(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】建設車両用の緊急停止装置及び建設車両
(51)【国際特許分類】
B60T 7/06 20060101AFI20220927BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220927BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B60T7/06 D
B60T7/12 C
E02F9/16 J
(21)【出願番号】P 2021046927
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391033115
【氏名又は名称】株式会社カナモト
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 道信
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-218310(JP,A)
【文献】特開2019-137992(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029472(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第02640768(DE,A1)
【文献】特開昭54-135978(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113715788(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00-7/10
B60T 7/12-8/1769
E02F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足踏み式のブレーキペダルの傾動作動によって制動装置を制御する建設車両用の緊急停止装置であって、
障害物を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段からの
障害物の存在を検出した信号を受ける制御手段と、前記制御手段からの信号に基づいて前記制動装置を制御する制動補助装置と、を備え、
前記制動装置と前記制動補助装置とは、前記ブレーキペダルの傾動作動に連携して回動作動することで前記制動装置を操作可能な軸を共用し、
前記制動補助装置は、
前記制御手段からの信号に基づいて前後進作動する動作部と、
一端が車体側に固定されると共に、他端が前記動作部の先端に固定された柔軟性を有するベルト部と、
前記ベルト部が連携し、前記動作部の前後進作動によって前記軸を回動作動させる連携部と、を含むことを特徴とする建設車両用の緊急停止装置。
【請求項2】
前記動作部は、前後進作動するシリンダロッドを備えた第二油圧シリンダで、
前記第二油圧シリンダは、前記シリンダロッドの先端に前記ベルト部の他端を固定する固定部を備え、
前記固定部は、前記シリンダロッドの先端にて揺動可能に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の建設車両用の緊急停止装置。
【請求項3】
前記固定部は、前記シリンダロッドが前進位置にあり前記ベルト部にテンションが掛かっていない障害物非検出時には、自重によって下方に向けて回動しており、
前記シリンダロッドが前進位置から後進動作を開始し、前記ベルト部にテンションが掛かる障害物検出時には、上方に向けて回動することを特徴とする請求項2に記載の建設車両用の緊急停止装置。
【請求項4】
前記連携部は、前記軸から一体に延設される第三レバー部と、
前記第三レバー部に回転自在に設けられて前記ベルト部が架け回されるプーリーと、で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の建設車両用の緊急停止装置。
【請求項5】
建設車両の周囲の所定領域内における映像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から出力される映像信号を処理し、前記所定領域内における障害物の存在を検出した場合に立上がるとともに、前記所定領域内からの前記障害物の退避を検出した場合に立下がる障害物信号を送出する障害物検出手段と、を含み、
前記制動補助装置は、
