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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】トンネル支保工の連結方法及び連結構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
E21D11/40 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018141661
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020016128
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100146330
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 博行
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森 正彦
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 慎一郎
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-016167(JP,A)
【文献】特開2013-028898(JP,A)
【文献】特開2004-052232(JP,A)
【文献】特開2017-113757(JP,A)
【文献】実開昭63-086187(JP,U)
【文献】特開平07-317744(JP,A)
【文献】特開平08-296396(JP,A)
【文献】特開2015-048656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル坑壁に沿って建て込まれた上半支保工の脚部に対して下半支保工を連結する連結方法であって、
記下半支保工の上部に設けられた雄側継手板に凸設された雄型連結部と、前記上半支保工の脚部に設けられると共に前記上半支保工と前記下半支保工の連結時に外面が前記雄側継手板の外面と当接される雌側継手板に凹設された雌型連結部と、を連結する連結工程を有し、
前記雄型連結部は、前記雄側継手板の外面から突出する棒状の雄型係止部材を有し、
前記雌型連結部は、前記雌側継手板に貫通形成される挿入孔と、前記雌側継手板の裏面側に配置されると共に前記挿入孔に挿入された雄型係止部材を係止する係止部と、を有し、
前記連結工程において、前記雌型連結部の前記係止部は、前記挿入孔から挿入された前記雄型係止部材を係止する、
トンネル支保工の連結方法。
【請求項2】
トンネル坑壁に沿って建て込まれた上半支保工の脚部に対して下半支保工を連結する連結方法であって、
前記上半支保工の脚部に設けられた雄側継手板に凸設された雄型連結部と、前記下半支保工の上部に設けられると共に前記上半支保工と前記下半支保工の連結時に外面が前記雄側継手板の外面と当接される雌側継手板に凹設された雌型連結部と、を連結する連結工程を有し、
前記雄型連結部は、前記雄側継手板の外面から突出する棒状の雄型係止部材と、前記雄側継手板の外面側から前記雄型係止部材を着脱自在に装着可能な装着部と、を有し、
前記雌型連結部は、前記雌側継手板に貫通形成される挿入孔と、前記雌側継手板の裏面側に配置されると共に前記挿入孔に挿入された雄型係止部材を係止する係止部と、を有し、
前記装着部に対して前記雄型係止部材を未装着の状態で前記上半支保工を所定の建て込み位置に建て込んだ後で且つ前記連結工程の前に、前記装着部に前記雄型係止部材を装着し、更に、前記連結工程において、前記雌型連結部の前記係止部は、前記挿入孔から挿入された前記雄型係止部材を係止する、
トンネル支保工の連結方法。
【請求項3】
前記連結工程において、重機のアームに取り付けられたクランプ装置によって前記下半支保工を把持した状態で前記アームを操作することよって、前記雄型連結部と前記雌型連結部とを連結する、
請求項1または2に記載のトンネル支保工の連結方法。
【請求項4】
前記上半支保工を所定の建て込み位置に建て込む前に、前記雌側継手板における前記雌型連結部内への異物の侵入を抑制するための挿入孔仮被覆材によって予め前記挿入孔を覆う養生工程と、
前記所定の建て込み位置への前記上半支保工の建て込み完了後であって且つ前記連結工程の前に、前記挿入孔を覆っている前記挿入孔仮被覆材を取り除く除去工程と、
を更に有する、
請求項に記載のトンネル支保工の連結方法。
【請求項5】
前記養生工程において、前記挿入孔を覆うように前記雌側継手板の外面に沿って養生板材を配置する、
請求項4に記載のトンネル支保工の連結方法。
【請求項6】
前記装着部は、前記雄側継手板に貫通形成された開口孔と、前記雄側継手板の裏面に固着されると共に前記開口孔に対応する位置に配置され、且つ前記開口孔から挿通された前記雄型係止部材の基端側を螺着可能なナット部材と、を含む、
請求項に記載のトンネル支保工の連結方法。
【請求項7】
前記上半支保工を所定の建て込み位置に建て込む前に、前記ナット部材のうち前記雌側継手板に固着されていない方の開放端及び前記開口孔を、前記ナット部材内への異物の侵入を抑制するためのナット養生材によって覆っておき、
前記装着部に対して前記雄型係止部材を未装着の状態で前記上半支保工を所定の建て込み位置に建て込んだ後で且つ前記連結工程の前に、前記開口孔を覆うナット養生材を取り除いてから前記装着部に前記雄型係止部材を装着する、
請求項に記載のトンネル支保工の連結方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の連結方法によって連結された前記上半支保工と前記下半支保工を含むトンネル支保構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル支保工の連結方法及び連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する工法として、NATM工法(New Austrian Tunneling Method)が知
られている。NATM工法は、地山が有する支保能力、強度を有効に利用してトンネルの安定を保つという考え方のもとに、吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工等を用いて、地山と一体化したトンネル構造物を建設する工法である。
【0003】
従来、地盤性状が悪い場所でトンネル掘削を行う場合、鋼製支保工を所定のピッチで建て込みながら掘削し、トンネル断面に作用する土圧に対抗している。鋼製支保工は、トンネルの上半部に建て込まれる上半支保工、トンネルの下半部に建て込まれる下半支保工、及び、トンネルの底部(インバート部)に建て込まれるインバート支保工(インバートストラット)を接合してリング状にトンネル断面を閉合することで、高い抵抗力を発揮する工法も知られている。
【0004】
ところで、従来、上半支保工の下方に下半支保工を建て込む際には、例えば、クレーン付き油圧ショベル等の揚重機械を用い、ワイヤロープ等で下半支保工を吊り上げて、上半支保工の下方へ移動した状態で、人力により下半支保工を上半支保工直下の位置へ押し上げ、上半支保工とボルト及びナット等で締結した後、ワイヤロープを取り外していた。
【0005】
しかしながら、トンネルの断面が大きい場合には下半支保工のサイズも大きくなって重量が増すため、人力による作業が困難なものとなると共に、下半支保工を設置するためのサイクルタイムが長くなってしまう。また、下半支保工の運搬中にロープを使用するため、玉掛け作業などの熟練を要する作業が必要となるとともに、揚重機械による下半支保工の移動や、下半支保工移動後のロープの取り外し作業など、危険を伴う作業が多い。また、切羽において作業員が作業を行うため、落石等による災害の発生を防止するための監視等に手間と時間とを要していた。
【0006】
また、従来、トンネル断面の閉合に際して、トンネルのインバート部に作業員が立ち入り、手作業でインバート支保工を下半支保工に接合していたため、上半支保工に対して下半支保工を接合する場合と同様、作業性や安全性を向上できる技術が望まれていた。
【0007】
これに関連して、トンネルの壁面に沿って取り付けられる支保工を挟持し、又は、解放することが可能な挟持部と、装置本体に取り付けられて挟持部を保持するとともにこの挟持部の装置本体に対する角度、位置等を変動させることが可能な腕部とを備えた支保工建込み装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-52232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されているような支保工建込み装置を用いることで、支保工を機械によって所定の建て込み位置に移動させることはできるものの、支保工同士の接合(連結)はボルト、ナット等を用いて人力で締結する必要があり、支保工連結作業の作業性につい
て改善する余地があった。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、上半支保工やインバート支保工に対する下半支保工の連結作業に際して、安全性及び作業性を向上することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決するために、本発明は以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、トンネル坑壁に沿って建て込まれた上半支保工と当該上半支保工の脚部に接合される下半支保工とを連結する連結方法であって、前記上半支保工の脚部と前記下半支保工の上部の一方に設けられた雄側継手板に凸設された雄型連結部と、前記上半支保工の脚部と前記下半支保工の上部の他方に設けられると共に前記上半支保工と前記下半支保工の連結時に外面が前記雄側継手板の外面と当接される雌側継手板に凹設された雌型連結部と、を連結する連結工程を有し、前記雄型連結部は、前記雄側継手板の外面から突出する棒状の雄型係止部材を有し、前記雌型連結部は、前記雌側継手板に貫通形成される挿入孔と、前記雌側継手板の裏面側に配置されると共に前記挿入孔に挿入された雄型係止部材を係止する係止部と、を有し、前記連結工程において、前記雌型連結部の前記係止部は、前記挿入孔から挿入された前記雄型係止部材を係止することを特徴とする。
【0012】
上記のように構成することで、雄側継手板に凸設された雄型連結部の雄型係止部材を雌側継手板に貫通形成される挿入孔から挿入するだけで、雌側継手板に凹設された雌型連結部の係止部によって雄型係止部材をワンタッチで係止することができるため、上半支保工の脚部に対する下半支保工の連結を容易に行うことができ、支保工連結作業の作業性を向上させることができる。また、本発明によれば、上半支保工に下半支保工を接合するためのサイクルタイムを短くすることができる。これによれば、トンネルの切羽近傍に作業員が立ち入って作業する作業時間を短くすることができるため、支保工連結作業の安全性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係るトンネル支保工の連結方法においては、前記連結工程において、重機のアームに取り付けられたクランプ装置によって前記下半支保工を把持した状態で前記アームを操作することよって、前記雄型連結部と前記雌型連結部とを連結することが好ましい。これによれば、トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性及び作業性をより一層向上することができる。
【0014】
ここで、前記雄側継手板が前記下半支保工の上部に設けられ、前記雌側継手板が前記上半支保工の脚部に設けられていることが好ましい。上記のようにすることで、上半支保工をトンネルの上半部における所定位置に建て込む際に、雄側継手板に凸設される雄型連結部の雄型係止部材が折れ曲がったり、破損することを抑制できる。
【0015】
また、トンネルを構築するに当たり、上半支保工を所定の建て込み位置に建て込んだ後は、通常、上半部に対して2次吹付けコンクリートが吹付けられるため、上半支保工の脚部に設けられた雌側継手板の裏面(内面)は2次吹付けコンクリートによって被覆される場合がある。これに対して、本発明に係るトンネル支保工の連結方法によれば、上半支保工及び下半支保工をワンタッチで連結(接合)することができるため、従来のボルト接合のように、ボルト接合時に雌側継手板の裏面側にナットをわざわざ配置する必要がない。そのため、雌側継手板の裏面側が2次吹付けコンクリートによって覆われていたとしても、上半支保工と下半支保工の連結時に、雌側継手板の裏面を覆う2次吹付けコンクリートをわざわざ斫りとる必要が無く、従来に比べて下半支保工の建て込み時における作業性を向上できる。
