(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】中空ボール用ゴム組成物及び中空ボール
(51)【国際特許分類】
A63B 39/00 20060101AFI20220928BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20220928BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220928BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220928BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A63B39/00 Z
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/00
C08L21/00
(21)【出願番号】P 2017209398
(22)【出願日】2017-10-30
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 順則
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡明
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 邦夫
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-149958(JP,A)
【文献】特開2006-199899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B39/00
C08K 3/00-3/36
C08K 7/00-7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴムと、無機充填剤とを含んでおり、重合物フィラーを含まず、
上記無機充填剤が、クレー、タルク、マイカ及び珪藻土からなる群から選択される1又は2種以上であり、この無機充填剤の、窒素ガス測定によるBET比表面積が0.2m
2
/g以上100m
2
/g以下であり、平均粒子径D
50
が0.01μm以上50μm以下であり、
JIS K0129に準拠した熱重量分析により、空気雰囲気下で、室温から650℃までの重量減少率TGA
650と、室温から850℃までの重量減少率TGA
850とが測定されるとき、その重量減少率TGA
650が63%以上99%以下であり、その重量減少率TGA
850とTGA
650との差(TGA
850-TGA
650)が、0%以上7%以下である中空ボール用ゴム組成物。
【請求項2】
上記差(TGA
850-TGA
650)を上記TGA
650で除した値[(TGA
850-TGA
650)/TGA
650]が、0.12以下である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
上記基材ゴムが、ブタジエンゴム及び天然ゴムを含んでおり、この基材ゴム中のブタジエンゴムの配合量Bの天然ゴムの配合量Nに対する質量比B/Nが、1.4以下である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
硫黄含有量が0.01質量%以上10質量%以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
上記無機充填剤の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して1質量部以上150質量部以下である請求項1から
4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
炭素系充填剤をさらに含んでいる請求項1から
5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
上記炭素系充填剤が、カーボンブラック、活性炭、グラファイト、グラフェン、フラーレン及びカーボンナノチューブからなる群から選択される請求項
6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
上記基材ゴム100質量部に対する上記炭素系充填剤の配合量が、50質量部以下である請求項
6又は7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
ショアA硬度Haが20以上88以下である請求項1から
8のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
JIS K6251に準拠して得られる破断点伸びEB(%)と、上記硬度Haとの積が、1,000以上100,000以下である請求項
9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
JIS K6258に準拠して得られるトルエン膨潤率SW(%)と、上記硬度Haとの積が、2,500以上50,000以下である請求項
9又は10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
上記中空ボールがテニスボールである請求項1から
11のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項13】
ゴム組成物からなる中空のコアを備えており、
上記ゴム組成物が、基材ゴムと、無機充填剤とを含んでおり、重合物フィラーを含まず、
上記無機充填剤が、クレー、タルク、マイカ及び珪藻土からなる群から選択される1又は2種以上であり、この無機充填剤の、窒素ガス測定によるBET比表面積が0.2m
2
/g以上100m
2
/g以下であり、平均粒子径D
