(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】解析システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2016254446
(22)【出願日】2016-12-27
【審査請求日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2016033118
(32)【優先日】2016-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】小松 逸人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】山本 吉二
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-122438(JP,A)
【文献】特開2011-014122(JP,A)
【文献】特開2005-092466(JP,A)
【文献】特開2006-258535(JP,A)
【文献】特開平11-096135(JP,A)
【文献】特開2000-075903(JP,A)
【文献】特開2010-020714(JP,A)
【文献】特開2015-127914(JP,A)
【文献】特開平10-187226(JP,A)
【文献】特開2016-146039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備が生産対象物を生産する過程において、前記生産設備の状態の良否又は前記生産対象物の状態の良否に関する予測を行う
解析システムであって、
前記生産設備に関するデータに基づき、前記良否に関する予測を異なる解析手法を用いて行う複数の予測器と、
前記複数の予測器の中から一部の予測器を複数の使用予測器として選択する選択部と、
前記複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に基づき、前記良否に関する総合的な予測結果を算出する総合予測器と、
前記複数の予測器の各々が行った予測結果、及び、前記良否に関する検査結果に基づき、前記複数の予測器の各々が行った予測の精度を算出する予測精度算出部と、
を備え、
前記選択部
は、前記予測精度算出部により算出された予測精度を元に、前記複数の予測器の中から一部の予測器を前記複数の使用予測器として選択し、
前記予測精度算出部は、前記複数の予測器のうち前記使用予測器に該当しない複数の予備予測器の中で、予め定められた条件に基づいて決定された予測順番に従って、前記良否に関する予測を行い、前記予備予測器が行った予測の精度を算出し、
前記選択部は、前記使用予測器の前記予測精度及び前記予備予測器の前記予測精度を元に、前記使用予測器を、現在選択されている前記使用予測器としての予測器から、現在選択されている前記使用予測器よりも前記予測精度の高い前記予備予測器に入れ替える、解析システム。
【請求項2】
第一解析装置と、
前記第一解析装置とデータ通信可能にネットワーク接続された第二解析装置と、
を備え、
前記第一解析装置は、前記選択部、前記総合予測器、及び、前記使用予測器の前記予測精度を算出する前記予測精度算出部を備え、
前記第二解析装置は、前記予備予測器の前記予測精度を算出する前記予測精度算出部を備える、請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
前記複数の使用予測器には、前記生産設備に関する同一の解析対象データに基づき、異なる解析手法で予測を行う少なくとも2以上の予測器が含まれる、請求項1
又は2に記載の解析
システム。
【請求項4】
前記複数の使用予測器には、前記生産設備に関する異なる解析対象データに基づいて予測を行う少なくとも2以上の予測器が含まれる、請求項1-
3の何れか一項に記載の解析
システム。
【請求項5】
前記総合予測器は、前記複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に対し、前記予測精度算出部により算出された前記予測精度に応じた重みづけを行った上で、総合的な予測結果を算出する、請求項1-
4の何れか一項に記載の解析
システム。
【請求項6】
新たに取得した前記生産設備に関するデータに基づき、前記複数の予測器の各々が予測に用いるパラメータの再設定を行う、請求項1-
5の何れか一項に記載の解析
システム。
【請求項7】
前記総合予測器は、前記生産設備が配置される環境に関するデータ、又は、前記生産設備の使用状態に関するデータを元に、総合的な予測結果を算出する、請求項1-
6の何れか一項に記載の解析
システム。
【請求項8】
前記予測精度算出部は、前記複数の予測器の各々に対する前記予測精度を算出するにあたり、予測結果において良品であると判定した前記生産対象物が前記検査結果において不良品であると判定された場合、前記予測結果において不良品であると判定した前記生産対象物が前記検査結果において良品であると判定された場合と比べて、前記予測精度をより大きく低下させるような重みづけを行う、請求項
7に記載の解析
システム。
【請求項9】
生産設備が生産対象物を生産する過程において、前記生産設備の状態の良否又は前記生産対象物の状態の良否に関する予測を行う第一解析装置と、
前記第一解析装置とデータ通信可能にネットワーク接続された第二解析装置と、
を備え、
前記第一解析装置は、
前記生産設備に関するデータに基づき、前記良否に関する予測を異なる解析手法を用いて行う複数の予測器と、
前記複数の予測器の中から一部の予測器を複数の使用予測器として選択する選択部と、
前記複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に基づき、前記良否に関する総合的な予測結果を算出する総合予測器と、
前記複数の予測器の各々が行った予測結果、及び、前記良否に関する検査結果に基づき、前記複数の予測器の各々が行った予測の精度を算出する予測精度算出部と、
を備え、
前記第二解析装置は、
前記複数の予測器のうち前記使用予測器に該当しない複数の予備予測器を備え、
前記複数の予備予測器が前記良否に関する予測を行うように設定され、前記予備予測器が行った予測の精度を算出し、
前記複数の予備予測器の中で、予め定められた条件に基づいて決定された予測を行う順番に従って、前記良否に関する予測を行い、
前記選択部は、
前記予測精度算出部により算出された予測精度を元に、前記複数の予測器の中から一部の予測器を前記複数の使用予測器として選択し、
前記予測精度算出部により算出された前記使用予測器の前記予測精度、及び、前記第二解析装置において算出された前記予備予測器から得られた前記予測精度を元に、前記使用予測器を、現在選択されている前記使用予測器としての予測器から、現在選択されている前記使用予測器よりも前記予測精度の高い前記予備予測器に入れ替える、解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3つの分析モデルの中から最適な分析モデルを決定することにより、分析の精度向上を図った分析モデル決定装置が開示されている。特許文献1に記載の分析モデル決定装置は、3つの分析モデルに学習用データを適用して学習させた後、評価用データを各分析モデルにあてはめてデフォルト確率を計測するデータ分析部を備える。そして、データ分析部は、3つの分析モデルの各々の計測結果を比較し、最も精度の高い分析モデルを最適な分析モデルとして決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、生産設備により生産対象物を生産加工する過程において、生産設備の状態の良否又は生産中の生産対象物の状態の良否に関する予測を行う解析装置が知られている。こうした解析装置は、生産設備が配置される環境や生産設備の使用状態によって予測精度が変動しやすい。従って、事前学習に基づく計測結果により決定された分析モデルの予測精度が、他の分析モデルよりも低くなる場合がある。この場合、解析装置による解析結果の精度が低下する。
【0005】
本発明は、解析結果の精度を向上させることができる解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、生産設備が生産対象物を生産する過程において、前記生産設備の状態の良否又は前記生産対象物の状態の良否に関する予測を行う解析システムであって、
前記生産設備に関するデータに基づき、前記良否に関する予測を異なる解析手法を用いて行う複数の予測器と、
