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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】誘電体導波路ケーブルを結合させる装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/18 20060101AFI20220927BHJP
   H01P 3/16 20060101ALI20220927BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H01P5/18 E
H01P3/16
H01P5/02 607
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021116827
(22)【出願日】2021-07-15
(62)【分割の表示】P 2016235552の分割
【原出願日】2016-12-05
(65)【公開番号】P2021168507
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】201510904209.5
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508079120
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ホワン,リャン
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-014430(JP,A)
【文献】特開昭55-074202(JP,A)
【文献】米国特許第04536058(US,A)
【文献】特開2002-084111(JP,A)
【文献】特開2000-022411(JP,A)
【文献】特開2004-128918(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0090238(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/18- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体導波路ケーブルを結合させる装置であって、
第1の誘電体導波路ケーブル(100)のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル(200)のセグメントとが、それらの側面が互いに隣接して配置された状態で、並列して配列され、その結果、電磁波信号が、前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)の前記セグメントと前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)の前記セグメントとの間の電磁結合を介して前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)から前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)に伝送され得るように、前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)と前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)とを同一平面上に位置づけるように構成された保持デバイスを備える、装置であって、
前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)の前記セグメントと前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)の前記セグメントとの間の電磁結合領域が結合区間として定義され、
前記結合区間において、前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)の前記セグメントおよび前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)の前記セグメントの各々の軸方向の長さが結合長(L)として定義され、
前記結合区間において、前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)の前記セグメントの中心線と前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)の前記セグメントの中心線との間の間隔が結合間隔(d)として定義され、
前記結合長(L)および前記結合間隔(d)は、所定の動作周波数範囲内の前記電磁波信号が前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)から前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)に最小損失で伝送されるように設定される、
誘電体導波路ケーブルを結合させる装置。
【請求項2】
前記結合長(L)および前記結合間隔(d)が、前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)および前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)の断面形状、幾何学的寸法、および材料特性パラメータ、ならびに前記電磁波信号の動作周波数に基づいて決定される、
