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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】流水殺菌システムおよび流水殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20220927BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20220927BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C02F1/32
A61L2/10
A61L2/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021000270
(22)【出願日】2021-01-04
(65)【公開番号】P2022105451
(43)【公開日】2022-07-14
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】河崎 涼太
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131270(JP,A)
【文献】特開2016-064111(JP,A)
【文献】特開2013-022517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00- 1/26
C02F 1/30- 1/38
A61L 2/00- 2/28
A61L 11/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路内の水に紫外光を照射する第1LEDを含む第1殺菌装置と、
第2流路内の水に紫外光を照射する第2LEDを含む第2殺菌装置と、
前記第1殺菌装置および前記第2殺菌装置に被処理水を供給する供給管と、
前記第1殺菌装置または前記第2殺菌装置にて処理された水が出力される出力管と、
前記第1流路の流入口または流出口に設けられる第1電磁弁と、
前記第2流路の流入口または流出口に設けられる第2電磁弁と、
前記第1LED、前記第2LED、前記第1電磁弁および前記第2電磁弁の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記第1殺菌装置および前記第2殺菌装置は、前記供給管と前記出力管の間に並列接続され、
前記制御装置は、
a)前記第1殺菌装置を稼働状態とする場合、前記第1電磁弁を開状態にして前記第1LEDに第1定格値の駆動電流を連続的に供給し、
b)前記第1殺菌装置を非稼働状態とする場合、前記第1電磁弁を閉状態にして、前記第1LEDに前記第1定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記第1LEDに前記第1定格値未満の駆動電流を連続的に供給し、
c)前記第2殺菌装置を稼働状態とする場合、前記第2電磁弁を開状態にして前記第2LEDに第2定格値の駆動電流を連続的に供給し、
d)前記第2殺菌装置を非稼働状態とする場合、前記第2電磁弁を閉状態にして、前記第2LEDに前記第2定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記第2LEDに前記第2定格値未満の駆動電流を連続的に供給する、流水殺菌システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1殺菌装置を稼働状態として前記第2殺菌装置を非稼働状態とする第1モードから、前記第1殺菌装置を非稼働状態として前記第2殺菌装置を稼働状態とする第2モードに切り替える、請求項1に記載の流水殺菌システム。
【請求項3】
前記制御装置は、所定条件の充足を契機として、前記第1モードと前記第2モードを交互に切り替える、請求項2に記載の流水殺菌システム。
【請求項4】
第1LEDに第1定格値の駆動電流を連続的に供給して第1流路内を流れる水に前記第1LEDからの紫外光を照射するとともに、第2LEDに第2定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記第2LEDに前記第2定格値未満の駆動電流を連続的に供給して第2流路内で滞留する水に前記第2LEDからの紫外光を照射するステップと、