前記複数の予測器の中から一部の予測器を複数の使用予測器として選択する選択部と、
前記複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に基づき、前記良否に関する総合的な予測結果を算出する総合予測器と、
前記複数の予測器の各々が行った予測結果、及び、前記良否に関する検査結果に基づき、前記複数の予測器の各々が行った予測の精度を算出する予測精度算出部と、を備え、
前記選択部は、前記予測精度算出部により算出された予測精度を元に、前記複数の予測器の中から一部の予測器を前記複数の使用予測器として選択し、
前記予測精度算出部は、前記複数の予測器のうち前記使用予測器に該当しない複数の予備予測器の中で、予め定められた条件に基づいて決定された予測順番に従って、前記良否に関する予測を行い、前記予備予測器が行った予測の精度を算出し、
前記選択部は、前記使用予測器の前記予測精度及び前記予備予測器の前記予測精度を元に、前記使用予測器を、現在選択されている前記使用予測器としての予測器から、現在選択されている前記使用予測器よりも前記予測精度の高い前記予備予測器に入れ替える、解析システムにある。
【0007】
本発明の解析システムによれば、選択部は、複数の予測器の中から、予測の精度を元に複数の使用予測器を選択し、総合予測器は、生産設備が配置される環境や生産設備の使用状態において高い予測精度が得られる複数の予測器を使用する。そして、総合予測器は、複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に基づき、生産設備の状態の良否又は生産対象物の状態の良否に関する総合的な予測結果を算出する。従って、本発明の解析システムは、解析結果の精度を向上させることができる。
【0008】
また、予測精度算出部は、複数の予測器の各々が行った予測結果、及び、良否に関する検査結果に基づき、複数の予測器の各々が行った予測の精度を算出する。そして、選択部は、予測精度算出部により算出された予測精度に基づいて使用予測器を選択する。これにより、総合予測器は、予測精度の高い複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に基づき、総合的な予測結果を算出できる。よって、本発明の解析システムは、解析結果の精度を向上させることができる。
【0009】
さらに、本発明の解析システムによれば、前記複数の予測器のうち前記使用予測器に該当しない複数の予備予測器の中で、予め定められた条件に基づいて決定された予測順番に従って、前記良否に関する予測を行い、前記予備予測器が行った予測の精度を算出する。前記選択部は、前記使用予測器の前記予測精度、及び、前記予備予測器の前記予測精度を元に、前記使用予測器を、現在選択されている前記使用予測器としての予測器から、現在選択されている前記使用予測器よりも前記予測精度の高い前記予備予測器に入れ替える。
【0010】
予備予測器との入れ替えにより、総合予測器による予測精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における解析装置を用いた研削盤の構成を示す図である。
【
図3】総合予測器において行う算出方法の一例を示す図である。
【
図4】予測精度算出部において行う算出方法の一例を示す図である。
【
図5】第二実施形態における解析システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】第二解析装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る解析装置を適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。生産設備は、所定の生産対象物を生産する設備である。生産設備は、工作機械、搬送装置、産業用ロボットなど種々の設備を含む。生産設備は、例えば、生産ラインにおける加工工程を担当する工作機械であってクランクシャフトを研削する研削盤、工作機械への搬入および搬出を行う搬送機などである。本実施形態においては、生産設備は、例えば研削盤とする。まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態における解析装置100を用いた生産設備の一例である研削盤1について説明する。
【0015】
<1.第一実施形態>
(1-1.研削盤1の構成)
図1に示すように、研削盤1は、生産対象物であるクランクシャフトWのクランクジャーナル及びクランクピン等に研削加工を施す砥石台トラバース型の研削盤である。研削盤1の設置面には、ベッド2が固定され、そのベッド2には、クランクシャフトWを回転可能に両端支持する主軸装置3及び心押装置4が取り付けられる。クランクシャフトWは、クランクジャーナルを中心に回転するように主軸装置3及び心押装置4に支持される。主軸装置3は、クランクシャフトWを回転駆動するモータ31を備える。
【0016】
さらに、ベッド2には、砥石台5が設けられる。砥石台5は、Z軸方向(クランクシャフトWの軸線方向)及びX軸方向(クランクシャフトWの軸線に直交する方向)に移動する。砥石台5は、モータ51によってZ軸方向へ移動し、モータ52によってX軸方向へ移動する。また、砥石台5には、2つの検出器53,54が設けられる。検出器53は、砥石台5のZ軸方向における位置を検出し、検出器54は、砥石台5のX軸方向における位置を検出する。本実施形態では、モータ51,52の回転等を測定するロータリエンコーダが、検出器53,54として用いられているが、リニアスケール等の直線位置検出器が検出器53,54として用いられてもよい。
【0017】
砥石台5には、砥石車6が回転可能に設けられる。砥石車6は、モータ61によって回転駆動され、クランクピン又はクランクジャーナルを研削する。また、砥石台5には、モータ61の電流を検出する検出器62が設けられる。なお、本実施形態では、電流計が検出器62として用いられているが、モータ61の電圧や電力を測定する電圧計や電力計等が検出器62として用いられてもよい。さらに、ベッド2には、定寸装置7が設けられる。定寸装置7は、クランクシャフトWの研削部位であるクランクピン又はクランクジャーナルの外径を計測する。
【0018】
また、ベッド2には、ポンプ81と、弁82と、検出器83とが設けられる。ポンプ81は、研削部位にクーラントを供給する。弁82は、クーラントの供給のON/OFFを切り替える。検出器83は、弁82の状態を検出する。本実施形態では、クーラント流量を検出する流量計が検出器83として用いられているが、クーラントの圧力を検出する圧力計が、検出器83として用いられてもよい。さらに、ベッド2には、環境温度(外気温度)を検出する検出器84が設けられる。
【0019】
さらに、研削盤1は、CNC(Computerized Numerical Control)装置91と、PLC(Programmable Logic Controller)92と、操作盤93と、解析装置100と、を備える。CNC装置91は、主軸装置3のモータ31、砥石台5のモータ51,52及び砥石車6のモータ61を制御する。CNC装置91は、制御に際し、砥石台5のモータ51,52の検出器53,54、及び、砥石車6のモータ61の検出器62から検出情報を取得する。PLC92は、定寸装置7から検出情報を取得すると共に、ポンプ81及び弁82の制御を通してクーラントの供給を制御する。このクーラントの供給制御に際し、PLC92は、弁82の検出器83から検出情報を取得する。また、PLC92は、検出器84から環境温度に関する検出情報を取得する。
【0020】
解析装置100は、生産設備の状態の良否または生産設備により生産される生産対象物の状態の良否に関する予測を行う。例えば、解析装置100は、生産対象物に研削焼けが生じたことにより、当該生産対象物が不良品であることを予測する。また、解析装置100は、生産設備を構成する各部品の故障、寿命時期、メンテナンス時期などを予測する。なお、本実施形態においては、解析装置100は、生産対象物であるクランクシャフトWのクランクジャーナルおよびクランクピン等に対して研削加工を行う過程において、クランクシャフトWが良品であるか否かの解析を行う。
【0021】
なお、解析装置100は、CNC装置91やPLC92と別体の装置として説明するが、CNC装置91やPLC92などの組み込みシステムとすることもでき、パーソナルコンピュータやサーバなどとすることもできる。
