IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニコベンチャーズ トレーディング リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】エアロゾルの発生
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/30 20200101AFI20220927BHJP
   A24B 15/167 20200101ALI20220927BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20220927BHJP
【FI】
A24F40/30
A24B15/167
A24D1/20
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021538962
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2019086700
(87)【国際公開番号】W WO2020141113
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】1900128.8
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】アビ アウン、ワリド
(72)【発明者】
【氏名】ベル、サリー
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-527913(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135331(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0279666(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0251727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
A24D 1/20
A24B 15/00-15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の揮発性材料を保持する容器と、
容器に保持された第1の揮発性材料を揮発させるためのヒーターと、
ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーと、
塩基性溶液を含む貯蔵部と、
出口とを含む吸引可能な媒体の発生装置であって、
使用時に塩基性溶液が貯蔵部から放出され、エアロゾル化可能な材料を含むチェンバーに入り、第1の揮発性材料はヒーターによって揮発させて蒸気および/またはエアロゾルを形成し、これらはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーを通過し、エアロゾル化可能な材料の1つ以上の成分を同伴し、これにより出口を通過する吸引可能な媒体を形成するように構成されている発生装置。
【請求項2】
第1の揮発性材料は液体またはゲルを含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
塩基性溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたはその混合物の水溶液または他の可用性塩基の水溶液を含むことを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
塩基性溶液は塩基性溶液を放出するために使用時に破裂させるバリアー材によって使用前に貯蔵部に保持されることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
塩基性溶液は使用時に貯蔵部からチェンバー内に圧送されることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の装置。
【請求項6】
ポンプはパフによって始動されることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
第1の揮発性材料はニコチンを含まないことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の装置。
【請求項8】
(i)容器に入っている第1の揮発性材料と、(ii)チェンバーに入っているニコチンを含むエアロゾル化可能な材料と、(iii)貯蔵部に含まれている塩基性溶液とを含む吸引可能な媒体の発生装置に使用するカートリッジであって、使用時に塩基性溶液が貯蔵部から放出され、エアロゾル化可能な材料を含むチェンバーに入り、第1の揮発性材料から発生した蒸気および/またはエアロゾルはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーを通過し、エアロゾル化可能な材料の1つ以上の成分を同伴するように構成されているカートリッジ。
【請求項9】
第1の揮発性材料は液体またはゲルを含むことを特徴とする請求項8記載のカートリッジ。
【請求項10】
塩基性溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたはその混合物の水溶液または他の可用性塩基の水溶液を含むことを特徴とする請求項8または9記載のカートリッジ。