【0016】
また、本発明に係るトンネル支保工の連結方法において、前記上半支保工を所定の建て込み位置に建て込む前に、前記雌側継手板における前記雌型連結部内への異物の侵入を抑制するための挿入孔仮被覆材によって予め前記挿入孔を覆う養生工程と、前記所定の建て込み位置への前記上半支保工の建て込み完了後であって且つ前記連結工程の前に、前記挿入孔を覆っている前記挿入孔仮被覆材を取り除く除去工程と、を更に有していても良い。挿入孔仮被覆材は、例えばテープ状又はシート状の養生部材であっても良い。
【0017】
養生工程によって、雌側継手板における挿入孔を挿入孔仮被覆材によって予め覆っておくことで、上半部に上半支保工を建て込む際に、雌型連結部内への埃や土砂等といった異物の侵入を抑制できる。また、上記のように挿入孔を挿入孔仮被覆材によって覆っておくことで、上半支保工の建て込み後に上半部に吹付けられる2次吹付けコンクリートが雌型連結部内に侵入することを抑制できる。その結果、上半支保工と下半支保工の連結時において、雌型連結部に対する雄型連結部の挿入及び係止を円滑に行うことができる。
【0018】
上半支保工の建て込み完了後であって且つ連結工程の前に、挿入孔を覆っている挿入孔仮被覆材を除去工程において取り除くことで、上半支保工と下半支保工の連結を円滑に行うことができる。
【0019】
前記養生工程において、前記挿入孔を覆うように前記雌側継手板の外面に沿って養生板材を配置することが好ましい。これによれば、除去工程において雌側継手板から挿入孔仮被覆材を取り除く際、養生板材を雌側継手板の外面と2次吹付けコンクリートとの縁切り材として機能させることができ、挿入孔仮被覆材を容易に取り除くことができる。
【0020】
また、本発明において、前記雌側継手板が前記下半支保工の上部に設けられ、前記雄側継手板が前記上半支保工の脚部に設けられていても良い。この場合、前記雄型連結部は、前記雄側継手板の外面側から前記雄型係止部材を着脱自在に装着可能な装着部を含み、前記装着部に対して前記雄型係止部材を未装着の状態で前記上半支保工を所定の建て込み位置に建て込んだ後で且つ前記連結工程の前に、前記装着部に前記雄型係止部材を装着しても良い。このようにすることで、装着部に対して雄型係止部材を未装着の状態で上半支保工の建て込みを行うことができるため、上半支保工の建て込み時において雄型係止部材が折れ曲がったり破損することを抑制できる。
【0021】
ここで、前記装着部は、前記雄側継手板に貫通形成された開口孔と、前記雄側継手板の裏面に固着されると共に前記開口孔に対応する位置に配置され、且つ前記開口孔から挿通された前記雄型係止部材の基端側を螺着可能なナット部材と、を含んでいても良い。これによれば、簡単な構成によって装着部を実現できる。
【0022】
そして、前記上半支保工を所定の建て込み位置に建て込む前に、前記ナット部材のうち前記雌側継手板に固着されていない方の開放端及び前記開口孔、を前記ナット部材内への異物の侵入を抑制するためのナット養生材によって覆っておき、前記装着部に対して前記雄型係止部材を未装着の状態で前記上半支保工を所定の建て込み位置に建て込んだ後で且つ前記連結工程の前に、前記開口孔を覆うナット養生材を取り除いてから前記装着部に前記雄型係止部材を装着しても良い。
【0023】
これにより、上半支保工の建て込み時に埃や土砂等といった異物がナット部材内に侵入することを抑制できる。また、上半支保工の建て込み後に上半部に吹付けられる2次吹付けコンクリートがナット部材内に侵入することも抑制できる。また、雌側継手板の開口孔を覆っているナット養生材を取り除いてから装着部に雄型係止部材を装着することで、上半支保工に対する下半支保工の連結作業を円滑に行うことができる。
【0024】
また、本発明は、トンネル坑壁に沿って建て込まれる上半支保工の脚部に接合された下半支保工と当該下半支保工の脚部に接合されるインバート支保工とを連結する連結方法として特定することができる。この場合、本発明に係るトンネル支保工の連結方法は、前記下半支保工の脚部と前記インバート支保工の端部の一方に設けられた雄側継手板に凸設された雄型連結部と、前記下半支保工の脚部と前記インバート支保工の端部の他方に設けられると共に前記下半支保工と前記インバート支保工の連結時に外面が前記雄側継手板の外面に当接される雌側継手板に凹設された雌型連結部と、を連結する連結工程を有し、前記雄型連結部は、前記雄側継手板の外面から突出する棒状の雄型係止部材を有し、前記雌型連結部は、前記雌側継手板に貫通形成される挿入孔と、前記雌側継手板の裏面側に配置されると共に前記挿入孔に挿入された雄型係止部材を係止する係止部と、を有し、前記連結工程において、前記雌型連結部の前記係止部は、前記挿入孔から挿入された前記雄型係止部材を係止する。
【0025】
上記のように構成することで、雄側継手板に凸設された雄型連結部の雄型係止部材を雌側継手板に貫通形成される挿入孔から挿入するだけで、雌側継手板に凹設された雌型連結部の係止部によって雄型係止部材をワンタッチで係止することができるため、下半支保工とインバート支保工との連結を容易に行うことができ、支保工連結作業の作業性を向上させることができる。また、本発明によれば、下半支保工とインバート支保工を接合するためのサイクルタイムを短くすることができる。これによれば、トンネルの切羽近傍に作業員が立ち入って作業する作業時間を短くすることができるため、支保工連結作業の安全性を向上させることができる。
【0026】
ここで、前記連結工程において、重機のアームに取り付けられたクランプ装置によって前記インバート支保工を把持した状態で前記アームを操作することよって、前記雄型連結部と前記雌型連結部とを連結することが好ましい。これによれば、トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性及び作業性をより一層向上することができる。
【0027】
また、本発明は、トンネル坑壁に沿って建て込まれた上半支保工と当該上半支保工の脚部に接合される下半支保工との連結構造として特定することができる。すなわち、本発明に係るトンネル支保工の連結構造は、前記上半支保工の脚部と前記下半支保工の上部の一方に設けられた雄側継手板と、前記上半支保工の脚部と前記下半支保工の上部の他方に設けられると共に、前記上半支保工と前記下半支保工の連結時に外面が前記雄側継手板の外面と当接される、雌側継手板と、前記雄側継手板に凸設された雄型連結部と、前記雌側継手板に凹設された雌型連結部と、を備え、前記雄型連結部は、前記雄側継手板の外面から突出する棒状の雄型係止部材を有し、前記雌型連結部は、前記雌側継手板に貫通形成される挿入孔と、前記雌側継手板の裏面側に配置されると共に前記挿入孔に挿入された雄型係止部材を係止する係止部と、を有することを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、雄側継手板に凸設された雄型連結部の雄型係止部材を雌側継手板に貫通形成される挿入孔から挿入するだけで、雌側継手板に凹設された雌型連結部の係止部によって雄型係止部材をワンタッチで係止することができるため、上半支保工の脚部に対する下半支保工の連結を容易に行うことができ、支保工連結作業の作業性を向上させることができる。また、本発明によれば、上半支保工に下半支保工を接合するためのサイクルタイムを短くすることができる。これによれば、トンネルの切羽近傍に作業員が立ち入って作業する作業時間を短くすることができるため、支保工連結作業の安全性を向上させることができる。また、上記連結構造を採用することにより、例えば、重機のアームに取り付けられたクランプ装置によって下半支保工を把持した状態でアームを操作することよって、容易に雄型連結部と雌型連結部とを連結することができる。これによれば、トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性及び作業性をより一層向上することができる。
【0029】
また、本発明に係るトンネル支保工の連結構造は、前記雄側継手板が前記下半支保工の上部に設けられ、前記雌側継手板が前記上半支保工の脚部に設けられていることが好ましい。これにより、上半支保工をトンネルの上半部における所定位置に建て込む際に、雄側継手板に凸設される雄型連結部の雄型係止部材が折れ曲がったり、破損することを抑制できる。また、本発明によれば、上半支保工及び下半支保工をワンタッチで連結(接合)することができるため、従来のボルト接合のように、ボルト接合時に雌側継手板の裏面側にナットをわざわざ配置する必要がない。従って、上半支保工の脚部に設けられている雌側継手板の裏面側が2次吹付けコンクリートによって被覆されても、上半支保工と下半支保工の連結時に、雌側継手板の裏面を覆う2次吹付けコンクリートをわざわざ斫りとる必要が無く、従来に比べて下半支保工の建て込み時における作業性を向上できる。
【0030】
また、本発明に係るトンネル支保工の連結構造は、前記雌側継手板における前記雌型連結部内への異物の侵入を抑制するために、前記挿入孔を覆う挿入孔仮被覆材を、更に有していても良い。このように、雌側継手板における挿入孔を挿入孔仮被覆材によって予め養生しておくことで、上半部に上半支保工を建て込む際に雌型連結部内への埃や土砂等といった異物の侵入を抑制できる。また、上半支保工の建て込み後に上半部に吹付けられる2次吹付けコンクリートが雌型連結部内に侵入することを抑制できる。その結果、上半支保工と下半支保工の連結時において、雌型連結部に対する雄型連結部の挿入及び係止を円滑に行うことができる。また、上半支保工の建て込み完了後であって且つ連結工程の前に、挿入孔を覆っている挿入孔仮被覆材を取り除くことで、上半支保工と下半支保工の連結を円滑に行うことができる。
【0031】
また、前記挿入孔仮被覆材は、前記挿入孔を覆うように前記雌側継手板の外面に沿って配置される養生板材であっても良い。これによれば、雌側継手板から挿入孔仮被覆材を取り除く際、養生板材を雌側継手板の外面と吹付けコンクリートとの縁切り材として機能させることができ、挿入孔仮被覆材を容易に取り除くことができる。
【0032】
また、本発明に係るトンネル支保工の連結構造は、前記雌側継手板が前記下半支保工の上部に設けられ、前記雄側継手板が前記上半支保工の脚部に設けられており、前記雄型連結部は、前記雄側継手板の外面側から前記雄型係止部材を着脱自在に装着可能な装着部を含んでいても良い。このようにすることで、装着部に対して雄型係止部材を未装着の状態で上半支保工の建て込みを行うことができるため、上半支保工の建て込み時において雄型係止部材が折れ曲がったり破損することを抑制できる。
【0033】
なお、前記装着部は、前記雄側継手板に貫通形成された開口孔と、前記雄側継手板の裏面に固着されると共に前記開口孔に対応する位置に配置され、且つ前記開口孔から挿通された前記雄型係止部材の基端側を螺着可能なナット部材と、を含んでいても良い。これによれば、簡単な構成によって装着部を実現できる。
【0034】
また、本発明に係るトンネル支保工の連結構造は、前記ナット部材内への異物の侵入を抑制するためのナット養生材であって、前記ナット部材のうち前記雌側継手板に固着されていない方の開放端及び前記開口孔を覆い、且つ、前記開放端及び前記開口孔に対して着脱自在なナット養生材を、更に有していても良い。これにより、上半支保工の建て込み時に埃や土砂等といった異物がナット部材内に侵入することを抑制できる。また、上半支保工の建て込み後に上半部に吹付けられる2次吹付けコンクリートがナット部材内に侵入することも抑制できる。また、ナット養生材は、開放端及び開口孔に対して着脱自在であるため、雌側継手板の開口孔を覆っているナット養生材を取り除いてから装着部に雄型係止部材を装着することで、上半支保工に対する下半支保工の連結作業を円滑に行うことができる。
【0035】