【0022】
また、本実施形態では、解析装置100は、1つの研削盤1に設けられている。さらに、解析装置100は、研削盤1に設けられた各検出器53,54,62,83,84、CNC装置91及びPLC92との間で、データ通信可能に接続されている。
【0023】
ここで、1つの解析装置100が、複数の研削盤1などの複数の生産設備に対して、データ通信可能にネットワーク接続されるようにしてもよい。この場合、解析装置100及び各検出器53,54,62,83,84を含むネットワークシステム(解析システム)は、エッジコンピューティングを構築することができる。エッジコンピューティングは、狭い領域でネットワーク接続されたシステムであり、データの発生源に近いところでデータ処理を行うことが可能なシステムである。エッジコンピューティングにより構築される解析装置100は、例えば、複数の研削盤1を統括するサーバ(エッジサーバなどと称する)などを用いることができる。
【0024】
また、解析装置100及び各検出器53,54,62,83,84を含むネットワークシステム(解析システム)は、フォグコンピューティングを構築することができる。フォグコンピューティングは、エッジコンピューティングと比較して、広い領域でネットワーク接続されたシステムである。フォグコンピューティングは、例えば、同一の建物内または近隣の建物内(所定領域内)に設置される。
【0025】
また、解析装置100及び各検出器53,54,62,83,84を含むネットワークシステム(解析システム)は、設置場所を問わないクラウドコンピューティングを構築してもよい。クラウドコンピューティングは、フォグコンピューティングと比較して、広い領域でネットワーク接続されたシステムである。
【0026】
つまり、フォグコンピューティングを構築するネットワークにおけるデータ伝送速度は、クラウドコンピューティングを構築するネットワークにおけるデータ伝送速度より、各段に早い。従って、フォグコンピューティングを構築するネットワークにおいては、クラウドコンピューティングと比較して、短時間に大量のデータ伝送が可能となる。また、エッジコンピューティングを構築するネットワークにおけるデータ伝送速度は、フォグコンピューティングを構築するネットワークにおけるデータ伝送速度より、さらに早い。従って、エッジコンピューティングを構築するネットワークにおいては、フォグコンピューティングと比較して、短時間に大量のデータ伝送が可能となる。
【0027】
ところで、接続されている生産設備の数が、エッジコンピューティングでは少なくなり、クラウドコンピューティングでは多くなり、フォグコンピューティングでは両者の中間となる。そこで、リアルタイムに処理を行う場合には、エッジコンピューティングが好ましく、大量の種類のデータを処理する場合には、クラウドコンピューティングが好ましく、ある程度のリアルタイム性を確保しつつ、多くの種類のデータを処理する場合には、フォグコンピューティングが好ましい。
【0028】
(1-2.解析装置100の構成)
次に、
図2を参照して、解析装置100の構成について説明する。解析装置100は、生産対象物であるクランクシャフトW(
図1参照)のクランクジャーナル及びクランクピン等に対して研削加工を行う過程において、クランクシャフトWが良品であるか否かの解析を行う装置である。解析装置100は、予測部110と、算出部120と、データ記憶部130と、予測結果記憶部140と、検査結果記憶部150と、を備える。
【0029】
予測部110は、研削加工時に得られるデータやオペレータ等によって予め入力された各種情報等に基づき、研削加工を行っているクランクシャフトWが良品であるか否かについての予測を行う。算出部120は、予測部110により得られた予測結果と、最終生産物としてのクランクシャフトWが良品であるか否かについて行った検査結果とを照合する。そして、算出部120は、算出した結果を予測部110にフィードバックする。
【0030】
データ記憶部130は、オペレータ等により入力された各種情報を記憶する。データ記憶部130に記憶される情報としては、例えば、クランクシャフトWの形状や材質、砥石車6の形状や材質、研削切込量やクーラントの流量等の研削工程情報等、予測部110の後述する予測器A~H等に関する解析装置100の条件等として設定されたパラメータが例示される。なお、予測器A~Hに設定されるパラメータとは、解析エンジンを構築するためのモデルである。パラメータは、研削盤1によりクランクシャフトWの研削加工を行ったときに、検出器から得られるデータと、クランクシャフトWが良品であるか否かの製品検査の結果とに基づいて、初期設定される。
【0031】
予測結果記憶部140は、後述する複数の予測器A~Hが行った予測結果を記憶する。検査結果記憶部150は、研削盤1により研削加工を行ったクランクシャフトWが良品であるか否かの製品検査の結果を記憶する。これら予測結果記憶部140及び検査結果記憶部150に記憶されたデータは、算出部120が各々の予測器A~Hの予測精度を算出する際に用いられる。
【0032】
(1-2-1:予測部110の構成)
図2に示すように、予測部110は、8つの予測器A~Hと、選択部112と、総合予測器113と、重付係数記憶部114と、表示部115と、を主に備える。各々の予測器A~Hは、互いに異なる解析手法を用いて、クランクシャフトWが良品であるか否かの予測を行う解析エンジンである。予測器A~Hは、研削盤1に設けられた各検出器53,54,62,83,84、CNC装置91、PLC92、データ記憶部130から、各々の予測器A~Hが予測に用いるデータを取得する。そして、予測器A~Hは、各々の予測器A~Hが行った予測結果に関するデータを選択部112に送信する。
【0033】
選択部112は、各々の予測器A~Hから受信した予測結果に関するデータの中から、一部の使用予測器の予測結果に関するデータを選択する。そして、選択部112は、選択したデータを総合予測器113に送信し、総合予測器113は、解析装置100としての総合的な予測結果を算出する。また、選択部112は、各々の予測器A~Hから受信した予測結果に関するデータの全てを予測結果記憶部140に送信する。なお、選択部112は、予測結果に関するデータの一部を予測結果記憶部140に送信してもよい。
【0034】
ここで、予測器A~Hに用いる解析エンジンの例を表1に列挙する。
【0035】
【0036】
表1に示す解析エンジンは、QC手法(例えば、X-R管理図、相関分布等)、線形適応(例えば、線形適応制御等)、非線形同定(例えば、逐次型同定等)ベイズ手法(例えば、ナイーブベイズ法、ベイジアンネットワーク等)、機械学習(例えば、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン等)、回帰分析(例えば、重回帰分析、リッジ回帰等)のように、各々の特性に合わせて分類される。各々の解析エンジンの予測精度は、解析するデータ量(解析対象となるデータ数)やモデル精度により変化する。即ち、統計等のモデル自体の変数や定数が多い解析エンジンや事前確率分布の多い解析エンジンは、解析するデータ量が多いほど、モデル精度が高くなり、予測精度が向上する。
【0037】
例えば、QC手法は、計算量も少なく、相関性も分かりやすいので、解析するデータ量が少なくても予測精度の向上を図ることができる。その一方、QC手法は、解析するデータ量が増えたとしても、予測精度の向上の見込みが低い。これに対し、ベイズ手法は、解析するデータ量が増えるほど、事前情報(事前確率等)に基づく予測からデータに基づく予測に近づくので、予測精度が向上する。また、機械学習は、解析するデータ量が増えるほど、予測精度が向上する。同様に、回帰分析は、解析するデータが増えるほど、予測精度が向上する。
【0038】
線形適応は、モデル自体の精度が予測精度を向上させる要因となる。線形適応は、QC手法と比べて、データ量が少ない段階であっても予測精度を向上させやすい。非線形同定は、モデル自体の精度が予測精度を向上させるための要因となるが、モデル自体の構築が難しい。
【0039】
