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特許7147117浮体式生産設備のユーティリティラインおよびその敷設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】浮体式生産設備のユーティリティラインおよびその敷設方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/44 20060101AFI20220928BHJP
   B63B 73/00 20200101ALI20220928BHJP
   B63B 15/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B63B35/44 C
B63B73/00
B63B15/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018087254
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019189181
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 直
(72)【発明者】
【氏名】上田 友生
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-95000(JP,A)
【文献】特開2007-100338(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0134122(KR,A)
【文献】国際公開第2011/089108(WO,A1)
【文献】実開昭51-133821(JP,U)
【文献】特開2015-117769(JP,A)
【文献】特開2011-162038(JP,A)
【文献】特開2017-154702(JP,A)
【文献】橋本元信,本橋賀津彦,洋上プラントにおける配管解析,洋上プラント・船舶・海洋技術,日本,日本工業出版,2014年02月,Vol.56, No.3,pp.98-103,ISSN:0385-9894
【文献】中西啓,榊原雄人,FPSOの配管設計留意点,配管設計の実務 最適設計のための基礎知識,日本,日本工業出版,2005年02月,Vol.47, No.3,pp.44-49,ISSN:0385-9894
【文献】HWANG, Ji-Hyun, ROH, Myung-Il, LEE, Kyu-Yeul,Integrated engineering environment for the process FEED of offshore oil and gas production plants,Ocean Systems Engineering,KR,Techno-Press,2012年03月,Vol.2,No.1,pp.49-68,DOI:10.12989/ose.2012.2.1.049,ISSN:2093-677X(oniline),2093-6702(print)
【文献】SAMIE, Naeim Nouri,Disciplines Involved in Offshore Platform Design,Practical Engineering Management of Offshore Oil and Gas Platforms,NL,Elsevier Inc.,2016年,pp.87-138,167-184,ISBN:978-0-12-809331-3
【文献】MUELLER, Wayne, ROOBAERT, Norb,Standardization adds value to FPSO topsides,Offshore Magazine,米国,Endeavor Business Media, LLC,[online],2008年,[検索日 2019.06.05],インターネット:<URL:https:www.offshore-mag.com/business-briefs/equipment-engin
【文献】TANAKA, Shigeru, TAKANO, Kotaro,NEXT GENERATION HULL-PLATFORM "NOAH-FPSO HULL" BASED ON MODULAR DESIGN AND CONSTRUCTION CONCEPT,Proceedings of the ASME 2017 36th International Conference on Ocean, Offshore and Arctic Engineering,ノルウェー,ASME,2017年06月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/44,73/00,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に接続部を有する所定長さの第1ピースメイン配管と、
その先端に、生産設備のユーティリティラインとの接続を行う接続部を備えるブランチ配管が分岐するとともに両端に接続部を有する所定長さの第2ピースメイン配管とを備え、
