(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20220927BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20220927BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20220927BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220927BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20220927BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20220927BHJP
G01S 19/43 20100101ALN20220927BHJP
【FI】
H01Q1/22 A
A01B69/00 303M
B60R1/00
B60R11/02 A
G01S19/14
H01Q1/32 Z
G01S19/43
(21)【出願番号】P 2021088913
(22)【出願日】2021-05-27
(62)【分割の表示】P 2017195828の分割
【原出願日】2017-10-06
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】花田 洋輔
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-002874(JP,A)
【文献】特開2016-021893(JP,A)
【文献】特開2015-164001(JP,A)
【文献】特開2017-099306(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119263(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0168009(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0140318(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 1/52
A01B 69/00-69/08
B60R 1/00- 1/04
B60R 1/08- 1/31
B60R 9/00-11/06
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
G01S 5/00- 5/14
G01S 19/00-19/55
G05D 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンを備えたトラクタであって、
前記キャビンの外部の上部位置において左右幅方向に沿うように配置された支持フレームと、
前記トラクタの機体の左右幅方向の中心位置に位置した状態で前記支持フレームに支持されるGNSSアンテナと、
前記GNSSアンテナの下方に位置するカメラと、を備
え、
前記カメラは直接的又は間接的に前記支持フレームに支持される、
トラクタ。
【請求項2】
前記
カメラは、前記キャビンのルーフの上端よりも低い位置で、かつ、前記ルーフの前端よりも前方の位置に配置されている、
請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記
支持フレームは、前記キャビンのルーフの上端よりも低い位置で、かつ、前記支持フレームの前端を前記ルーフの前端よりも前方とする位置に配置されている、
請求項
1又は2に記載のトラクタ。
【請求項4】
前記
支持フレームには、無線通信ユニットが支持され、
前記GNSSアンテナは、前記無線通信ユニットのハウジングよりも高い位置に配置されている、
請求項
1~3のいずれか1項に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位システム(GNSS)を利用してトラクタの位置情報を取得しながら、目標走行経路に沿って自動走行させるに適したトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上述の自動走行システムを採用した作業車両として、例えば、特許文献1に示すトラクタでは、測位衛星からの衛星測位情報を取得するGPSアンテナ(GNSSアンテナ)が、キャビンルーフの上側面部に設けられている。
具体的には、キャビンルーフの上側面部のうち、車体のトレッド幅の略中心部位置の前後方向線と、ホイルベースの略中心部位置の横方向線との交差する部位に、キャビンルーフの上面よりも高位置で略水平面状の取付け座を有する取付けステーが形成され、この取付けステーの取付け座にGPSアンテナが取付けられている。
また、GPSアンテナとして、ジャイロセンサを有するGPSアンテナを使用した場合には、キャビンルーフの傾斜角度をも検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術には、キャビンルーフの上側面部におけるGPSアンテナの取付け位置を工夫することにより、GPSアンテナの検出精度、又はGPSアンテナとジャイロセンサの検出精度の向上を図る技術が開示されている。
しかしながら、上述の自動走行システムでは、例えば、作業車両に対して各種の指示を行う無線通信端末や作業車両の位置情報を取得するための基地局等、作業車両とは別に各種の外部装置が備えられている。
そのため、作業車両の自動走行等を実際に行うにあたっては、GPSアンテナだけでなく、作業車両と外部装置との間で通信するための各種のアンテナ機器を作業車両に効率良く搭載する必要があり、この面において上述の従来技術には改善の余地がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、トラクタの自動走行等に有効な各種のアンテナ機器を効率良く搭載することのできるトラクタを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係るトラクタは、キャビンを備えたトラクタであって、前記キャビンの外部の上部位置において左右幅方向に沿うように配置された支持フレームと、前記トラクタの機体の左右幅方向の中心位置に位置した状態で前記支持フレームに支持されるGNSSアンテナと、を備える。