前記障害物信号の立上りに基づき前記動作部を作動させて前記ベルト部を引き寄せることで前記連携部を介して前記軸を回動操作させて前記制動装置を制御して車両の緊急停止を行うとともに、前記障害物信号の立下りに基づき、前記動作部を作動させて前記ベルト部の引き寄せ状態を解除することで前記連携部を介して前記軸を回動操作させて前記制動装置を制御して車両の緊急停止を解除することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の建設車両用の緊急停止装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の建設車両用の緊急停止装置を備えたことを特徴とする建設車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設車両用の緊急停止装置、特にホイールローダ等、足踏み式ブレーキペダルを備えている建設車両における緊急停止装置、及びこの緊急停止装置を備えた建設車両に関する。なお、本発明において建設車両には、トラックやダンプカーなども含め、建設現場にて用いられる車両一般をいうものとする。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ等の建設車両は、車両として走行するため、その周囲、特に後方の状況を的確に把握し、障害物、特に人との接触による事故を未然に防止する必要がある。このため従来から、障害物を検出すると、強制的にブレーキを掛けて車両を停止させる種々の安全装置(制動制御装置)が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1をはじめとする従来技術に係る安全装置は、建設車両に初めから搭載されているものであり、このような安全装置が搭載されていない建設車両に後付けで安全装置を搭載させるには極めて困難かつコスト高となってしまうと考えられる。すなわち、障害物を検出した際に自動的にブレーキを掛けて車両を停止し得る後付けの安全装置は知られていない。
【0004】
また、特許文献2には、障害物を検出した際に、自動的にブレーキペダルを傾動操作させて強制的にブレーキを掛けることで車両を停止させることのできる安全装置を提案している。すなわち、特許文献2に開示の安全装置は、操縦室内に備えられているブレーキペダルに直接アクチュエータを接続し、障害物を検出すると、アクチュエータが作動して、直接ブレーキペダルを押し下げるように傾動させて強制的にブレーキを掛ける構造である。
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示の構造を、安全装置の備えられていない建設車両に後付けで備えようと想定した場合、操縦室内におけるブレーキペダルの周辺に装置の一部あるいは全部を備える必要がある。
このような装置を後付けで操縦室内に備えようとすると、操縦室内が極めて狭い空間であるため、配設スペースの確保が困難である。
また、ブレーキペダルを安全装置の構成要素の一つとして機能させているため、ブレーキペダルにアクチュエータとの連結機構を取り付ける必要がある。このような連結機構を設けることにより、連結機構が邪魔になってブレーキペダルの操作性を損ねてしまう虞がある。
さらに、安全装置の少なくとも一部が操縦室内に備えられる構造であるため、操縦者が操縦室に乗り込む際や操縦中に誤って安全装置を蹴飛ばしてしまったりする虞や、飲料水などをこぼしてしまったりする虞などもあり、安全装置の破損を招くことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平08-218310号公報
【文献】特開2019-137992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の有する課題を解決するためになされたものであり、建設車両の制動装置の軸を共用して強制的にブレーキを掛けることの可能な構成を採用し、緊急時における車両の緊急停止動作を後付けにて車両に付与することを可能とした建設車両用の緊急停止装置及びその緊急停止装置を備えた建設車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する第一の発明は、足踏み式のブレーキペダルの傾動作動によって制動装置を制御する建設車両用の緊急停止装置であって、
障害物を検出する障害物検出手段と、前記障害物検出手段からの障害物の存在を検出した信号を受ける制御手段と、前記制御手段からの信号に基づいて前記制動装置を制御する制動補助装置と、を備え、
前記制動装置と前記制動補助装置とは、前記ブレーキペダルの傾動作動に連携して回動作動することで前記制動装置を操作可能な軸を共用し、
前記制動補助装置は、
前記制御手段からの信号に基づいて前後進作動する動作部と、
一端が車体側に固定されると共に、他端が前記動作部の先端に固定された柔軟性を有するベルト部と、
前記ベルト部が連携し、前記動作部の前後進作動によって前記軸を回動作動させる連携部と、を含むことを特徴とする建設車両用の緊急停止装置としたことである。
【0009】
第二の本発明は、第一の本発明において、
前記動作部は、前後進作動するシリンダロッドを備えた第二油圧シリンダで、
前記第二油圧シリンダは、前記シリンダロッドの先端に前記ベルト部の他端を固定する固定部を備え、
前記固定部は、前記シリンダロッドの先端にて揺動可能に備えられていることを特徴とする建設車両用の緊急停止装置としたことである。