前記第2LEDに前記第2定格値の駆動電流を連続的に供給して前記第2流路内を流れる水に前記第2LEDからの紫外光を照射するとともに、前記第1LEDに前記第1定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記第1LEDに前記第1定格値未満の駆動電流を連続的に供給して前記第1流路内で滞留する水に前記第1LEDからの紫外光を照射するステップと、を備える流水殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流水殺菌システムおよび流水殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や食品加工での殺菌処理に紫外光照射装置が用いられる。例えば、直管内を通過する水の流れに沿う方向に紫外光を照射し、流水を連続的に殺菌する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-104230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理能力を向上させる目的や故障時の予備として、複数の殺菌装置を並列接続して利用することがある。複数の殺菌装置の少なくとも一つを非稼働とした場合、水の流れが止まって滞留することで雑菌が発生するおそれがある。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、殺菌装置の非稼働時に発生しうる雑菌の混入を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の流水殺菌システムは、第1流路内の水に紫外光を照射する第1LEDを含む第1殺菌装置と、第2流路内の水に紫外光を照射する第2LEDを含む第2殺菌装置と、第1殺菌装置および第2殺菌装置に被処理水を供給する供給管と、第1殺菌装置または第2殺菌装置にて処理された水が出力される出力管と、第1流路の流入口または流出口に設けられる第1電磁弁と、第2流路の流入口または流出口に設けられる第2電磁弁と、第1LED、第2LED、第1電磁弁および第2電磁弁の動作を制御する制御装置と、を備える。第1殺菌装置および第2殺菌装置は、供給管と出力管の間に並列接続される。制御装置は、a)第1殺菌装置を稼働状態とする場合、第1電磁弁を開状態にして第1LEDに第1定格値の駆動電流を連続的に供給し、b)第1殺菌装置を非稼働状態とする場合、第1電磁弁を閉状態にして、第1LEDに第1定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、第1LEDに第1定格値未満の駆動電流を連続的に供給し、c)第2殺菌装置を稼働状態とする場合、第2電磁弁を開状態にして第2LEDに第2定格値の駆動電流を連続的に供給し、d)第2殺菌装置を非稼働状態とする場合、第2電磁弁を閉状態にして、第2LEDに第2定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、第2LEDに第2定格値未満の駆動電流を連続的に供給する。
【0007】
本発明の別の態様は、流水殺菌方法である。この方法は、第1LEDに第1定格値の駆動電流を連続的に供給して第1流路内を流れる水に第1LEDからの紫外光を照射するとともに、第2LEDに第2定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、第2LEDに第2定格値未満の駆動電流を連続的に供給して第2流路内で滞留する水に第2LEDからの紫外光を照射するステップと、第2LEDに第2定格値の駆動電流を連続的に供給して第2流路内を流れる水に第2LEDからの紫外光を照射するとともに、第1LEDに第1定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、第1LEDに第1定格値未満の駆動電流を連続的に供給して第1流路内で滞留する水に第1LEDからの紫外光を照射するステップと、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、流水殺菌システムである。