【請求項11】
塩基性溶液は塩基性溶液を放出するために使用時に破裂させるバリアー材によって使用前に貯蔵部に保持されることを特徴とする請求項8乃至10いずれか1項記載のカートリッジ。
【請求項12】
塩基性溶液は使用時に貯蔵部からチェンバー内に圧送されることを特徴とする請求項8乃至11いずれか1項記載のカートリッジ。
【請求項13】
第1の揮発性材料はニコチンを含まないことを特徴とする請求項8乃至12いずれか1項記載のカートリッジ。
【請求項14】
(i) 第1の揮発性材料を含む第1ポッドと、
(ii)(a)ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーと(b)塩基性溶液を含む貯蔵部を有する第2ポッドとを含むキットであって、
第1および第2ポッドは、使用時に塩基性溶液が貯蔵部から放出され、エアロゾル化可能な材料を含むチェンバーに入り、第1の揮発性材料から発生した蒸気および/またはエアロゾルはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーを通過し、エアロゾル化可能な材料の1つ以上の成分を同伴するように装置に使用するために構成されているキット。
【請求項15】
第1の揮発性材料は液体またはゲルであることを特徴とする請求項14記載のキット。
【請求項16】
吸引可能な媒体の発生に使用するための装置をさらに含み、この装置はヒーターを含むことを特徴とする請求項14または15記載のキット。
【請求項17】
装置のヒーターは使用時に第1の揮発性材料を揮発させるように構成されていることを特徴とする請求項16記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸引可能な媒体を発生させるための装置、吸引可能な媒体を発生させるための装置に使用するためのカートリッジおよびキットに関するがこれらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコ、シガーなどの喫煙品は使用時にタバコを燃やし、煙を発生させる。これらの種の喫煙品の代替え品に吸引可能な媒体を形成するために燃焼せずに化合物を放出するものがある。
【0003】
そのような製品としては電子タバコハイブリッド装置としても知られている電子タバコ/非燃焼加熱ハイブリッド装置が挙げられる。これらのハイブリッド装置は、吸引可能な蒸気またはエアロゾルを製するために加熱することによって気化する蒸気またはエアロゾル前駆体(液体またはゲルなどの)を含む。蒸気前駆体はグリセリンおよび一部の例ではニコチンなどの香味料および/またはエアロゾル発生する物質を含んでもよい。蒸気またはエアロゾルは装置内の基剤材料を通過し、吸い込まれる媒体を製するために基剤材料の1つ以上の成分を同伴する。基材は、例えば例えばタバコ、非タバコ製品またはニコチンを含むまたは含まないブレンドミックスなどの混合物であってもよい。電子タバコハイブリッド装置の一例がWO2016/135331に開示されている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で説明する一部の実施態様では本発明は吸引可能な媒体の発生装置を提供し、この装置は、
第1の揮発性材料を保持する容器と、
容器に保持された第1の揮発性材料を揮発させるためのヒーターと、
ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーと、
塩基性溶液を含む貯蔵部と、
出口とを含み、
使用時に塩基性溶液が貯蔵部から放出され、エアロゾル化可能な材料を含むチェンバーに入り、第1の揮発性材料はヒーターによって揮発させて蒸気および/またはエアロゾルを形成し、これらはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーを通過し、エアロゾル化可能な材料の1つ以上の成分を同伴し、これにより出口を通過する吸引可能な媒体を形成するように構成されている。
【0005】
本明細書で説明する装置は電子タバコハイブリッド装置と言う場合もある。
【0006】
本明細書で説明する一部の実施態様では本発明は吸引可能な媒体の発生装置に使用するカートリッジを提供し、このカートリッジは、(i)容器に入っている第1の揮発性材料と、(ii)チェンバーに入っているニコチンを含むエアロゾル化可能な材料と、(iii)貯蔵部に含まれている塩基性溶液とを含み、カートリッジは、使用時に塩基性溶液が貯蔵部から放出され、エアロゾル化可能な材料を含むチェンバーに入り、第1の揮発性材料から発生した蒸気および/またはエアロゾルはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーを通過し、エアロゾル化可能な材料の1つ以上の成分を同伴するように構成されている。
【0007】
好適にはカートリッジは、本明細書で説明する吸引可能な媒体を発生させる装置に使用するようになっている。
【0008】
本明細書で説明する一部の実施態様では本発明は、
(i) 第1の揮発性材料を含む第1ポッドと、
(ii) (a)ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーと(b)塩基性溶液を含む貯蔵部を有する第2ポッドとを含むキットを提供し、