【0010】
第三の本発明は、第二の本発明において、
前記固定部は、前記シリンダロッドが前進位置にあり前記ベルト部にテンションが掛かっていない障害物非検出時には、自重によって下方に向けて回動しており、
前記シリンダロッドが前進位置から後進動作を開始し、前記ベルト部にテンションが掛かる障害物検出時には、上方に向けて回動することを特徴とする建設車両用の緊急停止装置としたことである。
【0011】
第四の本発明は、第一の本発明乃至第三の本発明のいずれかにおいて、
前記連携部は、前記軸から一体に延設される第三レバー部と、
前記第三レバー部に回転自在に設けられて前記ベルト部が架け回されるプーリーと、で構成されていることを特徴とする建設車両用の緊急停止装置としたことである。
【0012】
第五の本発明は、第一の本発明乃至第四の本発明のいずれかにおいて、建設車両の周囲の所定領域内における映像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から出力される映像信号を処理し、前記所定領域内における障害物の存在を検出した場合に立上がるとともに、前記所定領域内からの前記障害物の退避を検出した場合に立下がる障害物信号を送出する障害物検出手段と、を含み、
前記制動補助装置は、
前記障害物信号の立上りに基づき前記動作部を作動させて前記ベルト部を引き寄せることで前記連携部を介して前記軸を回動操作させて前記制動装置を制御して車両の緊急停止を行うとともに、前記障害物信号の立下りに基づき、前記動作部を作動させて前記ベルト部の引き寄せ状態を解除することで前記連携部を介して前記軸を回動操作させて前記制動装置を制御して車両の緊急停止を解除することを特徴とする建設車両用の緊急停止装置としたことである。
【0013】
第六の本発明は、第一の本発明乃至第五の本発明のいずれかに記載の建設車両用の緊急停止装置を備えたことを特徴とする建設車両としたことである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建設車両の制動装置の軸を共用して強制的にブレーキを掛けることの可能な構成を採用し、緊急時における車両の緊急停止動作を後付けにて車両に付与することを可能とした建設車両用の緊急停止装置及びその緊急停止装置を備えた建設車両を提供し得る。従って本発明によれば、従来技術のように建設車両の操縦室内に安全装置の一部又は全部を備え、ブレーキペダルを直に操作する構成を採用しないため、操縦室内の設置スペースの確保を考慮する必要性もなく、かつ通常のブレーキ操作に支障を及ぼす虞もない。また、操縦室内にて誤って蹴飛ばしたりして破損する虞もない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明建設車両用の緊急停止装置の概略を示す部分拡大斜視図で、緊急停止時ではない状態を示す。
【
図2】本発明建設車両用の緊急停止装置の概略を示す部分拡大斜視図で、緊急停止時の状態を示す。
【
図4】
図3の状態から緊急停止動作が開始された状態を概略にて示す側面図である。
【
図5】
図2に示す緊急停止時の状態を概略にて示す側面図である。
【
図6】本発明の実施形態の緊急停止装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明の一実施形態であって何等限定解釈されるものではない。
【0017】
「第一実施形態」
本実施形態では、本発明が適用される建設車両の一実施形態として、一般的なホイールローダを想定している。ホイールローダの車両全体については図示省略するが、本発明の構造以外のホイールローダ一般の構造については備えている。
また、本実施形態では、本発明者が先に出願した特開2020-125672号公報に開示の安全装置を備えているものとする。
【0018】
ホイールローダは、本実施形態では、足踏み式のブレーキペダル21の傾動作動と連携する制動装置20と、障害物を検出する障害物検出手段10A(10B,10C)と、障害物検出手段10A(10B,10C)からの障害物の存在を検出した信号を受ける制御手段12と、制御手段12からの緊急停止信号に基づいて制動装置20を制御する制動補助装置40と、を備えている。
【0019】
制動装置20は、足踏み式のブレーキペダル21の傾動作動によって制御される一般的な制動装置であって、例えば、その一例を
図1に基いて説明する。
ホイールローダの運転室の床面に備えられ、運転手の踏み込み操作によって傾動作動する足踏み式のブレーキペダル21と、ブレーキペダル21と連携して上下作動するリンク23と、リンク23と第一レバー部25を介して回動可能に連携して備えられた軸27と、軸27と第二レバー部29を介して連携して軸27を回動操作する第一油圧シリンダ(マスターシリンダ)31とを含んで構成されている(
図1及び
図2参照。)。
【0020】