第2態様に係るトラクタは、第1態様において、前記GNSSアンテナの下方に位置するカメラを更に備える。
第3態様に係るトラクタは、第2態様において、前記カメラは直接的又は間接的に前記支持フレームに支持される。
第4態様に係るトラクタは、第2態様又は3態様において、前記GNSSアンテナを含むアンテナユニットの下面と、前記カメラの取付けブラケットの上面との間に、空隙が設けられる。
また、本発明の第1特徴構成は、作業車両に取付け可能なユニットベースの長手方向中央部に、GNSSアンテナと慣性計測装置とを配置し、前記ユニットベースの長手方向一端側に無線通信ユニットを配置するとともに、前記無線通信ユニットの無線通信用アンテナを、前記作業車両への取付け時に機体の前方側となる前記ユニットベースの前方側部位に配置し、前記GNSSアンテナは前記慣性計測装置の上部に配設されている点にある。
【0007】
作業車両に取付け可能なユニットベースの長手方向中央部に、GNSSアンテナと慣性計測装置とを配置してあるので、例えば、作業車両に対してユニットベースを左右方向でバランス良く取付けたとき、ユニットベースの長手方向中央部が作業車両の左右中心位置に配置されることになる。これにより、GNSSアンテナと慣性計測装置とを作業車両の左右中心位置に配置させることができ、GNSSアンテナの受信信号から取得する作業車両の現在位置情報の検出精度と、慣性計測装置から取得する機体の姿勢変化情報の検出精度を共に向上することができる。
また、ユニットベースの長手方向一端側に配置した無線通信ユニットにより、例えば、無線通信端末等の外部装置との間で各種の信号を無線通信することが可能となる。
しかも、無線通信ユニットの無線通信用アンテナを、慣性計測装置から離間するユニットベースの長手方向一端側に配置してあるので、無線通信ユニットの無線通信用アンテナから慣性計測装置の中心部までの距離を十分確保することができる。さらに、無線通信ユニットの無線通信用アンテナは、作業車両への取付け時に機体の前方側となるユニットベースの前方側部位に配置してあるので、作業車両に取付けた状態では、作業車両のキャビンフレーム等の金属製部品から無線通信ユニットの無線通信用アンテナまでの前後方向での距離を十分確保することができる。これにより、無線通信ユニットと慣性計測装置との間での電波干渉を抑制し、且つ、作業車両の金属製部品による電波遮蔽の影響を受け難くなるので、無線通信ユニットと無線通信端末等との間での通信障害の要因を減少することができる。
【0008】
したがって、ユニットベースに対するGNSSアンテナ、慣性計測装置、無線通信ユニットの無線通信用アンテナの配設位置及び向き姿勢を上述の如く合理的に工夫することにより、アンテナユニット自体のコンパクト化を図りながら、慣性計測装置及びGNSSアンテナの検出精度を共に向上し、且つ、無線通信ユニットの通信状態を良好に維持した状態で作業車両に効率良く搭載することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記無線通信用アンテナは、前記ユニットベースの前方側部位で、且つ、前記ユニットベースの長手方向に複数本並列して配置されている点にある。
【0010】
上記構成によれば、無線通信ユニットの複数本の無線通信用アンテナによって、無線通信端末等の外部装置との間での通信速度の高速化を図ることができる。しかも、複数本の無線通信用アンテナは、ユニットベースの前方側部位で、且つ、ユニットベースの長手方向に並列配置されているので、全ての無線通信用アンテナは作業車両のキャビンフレーム等の金属製部品による電波遮蔽の影響を受け難くなり、無線通信ユニットの通信状態を良好に維持することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記GNSSアンテナと前記ユニットベースを覆うユニットカバーの内面との距離が30mm以上に設定されている点にある。
【0012】
上記構成によれば、GNSSアンテナとユニットカバーの内面とが近接することによる電波干渉を抑制して、GNSSアンテナの受信信号から取得する作業車両の現在位置情報の検出精度の向上を図ることができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記ユニットベースの長手方向他端側には、基準局からの情報を受信する基地局アンテナが配置され、この基地局アンテナと前記ユニットベースのアンテナ取付け部位との間には、前記基地局アンテナを前記アンテナ取付け部位よりも高所に配置する嵩上げ部が設けられている点にある。
【0014】
上記構成によれば、基地局アンテナの上端部は、嵩上げ部による嵩上げ分だけ高所に配置することができ、長尺な基地局アンテナを用いる場合に比較して、作業車両の走行振動等に起因する基地局アンテナの揺れ動きによる折損を抑制しながら、基準局に対する受信性能の向上を図ることができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記ユニットベースの長手方向他端側には、他のユニットの取付けスペースが形成されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、例えば、自動走行制御の一部を司る後付けのコントローラ等の他のユニットを、ユニットベースの長手方向他端側に確保されている取付けスペースを使用して容易に取付けることができる。しかも、このような後付けの他のユニットについても、アンテナユニットに効率よくコンパクトに収納させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のアンテナユニットを装備したトラクタの全体側面図