以上の点から、選択部112は、解析するデータ量が比較的少なく、検出器から得られるデータが少ないときには、QC手法又は線形適応を選択することで、予測精度を早期に向上させることができる。一方、選択部112は、解析するデータ量が比較的多い場合には、回帰分析又は機械学習を選択することで、予測精度を確実に向上させることができる。そこで、総合予測器113は、QC手法、ベイズ手法、線形適応、回帰分析、および、機械学習の中から、異なる種類の予測器を組み合わせて使用することとよい。つまり、総合予測器113は、解析するデータ量が少ないときに予測精度が高くなる解析エンジンと、解析するデータ量が多いときに予測精度が高くなる解析エンジンとを組み合わせて使用する。従って、総合予測器113は、各検出器53,54,62,83,84等により取得される解析するデータ量が少ないときから増加したときまで、データ量の変化に関わらず、予測精度が高い状態を維持することができる。よって、解析装置100は、予測精度を高めることができる。
【0040】
また、機械学習や回帰分析等は、変数や定数、モデル自体の精度等が異なるものを複数使用することができる。また、機械学習や回帰分析等は、解析するデータ量が多くなったときに、変数や定数、モデル自体の精度が最適な解析エンジンを使用することにより、予測精度を向上させることができる。
【0041】
なお、予測器として解析装置100に搭載する解析エンジンの種類を選択するにあたり、又は、選択部112において全ての予測器A~Hの中から使用予測器として設定する予測器の種類を選択するにあたり、選択部112は、一定の条件を設けてもよい。
【0042】
例えば、予測器A~Hの全てが、同一の解析対象データ(例えば、砥石車6のモータ61(
図1参照)の電流値)に基づき、互いに異なる解析手法で予測を行う解析エンジンであってもよい。この場合、総合予測器113は、同一の解析対象データに対し、異なる解析手法を用いてクランクシャフトWの良否に関する予測を行うことができる。つまり、同一の解析対象データを用いる場合であっても解析手法に応じて予測結果が異なることを利用して、多面的な解析を行うことができる。よって、解析装置100は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0043】
上記の他に、予測器A~Hの一部のみが、同一の解析対象データに基づき、互いに異なる解析手法で予測を行う解析エンジンであってもよい。この場合、少なくとも、使用予測器の一部が、同一の解析対象データ(例えば、砥石車6のモータ61(
図1参照)の電流値)に基づき、互いに異なる解析手法で予測を行う解析エンジンとするとよい。また、使用予測器の全部が、同一の解析対象データ(例えば、砥石車6のモータ61(
図1参照)の電流値)に基づき、互いに異なる解析手法で予測を行う解析エンジンであってもよい。これらの場合においても、解析装置100は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0044】
また、予測器A~Hの少なくとも一部が、異なる解析対象データ(例えば、砥石車6のモータ61(
図1参照)の電流値を検出する検出器62、クーラントの流量を計る検出器83、砥石台5の位置を検出する検出器53,54等から得られるデータ)に基づき予測を行う解析エンジンであってもよい。特に、使用予測器の少なくとも一部が、異なる解析対象データに基づき予測を行う解析エンジンとするとよい。
【0045】
この場合、解析装置100は、異なる解析対象データを用いた予測結果に関するデータを用いて総合的な予測を行うことができる。つまり、異なる解析対象データを用いることで、研削盤1に生じている種々の要因を考慮して、予測結果を得ることができる。よって、解析装置100は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0046】
また、使用予測器の全てが、異なる解析対象データに基づき予測を行う解析エンジンであってもよい。この場合、解析装置100は、解析結果の精度を向上させることができる。そして、予測器A~Hの全てが、異なる解析対象データに基づき予測を行う解析エンジンであってもよい。この場合、確実に、使用予測器の全てが、異なる解析対象データに基づき予測を行う解析エンジンにできる。
【0047】
重付係数記憶部114は、算出部120において算出された重付係数を記憶する。なお、重付係数は、各々の使用予測器に対し、各々の使用予測器の予測精度に基づいて割り振られた数値である。総合予測器113は、選択部112から受信した各々の使用予測器の予測結果に関するデータと重付係数記憶部114から取得した重付係数とに基づき、総合的な予測結果を算出する。そして、表示部115は、総合予測器113から受信した解析結果を表示し、オペレータに知らせる。
【0048】
(1-2-2:算出部120の構成)
算出部120は、予測精度算出部121と、重付係数算出部122と、を備える。予測精度算出部121は、予測部110から受信した各々の予測器A~Hの予測結果と、クランクシャフトWの良否に関する検査結果とを照合する。そして算出部120は、各々の予測器A~Hが行った予測の精度を算出する。
【0049】
また、予測精度算出部121は、算出された予測精度に基づき、複数の予測器A~Hの中から予測精度の高い予測器(以下「高精度予測器」と称す)を複数個抽出する。そして、予測精度算出部121は、抽出した高精度予測器に関するデータを予測部110にフィードバックする。なお、予測部110にフィードバックされたデータは、選択部112が既に選択されている使用予測器を他の予測器と入れ替えるか否かの判定を行う際に用いられる。
【0050】
重付係数算出部122は、予測精度算出部121により抽出された各々の高精度予測器について、予測精度に応じた重付係数を算出する。そして、重付係数算出部122は、算出した重付係数に関するデータを予測部110に送信する。なお、予測部110に送信された重付係数に関するデータは、重付係数記憶部114に記憶される。
【0051】
(1-2-3:予測部110の処理)
次に、予測部110において実行する処理について説明する。なお、ここでは、研削盤1により研削加工を行う過程において、各々の予測器A~Hが、クランクシャフトWに研削焼けが発生しているか否かを解析し、その解析結果に基づいて、総合予測器113が、クランクシャフトWが良品であるか否かの予測を行う場合を例に挙げて説明する。
【0052】
研削盤1に設けられた各検出器53,54,62,83,84、CNC装置91及びPLC92は、研削盤1がクランクシャフトWの研削加工を行う過程で得たデータを、予測器A~Hに送信する。
【0053】
各々の予測器A~Hは、研削盤1から受信したデータに基づいて解析を行う。そして、各々の予測器A~Hは、研削盤1が研削加工を行っているクランクシャフトWが良品である確率を算出する。このとき、各々の予測器A~Hは、必要に応じてデータ記憶部130に記憶されたデータを取得し、その取得したデータに基づいた解析を行う。各々の予測器A~Hが行った予測結果(クランクシャフトWの良品確率)に関するデータは、選択部112に送信される。
【0054】
選択部112は、各々の予測器A~Hからデータを取得すると、取得したデータが使用予測器の予測結果に関するデータであるか否かを判定する。そして、選択部112は、取得したデータが使用予測器の予測結果に関するデータである場合には、そのデータを総合予測器113に送信する。なお、本実施形態では、解析装置100に設けられた8つの予測器A~Hのうち、予測精度が高い3つの予測器が使用予測器に設定されている。
【0055】
また、選択部112は、各々の予測器A~Hから取得した全てのデータを予測結果記憶部140に送信する。予測結果記憶部140は、選択部112から受信した全ての予測器A~Hの予測結果に関するデータを記憶する。
【0056】
総合予測器113は、使用予測器が行った予測結果に関するデータを全て受信すると、解析装置100としての総合的な予測結果を算出する。このとき、総合予測器113は、重付係数記憶部114から重付係数に関するデータを取得すると共に、データ記憶部130からデータを取得する。そして、総合予測器113は、それらのデータを元に、総合的な予測結果を算出する。
【0057】
ここで、
図3を参照して、総合予測器113が行う予測結果の算出方法の一例を説明する。なお、ここでは、複数の予測器A~Hから3つの予測器A~Cが使用予測器として設定されているものとして説明する。
【0058】
総合予測器113は、まず、各々の予測器A~Cの予測結果である良品確率Ar~Crと、重付係数記憶部に記憶された重付係数Ak~Ckとに基づき、各々の予測器A~Cの予測値Z1~Z3を算出する。重付係数Ak~Ckは、3つの使用予測器の予測精度に応じて設定された指標である。予測値Z1~Z3は、各々の予測器A~Cの良品確率Ar~Crに対して各々の予測器A~Cの重付係数Ak~Ckを乗じた数値を、重付係数Ak~Ckの合計値(Ak+Bk+Ck)で除した数値である。