すなわち、制動装置20は、ホイールローダ等の建設車両において一般的なブレーキ構成を有しており、ブレーキペダル21を踏み込むと、リンク23を介して第一レバー部25に押し下げ力が掛かる。
第一レバー部25に押し下げ力が掛かると、第一レバー部25と一体に連絡されている軸27が回転作動する(図中符合R1で示す反時計回り方向に回転作動する。)。軸27が回転作動をすると、軸27と一体に連絡されている第二レバー部29が軸27とともに回転作動を開始する。第二レバー部29が回転作動を開始すると、第二レバー部29に一体に連絡されている第一油圧シリンダ31のシリンダロッド31aが後進作動を開始し、第一油圧シリンダ31からの油圧を図示しないホイールブレーキに導いて制動する(
図1及び
図2参照。)。
また、上記作動とは逆に、ブレーキペダル21の踏み込みを解除すると、第一油圧シリンダ31内に油が供給されてシリンダロッド31aが前進作動する。
そしてこのシリンダロッド31aの前進作動によって、第二レバー部29が軸27とともに回転作動するとともに、第一レバー部25も回転作動(図中符合R2で示す時計回り方向に回転作動)し、リンク23を鉛直方向で上方に向けて押上げてブレーキペダル21を元に戻すように傾動させる。
【0021】
本実施形態では、ホイールローダの周囲の所定領域内における映像を撮像する撮像手段を備えている。例えば、車体の周囲、特に後方の様子を撮像する3台の赤外線カメラ6A,6B,6Cを撮像手段として備えた形態を想定している(
図6参照。)。なお、障害物が人であるか否かの判断は、映像信号の処理に、例えばいわゆるAI(artificial intelligence、以下同じ)技術を利用することで良好に実施することができる。
【0022】
障害物検出手段(障害物検出部)は、各赤外線カメラ6A,6B,6Cから出力される映像信号を処理し、所定領域内における障害物の存在を検出した場合に障害物信号S7~S9が立上がり、その信号が制御部12へと送出され、所定領域内からの障害物の退避を検出した場合に障害物信号S7~S9が立下り、その信号を制御部12へと送出する(
図6参照。)。
本実施形態では、3個の赤外線カメラ6A,6B,6Cに合わせて、3個の障害物検出手段(障害物検出部)10A,10B,10Cを備える形態を想定している。
【0023】
本形態における障害物検出手段(障害物検出部)は人を障害物として検出しているが、これは、例えば障害物検出手段を次のように構成することで実現できる。すなわち、映像信号に含まれる赤外線情報を処理するとともに、映像信号に含まれる情報を特定のパターンと比較した結果に基づき障害物の種類を特定する。例えば、赤外線情報で体温を検出することで人を含む動物であるか否かを切り分け、パターン認識で人に関する特徴的なパターンを有するか否かを検出する等により障害物が人であることを特定する。これはAI処理を導入することで良好に実現し得る。
【0024】
本実施形態では、ホイールローダに最も近く危険度の高い領域を第1領域、第1領域よりも遠く離れた領域で、第1領域よりも危険度が低い領域を第2領域と設定している。
そして、障害物検出手段は、人(障害物)が第1領域にて検出されたのか、第2領域にて検出されたのか、を示す信号を、第1領域信号S10、第2領域信号S11として領域識別部11及び映像切替部14に送出する。
【0025】
領域識別部11では、第1領域信号S10又は第2領域信号S11に基づき、人(障害物)が存在する領域が第1領域なのか第2領域なのかを特定し、第1領域、第2領域の何れであるかを表す領域信号S12を制御部12に送出する。
【0026】
映像生成部13A,13B,13Cも赤外線カメラ6A,6B,6Cに対応させて3個設けてあり、入力される映像信号に距離信号を重畳する等、所定の加工処理を行い、モニタ15で可視化し得る映像信号として映像切替部14に送出する(
図6参照。)。
映像切替部14は、スイッチ機能を有するもので、映像信号のいずれか一つを選択してモニタ15に送出する。さらに詳言すると、映像切替部14には各障害物検出手段(障害物検出部)10A,10B,10Cからの障害物信号S7~S9が供給されている。この結果、障害物信号S7~S9および第1領域信号S10または第2領域信号S11に基づき所定条件の下での論理演算を行うことにより映像信号S13~S15のいずれか一つを選択する。
具体的には、基本的に障害物信号S7~S9のうち時間的に最も早く立上ったものに対応する映像信号S7~S9を優先的に選択し、選択された映像信号S7~S9の立下りのタイミングで次の映像信号S7~S9に切替える。ここで、第1領域信号S10に対応する映像信号S7~S9は第2領域信号S11に対応する映像信号S13~S15に優先して選択されるとともに、第2領域信号S11に対応する映像信号S13~S15の選択中に第1領域信号S10に対応する障害物信号S7~S9が立上った場合には、このときの第1領域信号S10に対応する映像信号S13~S15を優先的に選択して割り込ませる。