また、本発明は、トンネル坑壁に沿って建て込まれる上半支保工の脚部に接合された下半支保工と当該下半支保工の脚部に接合されるインバート支保工との連結構造として特定することができる。すなわち、本発明に係るトンネル支保工の連結構造は、前記下半支保工の脚部と前記インバート支保工の端部の一方に設けられた雄側継手板と、前記下半支保工の脚部と前記インバート支保工の端部の他方に設けられると共に、前記下半支保工と前記インバート支保工の連結時に外面が前記雄側継手板の外面に当接される、雌側継手板と、前記雄側継手板に凸設された雄型連結部と、前記雌側継手板に凹設された雌型連結部と、を備え、前記雄型連結部は、前記雄側継手板の外面から突出する棒状の雄型係止部材を有し、前記雌型連結部は、前記雌側継手板に貫通形成される挿入孔と、前記雌側継手板の裏面側に配置されると共に前記挿入孔に挿入された雄型係止部材を係止する係止部と、を有することを特徴とする。
【0036】
上記構成によれば、雄側継手板に凸設された雄型連結部の雄型係止部材を雌側継手板に貫通形成される挿入孔から挿入するだけで、雌側継手板に凹設された雌型連結部の係止部によって雄型係止部材をワンタッチで係止することができるため、下半支保工とインバート支保工との連結を容易に行うことができ、支保工連結作業の作業性を向上させることができる。また、本発明によれば、下半支保工とインバート支保工を接合するためのサイクルタイムを短くすることができる。これによれば、トンネルの切羽近傍に作業員が立ち入って作業する作業時間を短くすることができるため、支保工連結作業の安全性を向上させることができる。また、上記連結構造を採用することにより、例えば、重機のアームに取り付けられたクランプ装置によってインバート支保工を把持した状態でアームを操作することよって、容易に雄型連結部と雌型連結部とを連結することができる。これによれば、トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性及び作業性をより一層向上することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、上半支保工やインバート支保工に対する下半支保工の連結作業に際して、安全性及び作業性を向上することのできる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、実施形態1に係るトンネルの鋼製支保構造を示す図である。
図2図2は、左側上半鋼製支保工及び右側上半鋼製支保工がアーチ状に連結されることで形成された上半鋼製支保工の側面図である。
図3図3は、図1の破線円Aで囲まれた左側下半鋼製支保工の脚部近傍の拡大図である。
図4図4は、図1の破線円Bで囲まれた右側下半鋼製支保工の脚部近傍の拡大図である。
図5図5は、図1の破線円Cで囲まれた部分の拡大図である。
図6図6は、実施形態1に係るトンネルの施工状況を示す図である。
図7図7は、実施形態1に係る上半鋼製支保工と下半鋼製支保工の連結構造を説明する図である。
図8A図8Aは、左側上半鋼製支保工(右側上半鋼製支保工)における第1脚部継手板(第2脚部継手板)の外面図である。
図8B図8Bは、左側上半鋼製支保工(右側上半鋼製支保工)における第1脚部継手板(第2脚部継手板)の内面図である。
図9A図9Aは、左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工)における第1下半上端継手板(第2下半上端継手板)の外面図である。
図9B図9Bは、左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工)における第1下半上端継手板(第2下半上端継手板)の内面図である。
図10図10は、図7におけるX-X矢視断面図である。
図11図11は、作業車を用いて左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工20R)の建て込みを行っている状況を示す図である。
図12図12は、実施形態1に係る上半鋼製支保工と下半鋼製支保工の連結構造を説明する図である。
図13図13は、第1脚部継手板(第2脚部継手板)の外面に挿入孔を覆うように挿入孔仮被覆材を取り付けた状態を説明する図である。
図14図14は、変形例1に係る左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工)における第1下半上端継手板(第2下半上端継手板)の構造を説明する図である。
図15A図15Aは、変形例1に係る左側上半鋼製支保工(右側上半鋼製支保工)における第1脚部継手板(第2脚部継手板)の構造を説明する図である。
図15B図15Bは、変形例1に係る左側上半鋼製支保工(右側上半鋼製支保工)における第1脚部継手板(第2脚部継手板)の構造を説明する図である。
図16図16は、インバート施工部の掘削を行っている状況を示す図である。
図17A図17Aは、左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工)における第1下半脚部継手部(第2下半脚部継手部)に設けられた第1下半脚部継手板(第2下半脚部継手板)の外面図である。
図17B図17Bは、左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工)における第1下半脚部継手部(第2下半脚部継手部)に設けられた第1下半脚部継手板(第2下半脚部継手板)の内面図である。
図18A図18Aは、左側インバート鋼製支保工(右側インバート鋼製支保工)における左側インバート第1継手板(右側インバート第1継手板)の外面図である。
図18B図18Bは、左側インバート鋼製支保工(右側インバート鋼製支保工)における左側インバート第1継手板(右側インバート第1継手板)の内面図である。
図19図19は、左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工)と左側インバート鋼製支保工(右側インバート鋼製支保工)を連結する連結構造を説明する図である。
図20図20は、実施形態1に係る左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工)と左側インバート鋼製支保工(右側インバート鋼製支保工)半鋼製支保工の連結構造を説明する図である。
図21図21は、変形例2に係る左側下半鋼製支保工(右側下半鋼製支保工)と左側インバート鋼製支保工(右側インバート鋼製支保工)半鋼製支保工の連結構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
<実施形態1>
[全体支保構造]
図1は、実施形態1に係るトンネルの鋼製支保構造1を示す図である。符号10は上半鋼製支保工、符号20Lは左側下半鋼製支保工、符号20Rは右側下半鋼製支保工である。また、符号30はインバート鋼製支保工である。上半鋼製支保工10は、一対の円弧状の左側上半鋼製支保工10L及び右側上半鋼製支保工10Rの天端部(上端部)同士を一体に連結することでアーチ状に形成されている。
【0041】
左側下半鋼製支保工20Lは、左側上半鋼製支保工10Lの脚部に接合される鋼製支保工であり、右側下半鋼製支保工20Rは、右側上半鋼製支保工10Rの脚部に接合される鋼製支保工である。インバート鋼製支保工30は、左側下半鋼製支保工20Lの脚部(下部)に接合される左側インバート鋼製支保工30Lと、右側下半鋼製支保工20Rの脚部(下部)に接合される右側インバート鋼製支保工30Rを含んでいる。インバート鋼製支保工30(左側インバート鋼製支保工30L及び右側インバート鋼製支保工30R)は、トンネル底部のインバート盤に設置される鋼製支保工である。以上のように構成される鋼
製支保構造1は、トンネルの断面をリング状に閉合する。
【0042】
図2は、左側上半鋼製支保工10L及び右側上半鋼製支保工10Rがアーチ状に連結されることで形成された上半鋼製支保工10の側面図である。なお、図2には、左側上半鋼製支保工10L及び右側上半鋼製支保工10Rにそれぞれ接合される左側下半鋼製支保工20L及び右側下半鋼製支保工20Rの上部側も図示されている。
【0043】
図3は、図1の破線円Aで囲まれた左側下半鋼製支保工20Lの脚部近傍の拡大図である。図4は、図1の破線円Bで囲まれた右側下半鋼製支保工20Rの脚部近傍の拡大図である。図5は、図1の破線円Cで囲まれた部分の拡大図であり、左側インバート鋼製支保工30L及び右側インバート鋼製支保工30Rの接合部近傍を示している。
【0044】
図2に示すように、左側上半鋼製支保工10Lは、第1本体部111、第1天端継手板121、第1脚部継手板131を有する。第1本体部111は、ウェブ111a、当該ウェブ111aに直交する一対の地山側フランジ111b及び内空側フランジ111cから構成されるH形鋼である。また、第1本体部111における一端には第1天端継手板121が溶接され、他端には第1脚部継手板131が溶接されている。第1天端継手板121及び第1脚部継手板131は四角形の鋼製平板であり、第1本体部111のH形断面に対して直交方向に延在している。右側上半鋼製支保工10Rについても同様に、第2本体部112、第2天端継手板122、第2脚部継手板132を有する。第2本体部112は、ウェブ112a、当該ウェブ112aに直交する一対の地山側フランジ112b及び内空側フランジ112cから構成されるH形鋼である。また、第2本体部112における一端には第2天端継手板122が溶接され、他端には第2脚部継手板132が溶接されている。第2天端継手板122、第2脚部継手板132は四角形の鋼製平板であり、第2本体部112のH形断面に対して直交方向に延在している。本実施形態では、第1天端継手板121及び第2天端継手板122が適宜の締結具を用いて互いに結合されることで、左側上半鋼製支保工10L及び右側上半鋼製支保工10Rが一体に連結される。第1天端継手板121及び第2天端継手板122は、例えば、ボルト14及びナット15等を用いて互いに連結されている。
【0045】
左側下半鋼製支保工20Lは、第1本体部211、第1下半上端継手板221、第1下半底板231を有する。第1本体部211は、ウェブ211a、当該ウェブ211aに直交する一対の地山側フランジ211b及び内空側フランジ211cから構成されるH形鋼である。また、第1本体部211における上端小口には第1下半上端継手板221が溶接され、下端小口には第1下半底板231が溶接されている。ここで、第1下半上端継手板221及び第1下半底板231は四角形の鋼製平板である。左側下半鋼製支保工20Lにおける第1下半上端継手板221は、左側上半鋼製支保工10Lの脚部における第1脚部継手板131と接合される継手板である。また、左側下半鋼製支保工20Lにおける第1下半底板231は、左側下半鋼製支保工20Lを支持するための底板である。なお、図3に示すように、第1本体部211は、上部側本体ピース211Aと、脚部側本体ピース211Bとがボルト及びナット等を用いて接合されている。なお、符号2110A,2110Bは、上部側本体ピース211A及び脚部側本体ピース211Bを互いに連結するための中間継手板である。
【0046】
右側下半鋼製支保工20Rについても同様に、右側下半鋼製支保工20Rは、第2本体部212、第2下半上端継手板222、第2下半底板232を有する。第2本体部212は、ウェブ212a、当該ウェブ212aに直交する一対の地山側フランジ212b及び内空側フランジ212cから構成されるH形鋼である。また、第2本体部212における上端小口には第2下半上端継手板222が溶接され、下端小口には第2下半底板232が溶接されている。第2下半上端継手板222及び第2下半底板232は四角形の鋼製平板
である。右側下半鋼製支保工20Rにおける第2下半上端継手板222は、右側上半鋼製支保工10Rの脚部における第2脚部継手板132と接合される継手板である。また、右側下半鋼製支保工20Rにおける第2下半底板232は、右側下半鋼製支保工20Rを支持するための底板である。なお、本実施形態における第2本体部212は、上部側本体ピース212Aと、脚部側本体ピース212Bとがボルト及びナット等を用いて接合されている。なお、符号2120A,2120Bは、上部側本体ピース212A及び脚部側本体ピース212Bを互いに連結するための中間継手板である。
【0047】
図3に示すように、左側下半鋼製支保工20Lの脚部側に設けられた脚部側本体ピース211Bには、左側インバート鋼製支保工30Lと接合される第1下半脚部継手部241が設けられている。第1下半脚部継手部241は、例えばH形鋼によって形成されていてもよい。図3に示すように、第1下半脚部継手部241の先端小口には、第1下半脚部継手板251が溶接されている。この第1下半脚部継手板251は、左側インバート鋼製支保工30Lの端部に接合される継手板である。また、図4に示すように、右側下半鋼製支保工20Rの脚部側に設けられた脚部側本体ピース212Bには、右側インバート鋼製支保工30Rと接合される第2下半脚部継手部242が設けられている。第2下半脚部継手部242は、例えばH形鋼によって形成されていてもよい。第2下半脚部継手部242の先端小口には、第2下半脚部継手板252が溶接されている。この第2下半脚部継手板252は、右側インバート鋼製支保工30Rの端部に接合される継手板である。