【0059】
次に、総合予測器113は、算出された各々の予測器A~Cの予測値Z1~Z3を合算する。この合算した数値が、解析装置100として算出した総合予測値Zであり、総合予測値Zが予め定められた水準を満たしていた場合、総合予測器113は、クランクシャフトWが良品であると判定する。一方、総合予測値Zが予め定められた水準を満たしていない場合、総合予測器113は、クランクシャフトWが不良品であると判定する。
【0060】
なお、総合予測器113は、各々の予測値Z1~Z3を算出する際に、重付係数Ak~Ckの数値に調整を加えたものを良品確率Ar~Crに乗じてもよい。例えば、研削盤1やデータ記憶部130から取得したデータ(例えば、外気環境に関するデータや生産設備の使用状態に関するデータなど)の中に、各々の使用予測器が行う予測精度に悪影響を及ぼし得るデータが含まれる場合がある。この場合に、総合予測器113は、予測精度に悪影響を及ぼし得る使用予測器の重付係数の数値が相対的に小さくなるような調整を、重付係数Ak~Ckに対して行ってもよい。
【0061】
この場合のように、総合予測器113は、研削盤1が配置される環境に関するデータや生産設備の使用状態に関するデータ等を元に、総合的な予測結果を算出する。従って、解析装置100、総合予測器113による算出される総合的な予測結果に、外気環境に関するデータや生産設備の使用状態に関するデータを反映させることができる。よって、解析装置100は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0062】
図2に戻り、説明を続ける。総合予測器113は、算出した総合的な予測結果を表示部115及び他の生産設備に送信する。他の生産設備としては、研削盤1による研削加工が終了したクランクシャフトWを搬送する搬送機や、研削盤1による研削加工の後に行う生産工程で使用する生産設備等が例示される。この場合、例えば、他の生産設備は、クランクシャフトWが不良品であるとの判定結果を受けた場合に、その不良品であると判定されたクランクシャフトWを生産ラインから除外することができる。これにより、研削盤1による研削加工後の生産工程において、不良品であるクランクシャフトWに加工が施されることを回避できるので、研削盤1は、製造コストの低減を図ることができる。
【0063】
表示部115は、総合予測器113から受信した判定結果を表示する。オペレータは、表示部115に表示された判定結果を確認することができる。例えば、オペレータが、解析装置100による解析結果を確認した結果、通常よりも不良品が多い(研削焼けの発生する不良品の出現確率が高い)と判断した場合に、オペレータは、その時点で研削盤1のメンテナンスを行うことができる。このように、オペレータは、クランクシャフトWの生産過程において、研削盤1の異常又は異常の予兆を見いだすことができる。従って、オペレータは、クランクシャフトWに対する製品検査の検査結果に基づいて研削盤1の異常又は異常の予兆を見いだす場合と比べて、研削盤1の異常に対する対応を早期に行うことができる。その結果、研削盤1は、不良品の生産数量を抑制することができる。なお、本実施形態では、表示部115が研削盤1に設けられているが、別の場所に設置されたモニター等を表示部115として用いてもよい。
【0064】
なお、解析装置100は、研削盤1に近いところで解析を行う。これにより、オペレータは、生産対象物としてのクランクシャフトWや研削盤1の状態を確認しながら、クランクシャフトWが良品であるか否かを判定するための水準値を決めることができる。さらに、研削盤1又はクランクシャフトWに突発的な異常が発生したときには、オペレータは、解析装置100との協働により、データの解析を即時に行うことができる。そして、オペレータは、その解析結果を解析装置100に対する判定情報へ即座に反映させることも可能となる。また、異常判定又は異常判定の前段階(異常ではないが異常に近い状態)において、研削盤1等の生産設備又は解析装置100は、解析装置100の解析結果に基づいてオペレータに異常状態を伝えたり、自動で生産設備の動作を止めたりすることが可能となる。なお、解析装置100は、ネットワークを介して研削盤1に接続された状態で解析を行うことも可能である。
【0065】
(1-2-4:算出部120の処理)
次に、算出部120で実行する処理について説明する。なお、算出部120による処理は、予測結果記憶部140及び検査結果記憶部150にデータが一定量蓄積された段階で行う処理である。
【0066】
予測精度算出部121は、予測結果記憶部140に記憶された各々の予測器A~Hの予測結果に関するデータと、検査結果記憶部150に記憶された検査結果とを取得する。そして、予測精度算出部121は、各々の予測器A~Hの予測結果と検査結果とを照合することで、各々の予測器A~Hの予測精度を示す予測値を算出する。
【0067】
ここで、
図4を参照し、予測精度算出部121で行う各々の予測器A~Hの予測精度の算出方法の一例を説明する。
図4に示すように、予測精度算出部121は、まず各々の予測器A~Hが行ったクランクシャフトWに対する予測結果と検査結果とを照合する。予測結果及び検査結果の双方において良品と判定されたクランクシャフトWの数量(pa1)を予測および検査を行ったクランクシャフトWの総量(all)で除した数値を、p1(=pa1/all)とする。予測結果及び検査結果の双方において不良品と判定されたクランクシャフトWの数量(pa2)を予測および検査を行ったクランクシャフトWの総量(all)で除した数値を、p2(=pa2/all)とする。
【0068】
また、予測結果において良品と判定され、且つ、検査結果において不良品と判定されたクランクシャフトWの数量(pa3)を予測および検査を行ったクランクシャフトWの総量(all)で除した数値を、p3(pa3/all)とする。また、予測結果において不良品と判定され、且つ、検査結果において良品と判定されたクランクシャフトWの数量(pa4)を予測および検査を行ったクランクシャフトWの総量(all)で除した数値を、p4(pa4/all)とする。予測精度算出部121は、数値p1~p4を予測器A~Hごとに算出する。例えば、予測器Aの数値p1は、Ap1とする。
【0069】
次に、予測精度算出部121は、各々の予測器A~Hに対して算出された数値p1~p4に基づき、各々のA~Hの予測値を算出する。本実施形態において、予測精度算出部121は、予測結果と検査結果とが一致したクランクシャフトWの数量の合計(=p1+p2)から、p3の2倍及びp4を減算した数値を予測値としている。
【0070】
つまり、予測精度算出部121は、予測結果と検査結果が一致する場合に予測精度が高くなるように評価され、予測結果と検査結果が一致しない場合に予測精度が低くなるように評価している。
【0071】
さらに、予測誤りとなる数値p3,p4の重みを変えて、予測精度Ap~Hpが算出されている。つまり、予測精度算出部121は、予測値を算出するにあたり、検査結果で不良品であると判定されたクランクシャフトWを良品と予測した数値であるp3と、検査結果が良品と判定されたクランクシャフトWを不良品と予測した数値であるp4とで、予測値に与える影響に差が出るような重みづけを行っている。
【0072】
数値p3に相当する場合、即ち、実際にはクランクシャフトWが不良品であったにも関わらず、解析装置100による解析結果において良品と判定された場合に、研削盤1は、研削加工が終了した後に行う生産加工を、不良品であるクランクシャフトWに対して行うことになる。この場合、後加工が無駄となってしまう。つまり、数値p3に相当する場合は、生産時間のロスが大きい。そこで、本実施形態では、数値p3の場合に、予測値が大きく低下するような算出方法で予測精度を算出している。
【0073】
一方、数値p4に相当する場合、即ち、実際にはクランクシャフトWが良品であったにも関わらず、解析装置100による解析結果において不良品と判定された場合には、研削盤1による研削加工が終了した後に、クランクシャフトWの廃棄を行うことになる。この場合は、数値p3に相当する場合に比べて、生産時間に与えるロスは小さい。そこで、数値p4の場合には、数値p3に比べて、予測値に与える影響を小さくしている。上記のように予測誤りの場合の影響度を変化させることで、総合予測器113は、不良品である生産対象物が誤って良品であると予測されることを低減させることができる。その結果、研削盤1は、不良品に対して生産加工を行うことによるロスを小さくすることができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0074】