【0027】
本実施形態における赤外線カメラにはそれぞれ対象物までの距離を計測し得るものとなっている。この結果、各赤外線カメラからは、それぞれが取得した画像を表す映像信号とともに、それぞれの対象物までの距離を表す距離信号も送出される。
このように撮像手段は、距離計を備えた赤外線カメラで好適に構成することができるが、距離計の機能は必ずしも必要ではない。また、赤外線カメラは一台あれば本形態の最低限度の機能は担保できる。
測距機能を備えるとともに対象物の赤外線情報を同時に得ることができる撮像手段として、デブスカメラが知られている。このデブスカメラは奥行も含めた3D情報を取得する深度センサによって対象物との距離を認識し、正確な空間把握を実現するものである。したがって、本形態における撮像手段としては最適なものとなる。
【0028】
制御部12は、領域識別部11から送出された領域信号S12が、緊急停止信号(第1領域信号S10)であった場合、制動補助装置40を制御して制動装置20を強制的に作動させてホイールローダを緊急停止させる。
また、領域識別部11から送出された領域信号S12が第2領域信号S11であった場合には、第1領域にて人が検出された場合と比して緊急性が低いため、制動補助装置40を制御して制動装置20を強制的に作動させることなく、緊急停止の予備動作として、例えば、音や光などにより警告を発するように制御する。なお、領域信号S12が第2領域信号S11であった場合であっても、制御部12は、制動補助装置40を制御して制動装置20を強制的に作動させてホイールローダを緊急停止させるように設定することも可能で本発明の範囲内である。
【0029】
制動補助装置40は、制御手段(制御部)12からの緊急停止信号(第1領域信号S10)の立上りや、緊急停止信号(第1領域信号S10)の立下がりに基づいて前後進作動する動作部41と、一端が車体側に固定されると共に、他端が動作部41の先端に固定された柔軟性を有するベルト部53と、ベルト部53が連携し、動作部41の前後進作動によって、制動装置20の軸27を回動作動させる連携部と、を含んで構成されている。このように、本実施形態では、制動補助装置40において、制動装置20の軸27を共用している。
【0030】
動作部41は、制御手段(制御部)12からの緊急停止信号(第1領域信号S10)の立ち上がり・立下りに基づいて前後進作動するシリンダロッド43を備えた第二油圧シリンダ(サブシリンダ)で、ホイールローダの車体の所定位置に取付固定されている。
【0031】
第二油圧シリンダ41は、シリンダロッド43の先端にベルト部53の他端を固定する固定部45を備え、制御手段(制御部)12からの緊急停止信号(第1領域信号S10)の立ち上がり・立下りに基づいて油圧が制御されている。
【0032】
固定部45は、上部材47と下部材49とでベルト部53の他端を挟み込み可能に構成されており、シリンダロッド43の先端にて上下方向に揺動(回動)可能に軸支されて備えられている(
図1乃至
図5参照。)。
上部材47と下部材49とは、それぞれ同一の矩形板上に形成され、上下方向からベルト部53の他端を挟み込むとともに、カバー部51によって双方が離れないように固定されている。そして、その後端側がシリンダロッド43の先端位置にて連結軸55によって揺動(上下方向に回動)自在に軸支されている。
【0033】
ベルト部53は、例えば、本実施形態では、図示するように、ゴム材や軟質合成樹脂材など柔軟性を有する材質からなるタイミングベルトを想定している。
ベルト部53は、他端が第二油圧シリンダ41のシリンダロッド43の先端にて固定部45によって外れないように固定されるとともに、一端が第二の固定部46によって外れないように固定されている。第二の固定部46は、第二油圧シリンダ41の直上位置にてホイールローダの車体の任意位置に取付固定されている。
なお、ベルト部53は、柔軟性を有し、かつシリンダロッド43の前後進作動によって、連携部59を引き寄せ可能な構成を有しているものであれば本実施形態に限定解釈されるものではなく任意に設計変更可能である。
【0034】
本実施形態では、非制動時において、シリンダロッド43は前進作動して突出しており、その時、ベルト部53は多少弛んだ状態となるように設定されている。また、ベルト部53が弛むことによって、シリンダロッド43の先端にて揺動(回動)可能に軸支されている固定部45は、緊張状態が解除されることによって、連結軸55を回転中心として、自重によって下方(図中符号R3で示す方向)に向けて回動するように設定されている(
図1及び
図3参照。)。
【0035】
連携部59は、例えば、本実施形態では、軸27と一体の第三レバー部61と、第三レバー部61に設けたプーリー63とで構成されている。
【0036】