【0048】
図3及び図5に示すように、左側インバート鋼製支保工30Lは、左側インバート本体部311、左側インバート本体部311の一端に接合された四角形の鋼製平板である左側インバート第1継手板321と、左側インバート本体部311の他端に接合された四角形の鋼製平板である左側インバート第2継手板331を有する。また、図4及び図5に示すように、右側インバート鋼製支保工30Rは、右側インバート本体部312と、右側インバート本体部312の一端に接合された四角形の鋼製平板である右側インバート第1継手板322と、右側インバート本体部312の他端に接合された四角形の鋼製平板である右側インバート第2継手板332を有する。
【0049】
ここで、左側インバート鋼製支保工30Lは、左側インバート本体部311に設けられた左側インバート第1継手板321が、左側下半鋼製支保工20Lの第1下半脚部継手部241に設けられた第1下半脚部継手板251と接合されることで左側下半鋼製支保工20Lと一体に連結される。また、右側インバート鋼製支保工30Rは、右側インバート本体部312に設けられた右側インバート第1継手板322が、右側下半鋼製支保工20Rの第2下半脚部継手部242に設けられた第2下半脚部継手板252と接合されることで右側下半鋼製支保工20Rと一体に連結される。また、図5に示すように、左側インバート鋼製支保工30Lにおける左側インバート第2継手板331と右側インバート鋼製支保工30Rにおける右側インバート第2継手板332が接合されることで、左側インバート鋼製支保工30L及び右側インバート鋼製支保工30Rが一体に連結される。左側インバート第2継手板331と右側インバート第2継手板332は、例えば、ボルト16及びナット17等を用いて締結することができる。なお、左側インバート鋼製支保工30L及び右側インバート鋼製支保工30Rの間には、インバート鋼製支保工30の長さを調整するための鋼製支保工である長さ調整用鋼製支保工(図示せず)が介在しても良く、その調整用鋼製支保工を介して左側インバート鋼製支保工30L及び右側インバート鋼製支保工30Rが互いに連結されても良い。
【0050】
[上半鋼製支保工と下半鋼製支保工の連結構造及び連結方法]
次に、アーチ状に建て込まれた上半鋼製支保工10に対する左側下半鋼製支保工20Lと右側下半鋼製支保工20Rの連結構造及び連結方法について説明する。図6は、実施形態1に係るトンネルTの施工状況を示す図である。図6は、トンネルTの掘進方向を横か
ら見たトンネル断面の概略図である。図6に示すトンネル掘削においては、例示的にトンネル断面を上半部と下半部に分割して掘削を行う補助ベンチ付き全断面工法を採用している。
【0051】
符号110は、切羽100の上半鏡である。上半鏡110には、地山の変位が増大して崩壊することを抑制するために、鏡ボルト120や鏡吹付けコンクリート130が必要に応じて施工されている。また、符号140はロックボルト、符号150は2次吹付けコンクリートである。なお、図6において、既設の鋼製支保工の図示を省略している。
【0052】
図6は、既に、上半部の支保構造、すなわち上半鋼製支保工10の所定位置への建て込み、2次吹付けコンクリートの吹付け、ロックボルト140の施工が完了している状態で、バックホウ等の重機500によって下半部を掘削している状況を示している。ベンチ部200は、上半鏡110の下端からトンネル軸方向手前側に連なる水平面である上半盤210と、この上半盤210の手前端から鉛直下方に連なる垂直面である下半鏡220とからなる段部である。なお、ここでいう「手前」とは、トンネル軸方向において、トンネルTの掘進方向とは逆側を指す。上半盤210は、一例として、掘進方向に2~4m程度の長さに設定されている。また、下半鏡220の下端からは、トンネル軸方向手前側に下半盤230が連なっている。下半部の掘削完了後、図1に示したように、左側上半鋼製支保工10Lの脚部に左側下半鋼製支保工20Lを接合し、右側上半鋼製支保工10Rの脚部に右側下半鋼製支保工20Rを接合する。
【0053】
図7は、上半鋼製支保工と下半鋼製支保工の連結構造2を説明する図である。連結構造2は、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の脚部と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の上部の一方に設けられた雄側継手板と、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の脚部と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の上部の他方に設けられると共に、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の連結時に外面が前雄側継手板の外面と当接される雌側継手板と、雄側継手板に凸設された雄型連結部と、雌側継手板に凹設された雌型連結部と、を含んで構成されている。ここでは、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の上部に設けられている第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)を雄側継手板とし、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の脚部に設けられている第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)を雌側継手板とする場合を例に説明する。図7に示す例では、雌側継手板としての第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)に雌型連結部40が凹設され、雄側継手板としての第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)に雄型連結部50が凸設されている。また、図7においては、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)と、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)が、連結構造2を介して連結される前の状態、即ち、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)と第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)が互いに離間した状態を示している。符号131a(132a)は、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面、符号131b(132b)は第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の内面(裏面)である。また、符号221a(222a)は、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の外面、符号221b(222b)は、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の内面(裏面)である。
【0054】
図8Aは、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)における第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面図であり、図8Bは、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)における第1脚部継手板131(第2脚部継手板1
32)の内面図(裏面図)である。図9Aは、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の外面図であり、図9Bは、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の内面図(裏面図)である。
【0055】
まず、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)に凸設された雄型連結部50について説明する。第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)には、雄型連結部50が設けられる位置に一対の開口孔50aが穿設されている。雄型連結部50は、棒状の雄型係止部材51を有している。雄型係止部材51は、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の開口孔50aよりも若干小径の軸部材であり、その基端部に雄ネジ51aが刻設されている。また、雄型係止部材51の中間部には環状の鍔部51bが設けられている。また、雄型係止部材51の鍔部51bよりも先端側の部位における外周部には、雄ネジ51cが形成されている。雄型係止部材51の雄ネジ51cは、雄型係止部材51の外周に複数並設された周方向の雄側係止溝である。また、雄型係止部材51の先端部51dには、先端に向かって縮径するテーパ面51eが形成されている。
【0056】
また、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の外面221a(222a)側における開口孔50aの周囲には、周囲よりも一段凹んだザグリ部221c(222c)が形成されている。雄型係止部材51の鍔部51bの外径は、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の開口孔50aの内径よりも大きい。雄型係止部材51の基端側を、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の外面221a(222a)側から開口孔50aに挿通し、鍔部51bをザグリ部221c(222c)に配置した状態で基端部の雄ネジ51aにナット52を螺着する。その結果、雄型係止部材51が第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)から突出した状態で、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)に雄型係止部材51を固定することができる。
【0057】
次に、雌型連結部40について説明する。第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)には、雌型連結部40が設けられる位置に一対の挿入孔131c(132c)が第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)を貫通するように穿設されており、その内面131b(132b)には金属製の円筒状のケーシング41が例えば溶接wpなどによって固定されている。ケーシング41は、その軸心を挿入孔131c(132c)の略中央部に位置させている。ケーシング41内には、収納室42が形成されている。収納室42の先部(前部)には、その内周面を後端側から先端側にかけて内径が徐々に縮径するテーパ面43aを有するテーパ穴43が形成されている。また、収納室42の中間部にはバネ収納部42aが形成されており、収納室42の後部内周に雌ネジ45が刻設されている。また、テーパ穴43の先端部には、挿入口48が開口形成されている。ケーシング41の前端部に位置する挿入口48は、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)に形成された挿入孔131c(132c)と略同径で、且つ当該挿入孔131c(132c)と連通している。また、ケーシング41が第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の内面131b(132b)に固定された状態で挿入口48が挿入孔131c(132c)と重なった位置に配置されている。
【0058】