このシステムは、流路内の水に紫外光を照射するLEDを含む殺菌装置と、流路の流入口または流出口に接続される電磁弁と、LEDおよび電磁弁の動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、殺菌装置を稼働状態とする場合、電磁弁を開状態にしてLEDに定格値の駆動電流を連続的に供給し、殺菌装置を非稼働状態とする場合、電磁弁を閉状態にして、LEDに定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、LEDに定格値未満の駆動電流を連続的に供給する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、殺菌装置の非稼働時に発生しうる雑菌の混入を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る流水殺菌システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2(a),(b)は、第1LEDおよび第1電磁弁の制御例を模式的に示すタイミングチャートである。
図3】流水殺菌システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0012】
図1は、実施の形態に係る流水殺菌システム10の構成を概略的に示す図である。流水殺菌システム10は、複数の殺菌装置12a,12bを備える。流水殺菌システム10は、供給管14から供給される被処理水を複数の殺菌装置12a,12bの少なくとも一方で処理し、処理された水を出力管16に出力する。複数の殺菌装置12a,12bのそれぞれは、被処理水に紫外光を照射して殺菌するよう構成される。
【0013】
複数の殺菌装置12a,12bは、供給管14と出力管16の間に並列接続される。複数の殺菌装置12a,12bは、同時に稼働することができ、複数の殺菌装置12a,12bのいずれか一つが単独で稼働することもできる。図1の例では、流水殺菌システム10が二つの殺菌装置、つまり、第1殺菌装置12aおよび第2殺菌装置12bを備える場合を示す。
【0014】
流水殺菌システム10は、第1殺菌装置12aと、第2殺菌装置12bと、供給管14と、出力管16と、第1電磁弁18aと、第2電磁弁18bと、制御装置20とを備える。第1殺菌装置12aは、第1処理容器22aと、第1LED24aと、第1窓部材26aとを含む。
【0015】
第1処理容器22aは、被処理水が流れる第1流路28aを区画する。第1処理容器22aは、第1流入口30aと、第1流出口32aとを有する。第1流路28aは、第1流入口30aと第1流出口32aの間に設けられる。第1処理容器22aは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂材料から構成される。第1処理容器22aは、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料から構成されてもよい。
【0016】
第1LED24aは、第1流路28a内の被処理水に向けて第1窓部材26a越しに紫外光34aを照射する。第1LED24aは、波長260nm~285nm程度の深紫外光を出力するよう構成される。第1LED24aは、制御装置20から供給される駆動電流によって点灯する。第1LED24aは、第1流入口30aから第1窓部材26aに向けて被処理水が流れる方向に沿って紫外光34aを照射するように配置される。第1殺菌装置12aは、第1LED24aを一つだけ有してもよいし、複数の第1LED24aを有してもよい。
【0017】
第1窓部材26aは、第1流路28aと第1LED24aの間に設けられる。第1窓部材26aは、第1LED24aから出力される紫外光34aの透過率が高い材料で構成され、石英ガラス(SiO)やサファイア(Al)などで構成される。
【0018】
第2殺菌装置12bは、第2処理容器22bと、第2LED24bと、第2窓部材26bとを含む。第2殺菌装置12bは、第1殺菌装置12aと同様に構成される。第2殺菌装置12bは、第1殺菌装置12aと同一仕様となるように構成されてもよい。
【0019】
第2処理容器22bは、被処理水が流れる第2流路28bを区画する。第2処理容器22bは、第2流入口30bと、第2流出口32bとを有する。第2流路28bは、第2流入口30bと第2流出口32bの間に設けられる。第2処理容器22bは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂材料から構成される。第2処理容器22bは、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料から構成されてもよい。
【0020】
