グラフである。
図7】乾燥した接着剤組成物の、水中浸漬後で再乾燥後の剪断強度を比較する棒グラフである。表面は、80℃で480秒間一緒に加圧した。
図8】乾燥した接着剤組成物の、水中浸漬後で再乾燥後の剪断強度を比較する棒グラフである。表面は、110℃で120秒間一緒に加圧した。
図9図8の棒グラフに対応するが、追加試料を示す棒グラフである。
図10】未乾燥の接着剤組成物の粘度を、調製直後および密閉容器に室温で2か月貯蔵後の両方で比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ラテックス系(水性ポリマー分散液)接着剤組成物、および得られた生成物が改善された特性を有することができるそれらの製造方法に関する。
【0012】
この方法は、水性ポリマー分散液(またはラテックス)を結果として生じるような条件下での、モノマーまたはモノマー混合物の重合を含む。ポリマー分散液は、保護コロイドにより安定化される。
【0013】
実施形態では、反応混合物は、水性連続相中におけるモノマー含有有機相の乳濁液を、最初に含むことができる。次に、モノマーは開始剤の存在下で重合され、これが連続的水性相中にポリマーの分散液を形成する。水性相は、水混和性成分、例えば、開始剤、コロイダルシリカ、および保護コロイド安定剤を含む。有機溶媒(例えば、C1-4アルコール、ケトン、カルボン酸またはグリコール)はこの水性相中に存在し得るが、それらは、有機相の乳濁液または分散液の形成を阻害する濃度未満の濃度に維持される。このため、存在する場合、それらは水性相の10wt%以下、典型的には5wt%以下を構成する。
【0014】
[モノマー]
本発明では、モノマー、または少なくとも1種のモノマーは、好ましくは、カルボン酸アルケニルエステル系モノマー、アクリレート系モノマー、アクリロニトリル系モノマーまたはスチレン系モノマーである。モノマーの混合物が使用される場合、1種もしくは複数のさらなるカルボン酸アルケニルエステル系、アクリレート系、アクリロニトリル系またはスチレン系モノマー、および/または1種もしくは複数のジエンモノマーも存在することができる。スチレン系モノマーが使用される場合、ジエンコモノマーも典型的には使用される。
【0015】
典型的には、モノマー、または少なくとも1種のモノマーは、カルボン酸アルケニルエステル系モノマーである。
【0016】
実施形態では、使用に好適なモノマーは、式1:
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、各出現におけるRおよびRは、H、ハロゲン化物およびC1-20アルキルから独立して選択される]
による化学式を有することができる。各C1-20アルキルは、ヒドロキシル、ハロゲン化物、酸素(すなわち、C=O部分を形成する)、-ORおよび-N(Rから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換され得る。実施形態では、RおよびRは両方ともハロゲン化物ではあり得ない。実施形態では、C1-20アルキルは、C1-6アルキル、例えば、C1-4アルキルまたはC1-2アルキルである。典型的には、少なくとも1つのRまたはR基は、Hである。
【0019】
各出現におけるRは、Hおよび任意選択で置換されているC1-6アルキルから独立して選択され、任意選択の置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物、アミノ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノおよびC1-6ジアルキルアミノである。各C1-6基は、実施形態では、C1-4基またはC1-2基であり得る。
【0020】
-[CZ-基において、各Zは、H、ハロゲン化物、C1-3アルキルおよびC1-3ハロアルキルから独立して選択され;fは、0~4、例えば、0~2または0~1の範囲の整数である。実施形態では、C1-3アルキルはメチルであり得、C1-3ハロアルキルはハロメチルであり得る。実施形態では、ハロゲン化物またはハロアルキル置換基は存在しない。実施形態では、fは0である、すなわち、C-R基とX基の間に直接的結合が存在する。
【0021】
Xは、
【0022】
【化2】
【0023】
から選択される。
【0024】
各出現におけるRは、C5-8アリールおよびC5-8ヘテロアリール基から独立して選択される。アリールまたはヘテロアリール基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物、-N(R、ニトリル、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C1-10アルコキシおよびC1-10ハロアルコキシから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換され得る。ヘテロアリール基は、環中に、O、SおよびNからそれぞれ独立して選択される、1つまたは複数のヘテロ原子を含む。実施形態では、アリールまたはヘテロアリール基は、C基である。実施形態では、ヘテロ原子はNである。実施形態では、アリール基は、任意選択で置換されているベンゼン環である。実施形態では、アリールまたはヘテロアリール基は、ハロゲン化物またはハロゲン化物含有置換基を含有しない。実施形態では、アリール基は非置換である。
【0025】
XがRである場合、典型的には有機相中に追加のモノマー、例えば、ジエン系モノマーも存在する。
【0026】
各出現におけるRは、H、任意選択で置換されているC1-20アルキルおよび任意選択で置換されているC1-20アルケニルから独立して選択される。各C1-20アルキルまたはC1-20アルケニル基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物および-N(Rから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換され得る。実施形態では、C1-20アルキルまたはアルケニル基は、C1-6アルキルまたはアルケニル基、例えば、C1-4アルキルまたはアルケニル基であり得る。
【0027】
実施形態では、Xは、
【0028】
【化3】
【0029】
から選択される。
【0030】
実施形態では、こうしたモノマーにおいて、[CZにおけるfは0である。実施形態では、RはHおよび任意選択で置換されているC1-6アルキルから選択され、さらなる実施形態では、C1-6アルキルは非置換である。
【0031】
実施形態では、式1はハロゲン化物フリーである、すなわち、ハロゲン化物部分を含有する置換基または任意選択の置換基は存在しない。
【0032】
実施形態では、モノマー、または少なくとも1種のモノマーは、Xが、
【0033】
【化4】
【0034】
である式を有する。
【0035】
上記式1、または以下に定義される式のいずれにおいても、アルキル基またはアルケニル基(置換または非置換にかかわらず)はいずれも、直鎖、分岐または環状であり得る。任意のハロゲン化物部分は、独立してかつ各出現において、F、Cl、BrおよびI、典型的にはFおよびClから選択され得る。
【0036】
[カルボン酸アルケニル]
実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、カルボン酸アルケニルエステル系モノマーである。こうしたモノマーは、実施形態では、4~20個の炭素原子を含むことができる。具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、バーサチック酸ビニル(ここで、バーサテート基はC4-12分岐アルキル基を含む)、ステアリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニル-2-エチルヘキサノエート(vinyl-2-ethyl hexanoate)、1-メチルビニルアセテート(1-methyl vinyl acetate)、ならびに安息香酸のビニルエステルおよびp-tert-ブチル安息香酸が挙げられる。実施形態では、酢酸ビニル、ラウリン酸ビニルおよび/またはバーサチック酸ビニルは、ポリマー分散液を生成するために使用される。さらなる実施形態では、モノマー、または少なくとも1種のモノマーは、酢酸ビニルである。
【0037】
実施形態では、こうしたモノマーは、Xが、
【0038】
【化5】
【0039】
である上記式1であり得、さらなる実施形態では、それらは4~20個の炭素原子を含むことができる。Rは、任意選択で置換されているC1-12アルキルであり得る。実施形態では、[CZにおけるfは0である。実施形態では、置換基または任意選択の置換基の中にハロゲン化物部分は存在しない。実施形態では、すべてのRおよびRは、水素および非置換のC1-2アルキルから独立して選択される。
【0040】
[アクリレート]
実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、アクリレート系モノマーであり、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸無水物、アルキル-アクリル酸、アルキル-アクリル酸エステル、およびアルキル-アクリル酸無水物から選択される。こうしたモノマーは、合計で3~20個、例えば、3~13個の炭素原子を含むことができる。例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル;メタクリル酸プロピレングリコール、モノアクリル酸ブタンジオール、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルおよびメタクリル酸tert-ブチルアミノエチルが挙げられる。
【0041】
実施形態では、こうしたモノマーは式1[式中、Xは、
【0042】
【化6】
【0043】
]のモノマーであり、実施形態では、モノマーは、3~20個の炭素原子を含む。
【0044】
他の実施形態では、Xは、
【0045】
【化7】
【0046】
であり、実施形態では、モノマーは、4~20個の炭素原子を含むことができる。実施形態では、[CZにおけるfは0である。
【0047】
実施形態では、置換基または任意選択の置換基の中にハロゲン化物部分は存在しない。さらなる実施形態では、すべてのRおよびRは、Hおよび任意選択で置換されているC1-10アルキルから独立して選択され、Rは、任意選択で置換されているC1-10アルキルおよびC1-10アルケニルから選択される。実施形態では、すべてのRおよびRは、Hおよび非置換のC1-6アルキルから独立して選択され、実施形態では、すべてのRはHであり、RはHおよび非置換のC1-2アルキルから選択される。
【0048】
[アクリロニトリル]
実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、アクリロニトリル系モノマーであり、例えば、アクリロニトリル、アルキルアクリロニトリルおよびハロアクリロニトリルから選択される。アクリロニトリル系モノマーは、合計で3~15個の炭素原子、例えば3~8個の炭素原子を含むことができる。例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-クロロアクリロニトリルが挙げられる。
【0049】