【
図2】トラクタ、基準局、及び、無線通信端末の制御ブロック図
【
図3】トラクタのアンテナユニット取付け部の正面図
【
図4】トラクタのアンテナユニット取付け部の側面図
【
図5】トラクタのアンテナユニット取付け部の斜視図
【
図10】他のユニットを取付けたときのアンテナユニットのカバー取外し状態での斜視図
【
図11】他のユニットを取付けたときのアンテナユニットのカバー取外し状態での平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示す自動走行システムは、本発明に係る作業車両用アンテナユニット50を用いたものであり、目標走行経路を生成し、その生成された目標走行経路に沿って作業車両としてのトラクタ1を自動走行可能に構成されている。この自動走行システムでは、自動走行可能なトラクタ1に加えて、トラクタ1に対して各種の指示等を行う無線通信端末30と、トラクタ1の位置情報を取得するための基準局40とが備えられている。
【0019】
まず、
図1に基づいてトラクタ1について説明する。
このトラクタ1は、後方側に対地作業機(図示省略)を装着可能な機体部2を備え、機体部2の前部が左右一対の前輪3で支持され、機体部2の後部が左右一対の後輪4で支持されている。機体部2の前部にはボンネット5が配置され、そのボンネット5内に駆動源としてのエンジン6が収容されている。ボンネット5の後方側には、運転者が搭乗するためのキャビン7が備えられ、そのキャビン7内には、運転者が操向操作するためのステアリングハンドル8、運転者の運転座席9等が備えられている。
【0020】
エンジン6は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としてエンジン6に加えて、或いはエンジン6に代えて、電気モータを採用してもよい。
【0021】
また、本実施形態では作業車両としてトラクタ1を例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等、乗用型作業車両等が含まれる。
【0022】
機体部2の後方側には、左右一対のロアリンク10とアッパリンク11とからなる3点リンク機構が備えられ、その3点リンク機構に対地作業機が装着可能に構成されている。機体部2の後方側には、図示は省略するが、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置が備えられ、この昇降装置が、3点リンク機構を昇降させることで、対地作業機を昇降させている。
対地作業機としては、耕耘装置、プラウ、施肥装置等が含まれる。
【0023】
トラクタ1には、
図2に示すように、エンジン6の回転速度を調整可能なエンジン装置21、エンジン6からの回転駆動力を変速して駆動輪に伝達する変速装置22、エンジン装置21及び変速装置22を制御可能な制御部23等が備えられている。変速装置22は、例えば、油圧式無段変速装置からなる主変速装置とギヤ式多段変速装置からなる副変速装置とを組み合わせて構成されている。
【0024】
このトラクタ1は、運転者がキャビン7内に搭乗して走行できるだけでなく、キャビン7内に運転者が搭乗しなくても、無線通信端末30からの指示等に基づいて、トラクタ1を自動走行可能に構成している。
【0025】
トラクタ1は、
図2に示すように、操舵装置24、機体の姿勢変化情報を得るための慣性計測装置(IMU)25、衛星測位システム(GNSS)を構成する測位衛星(航法衛星)45から送信される電波信号を受信するGNSSアンテナ26、無線通信端末30等との間で構築される無線通信ネットワークを介して各種の信号を送受信する無線通信ユニット27、基準局40の基準局無線通信装置41からの無線信号(例えば、周波数帯域が920MHzの無線信号)を受信する基地局アンテナ29等を備えており、自己の現在位置情報(機体部2の位置情報)を取得しながら、自動走行可能に構成されている。
【0026】
慣性計測装置25、GNSSアンテナ26、無線通信ユニット27、基地局アンテナ29は、
図6~
図9に示すように、ユニットカバー51を備えたアンテナユニット50に収納されている。このアンテナユニット50は、
図3~
図5に示すように、キャビン7の外部の前面側の上部位置において、キャビン7のキャビンフレーム200に固定された左右幅方向に沿う支持フレーム100に取付けられている。
尚、アンテナユニット50の具体的な内部配置構造及び取付け構造については、自動走行システムの説明後において詳述する。
【0027】
操舵装置24は、例えば、ステアリングハンドル8の回転軸の途中部に備えられ、ステアリングハンドル8の回転角度(操舵角)を調整可能に構成されている。制御部23が操舵装置24を制御することで、直進走行だけでなく、ステアリングハンドル8の回転角度を所望の回転角度に調整して、所望の旋回半径での旋回走行も行える。
【0028】
慣性計測装置25は、3軸のジャイロと3方向の加速度計によって、3次元の角速度と加速度が求められる。当該慣性計測装置25の検出値が制御部23に入力され、制御部23は、姿勢・方位演算手段により演算し、トラクタ1の姿勢情報(機体の方位角(ヨー角)、機体の左右の傾き角(ロール角)、機体の進行方向での前後の傾き角(ピッチ角))を求める。
【0029】
衛星測位システム(GNSS)では、測位衛星45として、GPS(米国)に加えて準天頂衛星(日本)やグロナス衛星(ロシア)等の衛星測位システムを利用することができる。
【0030】
無線通信ユニット27は、本実施形態においては周波数帯域が2.4GHzのワイファイ(Wifi)ユニットから構成されているが、無線通信ユニット27はWifi以外のブルートゥース(登録商標)等にすることができる。この無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28にて受信した信号は、