50
が0.01μm以上50μm以下であり、
JIS K0129に準拠した熱重量分析により、空気雰囲気下で、上記ゴム組成物の、室温から650℃までの重量減少率TGA
650と、室温から850℃までの重量減少率TGA
850が測定されるとき、上記重量減少率TGA
650が63%以上99%以下であり、上記重量減少率TGA
850とTGA
650との差(TGA
850-TGA
650)が、0%以上7%以下である中空ボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空ボール用ゴム組成物に関する。詳細には、本発明は、スポーツ等に用いられる中空ボール用ゴム組成物及び中空ボールに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツに用いられる代表的な中空ボールの例として、テニスボールがある。テニスボールは、ゴム組成物が架橋されてなるコアを備えている。このコアは、中空の球体である。硬式テニスに用いられるテニスボールでは、コアの内部に、大気圧よりも40kPaから120kPa高い圧力の圧縮ガスが充填されている。このテニスボールは、加圧テニスボール(プレッシャーボール)とも称される。
【0003】
テニスのプレーでは、反発性能の高いテニスボールが有利である。また、競技用のテニスボールの場合、公平性の観点から、国際テニス連盟により、その外形、重量、反発性能(リバウンド)等が所定範囲内に制限されている。
【0004】
加圧テニスボールでは、大気圧よりも高いコアの内圧により、優れた反発性能が付与される。一方、コアの内圧が大気圧よりも高いことに起因して、充填された圧縮ガスが徐々にコアから漏出する。ガスの漏出によって、コアの内圧が大気圧付近まで減少する場合がある。コアの内圧が減少したテニスボールは、反発性能に劣る。
【0005】
また、プレー中、テニスボールは繰り返し打撃される。打撃されたテニスボールは、高速で伸縮変形する。高速での伸縮変形が繰り返されることにより、コアをなすゴム物性が劣化する。このテニスボールは、反発性能に劣る。適正な反発性能を、長期間維持できるテニスボールが要望されている。
【0006】
特開昭61-143455号公報では、ガスの漏出を防止するための材料として、鱗片状ないし平板状充填剤を配合したゴム材料が提案されている。このゴム材料では、鱗片状又は平板状充填剤がガスの透過を阻害することにより、このゴム材料からなるコアからのガスの漏出が防止されうる。しかし、このゴム材料からなるコアを備えたテニスボールが、繰り返し打撃されたときの耐久性は、十分ではない。
【0007】
特開2011-188877号広報、特開2011-18878号広報及び特開2011-177369号広報では、コアを伸縮しにくいフェルトで被覆したテニスボールが開示されている。これらのテニスボールでは、フェルトによって、打撃時の伸縮変形が抑制されるが、コアをなすゴム組成物の耐久性は、改善されていない。
【0008】
特開昭60-106471号広報では、耐久性向上のために、ゴム組成物に、異なる種類の基材ゴムを配合する検討がなされている。特開平10-323408号広報及び特開2004-16532号広報には、ポリアミド繊維又はナイロン繊維を含むゴム組成物からなるコアを備えたテニスボールが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭61-143455号公報
【文献】特開2011-188877号公報
【文献】特開2011-188878号公報
【文献】特開2011-177369号公報
【文献】特開昭60-106471号公報
【文献】特開平10-323408号公報
【文献】特開2004-16532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開昭60-106471号広報、特開平10-323408号広報及び特開2004-16532号広報に開示されたゴム組成物を得るためには、特殊な製造設備の準備や配合条件の検討が必要となる。また、ポリアミド繊維又はナイロン繊維の配合により、従来のゴム組成物より高価になることに鑑みても、工業的生産への適用が困難である。製造時に、特殊な設備及び高価な材料を要することなく、繰り返し打撃後も、適正な反発性能が維持される中空ボール用ゴム組成物は、未だ提案されていない。
【0011】
本発明の目的は、繰り返し打撃に対する耐久性に優れ、適正な反発性能が長期間維持されうる中空ボール用ゴム組成物及び中空ボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、中空ボールが繰り返し打撃されることによる性能低下が、コアをなすゴム組成物に配合された無機充填剤に起因することを見いだすことにより、本発明を完成した。
【0013】
本発明に係る中空ボール用ゴム組成物は、基材ゴムと、無機充填剤とを含んでいる。JIS K0129に準拠した熱重量分析により、空気雰囲気下で、このゴム組成物の、室温から650℃までの重量減少率TGA650と、室温から850℃までの重量減少率TGA850とが測定されるとき、その重量減少率TGA650は、63%以上99%以下である。重量減少率TGA850とTGA650との差(TGA850-TGA650)は、0%以上7%以下である。
【0014】
好ましくは、差(TGA850-TGA650)をTGA650で除した値[(TGA850-TGA650)/TGA650]は、0.12以下である。
【0015】
好ましくは、この基材ゴムは、ブタジエンゴム及び天然ゴムを含んでいる。好ましくは、この基材ゴム中のブタジエンゴムの配合量Bの天然ゴムの配合量Nに対する質量比B/Nは、1.4以下である。好ましくは、このゴム組成物の硫黄含有量は、0.01質量%以上10質量%以下である。
【0016】