実施形態では、こうしたモノマーは、式1[式中、Xは-CNである]であり得、それらは、任意選択で3~8個の炭素原子を有してもよい。実施形態では、[CZにおけるfは0である。実施形態では、Rはハロゲン化物ではなく、さらなる実施形態では、各Rは、Hおよび任意選択で置換されているC1-10アルキルから選択される。実施形態では、Rは、H、ハロゲン化物および任意選択で置換されているC1-10アルキルから選択される。実施形態では、各Rは、Hおよび任意選択で置換されているC1-4アルキルから選択され、Rは、H、Clおよび任意選択で置換されているC1-4アルキルから選択される。さらなる実施形態では、これらのC1-4基は非置換である。
【0050】
[スチレンおよびジエン]
実施形態では、少なくとも1種のモノマーは、スチレン系モノマーであり、例えば、スチレンおよび置換されているスチレンから選択され、典型的には8~12個の範囲の炭素原子を含む。
【0051】
実施形態では、スチレン系モノマーは式1[式中、XはRである]である。実施形態では、RおよびRは、H、ハロゲン化物および任意選択で置換されているC1-6アルキルから選択される。実施形態では、Rは任意選択で置換されているベンゼン環である。実施形態では、[CZにおけるfは0または1であり、さらなる実施形態では、それは0である。
【0052】
スチレン系モノマーは、典型的にはジエンモノマーと共重合する、すなわち、モノマーは、2つ以上の二重結合を含み、モノマーは、実施形態では、4~15個の炭素原子、例えば4~10個、または4~6個の炭素原子を含むことができる。例としては、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが挙げられる。
【0053】
ジエン系モノマーは、式2:
【0054】
【化8】
【0055】
のモノマーから選択され得る。
【0056】
実施形態では、式2は4~15個の炭素原子を含むことができる。実施形態では、2つ以下のR置換基がハロゲン化物であり、さらなる実施形態では、R置換基はハロゲン化物ではない、またはいかなるハロゲン化物も含有しない。まださらなる実施形態では、少なくとも4つのR置換基はHであり、他の実施形態では、すべてのRはHである。まださらなる実施形態では、すべてのRは、HならびにC1-10アルキルおよびC1-10アルケニルから選択され、例えば、すべてのRは、HおよびC1-5アルキルから選択され得る。実施形態では、ジエン系モノマーはハロゲン化物フリーである、すなわち、置換基または任意選択の置換基は、いかなるハロゲン化物部分も含有しない。
【0057】
[他のコモノマー]
少なくとも1種のモノマーは、式1であり得る。モノマーの混合物が使用される場合、式1の1種もしくは複数のさらなるモノマー、および/または式2の1種もしくは複数のモノマー、およびまたは1種もしくは複数の他のコモノマーも存在し得る。
【0058】
他のコモノマーの例としては、以下の(i)~(xiv)で定義されるものが挙げられる。
【0059】
(i)任意選択でハロ置換されている、C1-20モノオレフィン(例えば、C1-8またはC1-4モノオレフィン)、例えば、エテン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、塩化ビニルおよび塩化ビニリデン。
【0060】
(ii)アクリル酸グリコールまたはカルボン酸アルケニルのグリコールエステル、例えば、式3:
【0061】
【化9】
【0062】
[式中、pは1~3の整数であり、qは1~10の整数であり、TはHまたは非置換のC1-3アルキルであり、各Rは、H、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキルおよびORから独立して選択される]
のもの。アクリル酸グリコールでは、[CZにおけるfは0である。カルボン酸アルケニルのグリコールエステルでは、fは0より大きい。アクリル酸グリコールモノマーの1例は、アクリル酸エチルジグリコールである。
【0063】
(iii)スルフォン酸基含有モノマー、例えば、式4:
【0064】
【化10】
【0065】
[式中、Rは-[C(R-SOHまたは-N(R)[C(R-SOHである]
のモノマー。実施形態では、[CZにおけるfは0である。例としては、メタクリル酸2-スルホエチルおよび2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。
【0066】
(iv)アルケニルジカルボン酸およびジカルボキシレート、例えば、式5を有するもの、および式6または式7によるそれらの対応する無水物。
【0067】
【化11】
【0068】
これらの式では、Rは、Rおよび-[C(R-COOR11から選択され、mは、0~10の範囲の整数であり;RおよびRのうちの1つ、かつ1つだけはRであるという条件で、Rは、Rおよび-[C(R-COOR11から選択され、nは1~10の範囲の整数であり;R10は-COOR11であり;R11は、H、または、任意選択でハロ、ヒドロキシルもしくはORから選択される1つまたは複数の置換基を有するC1-20アルキルもしくはC1-20アルケニルである。これらのモノマーの例としては、フマル酸、マレイン酸およびイタコン酸、それらの無水物、エステルおよびジエステル、例えばマレイン酸ジビニルおよびマレイン酸ジアリルが挙げられる。
【0069】
(v)ジ炭酸、およびそのエステルまたはそのジエステル、例えば、式8:
【0070】
【化12】
【0071】
(vi)エポキシ含有モノマー、例えば、式9:
【0072】
【化13】
【0073】
[式中、R12は、C1-20アルキル基、例えば、少なくとも1つのエポキシ基、および任意選択で1つまたは複数のハロゲン化物で置換されている、C1-10アルキル基である]
を有するモノマー。実施形態では、[CZにおけるfは0である。1例は、メタクリル酸グリシジルである。
【0074】
(vii)ジカルボキシレートまたはジアクリレートモノマー、例えば式10~12:
【0075】
【化14】
【0076】
のモノマーであり、例としては、アジピン酸ジビニル、ブタンジオール-1,4-ジメタクリレート(butandiol-1,4-dimethacrylate)、ヘキサンジオールジアクリレート、およびトリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
【0077】
(viii)式13:
【0078】
【化15】
【0079】
[式中、各R13は、H、ならびにヒドロキシル、酸素(C=O基の形態で)、アミノ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルアミノおよびC1-6ジアルキルアミノから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換されているC1-20アルキル、から独立して選択される]
のアクリルアミド系モノマー。
【0080】
例としては、アクリルアミド、アルキル-アクリルアミドおよびアミノアルキル-アクリルアミドが挙げられる。実施形態では、[CZにおけるfは0である。実施形態では、RおよびRのいずれもハロゲンではなく、さらなる実施形態では、RおよびRはそれぞれ、Hおよび任意選択で置換されているC1-10アルキルから独立して選択される。さらなる実施形態では、各RおよびRは、水素および非置換のC1-4アルキルから独立して選択される。実施形態では、各R13は、Rから独立して選択される。アクリルアミド系モノマーは、典型的には合計で、3~15個の炭素原子、例えば3~8個の炭素原子を含み、実施形態では、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-メタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドおよびN-[2-(ジメチルアミノ)エチル]メタクリレートから選択され得る。これらのモノマーは、N-[3-(トリメチル-アンモニウム)プロピル]メタクリルアミドクロライドおよびN,N-[3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)-3-ジメチルアンモニウムプロピル](メタ)アクリルアミドクロライドによって例示されるような、対応する第四級アンモニウム塩も含む。
【0081】
(ix)ケトン基含有アクリルアミド系モノマーまたはケトン基含有アルケニルアミド系モノマー、例えば式14:
【0082】
【化16】
【0083】
[式中、R14は、酸素置換基(C=O基の形態で)を含み、任意選択でヒドロキシル、酸素(C=O基の形態で)、アミノ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキル-アミノおよびC1-6ジアルキルアミノから選択される1つまたは複数の追加の置換基を含む、C1-20アルキルから選択される]
を有するモノマー。実施形態では、[CZにおけるfは0である。これらの化合物の例としては、ジアセトンアクリルアミドおよびジアセトンメタクリルアミドが挙げられる。
【0084】
(x)グリコレートアクリルアミドまたはグリコレートアルケニルアミド、例えば、式15のもの。
【0085】
【化17】
【0086】
実施形態では、[CZにおけるfは0である。例としては、アクリルアミドグリコール酸およびメチルアクリルアミドグリコールメチルエーテルが挙げられる。
【0087】
(xi)式16のモノマー。
【0088】
【化18】
【0089】
[式中、R15は、少なくとも1つのC1-10アルケニル基を含み、ヒドロキシル、ハロゲン化物、-N(R、ニトリル、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C1-10アルコキシおよびC1-10ハロアルコキシから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換されている、C5-8アリールまたはC5-8ヘテロアリール基である]。C5-8アリールまたはヘテロアリール基は、それぞれ、ヒドロキシル、ハロゲン化物、-N(R、ニトリル、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C1-10アルコキシおよびC1-10ハロアルコキシから選択される、1つまたは複数のさらなる置換基を含むことができる。実施形態では、[CZにおけるfは0である。こうしたモノマーの1例は、ジビニルベンゼンである。
【0090】
(xii)式17のカルバメート系モノマー。
【0091】
【化19】
【0092】
実施形態では、[CZにおけるfは0より大きく、例えば1または2である。例としては、N-メチロールアリルカルバメートが挙げられる。
【0093】
(xiii)C1-20アルケニルシアヌレートモノマー、例えば、シアヌル酸トリアリル。ならびに、
【0094】
(xiv)C1-20アルケニルスルホン酸、例えば、C1-10アルケニルスルホン酸、例えば、ビニルスルホン酸。
【0095】
[モノマーの相対量]
式1のモノマー(または最も高い重量含有量で存在する式1のモノマー)と比較したコモノマーの合計量は、0~50重量%の範囲、例えば0~30wt%、0~20重量%、または0.1~10重量%の範囲にあり得る。これらの値は、モノマーの合計量に対するものである。
例として、含有量80wt%の式1のモノマー(A)、含有量15wt%の式1のモノマー(B)、および5wt%の式1ではないモノマー(C)が存在する場合、モノマー(A)は最も高い重量含有量の式1のモノマーであるので、その時コモノマーの量は、モノマー(B)および(C)の合計、すなわち20wt%と考えられるであろう。