なお、本実施形態において、予測精度算出部121は、p3を2倍しているが、生産対象物の信頼性に応じて、1よりも大きい値をp3に乗じる値として設定することができる。この場合、予測精度算出部121は、p3に乗じる値を大きな値にすることにより、解析装置100は、総合予測器113による予測の信頼度を高める(不良品である生産対象物が良品であると誤って予測されることを低減させる)ことができる。
【0075】
予測精度算出部121は、全ての予測器A~Hの予測値を算出した後、各々の予測器A~Hの予測値を比較する。そして、予測精度算出部121は、全ての予測器A~Hの中から予測値が高い3つの予測器を、高精度予測器として抽出する。予測精度算出部121は、抽出した3つの高精度予測器に関するデータを、予測部110の選択部112及び重付係数算出部122に送信する。
【0076】
選択部112は、予測精度算出部121から受信したデータに基づき、必要に応じて、使用予測器に設定された予測器のうち予測精度の低い予測器を、使用予測器に設定されていない高精度予測器と入れ替える入替処理を実行する。つまり、研削盤1の状態の変化や研削盤1の置かれる環境の変化により、使用予測器に設定された予測器の予測精度が低下する場合がある。このような場合に、選択部112は、使用予測器に選択する予測器の設定を更新し、予測精度の低下した予測器を予測精度の高い別の予測器と入れ替える。これにより、選択部112は、複数の予測器A~Hの中から予測精度の高い予測器を使用予測器に設定する予測器として選択できる。従って、解析装置100は、解析結果の精度の向上を図ることができる。
【0077】
このようにして、選択部112は、予測精度算出部121により算出された予測精度に基づいて一部の予測器を選択する。従って、予測精度の高い予測器から得られた予測結果が総合予測器113に送信されるので、解析装置100は、総合予測器113により算出される総合的な予測結果の精度を向上させることができる。
【0078】
また、重付係数算出部122は、予測精度算出部121から3つの高精度予測器の予測値に関するデータを受信すると、各々の高精度予測器の予測値に応じた重付係数の算出を行う。そして、重付係数算出部122は、算出された3つの高精度予測器に対する重付係数に関するデータを予測部110の重付係数記憶部114に送信する。重付係数記憶部114は、重付係数算出部122から受信したデータを記憶する。上記したように、総合予測器113は、使用予測器から得られた予測結果に基づいて総合的な予測結果を算出するにあたり、各々の使用予測器の予測精度に応じた重みづけを行った上で、総合的な予測結果を算出する。この場合、総合予測器113は、総合的な予測結果を算出するに際し、各々の使用予測器の予測精度を反映させることができる。よって、解析装置100は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0079】
以上説明したように、予測精度算出部121は、複数の予測器A~Hの各々が行った予測結果と検査結果に基づいて、複数の予測器A~Hの予測精度を算出する。選択部112は、複数の予測器A~Hの予測精度を元に使用予測器に設定する予測器を選択し、総合予測器113は、予測精度の高い予測器による予測結果に基づいて総合的な予測結果を算出する。従って、解析装置100は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0080】
また、研削盤1により多数のクランクシャフトWの研削加工を行うことで、検出器から得られるデータと、クランクシャフトWが良品であるか否かの製品検査の結果とが、多数蓄積される。この場合、解析装置100は、予測器A~Hのパラメータの再設定を行ってもよい。これにより、各々の予測器A~Hは、予測精度を高めることができる。
【0081】
<2.第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。第一実施形態では、予測部110に設けられた全ての予測器A~Hが予測を行い、選択部112が使用予測器の予測結果に関するデータを総合予測器113に送信する場合について説明した。これに対し、第二実施形態では、使用予測器以外の予測器の少なくとも一部による解析は、第二解析装置400によって行われる。以下には、第二解析装置400が、使用予測器以外の予測器の全てによる解析を行う場合を例にあげる。なお、上記した実施形態と同一の部品には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図5に示すように、解析システム202は、第一解析装置300及び第二解析装置400を備える。第一解析装置300と第二解析装置400とは、データ通信可能となるように伝送路(図示せず)を介してネットワーク接続されている。例えば、第一解析装置300と第二解析装置400とは、例えば、同一の建物内または近隣の建物内(所定領域内)に設置されるようにして、フォグコンピューティングを構築している。この他に、第一解析装置300と第二解析装置400とは、設置場所を問わないクラウドコンピューティングを構築してもよい。もちろん、第一解析装置300と第二解析装置400とは、エッジコンピューティングを構築してもよい。
【0083】
第一解析装置300は、予測部310と、算出部120と、データ記憶部130と、予測結果記憶部140と、検査結果記憶部150と、を備える。そして、予測部310は、8つの予測器A~Hと、選択部312と、総合予測器113と、重付係数記憶部114と、表示部115と、を主に備える。
【0084】
選択部312は、研削盤201に設けられた各検出器53,54,62,83,84、CNC装置91、PLC92及びデータ記憶部130から、使用予測器が解析に用いるデータを取得し、使用予測器に送信する。そして、使用予測器は、予測結果に関するデータを総合予測器113に送信する。また、使用予測器は、予測結果に関するデータを予測結果記憶部140に送信し、予測結果記憶部140は、使用予測器の予測結果に関するデータを記憶する。そして、算出部120は、使用予測器により得られた予測結果と、クランクシャフトWが良品であるか否かについて行った検査結果とを照合し、算出した結果を予測部110にフィードバックする。
【0085】
また、選択部312は、研削盤201に設けられた各検出器53,54,62,83,84、CNC装置91、PLC92及びデータ記憶部130から、8つの予測器A~Hのうち使用予測器に該当しない予測器(以下「予備予測器」と称す)が予測に用いるデータを取得し、第二解析装置400に送信する。
【0086】
図6に示すように、第二解析装置400は、予備予測器による予測を行う共に、予備予測器により得られた予測結果と、クランクシャフトWが良品であるか否かについて行った検査結果とを照合する。第二解析装置400は、8つの予測器A~Hと、データ記憶部130と、予測結果記憶部140と、検査結果記憶部150と、予測精度算出部121と、を主に備える。
【0087】
第二解析装置400は、選択部312から受信したデータをデータ記憶部130に記憶する。そして、予備予測器は、データ記憶部130に蓄積されたデータに基づいて予測を行い、予測精度算出部121による算出結果を選択部312に送信する。選択部312は、第二解析装置400から受信したデータを元に、必要に応じて、使用予測器に設定された予測器のうち予測精度の低い予測器を、使用予測器に設定されていない高精度予測器と入れ替える入替処理を実行する。これにより、選択部312は、複数の予測器A~Hの中から予測精度の高い予測器を使用予測器に設定する予測器として選択できる。従って、解析装置100は、解析結果の精度の向上を図ることができる。
【0088】
この解析システム202において、第一解析装置300は、8つの予測器A~Hのうち使用予測器による予測を行う。そして、第二解析装置400は、予備予測器による良否の予測を行っている。仮に、第一解析装置300が複数の予測器の全てによる良否に関する予測を行うと、使用予測器による予測結果の算出及び総合的な予測結果の算出に、時間を要するおそれがある。
【0089】