請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記保持デバイスが、
前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)を位置づけるように構成された第1の位置決め溝を有する第1の位置決め部材と、
前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)を位置づけるように構成された第2の位置決め溝を有する第2の位置決め部材と
を含む、
請求項またはに記載の装置。
【請求項4】
前記第1の位置決め部材および前記第2の位置決め部材が、前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)の前記セグメントと前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)の前記セグメントとの間の前記結合長(L)を調節するために互いに対して第1の方向に移動できるように配設される、
請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の位置決め部材および前記第2の位置決め部材が、前記第1の誘電体導波路ケーブル(100)の前記セグメントと前記第2の誘電体導波路ケーブル(200)の前記セグメントとの間の前記結合間隔(d)を調節するために互いに対して前記第1の方向に垂直な第2の方向に移動できるように配設される、
請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月9日に中国国家知識産権局に出願された中国特許出願第CN201510904209.5号の利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、2つの誘電体導波路ケーブルを結合させる方法と、2つの誘電体導波路ケーブルを結合させる装置とに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、2つの誘電体導波路ケーブルは、一般に、対面接続方法で互いに接続されている。対面接続方法は、2つの光ケーブルを接続する方法と実質的に同じである。この接続方法では、最初に、2つの誘電体導波路ケーブルの2つの端面を高精度で切断し、次に、2つの誘電体導波路ケーブルの軸が互いに位置合わせされるように2つの誘電体導波路ケーブルの端面を正確に位置合わせする必要がある。このようにして、2つの誘電体導波路ケーブル間の接続を実現することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘電体導波路ケーブルを接続する既存の技術では、誘電体導波路ケーブルの端面を高精度で切断し位置合わせする必要であるので、一般に、切断および位置合わせ誤差は、多くの場合、0.01mm未満に制御され、これは、非常に高いコストをもたらすことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、先行技術における上述および他の問題および欠点のうちの少なくとも1つを解決するためになされる。
【0006】
2つの誘電体導波路ケーブルの結合を都合よく達成する誘電体導波路ケーブルを結合させる方法を提供し、それによって、誘電体導波路ケーブルを結合させるコストを低減することは有利であろう。
【0007】
本開示の1つの態様によれば、誘電体導波路ケーブルを結合させる方法が提供され、この方法は、第1の誘電体導波路のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブルのセグメントとが、それらの側面が互いに隣接して配置された状態で、並列して配列され、その結果、電磁波信号が、第1の誘電体導波路のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブルのセグメントとの間の電磁結合を介して第1の誘電体導波路から第2の誘電体導波路に伝送され得るように、第1の誘電体導波路ケーブルと第2の誘電体導波路ケーブルとを位置づけることを含む。
【0008】
本開示の例示的な実施形態によれば、第1の誘電体導波路のセグメントと第2の誘電体導波路のセグメントとの間の電磁結合領域が結合区間として定義される。結合区間において、第1の誘電体導波路のセグメントおよび第2の誘電体導波路のセグメントの各々の軸方向の長さが結合長として定義される。さらに、結合区間において、第1の誘電体導波路のセグメントの中心線と第2の誘電体導波路のセグメントの中心線との間の間隔が結合間隔として定義される。
【0009】
本開示の例示的な実施形態によれば、結合長および結合空間は、所定の動作周波数範囲内の電磁波信号が第1の誘電体導波路から第2の誘電体導波路に最小損失で伝送されるように設定される。
【0010】
本開示の例示的な実施形態によれば、結合長および結合空間は、第1の誘電体導波路および第2の誘電体導波路の断面形状、幾何学的寸法、および材料特性パラメータ、ならびに電磁波信号の動作周波数に基づいて決定される。
【0011】
本開示の例示的な実施形態によれば、第1の誘電体導波路および第2の誘電体導波路の各々は、少なくとも、ファイバコアと、ファイバコアを保護するためにファイバコアのまわりに被覆されたクラッドとを含む。