【0096】
高度に親水性のモノマー、例えば、上記(iii)、(xiii)、(ix)および(x)に列挙されるような、例えば、アクリルアミド系およびスルホネート系モノマーは、典型的には回避される、または少なくとも存在したとしても、それらは全モノマー含有量の5wt%未満を累積的に占める。
【0097】
[コモノマー組合せの例]
本発明によるポリマー分散液を製造するために使用することができるコモノマーの組合せの例としては、エチレン-酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル-(メタ)アクリレート、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル-(メタ)アクリレート、バーサチック酸ビニル-(メタ)アクリレート、アクリレート-メタクリレート、スチレン-アクリレートおよびスチレン-ブタジエンが挙げられる。
【0098】
モノマー、または少なくとも1種のモノマーは、任意選択で置換されている式1[式中、Xは、
【0099】
【化20】
【0100】
であり、fは0であり、RおよびRは両方とも水素であり、RはHまたは非置換のC1-4アルキルである]によるカルボン酸ビニルであることが好ましい。さらなる実施形態では、モノオレフィンまたはハロ置換モノオレフィンは、コモノマーである。
【0101】
ポリマー分散液におけるポリマーまたはポリマーの混合物は、実施形態では、個々のポリマーのそれぞれの全モノマー成分に対して、0~70モル%のカルボン酸ビニルモノマー単位(例えば、酢酸ビニル)を含有することができる。実施形態では、カルボン酸ビニル含有量は、65モル%以下である。さらなる実施形態では、含有量は60モル%以下、例えば、55モル%以下である。カルボン酸ビニルの含有量は、実施形態では、5モル%以上、例えば、10モル%以上、さらなる実施形態では、20モル%以上である。
【0102】
実施形態では、アクリレート系モノマーは、例えば全モノマーの2~80重量%がコモノマーであり得る。これらは、式1[式中、Xは、
【0103】
【化21】
【0104】
であり、fは0であり、RはHであり、RはHまたはメチルであり、RはHまたは非置換のC1-4アルキルである]であり得る。実施形態では、5~60重量%、または別の態様では、10~50重量%、例えば15~35重量%のアクリレート系モノマーが含まれる。
【0105】
実施形態では、カルボキシレート基含有モノマーが存在する場合、カルボン酸基の成分は、全カルボキシレート基の10重量%を越えない。さらなる実施形態では、この数値は5重量%を越えず、さらなる実施形態では、数値は3重量%を越えない。
【0106】
[開始剤]
重合は、開始剤の存在下で実行される。開始剤は、水溶性であるか、または少なくとも部分的に水溶性である。開始剤は、水性相と有機相が混合される前に、水性相の中に存在し得る。代わりに、開始剤は、有機相と水性相を混合すると同時に、または混合した後に添加され得る。実施形態では、開始剤の少なくともいくらか(典型的には、少なくとも90モル%または少なくとも95モル%)は、重合反応が始まる時、水性相中に残存している。開始剤は、典型的にはラジカル発生開始剤であり、当該技術分野で周知である。典型的な例としては、少なくとも部分的に水溶性の無機過酸化物、有機過酸化物、ペルオキシジカーボネートおよびアゾ化合物が挙げられる。
【0107】
無機過酸化物の例としては、過酸化水素、SO 2-またはS 2-イオン含有塩、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウム、ならびにペルオキシジホスフェート、例えば、アンモニウムまたはアルカリ金属ペルオキシジホスフェート(例えば、カリウムペルオキシジホスフェート)が挙げられる。
【0108】
アゾ化合物の例としては、式R16-N=N-R17[式中、R16およびR17は、同一または異なり得、それぞれは、H、C1-4アルキルおよびC1-4アルケニルから選択され得る]のものが挙げられる。C1-4アルキルまたはC1-4アルケニル基のいずれかは、任意選択で、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-4アルコキシ、式COOR18のカルボキシル基、ニトリル、式N(R18のアミンおよび式-C(NR)N(Rのアミジンから選択される、1つまたは複数の置換基で置換され得る。R18は、HまたはC1-4アルキルである。例としては、任意選択で二塩酸塩または二酢酸塩(diacetatic acid salt)の形態にある、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)、さらにニトリル含有アゾ化合物、例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)および2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)が挙げられる。
【0109】
有機過酸化物としては、式18~20:
【0110】
【化22】
【0111】
[式中、R19は、C1-10アルキル、C1-10アルケニル、および-[CZ-R20から選択される]
のものが挙げられる。C1-10アルキルまたはC1-10アルケニル基のいずれかは、任意選択で、ハロゲン、ヒドロキシル、式COOR18のカルボキシル基、ニトリル、式N(R18のアミンおよびC1-4アルコキシから選択される1つまたは複数の置換基で置換され得る。実施形態では、fは0~2である。
【0112】
各出現におけるR20は、C5-6アリール基およびC5-6ヘテロアリール基から独立して選択される。アリール基またはヘテロアリール基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物、-N(R18、ニトリル、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、C1-3アルコキシおよびC1-3ハロアルコキシから選択される、1つまたは複数の基で任意選択で置換され得る。ヘテロアリール基は、O、SおよびNからそれぞれ独立して選択される、1つまたは複数のヘテロ原子を環内に含む。
【0113】
21は、HおよびR19から選択される。
【0114】
yは、1または2である。
【0115】
オルガノヒドロペルオキシド(organohydroperoxide)の例としては、上記式18[式中、少なくとも1つのR18(またはすべてのR18)は水素である]のものが挙げられる。具体例としては、クメンヒドロペルオキシドおよびt-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0116】
ジオルガノペルオキシドの例としては、上記式18[式中、少なくとも1つのR20(またはすべてのR20)は、水素ではない]のもの、例えば、ジtert-ブチルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが挙げられる。
【0117】
過酸の例としては、上記式19[式中、R20は、水素である]のもの、例えば、ペルオキソカルボン酸、例えば、過酢酸が挙げられる。
【0118】
式20のジオルガノペルオキシドの例としては、両方のR19が-[CZ-R20であるものが挙げられ、具体例は過酸化ベンゾイルである。
【0119】
ペルオキシジカーボネートとしては、アニオン[OC-O-O-CO2-を有する化合物が挙げられ、アルカリ金属塩、例えば、リチウムペルオキシジカーボネート、ナトリウムペルオキシジカーボネートおよびカリウムペルオキシジカーボネートとして提供され得る。
【0120】
使用され得る他の開始剤としては、還元剤、例えば、スルフィットおよびバイスルフィットのナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩;ナトリウム、カリウムまたは亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩、およびアスコルビン酸が挙げられる。
【0121】
さらなるタイプの開始剤としては、熱分解によってフリーラジカルを形成することができる酸化剤、および触媒開始剤系、例えば、系H/Fe2+/Hが挙げられる。
【0122】
モノマーの量に対する開始剤の含有量は、0.01~5重量%の範囲、例えば、0.1~3重量%の範囲にあり得る。
【0123】
[ポリマー分散液の形成]
実施形態では、有機乳濁液は、典型的には、有機モノマー相と水性相を混合することによって形成される。実施形態では、ラジカル開始剤は、水性相に少なくとも部分的に可溶性である。それは、有機相と混合する前に、水性相中に含まれ得る。他の実施形態では、それは、有機相と同時に、水性相に添加され得る。乳濁液の連続相は水性相であり、有機相は分散相である、すなわち、「水中油」型乳濁液である。
【0124】
重合は、バッチプロセス、連続プロセス、または半連続プロセスにおいて行われ得る。一実施形態では、例えば、反応速度、および発熱反応の結果としての系の温度上昇を制御するのを助けるために、開始剤およびモノマーは、ある期間にわたって添加され得る。
【0125】
その結果、ポリマー粒子の水性分散液が形成される。
【0126】
[安定剤]
乳濁液または分散液を安定させるのを助けるために、様々な添加剤が添加され得る。本発明では、これらの安定剤の少なくとも1つは、保護コロイド安定剤である。
【0127】
例としては、冷水可溶性バイオポリマーが挙げられる。一実施形態では、これらは、多糖および多糖エーテル、例えば、セルロースエーテル、デンプンエーテル(アミロースおよび/またはアミロペクチンおよび/またはそれらの誘導体)、グアーエーテル、デキストリンおよび/またはアルギネート、1つまたは複数のアニオン性基、非イオン性基またはカチオン性基を有し得るヘテロ多糖、例えば、キサンタンガム、ウエランガムおよび/またはデュータンガムから選択され得る。これらは、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、メチル、エチル、プロピル、スルフェート、ホスフェートおよび/または長鎖(例えば、C4-26)アルキル基を含有して、化学的に修飾され得る。
【0128】
さらなる例としては、ペプチドおよび/またはタンパク質、例えば、ゼラチン、カゼインおよび/または大豆タンパク質が挙げられる。
【0129】
実施形態では、生体高分子は、デキストリン、デンプン、デンプンエーテル、カゼイン、大豆タンパク質、ゼラチン、ヒドロキシアルキル-セルロースおよび/またはアルキル-ヒドロキシアルキル-セルロースから選択され、ここで、アルキル基は同一または異なってもよく、C1-4アルキル基、特にメチル、エチル、n-プロピル基および/またはi-プロピル基であり得る。
【0130】
保護コロイドの他の例としては、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアセタールから選択される、合成ポリマーが挙げられる。
【0131】
ポリビニルピロリドンおよび/またはポリビニルアセタールは、典型的には2000~400,000の分子量を有する。
【0132】
ポリビニルアルコール(PVOH)は、ポリ酢酸ビニルの加水分解によって典型的には合成され、完全にまたは部分的に鹸化された(加水分解された)ポリビニルアルコールを形成する。加水分解度は、典型的には70~100モル%の範囲、例えば、80~98モル%の範囲にある。PVOHは、典型的には1~60mPas、例えば3~40mPasの範囲にある、4%水溶液中におけるHoppler粘度を有する(DIN53015により、20℃で測定)。
