(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】カートリッジ方向制御を備えた流体吐出カートリッジ用梱包システム
(51)【国際特許分類】
B65D 77/26 20060101AFI20220928BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B65D77/26 R
B41J2/175 163
(21)【出願番号】P 2017197993
(22)【出願日】2017-10-11
【審査請求日】2020-09-07
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】コンプリン・スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ゲイリー シー.
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141019(JP,A)
【文献】特開2003-034362(JP,A)
【文献】特開2004-216761(JP,A)
【文献】特開平10-309811(JP,A)
【文献】特開2001-293884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/26
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吐出するためのノズルを含む流体吐出カートリッジを収納する流体吐出カートリッジ用収納パッケージであって、
実質的に水平姿勢又は実質的に垂直姿勢のいずれかとなるように設けられたシャフトを有するカートリッジ収納容器と、
前記流体吐出カートリッジを受け取り固定するための保持具開口と複数の保持具壁とを含み、ピボット軸となる前記シャフトにて、前記カートリッジ収納容器に回転可能に取り付けられている、カートリッジ保持具と、を含み、
前記シャフトの中心軸を通る前記カートリッジ保持具の回転軸線は、前記カートリッジ保持具に受け取り固定された前記流体吐出カートリッジと交差しないように延在し、
前記カートリッジ保持具と前記カートリッジ保持具内の前記流体吐出カートリッジとの重心が、前記シャフトからオフセットされており、
前記シャフトが実質的に前記水平姿勢である場合には、前記重心が前記シャフトの下方に位置することにより、前記ノズルが横向きに保持され、
前記シャフトが実質的に前記垂直姿勢である場合には、前記カートリッジ保持具の前記カートリッジ収納容器に対する回転位置によらずに、前記ノズルが横向きに保持される
流体吐出カートリッジ用収納パッケージ。
【請求項2】
流体リザーバを定義するキャビティを有するカートリッジ本体と、
流体リザーバ内に設けられた流体と
を有する流体吐出のための流体吐出カートリッジと、
請求項1に記載の流体吐出カートリッジ用収納パッケージと、を含む、
梱包された流体吐出カートリッジ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品梱包システムの分野に関するものであり、特に流体吐出カートリッジの輸送と保管のための梱包システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体吐出カートリッジは、例えばインクジェット印刷での応用といった、様々な用途に応用される。そのようなカートリッジが(実装と使用前の)工場からの輸送中と/又は保管中である期間の長さは、カートリッジの製品寿命のうちの大きな割合を占めうる。場合によっては、輸送及び保管の時間はカートリッジの製品寿命のうちの大半を占めることがある。従って、カートリッジが長期間、保管状態に留まる場合であっても、保管中にカートリッジの使用性が低下しないことが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この点に関し、消費者向けインクジェット印刷カートリッジといった流体吐出カートリッジは、典型的に、水性混合物に分散した顔料又はその他の固体粒子からなる、所定体積の吐出可能な流体を含む。これら固体粒子は輸送と保管の間に沈殿する傾向にあり(即ち、これらは「沈殿性固体」である)、このため、カートリッジ内の流体は、実際の使用前に再度混合される必要がある。しかし、場合によっては、流体内の固体粒子は、カートリッジの内容物を満足に混合することが不可能な状態にまで沈殿し、カートリッジを使用不能にする可能性がある。