【0012】
本開示の例示的な実施形態によれば、第1の誘電体導波路および第2の誘電体導波路の各々は、円形断面、多角形断面、または楕円形断面を有する。
【0013】
本開示の例示的な実施形態によれば、第1の誘電体導波路および第2の誘電体導波路の各々のファイバコアは、円形断面、多角形断面、または楕円形断面を有する。
【0014】
本開示の例示的な実施形態によれば、第1の誘電体導波路および第2の誘電体導波路の各々は、クラッドのまわりに被覆された外側保護層をさらに含む。この方法は、第1の誘電体導波路と第2の誘電体導波路ケーブルとを位置づける前に、第1の誘電体導波路のセグメントの保護層と第2の誘電体導波路のセグメントの保護層とを剥がすことをさらに含む。
【0015】
本開示の別の態様によれば、誘電体導波路ケーブルを結合させる装置が提供され、この装置は、第1の誘電体導波路ケーブル(100)のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル(200)のセグメントとが、それらの側面が互いに隣接して配置された状態で、並列して配列され、その結果、電磁波信号が、第1の誘電体導波路ケーブル(100)のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル(200)のセグメントとの間の電磁結合を介して第1の誘電体導波路ケーブル(100)から第2の誘電体導波路ケーブル(200)に伝送され得るように、第1の誘電体導波路ケーブル(100)と第2の誘電体導波路ケーブル(200)とを同一平面上に位置づけるように構成された保持デバイスを備える。第1の誘電体導波路ケーブル(100)のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル(200)のセグメントとの間の電磁結合領域が結合区間として定義される。結合区間において、第1の誘電体導波路ケーブル(100)のセグメントおよび第2の誘電体導波路ケーブル(200)のセグメントの各々の軸方向の長さが結合長(L)として定義される。また、結合区間において、第1の誘電体導波路ケーブル(100)のセグメントの中心線と第2の誘電体導波路ケーブル(200)のセグメントの中心線との間の間隔が結合間隔(d)として定義される。そして、この誘電体導波路ケーブルを結合させる装置では、結合長(L)および結合間隔(d)は、所定の動作周波数範囲内の電磁波信号が第1の誘電体導波路ケーブル(100)から第2の誘電体導波路ケーブル(200)に最小損失で伝送されるように設定される。
【0016】
本開示の例示的な実施形態によれば、第1の誘電体導波路のセグメントと第2の誘電体導波路のセグメントとの間の電磁結合領域が結合区間として定義される。結合区間において、第1の誘電体導波路のセグメントおよび第2の誘電体導波路のセグメントの各々の軸方向の長さが結合長として定義される。結合区間において、第1の誘電体導波路のセグメントの中心線と第2の誘電体導波路のセグメントの中心線との間の間隔が結合間隔として定義される。
【0017】
本開示の例示的な実施形態によれば、結合長および結合空間は、所定の動作周波数範囲内の電磁波信号が第1の誘電体導波路から第2の誘電体導波路に最小損失で伝送されるように設定される。
【0018】
本開示の例示的な実施形態によれば、結合長および結合空間は、第1の誘電体導波路および第2の誘電体導波路の断面形状、幾何学的寸法、および材料特性パラメータ、ならびに電磁波信号の動作周波数に基づいて決定される。
【0019】
本開示の例示的な実施形態によれば、保持デバイスは、第1の誘電体導波路ケーブルを位置づけるように構成された第1の位置決めえ溝を有する第1の位置決め部材と、第2の誘電体導波路ケーブルを位置づけるように構成された第2の位置決め溝を有する第2の位置決め部材とを含む。
【0020】
本開示の例示的な実施形態によれば、第1の位置決め部材および第2の位置決め部材は、第1の誘電体導波路のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブルのセグメントとの間の結合長を調節するために互いに対して第1の方向に移動できるように配設される。
【0021】
本開示の例示的な実施形態によれば、第1の位置決め部材および第2の位置決め部材は、第1の誘電体導波路のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブルのセグメントとの間の結合間隔を調節するために互いに対して第1の方向に垂直な第2の方向に移動できるように配設される。
【0022】
本開示の様々な実施形態において、2つの隣接する誘電体導波路ケーブルは、2つの誘電体導波路ケーブル間の方向性結合特性(directional coupling characteristics)を介して並列結合(side-by-side coupling)方法で互いに結合される。そのような並列結合方法は、2つの誘電体導波路ケーブルを、それらの側面を互いに近づけるように並列して位置づけることしか必要とせず、その結果、高精度で端面を切断し位置合わせすることを必要とせずに、より密な結合がそれらの間に形成される。電磁波信号は、2つの誘電体導波路ケーブルの結合長および結合間隔を調節することにより2つの誘電体導波路ケーブルの一方から他方に伝送され得る。それゆえに、誘電体導波路ケーブルを結合させる困難さおよびコストを低減することが可能である。
【0023】