好ましくは、この無機充填剤は、シリカ、クレー、タルク、マイカ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される。好ましくは、無機充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して1質量部以上150質量部以下である。好ましくは、無機充填剤の平均粒子径D50は、0.01μm以上50μm以下である。好ましくは、無機充填剤の、窒素ガス測定によるBET比表面積は、0.2m2/g以上300m2/g以下である。
【0017】
好ましくは、このゴム組成物は、炭素系充填剤をさらに含んでいる。好ましくは、この炭素系充填剤は、カーボンブラック、活性炭、グラファイト、グラフェン、フラーレン及びカーボンナノチューブからなる群から選択される。好ましくは、基材ゴム100質量部に対する炭素系充填剤の配合量は、50質量部以下である。
【0018】
好ましくは、このゴム組成物のショアA硬度Haは、20以上88以下である。好ましくは、このゴム組成物の、JIS K6251に準拠して得られる破断点伸びEB(%)と、硬度Haとの積は、1,000以上100,000以下である。好ましくは、このゴム組成物の、JIS K6258に準拠して得られるトルエン膨潤率SW(%)と、硬度Haとの積は、2,500以上50,000以下である。
【0019】
好ましくは、この中空ボールはテニスボールである。
【0020】
本発明にかかる中空ボールは、ゴム組成物からなる中空のコアを備えている。このゴム組成物は、基材ゴムと、無機充填剤とを含んでいる。JIS K0129に準拠した熱重量分析により、空気雰囲気下で、このゴム組成物の、室温から650℃までの重量減少率TGA650と、室温から850℃までの重量減少率TGA850が測定されるとき、この重量減少率TGA650は63%以上99%以下である。この重量減少率TGA850とTGA650との差(TGA850-TGA650)は、0%以上7%以下である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る中空ボール用ゴム組成物では、熱重量分析により得られる重量減少率TGA650及び差(TGA850-TGA650)を指標として、このゴム組成物における無機充填剤の適正な配合が容易に選択されうる。このゴム組成物からなるコアを備えた中空ボールが繰り返し打撃されるとき、無機充填剤に起因する反発性能の低下が抑制される。この中空ボールでは、適正な反発性能が長期間維持されうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る中空ボールの一部切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る中空ボール2が示された一部切り欠き断面図である。この中空ボール2は、中空のコア4と、このコア4を被覆する2枚のフェルト部6と、この2枚のフェルト部6の間隙に位置するシーム部8とを有している。コア4の厚みは、通常、3mmから4mm程度である。コア4の内部には、圧縮ガスが充填されている。コア4の表面には、2枚のフェルト部6が、接着剤により貼り付けられている。
【0025】
コア4は、ゴム組成物から形成されている。このゴム組成物は、基材ゴムと無機充填剤とを含んでいる。無機充填剤は、多数の粒子からなる。このゴム組成物では、無機充填剤をなす多数の粒子が、基材ゴムを主成分とするマトリックスに分散されている。本願明細書において、基剤ゴムを主成分とするマトリックスを、「ゴム成分」と記載する場合がある。
【0026】
本発明では、JIS K0129に準拠した熱重量分析により、コア4をなすゴム組成物の重量減少率が測定される。詳細には、このゴム組成物の、空気雰囲気下での室温から650℃までの重量減少率TGA650と、室温から850℃までの重量減少率TGA850とが測定される。
【0027】
本願明細書において、重量減少率TGA650及びTGA850の測定には、既知の熱重量測定装置(TGA)が用いられる。具体的には、コア4をなすゴム組成物を、空気雰囲気下(流量60ml/分)で、室温から850℃まで70℃/分で昇温した後、850℃で3分間保持したときの重量変化が、熱天秤により測定され、得られたグラフから、重量減少率TGA650及びTGA850が求められる。
【0028】
このゴム組成物が、室温から650℃まで昇温されるとき、主として、このゴム組成物に含まれる無機成分以外のゴム成分が、熱分解される。従って、熱重量分析により得られる重量減少率TGA650には、無機成分以外のゴム成分の熱分解の程度が反映される。
【0029】
本発明に係るゴム組成物の重量減少率TGA650は、63%以上99%以下である。TGA650が63%以上99%以下であるゴム組成物からなるコア4を備えた中空ボール2は、反発性能に優れ、かつ打撃時の衝撃に耐えうる強度を有している。メカニズムの詳細は不明であるが、TGA650が63%以上99%以下のゴム組成物では、打撃時における、無機成分によるゴム成分に対する負荷が低減されることにより、反発性能の低下が抑制されると考えられる。
【0030】
耐衝撃性の観点から、重量減少率TGA650は、67%以上が好ましく、72%以上がより好ましい。反発性能の観点から、重量減少率TGA650は、97%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
【0031】
このゴム組成物に含まれる無機成分の多くは、無機充填剤である。前述したとおり、無機充填剤は、ゴム成分に分散している。通常、無機充填剤は硬質であり、ゴム成分は軟質である。本発明者らが得た知見によると、中空ボール2が打撃されて、コア4が変形するとき、硬質な無機充填剤と、軟質なゴム成分との界面に、打撃時の応力が集中する。この応力の集中によって生じる非可逆的な界面破壊により、無機充填剤とゴム成分との密着性が低下して、中空ボール2の反発性能が劣化すると推測される。さらに、本発明者らは、鋭意研究の結果、打撃時の非可逆的な界面破壊が、このゴム組成物を650℃から850℃に昇温した時に生じる熱分解反応に相当する化学反応により生起されることを見いだした。