第2LED24bは、第2流路28b内の被処理水に向けて第2窓部材26b越しに紫外光34bを照射する。第2LED24bは、波長260nm~285nm程度の深紫外光を出力するよう構成される。第2LED24bは、制御装置20から供給される駆動電流によって点灯する。第2LED24bは、第2流入口30bから第2窓部材26bに向けて被処理水が流れる方向に沿って紫外光34bを照射するように配置される。第2殺菌装置12bは、第2LED24bを一つだけ有してもよいし、複数の第2LED24bを有してもよい。
【0021】
第2窓部材26bは、第2流路28bと第2LED24bの間に設けられる。第2窓部材26bは、第2LED24bから出力される紫外光34bの透過率が高い材料で構成され、石英ガラス(SiO)やサファイア(Al)などで構成される。
【0022】
第1電磁弁18aは、第1殺菌装置12aと供給管14の間に設けられる。第1電磁弁18aは、第1流路28aの第1流入口30aに設けられる。第1電磁弁18aは、第1殺菌装置12aに供給される被処理水の流れを制御する。第1電磁弁18aの動作は、制御装置20によって制御される。第1電磁弁18aが開状態となると、供給管14から第1殺菌装置12aに被処理水が供給され、第1流路28a内で被処理水が連続的に流れる。第1電磁弁18aが閉状態となると、供給管14から第1殺菌装置12aに被処理水が供給されなくなり、第1流路28a内で被処理水が滞留する。
【0023】
第2電磁弁18bは、第2殺菌装置12bと供給管14の間に設けられる。第2電磁弁18bは、第2流路28bの第2流入口30bに設けられる。第2電磁弁18bは、第2殺菌装置12bに供給される被処理水の流れを制御する。第2電磁弁18bの動作は、制御装置20によって制御される。第2電磁弁18bが開状態となると、供給管14から第2殺菌装置12bに被処理水が供給され、第2流路28b内で被処理水が連続的に流れる。第2電磁弁18bが閉状態となると、供給管14から第2殺菌装置12bに被処理水が供給されなくなり、第2流路28b内で被処理水が滞留する。
【0024】
制御装置20は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)などの集積回路を含む。制御装置20は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現できる。制御装置20は、ハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0025】
制御装置20は、第1LED24a、第2LED24b、第1電磁弁18aおよび第2電磁弁18bの動作を制御する。制御装置20は、第1LED24aおよび第2LED24bのそれぞれに供給する駆動電流を制御することで、第1LED24aおよび第2LED24bの点灯を制御する。制御装置20は、第1電磁弁18aおよび第2電磁弁18bのそれぞれの開閉を制御することで、第1流路28aおよび第2流路28bにおける被処理水の流れを制御する。
【0026】
制御装置20は、第1LED24aおよび第1電磁弁18aを制御することで、第1殺菌装置12aを稼働状態または非稼働状態にする。制御装置20は、第1殺菌装置12aを稼働状態とする場合、第1電磁弁18aを開状態にして第1殺菌装置12aに被処理水が供給されるようにする。制御装置20は、第1殺菌装置12aを稼働状態とする場合、第1LED24aに第1定格値の駆動電流を連続的に供給する。これにより、第1殺菌装置12aは、稼働状態において、第1流路28aを流れる被処理水に連続的に紫外光34aを照射し、殺菌された水を連続的に生成する。ここで「第1定格値」とは、第1殺菌装置12aにて被処理水を連続的に殺菌するために必要な紫外光34aの強度を得るための電流値である。第1定格値は、例えば、第1LED24aを最大強度で点灯させるために必要な電流値に相当する。
【0027】
制御装置20は、第1殺菌装置12aを非稼働状態とする場合、第1電磁弁18aを閉状態にして第1殺菌装置12aに被処理水が供給されないようにする。制御装置20は、第1殺菌装置12aを非稼働状態とする場合、第1LED24aに第1定格値以下の駆動電流を間欠的に供給するか、または、第1定格値未満の駆動電流を連続的に供給する。これにより、第1殺菌装置12aは、非稼働状態において、第1流路28a内に滞留する被処理水に紫外光34aを照射し、第1流路28a内に滞留する被処理水に雑菌が発生するのを防ぐようにする。なお、非稼働状態では被処理水の流れがないため、滞留する被処理水の殺菌に必要となる紫外光量は、稼働状態に比べて極めて少ない。非稼働状態では、第1LED24aを間欠点灯させたり、第1LED24aの強度を低くしたりしても、第1流路28a内に滞留する被処理水を十分に殺菌できる。