前記第1ピースメイン配管および前記第2ピースメイン配管を複数組み合わせて船長方向に接続してユーティリティラインのメイン配管が構成され
ことを特徴とする生産設備を備える洋上浮体構造物のユーティリティライン。
【請求項2】
前記メイン配管が、船幅方向に複数列配置され、前記ブランチ配管の船幅方向長さが、前記ブランチ配管の生産設備との接続部の船幅方向位置が同じとなるように、前記複数列の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載のユーティリティライン。
【請求項3】
前記メイン配管が、船幅方向に複数列配置され、前記ブランチ配管の前記第2ピースメイン配管からの長手方向における分岐位置が、前記複数列の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のユーティリティライン。
【請求項4】
前記メイン配管が、船体中央部に沿って敷設されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のユーティリティライン。
【請求項5】
前記第1および第2ピースメイン配管の長さが、船体構造のフレームスペース長さの倍数であることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のユーティリティライン。
【請求項6】
前記ブランチ配管がクランク形状を呈し、前記第2ピースメイン配管から高さ方向に分岐し、その後、水平方向に延出するとともに、その先端において高さ方向に向けられることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のユーティリティライン。
【請求項7】
前記ブランチ配管がL字形状を呈し、記第2ピースメイン配管から高さ方向に分岐し、その後、水平方向に延出することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のユーティリティライン。
【請求項8】
前記ブランチ配管が、複数のピースに分割可能であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のユーティリティライン。
【請求項9】
前記ブランチ配管の分割位置が、前記第2ピースメイン配管から高さ方向に延出する位置に設けられることを特徴とする請求項8に記載のユーティリティライン。
【請求項10】
前記ブランチ配管の分割位置が、前記水平方向に延出する位置に設けられることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のユーティリティライン。
【請求項11】
前記接続部の接続に、フランジ継手、スリーブ継手、ねじ込み継手、クランプ継手、食い込み継手、突合せ溶接の何れか1つが使用されることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載のユーティリティライン。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載のユーティリティラインを備えることを特徴とする生産設備を備える洋上浮体構造物。
【請求項13】
両端に接続部を有する所定長さの第1ピースメイン配管と、その先端に接続部を備える
ブランチ配管が分岐するとともに両端に接続部を有する所定長さの第2ピースメイン配管とを複数組み合わせて船長方向に接続してユーティリティラインのメイン配管を構成し、
前記ブランチ配管の接続部の位置を、船長方向の何れの位置においても、その高さおよび船幅方向位置を同じにすることを特徴とする生産設備を備える洋上浮体構造物のユーティリティライン敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)などの浮体式生産設備に敷設されるユーティリティラインに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)などの洋上浮体構造物では、モジュール化した石油生産のための各種生産設備が上甲板上に配置される。生産設備は、一般的に船体中心付近において船体長手方向に沿って敷設されたパイプラックを挟んでその両側に配置される(特許文献1)。生産設備には、船体に設けられたユーティリティ設備から各種ユーティリティ(清水、圧縮空気、窒素ガス、燃料油、海水等)がパイプラック下に敷設された配管(ライン)を通して供給される。ユーティリティラインは、予め設定された取合点において生産設備に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-154702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばFPSOのような、生産設備を備える洋上浮体構造物の建造では、多くの場合、ユーティリティ設備を含む船体は造船所において建造され、生産設備の設計は船体設計および船体建造と並行して行われる。そして生産設備は、別のインテグレーションヤードにて船体に搭載され、船体側のユーティリティラインとは予め設定された取合点において接続される。しかし、生産設備には多くの場合、設計変更がともない、これに合わせて船体側のユーティリティラインの設計、配置も変更する必要が生じる。