【0004】
このため、輸送と/又は保管の間の、カートリッジを使用不能にするような、カートリッジ内の流体混合物が分離し沈殿する可能性を除去するか、少なくとも実質的に低減させる、流体吐出カートリッジのための梱包システムの提供が望まれる。
【0005】
さらに、輸送の間、カートリッジの吐出チップを保護するとともに、カートリッジからの流体漏れを防ぐため、所定長さのテープ又はその他のフィルムが吐出チップ上に貼られる。しかし、後の保護テープの除去は、それ自体が問題となりえ、吐出チップの破損につながる恐れがある。さらに、消費者が使用前にカートリッジから保護テープを取り除くことを忘れ、カートリッジを作動不能にする可能性がある。
【0006】
従って、実装及び使用の前に保護フィルムを取り除くことを確実にし、カートリッジの吐出チップ又はその他の部品の破損の可能性を最小限にする方法で、保護フィルムを取り除くシステムの提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述及びその他の要求は、本発明の流体吐出カートリッジ用梱包システムにより満たされる。
【0008】
本発明のひとつの様態では、流体吐出カートリッジ用収納パッケージを提供する。流体吐出カートリッジ用収納パッケージは、シャフトを有するカートリッジ収納容器とカートリッジ保持具とを含む。このカートリッジ保持具は、カートリッジを受け取り固定するため、保持具開口と、複数の保持具壁とを含む。カートリッジ収納容器には、カートリッジ保持具が、ピボット軸となるシャフトに回転可能に取り付けられる。
【0009】
カートリッジ収納容器は、シャフトが実質的に水平姿勢又は実質的に垂直姿勢の何れかで、収納される。
【0010】
カートリッジ保持具とその中の流体吐出カートリッジとの重心は、シャフトからオフセットされている。
【0011】
流体吐出カートリッジ用収納パッケージは、シャフトが実質的に水平姿勢で収納されたとき、重心がシャフトの下方に回転する。
【0012】
本発明の実施形態の1つは、梱包された流体吐出カートリッジ組立体を提供する。一実施形態によると、カートリッジ組立体は、流体吐出ためのカートリッジを含む。このカートリッジは、流体リザーバを定義するキャビティを含む。カートリッジは、流体リザーバ内に設けられた流体も含む。
【0013】
カートリッジ組立体は、上述の収納パッケージも含む。
【0014】
本発明による特定の実施形態において、カートリッジは、カートリッジ本体に取り付けられ、流体リザーバと流体連通している流体吐出チップと、流体リザーバ内に設けられた発泡体も含む。流体吐出チップは、実質的に垂直向きに方向づけられている。
【0015】
本発明による他の実施形態において、カートリッジは、流体リザーバ内に設けられた回転可能な攪拌棒も含む。このような場合、流体吐出チップは実質的に水平向きに方向づけられている。
【0016】
本発明による特定の実施形態において、カートリッジ収納容器は、カップ底部を有するカートリッジ収納カップを含むことが好ましい。カートリッジ保持具は、カップ底部に回転可能に取り付けられる。場合によっては、このカートリッジ収納カップは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンからなる群から選択された高分子材料製であることが好ましい。
【0017】
本発明によるいくつかの実施形態において、梱包された流体吐出カートリッジ組立体は、少なくとも流体吐出カートリッジ上方に設けられた、湿気バリアフィルムも含むことが好ましい。場合によっては、この湿気バリアフィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンからなる群から選択された高分子材料製である少なくとも1つの層を有する、多層フィルムであることが好ましい。
【0018】
本発明による特定の実施形態において、梱包された流体吐出カートリッジ組立体は、カートリッジ収納カップの上部唇領域に熱封止された、湿気バリアフィルムも含むことが好ましい。
【0019】