図2に示すように、制御部23に入力可能であり、制御部23からの信号は、無線通信用アンテナ28にて無線通信端末30の無線通信装置31等に送信可能に構成されている。
【0031】
ここで、衛星測位システムを用いた測位方法として、予め定められた基準点に設置された基準局40を備え、その基準局40からの補正情報とトラクタ1(移動局)の衛星測位情報とを用いて、トラクタ1の現在位置を求める測位方法を適用可能としている。例えば、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。
【0032】
この実施形態では、例えば、RTK測位を適用しており、
図1及び
図2に示すように、移動局側となるトラクタ1にGNSSアンテナ26を備えるのに加えて、基準局測位用アンテナ42を備えた基準局40が設けられている。基準局40は、例えば、圃場の周囲等、トラクタ1の走行の邪魔にならない位置(基準点)に配置されている。基準局40の設置位置となる基準点の位置情報は予め把握されている。基準局40には、トラクタ1の基地局アンテナ29との間で各種の信号を送受信可能な基準局無線通信装置41が備えられ、基準局40とトラクタ1との間で各種の情報が送受信可能に構成されている。
【0033】
RTK測位では、基準点に設置された基準局40の基準局測位用アンテナ42と、位置情報を求める対象の移動局側となるトラクタ1のGNSSアンテナ26との両方で測位衛星45からの搬送波位相(衛星測位情報)を測定している。基準局40では、測位衛星45から衛星測位情報を測定する毎に又は設定周期が経過する毎に、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成して、基準局無線通信装置41からトラクタ1の基地局アンテナ29に補正情報を送信している。トラクタ1の制御部23は、GNSSアンテナ26にて測定した衛星測位情報と、基準局40から送信される補正情報とを用いて、トラクタ1の現在位置情報を求めている。制御部23は、トラクタ1の現在位置情報として、例えば、緯度情報・経度情報を求めている。
【0034】
自動走行システムでは、トラクタ1及び基準局40に加えて、トラクタ1の制御部23にトラクタ1の自動走行を指示可能な無線通信端末30が備えられている。無線通信端末30は、例えば、タッチパネルを有するタブレット型のパーソナルコンピュータ等から構成され、各種情報をタッチパネルに表示可能であり、タッチパネルを操作することで、各種の情報も入力可能となっている。無線通信端末30には、無線通信装置31と、目標走行経路を生成する経路生成部32とが備えられ、経路生成部32が、タッチパネルにて入力される各種の情報に基づいて、トラクタ1を自動走行させる目標走行経路を生成している。
【0035】
トラクタ1に備えられた制御部23は、無線通信装置31等による無線通信ネットワークを介して、無線通信端末30との間で各種の情報を送受信可能に構成されている。無線通信端末30は、目標走行経路等、トラクタ1を自動走行させるための各種の情報をトラクタ1の制御部23に送信することで、トラクタ1の自動走行を指示可能に構成されている。トラクタ1の制御部23は、経路生成部32にて生成された目標走行経路に沿ってトラクタ1が自動走行するように、GNSSアンテナ26の受信信号から取得するトラクタ1の現在位置情報を求め、慣性計測装置25から機体の変位情報及び方位情報を求め、これらの現在位置情報と変位情報と方位情報に基づいて変速装置22や操舵装置24等を制御可能に構成されている。
【0036】
次に、アンテナユニット50の内部配置構造について説明する。
図6は、アンテナユニット50を前方側から見たときの縦断面図、
図7は、アンテナユニット50を後方側から見たときの縦断面図、
図8は、アンテナユニット50を右側から見たときの横断面図、
図9は、ユニットカバー51の上側カバー体53を分離したときの斜視図を示す。
アンテナユニット50のユニットカバー51は、前進方向に対して機体部2の左右幅方向が長手方向となる姿勢でトラクタ1に装備されている。ユニットカバー51は、
図6~
図9に示すように、上方に開口する平面視略長方形状の樹脂製の下側カバー体52と、下方に開口する平面視略長方形状の樹脂製の上側カバー体53と、を有する。上側カバー体53の開口接合部は、下側カバー体52の開口接合部に対して脱着自在に水密状態で外嵌接合されている。上側カバー体53の開口接合部と下側カバー体52の開口接合部とは、
図9に示すように、左右の側壁の各1箇所及び後壁における左右方向の2箇所においてねじ54にて固定連結されている。
【0037】
下側カバー体52の底板部52Aの上面には、
図6~
図9に示すように、トラクタ1に取付け可能なユニットベースの一例である金属製のベースプレート55が取付けられている。このベースプレート55は、平面視略長方形状の板金製で、前進方向に対して機体部2の左右幅方向が長手方向となる姿勢で下側カバー体52に取付けられている。ベースプレート55の下面と下側カバー体52の底板部52Aの上面との間には設定間隔の間隙が形成されている。この間隙は、
図5~
図7に示すように、下側カバー体52の底板部52Aの複数個所(本実施形態では4箇所)に、ベースプレート55の下面に当接可能な位置にまで内方側に突出する取付け凹部52aを形成し、各取付け凹部52aの上面にベースプレート55の下面を載置することにより設定間隔に規制されている。下側カバー体52の底板部52Aの各取付け凹部52aとベースプレート55とは、第1ボルト56・第1ナット57で固定連結されている。
【0038】
図6、