本開示では、2つの誘電体導波路ケーブルは、誘電体導波路ケーブル間の方向性結合特性を介してより密な結合を形成するために誘電体導波路ケーブルの側面を互いに近づけるように並列して位置づけられる。信号が誘電体導波路ケーブルに沿って誘電体導波路ケーブルの結合セグメントに入り、所定の距離を通って伝送された後、誘電体導波路ケーブルの一方で搬送されたエネルギーは、それに結合された誘電体導波路ケーブルの他方に比較的十分に伝送され、それによって、信号結合が達成されることになる。
【0024】
本開示の他の目的および利点は、添付図面を参照する以下の記述から明らかとなり、本発明への包括的理解に役立つことになる。
【0025】
本開示の特徴および利点は、本開示への限定であるとして解釈されるべきでない添付図面を参照してより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】2つの誘電体導波路ケーブル間の方向性結合特性を介して達成される2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の並列接続を示す概略原理図である。
図2】本開示の一実施形態による2つの隣接する誘電体導波路ケーブルの断面を示す概略図である。
図3a】例1による、15mmの結合長Lをもつ、図2に示されたような2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
図3b】例2による、22mmの結合長Lをもつ、図2に示されたような2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
図3c】例3による、30mmの結合長Lをもつ、図2に示されたような2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
図4図2に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブルが互いに結合されたときの例1、例2、および例3による挿入損失を示すグラフである。
図5】本開示の別の実施形態による2つの隣接する誘電体導波路ケーブルの横断面を示す概略図である。
図6a】例4による、12mmの結合長Lをもつ、図5に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
図6b】例5による、24mmの結合長Lをもつ、図5に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
図7a図5に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブルが例4により互いに結合されたときの理論的な挿入損失および実際の挿入損失を示す図である。
図7b図5に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブルが例5により互いに結合されたときの理論的な挿入損失および実際の挿入損失を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の実施形態が、添付図面を参照しながら以下に詳細に記述される。この記述において、同じまたは同様の参照番号は同じまたは同様の構成要素を参照する。添付図面を参照しながら以下でなされる本開示の実施形態の記述は、本発明の概略の独創的着想について説明するものであり、本発明への限定であるとして解釈されるべきでない。
【0028】
加えて、以下の詳細な記述では、説明を容易にするために、多くの特定の詳細が本開示への完全な理解を提供するために述べられる。しかしながら、1つまたは複数の実施形態は、これらの特定の詳細なしに明らかに実行することができる。他の場合には、よく知られている構造およびデバイスが、図面を簡単化するために示される。
【0029】
本開示の一般的概念によれば、誘電体導波路ケーブルを結合させる方法が提供され、この方法は、第1の誘電体導波路ケーブルのセグメントと第2の誘電体導波路ケーブルのセグメントとが、それらの側面が互いに隣接して配置された状態で、並列して配列され、その結果、電磁波信号が、第1の誘電体導波路ケーブルのセグメントと第2の誘電体導波路ケーブルのセグメントとの間の電磁結合を介して第1の誘電体導波路ケーブルから第2の誘電体導波路ケーブルに伝送され得るように、第1の誘電体導波路ケーブルと第2の誘電体導波路ケーブルとを位置づけるステップを含む。
【0030】
本開示の一実施形態による誘電体導波路ケーブルを結合させる方法が、図1から図4を参照しながら以下に記述される。
【0031】
図1は、2つの誘電体導波路ケーブル100、200間の方向性結合特性を介して達成される2つの隣接する誘電体導波路ケーブル100、200間の並列結合を示す概略原理図である。
【0032】