本発明による特定の実施形態において、吐出可能流体は、沈殿性固体を含むことが好ましい。例えば、いくつかの実施形態では、吐出可能流体は顔料を含む印刷用インクである。
【0020】
本発明による特定の実施形態において、カートリッジ本体は、少なくとも4つのカートリッジ壁を含むことが好ましい。
【0021】
本発明による特定の実施形態において、流体吐出カートリッジは、カートリッジ本体に取り付けられ、流体吐出チップと電気接続された、フレキシブル相互接続回路も含むことが好ましい。
【0022】
本発明による特定の実施形態において、流体吐出カートリッジは、フレキシブル相互接続回路が保持具壁のうちの1つに隣接して設けられるように、カートリッジ保持具内に固定されることが好ましい。その他の実施形態において、流体吐出カートリッジは、フレキシブル相互接続回路が保持具開口に隣接して設けられるように、カートリッジ保持具内に保護されることが好ましい。
【0023】
本発明の実施形態の1つは、フィルム封止された流体吐出カートリッジ組立体を提供する。本発明の一実施形態によると、フィルム封止された流体吐出カートリッジ組立体は、流体吐出カートリッジを含む。この流体吐出カートリッジは、流体リザーバを定義するキャビティとを含むカートリッジ本体を有する。流体吐出カートリッジは、カートリッジ本体に取り付けられ、流体リザーバと流体連通している吐出チップも含む。
【0024】
フィルム封止された流体吐出カートリッジ組立体は、カートリッジ保持具(retainer)も含む。このカートリッジ保持具は、保持具開口と複数の保持具壁とを含む。保持具開口は、カートリッジを受け取り固定する。
【0025】
フィルム封止された流体吐出カートリッジ組立体は、封止フィルムをさらに含む。封止フィルムの第1の部分は流体吐出チップに取り外し可能に固定され、封止フィルムの第2の部分はカートリッジ保持具に固定される。カートリッジ保持具からの流体吐出カートリッジの取り外しは、封止フィルムを流体吐出チップから分離させる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、このフィルム封止された流体吐出カートリッジ組立体は、シャフトを有するカートリッジ収納容器(cartridge storage container)も含んでもよい。カートリッジ収納容器には、カートリッジ保持具が、ピボット軸となるシャフトに回転可能に取り付けられる。また、少なくとも流体吐出カートリッジ上方に設けられた湿気バリアフィルムも含んでよい。
【0027】
本発明による特定の実施形態において、封止フィルムの第2の部分は、カートリッジ保持具の保持具壁に固定されることが好ましい。
【0028】
本発明によるいくつかの実施形態において、封止フィルムは、1インチあたり1.0lbfより弱い粘着力を有する第1のテープを含むことが好ましい。
【0029】
本発明による特定の実施形態において、フィルム封止された流体吐出カートリッジ組立体は、封止フィルムの第2の部分とカートリッジ保持具とに固定された、第2のテープも含む。場合によっては、この第2のテープは、1インチあたり1.0lbfより強い粘着力を有することが好ましい。
【0030】
本発明によるいくつかの実施形態において、流体吐出カートリッジは、カートリッジ本体に取り付けられ、流体吐出チップと電気接続された、フレキシブル相互接続回路(flexible interconnect circuit)を含むも含むことが好ましい。
【0031】
本発明によるいくつかの実施形態において、流体吐出カートリッジは、フレキシブル相互接続回路が保持具壁のうちの1つに隣接して設けられるように、カートリッジ保持具内に固定されることが好ましい。本発明による他の特定の実施形態において、流体吐出カートリッジは、フレキシブル相互接続回路が保持具開口に隣接して設けられるように、カートリッジ保持具内に固定されることが好ましい。封止フィルムは、例えば、ノズルプレートフィルム(nozzle plate film)である。
【0032】