第1および第2ポッドは、使用時に塩基性溶液が貯蔵部から放出され、エアロゾル化可能な材料を含むチェンバーに入り、第1の揮発性材料から発生した蒸気および/またはエアロゾルはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーを通過し、エアロゾル化可能な材料の1つ以上の成分を同伴するように装置に使用するために構成されている。
【0009】
本発明のさらなる特徴および利点は、あくまで例示を目的とした本発明の好ましい実施態様の以下の説明から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
タバコは塩基と水で処理してタバコからニコチンを解放しやすくすることができる。ニコチンは塩基との反応によってタバコのニコチン塩から解放される。次にニコチンは使用時に低温で気化する。
【0011】
本発明者は塩基処理されたタバコを従来の電子タバコハイブリッド装置に使用した場合、使用時のパフ一回当たりのニコチン送出量が著しく減少することを発見した。塩基とニコチンの反応はすぐに起こり、その後pH処理されたニコチンはすぐに解放されてしまい、消費中の送出量はパフする毎に減少する。また本発明者は塩基pH処理されたタバコからのニコチンはその高い揮発性により使用前に装置から失われる場合があることを観察した。
【0012】
本発明はタバコのpH処理を遅らせることによってパフ一回当たりのニコチン送出量の安定性を向上させている。本発明は貯蔵部に入っている塩基性溶液を提供し、この塩基性溶液は使用時にニコチン含有材を含むチェンバー内に導入される。塩基性溶液は、場合によっては消費時の初期(即ち、一回目のパフの前に)にニコチン含有材を含むチェンバーに導入されてもよく、これによって使用前のpH処理されたニコチンの損失を妨げる。それ以外の場合、塩基性溶液は消費中(即ち、パフしている間)ニコチン含有材を含むチェンバーに導入してもよい。これによって使用前のpH処理されたニコチンの損失が妨げられ、導入量を材料のpH処理量を制御するために従ってpH処理にによるニコチンの解放量を制御するために制限することができ、ユーザーにニコチンをより持続的に送出することができる。
【0013】
さらにタバコ(ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料)の高pH処理は、結果としてアンモニアを解放する。塩基性pH処理の量を調整することでアンモニアの放出量が調整され、これによりタバコのタバコの感覚刺激特性が改善される(アンモニアの臭いが弱くなるので)。
【0014】
一部の例において本発明は吸引可能な媒体の発生装置を提供し、この装置は、
第1の揮発性材料を保持する容器と、
容器に保持された第1の揮発性材料を揮発させるためのヒーターと、
ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーと、
塩基性溶液を含む貯蔵部と、
出口とを含み、
使用時に塩基性溶液が貯蔵部から放出され、エアロゾル化可能な材料を含むチェンバーに入り、第1の揮発性材料はヒーターによって揮発させて蒸気および/またはエアロゾルを形成し、これらはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーを通過し、エアロゾル化可能な材料の1つ以上の成分を同伴し、これにより出口を通過する吸引可能な媒体を形成するように構成されている。
【0015】
本明細書で説明する装置は電子タバコハイブリッド装置と言う場合もある。エアロゾルまたは蒸気は感覚刺激性を有するエアロゾル化可能な材料から有機物および他の化合物または成分を同伴し、エアロゾルまたは蒸気が出口を通過する際にエアロゾルまたは蒸気に風味を付与する。
【0016】
場合によってはエアロゾル化可能な材料はエアロゾルまたは蒸気が材料を通過できるように多孔性であってもよい。従って、エアロゾル化可能な材料の成分は、エアロゾル/蒸気がエアロゾル化可能な材料を通過する際に効率よく同伴される。
【0017】
ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料は通常は固体材料であってもよい。場合によってはそれはタバコ組成物とも称される場合があるタバコ材を含んでもよい。タバコ材のpH処理に具体的に関する本明細書での考察は、ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料と組み合わせてそれらが矛盾しない範囲内で明確に開示されているものとする。
【0018】
本明細書中では「タバコ材」なる用語は、タバコまたはその派生物を含むあらゆる材料を意味する。「タバコ材」なる用語はタバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコまたはタバコ代替え品の内の1つ以上を含んでもよい。タバコ材は、粉タバコ、タバコ繊維、刻みタバコ、押し出しタバコ、タバコ葉柄、再生タバコ、凝集タバコ、球形化タバコおよび/またはタバコ抽出物の内の1つ以上を含んでもよい。
【0019】
タバコ材を製するために使用されるタバコは、ヴァージニアおよび/またはバーレーおよび/またはオリエンタルを含む単独グレードまたはブレンド、刻まれたクズまたは葉全体などのあらゆる好適なタバコであってもよい。またタバコ粒子「微粉末」またはダスト、膨張タバコ、葉柄、膨張葉柄および裁断圧延葉柄などの他の処理された葉柄材であってもよい。タバコ材は粉タバコまたは再生タバコ材であってもよい。再生タバコ材はタバコ繊維であってもよく、キャスティング、タバコ抽出物を後で追加するフォードリニア系製紙法または押し出しによって形成してもよい。