しかし、第二解析装置400が予備予測器による良否の予測を行うことで、使用予測器による予測結果及び総合的な予測結果を算出するまでに要する時間の短縮を図ることができる。なお、第二解析装置400が、全ての予備予測器による良否の予測を行い、第一解析装置300が、予備予測器による良否の予測を行わないようにしてもよいし、第一解析装置及び第二解析装置のそれぞれが、一部の予備予測器による良否の予測を行うようにしてもよい。
【0090】
なお、解析システム202において、選択部312は、予め定められた条件に基づいて、第二解析装置400に対して、予測を行う順番を決定してもよい。例えば、選択部312は、第二解析装置400に対し、予備予測器の中で、予測値の高い予測器による解析や、解析を実施した回数の少ない予測器による解析等を優先的に行う指示を行ってもよい。
【0091】
予測値の高い予測器による解析を優先的に行う場合、第二解析装置400は、使用予測器と入替する可能性の高い予測器による予測を優先的に行うことになる。これにより、選択部312は、より予測精度の高い予測器A~Hを使用予測器に選択することができるので、第一解析装置300は、総合予測器113による予測精度を高めることができる。また、解析を実施した回数の少ない予測器による解析を行う場合、第二解析装置400は、予備予測器の各々について、解析をまんべんなく行うことができる。その結果、解析システム202は、全ての予測器A~Hについて、正確な予測値を把握することができる。
【0092】
また、研削盤1により多数のクランクシャフトWの研削加工を行うことで、検出器から得られるデータと、クランクシャフトWが良品であるか否かの製品検査の結果とが、多数蓄積される。この場合、第二解析装置400が、複数の予測器A~Hのパラメータの再設定を行ってもよい。この場合、第一解析装置300及び第二解析装置400は、複数の予測器A~Hの各々が行う予測の精度を高めることができる。
【0093】
また、第一解析装置300及び第二解析装置400は、両者間において予測器A~Hの何れかの予測モデルのデータを送受信することができる。この場合、第一解析装置300及び第二解析装置400のそれぞれが、パラメータ等の再設定を行うことができる。そして、オペレータは、第一解析装置300又は第二解析装置400にて、パラメータ等の確認を行うことができる。また、第一解析装置300に外部パーソナルコンピュータ等を接続し、第一解析装置300と外部パーソナルコンピュータ等との間で、第一解析装置300の予測器A~Hのパラメータや予測モデルのデータを送受信することができる。この場合、外部パーソナルコンピュータが、パラメータ等の再設定を行うことができる。そして、オペレータは、外部パーソナルコンピュータにて、パラメータ等の確認を行うことができる。
【0094】
<3.その他>
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0095】
例えば、上記実施形態では、解析装置100を用いる生産設備の一例として、クランクシャフトWを生産対象物とする生産工程において、クランクシャフトWのクランクジャーナル及びクランクピン等に研削加工を施す研削盤1を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、解析装置100は、EPSやITCC等の他の生産対象物を生産する生産設備に用いられてもよい。この場合、解析装置100は、複数の予測器A~Hの中から生産対象物や生産設備に応じて予測精度の高い予測器を使用予測器に設定することができる。従って、解析装置100は、様々な生産設備に用いられる場合であっても、予測精度の高い解析結果を得ることができる。
【0096】
また、上記実施形態では、砥石台5をベッド2に対してZ軸方向へトラバースする砥石台トラバース型の研削盤に解析装置100を用いる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、解析装置100が、主軸装置3がベッド2に対してZ軸方向へトラバースするテーブルトラバース型の研削盤に用いられてもよい。
【0097】
上記実施形態では、選択部112に指定される使用予測器は、予測精度算出部121により算出された予測値に基づいて設定される場合について説明したが、オペレータが、使用予測器を任意で設定してもよい。なお、複数の予測器A~Hの予測結果及び検査結果が十分に蓄積されていない初期状態において、使用予測器として設定する予測器の選択は、オペレータが任意で行ってもよく、データ記憶部130等に予め記憶したテストデータ等に基づいて自動的に行ってもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、選択部112が複数の予測器A~Hの中から3つを使用予測器とする場合について説明したが、これに限られるものではない。即ち、使用予測器が、2つ以下又は4つ以上であってもよい。また、予測部110は、算出部120により得られた予測値の結果に応じて、使用予測器の数を変動させてもよい。この場合において、予測部110は、複数の予測器の全てを使用予測器として選択してもよい。
【0099】
<4.効果>
以上説明したように、本発明における解析装置100,300は、生産設備としての研削盤1,201が生産対象物としてのクランクシャフトWを生産する過程において、研削盤1,201の状態の良否又は生産対象物の良否に関する予測を行う。解析装置100,300は、生産設備に関するデータに基づき、良否に関する予測を異なる解析手法を用いて行う複数の予測器A~Hと、複数の予測器A~Hの中から複数の使用予測器を選択する選択部112,312と、複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に基づき、良否に関する総合的な予測結果を算出する総合予測器113と、複数の予測器A~Hの各々が行った予測結果、及び、良否に関する検査結果に基づき、複数の予測器A~Hの各々が行った予測の精度を算出する予測精度算出部121と、を備える。これに加え、選択部112,312は、予測精度算出部121により算出された予測の精度を元に、複数の予測器A~Hの中から複数の使用予測器を選択する。
【0100】
この解析装置100,300によれば、選択部112,312は、複数の予測器A~Hの中から、予測の精度を元に複数の使用予測器を選択し、総合予測器は、生産設備が配置される環境や生産設備の使用状態において高い予測精度が得られる複数の予測器を使用する。そして、総合予測器113は、複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に基づき、生産設備の状態の良否又は生産対象物の状態の良否に関する総合的な予測結果を算出する。従って、解析装置100,300は、予め設定された一定の閾値に基づいた判定を行うことにより、生産中の生産対象物が良品であるか否かの予測を行う場合と比べて、解析結果の精度を向上させることができる。また、解析装置100,300は、生産設備の状態の良否についても同様の効果を奏する。
【0101】
また、予測精度算出部121は、複数の予測器A~Hの各々が行った予測結果、及び、良否に関する検査結果に基づき、複数の予測器A~Hの各々が行った予測の精度を算出し、選択部112,312は、予測精度算出部121により算出された予測精度に基づいて複数の使用予測器を選択する。よって、総合予測器113は、予測精度の高い複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に基づき、総合的な予測結果を算出できる。よって、解析装置100,300は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0102】
上記した解析装置100,300において、予測精度算出部121は、予測精度に関するデータを選択部112,312に送信し、選択部112,312は、複数の予測器A~Hの中から一部の予測器を複数の使用予測器として選択し、予測精度算出部121から受信したデータに基づき、既に選択されている一部の予測器を、一部の予測器よりも予測精度の高い他の予測器と入れ替える。
【0103】
この解析装置100,300によれば、選択部112,312は、複数の予測器A~Hの中から予測精度の高い一部の予測器を複数の使用予測器として選択することができる。よって、解析装置100,300は、解析精度の向上を図ることができる。
【0104】