別の様態において、本発明による実施形態の1つは、流体吐出カートリッジ上の流体吐出チップから保護テープを取り除く方法を提供する。一実施形態によると、この方法は、流体吐出のためのカートリッジを提供することと、カートリッジの流体吐出チップを封止するため、第1の部分と第2の部分を有する封止フィルムを提供することと、封止フィルムの第1の部分が流体吐出チップに取り外し可能に固定されるよう、封止フィルムを流体吐出チップの少なくとも1部に貼り付けることと、カートリッジを受け取り固定する保持具開口と複数の保持具壁とを有するカートリッジ保持具にカートリッジを挿入することと、封止フィルムの第2の部分をカートリッジ保持具に固定することと、保持具開口を介しカートリッジ保持具からカートリッジを取り外すことにより、流体吐出チップから封止フィルムを分離させることとを含む。
【0033】
この方法の特定の実施形態において、流体吐出チップから分離される封止フィルムは、約180度の角度で流体吐出チップからめくり取られることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の更なる利点は図面を伴う詳細な説明により明白となる。図面では、詳細をより明確に表すため、構成要素は正確な縮尺としていない。また、複数の図面を通じて、類似の符号は、類似の構成要素を示す。
【
図1】
図1は、流体吐出カートリッジの下方からの斜視図である。
【
図2】
図2は、流体吐出カートリッジの分解図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による流体吐出カートリッジ組立体の斜視図である。
【
図4】
図4から6は、本発明の一実施形態による流体吐出カートリッジの流体吐出カートリッジ組立体への配置を表わす斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による流体吐出カートリッジの流体吐出カートリッジ組立体への配置を表わす斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による流体吐出カートリッジの流体吐出カートリッジ組立体への配置を表わす斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態による流体吐出カートリッジ組立体の斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態による、カートリッジ収納カップの底部が実質的に垂直向きである、流体吐出カートリッジ組立体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、流体吐出カートリッジのための収納パッケージと、輸送と/又は保管の間に、カートリッジを使用不能にするような、流体吐出カートリッジ内の流体混合物が分離し沈殿する可能性を実質的に減少させる梱包された流体吐出カートリッジ組立体を提供する。さらに、本発明は、フィルム封止された流体吐出カートリッジ組立体と、流体吐出カートリッジの流体吐出チップ又はその他の部品が破損する可能性を最小化する、フィルム封止された流体吐出カートリッジ組立体から流体吐出カートリッジを取り出す方法も提供する。
【0036】
上述したように、流体吐出カートリッジは、例えばインクジェット印刷での応用を含む、様々な応用に用いられる。流体吐出カートリッジは、その他の非印刷での応用、特に少量の液体材料の正確な計量が求められる応用にも用いられる。例えば、流体吐出カートリッジは、化粧品、塗料、又は潤滑剤の調合にも用いられる。
【0037】
図1と2に示されるように、流体吐出カートリッジ10は、複数のカートリッジ壁14、より好ましくは少なくとも4つのカートリッジ壁14を有する、カートリッジ本体12を含む。カートリッジ蓋16はカートリッジ本体12の第1の部分に取り付けられる。カートリッジ底板18がカートリッジ本体12の第2の部分に取り付けられてもよい。場合によっては、カートリッジ蓋16と/又はカートリッジ底板18は、カートリッジ本体12と一体成型されることにより、カートリッジ本体12に取り付けられてもよい。その他の場合、カートリッジ蓋16と/又はカートリッジ底板18は、カートリッジ本体12と別々に形成され、粘着剤、超音波溶接等により封止されることで、カートリッジ本体12に取り付けられてもよい。カートリッジ本体12の内部には、流体リザーバ22を定義する中空キャビティ20を含む。
【0038】