【0032】
このゴム組成物を650℃から850℃に昇温した時に生じる熱分解反応の程度は、このゴム組成物の650℃から850℃までの重量減少率を指標として評価することができる。打撃時の界面破壊低減の観点から、650℃から850℃までの重量減少率が小さいゴム組成物が好ましい。
【0033】
650℃から850℃までの重量減少率は、このゴム組成物の、室温から850℃までの重量減少率TGA850と、熱重量減少率TGA650との差(TGA850-TGA650)である。本発明に係るゴム組成物において、差(TGA850-TGA650)は0%以上7%以下である。差(TGA850-TGA650)が0%以上7%以下であるゴム組成物から形成されたコア4では、打撃されたときの無機充填剤とゴム成分との界面破壊が低減される。このコア4を備えた中空ボール2では、繰り返し打撃による反発性能の低下が抑制される。この観点から、差(TGA850-TGA650)は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下が特に好ましく、理想的にはゼロである。
【0034】
本発明に係るゴム組成物において、無機充填剤の種類は特に限定されず、重量減少率TGA650及び差(TGA850-TGA650)が前述の数値範囲を満たすように、適宜選択されうる。このゴム組成物に配合される無機充填剤として、例えば、クレー、珪藻土、マイカ、タルク、ベントナイト、ハロサイト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ノントロナイト、バーミキュライト、イライト、アロフェン、シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。好ましくは、シリカ、クレー、タルク、マイカ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される1又は2種以上である。より好ましくは、クレー、タルク、マイカ及び珪藻土からなる群から選択される1又は2種以上である。
【0035】
中空ボール2が打撃されたときに生じる界面破壊の種類及び程度は、無機充填剤の種類によって異なる。換言すれば、このコア4をなすゴム組成物を650℃から850℃に昇温した時に生じる熱分解反応の種類及び程度は、無機充填剤の種類によって異なる。
【0036】
例えば、炭酸カルシウムCaCO3が配合されたゴム組成物では、親油性である炭酸部位を介して、炭酸カルシウムとゴム成分とが密着する。このゴム組成物からなるコア4を備えた中空ボール2が打撃されるとき、炭酸カルシウムの表面において脱炭酸反応が生じて、酸化カルシウムCaOが生成される。酸化カルシウムは空気中の水分と反応して、水酸化カルシウムCa(OH)2に変化する。水酸化カルシウムに含まれる水酸基は親水性である。親水性である水酸基と、ゴム成分との密着性は低い。無機充填剤とゴム成分との密着性の低下により、中空ボール2の反発性能が低下する。
【0037】
例えば、その表面に多数の水分子を有するシリカの場合、打撃によって、シリカ表面から水分子が放出されるが、シリカは速やかに空気中の水分を吸着してその表面状態を回復する。そのため、シリカとゴム成分との界面状態は、打撃により変化しにくい。しかし、シリカとともに炭酸カルシウムが配合されたゴム組成物では、シリカから放出された水分子により水酸化カルシウムの生成が促進され、中空ボール2の反発性能が低下する。
【0038】
従来、打撃されたときにゴム組成物に対して異なる影響を及ぼす種々の無機充填剤を、適正に配合するためには、数多くの試行錯誤を繰り返す必要があった。しかし、本発明に係るゴム組成物によれば、複数の種類の無機充填剤を配合する場合においても、重量減少率TGA650及び差(TGA850-TGA650)を指標とすることにより、反発性能に優れ、かつ繰り返し打撃に対する耐久性の高い中空ボール2を容易に得ることができる。この中空ボール2では、適正な反発性能が、長期間維持されうる。
【0039】
繰り返し打撃に対する耐久性の観点から、このゴム組成物の、差(TGA850-TGA650)を重量減少率TGA650で除した値[(TGA850-TGA650)/TGA650]は、0.12以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。
この値[(TGA850-TGA650)/TGA650]の下限値はゼロであり、重量減少率とTGA850とTGA650が等い場合、即ち、650℃から850℃への昇温時に重量減少が生じない場合を意味する。
【0040】
本発明の効果が阻害されない限り、重量減少率TGA850は特に限定されないが、打撃時の界面破壊低減の観点から、97%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、80%以下が特に好ましい。
【0041】
無機充填剤の平均粒子径D50は、重量減少率TGA650及び差(TGA850-TGA650)が前述の数値範囲を満たすように、選択される無機充填剤の種類に応じて、適宜設定される。打撃時の界面破壊低減の観点から、無機充填剤の平均粒子径D50は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.10μm以上が特に好ましい。ゴム成分との密着性の観点から、無機充填剤の平均粒子径D50は、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。なお、本願明細書において、平均粒子径D50(μm)とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、セイシン企業社製のLMS-3000)によって測定される粒度分布において、小径側から累積して50体積%となる平均粒子径を意味する。