【0133】
実施形態では、ポリビニルアルコールは、例えば、少なくとも-OH基の一部を、任意選択でOH置換基を有するC1-4アルコキシ基、またはポリエーテル基、例えば、-O-[(CHO-]H[式中、aは2または3、bは1~10、例えば、1~5である]に変換することによって修飾され得る。
【0134】
当業者は、本発明での使用に好適な保護コロイドの例を、例えば、米国特許第3769248号明細書、米国特許第6538057号明細書および国際公開第2011/098412号パンフレットから知っている。
【0135】
1種または複数の保護コロイドが、使用され得る。加えて、それらは他の安定剤または乳化剤と組み合わせて使用され得る。
【0136】
好適な乳化剤としては、アニオン性、カチオン性および非イオン性乳化剤が挙げられる。例としては、メラミン-ホルムアルデヒド-スルホネート、ナフタレン-ホルムアルデヒド-スルホネート、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロックコポリマー、スチレン-マレイン酸および/またはビニルエーテルマレイン酸コポリマーが挙げられる。高分子のオリゴマーは、非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または両性界面活性剤、例えば、スルホン酸アルキル、アルキルアリールスルホネート、硫酸アルキル、ヒドロキシルアルカノール(hydroxylalkanole)のスルフェート、アルキルおよびアルキルアリールジスルホネート、スルホン化脂肪酸、ポリエトキシル化アルカノールおよびアルキルフェノールのスルフェートおよびホスフェート、ならびにスルホアンブリック酸(sulfo-ambric acid)第四級アルキルアンモニウム塩およびスルホアンブリック酸第四級アルキルホスホニウム塩のエステル、重付加生成物、例えば、ポリアルコキシレート、例えば、直鎖および/または分岐のC6-22アルカノール、アルキルフェノール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミン、第一級および/もしくは第二級高級アルキルアミンへの、1モル当たり5~50モルのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加物であり得、ここで、各場合のアルキル基は直鎖および/または分岐C6-22アルキル基であり得る。
【0137】
有用な合成安定化系としては、部分的に鹸化され、任意選択で修飾された、ポリビニルアルコールが挙げられ、ここで、1種またはいくつかのポリビニルアルコールは、適用できる場合、微量の好適な界面活性剤と一緒に用いることができる。安定化系の量は、用いられるモノマー成分に対して、1~30重量%、または他の実施形態では、3~15重量%の範囲にあり得る。
【0138】
ある実施形態では、保護コロイドは完全にまたは部分的に鹸化されたポリビニルアルコールであり、70~100モル%の範囲、または別の実施形態では、80~98モル%の範囲の加水分解度を有する。4%水溶液中におけるHoppler粘度は、1~60mPas、または他の実施形態では、3~40mPasの範囲にあり得る(DIN53015により、20℃で測定)。
【0139】
本発明は、乾燥前および乾燥後の接着剤組成物の特性が改善されるように、変性コロイダルシリカを組み込むことによって、ポリ酢酸ビニル系接着剤組成物の特性を改善することに関する。
【0140】
接着剤組成物は、ポリ酢酸ビニルまたはポリ酢酸ビニルコポリマーを含み、ここで酢酸ビニルモノマーは、1種または複数の追加のモノマーの存在下で重合される。ポリ酢酸ビニルと1種または複数のポリ酢酸ビニルコポリマーとの混合物も、2種以上のポリ酢酸ビニルコポリマーの混合物として使用され得る。
【0141】
[ポリマー特性]
実施形態では、ポリマー分散液におけるポリマーは、-60~+80℃の範囲のガラス転移温度Tを有する。分散液は、実施形態では、(例えば、米国特許第8461247号明細書に記述のように)異なるガラス転移温度を有する2種の異なるポリマーを含むことができる。実施形態では、ポリマーの混合物中における、1種または複数の異なるポリマーのTは、上記範囲内にある。
【0142】
コポリマーが存在する場合、コポリマーのガラス転移温度は、経験的に計算され得る、または実験的に決定され得る。経験的計算は、以下:
【0143】
【数1】
【0144】
[式中、XおよびXは、コポリマーに用いられたモノマーAおよびBの質量分率(重量%)であり、TgAおよびTgBは、それぞれのホモポリマーAおよびBのケルビンでのガラス転移温度Tである]
のFoxの式(T. G. Fox, Bull. Am. Phy. Soc. (Ser II) 1, 123 (1956), and Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, Weinheim, Vol. 19, 4th Ed., Publishing House Chemistry, Weinheim, 1980, pp. 17-18)の使用によって行うことができる。これらは、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, Weinheim, Vol. A21 (1992), p. 169に見出すことができる。
【0145】
実験的決定は公知の技術、例えば、示差走査熱量測定(DSC)によって行うことができ、ASTM D3418-82による中点温度が使用されるべきである。
【0146】
DIN53787によって決定される、50%水性組成物の最小被膜形成温度は、実施形態では、40℃以下、例えば、25℃以下である。さらなる実施形態では、それは15℃以下である。これは、適切なT値のポリマーを選択することによって、およびポリマーの混合物を使用することによっても調整することができる。可塑剤、例えば米国特許第4145338号明細書に記述されているものも、使用することができる。
【0147】
水性接着剤組成物の揮発性有機含有量(VOC)は、ポリマー含有量に対して、好ましくは5000ppm未満、例えば、2000ppm未満、例えば、1000ppm未満、または500ppm未満である。この文脈における揮発性物質は、標準的(大気)圧力で250℃未満の沸点を有する有機化合物を指す。
【0148】
[他の成分]
接着剤組成物中に存在し得る他の成分としては、変性ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;脱泡剤;湿潤剤;アルキルおよびヒドロキシアルキル基が典型的にはC1-4基を含む、アルキル、ヒドロキシアルキルおよび/またはアルキルヒドロキシアルキル多糖エーテル、例えば、セルロースエーテル、デンプンエーテルおよび/またはグアーエーテル、ならびに合成多糖、例えば、アニオン性、非イオン性またはカチオン性ヘテロ多糖、例えば、キサンタンガムまたはウエランガム;セルロース繊維;粘着付与剤;脱泡剤;分散剤;超可塑剤;水和促進剤;水和遅延剤;増粘剤;空気連行剤;ポリカルボキシレートエーテル;ポリアクリルアミド;アルキレン基が典型的にはCおよび/またはC基である、ポリアルキレンオキシドおよびポリアルキレングリコール、防水剤、例えば、シラン、シロキサンまたは脂肪酸エステル、充填剤、例えば、カーボネート、シリケート、沈降ケイ酸、ポゾラン(pozzolane)、例えば、メタカオリンおよび/または潜在水硬性成分が挙げられる。ポリマー含有量に対する任意選択添加剤の含有量は、典型的には0.01~250重量%、例えば、0.1~100重量%、好ましくは1~25重量%の範囲にある。
【0149】
[オルガノシラン変性コロイダルシリカ]
本発明の接着剤組成物を製造する際に、変性コロイダルシリカは水性相に添加され得る。以下の議論では、「コロイダルシリカ」および「シリカゾル」という用語は同意語である。
【0150】
一実施形態での変性コロイダルシリカは、オルガノシラン官能化コロイダルシリカであり、これは、例えば、国際公開第2004/035473号パンフレットまたは国際公開第2004/035474号パンフレットに記述されている、従来のプロセスによって製造され得る。このオルガノシラン官能化コロイダルシリカは、親水性オルガノシラン部分で変性されたコロイダルシリカ粒子を含む。オルガノシラン部分は、変性コロイダルシリカが組成物の水性相と混合するような、親水性である。
【0151】
典型的には、オルガノシラン官能化コロイダルシリカは、一般に式A4-ySi-[Rによって表現され得る1つまたは複数のオルガノシラン反応物と、シリカ表面上の1つまたは複数のシラノール基、すなわち[SiO]-OH基との間の反応から形成される。その結果は、表面に取り付けられた1つまたは複数のオルガノシラン部分を含む、シリカ表面である。
【0152】
オルガノシラン反応物において、各「A」は、典型的にはC1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、ヒドロキシおよびハロゲン化物から独立して選択される。他の選択肢は、例えば、式[R3-bSi{-O-SiA2-c[R-O-SiA3-b[R[式中、aは0または1以上、典型的には0~5の整数であり;bは1~3であり;cは1~2である]のシロキサンの使用である。
【0153】
他の例としては、式{[R3-bSi}-NH[式中、bは1~3である]のジシラザンが挙げられる。ハロアルコキシ基のうち、フルオロおよびクロロは好ましいハロ置換基である。
【0154】
アルコキシ基およびハロゲン化物は、しばしば「A」化学種として好ましい。ハロゲン化物のうち、塩化物は好適な選択である。アルコキシ基のうち、C1-4アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはイソプロポキシは好適な選択である。実施形態では、オルガノシラン反応物は前加水分解ステップを受けることができ、この時、例えば、Greenwood and Gevert, Pigment and Resin Technology, 2011, 40(5), pp 275-284に記述されているように、1つまたは複数の「A」基は-OHに変換される。
【0155】
オルガノシラン反応物は、表面のシラノール基と反応して、シリカ表面と、オルガノシランのケイ素原子との間に1~3個のSi-O-Si連結、すなわち、{[SiO]-O-}4-y-z-Si[A][R[式中、zは典型的には0~2であり、yは典型的には1~3であり、4-y-zは1~3であって通常は1~2の範囲にある]を形成することができる。結果として、対応する数の「A」基は、オルガノシランから除去される。シラン化反応で経験される条件下での反応(例えば、加水分解)の結果、残りの「A」基は他の基に変換され得る。例えば、「A」がアルコキシ単位またはハロゲン化物である場合、それは水酸基に変換され得る。
【0156】
コロイダルシリカに結合する前、すなわち、2つまたはそれ以上のオルガノシラン部分がSi-O-Si結合を通して互いに結合している場合、オルガノシランの少なくとも一部が二量体の形態またはオリゴマーの形態でさえあることも可能である。
【0157】