【0028】
第1殺菌装置12aの非稼働状態において第1LED24aに駆動電流を間欠的に供給する場合、制御装置20は、例えば、第1LED24aに数時間ごとに数秒程度の駆動電流を供給する。紫外光の照射によって殺菌された水に雑菌が再度発生するには6~8時間程度かかる。一方、第1流路28a内に滞留する被処理水の殺菌に必要な点灯時間は、稼働状態において被処理水が第1流路28aを通過する時間に相当する。第1殺菌装置12aの容量にもよるが、被処理水が第1流路28aを通過する時間は、例えば1~10秒程度である。したがって、例えば、1~5時間程度の周期で第1LED24aに第1定格値の駆動電流を10秒程度供給すれば、第1流路28a内に滞留する被処理水を十分に殺菌できる。なお、第1殺菌装置12aの非稼働状態において、第1LED24aに第1定格値未満の駆動電流を間欠的に供給してもよい。例えば、1~5時間程度の周期で第1LED24aに第1定格値の50%の駆動電流を20秒程度供給してもよい。
【0029】
第1殺菌装置12aの非稼働状態において第1LED24aに駆動電流を連続的に供給する場合、制御装置20は、第1LED24aに第1定格値未満の駆動電流を供給する。制御装置20は、例えば、第1定格値の20%以下の駆動電流を連続的に供給し、例えば、第1定格値の10%または5%の駆動電流を連続的に供給する。第1殺菌装置12aの非稼働状態において第1LED24aに供給される駆動電流は、第1LED24aが駆動可能となる駆動電流の最低値であってもよい。第1定格値の5%や10%の駆動電流であっても、第1LED24aを連続的に点灯させることで、第1流路28a内に滞留する被処理水を十分に殺菌できる。
【0030】
図2(a),(b)は、第1LED24aおよび第1電磁弁18aの制御例を模式的に示すタイミングチャートである。図2(a)、(b)において、第1期間41は第1殺菌装置12aの稼働状態であり、第2期間42は第1殺菌装置12aの非稼働状態であり、第3期間43は第1殺菌装置12aの稼働状態である。図2(a)、(b)において、第1LED24aの駆動電流の第1定格値を1としている。
【0031】
図2(a)は、非稼働状態となる第2期間42において、第1LED24aを間欠的に点灯させる制御例を示す。稼働状態となる第1期間41および第3期間43では、第1LED24aに第1定格値の駆動電流が供給され、第1電磁弁18aが開状態となる。非稼働状態となる第2期間42において、第1LED24aに第1定格値の駆動電流が間欠的に供給され、第1電磁弁18aが閉状態となる。第2期間42において、第1LED24aに供給される駆動電流が0となる時間t1は、例えば1時間である。第2期間42において、第1LED24aに供給される駆動電流が第1定格値となる時間t2は、例えば5秒である。
【0032】
図2(b)は、非稼働状態となる第2期間42において、第1LED24aを連続的に点灯させる制御例を示す。稼働状態となる第1期間41および第3期間43では、第1LED24aに第1定格値の駆動電流が供給され、第1電磁弁18aが開状態となる。非稼働状態となる第2期間42において、第1LED24aに第1定格値の10%の駆動電流が連続的に供給され、第1電磁弁18aが閉状態となる。
【0033】
制御装置20は、第1殺菌装置12aと同様、第2殺菌装置12bが稼働状態または非稼働状態となるように第2LED24bおよび第2電磁弁18bを制御する。制御装置20は、第2殺菌装置12bを稼働状態とする場合、第2電磁弁18bを開状態にして第2殺菌装置12bに被処理水が供給されるようにする。制御装置20は、第2殺菌装置12bを稼働状態とする場合、第2LED24bに第2定格値の駆動電流を連続的に供給する。これにより、第2殺菌装置12bは、稼働状態において、第2流路28bを流れる被処理水に連続的に紫外光34bを照射し、殺菌された水を連続的に生成する。なお「第2定格値」とは、第2殺菌装置12bにて被処理水を連続的に殺菌するために必要な紫外光34bの強度を得るための電流値である。第2定格値は、例えば、第2LED24bを最大強度で点灯させるために必要な電流値に相当する。第2定格値は、第1定格値と同じであってもよい。