【0020】
ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料は香味料および/またはエアロゾル発生剤を追加で含んでもよい。
【0021】
ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料は、転化糖、糖蜜、甘蔗糖、蜂蜜、ココア、甘草、グリセリンおよびプロピレングリコールなどのポリオールおよびリンゴ酸などの酸類などの1つ以上のケーシングを追加で含んでもよい。
【0022】
エアロゾル化可能な材料は、アルギン酸塩類、セルロース類または変性セルロース類、スターチまたは加工でんぷんまたは天然ゴムなどの1つ以上のバインダーを追加で含んでもよい。一部の実施態様ではエアロゾル化可能な材料は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウムまたはアルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸塩を含む。
【0023】
エアロゾル化可能な材料は1つ以上の充填剤を追加で含んでもよい。好適には充填材は、炭酸カルシウム、パーライト、バーミキュライト、珪藻土、コロイドシリカ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムおよび炭酸マグネシウムなどの無機材料を含んでもよい。場合によっては充填材はチョークを含む。好適には充填材はウッドパルプ、セルロースおよびセルロース誘導体などの有機充填材を含んでもよい。
【0024】
好適にはニコチンを含むエアロゾル化可能な材料(使用する前に)は、タバコのpHを測定するためのCORESTAプロトコルに従って測定したpHは約7未満であってもよい。
【0025】
本発明の装置は、使用時に蒸気および/またはエアロゾルを形成するために揮発させることができる第1の揮発性材料を保持する容器を含む。第1の揮発性材料は、これとは別に蒸気/エアロゾル前駆体と称してもよい。第1の揮発性材料は、場合によってはゲルまたは液体を含んでもよい。好適には第1の揮発性材料は、液体を含む、実質的に液体からなるまたは液体からなる。好適な液体は、電子タバコの液体に従来使用されている成分を含む。
【0026】
第1の揮発性材料は、プロピレングリコールおよび/またはグリセリンなどのエアロゾル発生剤を含んでもよい。加えてそれは場合によっては香味料を含んでもよい。第1の揮発性材料は通常は約100~300℃、好適には約150~250℃で揮発する。
【0027】
場合によっては第1の揮発性材料はニコチンを含まない。
【0028】
塩基性溶液は、場合によって水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたはその混合物の水溶液または他のGRAS水可用性塩基の水溶液を含んでもよい。
【0029】
ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料のpH処理はそのpHを7超に上昇させてもよい(CORESTAプロトコルに従って測定した場合)。好適には処理された材料のpHは約11未満であってもよい。好適にはpHは約8~9であってもよい。
【0030】
塩基性溶液は貯蔵部に保持される。貯蔵部は、場合によってはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーの外側で且つ第1の揮発性材料を保持する容器の外側に位置する。
【0031】
場合によっては塩基性溶液は塩基性溶液を放出するために使用時に破裂させるバリアー材によって使用前に貯蔵部に保持される。バリアー材はあらゆる好適な機構によって破裂させてもよい。例えば、バリアー材は穿孔部材によって穴が空けられてもよい。ユーザーが穿孔部材を作動させてもよく、または貯蔵部の装置内の挿入によって穿孔部材がバリアーを破裂させるようにしてもよい。別の場合ではバリアー材は溶融、分解、反応、劣化、膨潤、溶解または変形して室温より高いが使用中に到達する温度より低い温度で塩基を放出するものであってもよい。例えば、バリアー材は多糖またはセルロース系バリアー材、ゼラチン、ゴム、ゲル、ワックスまたはそれらの混合物から選択されてもよい。場合によってはカプセル化材はアルギン酸塩類、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル類、アラビアゴム、ガッチゴム、トラガカントゴム、カラヤゴム、イナゴマメゴム、アカシアゴム、グアーゴム、マルメロ種子ゴム、キサンタンガゴム、寒天ゲル、アガロースゲル、カラギーナン、フロイダン、ファーセレランおよびカルナウバワックスの内の1つ以上から選択される。
【0032】
場合によっては塩基性溶液は使用時に貯蔵部からチェンバー内に圧送されてもよい。場合によってはポンプはユーザーが操作してもよい。ポンプは、場合によっては機械的に操作されてもよく、ユーザーの入力に応答してもよい。ポンプは、場合によっては電気的に操作されてもよく、装置の制御回路に応答してもよい。そのような電気的に作動するポンプはユーザー入力(例えば、ボタンなどを押す)に反応するものであってもよく、パフ始動(即ち、パフセンサに応答して)であってもよい。それ以外の場合、ポンプはパッシブ(例えば、タービンまたはダイヤフラムの形体)であってもよく、ユーザーのパフによって生じる圧力差に応じて塩基性溶液を圧送するように構成してもよい。