化学的に結合したオルガノシラン基は、式[{SiO}-O-]4-y-z-Si[D][Rによって表すことができる。基{SiO}-O-は、シリカ表面上の酸素原子を表す。オルガノシランのケイ素原子は、少なくとも1つ、任意選択で3つ以下のシリカ表面へのそのような結合を有し、ここで、4-y-zは1~3、通常は1~2の範囲、すなわち、4-y-zは少なくとも1で、3以下である。基「D」は任意選択で存在し、zは0~2の範囲にある。オルガノシランのケイ素原子は1~3個の[R]基を有する、すなわち、yは1~3、典型的には1~2である。2つ以上のR基が存在する場合、それらは同一または異なることができる。
【0158】
zが0でない場合、オルガノシランのケイ素は未反応の「A」基を含有し、および/または、例えば、加水分解反応を通して「A」基が除去された場所に、ヒドロキシル基を含有する。代わりに、またはさらに、隣接オルガノシラン基のケイ素原子とSi-O-Si連結を形成することができる。したがって、式{[SiO]-O-}4-y-z-Si[D][Rにおいて、基「D」は(各出現において)、上記「A」の下で定義される基から、さらに水酸基および-O-[SiR]’基[式中、[SiR]’基は隣接オルガノシラン基である]から選択され得る。
【0159】
は、1~16個の炭素原子、例えば1~12個の炭素原子、または1~8個の炭素原子を含む有機部分である。それは、直接的C-Si結合によってオルガノシランのケイ素に結合する。
【0160】
2つ以上のR基が存在する場合(すなわち、yが1より大きい場合)、各Rは同一または異なり得る。
【0161】
は親水性部分であり、その性質は、変性コロイダルシリカが有機相に優先して水性相と混和性であるようなものである。実施形態では、Rは、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、エステル、エポキシ、アシルオキシ、ケトン、アルデヒド、(メタ)アクリロキシ、アミノ、アミド、ウレイド、イソシアネートまたはイソシアヌレートから選択される、少なくとも1つの基を含む。さらなる実施形態では、親水性部分は、OおよびNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、3つ以下の相互に連結した連続アルキレン(-CH-)基を含む。
【0162】
は、上で定義されるようにR全体が親水性であることを条件として、ERから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換されている、アルキル、アルケニル、エポキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1-6アルキルアリールおよびC1-6アルキルヘテロアリール基を含むことができる。
【0163】
ERにおいて、Eは存在しないか、または-O-、-S-、-OC(O)-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)OC(O)-、-N(R)-、-N(R)C(O)-、-N(R)C(O)N(R)-および-C(O)N(R)-から選択される連結基であり、ここで、RはHまたはC1-6アルキルである。
【0164】
は、Eに連結されるか、またはEが存在しない場合はRに直接連結され、ハロゲン(典型的には、F、ClまたはBr)、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、C1-3アルキルアリールおよびC1-3アルキルヘテロアリールから選択される。Rは、ヒドロキシル、ハロゲン(典型的には、F、ClまたはBr)、エポキシ、-ORまたは-N(Rから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換され得、ここで各Rは上で定義される通りである。Eが存在する場合、Rは水素でもあり得る。
【0165】
上記の定義において、アルキルおよびアルケニル基は、脂肪族、環状であり得る、または脂肪族部分および環状部分の両方を含み得る。脂肪族基または脂肪族部分は、直鎖または分岐であり得る。任意の基または置換基がハロゲンを含む場合、ハロゲンは、好ましくはF、ClおよびBrから選択される。
【0166】
いくつかの基は、コロイダルシリカ媒体において経験される条件下で、加水分解反応を受けることができる。したがって、部分、例えば、ハロゲン化物、アシルオキシ、(メタ)アクリロキシおよびエポキシ基を含有する基は、加水分解されて、対応するカルボキシル、ヒドロキシルまたはグリコール部分を形成することができる。
【0167】
実施形態では、1つまたは複数のR基は、任意選択のハロゲン化物(例えば、塩化物)置換基を有する、C1-8アルキル、C1-8ハロアルキル、C1-8アルケニルまたはC1-8ハロアルケニル、典型的には、C1-8アルキルまたはC1-8アルケニルである。例としては、メチル、エチル、クロロプロピル、イソブチル、シクロヘキシル、オクチルおよびフェニルが挙げられる。これらのC1-8基は、実施形態では、C1-6基、または、さらなる実施形態では、C1-4基であり得る。より長い炭素鎖は、水性系により可溶性でない傾向があり、これはオルガノシラン変性コロイダルシリカの合成をより複雑にする。
【0168】
実施形態では、Rは、1~8個の炭素原子を含む基、例えば、C1-8アルキル基であり、これはさらにER置換基[式中、Eは酸素であり、Rは、任意選択で置換されているC1-8-エポキシアルキルおよびC1-8ヒドロキシアルキルから選択される]を含む。代わりに、Rは任意選択で置換されているアルキルイソシアヌレートであり得る。こうしたER置換基の例としては、3-グリシドキシプロピルおよび2,3-ジヒドロキシプロポキシプロピルが挙げられる。
【0169】
実施形態では、Rは、1~8個の炭素原子を含む基、例えばC1-8アルキル基であり、これはさらにER置換基[式中、Eは存在せず、Rはエポキシアルキル、例えば、エポキシシクロアルキルである]を含む。こうしたR基の一例は、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルである。エポキシ基は、代わりに2つの隣接ヒドロキシル基であり得、例えば、Rは、ジヒドロキシアルキル、例えば、ジヒドロキシシクロアルキルであり得、Rは、(3,4-ジヒドロキシシクロヘキシル)エチルであり得る。
【0170】
例えば、2種もしくはそれ以上のオルガノシランの混合物をコロイダルシリカと反応させることによって、または2種もしくはそれ以上の別個に調製されたオルガノシラン変性コロイダルシリカを混合することによって、オルガノシラン変性シリカが生成される場合、変性コロイダルシリカ中に2種以上の異なるオルガノシランが存在し得る。
【0171】
実施形態では、コロイダルシリカは、2種以上のオルガノシラン部分によって変性され得る。追加のオルガノシラン部分は、必ずしもそれら自身が実際に親水性でなくともよい。例えば、それらは疎水性シラン、例えば、C1-20アルキルまたはアルケニルシランであり得る。しかしながら、得られた変性コロイダルシリカは、まだ水性相と混和性であるべきである。
【0172】
こうした官能化コロイダルシリカを製造するために使用され得るオルガノシラン反応物の例としては、オクチルトリエトキシシラン;メチルトリエトキシシラン;メチルトリメトキシシラン;トリス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン;エポキシ基含有シラン(エポキシシラン)、グリシドキシおよび/またはグリシドキシプロピル基、例えば、3-(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(トリメトキシ[3-(オキシラニルメトキシ)プロピル]シランとしても公知)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシリルクロリド、ウレイドメチルトリエトキシシラン、ウレイドエチルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシリザン(hexamethyldisilizane)、およびこれらの混合物が挙げられる。米国特許第4927749号明細書は、コロイダルシリカを変性するために使用され得るさらに好適なシランを開示している。
【0173】
実施形態では、オルガノシランまたは少なくとも1種のオルガノシランは、例えば、エポキシアルキルシランまたはエポキシアルキルオキシアルキルシランに見出されるようなエポキシ基を含む。実施形態では、オルガノシランは、例えば、1つまたは複数のヒドロキシル基、例えば、1つまたは2つのヒドロキシル基を含む、ヒドロキシアルキル基およびヒドロキシアルキルオキシアルキル基から選択される、ヒドロキシル置換基を含むことができる。例としては、グリシドキシ基、グリシドキシプロピル基、ジヒドロプロポキシ基またはジヒドロプロポキシプロピル基を含有するオルガノシランが挙げられる。これらは、オルガノシラン反応物、例えば、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシランおよび(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランから誘導され得る。本発明の組成物では、エポキシ基は加水分解されて、対応するビシナルジオール基を形成することができる。このため、本発明は、上記エポキシ基含有化合物のジオール等価物も包含する。
【0174】
シラン化合物は、シラノール基と、安定な共有結合性シロキサン結合(Si-O-Si)を形成することができる。加えて、シラン化合物は、コロイダルシリカ粒子の表面上で、例えば水素結合によってシラノール基に連結することができる。すべてのシリカ粒子が、オルガノシランによって変性されない可能性がある。オルガノシランで官能化されるコロイダルシリカ粒子の割合は、様々な要因、例えば、シリカ粒子の大きさおよび利用可能な表面積、コロイダルシリカを官能化するために使用されるオルガノシラン反応物のコロイダルシリカに対する相対量、使用されるオルガノシラン反応物のタイプならびに反応条件に依存するであろう。
【0175】
オルガノシランによるシリカ表面の変性度(DM)は、以下の計算(式1):
【0176】
【数2】
【0177】
[式中、
- DMは、nm-2単位における表面変性度であり、
- Aは、アボガドロの定数であり、
- Nオルガノシランは、使用されるオルガノシラン反応物のモル数であり、
- Sシリカは、m-1での、コロイダルシリカ中のシリカの表面積であり、
- Mシリカは、gでの、コロイダルシリカ中のシリカの質量である]
によって、シリカ表面の平方ナノメートル当たりのシラン分子の数に換算して表現され得る。
【0178】
DMは、nm当たり少なくとも0.8分子のシランであり得、好ましくはnm当たり0.5~4分子の範囲にある。好ましい実施形態は、0.5~3、例えば1~2の範囲のDMを有する。
【0179】
上記式において、シリカの表面積は、シアーズ滴定によって簡便に測定される。
【0180】
本発明の組成物で使用されるコロイダルシリカは、安定なコロイドである。「安定な」は、(通常は水性)媒体中に分散したオルガノシラン官能化コロイダルシリカ粒子が、室温(20℃)における通常の貯蔵で、少なくとも2か月、好ましくは少なくとも4か月、より好ましくは少なくとも5か月の期間内に、実質的にゲル化または沈殿しないことを意味する。
【0181】
好ましくは、シラン官能化コロイダルシリカ分散液の調製と調製後2か月までの間の粘度の相対的増加は、100%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは20%未満である。