また、ケーシング41のテーパ穴43内には、分割された雌型係止部材46が軸方向に摺動可能に配置されている。本実施形態では、図10に示すように、周方向に3つに分割してなる楔形の雌型係止部材46が、ケーシング41の軸(前後)方向に摺動可能に配設されている。図10は、図7におけるX-X矢視断面図である。ここで、雌型係止部材46の外面は、テーパ穴43におけるテーパ面43aに沿って摺動可能なテーパ面46aとして形成されている。雌型係止部材46のテーパ面46aは、先端側から後方にかけて外
径が徐々に拡大している。更に、各雌型係止部材46の内面には、雌ネジ46bが形成されている。雌ネジ46bは、各雌型係止部材46の内面に、複数並設された周方向の雌側係止溝である。雌ネジ46bは、ケーシング41の軸心を中心とする円弧で且つ、軸心に沿った方向に刻設されている。以上より、複数個の雌型係止部材46によって雌ネジ穴が形成され、各雌型係止部材46のテーパ面46aがテーパ穴43のテーパ面43aに沿って後退することにより、その雌ネジ穴が拡径され、前方(先方)へ移動することにより当該雌ネジ穴が縮径するようになる。なお、各雌型係止部材46の内面に形成された雌ネジ46bは、雄型係止部材51の先端側外周部に形成された雄ネジ51cと噛合させることができる。
【0059】
また、雌型連結部40における収納室42のバネ収納部42aには、雌型係止部材46を前方(先方)に押圧(弾性付勢)する押圧部材である押圧ばね44が、各雌型係止部材46の後端に設けられるばね受け47と蓋板49との間に圧縮した状態で収納されており、押圧ばね44の押圧力によって各雌型係止部材46を常時前方に押圧している。蓋板49は、収納室42の後部内周側に刻設された雌ネジ45に螺着されることで、押圧ばね44を圧縮した状態に保持することができる。なお、蓋板49の外面には、六角穴49aが設けられており、六角レンチによって蓋板49をケーシング41から着脱自在になっている。また、雌型連結部40は、ケーシング41に蓋板49が装着された状態で、収納室42は挿入口48を介してのみケーシング41の外部に連通している。
【0060】
以上のように構成される雌型連結部40及び雄型連結部50において、各雌型係止部材46の内面に形成された雌ネジ46bと雄型係止部材51の外周部に形成された雄ネジ51cは、ネジピッチが、JISに規定する細目ネジのピッチよりも小さく形成されている。また、本実施形態の雌型連結部40では各雌型係止部材46の内面に螺旋状の雌ネジ46bを形成したが、雌ネジ46bに代えて、各雌型係止部材46の周方向に伸びる環状の山部と環状の谷部を交互かつ並行に配置した並行溝を各雌型係止部材46の内面に設けても良い。同様に、雄型連結部50においては、雄型係止部材51の外周部に形成した雄ネジ51cに代えて、雄型係止部材51の周方向に伸びる環状の山部と環状の谷部を交互かつ並行に配置した並行溝を雄型係止部材51の外周面に設けても良い。
【0061】
次に、上述した連結構造2を用いた左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)との連結工程について説明する。図11は、作業車600を用いて左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の建て込みを行っている状況を示す図である。作業車600は、例えば、油圧ショベルなどのアーム610の先端にクランプ620をアタッチメントとして取り付けたものである。クランプ620は、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の狭持、及びその開放が可能なハサミ状の部材である。作業車600のクランプ620に左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の第1本体部211(第2本体部212)を把持した状態で、アーム610を操作することで、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)を、既設の左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の下方に移動させ、図7に示した状態のように、雌側継手板としての第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)に対して、雄側継手板としての第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)が対峙するように、相互の継手板の位置を調整する。なお、図11に示す状態、すなわち、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の脚部に左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)を連結する際には、第1本体部211(第2本体部212)から脚部側本体ピース211B(212B)が取り外されていてもよい。
【0062】
そして、作業車600のアーム610を操作して、図7に示す状態から、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)と第1下半上端継手板221(第2下半上端
継手板222)の離間距離を徐々に狭めてゆき、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)に凸設された雄型連結部50を、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の挿入孔131c(132c)に挿入する。
【0063】
ここで、雄型係止部材51の外径は、挿入孔131c(132c)及び雌型連結部40(ケーシング41)の挿入口48よりも若干小径で、且つ、各雌型係止部材46がテーパ穴43(テーパ面43a)の最前進位置に配置された状態で、各雌型係止部材46によって形成される雌ネジ穴の直径よりも若干大径に設定されている。これにより、雄型係止部材51が挿入孔131c(132c)を通じて、雌型連結部40の挿入口48から侵入すると、押圧ばね44の押圧力によって前端部にテーパ穴43(テーパ面43a)の最前進位置に位置決めされている各雌型係止部材46の前端面46cに雄型係止部材51の先端部51dが当接する。そして、雄型係止部材51が押圧ばね44の押圧力に抗して、各雌型係止部材46をテーパ面43aに沿って、雌型連結部40(ケーシング41)の軸方向後方に向かって後退させることで、各雌型係止部材46におけるテーパ面46aの雌ネジ46bによって形成されている雌ネジ穴を拡径しつつ雄型係止部材51が収納室42内に挿入される。
【0064】
そして、第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の外面と第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の外面同士が面接触し、雌型連結部40における収納室42内への雄型係止部材51の挿入が完了することで、それ以上の収納室42内への雄型係止部材51の挿入が停止されると、各雌型係止部材46は押圧ばね44の押圧力によって前方(先方)に押し戻されると共に、各雌型係止部材46のテーパ面46aによって形成される雌ネジ穴が縮径する。その結果、図12に示すように、雌型連結部40における各雌型係止部材46の雌ネジ46b(雌側係止溝)及び雄型連結部50における雄型係止部材51の雄ネジ51c(雄側係止溝)が相互に噛合する。これによって、図2に示したように、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)及び第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の外面221a(222a)が面接触した状態で、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)が一体に連結される。なお、本実施形態においては、雌型連結部40に対して雄型係止部材51が挿入及び係止された状態において、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)及び第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の各外縁同士の位置がすべて合致するように設定されている。
【0065】
ここで、図12に示したように、雌型連結部40の雌ネジ46bと雄型連結部50(雄型係止部材51)の雄ネジ51cが噛合した状態で、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)及び第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)を離反する方向に外力が作用した場合、雌型連結部40における収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に引き抜き力が作用する。この引き抜き力は、互いに噛み合う雄ネジ51cと雌ネジ46bを介して各雌型係止部材46に伝達される。ところで、各雌型係止部材46のテーパ面46aは後方側から前方にかけて外径が徐々に縮小している。そのため、上記引き抜き力が各雌型係止部材46に作用しても、各雌型係止部材46がテーパ穴43の前方に向かって変位することが制限される。すなわち、本実施形態に係る連結構造2によれば、雌型連結部40の収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に外力が作用しても、当該外力に対抗して連結状態を維持することができる。つまり、実施形態における連結構造2によれば、雌型連結部40の挿入口48から雄型連結部50(雄型係止部材51)を挿入する動作だけで、雌型連結部40に対して雄型連結部50が連結されるため、簡単に左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)を一体に接合することができる。また、雌型連結部40における収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に引き抜き力が作用しても、雌
型連結部40及び雄型連結部50の連結が解除されることを抑制できる。
【0066】
以上のように、本実施形態におけるトンネル支保工の連結構造2、及びこれを用いたトンネル支保工の連結方法によれば、連結構造2によってワンタッチで簡単にトンネル支保工同士を連結することができるため、従来に比べてトンネル支保工同士の連結作業の作業性を向上させることができる。また、トンネル支保工を連結する際のサイクルタイムを従来に比べて短くすることができるため、トンネルの切羽近傍に作業員が立ち入って作業する作業時間を短くすることができ、支保工連結作業の安全性を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態においては、雄型連結部50(雄型係止部材51)が凸設される雄側継手板が左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の上部に設けられ、雌型連結部40が凹設される雌側継手板が左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の脚部に設けられているため、左側上半鋼製支保工10L及び右側上半鋼製支保工10RをトンネルTの上半部における所定位置に建て込む際に、雄側継手板に凸設される雄型連結部50(雄型係止部材51)が折れ曲がったり、破損することを抑制できるという利点がある。
【0068】
また、本実施形態における左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の連結方法においては、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)をトンネルTの上半部における所定の建て込み位置に建て込む前に、雌側継手板としての第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の雌型連結部40(ケーシング41)内への異物の侵入を抑制するための挿入孔仮被覆材60によって予め挿入孔131c(132c)を覆う養生工程と、所定の建て込み位置への左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み完了後であって且つ左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)との連結工程の前に、挿入孔131c(132c)を覆っている挿入孔仮被覆材60を取り除く除去工程を実施してもよい。