【0005】
本発明は、生産設備を備える洋上浮体構造物の建造において、生産設備の設計変更に合わせて船体側ユーティリティラインの設計、配置の変更を簡便、迅速、低コストで行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生産設備を備える洋上浮体構造物のユーティリティラインは、両端に接続部を有する所定長さの第1ピースメイン配管と、その先端に接続部を備えるブランチ配管が分岐するとともに両端に接続部を有する所定長さの第2ピースメイン配管とを備え、第1ピースメイン配管および第2ピースメイン配管を複数組み合わせて船長方向に接続してユーティリティラインのメイン配管が構成され、船長方向の何れの位置においても、その高さおよび船幅方向の位置が同じであるブランチ配管の生産設備との接続部が少なくとも1つ設けられることを特徴としている。
【0007】
メイン配管は、例えば船幅方向に複数列配置され、ブランチ配管の船幅方向長さは、ブランチ配管の生産設備との接続部の船幅方向位置が同じとなるように、複数列の位置に応じて異なる。また、ブランチ配管の第2ピースメイン配管からの長手方向における分岐位置は、複数列の位置に応じて異なってもよい。
【0008】
メイン配管は、例えば船体中央部に沿って敷設される。第1および第2ピースメイン配管の長さは、船体構造のフレームスペース長さの倍数であることが好ましい。ブランチ配管は、例えばクランク形状を呈し、第2ピースメイン配管から斜め方向を含む高さ方向に分岐し、その後、水平方向に延出するとともに、その先端において高さ方向に向けられる。また、ブランチ配管は、例えばL字形状を呈し、記第2ピースメイン配管から斜め方向を含む高さ方向に分岐し、その後、水平方向に延出する。
【0009】
ブランチ配管は、例えば複数のピースに分割可能である。このとき、ブランチ配管の分割位置は、例えば第2ピースメイン配管から高さ方向に延出する位置に設けられる。また、ブランチ配管の分割位置は、例えば水平方向に延出する位置に設けられてもよい。接続部の接続には、例えばフランジ継手、スリーブ継手、ねじ込み継手、クランプ継手、食い込み継手、突き合わせ溶接等の何れか1つが使用されてもよい。
【0010】
本発明の生産設備を備える洋上浮体構造物は、上記の何れかに記載のユーティリティラインを備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の生産設備を備える洋上浮体構造物のユーティリティライン敷設方法は、両端に接続部を有する所定長さの第1ピースメイン配管と、その先端に接続部を備えるブランチ配管が分岐するとともに両端に接続部を有する所定長さの第2ピースメイン配管とを複数組み合わせて船長方向に接続してユーティリティラインのメイン配管を構成し、ブランチ配管の生産設備との接続部の位置を、船長方向の何れの位置においても、その高さおよび船幅方向位置を同じにすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生産設備を備える洋上浮体構造物の建造において、生産設備の設計変更に合わせて船体側ユーティリティラインの設計、配置の変更を簡便、迅速、低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の本実施形態のFPSOに搭載される生産設備モジュールの配置を示す平面図である。
図2】センターラインCLを中心とする船体甲板上に搭載される生産設備とユーティリティラインの配置を示す部分横断面図である。
図3】パイプラック下に敷設された、本実施形態のユーティリティラインの構造を示す斜視図である。
図4】ブランチ配管長さの異なる第2ピースメイン配管の斜視図である。
図5】ブランチ配管長さの異なる第2ピースメイン配管の模式的な横断面図である。
図6】第2ピースメイン配管の長さと、ブランチ配管接続部とフレーム位置との関係を示す平面図である。
図7】第1変形例の第2ピースメイン配管の模式的な横断面図である。
図8】第2変形例の第2ピースメイン配管の模式的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)に搭載される生産設備モジュールの配置を示す平面図であり、図2は、センターラインCLを中心とする船体甲板上に搭載される生産設備とユーティリティラインの配置を示す部分横断面図である。
【0015】
本実施形態の浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)10は、船体12内に貯油タンク(不図示)を備え、貯油タンク上方の上甲板14上には、石油等を生産するための生産設備をモジュール化した生産設備モジュール16を多数搭載する。生産設備モジュール16は、上甲板14上において、船体12のセンターラインCLを挟んだ両舷側に配置され、センターラインCLを挟んだ生産設備モジュール16の間には、センターラインCLに沿ってパイプラック18が配置される。
【0016】