【0182】
好ましくは、シラン官能化コロイダルシリカの調製と調製後4か月までの間の粘度の相対的増加は、200%未満、より好ましくは100%未満、最も好ましくは40%未満である。
【0183】
[追加の元素で変性されたコロイダルシリカ]
変性コロイダルシリカ内のシリカ粒子は、表面において、1種または複数の追加の元素でさらにまたは代わりに変性され得る。1種または複数の元素は、+3または+4の酸化状態を形式的にとることができ、例えば、室温で化学量論MまたはMOを有する固形酸化物を形成することができる。実施形態では、これらは、周期表の第13族および第14族の第2~第5周期から選択される他の元素(すなわち、Ge、Sn、B、Al、Ga、In)、およびさらに遷移金属の第4周期および5周期の遷移元素、例えば、Ti、Cr、Mn、Fe、またはCoである。ZrおよびCeも、表面変性元素として使用することができる。実施形態では、追加の元素は、B、Al、Cr、Ga、In、Ti、Ge、Zr、SnおよびZrから選択される。特定の実施形態では、元素はアルミニウム、ホウ素、チタンおよびジルコニウムから選択される。他の実施形態では、それはアルミニウムおよびホウ素から選択され、さらなる実施形態では、それはアルミニウムである。
【0184】
コロイダルシリカ粒子の表面に1種または複数の追加の元素を有するコロイダルシリカを調製するために、様々な方法が使用され得る。ホウ素変性シリカゾルは、例えば米国特許第2630410号明細書に記述されており、アルミナ変性シリカゾルを調製する手順は、”The Chemistry of Silica”, by Iler, K. Ralph, pages 407-409, John Wiley & Sons (1979)に見出すことができる。他の参考文献としては、米国特許第3620978号明細書、米国特許第3719607号明細書、米国特許第3745126号明細書、米国特許第3864142号明細書、米国特許第3956171号明細書、米国特許第5368833号明細書、国際公開第2005/097678号パンフレット、および同時係属欧州特許出願番号18159789.9号が挙げられる。
【0185】
不溶性コロイダルシリカ(SiOとして表現される)および追加の元素(酸化物として表現される)の合計量に対する、1種または複数の追加の元素の量(それらの酸化物に換算して表現される)は、典型的には0.05~3wt%の範囲、例えば、0.1~2wt%の範囲にある。
【0186】
アルミナ変性シリカ粒子は、好適には、約0.05~約3wt%、例えば、約0.1~約2wt%、または0.1~0.8wt%のAl含有量を有する。
【0187】
これらの量は、コロイダルシリカそのものにおける不純酸化物の量、典型的には(酸化物として表現される)合計で400ppm以下を、典型的には上回る。
【0188】
実施形態では、変性元素による変性の程度は、コロイダルシリカが、コロイダルシリカ粒子の1m当たり18.4μモルの、1種または複数の変性元素を含むようなものである。典型的には、この量は、33μモルm-2未満でもある。例えば、この量は、18.4~33μモルm-2の範囲、例えば、20~31μモルm-2の範囲、例えば、21~29μモルm-2の範囲にあり得る。1種または複数の変性元素の量は、元素基準(すなわち、1種または複数の変性元素の個々の原子のモル量)で計算される。
【0189】
コロイダルシリカ粒子が、追加の元素およびオルガノシランの両方で表面変性される場合、それらは、オルガノシランを追加の元素変性コロイダルシリカに添加することによって、典型的には調製される。
【0190】
[コロイダルシリカ]
実施形態では、変性コロイダルシリカの調製に使用されるコロイダルシリカは、極微量しか他の酸化物不純物を含有せず、これは各酸化物不純物について典型的には重量で(全ゾル中に)1000ppm未満で存在するであろう。典型的には、ゾル中に存在する非シリカ酸化物不純物の合計量は、重量で5000ppm未満、好ましくは1000ppm未満である。
【0191】
コロイダルシリカ粒子は、好適には、(容積基準で)2~150nm、例えば3~60nm、例えば4~25nmの範囲の平均粒径を有する。さらなる実施形態では、平均粒径は5~20nmの範囲にある。好適には、コロイダルシリカ粒子は、20~1500m-1、好ましくは50~900m-1、より好ましくは70~600m-1、例えば100~500m-1または150~500m-1の比表面積を有する。
【0192】
表面積は、合成に使用される「露出した」または「未官能化」コロイダルシリカの表面積として、しばしば表現される。これは、シリカ表面の官能化が、表面積測定を複雑にするおそれがあるためである。表面積はシアーズ滴定を使用して測定することができる(G.W.Sears; Anal. Chem., 1956, 28(12) pp1981-1983)。粒径は、”The Chemistry of Silica”, by Iler, K. Ralph, page 465, John Wiley & Sons (1979)に記述されている方法を使用して、滴定された表面積から計算することができる。シリカ粒子は2.2gcm-3の密度を有するという前提、およびすべての粒子は同じ大きさであり、平滑な表面積を有し、球状であるという前提に基づいて、粒径は式2から計算され得る。
【0193】
【数3】
【0194】
コロイダルシリカ粒子は、典型的には、水性シリカゾルを形成するために、典型的にはK、Na、Li、NH 、有機カチオン、第四級アミン、第三級アミン、第二級アミン、および第一級アミン、またはこれらの混合物から選択される、安定化用カチオン(stabilising cation)の存在下で、水中に分散する。分散液は、有機溶媒、典型的には水混和性であるもの、例えば、低級アルコール、アセトンまたはこれらの混合物も、好ましくは水に対して20%以下の体積比で含むことができる。好ましくは、溶媒は、コロイダルシリカまたは官能化コロイダルシリカに添加されない。組成物中の有機溶媒は、オルガノシラン官能化コロイダルシリカの合成中に、オルガノシラン反応物とシリカとの反応に起因して、発生する可能性がある。例えば、オルガノシラン反応物がアルコキシドである場合、対応するアルコールが生成するであろう。任意の有機溶媒の量は、好ましくは20重量%未満、好ましくは10重量%未満に維持される。
【0195】
有機官能化コロイダルシリカのシリカ含有量は、好ましくは5~60重量%、より好ましくは10~50重量%、最も好ましくは15~45重量%の範囲にある。これは未官能化シリカの重量%として表現され、オルガノシランで変性される前のコロイダルシリカ供給源中のシリカの重量%から計算される。
【0196】
変性コロイダルシリカのpHは、好適には1~13、好ましくは2~12、例えば、4~12、または6~12、最も好ましくは7.5~11の範囲にある。シリカが追加の元素、例えば、アルミニウムで変性される場合、pHは、好適には3.5~11の範囲にある。
【0197】
有機官能化コロイダルシリカは、好適には、20~100、好ましくは30~90、最も好ましくは40~90のS値を有する。
【0198】
S値は、コロイダルシリカ粒子の凝集の程度、すなわち、凝集体またはミクロゲル形成の度合を特徴づける。S値は、Iler, R. K. & Dalton, R. L. in J. Phys. Chem., 60 (1956), 955-957で与えられる方式によって、測定し、計算することができる。
【0199】
S値は、コロイダルシリカのシリカ含有量、粘度および密度に依存する。高いS値は、低いミクロゲル含有量を示す。S値は、シリカゾルの分散相中に存在するSiOの重量パーセントでの量を表す。ミクロゲルの度合は、例えば米国特許第5368833号明細書にさらに記述されているように、製造プロセス中に制御することができる。
【0200】
表面積と同様に、オルガノシラン官能化コロイダルシリカのS値は、典型的にはシラン変性の前のコロイダルシリカのS値として表現される。
【0201】
実施形態では、オルガノシラン官能化シリカゾル中のオルガノシランとシリカとの重量比は、0.003~1.5、好ましくは0.006~0.5、最も好ましくは0.015~0.25である。
【0202】
この文脈において、分散液中のオルガノシランの重量は、可能性のある遊離オルガノシラン化合物およびオルガノシラン誘導体またはシリカ粒子に結合もしくは連結した基の合計量として、すなわち、最初にコロイダルシリカに添加されてオルガノシラン変性シリカを生成するオルガノシラン反応物の合計量に基づいて計算され、どれだけのオルガノシランがシリカに実際に化学的に結合されるかという、直接的測定に必ずしも基づいて計算されない。
【0203】
接着剤組成物の調製における水性相中には、変性コロイダルシリカは、典型的には0.01~15wt%、例えば、0.1~10wt%の範囲の量で存在する。特定の実施形態では、変性コロイダルシリカは、最終組成物中に0.3~7wt%の範囲の濃度で存在する。これらの量は、SiOとして表現される不溶性シリカに基づいている。
【0204】
[接着剤組成物]
水性相における変性コロイダルシリカの使用、およびそれを重合プロセス中に存在させることは、合成においてだけでなく、得られた生成物、特に乾燥した接着剤および水処理後の接着剤の両方の改善された接着強度にも、著しい利点を与える。
【0205】
典型的には、接着剤配合物は、任意選択で安定化されたポリマー粒子を含む水性分散液の形態をしている。変性コロイダルシリカ粒子は、典型的には水性相中に残存する。
【0206】
最終組成物中のポリマーの量は、典型的には20~80wt%の範囲、例えば、30~70wt%の範囲にある。実施形態では、その量は、40~60wt%、例えば、45~55wt%の範囲にある。
【0207】
本発明の接着剤組成物は、シリカフリーの組成物と比較して、硬化した接着剤の乾湿強度を改善することができる。それらは、より長期的な貯蔵寿命および貯蔵安定性を有することによって、未変性シリカ含有組成物に対しても改善される。
【0208】
理論に拘束されるものではないが、コロイダルシリカ上の官能基、すなわち、シリカ表面上のシラノール基が直接、またはオルガノシラン部分上の官能基(例えばOH基)が、(例えば、共有結合を介して、水素結合を介して、またはイオン結合を介して)ポリマー粒子の表面上の保護コロイドの基と化学的に相互作用することができ、したがってポリマー粒子間結合の追加の供給源を提供して、乾燥したまたは硬化した接着剤の全体的な強度を増加させると考えられる。この結合は、調製時の接着剤組成物に少なくともある程度まで存在するであろうが、乾燥した(または硬化した)接着剤には、はるかに大きな程度まで存在するであろう。
【0209】
未変性コロイダルシリカ粒子を使用した場合に、こうした結合は存在することができるが、未変性シリカの使用は、不十分な長期間安定性、したがって低い貯蔵寿命を有する組成物をもたらす。変性シリカにおいては、追加の元素によって、またはオルガノシラン部分を用いて変性されたとしても、表面シラノール基の数は低減され、これによって、接着剤組成物中に典型的に存在する、より低いpH条件下でのシリカ凝集を回避するのを助けることができる。さらに、それは使用前の保護コロイドで反応速度を制限し、したがってあまりにも早い硬化または分散ポリマー粒子の凝集を回避するのを助ける可能性もある。
【0210】