【0069】
図13は、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)に挿入孔131c(132c)を覆うように挿入孔仮被覆材60を取り付けた状態を説明する図である。挿入孔仮被覆材60は、例えばテープ状又はシート状の養生部材であっても良い。例えば、図13の(a)に示すように、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)に挿入孔131c(132c)を覆うように養生テープ60Aを貼り付けてもよい。また、挿入孔仮被覆材60は、例えば、図13の(b)に示すように、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の挿入孔131c(132c)を覆うように外面131a(132a)に沿って固定される木板等の養生板材60Bであってもよい。なお、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)に対する養生板材60Bの固定は特に限定されず、例えば粘着テープ等を用いても良い。
【0070】
上記のように、上半部への左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込みを行う前に、挿入孔仮被覆材60によって事前に挿入孔131c(132c)を覆っておくことで、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み時に、挿入孔131c(132c)を通じて雌型連結部40のケーシング41内に形成される収納室42に、埃や土砂等といった異物が侵入することを抑制することができる。また、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み後に上半部に吹付けられる2次吹付けコンクリートが雌型連結部40内に侵入することを抑制することができる。その結果、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の連結時に、雌型連結部40に対する雄型連結部50(雄型係止部材51)の円滑な挿入及び係止が阻害されることを抑制できる
【0071】
また、上半部への左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み後、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)との連結工程の前に、挿入孔131c(132c)を覆っている挿入孔仮被覆材60を取り除く除去工程を行うことで、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)との連結を円滑に行うことができる。
【0072】
なお、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み後、上半部の支保構造として2次吹付けコンクリートの吹付けが行われるため、上記除去工程を行う際には左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の脚部に位置する第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)は2次吹付けコンクリートによって被覆されている場合がある。従って、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の建て込みを行う際には、下半部の掘削後、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)側を被覆している吹付けコンクリートを斫りつつ、養生テープ60Aや養生板材60B等の挿入孔仮被覆材60を取り除くと良い。ここで、吹付けコンクリートの斫り作業を考慮すると、養生工程においては、図13の(b)に示すような養生板材60Bを挿入孔仮被覆材60として用いて挿入孔131c(132c)を覆っておくことが好ましい。この場合、除去工程において第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)から挿入孔仮被覆材60を取り除く際、養生板材60Bを第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)と吹付けコンクリートとの縁切り材として機能させることができ、養生板材60B(挿入孔仮被覆材60)を容易に取り除くことができる。その場合、養生板材60Bを、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)の全面を覆うように設置することが好ましく、そのようにすることで、除去工程において第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)から養生板材60Bをより一層容易に取り除くことができる。
【0073】
また、本実施形態の連結構造2によれば、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)に設けられている雌型連結部40に対して、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)側から雄型連結部50(雄型係止部材51)を挿入するだけで、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)及び左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)をワンタッチで連結(接合)することができ、従来のボルト締結のように、締結を行う際に第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の内面131b(132b)側にナットを配置する必要がない。そのため、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の内面131b(132b)側を被覆している吹付けコンクリートを左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)及び左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の連結時にわざわざ斫りとる必要が無く、従来に比べて下半支保工の建て込み時における作業性を向上することができる。
【0074】
<変形例1>
次に、上記実施形態とは逆に、雄型連結部50(雄型係止部材51)が凸設される雄側継手板を左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の脚部に設置し、雌型連結部40が凹設される雌側継手板を左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の上部に設置する態様について説明する。すなわち、変形例1の態様としては、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の脚部に第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)が雄側継手板として設け、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の上部に第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)が
雌側継手板として設けられる。
【0075】
図14は、変形例1に係る左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)の構造を説明する図である。図15A及び図15Bは、変形例1に係る左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)における第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の構造を説明する図である。なお、上述までの実施形態1と同一の部材については、同一の符号を付すことで詳しい説明を割愛する。なお、本変形において、雌型連結部40及び雄型連結部50は上述したものと基本構造が同一である。
【0076】
図14に示すように、変形例1に係る第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)には、雌型連結部40が設けられている。第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)には、雌型連結部40が設けられる位置に一対の挿入孔221d(222d)が貫通形成されており、その内面221b(222b)にはケーシング41が例えば溶接wpなどによって固定されている。ケーシング41は、その軸心を挿入孔221d(222d)の略中央部に位置させている。ケーシング41の内部構造は実施形態1と同様である。また、雌型連結部40の挿入口48は、挿入孔221d(222d)と重なった位置に配置されている。
【0077】
一方、変形例1に係る左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)には、雄型連結部50の雄型係止部材51を着脱自在に装着できる。図15Aは、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)に対して雄型係止部材51を装着する前の状態を示す。また、図15Bは、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)に対して雄型係止部材51を装着した状態を示している。
【0078】
図15Aに示すように、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)には、雄型連結部50が設けられる位置に一対の開口孔50aが穿設されている。また、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の内面131b(132b)には、雄型連結部50の雄型係止部材51を着脱自在に装着するための装着部としてのナット52が予め溶接wp等によって固着されている。第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)において、ナット52(装着部)は開口孔50aと対応する位置に設けられており、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)側から雄型係止部材51の基端部を開口孔50aに挿入することで、雄型係止部材51の基端側に形成されている雄ネジ51aをナット52に螺着することができる。これにより、図15Bに示すように、雄型係止部材51が第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)から突出した状態で、雄型係止部材51を固定することができる。
【0079】
本変形例においては、図15Aに示すように、雄型係止部材51を着脱自在とする装着部としてのナット52に対して雄型係止部材51を未装着の状態で、トンネルTの上半部における所定の建て込み位置に左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)を建て込む。このように、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込みを行う際に、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の外面131a(132a)から雄型係止部材51を外しておくことで、当該建て込み時に雄型係止部材51が折れ曲がったり破損することを抑制できる。
【0080】
そして、所定の建て込み位置への左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み作業が完了した後であって且つ左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)を連結する連結工程の前に、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)のナット52(装着部)