通常、流体吐出カートリッジ10(以下、単にカートリッジともいう)は、流体リザーバ22内に設けられた、所定体積の吐出可能流体も含むことが好ましい。この流体は、沈殿性固体を含んでもよい。例えば、インクジェット印刷カートリッジでは、吐出可能流体は、水性溶媒又は有機溶媒と、時間の経過により懸濁液から沈殿する傾向にある印刷用顔料の固体粒子との混合を含む、印刷用インクである。
【0039】
いくつかの実施形態において、カートリッジ10は、所定体積の吐出可能流体と共に流体リザーバ22内に設けられた、発泡体24も含むことが好ましい。ただし、他の実施形態において、発泡体24は省かれてもよく、代わりに、流体リザーバ22は、吐出可能流体を再び混合させるための、磁力により作動される撹拌棒を含んでもよい。
【0040】
場合によっては、カートリッジ10は、カートリッジ本体12内においてカートリッジ蓋16の下方で且つ発泡体24の上方に位置する、通気カバー26と/又は内蓋28も含んでもよい。
【0041】
カートリッジ10は、カートリッジ本体12の第2の部分(通常、カートリッジ底板18)に取り付けられた、流体吐出のための複数のノズルを有する、流体吐出チップ30(以下、単に吐出チップともいう)も含む。吐出チップ30は、流体リザーバ22と、流体リザーバ22内の吐出可能流体と、カートリッジ底板18の穴を介して流体連通している。吐出チップ30は、例えば、熱硬化性粘着剤を用いてカートリッジに取り付けられてもよい。特定の実施形態において、カートリッジ10は、流体リザーバ22と流体吐出チップ30との間に設けられた、流体濾過エレメント34も含むことが好ましい。
【0042】
カートリッジ10は、典型的に、吐出チップ30の電気制御を提供するために、カートリッジ壁14のうちの1つに取り付けられ、吐出チップ30に電気接続された、フレキシブル相互接続回路(flexible interconnect circuit)36も含む。フレキシブル相互接続回路36は、1片以上の感圧接着剤(pressure sensitive adhesive)32を用いてカートリッジ10に取り付けられてもよい。
【0043】
上述したように、流体吐出カートリッジ内のインク顔料又はその他の固体は、保管の間に沈殿する可能性があり、流体吐出カートリッジは使用前に再度混合される必要がある。顔料又はその他の固体は、時には満足に混合することが不可能な状態に沈殿する。この点に関し、流体吐出カートリッジがこのように混合不能となり、このため使用不能となる可能性は、流体吐出カートリッジの構造と、輸送と保管の際の流体吐出カートリッジの向きによることが分かっている。具体的には、撹拌棒を含む流体吐出カートリッジにおいては、流体吐出カートリッジが流体吐出チップと共に保管され、そのノズルが下方を向くときに、顔料の混合不可能な沈殿が起こりやすいことが分かっている。発泡体を含み、撹拌されない流体吐出カートリッジの場合、回復不可能な流体顔料の沈殿は、流体吐出チップとそのノズルが上方又は下方のどちらかを向くときに最も起こりやすい。このため、流体吐出カートリッジは流体吐出チップと共に、上方又は下方を向くことなく、横向きに保管されることが、より好ましい。
【0044】
これは、本発明による輸送と保管のための収納パッケージ38内に、流体吐出カートリッジ10を配置することで達成される。そのような収納パッケージ38の例が、
図4に示される。この収納パッケージ38は、カートリッジ収納カップ40といった、収納容器を含む。カートリッジ収納カップ40は、カップ底部42と、少なくとも1つのカップ側壁44と、上部唇領域46と、カートリッジ収納カップ40内の収納空間48とを有する。通常、カートリッジ収納カップ40は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンからなる群から選択された高分子材料製であることが好ましい。
【0045】
カートリッジ収納カップ40内の収納空間48の内側において、カートリッジ保持具50が、カップ底部42に回転可能に取り付けられる。このカートリッジ保持具50は、通常4つである複数の保持具壁52と、保持具開口54とを含む。保持具開口54は、通常、カートリッジ保持具50の頂部にあるが、この限りではない。保持具壁52は、流体吐出カートリッジ10がカートリッジ保持具50により受け取られ固定されるよう、カートリッジ10の形状に符合するよう形成され構成される。カートリッジ保持具50は、カートリッジ保持具50の重心を変えるために用いられる、重り又はその他の追加的な構造を含んでもよい。
