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  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図1
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図2
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20220927BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20220927BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021146861
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】110119669
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501106263
【氏名又は名称】明安國際企業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】蔡 清山
(72)【発明者】
【氏名】趙 佩君
(72)【発明者】
【氏名】蘇 明福
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 俊豪
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0096154(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0154456(US,A1)
【文献】特開2020-141918(JP,A)
【文献】特開2003-102343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0346080(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0324178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/08
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体と、前記ヘッド本体に設置されている板状部材と、を備えるゴルフクラブヘッドであって、
前記板状部材は、互いに重なっている複数の炭素繊維層と、カーボンナノチューブが0.01wt%~5wt%で含まれていて前記複数の炭素繊維層の層内及び層間に含浸していて固化したマトリックスとなっている熱硬化性重合体と、を備えることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記板状部材の厚さは、0.4mm~0.8mmにあることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記炭素繊維層は、一方向炭素繊維布または3K炭素繊維布であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記熱硬化性重合体は、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記板状部材は、クラウンまたはソールとして前記ヘッド本体に設置されていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なゴルフクラブヘッドは、全体が金属により製造されているので、頑丈さに優れる上に打球音が澄んで通るという利点がある反面、全体が重いという欠点がある。
【0003】
現在、炭素繊維複合材料でゴルフクラブヘッドの頂部板(クラウン)または底部板(ソール)を構成することにより、ゴルフクラブヘッドが十分な頑丈さを保持した上で、軽量化が図られ、更に炭素繊維の模様により特別な視覚効果が得られる。例えば、特許文献1には、炭素繊維複合材料でゴルフクラブヘッドの頂部板を構成するゴルフクラブヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】台湾特許第I729927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、マトリックス(母材)が熱硬化性樹脂の炭素繊維複合材料は、軽量且つ頑丈であるという特性があるが、打球音が低くてこもるという欠点がある。
【0006】
また、特許文献1のように、マトリックスが熱可塑性樹脂の炭素繊維複合材料を使用すると、ボールを打つ際澄んで通る音が生じるが、製造コストが高い欠点がある。
【0007】
上記の問題点に鑑みて、本発明は、打球音が澄んで通る上、製造コストが低いゴルフクラブヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を実現するために、本発明は、
ヘッド本体と、前記ヘッド本体に設置されている板状部材と、を備えるゴルフクラブヘッドであって、
前記板状部材は、互いに重なっている複数の炭素繊維層と、カーボンナノチューブが0.01wt%~5wt%で含まれていて前記複数の炭素繊維層の層内及び層間に含浸していて固化したマトリックスとなっている熱硬化性重合体と、を備えることを特徴とするゴルフクラブヘッドを提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように、本発明のゴルフクラブヘッドは、板状部材に品質係数Q(Q Factor)が高いカーボンナノチューブが含まれているので、ボールを打つ際澄んで通る音が生じる上、マトリックスが熱硬化性樹脂であるので製造コストが熱可塑性樹脂より低い。従って、低い製造コストで、打球音が軽快なゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のゴルフクラブヘッドの実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明のゴルフクラブヘッドの板状部材の構造を示す図である。