に対して雄型係止部材51を装着するとよい。これにより、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)との連結を円滑に行うことができる。
【0081】
なお、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込みを行う前に、ナット52のうち雄側継手板としての第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)に固着されていない方の開放端52a及び開口孔50a、をナット52内への異物の侵入を抑制するためのナット養生材によって予め覆っておくと良い。図15Aに示す符号61Aは、ナット52の開放端52aを覆うナット養生材としての養生テープである。また、符号61Bは、雄側継手板としての第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)における開口孔50aを覆うように外面131a(132a)に沿って設置されるナット養生材としての養生板材である。ナット52の開放端52aを養生テープによって覆い、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)の開口孔50aを養生板材61Bによって予め覆っておくことで、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み時に埃や土砂等といった異物がナット52内に侵入することを抑制できる。また、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み後に上半部に吹付けられる2次吹付けコンクリートがナット52内に侵入することも抑制できる。また、上半部への左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の建て込み後、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)との連結工程の前に、第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)における開口孔50aを覆っている養生板材61B(ナット養生材)を取り除いてから第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)のナット52(装着部)に雄型係止部材51を装着するとよい。これにより、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)との連結を円滑に行うことができる。
【0082】
ここで、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)に対する左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の連結については、図11に示した作業車600のクランプ620に左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)を把持した状態で、アーム610を操作することによって行うことができる。そして、作業車600のアーム操作によって、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半上端継手板221(第2下半上端継手板222)に形成された挿入孔221d(222d)を介して、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)における第1脚部継手板131(第2脚部継手板132)に凸設された雄型係止部材51を雌型連結部40の挿入口48に挿入させることで、雌型連結部40に雄型係止部材51を係止する。その結果、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)と左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)を一体に接合することができる。なお、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)に左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)をそれぞれ接合した後は、下半部に対する2次吹付けコンクリートの吹付けが行われる。
【0083】
[下半鋼製支保工とインバート支保工の連結構造及び連結方法]
次に、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)の連結構造及び連結方法について説明する。
【0084】
左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)の連結に先立ち、図16に示すように、下半部に対する支保構造の施工(左側下半鋼製支保工20L及び右側下半鋼製支保工20Rの建て込み、下半部への2次吹付けコンクリートの吹付け等)が完了した区間に対し、イン
バート施工部700の掘削を行う。図16に示す例では、下半盤230の手前端からインバート鏡710が鉛直下方に連なり、インバート鏡710の下端からインバート盤720が連続して設けられている。また、インバート施工部700の掘削後、インバート鋼製支保工30の建て込みに先立って、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1本体部211(第2本体部212)における上部側本体ピース211A(212A)に、脚部側本体ピース211B(212B)を接合しておくと良い。上記のように、インバート施工部700の掘削を完了した後、左側下半鋼製支保工20L及び右側下半鋼製支保工20Rに対して、左側インバート鋼製支保工30L及び右側インバート鋼製支保工30Rを順次、連結する。
【0085】
ここで、図17Aは、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半脚部継手部241(第2下半脚部継手部242)の端部に設けられた第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の外面図である。図17Bは、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半脚部継手部241(第2下半脚部継手部242)の端部に設けられた第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の内面図(裏面図)である。図18Aは、左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)における左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の外面図である。図18Bは、左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)における左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の内面図(裏面図)である。図19は、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)を連結する連結構造2を説明する図である。
【0086】
本実施形態においては、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)及び左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の何れか一方を雄側継手板として形成すると共に他方を雌側継手板として形成し、当該雄側継手板に凸設された雄型連結部50と雌側継手板に凹設された雌型連結部40をワンタッチで連結することで、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)を接合する。
【0087】
ここでは、まず、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)を、雌型連結部40が設けられる雌側継手板として形成し、左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)における左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)を雄型連結部50が設けられる雄側継手板として形成する場合を説明する。なお、上述までの実施形態1及び変形例1と同一の部材については、同一の符号を付すことで詳しい説明を割愛する。
【0088】
まず、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)に凸設された雄型連結部50について説明する。図示のように、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)には、雄型連結部50が設けられる位置に一対の開口孔50aが穿設されている。雄型連結部50の構造は、図7で説明したものと同一構造である。左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の外面321a(322a)側における開口孔50aの周囲には、周囲よりも一段凹んだザグリ部321c(322c)が形成されている。雄型係止部材51の鍔部51bの外径は、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の開口孔50aの内径よりも大きい。雄型係止部材51の基端側を、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の外面321a(322a)側から開口孔50aに挿通し、鍔部51bをザグリ部321c(322c)に配置した状態で基端部の雄ネジ51aにナット52を螺着する。その結果、雄型係止部材51が左側インバート第1継手板321(
右側インバート第1継手板322)の外面321a(322a)から突出した状態で、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)に雄型係止部材51を固定することができる。
【0089】
次に、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)に凹設された雌型連結部40について説明する。第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)には、雌型連結部40が設けられる位置に一対の挿入孔251c(252c)が貫通形成されており、その内面251b(252b)には金属製の円筒状のケーシング41が例えば溶接wpなどによって固定されている。ケーシング41は、その軸心を挿入孔251c(252c)の略中央部に位置させている。その他、雌型連結部40の構造は、図8で説明したものと同一構造である。また、ケーシング41の前端部に位置する挿入口48は、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)に形成された挿入孔251c(252c)と略同径で、且つ当該挿入孔251c(252c)と連通している。また、ケーシング41が第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の内面251b(252b)に固定された状態で挿入口48が挿入孔251c(252c)と重なった位置に配置されている。
【0090】
次に、連結構造2における雌型連結部40及び雄型連結部50を用いた左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)の連結との連結工程について説明する。これらの連結は、例えば、図11に示した作業車600のアーム操作によって行うことができる。すなわち、左側下半鋼製支保工20L及び左側インバート鋼製支保工30Lの連結は、作業車600のクランプ620に左側インバート鋼製支保工30Lを把持した状態で、アーム610を操作することによって行うことができる。また、右側下半鋼製支保工20R及び右側インバート鋼製支保工30Rの連結は、作業車600のクランプ620に右側インバート鋼製支保工30Rを把持した状態で、アーム610を操作することによって行うことができる。