【0046】
カップ底部42は、中心ピン又はシャフト56を含み、カートリッジ保持具50は、カートリッジ保持具50の片側に形成された、シャフト56に嵌合する孔58により、このシャフト56に取り付けられる。このため、カートリッジ保持具50と、カートリッジ保持具50内のカートリッジ10は、カートリッジ収納カップ40内で、シャフト56により定義されたピボット軸の周りを、ピボット軸からオフセットされたカートリッジ保持具50とカートリッジ保持具50内の流体吐出カートリッジ10との重心に伴い、回転又は旋回する。
【0047】
本発明によると、カートリッジ10は、様々な向きのうちの1つにて、カートリッジ保持具50により受け取られる。特に、カートリッジ保持具50内のカートリッジ壁14の特定の向きは、本発明の特定の実施形態に依存する。いくつかの実施形態において、カートリッジ10は、
図3から6に示されるように、カートリッジ壁14に取り付けられたフレキシブル相互接続回路36が、保持具壁52のうちの1つと隣接して設けられるように、カートリッジ保持具50内に固定されることが好ましい。ただし、別の一実施形態において、カートリッジ10は、
図7と8に示されるように、カートリッジ壁14に取り付けられたフレキシブル相互接続回路36が、保持具開口54と隣接して設けられるように、カートリッジ保持具50内に固定されることが好ましい。
【0048】
収納パッケージ38内にカートリッジ10が固定されると、輸送と/又は保管の間、カートリッジ10を湿気やその他の環境上の危険性から守るため、湿気バリアフィルム60が、少なくともカートリッジ10の上方に設けられることが好ましい。場合によっては、湿気バリアフィルム60はカートリッジ10上のみに設けられてもよく、つまり、カートリッジ10はカートリッジ保持具50に挿入される前に、湿気バリアフィルム60に包まれてもよい。その他の場合、カートリッジ10がカートリッジ保持具50に挿入され、その後に湿気バリアフィルム60がカートリッジ10とカートリッジ保持具50の両方の上方に設けられてもよい。
【0049】
また別の好ましい一実施形態において、カートリッジ10とカートリッジ保持具50がカートリッジ収納カップ40に挿入されてから、カートリッジ収納カップ40内のカートリッジ10を封止するため、湿気バリアフィルム60がカートリッジ収納カップ40の全て又は一部を封止してもよい。例えば、カートリッジ10とカートリッジ保持具50がカートリッジ収納カップ40内の収納空間48に挿入され、輸送と/又は保管の間にカートリッジ10を湿気やその他の環境上の危険性から守るため、湿気バリアフィルム60がカートリッジ収納カップ40の上部唇領域46に封止されてもよい。
【0050】
一般的に、湿気バリアフィルム60は多層フィルムである。カートリッジ収納カップ40に対し湿気バリアフィルム60が封止されるとき、カートリッジ収納カップ40と、カートリッジ収納カップ40に隣接する湿気バリアフィルム60の層は、カートリッジ収納カップ40と湿気バリアフィルム60の材料の間を熱接合し封止することが容易となるよう、同一又は構造的に類似の高分子材料製であることが望ましい。このため、もしカートリッジ収納カップ40が、上述したように、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンからなる群から選択された高分子材料製である場合、カートリッジ収納カップ40に隣接する湿気バリアフィルム60の層も同様に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンからなる群から選択された高分子材料製であることが望ましい。湿気バリアフィルム60に用いることができる他の高分子材料には、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、そして金属化ポリマーを含む。
【0051】
収納パッケージ38は、それに固定されたカートリッジ10と湿気バリアフィルム60と共に、集合的に完成された梱包された流体吐出カートリッジ組立体62を構成する。
【0052】