第三レバー部61は、略L字型に形成された本体61aと、本体61aと一体に成形され、軸27の外周に一体に固着される軸固着部61bとで構成されている。軸固着部61bは、軸27の外周に一体に固着されて軸27と一緒に回転作動するように固着されていればよく、軸27の外周に対して溶着、接着あるいはボルト止めなど周知の一体形態が本発明の範囲内で適宜選択可能である。
【0037】
プーリー63は、第三レバー部61の本体61aの側面にて、矢印R7,R8方向に回動自在に軸支して備えられており、その外周にベルト部(タイミングベルト)53が架け回されている。
【0038】
なお、連携部59は、軸27と一体に備えられ、ベルト部53によって引き寄せられて軸27を回動させることができるものであれば本実施形態に限定解釈されるものではなく、例えば軸27に固着される軸固着部と軸固着部から下方に一体に延びた平板状のレバー部とで構成されているものなど任意に設計変更可能である。
【0039】
本実施形態によれば、制御手段(制御部)12に緊急停止信号(第1領域信号S10)が送出されると、制御手段12は、制動補助装置40を制御する。
具体的には、制御手段12は、第二油圧シリンダ41の油圧を制御してシリンダロッド43を後進作動させる。シリンダロッド43が後進作動を開始すると、固定部45が連結軸55を回転軸として上方(図中符号R4で示す方向)に向けて回動し、弛んでいたベルト部53が緊張する(
図4参照。)。
そして、そのままシリンダロッド43が後進作動を続けていくと、ベルト部53が引き寄せられていき、ベルト部53が連携している連携部61を矢印R6方向に引き寄せる(
図2及び
図5参照。)。
連携部61が矢印R6の方向に回動すると、連携部61と一体に固着されている制動装置20の軸27が矢印R1で示す方向に回動する(
図1、
図2及び
図5参照。)。
軸27が矢印R1の方向に回動作動すると、第二レバー部29も矢印R1の方向に回動し、制動装置20のシリンダロッド31aを後進作動させる(
図1、
図2及び
図5参照。)。これにより、第一油圧シリンダ31からの油圧を図示しないホイールブレーキに導いて制動する。
【0040】
また、本実施形態によれば、制動補助装置40において、軸27を介して制動装置20に緊急停止動作を連絡する手段として、柔軟性を有するベルト部53を採用しているため、第二油圧シリンダ41のシリンダロッド43の後進作動中(緊急停止動作中)に、ホイールローダ操縦者が人(障害物)の存在に気づき慌ててブレーキペダル21を踏み込んだとしても、ベルト部53が弛み、第二油圧シリンダ41にはその衝撃が加わらない。
従って、制動補助装置40を損傷してしまうといった虞もない。
【0041】
また、本実施形態の緊急停止装置を後付けにて建設車両に備えるにあたり、直接ブレーキペダルに構成の一部を連結する必要がなく、また、対象車両の操縦室内に装置の一部あるいは全部を増設するといったこともない。
すなわち、本実施形態の場合、操縦室外に備えられている制動装置20の軸27を共用して操縦室外に備えられるものであるため、操縦室内の設置スペースの確保や操縦の妨げとならないように設置位置などを考慮する必要も煩わしさもなく、簡易に後付けにて安全装置が設置可能である。
【0042】
このように、本実施形態によれば、ホイールローダなどの建設車両の緊急停止動作を、制動装置の軸を共用する簡易な機械的構造で強制的に行うことができるため、安価かつ確実な緊急停止装置を後付けにて容易に付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ホイールローダに限られず、足踏み式のブレーキペダルを備える建設車両一般に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10A,10B,10C 障害物検出手段(障害物検出部)
12 制御手段
20 制動装置
21 ブレーキペダル
23 リンク
25 第一レバー部
27 軸
29 第二レバー部
31 第一油圧シリンダ部
40 制動補助装置
41 第二油圧シリンダ部
43 シリンダロッド
45 固定部
46 第二固定部
53 ベルト部
59 第三レバー部
61 連携部
【要約】
【課題】緊急時における車両の緊急停止動作を行い得る後付けして車両に備えることの可能な建設車両用の緊急停止装置を提供する。
【解決手段】ブレーキペダル21の傾動作動によって制動装置20を制御する建設車両用の緊急停止装置で、障害物を検出する障害物検出手段10Aと、障害物検出手段10Aからの信号に基づいて制動装置20を制御する制動補助装置40と、を備え、制動装置20と制動補助装置40とは、ブレーキペダル21の傾動作動に連携して回動作動することで制動装置20を操作可能な軸27を共用し、制動補助装置40は、制御手段12からの信号に基づいて前後進作動する第二油圧シリンダ41と、一端が車体側に固定されると共に、他端が第二油圧シリンダ41の先端に固定された柔軟性を有するベルト部53と、ベルト部53が連携し、第二油圧シリンダ41の前後進作動によって軸27を回動作動させる連携部61と、を含む。
【選択図】
図1