本開示の例示的な実施形態では、誘電体導波路ケーブル100、200間の並列結合方法が開示される。図1に示された実施形態では、第1の誘電体導波路ケーブル100と第2の誘電体導波路ケーブル200とは、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメント(図1に「L」で示した領域内に配置された第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメント)と、第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメント(図1に「L」で示した領域内に配置された第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメント)とが、それらの側面が互いに隣接して配置された状態で、並列して配列され、その結果、効果的な電磁結合が、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントとの間に発生されるように位置づけられる。このようにして、電磁波信号yは、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントとの間の電磁結合を介して第1の誘電体導波路ケーブル100から第2の誘電体導波路ケーブル200に伝送され得る(図1の破線で示されるように、しかしながら、この破線は、物理的なまたは数学的な電磁結合または電磁伝送を表すのではなく、この電磁結合を視覚的に表現することを単に意図していることに留意されたい)。
【0033】
図1に示すように、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントとの間に効果的な電磁結合を発生させるために、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントの中心線と第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントの中心線との間の間隔dは、電磁結合が第1の誘電体導波路ケーブル100と第2の誘電体導波路ケーブル200との間に発生され得る最大距離よりも小さくなることになる。
【0034】
説明および記述を簡単にするために、本開示では、図1に示されるように、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントとの間の電磁結合領域は、結合区間として定義される。図1に示されるように、この結合区間において、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントおよび第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントの各々の軸方向の長さは、結合長Lとして定義される。さらに、図1に示されるように、この結合区間において、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントの中心線と第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントの中心線との間の間隔は、結合間隔dとして定義される。
【0035】
本開示の例示的な実施形態では、結合長Lおよび結合間隔dは、所定の動作周波数範囲内の電磁波信号yが第1の誘電体導波路ケーブル100から第2の誘電体導波路ケーブル200に最小損失で伝送されるように設定される。このようにして、所定の動作周波数範囲内の電磁波信号yが第1の誘電体導波路ケーブル100から第2の誘電体導波路ケーブル200に実質的に完全に伝送され得ることを保証し、それによって、信号の伝送品質を保証することが可能である。
【0036】
一般に、結合長Lおよび結合空間dは、第1の誘電体導波路ケーブル100および第2の誘電体導波路ケーブル200の断面形状、幾何学的寸法、および材料特性パラメータ、ならびに電磁波信号の動作周波数に基づいて決定することができる。
【0037】
図2は、本開示の一実施形態による2つの隣接する誘電体導波路ケーブル100、200の断面を示す概略図である。
【0038】
図示した実施形態では、図2に示されるように、第1の誘電体導波路ケーブル100は、少なくとも、ファイバコア110と、ファイバコア110を保護するためにファイバコア110のまわりに被覆されたクラッド120とを含み、第2の誘電体導波路ケーブル200は、少なくとも、ファイバコア210と、ファイバコア210を保護するためにファイバコア210のまわりに被覆されたクラッド220とを含む。
【0039】
第1の誘電体導波路ケーブル100および第2の誘電体導波路ケーブル200の幾何学的寸法および材料特性パラメータ、ならびに電磁波信号の動作周波数および結合空間dが決定された場合において、信号伝送性能への結合長Lの影響が図2から図4を参照しながら以下に記述される。
【0040】
図3aは、例1による、15mmの結合長Lをもつ、図2に示されたような2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
【0041】
図3bは、例2による、22mmの結合長Lをもつ、図2に示されたような2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
【0042】
図3cは、例3による、30mmの結合長Lをもつ、図2に示されたような2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
【0043】
図2から図3cに示された例1、例2、および例3では、第1の誘電体導波路ケーブル100および第2の誘電体導波路ケーブル200の各々は、長方形断面を有し、第1の誘電体導波路ケーブル100のファイバコア110および第2の誘電体導波路ケーブル200のファイバコア210の各々は、円形断面を有する。
【0044】
図2から図3cに示された例1、例2、および例3では、第1の誘電体導波路ケーブル100のファイバコア110および第2の誘電体導波路ケーブル200のファイバコア210の各々は、2.1の相対誘電率と、0.0002の損失角とを有する。