船体12内には、ユーティリティ設備(不図示)が設けられ、各種ユーティリティ(清水、圧縮空気、窒素ガス、燃料油、海水等)が、各パイプライン(ユーティリティライン)を通してそれぞれの生産設備モジュール16へ各々供給される。船体12側のユーティリティライン20は、船体12側に設けられた配管サポート18A上に敷設される。なお、図2に示される破線Aよりも下側が船体12側に対応し、船体12内に収められるユーティリティ設備とともに造船所において建造される。また、破線Aよりも上側が生産設備に対応し、船体12建造後、例えばインテグレーションヤードにおいて船体12の上甲板14上に搭載される。
【0017】
図2に示されるように、船体12側には、生産設備モジュール16を搭載するためのスツール16Aや、船体12側のユーティリティライン20とこれを搭載する配管サポート18A等が造船所において設置される。その後、インテグレーションヤードにおける生産設備の建造において、各生産設備モジュール16がスツール16Aに搭載され、各生産設備モジュール16と船体12側のユーティリティライン20とを連絡する生産設備のユーティリティライン22が船体側のユーティリティライン20に接続される。
【0018】
図3は、配管サポート18Aに敷設された、本実施形態のユーティリティライン20の構造を示す斜視図である。
【0019】
各ユーティリティライン20のメイン配管24は、図3に示されるように船長方向に沿って配管サポート18A上に敷設される。メイン配管24は、メイン配管24から分岐するブランチ配管30、およびこれに接続される生産設備のユーティリティライン22を通して各生産設備モジュール16に接続され、各種ユーティリティが供給される。
【0020】
本実施形態において、ユーティリティライン20のメイン配管24は、所定の長さを単位とする2数種類のピースメイン配管、すなわち第1、第2ピースメイン配管26、28を繋ぎ合わせて構成される。第1、第2ピースメイン配管26、28は、それぞれ両端にフランジ等の接続部26A、28Aが設けられる所定の長さのパイプから構成され、第2ピースメイン配管28は、更にパイプの途中から分岐するブランチ配管30を備える。また、ブランチ配管30の先端にはフランジ等の接続部30Fが設けられる。メイン配管24は、生産設備の設計に合わせて、第1ピースメイン配管26と第2ピースメイン配管28を適宜組み合わせ、船長方向に接続することで提供される。
【0021】
本実施形態において、ブランチ配管30は略クランク形状を呈し、第2ピースメイン配管28本体の側面から垂直に分岐した後(ブランチ配管基部30A)、第2ピースメイン配管28本体の軸方向に垂直な方向に曲げられ(ブランチ配管水平部30B)、更に第2ピースメイン配管28の本体側面から分岐した方向と同じ方向に曲げられる(ブランチ配管先端部30C)。
【0022】
第2ピースメイン配管28は、ブランチ配管基部30Aが上方を向くように、センターラインCLに沿って配管サポート18Aの中央架台180に取り付けられる。このときブランチ配管水平部30Bは船体12の幅方向に沿って水平に配置され、ブランチ配管先端部30Cは、接続部30Fを上方に向けて配置される。なお、ブランチ配管水平部30Bのブランチ配管先端部30C側は、その水平が維持されるように配管サポート18Aの側方架台182に取り付けられる。
【0023】
本実施形態では、ブランチ配管30の接続部30Fが配置される高さ、および船幅方向の位置を、船長方向に拘わらず予め決定しており、ブランチ配管基部30Aとブランチ配管先端部30Cの長さ、およびブランチ配管水平部30Bの長さは、これらの高さ、位置に合わせて予め決定されている。すなわち、図3の破線で示されるように、ブランチ配管30の接続部30Fの船長方向の位置は、第2ピースメイン配管28の接続される位置を船長方向に移動することにより変更できる。なお、取合点の船長方向の位置の自由度はピースメイン配管の長さによって制御できる。
【0024】
すなわち、本実施形態によれば、生産設備の設計・施工では、生産設備のユーティリティライン22の接続位置を、これら予め設定された高さ、船幅方向位置に合わせて設計・施工すればよく、その一方で、船体12側では、生産設備で設計変更があった場合、第1、第2ピースメイン配管26、28の一部の配置を、変更があった生産設備に合わせて変更するだけで対応ができる。
【0025】
なお、図4図5は、メイン配管24が船幅方向に複数配置される場合の第2ピースメイン配管28の構成を説明する図である。図4は、各第2ピースメイン配管28の斜視図であり、図5は、模式的な横断面図である。
【0026】
通常、様々な種類のユーティリティが、各生産設備モジュール16へと供給されるため、配管サポート18Aには、複数のユーティリティに対応する複数のメイン配管24が、船幅方向に並べられて船長方向に沿って敷設される。そのため、メイン配管24の船幅方向の位置により、予め設定された接続部30Fの船幅方向位置までの距離が異なる。そのため、本実施形態では、メイン配管24が配置される接続部30Fからの距離に合わせて、ブランチ配管水平部30Bの長さが異なる第2ピースメイン配管28を予め複数用意する。
【0027】