【0034】
制御装置20は、第2殺菌装置12bを非稼働状態とする場合、第2電磁弁18bを閉状態にして第2殺菌装置12bに被処理水が供給されないようにする。制御装置20は、第2殺菌装置12bを非稼働状態とする場合、第2LED24bに第2定格値以下の駆動電流を間欠的に供給するか、または、第1定格値未満の駆動電流を連続的に供給する。これにより、第2殺菌装置12bは、非稼働状態において、第2流路28b内に滞留する被処理水に紫外光34bを照射し、第2流路28b内に滞留する被処理水に雑菌が発生するのを防ぐようにする。非稼働状態では、第2LED24bを間欠点灯させたり、第2LED24bの強度を低くしたりしても、第2流路28b内に滞留する被処理水を十分に殺菌できる。
【0035】
制御装置20は、所定条件の充足を契機として、第1殺菌装置12aおよび第2殺菌装置12bの一方を稼働状態とし、他方を非稼働状態とする。制御装置20は、例えば、第1殺菌装置12aを稼働状態として第2殺菌装置12bを非稼働状態とする第1モードと、前記第1殺菌装置を非稼働状態として前記第2殺菌装置を稼働状態とする第2モードとを切り替えるようにする。制御装置20は、例えば、所定時間の経過を契機として、第1モードと第2モードを交互に切り替えるようにする。これにより、流水殺菌システム10の処理能力を維持しながら、第1殺菌装置12aおよび第2殺菌装置12bを交互に使用できる。
【0036】
制御装置20は、第1殺菌装置12aまたは第2殺菌装置12bの異常を検知した場合に、第1モードと第2モードを切り替えてもよい。例えば、第1モードにおいて稼働状態である第1殺菌装置12aにて異常が検知された場合、第1モードから第2モードに切り替えることで、異常が検知された第1殺菌装置12aから予備の第2殺菌装置12bに切り替えることができる。これにより、第1殺菌装置12aに異常が検知された場合であっても、流水殺菌システム10の処理能力を維持できる。
【0037】
第1モードから第2モードに切り替える場合、第1モードにて非稼働状態である第2殺菌装置12bにて滞留していた水が出力管16から出力される。このとき、第1モードにおいて第2流路28b内に滞留する被処理水が殺菌されているため、出力管16から出力される水に雑菌が混入することを抑制できる。同様に、第2モードから第1モードに切り替える場合、第2モードにて非稼働状態である第1殺菌装置12aにて滞留していた水が出力管16から出力される。このとき、第2モードにおいて第1流路28a内に滞留する被処理水が殺菌されているため、出力管16から出力される水に雑菌が混入することを抑制できる。その結果、第1モードと第2モードを切り替えて使用する場合であっても、出力管16から出力される水に一時的に雑菌が混入することを抑制でき、流水殺菌システム10から衛生的な水を連続的に供給できる。
【0038】
図3は、流水殺菌システム10の動作例を示すフローチャートである。図3は、第1モードと第2モードを交互に切り替えて流水殺菌システム10を動作させる場合を示す。まず、第1モードに切り替える場合(S10のY)、第1電磁弁18aを開状態にし(S12)、第2電磁弁18bを閉状態にする(S14)。第1モードに切り替える場合ではなく(S10のN)、第2モードに切り替える場合(S16のY)、第2電磁弁18bを開状態にし(S18)、第1電磁弁18aを閉状態にする(S20)。S16にて第2モードに切り替えない場合(S16のN)、つまり、モード切替をしない場合、S18~S20の処理をスキップする。
【0039】
つづいて、第1モードであれば(S22のY)、第1LED24aに第1定格値の駆動電流を連続供給し(S24)、第2LED24bに第2定格値未満の駆動電流を連続供給するか、または、第2LED24bに第2定格値以下の駆動電流を間欠供給する(S26)。S22にて第1モードではなく、第2モードである場合(S22のN)、第2LED24bに第2定格値の駆動電流を連続供給し(S28)、第1LED24aに第1定格値未満の駆動電流を連続供給するか、または、第1LED24aに第1定格値以下の駆動電流を間欠供給する(S30)。
【0040】