【0042】
無機充填剤の窒素ガス測定によるBET比表面積は、重量減少率TGA650及び差(TGA850-TGA650)が前述の数値範囲を満たすように、選択される無機充填剤の種類に応じて、適宜設定される。打撃時の界面破壊低減の観点から、無機充填剤の窒素ガス測定によるBET比表面積は、0.2m2/g以上が好ましく、0.5m2/g以上がより好ましく、1.0m2/g以上が特に好ましい。ゴム成分との密着性の観点から、無機充填剤のBET比表面積は、300m2/g以下が好ましく、100m2/g以下がより好ましく、50m2/g以下が特に好ましい。無機充填剤のBET比表面積は、JIS Z8830に準拠した方法により、200℃で1時間加熱真空脱気により前処理したサンプルについて、窒素濃度5%、10%、20%、30%の混合ヘリウムを用いて、温度77K(液体窒素温度)での窒素吸着量をそれぞれ測定して得られる測定値をBET多点法で解析することにより求められる。
【0043】
本発明に係るゴム組成物において、無機充填剤の配合量は、重量減少率TGA650及びその差(TGA850-TGA650)が前述した範囲を満たすように適宜調整される。反発性能の観点から、無機充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が特に好ましい。打撃時の界面破壊低減の観点から、無機充填剤の配合量は、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、70質量部以下が特に好ましい。
【0044】
好ましくは、このゴム組成物は、無機充填剤とともに炭素系充填剤を含んでいる。炭素系充填剤とは、炭素原子を主構成成分とする物質を意味する。好ましくは、その構成成分の90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上が炭素原子である充填剤を意味する。本願明細書において、無機充填剤の概念に、炭素系充填剤は含まれない。
【0045】
炭素系充填剤は、主として、硬さ調整剤として配合される。炭素系充填剤により硬さが適正に調整されたゴム組成物は、中空ボール2の反発性能向上に寄与する。
【0046】
好ましくは、炭素系充填剤は、予め基剤ゴムに配合されている。基材ゴムと炭素系充填剤との配合物は、マスターバッチと称される。このマスターバッチにおいて、炭素系充填剤と基材ゴムとが略均一に混合されている。このマスターバッチに無機充填剤を配合して得られるゴム組成物では、ゴム成分における無機充填剤の分散性が向上する。無機充填剤の分散性の向上により、中空ボール2の反発性能がさらに向上する。このゴム組成物からなるコア4を備えた中空ボール2では、無機充填剤の界面破壊に起因する物性低下が抑制される。
【0047】
本発明の効果が阻害されない限り、炭素系充填剤の種類は特に限定されない。例えば、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、グラファイト、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。2種以上の炭素系充填剤を含んでもよい。
【0048】
反発性能の観点から、好ましい炭素系充填剤は、カーボンブラック、活性炭、グラファイト、グラフェン、フラーレン及びカーボンナノチューブからなる群から選択される。より好ましい炭素系充填剤は、グラファイト及びグラフェンである。
【0049】
通常、グラフェンは、多数の炭素原子が平面状に結合した単層構造をなしており、グラフェンシートとも称される。グラフェンが、グラフェンシートの積層体又は集合体を含んでもよい。グラフェンシートの積層数は、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下が特に好ましい。
【0050】
本発明に係るゴム組成物において、グラフェンの製造方法は特に限定されない。例えば、グラファイト、グラファイト酸化物等から、剥離法、超音波処理法、化学蒸着法、エピタキシャル成長法等、既知の方法により得られてもよい。本発明の目的が達成される限り、市販されているグラフェンを用いてもよい。具体的には、XG Sciences社の商品名「xGnP-M-5」、イーエムジャパン社の商品名「G-12」、Graphene Laboratories社の商品名「GNP-C1」、アイテック社の商品名「iGrafen」等が例示される。
【0051】
グラファイトは、複数のグラフェンシートが、1層毎に少しずつずれた状態で積層してなる炭素材料であり、黒鉛とも称される。グラファイトの種類及び製造方法は特に限定されず、例えば、土状黒鉛、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、半鱗状黒鉛等の天然黒鉛、天然黒鉛を加工して得られる膨張黒鉛及び膨張化黒鉛、無定型炭素を熱処理して得られる人造黒鉛等が挙げられる。
【0052】
カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック等が例示される。活性炭としては、粉末活性炭、粒状活性炭、破砕炭、顆粒炭等が例示される。カーボンファイバーとしては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、植物性炭素繊維等が例示される。カーボンファイバーは、長繊維タイプであってもよく、短繊維タイプであってもよい。
【0053】
カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ(Single-walled carbon nanotube;SWNT)であってもよく、多層カーボンナノチューブ(Multi-walled carbon nanotube;MWNT)であってもよく、それらの混合物であってもよい。また、そのカーボンナノチューブは、アームチェア型構造であってもよく、ジグザグ型構造であってもよく、らせん型構造であってもよく、それらの混合物であってもよい。
【0054】
本願明細書において、フラーレンとは、球状構造の炭素分子を意味し、C60フラーレンには限定されない。本発明の効果が阻害されない限り、複数のC60フラーレンが結合してなるフラーレンポリマーが用いられてもよい。
【0055】
反発性能の観点から、炭素系充填剤の平均粒子径D50は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.05μm以上が特に好ましい。ゴム成分との密着性の観点から、炭素系充填剤の平均粒子径D50は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。炭素系充填剤の平均粒子径D50(μm)は、無機充填剤と同様に測定される。炭素系充填剤がグラフェン及びグラファイトの場合、平均粒子径D50は1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。グラフェン及びグラファイトの平均粒子径D50は50μm以下が好ましい。
【0056】
反発性能の観点から、炭素系充填剤の窒素ガス測定によるBET比表面積は、1m2/g以上が好ましく、5m2/g以上がより好ましく、10m2/g以上が特に好ましい。基材ゴムとの混合性の観点から、炭素系充填剤のBET比表面積は、500m2/g以下が好ましく、400m2/g以下がより好ましく、300m2/g以下が特に好ましい。炭素系充填剤のBET比表面積は、無機充填剤と同様に測定される。
【0057】
本発明に係るゴム組成物において、炭素系充填剤の配合量は、重量減少率TGA650及びその差(TGA850-TGA650)が前述した範囲を満たすように適宜調整される。反発性能の観点から、炭素系充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。打撃時の界面破壊低減の観点から、炭素系充填剤の配合量は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
【0058】
好適な基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体及びアクリルゴムが例示される。より好ましい基材ゴムは、天然ゴム及びポリブタジエンである。これらのゴムの2種以上が併用されてもよい。
【0059】
天然ゴムとポリブタジエンとが併用される場合、打球感の観点から、天然ゴムの配合量Nに対するポリブタジエンゴムの配合量Bの質量比B/Nは、1.4以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.4以下が特に好ましい。基材ゴムの全量が、天然ゴムであってもよい。
【0060】
このゴム組成物は、さらに、加硫剤、加硫促進剤及び加硫助剤を含みうる。加硫剤として、例えば、粉末硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄等の硫黄;モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等の硫黄化合物が挙げられる。加硫剤の配合量は、その種類に応じて調整されるが、反発性能の観点から、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。加硫剤の配合量は5.0質量部以下が好ましい。
【0061】
好適な加硫促進剤として、例えば、グアニジン系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、チウラム系化合物、チオウレア系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、アルデヒド-アミン系化合物、アルデヒド-アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、キサンテート系化合物等が挙げられる。反発性能の観点から、加硫促進剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましい。加硫促進剤の配合量は、6.0質量部以下が好ましい。
【0062】
加硫助剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸、亜鉛華等の金属酸化物、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が例示される。本発明の効果を阻害しない範囲で、ゴム組成物が、さらに老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、加工助剤、着色剤等の添加剤を含んでもよい。
【0063】
好ましくは、このゴム組成物は硫黄を含んでいる。ゴム組成物中に含まれる硫黄は、架橋構造の形成に寄与しうる。ゴム組成物の架橋密度は、このゴム組成物から得られる中空ボール2の反発性能及び打球感に影響する。反発性能の観点から、このゴム組成物の硫黄含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が特に好ましい。打球感の観点から、硫黄含有量は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下が特に好ましい。本願明細書において、ゴム組成物の硫黄含有量は、第17改正日本薬局方、一般試験法に記載の酸素フラスコ燃焼法に準じて測定される。なお、このゴム組成物に含まれる硫黄は、単体としての硫黄であってもよく、硫黄化合物に含まれる硫黄原子でもよい。この硫黄が、加硫剤又は加硫促進剤に由来するものであってもよい。