上記した解析装置100,300において、複数の使用予測器には、生産設備による生産加工時に得られた同一の解析対象データに基づき、異なる解析手法で予測を行う少なくとも2以上の予測器が含まれる。この解析装置100,300によれば、総合予測器113は、生産設備による生産加工時に得られた同一の解析対象データに対し、異なる解析手法で予測を行う少なくとも2つ以上の予測器の予測結果に基づき、総合的な予測結果を算出する。つまり、同一の解析対象データを用いる場合であっても解析手法に応じて予測結果が異なることを利用して、多面的な解析を行うことができる。よって、解析装置100,300は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0105】
上記した解析装置100,300において、複数の使用予測器には、生産設備による生産加工時に得られた異なる解析対象データに基づいて予測を行う少なくとも2つ以上の予測器が含まれる。この解析装置100は、生産設備による生産加工時に得られた異なる解析対象データに基づいて予測を行う少なくとも2つ以上の予測器の予測を行う少なくとも2つ以上の予測器の予測結果に基づき、総合的な予測結果を算出する。つまり、異なる解析対象データを用いることで、生産設備に生じている種々の要因を考慮して、解析結果を得ることができる。よって、解析装置100,300は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0106】
上記した解析装置100,300において、総合予測器113、複数の使用予測器から得られた複数の予測結果に対し、予測精度算出部121により算出された予測精度に応じた重みづけを行った上で、総合的な予測結果を算出する。この解析装置100は、総合予測器113による総合的な予測結果を算出するに際し、一の予測器の各々の予測精度を反映させることができる。よって、解析装置100,300は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0107】
また、本発明における解析装置100,300は、生産設備としての研削盤1が生産対象物としてのクランクシャフトWを生産する過程において、生産対象物の良否に関する予測を行う解析装置であって、生産設備に関するデータに基づき、生産対象物の良否に関する予測を異なる解析手法を用いて行う複数の予測器A~Hと、複数の予測器A~Hから得られた複数の予測結果に基づき、生産対象物の良否に関する総合的な予測結果を算出する総合予測器113と、を備え、複数の予測器A~Hには、生産設備による生産加工時に得られた同一の解析対象データに基づき、異なる解析手法で予測を行う少なくとも2以上の予測器が含まれる。
【0108】
この解析装置100,300によれば、総合予測器113は、生産設備による生産加工時に得られた同一の解析対象データに対し、異なる解析手法で予測を行う少なくとも2つ以上の予測器の予測結果に基づき、総合的な予測結果を算出する。従って、解析装置100,300は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0109】
上記した解析装置100,300において、複数の予測器A~Hの各々が行った予測結果、及び、生産対象物の良否に関する検査結果に基づき、複数の予測器A~Hの各々が行った予測精度を算出する予測精度算出部121を備え、総合予測器113は、複数の予測器A~Hの予測結果に対し、予測精度算出部121により算出された予測精度に応じた重みづけを行った上で、総合的な予測結果を算出する。
【0110】
この解析装置100,300は、総合予測器113による総合的な予測結果を算出するに際し、一の予測器の各々の予測精度を反映させることができる。よって、解析装置100,300は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0111】
上記した解析装置100,300において、予測精度算出部121は、複数の予測器A~Hの各々に対する予測精度を算出するにあたり、予測結果において良品であると判定した生産対象物が検査結果において不良品であると判定された場合、予測結果において不良品であると判定した生産対象物が検査結果において良品であると判定された場合と比べて、予測精度をより大きく低下させるような重みづけを行う。
【0112】
この解析装置100,300は、不良品である生産対象物が良品であると誤って予測されることを抑制できる。即ち、実際には不良品であったにも関わらず、解析装置100,300による解析結果において良品と判定された場合に、生産設備は、研削加工が終了した後に対して行う生産加工を不良品に対して行うことになる。この場合、実際には良品であるにも関わらず解析装置100,300による解析結果において不良品と判定され、生産ラインから除外される場合と比べて、ロスが大きくなる。即ち、解析装置100は、不良品である生産対象物が良品であると誤って予測されることを抑制することで、不良品に対して生産加工を行うことによるロスを小さくすることができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0113】
さらに、上記した解析装置100,300は、新たに取得した生産設備に関するデータに基づき、複数の予測器A~Hの各々が予測に用いるパラメータの再設定を行う。この解析装置100,300は、複数の予測器A~Hの各々が行う予測の精度を高めることができる。
【0114】
上記した解析装置100,300において、総合予測器113は、生産設備としての研削盤1,201が配置される環境(外気等)に関するデータ、又は、生産設備の使用状態に関するデータを元に、総合的な予測結果を算出する。この解析装置100,300によれば、総合予測器113による算出される総合的な予測結果に対し、外気環境に関するデータ、又は、生産設備の使用状態に関するデータを反映させることができる。よって、解析装置100,300は、解析結果の精度を向上させることができる。
【0115】
また、上記した解析装置を備えた解析システム202は、第一解析装置300と、第一解析装置300とデータ通信可能にネットワーク接続された第二解析装置400とを備える。第二解析装置400は、複数の予測器A~Hのうち使用予測器に該当しない予備予測器を用いて良否に関する予測を行うように設定され、予備予測器が行った予測の精度を算出する。選択部312は、予測精度算出部121により算出された使用予測器の予測精度、及び、第二解析装置400において算出された予備予測器から得られた予測精度を元に、使用予測器として既に選択されている予測器を、予測精度がより高い予備予測器と入れ替える。
【0116】
上記した解析システム202によれば、第二解析装置400は、予備予測器による良否の予測を行っている。仮に、第一解析装置300が複数の予測器A~Hの全てによる良否に関する予測を行うと、使用予測器による予測結果の算出及び総合的な予測結果の算出に、時間を要するおそれがある。しかし、第二解析装置400が予備予測器による良否の予測を行うことで、使用予測器による予測結果及び総合的な予測結果を算出するまでに要する時間の短縮を図ることができる。なお、第二解析装置400が、全ての予備予測器による良否の予測を行い、第一解析装置300が、予備予測器による良否の予測を行わないようにしてもよいし、第一解析装置300及び第二解析装置400のそれぞれが、一部の予備予測器による良否の予測を行うようにしてもよい。
【0117】
上記した解析システム202において、第二解析装置400は、予備予測器を複数備える。解析システム202は、第二解析装置400において、複数の予備予測器の中で優先的に予測を行う予測器を、予め定められた条件に基づいて決定する。この解析システム202は、第二解析装置400において、複数の予備予測器による予測を効率よく行うことができる。
【0118】
さらに、上記した解析システム202は、新たに取得した生産設備に関するデータに基づいて、第一解析装置300及び第二解析装置400に設けられた複数の予測器A~Hの各々が予測に用いるパラメータの再設定を行う。この解析システム202によれば、第一解析装置300及び第二解析装置400は、複数の予測器A~Hの各々が行う予測の精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0119】
1,201:研削盤(生産設備)、 100:解析装置、 202:解析システム、 A~H:予測器、 112,312:選択部、 113:総合予測器、 121:予測精度算出部、 300:第一解析装置(解析装置)、 400:第二解析装置、 W:クランクシャフト(生産対象物)