【0045】
図2から図3cに示された例1、例2、および例3では、第1の誘電体導波路ケーブル100のクラッド120および第2の誘電体導波路ケーブル200のクラッド220の各々は、5.4の相対誘電率と、0.0001の損失角とを有する。
【0046】
図2から図3cに示された例1、例2、および例3では、第1の誘電体導波路ケーブル100および第2の誘電体導波路ケーブル200の各々は、1mm×0.8mmのサイズをもつ断面を有し、ファイバコア110、210の各々は、0.4mmの直径を有する。
【0047】
図2から図3cに示された例1、例2、および例3では、第1の誘電体導波路ケーブル100と第2の誘電体導波路ケーブル200との間の結合間隔dは、1.1mmである。
【0048】
図2から図3cに示された例1、例2、および例3では、電磁波信号の中心動作周波数は、実質的に140GHzである。
【0049】
図4は、図2に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブル100、200が互いに結合されたときの例1、例2、および例3による挿入損失を示す。
【0050】
図4において、曲線1は、結合長Lが15mmである場合の挿入損失を表し、曲線2は、結合長Lが22mmである場合の挿入損失を表し、曲線3は、結合長Lが30mmである場合の挿入損失を表す。
【0051】
図4に明確に示されているように、電磁波信号の中心動作周波数が実質的に140GHzである場合、挿入損失は、結合長Lが15mmである場合に最小であり、挿入損失は、結合長Lが22mmまたは30mmである場合に相対的により大きく、特に、挿入損失は、結合長Lが22mmである場合に最大である。それゆえに、本開示のこの実施形態では、結合長Lは、挿入損失が最小となるので15mmとして設定することができ、その結果、電磁波信号は、この場合、損失なしに第1の誘電体導波路ケーブル100から第2の誘電体導波路ケーブル200に伝送され得る。
【0052】
図示されていないが、第1の誘電体導波路ケーブル100および第2の誘電体導波路ケーブル200の各々は、クラッド120、220のまわりに被覆された外側保護層をさらに含むことができる。この場合、第1の誘電体導波路ケーブル100と第2の誘電体導波路ケーブル200とを位置づける前に、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントおよび第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントの保護層を剥がして、クラッド120、220を露出させることが必要である。
【0053】
図5は、本開示の別の実施形態による2つの隣接する誘電体導波路ケーブル100’、200’の断面を示す。
【0054】
図5に示された実施形態では、第1の誘電体導波路ケーブル100’は、少なくとも、ファイバコア110’と、ファイバコア110’を保護するためにファイバコア110’のまわりに被覆されたクラッド120’とを含み、第2の誘電体導波路ケーブル200’は、少なくとも、ファイバコア210’と、ファイバコア210’を保護するためにファイバコア210’のまわりに被覆されたクラッド220’とを含む。
【0055】
第1の誘電体導波路ケーブル100’および第2の誘電体導波路ケーブル200’の幾何学的寸法および材料特性パラメータ、ならびに電磁波信号の動作周波数および結合間隔dが決定された場合において、信号伝送性能への結合長Lの影響が図5から図7bを参照しながら以下に記述される。
【0056】
図6aは、例4による、12mmの結合長Lをもつ、図5に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
【0057】
図6bは、例5による、24mmの結合長Lをもつ、図5に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブル間の結合を示す概略図である。
【0058】
図5から図6bに示された例4および例5では、第1の誘電体導波路ケーブル100’および第2の誘電体導波路ケーブル200’の各々は、長方形断面を有し、第1の誘電体導波路ケーブル100’のファイバコア110’および第2の誘電体導波路ケーブル200’のファイバコア210’の各々は、長方形断面を有する。
【0059】
図5から図6bに示された例4および例5では、第1の誘電体導波路ケーブル100’のファイバコア110’および第2の誘電体導波路ケーブル200’のファイバコア210’の各々は、2.14の相対誘電率と、0.0001の損失角とを有する。
【0060】
図5から図6bに示された例4および例5では、第1の誘電体導波路ケーブル100’のクラッド120’および第2の誘電体導波路ケーブル200’のクラッド220’の各々は、5.4の相対誘電率と、0.0002の損失角とを有する。
【0061】
図5から図6bに示された例4および例5では、第1の誘電体導波路ケーブル100’および第2の誘電体導波路ケーブル200’の各々は、1mm×0.8mmのサイズをもつ断面を有し、ファイバコア110’、210’の各々は、0.2mm×0.4mmのサイズをもつ断面を有する。
【0062】
図5から図6bに示された例4および例5では、第1の誘電体導波路ケーブル100’と第2の誘電体導波路ケーブル200’との間の結合間隔dは、1.1mmである。