また、並列する複数の第2ピースメイン配管28において、同じ位置でブランチ配管30が分岐すると、ブランチ配管水平部30Bおよびブランチ配管先端部30C(接続部30F)の取り合いができない。そのため本実施形態では、ブランチ配管水平部30Bの長さが異なる第2ピースメイン配管28では、ブランチ配管30の長手方向の分岐位置を異ならせることで、並列するパイプ同士の間での取合いの問題の発生を防止している。
【0028】
図4では、3つの第2ピースメイン配管28が並設される場合の例を示し、予め設定された接続部30Fの位置に近い側の第2ピースメイン配管28から第2ピースメイン配管280、281、282とし、そのブランチ配管水平部30Bをブランチ配管水平部300、301、302として示す。図5(a)は、図4のブランチ配管水平部300の位置での模式的横断面図、図5(b)は、ブランチ配管水平部301の位置での模式的横断面図、図5(c)は、ブランチ配管水平部302の位置での模式的横断面図に対応する。
【0029】
また、本実施形態では、図6の平面図に示されるように、第1、第2ピースメイン配管26、28の長さLを、船体構造のフレームスペース長さTの倍数とし、接続部26A、28Aが位置する取合点の位置をフレームFRに合わせて設けることができる。これにより、取合点がフレーム上になくとも、同構成によれば、取合点がフレームスペースと同じピッチで変更可能であるため、配置図上、取合点が配置可能な位置を直ぐに特定することができる。また、生産設備側と船体側との意思疎通を取り易い。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、FPSOの建造過程において、生産設備の設計変更が発生しても、これに合わせて船体側ユーティリティラインの設計、配置の変更を簡便、迅速、低コストで行うことができる。
【0031】
次に図7、8を参照して本実施形態の第1、2変形例について説明する。本実施形態では、ブランチ配管30は、第2ピースメイン配管28に一体的に設けられていたが、第1、第2変形例では、ブランチ配管が、複数のピースに分割可能である。図7の第1変形例のブランチ配管32は、ブランチ配管基部32Aにおいて2つのピースに分離可能である。両ピースはフランジなどを用いた接続部32Fを介して接続可能である。同構成によれば、実施形態の効果に加え、工事の終盤まで接続部32Fよりも先のブランチ配管ピースを取り付けずにおくことができ、取合点の変更により容易に対応できる。
【0032】
また、図8の第2変形例のブランチ配管34は、ブランチ配管水平部34Bにおいて、3つのピースに分割可能である。すなわち、ブランチ配管水平部34Bは、ブランチ配管基部34Aと一体的な部分と、ブランチ配管先端部34Cと一体的な部分と、両者の間に位置する水平部34Dのみからなる部分に接続部34F、34Gにより分離される。同構成によれば、第1変形例の効果に加え、メイン配管を複数列配置する場合にも、ブランチ配管34の水平部34Dの長さの調整だけで、船幅方向の調整を行うことができ、他のパーツは共通化することができる。
【0033】
なお、本実施形態および変形例では、接続部の例にフランジ継手を挙げたが、接続部の接続方法は、これに限定されるものではなく、例えばスリーブ継手、ねじ込み継手、クランプ継手、食い込み継手、突合せ溶接などであってもよい。また、本実施形態では、ブランチ配管をクランク形状としたが、ブランチ配管は、クランク形状以外でもよく、例えばL字形状とすることも可能である。この場合、ブランチ配管は、第2ピースメイン配管から高さ方向に分岐し、その後、水平方向に延出する。また、本実施形態では、船幅方向の船体中央部にユーティリティラインが敷設されたが、センターラインからずれた位置において長手方向に沿って敷設されてもよく、複数のラインに分けて敷設する構成であってもよい。なお、本実施形態では、ブランチ配管の接続部が全て船長方向の何れの位置においても、その高さおよび船幅方向の位置が同じである場合を例に説明したが、異なる高さ、あるいは異なる船幅方向位置を有する接続部が一部存在してもよい。また、本変形例では、2つの接続部34F、34Gを水平部34Dに設けたが、一方または両方を各々ブランチ配管基部34A、ブランチ配管先端部34Cに設ける構成としてもよい。
【0034】
なお、本実施形態のブランチ配管は第2ピースメイン配管から船体上向きに分岐した後、船体幅方向に延出したが、真上に分岐するのではなく幅方向に0°~45°の範囲で斜めに分岐させてもよい。また、第2ピースメイン配管からの分岐位置と接続部とを結ぶブランチ配管の形状は、本実施形態や変形例に限定されるものではなく、ブランチ配管の生産設備との接続部が、船長方向の何れの位置においても、その高さ、船幅方向の位置が同じにできればよい。
【符号の説明】
【0035】
10 浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)
12 船体
14 上甲板
16 生産設備モジュール
16A スツール
18 パイプラック
18A 配管サポート
20 ユーティリティライン
22 生産設備のユーティリティライン
24 メイン配管
26 第1ピースメイン配管
26A 接続部
28 第2ピースメイン配管
28A 接続部
30 ブランチ配管
30F 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8