【0064】
反発性能の観点から、このゴム組成物のショアA硬度Haは、20以上が好ましく、40以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。打球感の観点から、硬度Haは、88以下が好ましく、85以下がより好ましく、80以下が特に好ましい。硬度Haは、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたタイプAデュロメータによって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。
【0065】
反発性能の観点から、このゴム組成物の破断点伸びEB(%)とショアA硬度Haとの積(EB×Ha)は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、5,000以上が特に好ましい。打球感の観点から、積(EB×Ha)は、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましく、50,000以下が特に好ましい。
【0066】
ゴム組成物の破断点伸びEBは、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」の記載に準拠して測定される。反発性能の観点から、このゴム組成物の破断点伸びEBは、50%以上が好ましく、100%以上がより好ましく、300%以上が特に好ましい。打球感の観点から、破断点伸びEBは、700%以下が好ましい。
【0067】
反発性能及び打球感の両立の観点から、このゴム組成物のトルエン膨潤率SW(%)とショアA硬度Haとの積(SW×Ha)は、2,500以上が好ましく、4,000以上がより好ましく、6,000以上が特に好ましい。同様の観点から、積(SW×Ha)は、50,000以下が好ましく、40,000以下がより好ましく、30,000以下が特に好ましい。
【0068】
ゴム組成物のトルエン膨潤率SWは、JIS K6258「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-耐液性の求め方」の記載に準じて測定される。トルエン膨潤率SWは、ゴム組成物の架橋密度の指標である。打球感の観点から、トルエン膨潤率SWは80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が特に好ましい。反発性能の観点から、好ましいトルエン膨潤率は、300%以下である。
【0069】
本発明の目的が達成される限り、このゴム組成物を製造する方法は、特に限定されない。例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等既知の混練機に、基材ゴムと、無機充填剤と、適宜選択された他の添加剤等を投入して混練して得られる混練物を加熱及び加圧することにより、このゴム組成物が製造されてもよい。無機充填剤と炭素系充填剤とが併用される場合、前述の混練機にて、基材ゴムと炭素系充填剤とを含むマスターバッチを作製し、このマスターバッチに、無機充填剤と適宜選択された他の添加剤等を投入して得られる混練物を、加熱及び加圧することにより、このゴム組成物が製造されてもよい。なお、混練条件及び加硫条件は、ゴム組成物の配合により選択される。好ましい混練温度は50℃以上180℃以下である。好ましい加硫温度は、140℃以上180℃以下である。加硫時間は2分以上60分以下が好ましい。
【0070】
このゴム組成物を用いて、中空ボール2を製造する方法は、特に限定されない。例えば、中空ボール2がテニスボールの場合、このゴム組成物を所定の金型中で加硫成形することにより、半球状のハーフシェル2個を形成する。この2個のハーフシェルを、その内部にアンモニウム塩及び亜硝酸塩を含む状態で、貼り合わせた後、圧縮成形することにより、中空の球状体であるコア4を形成する。コア4の内部では、アンモニウム塩及び亜硝酸塩の化学反応により窒素ガスが発生する。この窒素ガスにより、コア4の内圧が高められる。次に、予め、ダンベル状に裁断し、その断面にシーム糊を付着させたフェルト部6を、このコア4の表面に貼り合わせることにより、中空ボール2が得られる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0072】
[実施例1]
80質量部の天然ゴム(商品名「SMR CV60」)、20質量部のポリブタジエンゴム(JSR社の商品名「BR01」)、30質量部のクレー(イメリス社の商品名「ECKALITE 120」)、30質量部のタルク(イメリス社の商品名「Mistron HAR」)、5質量部の酸化亜鉛(正同化学社の商品名「酸化亜鉛2種」)及び1質量部のステアリン酸(日油社の商品名「つばき」)をバンバリーミキサーに投入して、90℃で5分間混練した。得られた混練物に、3.6質量部の硫黄(三新化学社の商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有)、1質量部の加硫促進剤DPG(三新化学社の商品名「サンセラーD」)、1質量部の加硫促進剤CZ(大内新興化学社の商品名「ノクセラーCZ」)及び1.88質量部の加硫促進剤DM(大内新興化学社の商品名「ノクセラーDM」)を添加して、オープンロールを用いて50℃で3分間混練することにより、実施例1のゴム組成物を得た。
【0073】
[実施例2-9及び17並びに比較例1-6]
無機充填剤の種類及び配合量を表1-5に示されるものに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2-9、17及び18並びに比較例1-5のゴム組成物を得た。
【0074】
[実施例10]