本実施の形態によれば、第1モードと第2モードを交互に切り替えることで、第1殺菌装置12aと第2殺菌装置12bを交互に利用できる。その結果、第1殺菌装置12aおよび第2殺菌装置12bのいずれか一方を連続して利用する場合に比べて、流水殺菌システム10を連続的に使用できる期間を長くできる。また、第1殺菌装置12aおよび第2殺菌装置12bのいずれか一方に異常が生じた場合であっても、異常のない予備の殺菌装置に切り替えることで、異常が生じた装置のメンテナンスを実行できる。非稼働状態の殺菌装置内に滞留する水を殺菌しておくことで、モード切替時に雑菌が出力管16に出力されてしまうことを抑制できる。非稼働状態の殺菌装置においてLEDの駆動電流を稼働状態に比べて低くしたり、間欠的に供給したりすることで、非稼働状態の殺菌装置の消費電力を抑制できる。
【0041】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0042】
上述の実施の形態では、第1流路28aの第1流入口30aに第1電磁弁18aが設けられ、第2流路28bの第2流入口30bに第2電磁弁18bが設けられる場合について示した。別の実施の形態では、殺菌装置が備える流路の流出口に電磁弁が設けられてもよい。つまり、第1電磁弁18aは、第1殺菌装置12aと出力管16の間に設けられ、第1流路28aの第1流出口32aに設けられてもよい。第2電磁弁18bは、第2殺菌装置12bと出力管16の間に設けられ、第2流路28bの第2流出口32bに設けられてもよい。したがって、電磁弁は、殺菌装置が備える流路の流入口または流出口のいずれか一方に設けられてもよい。なお、電磁弁は、殺菌装置が備える流路の流入口または流出口の双方に設けられてもよい。
【0043】
上述の実施の形態では、流水殺菌システム10が二つの殺菌装置12a、12bを備える場合について説明した。別の実施の形態に係る流水殺菌システムは、殺菌装置を三以上備えてもよい。この場合、三以上の殺菌装置の少なくとも一つを稼働状態とし、残りを非稼働状態とすることで動作モードが切り替えされてもよい。例えば、第1殺菌装置および第2殺菌装置を稼働状態とする第1モード、第2殺菌装置および第3殺菌装置を稼働状態とする第2モード、第1殺菌装置および第3殺菌装置を稼働状態とする第3モードが用意され、各モードが所定条件の充足を契機に切り替えされてもよい。
【0044】
さらに別の実施の形態に係る流水殺菌システムは、殺菌装置を一つだけ備えてもよい。この場合、流水殺菌システムは、流路内の水に紫外光を照射するLEDを含む殺菌装置と、流路の流入口または流出口に接続される電磁弁と、LEDおよび電磁弁の動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、殺菌装置を稼働状態とする場合、電磁弁を開状態にして前記LEDに定格値の駆動電流を連続的に供給してもよい。制御装置は、殺菌装置を非稼働状態とする場合、電磁弁を閉状態にして、LEDに定格値以下の駆動電流を間欠的に供給し、または、LEDに定格値未満の駆動電流を連続的に供給してもよい。
【0045】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0046】
本発明の第1の態様は、第1流路内の水に紫外光を照射する第1LEDを含む第1殺菌装置と、第2流路内の水に紫外光を照射する第2LEDを含む第2殺菌装置と、前記第1殺菌装置および前記第2殺菌装置に被処理水を供給する供給管と、前記第1殺菌装置または前記第2殺菌装置にて処理された水が出力される出力管と、前記第1流路の流入口または流出口に設けられる第1電磁弁と、前記第2流路の流入口または流出口に設けられる第2電磁弁と、前記第1LED、前記第2LED、前記第1電磁弁および前記第2電磁弁の動作を制御する制御装置と、を備え、前記第1殺菌装置および前記第2殺菌装置は、前記供給管と前記出力管の間に並列接続され、前記制御装置は、a)前記第1殺菌装置を稼働状態とする場合、前記第1電磁弁を開状態にして前記第1LEDに第1定格値の駆動電流を連続的に供給し、b)前記第1殺菌装置を非稼働状態とする場合、前記第1電磁弁を閉状態にして、前記第1LEDに前記第1定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記第1LEDに前記第1定格値未満の駆動電流を連続的に供給し、c)前記第2殺菌装置を稼働状態とする場合、前記第2電磁弁を開状態にして前記第2LEDに第2定格値の駆動電流を連続的に供給し、d)前記第2殺菌装置を非稼働状態とする場合、前記第2電磁弁を閉状態にして、前記第2LEDに前記第2定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記第2LEDに前記第2定格値未満の駆動電流を連続的に供給する、流水殺菌システムである。第1の態様によれば、流水殺菌システムが複数の殺菌装置を備えることで、処理能力を増減させたり、複数の殺菌装置を切り替えながら連続使用したりすることができる。また、殺菌装置を非稼働状態とする場合にLEDを間欠点灯させるか、または、低出力で連続点灯させることで、消費電力を抑えながら殺菌装置内に滞留する水を殺菌できる。これにより、非稼働状態の殺菌装置内で雑菌が繁殖することを抑制でき、殺菌装置を非稼働状態から稼働状態に切り替える場合に雑菌が一時的に混入することを抑制できる。