重合後の配合物添加剤として変性コロイダルシリカを添加するのとは対照的に、ポリマー合成混合物中に変性コロイダルシリカを含めることによって、すなわち、乳化/分散モノマー含有有機相を含む反応混合物の水性相中にそれを含めることによって、接着剤組成物の特性のさらなる改善を達成することができる。これは、水性コロイダルシリカの後添加が、最終分散液におけるポリマー成分の希釈を伴うためである。
【0211】
接着剤組成物中のポリマー粒子のメジアン粒径(体積基準)は、典型的には1.5μm未満、例えば1.0μm未満である。典型的には、メジアン粒径は0.05μmより大きく、例えば、0.2μmより大きい。
【0212】
接着剤組成物のpHは、典型的には2~8、例えば、2.5~6の範囲にある。
【0213】
20℃での接着剤組成物の粘度は、典型的には40000mPas以下、例えば、25000mPas以下もしくは15000mPas以下、または、さらなる実施形態では、10000mPas以下である。粘度は、典型的には1000mPas以上、例えば、4000mPas以上でもある。粘度は、例えば、ASTM D1084またはASTM D2556を使用する、常法によって測定することができる。
【実施例
【0214】
以下の非限定的な実施例は、本発明を実施する方法を説明する。
【0215】
粘度測定は、Brookfield LV DV-I+装置上で行った。すべての測定は、スピンドルLV64を使用し、20℃で、表2に示されるrpm値(12または6rpm)を使用して実施した。
【0216】
粒径測定は、Hydro2000Sサンプリングユニットを備える、Malvern Mastersizer2000を使用して行った。粒子屈折率は1.467に、吸収は0に設定した。分散剤屈折率は、1.33(水)に設定した。撹拌は2900rpmに、超音波は表2に示される時間の間100%に設定した。15秒のバックグラウンド運転の後、試料当たり合計20回の測定を実施した。
【0217】
接着剤組成物を調製するのに使用する材料の量は、およそ52wt%の同じ固体(ポリマー)含有量に確実にできるだけ近づくように、選択した。
【0218】
以下で言及するオルガノシラン変性コロイダルシリカにおいて、国際公開第2004/035473号パンフレットまたは国際公開第2004/035474号パンフレットに記述されている変性の方法を使用し、以下に示す変性度値に到達するために、十分なオルガノシランを用いた。シリカを変性するために使用したオルガノシラン化合物は、(3-グリシジルオキシプロピル)-トリエトキシシランであった。変性ゾルにおいて、エポキシ基は加水分解されて、ビシナルジオール基を形成する。
【0219】
使用したアルミニウム変性コロイダルシリカは、市販のLevasil(商標)CT37A(Akzo Nobel)であった。
【0220】
[コロイダルシリカ1]
これは、グリシドキシプロピルシラン変性コロイダルシリカである。有機変性コロイダルシリカを調製するために使用したコロイダルシリカは、7nmのシリカ粒径、および360m-1のシラン変性前表面積を有する。オルガノシラン変性生成物は、30wt%(SiOとして)の非可溶性シリカ含有量および7のpHを有する。コロイダルシリカに添加されたシランの量は、1.4nm-2の変性度(DM)値に相当する。
【0221】
[コロイダルシリカ2]
これは、グリシドキシプロピルシラン変性コロイダルシリカである。有機変性コロイダルシリカを調製するために使用したコロイダルシリカは、12nmのシリカ粒径、および220m-1のシラン変性前表面積を有する。オルガノシラン変性生成物は、40wt%(SiOとして)の非可溶性シリカ含有量および7のpHを有する。コロイダルシリカに添加されたシランの量は、1.7nm-2のDM値に相当する。
【0222】
[コロイダルシリカ3]
これは、グリシドキシプロピルシラン変性コロイダルシリカである。有機変性コロイダルシリカを調製するために使用したコロイダルシリカは、5nmのシリカ粒径、および500m-1のシラン変性前表面積を有する。オルガノシラン変性生成物は、15wt%(SiOとして)の非可溶性シリカ含有量および10のpHを有する。コロイダルシリカに添加されたシランの量は、2.0nm-2のDM値に相当する。
【0223】
[コロイダルシリカ4]
これは、市販の非変性コロイダルシリカ(Levasil(商標)CT36M)である。粒径は7nmであり、非可溶性シリカ含有量は30wt%(SiOとして)である。pHは10であり、コロイダルシリカは360m-1の表面積を有する。
【0224】
[コロイダルシリカ5]
これは、7nmの粒径を有する、市販のアルミニウム変性シリカ(Levasil(商標)CT36A)である。非可溶性シリカ含有量は30wt%(SiOとして)であり、アルミニウム含有量は0.4wt%(Alとして)である。pHは、10である。コロイダルシリカは、360m-1の表面積を有する。
【0225】
[コロイダルシリカ6]
これは、コロイダルシリカ4から製造された、グリシドキシプロピルシラン変性コロイダルシリカである。
【0226】
オルガノシラン変性生成物は、30wt%(SiOとして)の非可溶性シリカ含有量および7のpHを有する。コロイダルシリカに添加されたシランの量は、1.05nm-2のDMに相当する。
【0227】
[接着剤配合物]
ポリ酢酸ビニル(PVAc)接着剤組成物を、67000g/モルの分子量および87~89%の加水分解度を有するポリビニルアルコール(PVOH)を使用して、以下の手順によって調製した。
【0228】
23.0gのPVOH、1.1gの重炭酸ナトリウム、脱イオン水および(変性)コロイダルシリカの混合物を反応器に充填し、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。脱イオン水および(変性)コロイダルシリカ分散液の量は、PVOHの量が3wt%であり、最終接着剤組成物が以下の表1に規定される不溶性シリカの量を含むことを確実にするように適合させた。例として、目標最終不溶性SiO含有量(乾燥樹脂中)が1.7wt%のコロイダルシリカ1を含む接着剤組成物のために、292gの脱イオン水および23.7gのコロイダルシリカ1を使用した。0.6wt%の目標不溶性SiO含有量のために、7.11gのコロイダルシリカ1および310gの脱イオン水を使用した。有機相と混合する前に、溶液を窒素でパージした。
【0229】
酢酸ビニルモノマーの一部(最終的に使用する380gの全重量の10%)、および過硫酸カリウム開始剤の1.6wt%水溶液の一部(最終的に使用する75gの全重量の20%)を、次に撹拌下で添加し、発熱量を記録した。15分後に、反応温度はおよそ7℃上昇し、次に酢酸ビニルモノマーおよび開始剤の残りを3時間の期間にわたって連続的に添加した。室温に冷却する前のさらなる時間の間、反応器をおよそ67℃に維持した。発熱性重合反応に起因して、温度の小さな変動は明白であり、典型的に達した最高温度は68~72℃であった。粒径を測定するために、接着剤組成物の一部を2分間超音波に供した。粒径はおよそ600nmであった。
【0230】
最終接着剤組成物の詳細を、表1および表2に提供する。
【0231】
【表1】
【0232】
【表2】
【0233】
含有量測定値は、固形分の重量決定に基づく。これは、少量(典型的には2.5g)のPVAc分散液をアルミ箔カップに配置し、炉中において130℃で2時間加熱することによって得た。重量は、乾燥前後に記録した。固形分は、乾燥後試料の重量/濡れた分散液の重量として計算した。
【0234】
これらの結果から、未変性コロイダルシリカを使用することは、ポリマーのより大きな粒径特性をもたらし、乳濁液重合プロセス中のより不十分な分散液安定性を暗示している。これは、粒径のより広い分布/スパン、および未硬化/未乾燥材料の増加した粘度にも現れる。
【0235】
反対に、オルガノシラン変性コロイダルシリカを使用することは、ポリマー分散液の特性を維持するのを助け、一方で、いったん乾燥または硬化すると、接着性も改善する。
【0236】
接着剤組成物の有利な性能は、ABES(Adhesives Evaluation Systems,OR,USA製、自動結合評価システム)装置を使用して評価した。米国特許第8465581号明細書に記述されている、完成した結合の加圧および加熱の簡略化された原理を使用した。
【0237】
組成物を、厚さ0.7mm、幅20mmおよび長さ117mmの、2枚のブナベニヤの表面に塗布した。ベニヤは、20℃および65%の相対湿度(RH)に調整した。
【0238】
接着剤を各ベニヤの片側に塗布し、200gm-2の表面被覆を提供した。接着した面積は60mmであった。すべての接着剤系に同じ手順を使用した。0.7MPaの圧力を加え、加圧板は、80または110℃の温度を有した。
【0239】
図1~3は、80℃または110℃で加圧した後の例1~4の接着剤組成物を乾燥させた後の剪断強度を示す。試料は、以下:
- 80℃で:30、120、300および480秒、
- 110℃で:30、60および120秒
のように様々な期間加圧した。
【0240】
図1は80℃で乾燥した試料、図2は110℃で乾燥した試料の結果を示す。図3は、110℃で加圧し、120秒加圧した後の試料の結果を示す。
【0241】
これらの試験では、各接着剤タイプおよび各加圧条件について、5個の試験片を試験した。接着結合剪断強度の決定は、ABES装置で冷却した30秒後に行った。
【0242】
図1~3は、変性コロイダルシリカ含有組成物は、両方の硬化温度で、改善された接着強度を示すことを実証している。
【0243】
水耐久性試験も行った。試験片は2つの温度において、各温度で2つの加圧時間:
- 80℃で:300秒および480秒、
- 110℃で:30秒および120秒
接着した。
【0244】
各加圧条件下各接着剤について、(さらに以下で記述する、110℃および120秒で条件付けした例5、6および7を除いて)、合計で13個の試験片を調製した。試験片は、試験の前に20℃および65%RHで3日間条件付けした。
【0245】
(各接着剤および各条件について)10個の試験片を、室温(20℃)で3時間の持続時間、水に浸漬した。次に試験片を水浴から取り出し、試験片の半分をまだ濡れている間に直接試験した。試験片の他の半分は、試験する前に、(水浴に浸漬前の)初期質量に到達するまで、周囲条件下で再度乾燥させた。
【0246】
各接着剤タイプについておよび各加圧条件で他の3個の試験片を、乾燥強度の参照としていかなる処理もせずに試験した。
【0247】
110℃で120秒間加圧した例5、6および7については、各条件で5個の試験片だけ試験し、それらは20℃および65%RHで1週間前もって条件付けした。
【0248】
図4~6は、水中に3時間浸漬後だが、再乾燥前の乾燥/硬化した接着剤組成物の湿潤強度を示す。図4は、80℃で300秒または480秒加圧した試料であり、図5および図6は、110℃で30秒または120秒加圧した試料である。
【0249】
図6は、さらなる比較例である例11の結果も含む。これは、乾燥した樹脂中に1.7wt%のコロイダルシリカ1を含有する例3に相当するが、重合前のモノマー分散液にではなく、すでに重合した分散液に3wt%のコロイダルシリカ1を後から添加することによって調製した。
【0250】
図4~6は、シリカフリーの組成物(例1)と比較した、オルガノシラン変性コロイダルシリカの湿潤強度における利点を実証している(コロイダルシリカ1、2、3および6;例2~6および10を参照)。比較の未変性シリカ(コロイダルシリカ4、例7)は、この試験で良好に実施されたにもかかわらず、以下に示す結果は、ポリマー分散液は経時的に不安定であり、不十分な貯蔵寿命をもたらすことを実証している。