【0033】
場合によっては塩基性溶液を1回目のパフの前にエアロゾル化可能な材料に移してもよく、これによって使用前のpH処理されたニコチンの損失を妨げる。一部のそれ以外の場合、塩基性溶液を消費中(即ち、パフしている間)ニコチン含有材料を含むチェンバー内に導入してもよく、これによって使用前のpH処理されたニコチンの損失を妨げる。さらに塩基性溶液の時間差の放出(例えば各パフと一致するように)は、材料のpH処理量が制御され、従ってpH処理によるニコチンの解放量を制御し、ユーザーにより持続的にニコチンを送出する。
【0034】
場合によっては装置は使用時にニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を熱し、材料の成分の吸引可能な媒体への放出を促す。場合によっては1つのヒーターで第1の揮発性材料およびニコチンを含むエアロゾル化可能な材料の両方を加熱してもよい。場合によってはニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を加熱する第2ヒーターを設けてもよい。場合によっては装置はエアロゾル化可能な材料を温めるために蒸気/エアロゾル化可能な材料によって運ばれる熱に依存して(これによりその後蒸気/エアロゾル流に同伴されるエアロゾル化可能な材料の成分を揮発させる)、ニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を熱しない。
【0035】
ある実施態様では装置はヒーターの下流でニコチンを含むエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーの上流にクーラーまたは冷却領域を含み、クーラーまたは冷却領域は気化させた材料を冷まして、使用時にチェンバーのエアロゾル化可能な材料を通過する液滴のエアロゾルを形成する。クーラーは実際に熱交換器として作用するように構成され、蒸気からの熱を回収することができる。回収された熱は、例えばエアロゾル化可能な材料を予備加熱するおよび/または第1の揮発性材料の加熱を補助するために使用することができる。
【0036】
ある実施態様では本発明の装置はバッテリーで作動する。バッテリーは充電可能なバッテリーまたは使い切りのバッテリーであってもよい。
【0037】
ある実施態様では該または各ヒーターヒーター11は、例えばニクロム抵抗性ヒーター、セラミックヒーターなどを含む電気抵抗性ヒーターであってもよい。ヒーターは、例えばコイル状のワイヤ、プレート(2つ以上の異なる材料からなり、その内の1つ以上が導電性であり、1つ以上が非導電性であってもよい多層プレートであってもよい)、メッシュ(織りまたは不織であってもよく、類似する多層構造を有する)、フィルムヒーターなどであってもよい。非電気的加熱装置などの他の加熱装置を使用してもよい。場合によってはヒーターは誘導ヒーターを含んでもよい。
【0038】
ある実施態様では第1の揮発性材料を保持する容器は取り外し可能である。容器はポットなど(一部の実施態様では例えば環状であってもよい)および/または脱脂綿などの形体であってもよい。実際には容器は、使用後に全体が交換される使い捨て物品であってもよい。別例としてユーザーが装置から容器を取り外し、使用済みの揮発性材料を交換するまたは揮発性材料を容器に継ぎ足し、次に容器を装置内に戻すように構成してもよい。
【0039】
場合によっては容器は装置から取り外せなくてもよい。このような実施態様ではユーザーは使用後必要に応じて使用済みの材料をただ交換または容器に注ぎ足すだけでよい。
【0040】
場合によっては容器とチェンバーは一体ユニットである。場合によってはこの一体ユニットは装置から取り外せるカートリッジである。
【0041】
場合によってはチェンバーは装置から取り外せる。チェンバーは、使用前にエアロゾル化可能な材料を含むカートリッジなどの形体であってもよい。エアロゾル化可能な材料を含むチェンバー全体が実際には使用した後全体として交換される使い捨てアイテムであってもよい。別例として, ユーザーがチェンバーを装置から取り外し、そのチェンバーの使用済み材料を交換し、次にチェンバーを装置に戻すように構成してもよい。
【0042】
場合によっては塩基性溶液を含む貯蔵部は装置から取り外し可能である。それは、実際には使用後に全体的に交換される使い捨て物品であってもよい。別例としてこの構成はユーザーが装置から貯蔵部を取り外し、塩基性溶液を注ぎ足し、次に貯蔵部を装置に戻すようなものであってもよい。一部のそれ以外の場合、貯蔵部は装置から取り外せなくてもよい。そのような場合にはユーザーは必要に応じて使用後貯蔵部に溶液を注ぎ足すだけであってもよい。
【0043】
場合によっては貯蔵部と容器は一体型ユニットである。場合によっては貯蔵部およびチェンバーは一体型ユニットである。場合によっては貯蔵部、容器およびチェンバーは、装置から取り除くことができるカートリッジであってもよい一体型ユニットである。
【0044】
本明細書で説明する一部の実施態様では本発明は吸引可能な媒体の発生装置に使用するカートリッジを提供し、このカートリッジは(i)容器に入っている第1の揮発性材料と、(ii)チェンバーに入っているニコチンを含むエアロゾル化可能な材料と、(iii)貯蔵部に含まれている塩基性溶液とを含み、カートリッジは、使用時に塩基性溶液が貯蔵部から放出され、エアロゾル化可能な材料を含むチェンバーに入り、第1の揮発性材料から発生した蒸気および/またはエアロゾルはエアロゾル化可能な材料を含むチェンバーを通過し、エアロゾル化可能な材料の1つ以上の成分を同伴するように構成されている。好適にはカートリッジは、本明細書で説明する吸引可能な媒体を発生させる装置に使用するようになっている。