【0047】
本発明の第2の態様は、前記制御装置は、前記第1殺菌装置を稼働状態として前記第2殺菌装置を非稼働状態とする第1モードから、前記第1殺菌装置を非稼働状態として前記第2殺菌装置を稼働状態とする第2モードに切り替える、第1の態様に記載の流水殺菌システムである。第2の態様によれば、第1モードから第2モードに切り替えることで、流水殺菌システムの処理能力を維持しながら稼働する殺菌装置を切り替えできる。
【0048】
本発明の第3の態様は、前記制御装置は、所定条件の充足を契機として、前記第1モードと前記第2モードを交互に切り替える、第2の態様に記載の流水殺菌システムである。第3の態様によれば、第1モードと第2モードを交互に切り替えることで、流水殺菌システムの処理能力を維持しつつ、流水殺菌システムを連続使用できる時間を長くできる。
【0049】
本発明の第4の態様は、第1LEDに第1定格値の駆動電流を連続的に供給して第1流路内を流れる水に前記第1LEDからの紫外光を照射するとともに、第2LEDに第2定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記第2LEDに前記第2定格値未満の駆動電流を連続的に供給して第2流路内で滞留する水に前記第2LEDからの紫外光を照射するステップと、前記第2LEDに前記第2定格値の駆動電流を連続的に供給して前記第2流路内を流れる水に前記第2LEDからの紫外光を照射するとともに、前記第1LEDに前記第1定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記第1LEDに前記第1定格値未満の駆動電流を連続的に供給して前記第1流路内で滞留する水に前記第1LEDからの紫外光を照射するステップと、を備える流水殺菌方法である。第4の態様によれば、前記第1殺菌装置を稼働状態として前記第2殺菌装置を非稼働状態とする第1モードと、前記第1殺菌装置を非稼働状態として前記第2殺菌装置を稼働状態とする第2モードとを利用することができる。また、殺菌装置を非稼働状態とする場合にLEDを間欠点灯させるか、または、低出力で連続点灯させることで、消費電力を抑えながら殺菌装置内に滞留する水を殺菌できる。これにより、非稼働状態の殺菌装置内で雑菌が繁殖することを抑制でき、殺菌装置を非稼働状態から稼働状態に切り替える場合に雑菌が一時的に混入することを抑制できる。
【0050】
本発明の第5の態様は、流路内の水に紫外光を照射するLEDを含む殺菌装置と、前記流路の流入口または流出口に接続される電磁弁と、前記LEDおよび前記電磁弁の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記殺菌装置を稼働状態とする場合、前記電磁弁を開状態にして前記LEDに定格値の駆動電流を連続的に供給し、前記殺菌装置を非稼働状態とする場合、前記電磁弁を閉状態にして、前記LEDに前記定格値以下の駆動電流を間欠的に供給、または、前記LEDに前記定格値未満の駆動電流を連続的に供給する流水殺菌システムである。第5の態様によれば、菌装置を非稼働状態とする場合にLEDを間欠点灯させるか、または、低出力で連続点灯させることで、消費電力を抑えながら殺菌装置内に滞留する水を殺菌できる。これにより、非稼働状態の殺菌装置内で雑菌が繁殖することを抑制でき、殺菌装置を非稼働状態から稼働状態に切り替える場合に雑菌が一時的に混入することを抑制できる。
【符号の説明】
【0051】
10…流水殺菌システム、12…殺菌装置、12a…第1殺菌装置、12b…第2殺菌装置、14…供給管、16…出力管、18…電磁弁、18a…第1電磁弁、18b…第2電磁弁、20…制御装置、24a…第1LED、24b…第2LED、28a…第1流路、28b…第2流路、30a…第1流入口、30b…第2流入口、32a…第1流出口、32b…第2流出口、34a,34b…紫外光。
図1
図2
図3