図7に示すように、ベースプレート55の下面のうち、後述の慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26の中央取付け領域に対して長手方向の両外方側に偏位した部位の前後2箇所の各々には、トラクタ1側の支持フレーム100に取付けるための筒状の第1ねじ部材90が固着されている。各第1ねじ部材90の下端部は、下側カバー体52の底板部52Aを貫通して下方に少し突出する。そのうち、ベースプレート55の長手方向の一端側に位置する前後一対の第1ねじ部材90の下端部、及び、長手方向の他端側に位置する前後一対の第1ねじ部材90の下端部には、機体前面視で略逆「L」字状に折り曲げ形成された左右一対の連結部材91の水平連結板部91aが配置されている。両連結部材91の水平連結板部91aは、当該水平連結板部91aを貫通して各第1ねじ部材90に下方から螺合する第2ボルト92で固定連結されている。この固定連結状態では、下側カバー体52の底板部52Aの下面と連結部材91の水平連結板部91aの上面との間に空隙が設けられ、下側カバー体52にベースプレート55側の荷重が掛からないように構成されている。
【0039】
図6、
図7に示すように、ベースプレート55の下面における長手方向中央部の前端側部位(トラクタ1への取付け時に機体部2の前方側となるベースプレート55の前端側部位)の左右2箇所には、機体前方を撮影するカメラ78(
図3、
図9参照)を取付けるための筒状の第2ねじ部材93が固着され、各第2ねじ部材93の下端部は、下側カバー体52の底板部52Aを貫通して下方に少し突出する。第2ねじ部材93の下端部に配置されるカメラ78(
図3、
図9参照)の取付けブラケット(図示省略)は、第2ねじ部材93に下方から螺合するボルト(図示省略)で固定連結される。この固定連結状態では、下側カバー体52の底板部52Aの下面とカメラ78の取付けブラケットの上面との間に空隙が設けられ、下側カバー体52にカメラ78側の荷重が掛からないように構成されている。
【0040】
ベースプレート55の長手方向中央部には、
図6、
図7に示すように、機体部2の左右幅方向の中心位置又は略中心位置に共に配置される慣性計測装置25とGNSSアンテナ26とが上下に重合する状態で設けられている。そのうち、GNSSアンテナ26は、慣性計測装置25の上方位置に配置されている。
詳しくは、慣性計測装置25のハウジング25Aは、
図6、
図7に示すように、それの左右方向中心位置がベースプレート55の長手方向中央位置に位置する状態でベースプレート55に第3ボルト58にて固定連結されている。
他方、GNSSアンテナ26のハウジング26Aは、
図6、
図7、
図9に示すように、それの左右方向中心位置がベースプレート55の長手方向中央位置に位置する状態で、金属製のハット形の第1ブラケット60を介してベースプレート55に取付けられている。第1ブラケット60は、慣性計測装置25のハウジング25Aの上方をベースプレート55の長手方向に沿って迂回するハット形に形成されている。このハット形の第1ブラケット60の両脚部60aは、ベースプレート55に第4ボルト61にて固定連結されている。ハット形の第1ブラケット60の前後方向(機体の前後方向でもある)の幅は、慣性計測装置25のハウジング25Aの前後方向幅よりも少し大なる寸法に構成され、且つ、第1ブラケット60の前端縁には、
図6に示すように、慣性計測装置25の前方側を覆う前側板60bが折り曲げ形成されている。この構成により、第1ブラケット60は後述する無線通信ユニット27との間を遮蔽する遮蔽壁部に構成されている。
また、
図6、
図7に示すように、第1ブラケット60に取付けられたGNSSアンテナ26とユニットカバー51の上側カバー体53における長手方向中央部の内面53aとの間の第1所定距離L1が30mm以上に設定されている。
【0041】
上述の慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26の配置構成により、トラクタ1への取付け状態では、
図3、
図6、
図7に示すように、慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26が共に機体部2の左右幅方向の中心位置又は略中心位置において上下に配置されるため、GNSSアンテナ26の受信信号から取得するトラクタ1の現在位置情報の検出精度と、慣性計測装置25から取得する機体の変位情報及び方位情報の検出精度を共に向上することができる。しかも、ユニットカバー51の前後方向での幅が小さくなり、アンテナユニット50のコンパクト化を図ることができる。
さらに、上述の配置構成により、
図6、
図7に示すように、GNSSアンテナ26の上方には樹脂製の上側カバー体53のみが存在するだけであり、電波遮蔽物が存在しない。そのため、例えば、GNSSアンテナ26の上方に慣性計測装置25を配置する場合のように、慣性計測装置25がGNSSアンテナ26の受信障害物になることがなく、所定数の測位衛星45からの搬送波位相(衛星測位情報)を確実に受信することができる。
また、上述のように、GNSSアンテナ26とユニットカバー51の上側カバー体53の内面53aとの間の第1所定距離L1を30mm以上に設定してあるので、GNSSアンテナ26とユニットカバー51の内面53aとが近接することによる電波干渉を抑制して、GNSSアンテナ26の受信信号から取得するトラクタ1の現在位置情報の検出精度の向上を図ることができる。
【0042】
ベースプレート55の長手方向一端部(前進方向に対して機体部2の左右方向の右側端部)には、
図6~
図8に示すように、左右方向で2本の無線通信用アンテナ28を備えた無線通信ユニット27のハウジング27Aが第5ボルト62にて固定連結されている。この無線通信ユニット27の2本の無線通信用アンテナ28は、ベースプレート55の前方側部位で、且つ、ベースプレート55の長手方向に沿って並列配置されている。この配置構成により、2本の無線通信用アンテナ28は、トラクタ1の金属製部品であるキャビンフレーム200(
図4参照)から前方に十分な距離を確保することができる。
【0043】
そして、無線通信ユニット27の2本の無線通信用アンテナ28によって、無線通信端末30の無線通信装置31との間での通信速度の高速化を図ることができる。しかも、2本の無線通信用アンテナ28は、ベースプレート55の前方側部位で、且つ、ベースプレート55の長手方向に沿って並列配置されているので、両無線通信用アンテナ28は、トラクタ1の金属製部品であるキャビンフレーム200による電波遮蔽の影響を受け難くなり、無線通信ユニット27の通信状態を良好に維持することができる。