【0045】
互換性があるという範囲内で本発明の装置に関して説明した特徴は、カートリッジと組み合わせてそしてその逆と組み合わせてそれらが矛盾しない範囲内で明確に開示されているものとする。具体的には本明細書で説明したニコチンを含むエアロゾル化可能な材料または揮発性材料の特徴は、本発明の装置およびカートリッジの実施態様と組み合わせて明確に開示されているものとする。
【0046】
本明細書中では「エアロゾル発生剤」はエアロゾルの発生を促進させる化合物または混合物である。エアロゾル発生剤は、気体の初期の気化および/または吸引可能な固体および/または液体エアロゾルへの凝集を促進することによってエアロゾルの発生を促してもよい。
【0047】
一般にあらゆる好適な1つ以上のエアロゾル発生剤を本発明のエアロゾル発生材に含有させてもよい。好適なエアロゾル発生剤としては、ソルビトール、グリセリンおよびプロピレングリコールまたはトリエチレングリコールのようなグリコール類などのポリオール、一価アルコールなどの非ポリオール、高沸点炭化水素、乳酸などの酸類、グリセリン誘導体、ジアセチン、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチルまたはミリスチン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルを含むミリスチン酸エステルなどのエステル類およびステアリン酸メチル、ドデカン二酸ジメチルおよびテトラデカン二酸ジメチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書中では「風味」および「香味料」なる用語は、各地の条例で許可されており、成人消費者が望む味や香りを製品に加えるのに用いることができる材料を指す。このような材料としては、抽出物(例えば、カンゾウ、アジサイ、ホオノキの葉、カミツレ、フェヌグリーク、クローブ、メントール、ニホンハッカ、アニシード、シナモン、ハーブ、ヒメコウジ、サクランボ、ベリー、モモ、リンゴ、ドランブイ、バーボン、スコッチ、ウイスキー、スペアミント、ペパーミント、ラベンダー、カルダモン、セロリ、カスカリラ、ナツメグ、サンダルウッド、ベルガモット、ゼラニウム、ハチミツエキス、ローズ油、バニラ、レモン油、オレンジ油、カシア、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、イランイランノキ、セージ、ウイキョウ、ピメント、ショウガ、アニス、コリアンダー、コーヒー、ハッカ属のいずれかの種からのハッカ油など)、調味料、苦味受容体部位遮断剤、感覚受容器部位活性化剤または刺激剤、糖及び/または糖置換体(例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、サイクラミン酸塩、ラクトース、スクロース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マンニトールなど)や、木炭、クロロフィル、鉱物、植物、息消臭剤などのその他の添加剤などが挙げられる。これら材料は模造品、合成または天然成分であってもよく、またはこれらのブレンドであってもよい。これら材料は、例えば油、液体、粉末などの任意の好適な形態であってもよい。
【0049】
誤解を避けるために, 本明細書で「含む(comprises)」が本発明または本発明の特徴の定義に使用される場合、本発明または特徴が「含む(comprises)」の代わりに「から実質的になる(consists essentially of)」または「からなる(consists of)」を使用して定義することができる実施態様も開示される。
【0050】
上記の実施態様は本発明の説明に役立つ実例として理解されたい。さらに 本発明の実施態様は想定される。当然のことながら任意の1つの実施態様について説明したあらゆる特徴は単独または説明された他の特徴と組み合わせて使用してもよく、他の実施態様のいずれかの1つ以上の特徴または他の実施態様のいずれかのあらゆる組み合わせと組み合わせて使用してもよい。さらに上記で説明されていない同等物および修飾物も添付の特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲を逸脱することなく採用することも可能である。
【0051】
本明細書で説明した種々の実施態様は、特許請求された特徴の理解と教示の単なる補助に提供されている。これらの実施態様は単なる代表的な具体例であり、包括的でも排他的でもない。当然だが、本開示の利点、実施形態、具体例、機能、特徴、構造、および/または他の側面は本開示を特許請求の範囲に規定されたとおりに限定するあるいは特許請求の範囲の均等物に限定すると考えるべきではなく、本開示の範囲および/または思想から乖離することなく他の実施形態を利用しても改変してもよいと考えるべきである。種々の実施形態は、開示された構成要素、成分、特徴、部品、工程、手段他の組合せを適切に備えても、これらで構成されても、基本的にこれらで構成されてもよい。また本開示は、現在は特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明を含む。