この方法で組み立てられ封止されると、梱包された流体吐出カートリッジ組立体62のカートリッジ収納カップ40又はその他の収納容器は、上述した実質的に水平姿勢又は実質的に垂直姿勢のどちらかにおいて、ピボット軸を伴い収納される。もし梱包された流体吐出カートリッジ組立体62が上述した実質的に水平姿勢においてピボット軸を伴い保管される場合、カートリッジ保持具50とカートリッジ10との重量の力により、カートリッジ保持具50とカートリッジ保持具50内のカートリッジ10はピボット軸の周りを回転又は旋回することが理解される。この点に関して、本発明によると、カートリッジ保持具50と、カートリッジ保持具50内のカートリッジ10との重心は、梱包された流体吐出カートリッジ組立体62が実質的に水平姿勢においてピボット軸を伴い保管される場合に重心がピボット軸の下方に回転するよう、ピボット軸からオフセットされている。
【0053】
この重心がピボット軸の下方の位置に回転する傾向は、カートリッジ保持具50内のカートリッジ10の向きの適切な選択と組み合わせ、たとえ梱包された流体吐出カートリッジ組立体62の全体的な向きが変化したとしても、輸送と保管の間、吐出チップ30のノズルを望ましい向きに維持することを助けることが明白である。
【0054】
特に、流体リザーバ22内に発泡体24を含むカートリッジ10については、通常、保管される間、吐出チップ30が実質的に垂直の向きに維持されることが好ましい。従って、このような発泡体24を含むカートリッジ10は、(梱包された流体吐出カートリッジ組立体62が実質的に水平姿勢でピボット軸を伴い保管される場合)重心がピボット軸の下方に回転した後に、吐出チップ30が実質的に垂直の向きとなるような向きで、カートリッジ保持具50内に固定されることが好ましい。
【0055】
一方、流体リザーバ22に設けられた回転可能な撹拌棒を含むカートリッジ10については、通常、保管される間、吐出チップ30が実質的に水平の向きに維持されることが好ましい。従って、このような撹拌棒を含むカートリッジ10は、(梱包された流体吐出カートリッジ組立体62が実質的に水平姿勢でピボット軸を伴い保管される場合)重心がピボット軸の下方に回転した後に、吐出チップ30が実質的に水平の向きとなり、好ましくは流体リザーバ22の上方となるよう、カートリッジ保持具50内に固定されることが好ましい。
【0056】
本発明の別の様態において、吐出チップ30を保護し、梱包された流体吐出カートリッジ組立体62の発送と/又は輸送の間のノズルからの流体漏れを防止するために、取り外し可能なノズルプレート封止フィルム64が、吐出チップ30とそれに関連付くノズルに貼り付けられてもよい。場合によっては、この目的のために吐出チップ30上に貼り付けられるノズルプレート封止フィルム64は、少なくとも片側に比較的低粘着性の粘着剤を有するテープ(第1のテープ)であることが好ましい。通常、この状況において、低粘着テープは、流体吐出チップ30に固定される場合、1インチあたり1.0lbfより弱い粘着力を有することが好ましい。
【0057】
保護テープ又はその他の封止フィルムの貼付けのための好ましい方法の1つが
図4から6に示され、所定長さのノズルプレート封止フィルム64が用いられる。先ず、
図4に示されるように、ノズルプレート封止フィルム64の第1の部分66が、流体吐出チップ30に取り外し可能に固定される。これは、カートリッジ10がカートリッジ保持具50に挿入される前に行われる。
【0058】
そして、カートリッジ10がカートリッジ保持具50に挿入された後、ノズルプレート封止フィルム64の第2の部分68が、カートリッジ保持具50に固定される。例えば、低粘着テープ(又はその他のノズルプレート封止フィルム)の第2の部分68は、
図4と5に示されるように、保持具壁52の外側表面に固定される。
【0059】
このテープの比較的低い粘着性により、場合によっては、第2のテープ70も用いられ、少なくともノズルプレート封止フィルム64の第2の部分68上に貼り付けられてもよい。この第2のテープ70は、少なくとも片側に比較的高粘着性の粘着剤を有するテープであることが好ましい。通常、この状況において、高粘着テープは、保持具壁52の外側表面に固定される場合、1インチあたり1.0lbfより強い粘着力を有することが好ましい。
【0060】
この高粘着性の第2のテープ70は、
図5と6に示されるように、低粘着テープが保持具壁52に固定されるよう、ノズルプレート封止フィルム64の第2の部分68と、カートリッジ保持具壁52の一部にも固定されてもよい。例えば、高粘着性の第2のテープ70は、保持具壁52の外側表面に固定されてもよい。