さらに、慣性計測装置25の外周は、コネクタ等を除く多くの部分が金属製のハウジング25Aで遮蔽され、且つ、無線通信ユニット27と慣性計測装置25との間に位置する金属製のハット形の第1ブラケット60が遮蔽壁部として機能するから、無線通信ユニット27と慣性計測装置25との間での電波干渉を抑制することができる。
【0044】
ベースプレート55の長手方向他端部(前進方向に対して機体部2の左右方向の左側端部)には、
図6、
図7、
図9に示すように、基準局40からの情報を受信する基地局アンテナ29が配置されている。これにより、ベースプレート55には、前進方向に対して機体部2の左右方向の右側から、無線通信ユニット27、GNSSアンテナ26(慣性計測装置25)、基地局アンテナ29の順に機体部2の左右方向に並ぶ状態で配置されている。この基地局アンテナ29は、
図6、
図7、
図9に示すように、マグネット65を備えた基部29Aと、当該基部29Aから上方に延伸する丸棒状のアンテナバー29Bから構成されている。
【0045】
また、
図6、
図7、
図9に示すように、基地局アンテナ29とベースプレート55のアンテナ取付け部位との間には、基地局アンテナ29をアンテナ取付け部位よりも高所に配置する嵩上げ部95が設けられている。この嵩上げ部95は、
図6、
図7に示すように、金属板を直角に二度折り曲げ加工された嵩上げブラケット96から構成されている。嵩上げブラケット96には、ベースプレート55の長手方向の他端部に第6ボルト97・第6ナット98で固定連結される水平姿勢の取付け基板部96aと、当該取付け基板部96aの一端部から上方に鉛直姿勢で延出される嵩上げ板部96bと、当該嵩上げ板部96bの上端から水平に延出されるアンテナ取付け板部96cと、が備えられている。
【0046】
上述の基地局アンテナ29の配置構成により、長手方向の他端部に位置する基地局アンテナ29のアンテナバー29Bと長手方向の一端部に位置する無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28との離間距離が大きくなり、基地局アンテナ29のアンテナバー29Bと無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28との間での電波干渉を抑制することができる。
しかも、基地局アンテナ29は、基部29Aに設けたマグネット65の磁力で金属製の嵩上げブラケット96に簡単に取付けることができる。さらに、基地局アンテナ29の上端部は、嵩上げブラケット96による嵩上げ分だけ高所に配置することができ、長尺な基地局アンテナ29を用いる場合に比較して、トラクタ1の走行振動等に起因する基地局アンテナ29の揺れ動きによる折損を抑制しながら、基準局40の基準局無線通信装置41に対する受信性能の向上を図ることができる。
【0047】
次に、アンテナユニット50のユニットカバー51について説明する。
図6~
図9に示すように、ユニットカバー51の上側カバー体53の長手方向一端側(前進方向に対して機体部2の左右方向の右端側)の前半部には、当該上側カバー体53の長手方向中央部の上面位置、及び、無線通信ユニット27の両無線通信用アンテナ28の上端位置よりも上方に突出する膨出部53Aが形成されている。そして、
図6、
図8に示すように、膨出部53Aの内面53bと無線通信用アンテナ28の上端との間の第2所定距離L2は30mm以上に設定されている。
無線通信用アンテナ28の上端と上側カバー体53の膨出部53Aの内面53bとの間に形成される第2所定距離L2により、無線通信用アンテナ28とユニットカバー51の膨出部53Aの内面53bとが近接することによる電波干渉を抑制して、無線通信ユニット27と無線通信端末30の無線通信装置31との間での通信精度の向上を図ることができる。
【0048】
また、
図9に示すように、上側カバー体53の長手方向の他端側部位には、基地局アンテナ29のアンテナバー29Bが貫通して外部の上方に突出する貫通孔70が形成されている。この貫通孔70の開口周縁には、
図6、
図7、
図9に示すように、基地局アンテナ29のアンテナバー29Bの貫通部位の外周面に接触する筒状ゴム等の防振用弾性体71が装着されている。防振用弾性体71としては、アンテナバー29Bの全周に接触して水密性をも発揮するグロメットが用いられている。
【0049】
そして、防振用弾性体71が存在しない場合には、上側カバー体53の貫通孔70の開口周縁とアンテナバー29Bの貫通部位の外周面との間に環状の空隙が発生する。トラクタ1の走行振動等が基地局アンテナ29に作用すると、アンテナバー29Bが環状の空隙の範囲で揺れ動くことになり、アンテナバー29Bが根元で折損する可能性がある。しかし、本実施形態では、上述のように、上側カバー体53の貫通孔70の開口周縁に設けた防振用弾性体71でアンテナバー29Bの上下中間部を支持し、基地局アンテナ29の支持構造が全体で二点支持構造となるため、走行振動等に起因するアンテナバー29Bの折損を抑制することができる。
【0050】
尚、当該実施形態では、上側カバー体53の貫通孔70の開口周縁に防振用弾性体71を装着したが、この防振用弾性体71は、上側カバー体53の上面又は内面53aに取付けてもよい。
【0051】
図6、
図10、
図11に示すように、ベースプレート55の長手方向の他端側で、且つ、慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26と基地局アンテナ29との間には、他のユニット72の取付けスペース73が形成されている。ここで、
図6、
図7、
図9は、取付けスペース73に他のユニット72を取り付けず、取付けスペース73が中空空間となっている状態を示しており、
図10、