【0251】
これらの結果は、アルミニウム変性シリカは、オルガノシラン変性シリカと同様の改善された結果を示すが(コロイダルシリカ5、例9を参照)、より低いオルガノシラン充填量であること(例10と例3の間の比較を参照)も示している。
【0252】
例11と例3との比較は、変性コロイダルシリカを重合混合物に添加する利点、すなわち、配合物添加剤としての重合後の添加とは対照的に、重合前に添加する利点も強調している。例3の改善された剪断強度は、合成後のコロイダルシリカ添加である例11における希釈効果が、少なくとも一部起因している。重合の前に水性相へコロイダルシリカを添加することは、水性相へ添加される追加の脱イオン水を低減することによって、その水分含有量を考慮に入れることができることを意味する。これは、濃縮技術がさらに適用されない限り重合後では不可能であり、濃縮技術はプロセスへの複雑性を高め、生成物の品質に有害な作用も有し得る。
【0253】
図7~9は、3時間浸漬後であるが、試料を上述のように再度乾燥した後の湿潤強度の結果を示している。80℃で480秒(図7)または110℃で120秒(図8および9)加圧された、接着剤組成物の結果を示す。
【0254】
他の結果と同様に、オルガノシラン変性シリカ(コロイダルシリカ1~3および6;例2~6および10)を含有する組成物は、シリカフリーの材料(例1)と比較して改善された強度を示している。この結果は、未変性シリカの剪断強度での利点(コロイダルシリカ4、例7)も示しているが、すでに上で言及したように、この例は時間とともに不安定である。
【0255】
これは図10によって強調され、この図は未硬化接着剤配合物の貯蔵安定性を示している。未変性コロイダルシリカ含有組成物(コロイダルシリカ4、例7および8)は、単に高い初期粘度だけでなく、2か月の期間にわたる大幅な粘度増加も示している。オルガノシラン変性シリカおよびアルミニウム変性シリカを含有する配合物は、単により低い初期粘度だけでなく、同じ期間にわたって粘度の変化がほぼないことも示している。
【0256】
これらの結果は、本発明による接着剤組成物、および本発明による方法によって調製された接着剤組成物が、水処理の後でさえ、参照試料と比較して優れた剪断強度を示すことを実証している。それらは、改善された貯蔵寿命につながる、経時的粘度増加に対する優れた耐性も示している。
なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]変性コロイダルシリカを含む水性相を開始剤の存在下で1種または複数のモノマーを含む有機相と接触させる、接着剤組成物を調製する方法であって、
1種または複数のモノマーの重合が起こってポリマー分散液を形成するように条件が維持され、
(i)前記ポリマー分散液が、ポリマー粒子の表面上に保護コロイドを有するポリマー粒子を含み、
(ii)前記変性コロイダルシリカが、少なくとも1つの表面結合親水性オルガノシラン部分を有するコロイダルシリカ粒子を含み、および/または
少なくとも1種の追加の元素をコロイダルシリカ粒子の表面上に有するコロイダルシリカ粒子を含み、前記元素が、+3もしくは+4の酸化状態を形式的にとることができ、
(iii)前記開始剤が、水に少なくとも部分的に可溶性である、
方法。
[2]水性ポリマー分散液および変性コロイダルシリカ粒子を含む接着剤組成物であって、
(i)前記ポリマー分散液が、ポリマー粒子の表面上に保護コロイドを有するポリマー粒子を含み、前記ポリマー粒子が、1種または複数のモノマーの重合から形成され、
(ii)前記変性コロイダルシリカが、少なくとも1つの表面結合親水性オルガノシラン部分を有するコロイダルシリカ粒子を含み、および/または、
少なくとも1種の追加の元素をコロイダルシリカ粒子の表面上に有するコロイダルシリカ粒子を含み、前記元素が、+3もしくは+4の酸化状態を形式的にとることができ、
(iii)前記コロイダルシリカ粒子の少なくとも一部が、保護コロイドと化学的に相互作用する
接着剤組成物。
[3]上記[1]に記載の方法によって調製される、接着剤組成物。
[4]少なくとも1種のモノマーが、カルボン酸アルケニル、アクリレート、アクリロニトリルおよびスチレンから選択される、上記[1]に記載の方法または上記[2]もしくは上記[3]に記載の接着剤組成物。
[5]少なくとも1種のモノマーが、式1:
【化23-1】
[式中、
各出現におけるR およびR は、H、ハロゲン化物およびC 1-20 アルキルから独立して選択され、各C 1-20 アルキルは、ヒドロキシル、ハロゲン化物、酸素(すなわち、C=O部分を形成する)、-OR および-N(R から選択される、1つまたは複数の基で任意選択で置換してもよく、
各出現におけるR は、Hおよび任意選択で置換されているC 1-6 アルキルから独立して選択され、ここで、前記任意選択の置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物、アミノ、C 1-6 アルコキシ、C 1-6 アルキルアミノおよびC 1-6 ジアルキルアミノであり、
-(CZ -基において、各Zは、H、ハロゲン化物、C 1-3 アルキルおよびC 1-3 ハロアルキルから独立して選択され、fは、0~4の範囲の整数であり、
Xは、
【化23-2】
から選択され、
各出現におけるR は、ヒドロキシル、ハロゲン化物、-N(R 、ニトリル、C 1-10 アルキル、C 1-10 ハロアルキル、C 1-10 アルコキシおよびC 1-10 ハロアルコキシから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換されている、C 5-8 アリールおよびC 5-8 ヘテロアリール基から独立して選択され、前記ヘテロアリール基は、環中に、O、SおよびNからそれぞれ独立して選択される、1つまたは複数のヘテロ原子を含み、
各出現におけるR は、H、任意選択で置換されているC 1-20 アルキルおよび任意選択で置換されているC 1-20 アルケニルから独立して選択され、前記任意選択の置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン化物および-N(R の1つまたは複数から選択される]
によるモノマーである、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法または接着剤組成物。
[6]少なくとも1種のモノマーが、任意選択で、上記[5]で定義される式1[式中、Xは、
【化23-3】
である]である、カルボン酸アルケニルである、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法または接着剤組成物。
[7]以下の条件:
(i)fが0である、
(ii)各R およびR が、Hおよび非置換のC 1-2 アルキルから選択される、
(iii)R が、ハロゲン化物では置換されない、任意選択で置換されているC 1-12 アルキルである
の1つまたは複数が該当する、上記[5]または上記[6]に記載の方法または接着剤組成物。
[8]1種または複数のコモノマーが存在し、以下の条件:
(i)少なくとも1種のコモノマーが、上記[5]で定義される式1である、
(ii)少なくとも1種のコモノマーが、任意選択でハロゲン化物で置換されているC 1-8 モノオレフィン、例えば、非置換のC 1-4 モノオレフィンである;
(iii)上記[5で定義される式1において、XがR であり、少なくとも1種のコモノマーが、式(R C=CR -CR =C(R である
の1つまたは複数が該当する、上記[4]~[7]のいずれか一項に記載の方法または接着剤組成物。
[9]前記保護コロイドが、70~100モル%の範囲の加水分解度を有する、鹸化された、または部分的に鹸化されたポリビニルアルコールである、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法または接着剤組成物。
[10]前記親水性オルガノシラン部分が、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、エステル、エポキシ、アシルオキシ、ケトン、アルデヒド、(メタ)アクリロキシおよびアミノから選択される少なくとも1つの基を含む、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法または接着剤組成物。
[11]前記親水性オルガノシラン部分が、シランのケイ素原子に直接結合している1つまたは複数の親水基R [式中、
各R は、ER 、イソシアネートおよびイソシアヌレートから選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換されている、アルキル、アルケニル、エポキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、C 1-6 アルキルアリールおよびC 1-6 アルキルヘテロアリール基から独立して選択され、
Eは、存在しない、または、-O-、-S-、OC(O)-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)OC(O)-、-N(R )-、-N(R )C(O)-、-N(R )C(O)N(R )-および-C(O)N(R )-から選択される連結基(式中、R はHまたはC 1-6 アルキルである)であり、
はEに連結する、またはEが存在しない場合、直接R に連結し、
は、ハロゲン(典型的には、F、ClまたはBr)、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、C 1-3 アルキルアリールおよびC 1-3 アルキルヘテロアリールから選択され、各R は、ヒドロキシル、ハロゲン(典型的には、F、ClまたはBr)、エポキシ、-OR または-N(R から選択される1つまたは複数の基で任意選択で置換されており、
Eが存在する場合、R は水素でもあり得る]
を含む、上記[10]に記載の方法または接着剤組成物。
[12]前記オルガノシラン部分が、エポキシ基または少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の方法または接着剤組成物。
[13]前記追加の元素が、Ge、Sn、B、Al、Ga、In、Cr、Mn、Fe、Co、ZrおよびCeから選択される、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の方法または接着剤組成物。
[14]前記開始剤が、無機過酸化物、有機過酸化物、ペルオキシジカーボネートおよびアゾ化合物から選択され、水に少なくとも部分的に可溶性である、1種または複数の化合物である、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15]以下の条件:
(i)前記接着剤組成物のシリカ含有量が、0.01~15wt%の範囲にある、
(ii)前記接着剤組成物におけるポリマーの量が、20~80wt%の範囲にある、
(iii)前記接着剤組成物中のポリマー粒子の体積基準メジアン粒径が、1.5μm未満である、
(iv)前記接着剤組成物の20℃での粘度が、1000~40000mPasの範囲にある
の1つまたは複数が該当する、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の方法または接着剤組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10