【0061】
ノズルプレート封止フィルム64とテープ(第2のテープ)70は、カートリッジ保持具50のカートリッジ収納カップ40内のシャフト56への取付け前に、カートリッジ10とカートリッジ保持具50に貼り付けられることが好ましい。
【0062】
或いは、本発明のその他の実施形態において、ノズルプレート封止フィルム64は、テープではなく、異なる種類のフィルムとして提供されてもよい。さらに、このフィルムは、粘着剤の塗布、機械的留め具等により、吐出チップ30のノズルプレートと、カートリッジ保持具50に固定されてもよい。
【0063】
保護テープ又はその他のノズルプレート封止フィルムが上述したようにカートリッジ10に貼り付けられた場合、後のカートリッジ保持具50からのカートリッジ10の取り外しが、テープ又はその他の封止フィルムを自動的に流体吐出チップ30から分離させる利点がある。特に、カートリッジ10が保持具開口54を通じてカートリッジ保持具50から外へ持ち上げられたとき、ノズルプレート封止フィルム64の第2の部分68はカートリッジ保持具50に確実に付着したままとなる。しかし、ノズルプレート封止フィルム64の第1の部分66は、流体吐出チップ30の表面からはがれて分離する。もしカートリッジ10がカートリッジ保持具50から真っ直ぐ上に引き上げられると、流体吐出チップ30から分離する低粘着テープは、約180度の角度で流体吐出チップ30からはがれる。
【0064】
これは、ノズルプレート封止フィルム64が吐出チップ30から約180度の角度ではがれる場合、低粘着テープにより吐出チップ30に働く力、つまり、吐出チップ30を破損させる可能性が最小化されることが分かっていることから、特に望ましい。本発明によると、カートリッジ10がカートリッジ保持具50から取り外される際に、これが自動で達成される。
【0065】
上記のように、カートリッジ10は、場合によって、カートリッジ壁14に取り付けられたフレキシブル相互接続回路36が保持具壁52のうちの1つに隣接して設けられるように、カートリッジ保持具50内に固定されてもよい。或いは、カートリッジ10は、カートリッジ壁14に取り付けられたフレキシブル相互接続回路36が保持具開口54に隣接して設けられるように、カートリッジ保持具50内に固定されてもよい。テープ取り外しの間の吐出チップ30の破損からの保護に関しては、
図3に示されるように、カートリッジ壁14に取り付けられたフレキシブル相互接続回路36が保持具壁52のうちの1つに隣接して設けられるよう、カートリッジ10がカートリッジ保持具50内において方向づけられることが最も好ましい。
【0066】
前述した本発明の好ましい実施形態の説明は、例示および説明を目的として示されている。本発明を、網羅的とする、または開示された形態に限定する意図はない。上記の教示を考慮し、自明な改変または変形例が可能である。本実施形態は、本発明の原理およびその実用的な適用を最も良く表わすため、また、それにより当業者が本発明を様々な実施形態で、そして考えうる特定の用途に適する様々な変形例に用いることが可能となるよう、選択され、説明された。全てのこのような改変と変形例は、公正に、合法的に、かつ公平に権限を与えられた一定の幅に従って解釈される場合に、添付の特許請求の範囲により決定される本発明の範囲内にある。
【符号の説明】
【0067】
10:流体吐出カートリッジ/カートリッジ
12:カートリッジ本体
14:カートリッジ壁
16:カートリッジ蓋
18:カートリッジ底板
20:中空キャビティ
22:流体リザーバ
24:発泡体
26:通気カバー
28:内蓋
30:流体吐出チップ/吐出チップ
32:感圧接着剤
34:流体濾過エレメント
36:フレキシブル相互接続回路
38:収納パッケージ
40:カートリッジ収納カップ
42:カップ底部
44:カップ側壁
46:上部唇領域
48:収納空間
50:カートリッジ保持具
52:保持具壁
54:保持具開口
56:シャフト
58:孔
60:湿気バリアフィルム
62:梱包されたカートリッジ組立体
64:ノズルプレート封止フィルム
66:ノズルプレート封止フィルムの第1の部分
68:ノズルプレート封止フィルムの第2の部分
70:テープ