【0091】
そして、作業車600のアーム610を操作して、図19に示すように、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の外面に左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の外面を対峙させた状態から、双方の継手板同士の離間距離を徐々に狭めてゆき、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)に凸設された雄型連結部50を、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の挿入孔251c(252c)に挿入する。そして、雄型係止部材51が第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の挿入孔251c(252c)を通じて、雌型連結部40の挿入口48から侵入すると、雄型係止部材51の先端部51dによって各雌型係止部材46をテーパ面43aに沿って後退させつつ、雄型係止部材51が収納室42内に挿入される。
【0092】
そして、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の外面251a(252c)と左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の外面321a(322a)同士が面接触し、雌型連結部40における収納室42内への雄型係止部材51の挿入が完了することで、それ以上の収納室42内への雄型係止部材51の挿入が停止されると、各雌型係止部材46は押圧ばね44の押圧力によって前方(先方)に押し戻されると共に、各雌型係止部材46のテーパ面46aによって形成される雌ネジ穴が縮径する結果、図20に示すように、雌型連結部40における各雌型係止部材46の雌ネジ46b(雌側係止溝)及び雄型連結部50における雄型係止部材51の雄ネジ51c(雄側係止溝)が相互に噛合する。これによって、図3及び図4に示したように、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)及び左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)が面接触した状態で、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支
保工30R)が一体に連結される。なお、本実施形態においては、雌型連結部40に対して雄型係止部材51が挿入及び係止された状態において、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)及び左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の各外縁同士の位置がすべて合致するように設定されている。その後、左側インバート第2継手板331と右側インバート第2継手板332を、例えばボルト接合することで、図1に示すような鋼製支保構造1が構築される。
【0093】
<変形例2>
次に、上記の態様とは逆に、雄型連結部50(雄型係止部材51)が凸設される雄側継手板を左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の脚部に設置し、雌型連結部40が凹設される雌側継手板を左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)の端部に設置する態様について説明する。
【0094】
図21は、変形例2に係る左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)を連結する連結構造2を説明する図である。本変形例においては、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)における第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)が雄側継手板として形成され、左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)における左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)が雌側継手板として形成されている。
【0095】
図示のように、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)には、雄型連結部50が設けられる位置に一対の開口孔50aが穿設されている。雄型連結部50の構造は、図7で説明したものと同一構造である。第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の外面251a(252a)側における開口孔50aの周囲には、周囲よりも一段凹んだザグリ部251d(252d)が形成されている。雄型係止部材51の鍔部51bの外径は、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の開口孔50aの内径よりも大きい。雄型係止部材51の基端側を、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の外面251a(252a)側から開口孔50aに挿通し、鍔部51bをザグリ部251d(252d)に配置した状態で基端部の雄ネジ51aにナット52を螺着する。その結果、雄型係止部材51が第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)の外面251a(252a)から突出した状態で、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)に雄型係止部材51を固定することができる。
【0096】
次に、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)に凹設された雌型連結部40について説明する。左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)には、雌型連結部40が設けられる位置に一対の挿入孔321d(322d)が貫通形成されており、その内面321b(322b)には金属製の円筒状のケーシング41が例えば溶接wpなどによって固定されている。ケーシング41は、その軸心を挿入孔321d(322d)の略中央部に位置させている。その他、雌型連結部40の構造は、図7で説明したものと同一構造である。また、ケーシング41の前端部に位置する挿入口48は、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)に形成された挿入孔321d(322d)と略同径で、且つ当該挿入孔321d(322d)と連通している。また、ケーシング41が左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)の内面321b(322b)に固定された状態で挿入口48が挿入孔321d(322d)と重なった位置に配置されている。
【0097】
次に、変形例2における左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)の連結との連結工程について説明する。これらの連結は、例えば、図11に示した作業車600のアーム操作
によって行うことができる。
【0098】
すなわち、図21に示すように第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)に左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)を対峙させた状態から、双方の継手板同士の離間距離を徐々に狭めてゆき、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)に凸設された雄型連結部50を、左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)における挿入孔321d(322d)挿入する。そして、雄型係止部材51を左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)における挿入孔321d(322d)を通じて、雌型連結部40の挿入口48に挿入させることで、雌型連結部40に雄型連結部50を連結することができる。これにより、第1下半脚部継手板251(第2下半脚部継手板252)及び左側インバート第1継手板321(右側インバート第1継手板322)が面接触した状態で、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)と左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)を一体に接合することができる。
【0099】
なお、上述した実施形態及び変形例は、適宜組み合わせて実施することができ、また、種々の変更を採用することができる。また、トンネル支保工の連結構造2は種々の変形例を採用することができ、雄側継手板に凸設された雄型連結部50(雄型係止部材51)を、雌側継手板に凹設された雌型連結部40に挿入することによってワンタッチで係止することができる構造であれば良く、雌型連結部40や雄型連結部50のディテールを適宜変更しても良い。勿論、本発明を適用するトンネル支保工、すなわち、上半鋼製支保工10(左側上半鋼製支保工10L及び右側上半鋼製支保工10R)、左側下半鋼製支保工20L及び右側下半鋼製支保工20R、インバート鋼製支保工30(左側インバート鋼製支保工30L及び右側インバート鋼製支保工30R)のディテールについても、構築するトンネルの仕様に応じて、適宜変更することができる。また、上述までの実施形態においては、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)に対する左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)の接合と、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)に対する左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)の接合の何れも上述した雄型連結部50(雄型係止部材51)及び雌型連結部40からなる連結構造2を用いる例を説明したが、何れか一方のみの接合に連結構造2を用いるようにしても良く、これによって、左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の連結作業における安全性及び作業性を従来に比べて向上することができる。
【0100】
なお、上述までの実施形態においては、左側上半鋼製支保工10L(右側上半鋼製支保工10R)や、左側インバート鋼製支保工30L(右側インバート鋼製支保工30R)に対する左側下半鋼製支保工20L(右側下半鋼製支保工20R)の連結を、例えば図11に示した作業車600等の重機を用いて行う場合を例に説明したが、必ずしも重機を用いて連結作業を行う必要は無く、人力によって連結作業を行っても良い。本実施形態におけるトンネル支保工の連結構造2を採用することによってワンタッチで簡単にトンネル支保工同士を連結することができるため、トンネル支保工の連結作業の従来よりも作業性を向上させることができ、トンネルの切羽近傍に作業員が立ち入って作業する作業時間を短くすることができるため、トンネル支保工の連結作業の安全性を従来よりも向上させることができる。
【符号の説明】
【0101】
1・・・トンネル支保構造
2・・・連結構造
10・・・トンネル支保工
10L・・・左側上半鋼製支保工
10R・・・右側上半鋼製支保工
20L・・・左側下半鋼製支保工
20R・・・右側下半鋼製支保工
30L・・・左側インバート鋼製支保工
30R・・・右側インバート鋼製支保工
40・・・雌型連結部
41・・・ケーシング
42・・・収納室
46・・・雌型係止部材
48・・・挿入口
50・・・雄型連結部
51・・・雄型係止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20
図21