図3】本発明のゴルフクラブヘッドの他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明のゴルフクラブヘッドの実施の形態について詳しく説明する。
【0012】
なお、本実施の形態の説明に附された図面は、要旨を表示する方法で本発明の基本構想を説明するものであり、即ち図面は、実際に実施する時の構成要件の数、形状、寸法に基づいて描いたものではなく、本発明に関わる構成要件のみを表すものである。実際に実施する時の各構成要件の形態、数量、比率は適宜に変更でき、構成要件の構成形態もより複雑であり得る。
【0013】
本発明のゴルフクラブヘッドは、図1または図3に示されるように、ヘッド本体1と、ヘッド本体1に設置されている板状部材2と、を備えるものである。
【0014】
板状部材2は、図2に示されるように、互いに重なっている複数の炭素繊維層22と、カーボンナノチューブ(CNT、Carbon Nanotube)が0.01wt%~5wt%で含まれていて複数の炭素繊維層22の層内及び層間に含浸していて固化したマトリックスとなっている熱硬化性重合体21と、を備える。
【0015】
即ち、板状部材2は、複数の炭素繊維層22とマトリックスである熱硬化性重合体21とにより構成された炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を備える。この実施の形態において、板状部材2は全体が、熱硬化性重合体21を炭素繊維層22に含浸させてから熱成形で硬化させることにより得られた炭素繊維強化プラスチックである。
【0016】
板状部材2の厚さは、0.4mm~0.8mmにある。
【0017】
炭素繊維層22は、一方向炭素繊維布(UD、unidirectional)または3K炭素繊維布である。
【0018】
熱硬化性重合体21は、カーボンナノチューブが0.01wt%~5wt%で含まれているエポキシ樹脂である。
【0019】
この実施形態において、図1に示されるように、板状部材2は、クラウンとしてヘッド本体1に設置されている。
【0020】
なお、他の実施形態において、図3に示されるように、板状部材2は、ソールとしてヘッド本体1に設置されている。
【0021】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0022】
3つの実施例及び2つの比較例のゴルフクラブヘッドで打球音の周波数を比較した。その結果は、表1に示される。
【0023】
3つの実施例は、本発明における板状部材2をクラウンとしてヘッド本体1に設置した上述の実施の形態のゴルフクラブヘッドであり、それぞれに使用した板状部材において、熱硬化性重合体21内のカーボンナノチューブの含有量のみが異なる。
【0024】
比較例1は、全体が金属により製造されたゴルフクラブヘッドである。
【0025】
比較例2は、熱硬化性重合体21内にカーボンナノチューブを含有しない以外、他の条件は実施例1~3と同じである板状部材をクラウンとして使用したゴルフクラブヘッドである。
【0026】
実施例1~3及び比較例2に使用した板状部材と比較例1のクラウン部分は、厚さが略同じであり、比較例2に使用した板状部材は、実施例1~3と同じく全体が炭素繊維強化プラスチックである。
【0027】
【表1】
【0028】
表1によれば、熱硬化性重合体21内にカーボンナノチューブを含有する3つの実施例のゴルフクラブヘッドは、打球音の周波数が全金属製の比較例1のゴルフクラブヘッドの打球音の周波数より低いが、熱硬化性重合体21内にカーボンナノチューブを含有しない比較例2のゴルフクラブヘッドの打球音の周波数より明らかに高く、全金属製の比較例1のゴルフクラブヘッドの打球音の周波数に近い。
【0029】
従って、板状部材に品質係数Q(Q Factor)が高いカーボンナノチューブが含まれていることにより、該板状部材を使用したゴルフクラブヘッドでボールを打つ際澄んで通る音が生じる上、マトリックスが熱硬化性樹脂であるので製造コストが熱可塑性樹脂より低い。従って、低い製造コストで、打球音が軽快なゴルフクラブヘッドを提供できるので、市場競争において有利である。
【0030】
また、熱硬化性重合体21内のカーボンナノチューブの含有量が5wt%を超えると、熱硬化性重合体21全体の流動性が低くなって、炭素繊維層22の一部が熱硬化性重合体21に含浸されないので、板状部材2の成型が難しくなる。そして、熱硬化性重合体21内のカーボンナノチューブの含有量が0.01wt%未満になると、打球音の周波数を高める効果が弱すぎる。
【0031】
上記の内容によれば、本発明のゴルフクラブヘッドは、カーボンナノチューブが0.01wt%~5wt%で含まれている熱硬化性重合体21を使用した板状部材2を備えることにより、ボールを打つ際澄んで通る音が生じる上、製造コストが熱可塑性樹脂を使用する板状部材より低いので、低い製造コストで打球音の軽快なゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0032】
上記実施の形態は例示的に本発明の原理及び効果を説明するものであり、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施の形態に対して若干の変更や修飾が可能である。従って、当業者が本発明の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のゴルフクラブヘッドは、一般のゴルフクラブに使用することに好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 ヘッド本体
2 板状部材
21 熱硬化性重合体
22 炭素繊維層
【要約】
【課題】低い製造コストで打球音が軽快なゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】本発明は、ヘッド本体と、前記ヘッド本体に設置されている板状部材2と、を備えるゴルフクラブヘッドであって、板状部材2は、互いに重なっている複数の炭素繊維層22と、カーボンナノチューブが0.01wt%~5wt%で含まれていて複数の炭素繊維層22の層内及び層間に含浸していて固化したマトリックスとなっている熱硬化性重合体21と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3