【0063】
図5から図6bに示された例4および例5では、電磁波信号の中心動作周波数は実質的に140GHzである。
【0064】
図7aは、図5に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブル100’、200’が互いに結合されたときの例4による理論的な挿入損失(実線で示した)および実際の挿入損失(破線で示した)を示し、図7bは、図5に示された2つの隣接する誘電体導波路ケーブル100’、200’が互いに結合されたときの例5による理論的な挿入損失(実線で示した)および実際の挿入損失(破線で示した)を示す。
【0065】
図7aに明確に示されているように、電磁波信号の中心動作周波数が実質的に140GHzである場合、結合長Lが12mmであるとき、実際の挿入損失(破線で示した)は最小であり、理論的な挿入損失(実線で示した)と実質的に一致している。
【0066】
図7bに明確に示されているように、結合長Lが24mmであるとき、電磁波信号の中心動作周波数が実質的に140GHzである場合、実際の挿入損失(破線で示した)は比較的大きく、実際の挿入損失(破線で示した)と理論的な挿入損失(実線で示した)との間に比較的大きい差が存在する。
【0067】
それゆえに、上述の分析によれば、本開示のこの実施形態では、結合長Lは、挿入損失が最小となるので12mmとして設定することができ、電磁波信号は、この場合、損失なしに第1の誘電体導波路ケーブル100’から第2の誘電体導波路ケーブル200’に伝送され得る。
【0068】
本開示において、第1の誘電体導波路ケーブルおよび第2の誘電体導波路ケーブル、ならびにそれらの寸法および形状は、図示した実施形態のものに限定されない。第1の誘電体導波路ケーブルおよび第2の誘電体導波路ケーブルは、円形形状、長方形形状、多角形形状、楕円形形状などのような任意の好適な形状および寸法を有することができる。
【0069】
図示されていないが、本開示は、2つの誘電体導波路ケーブルを並列接続で結合させるための装置をさらに開示する。装置は、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントとが、それらの側面が互いに隣接して配置された状態で、並列して配列され、その結果、電磁波信号が、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントとの間の電磁結合を介して第1の誘電体導波路ケーブル100から第2の誘電体導波路ケーブル200に伝送され得るように、第1の誘電体導波路ケーブル100と第2の誘電体導波路ケーブル200とを位置づけるように構成された保持デバイスを備えることができる。
【0070】
本開示の例示的な実施形態では、保持デバイスは、第1の誘電体導波路ケーブル100を位置づけるように構成された第1の位置決め溝を有する第1の位置決め部材と、第2の誘電体導波路ケーブル200を位置づけるように構成された第2の位置決め溝を有する第2の位置決め部材とを含む。
【0071】
本開示の例示的な実施形態では、第1の位置決め部材および第2の位置決め部材は、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントとの間の結合長Lを調節するために互いに対して第1の方向に移動できるように配設することができる。
【0072】
本開示の例示的な実施形態では、第1の位置決め部材および第2の位置決め部材は、第1の誘電体導波路ケーブル100のセグメントと第2の誘電体導波路ケーブル200のセグメントとの間の結合間隔dを調節するために互いに対して第1の方向に垂直な第2の方向に移動できるように配設することができる。
【0073】
本開示の例示的な実施形態では、保持デバイスは、第1の誘電体導波路ケーブル100と第2の誘電体導波路ケーブル200とを把持するための把持機構をさらに含むことができる。
【0074】
先の記述および図示のような実施形態は例示であり、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく様々な改変または変更が当業者によって実施形態に行われ得ることを当業者なら理解されよう。さらに、様々な実施形態において記述された構造は、構造または概念において互いに矛盾することなく任意の形態で組み合わせることができる。
【0075】
本開示が添付図面を参照しながら記述されたが、添付図面で開示された実施形態は、本開示の好ましい実施形態を例示することが意図されており、本開示への限定であるとして解釈されるべきでない。
【0076】
本開示の一般的着想のいくつかの実施形態が添付図面を参照しながら記述され図示されたが、本発明の原理および精神から逸脱することなく様々な改変または変更がこれらの実施形態に行われ得ることを当業者なら理解されよう。本発明の範囲は、もっぱら、特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。
【0077】
「備える、含む(comprise)」または「含む(include)」という言い回しは他の要素またはステップを排除せず、「1つの(a)」または「1つの(an)」という表現は「多数の」を排除しないことに留意されたい。加えて、特許請求の範囲のいかなる参照番号も本発明の範囲の限定として解釈されるべきでない。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b