図11は、取付けスペース73に他のユニット72を取り付けた状態を示している。
【0052】
他のユニット72としては、例えば、自動走行制御の一部を司る後付けの液晶モニタ用のコントローラ等を挙げることができる。本実施形態の自動走行仕様のトラクタ1では、キャビン7内に液晶モニタが設けられ、この液晶モニタには、自動走行制御の一部を司るコントローラが装備されている。しかし、普通仕様の田植機等の他の作業車両を自動走行仕様に変更する場合には、後付けされる液晶モニタ用として自動走行制御を司るコントローラが必要になる。この場合に、ベースプレート55に確保されている取付けスペース73を使用してコントローラを容易に取付けることができる。
【0053】
さらに、
図6~
図7に示すように、下側カバー体52の底板部52Aから突出する両第2ねじ部材93の下端部には、機体前方を撮影するカメラ78(
図3、
図9参照)が配置されている。このカメラ78の取付けブラケット(図示省略)は、第2ねじ部材93に下方から螺合するボルト(図示省略)で固定連結されている。カメラ78で撮影された映像は、トラクタ1の無線通信ユニット27と無線通信端末30の無線通信装置31との無線通信を介して、無線通信端末30のタッチパネルに表示可能に構成されている。
【0054】
尚、
図6~
図11においては、ベースプレート55に組付けられた慣性計測装置25、GNSSアンテナ26、無線通信ユニット27、基地局アンテナ29の各々に接続された電線は省略されており、それらの電線をユニットカバー51内で集合して構成した1本のハーネス80の一部が
図3、
図4に記載されている。このハーネス80は、
図4に示すように、下側カバー体52の後壁の長手方向中央部側に形成されたハーネス導出孔81(
図9参照)から外部に導出される。このハーネス導出孔81にはグロメット(図示省略)が装着されている。
【0055】
次に、アンテナユニット50の取付け構造について説明する。
図1、
図3~
図5に示すように、アンテナユニット50の支持フレーム100の両端部は、キャビンフレーム200を構成する左右の前支柱201に設けられたミラー取付け部150に亘って固定連結されている。
左右のミラー取付け部150の各々は、
図3~
図5に示すように、前支柱201の上側部に、平面視略「コ」の字状に構成された取付け基材151が溶接等で固着され、この取付け基材151に、バックミラー110の支持アーム111を回動自在に支持するヒンジ部を備えたミラー取付け部材152がボルト(図示省略)で固定連結されている。
左右の取付け基材151と左右のミラー取付け部材152との間の各々には、機体側面視において直上方に延設される第2ブラケット112がボルトで共締め固定されている。各第2ブラケット112は、取付け基材151とミラー取付け部材152との間から上方に延設される縦向き支持板部112aと、縦向き支持板部112aの上端から水平面に沿って折り曲げられる取付け板部112bと、これら両者で形成される折り曲げ角部に固着される補強板部112cと、を備えている。
【0056】
支持フレーム100は、
図3~
図5に示すように、機体前面視において左右幅方向の両端部が下方に屈曲する略扁平門の字状に折り曲げ形成された断面円形のパイプ状支持材101を備えている。パイプ状支持材101の両端部には、水平面に沿う取付け下面を有する機体前面視で略「L」字状の取付け板102が固着されている。パイプ状支持材101の両端側部位と両取付け板102とに亘って補強板103が固着されている。
支持フレーム100の両取付け板102は、取付け基材151とミラー取付け部材152との間で共締め固定されている左右の第2ブラケット112の取付け板部112bの上面に載置されている。この載置された支持フレーム100の両取付け板102と両第2ブラケット112の取付け板部112bとは、それぞれ第7ボルト104・第7ナット105で固定連結されている。
【0057】
上述のように、左右のミラー取付け部150は、堅牢なキャビンフレーム200の前支柱201の上部に取付けられ、且つ、キャビン7のルーフ190に近い高さ位置に配置されている。そのため、頑丈で且つ地上高もある両ミラー取付け部150を利用し、且つ、両ミラー取付け部150から直上方に第2ブラケット112を延設するだけの簡素な支持構造を付加するだけで、アンテナユニット50の支持フレーム100を適切な高さ位置に強固に取付けることができる。
しかも、取付け基材151とミラー取付け部材152との間で共締め固定されている左右の第2ブラケット112の取付け板部112bの取付け上面と、支持フレーム100の両取付け板102の取付け下面とが共に水平面に形成されているため、パイプ状支持材101の中間部を左右方向に沿って水平に配置することが容易となり、当該パイプ状支持材101の水平中間部に取付けられるアンテナユニット50の取付け誤差を抑制することができる。
【0058】
また、
図3~
図5に示すように、支持フレーム100が左右の第2ブラケット112に亘って架設された状態では、支持フレーム100のパイプ状支持材101の水平中間部は、キャビンフレーム200のルーフ190の前端の上方近傍位置を機体の左右幅方向に沿って水平に配置される。
パイプ状支持材101の水平中間部には、
図3~
図5に示すように、アンテナユニット50の左右一対の両連結部材91を支持する機体側面視で略「L」字状の左右一対の第3ブラケット120が固着されている。機体部2の左右幅方向で互いに近接して対面するアンテナユニット50側の両連結部材91の垂直連結板部91bと支持フレーム100側の両第3ブラケット120とは、機体部2の左右幅方向に沿う水平な2本の第8ボルト121・第8ナット122で固定連結されている。
支持フレーム100側の両第3ブラケット120に対して、アンテナユニット50側の両連結部材91の垂直連結板部91bが2組の2本の第8ボルト121・第8ナット122で固定連結された状態では、アンテナユニット50は、それに装備された基地局アンテナ29が鉛直方向に向く作業位置(作業姿勢)にある。
【0059】
両連結部材91の垂直連結板部91bの前後二箇所には、円形の第1ボルト挿通孔(図示省略)が形成されている。支持フレーム100側の両第3ブラケット120には、
図4、
図5に示すように、第1ボルト挿通孔のピッチに相当する長さで前後方向に沿う水平な第2ボルト挿通長孔123が形成されている。支持フレーム100側の両第3ブラケット120には、第2ボルト挿通長孔123の前端位置の直下で、且つ、両第1ボルト挿通孔のピッチに相当する上下間隔を置いた部位に一つの円形の第2ボルト挿通孔124が形成されている。
そして、アンテナユニット50が作業位置にある状態で、前方側の第8ボルト121を撤去し、後方側の第8ボルト121を緩み操作する。この状態で、アンテナユニット50と一緒に後方側の第8ボルト121を両第3ブラケット120の第2ボルト挿通長孔123に沿って前端位置まで前方に移動操作し、アンテナユニット50を第8ボルト121の軸芯周りで下方に回動操作する。この前方低位側に回動操作した状態では、アンテナユニット50は第8ボルト121を枢支軸として垂下し、アンテナユニット50側の両連結部材91の前端側の第1ボルト挿通孔(図示省略)と支持フレーム100側の両第3ブラケット120の第2ボルト挿通孔124とが合致する。この合致した第1ボルト挿通孔と第2ボルト挿通孔124とに亘って、撤去していた第8ボルト121を挿通し、各第8ボルト121を締め付け側に螺合操作して、アンテナユニット50側の両連結部材91と支持フレーム100側の両第3ブラケット120とを固定連結する。この固定連結状態では、アンテナユニット50は、それに装備された基地局アンテナ29が前方側の水平方向に向く前方低位の非作業位置(非作業姿勢)にある。
【0060】
上述の構成により、アンテナユニット50は、支持フレーム100に対して作業位置から前方低位側の非作業位置に位置変位可能に取付けられている。また、前記両第3ブラケット120の第2ボルト挿通長孔123と、アンテナユニット50側の両連結部材91の後端側の第1ボルト挿通孔と、第8ボルト121とをもって、アンテナユニット50を作業位置と前方低位側の非作業位置との間において前後方向に移動案内するガイド部125が構成されている。
本実施形態においては、アンテナユニット50の非作業位置は、作業位置から前方に第2ボルト挿通長孔123のボルト可動範囲内で前方側に最大限に移動し、且つ、第2ボルト挿通長孔123の前端位置に当接した第8ボルト121周りで下方に90度の低位側に回動した位置であり、この非作業位置では、上述のように基地局アンテナ29が水平方向の前方に突出する姿勢にある。
【0061】
そして、
図1、
図3に示すように、アンテナユニット50が作業位置にある状態では、アンテナユニット50の基地局アンテナ29及びユニットカバー51の一部が、キャビン7のルーフ190の最高部位よりもよりも上方に突出する。しかし、トラクタ1の輸送時等において、キャビン7のルーフ190よりも上方に突出する基地局アンテナ29が邪魔になる場合には、アンテナユニット50を作業位置から前方低位側の非作業位置に変更する。この非作業位置では、基地局アンテナ29が水平方向の前方に突出する姿勢となり、ユニットカバー51を含むアンテナユニット50を、キャビン7のルーフ190の上面の最高部位と略同じ高さ位置又はそれよりも低い位置に配設することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、アンテナユニット50の作業位置と非作業位置との位置変更操作を人為操作で行っているが、このアンテナユニット50の位置変更操作をアクチュエータ等の駆動部で実施してもよい。
【0063】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28をアンテナユニット50のユニットカバー51内に収めたが、必要に応じて、無線通信用アンテナ28を、上側カバー体53に形成される貫通孔から外部の上方に突出させてもよい。
【0064】
(2)上述の実施形態では、GNSSアンテナ26とユニットカバー51の上側カバー体53の内面53aとの間の第1所定距離L1を30mm以上に設定したが、この第1所定距離L1は、所定数の測位衛星45からの搬送波位相(衛星測位情報)の受信状況に応じて任意に設定することができる。
【0065】
(3)上述の実施形態では、ユニットカバー51の膨出部53Aの内面53bと無線通信用アンテナ28の上端との間の第2所定距離L2を30mm以上に設定したが、この第2所定距離L2は、無線通信ユニット27と無線通信端末30の無線通信装置31との間での通信状態に応じて任意に設定することができる。
【0066】
(4)上述の実施形態では、ユニットカバー51の下面側に左右一対の連結部材91を取付けたが、この取付け構造に限定されるものではなく、作業車両側の取付け条件に応じて任意の取付け構造を採用することができる。
【0067】
(5)上述の実施形態では、無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28を2本並列配置したが、無線通信用アンテナ28は一本で実施してもよく、さらに、3本以上の無線通信用アンテナ28を並列配置して実施してもよい。
【0068】
(6)上述の実施形態では、嵩上げ部95を、金属板を直角に二度折り曲げ加工された嵩上げブラケット96から構成したが、この構成に限定されるものではない。嵩上げ部95の構造としては、基地局アンテナ29をアンテナ取付け部位よりも高所に配置することのできるものであればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 作業車両(トラクタ)
25 慣性計測装置
26 GNSSアンテナ
27 無線通信ユニット
28 無線通信用アンテナ
29 基地局アンテナ
40 基準局
51 ユニットカバー
55 ユニットベース(ベースプレート)
72 他のユニット
73 取付けスペース
95 嵩上げ部
L1 距離(第1所定距離)