80質量部の天然ゴム(商品名「SMR CV60」)、20質量部のポリブタジエンゴム(JSR社の商品名「BR01」)及び15質量部のカーボンブラック(キャボットジャパン社の商品名「ショウブラックN330」)をバンバリーミキサーに投入して、90℃で5分間混練して、マスターバッチを得た。次いで、このマスターバッチに、5質量部のシリカ(東ソー・シリカ社の商品名「ニプシールVN3」) 、56質量部のクレー(イメリス社の商品名「ECKALITE120」)、5質量部の酸化亜鉛(正同化学社の商品名「酸化亜鉛2種」、扁平度DLi1)及び0.5質量部のステアリン酸(日油社の商品名「つばき」)を添加し、90℃でさらに5分間混練した。得られた混練物に、3.6質量部の硫黄(三新化学社の商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有)、1質量部の加硫促進剤DPG(三新化学社の商品名「サンセラーD」)、1質量部の加硫促進剤CZ(大内新興化学社の商品名「ノクセラーCZ」)及び1.88質量部の加硫促進剤DM(大内新興化学社の商品名「ノクセラーDM」)を添加して、オープンロールを用いて50℃で3分間混練することにより、実施例10のゴム組成物を得た。
【0075】
[実施例11-16]
無機充填剤及び炭素系充填剤の種類及び配合量を表3-4に示されるものに変更した以外は実施例10と同様にして、実施例11-16のゴム組成物を得た。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
表1-5に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
SMR CV60:天然ゴム
BR01:JSR社のポリブタジエンゴム
シリカ:東ソー・シリカ社の商品名「ニプシールVN3」、平均粒子径(D50)20μm、BET比表面積200m2/g
クレー:イメリス社のカオリンクレー、商品名「ECKALITE120」、平均粒子径(D50)4μm、BET比表面積18m2/g
珪藻土:昭和化学工業社の商品名「Radiolite 500」、平均粒子径(D50)35μm、BET比表面積8m2/g
マイカ:ヤマグチマイカ社の商品名「SYA-21」、平均粒子径(D50)27μm、BET比表面積2m2/g
タルク:イメリス社の商品名「Mistron HAR」、平均粒子径(D50)6.7μm、BET比表面積20m2/g
炭酸マグネシウム:神島化学工業社の商品名「金星」、平均粒子径(D50)6μm、BET比表面積35m2/g
炭酸カルシウム:白石カルシウム社の商品名「BF300」、平均粒子径(D50)8μm、BET比表面積0.27m2/g
酸化亜鉛:正同化学社の商品名「酸化亜鉛2種」、平均粒子径(D50)0.6μm、BET比表面積4m2/g
カーボンブラック:キャボットジャパン社の商品名「ショウブラックN330」、平均粒子径(D50)0.03μm、BET比表面積79m2/g
グラファイト:イメリス社の商品名「SFG44」、平均粒子径(D50)49μm、BET比表面積5m2/g
グラフェン:XG Sciences社の商品名「xGnP-M-5」、平均粒子径(D50)5μm、BET比表面積150m2/g
ステアリン酸:日油社の商品名「つばき」
硫黄:三新化学社の不溶性硫黄、商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有
加硫促進剤DPG:三新化学社の1,3-ジフェニルグアニジン、商品名「サンセラーD」
加硫促進剤CZ:大内新興化学社のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、商品名「ノクセラーCZ」
加硫促進剤DM:大内新興化学社のジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、商品名「ノクセラーDM」
【0082】
[熱重量分析]
実施例1-17及び比較例1-6のゴム組成物をそれぞれモールドに投入して、160℃で2分間、プレス加硫することにより、厚さ2mm、幅4mm、長さ30mmのゴムシートを得た。各ゴムシートから試験片を採取し、JIS K0129の規定に準拠して、熱重量分析を行なった。試験装置には、熱重量分析装置(TAインスツルメント社のTGA500)を使用し、空気雰囲気下(流量60ml/分)で、室温から850℃まで70℃/分で昇温した後、850℃で3分間保持したときの、試験片の重量変化を測定した。室温から650℃までの重量減少率及び室温から850℃までの重量減少率が、それぞれTGA650及びTGA850として、下記表6-10に示されている。
【0083】
[硫黄含有量測定]
実施例1-17及び比較例1-6のゴム組成物の硫黄含有量を、第17改正日本薬局方、一般試験法に記載の酸素フラスコ燃焼法に準じて測定した。各ゴム組成物10mgを燃焼させた後、合計55mLのメタノールを添加し、次いで0.005mol/Lの過塩素酸溶液20mLを正確に添加した。10分間放置して得られた溶液を、イオンクロマトグラフィー(島津製作所製のHIC-SP)を用いて測定することにより、硫黄含有量を定量した。得られた硫黄含有量(wt.%)が、下記表6-10に示されている
【0084】
[硬度]
実施例1-17及び比較例1-6のゴム組成物をそれぞれモールドに投入して、160℃で2分間、プレス加硫することにより、厚さ2mm、幅4mm、長さ30mmの試験片3枚を準備し、各試験片を23℃の温度下で2週間保管した。その後、「ASTM-D 2240-68」の規定に準拠して、それぞれ3枚に重ね合わせた試験片に、タイプAデュロメータを装着した自動硬度計(前述の「デジテストII」)を押し付けることにより硬度を測定した。得られたショアA硬度がHaとして、下記表6-10に示されている。
【0085】
[破断点伸び]
実施例1-17及び比較例1-6のゴム組成物をそれぞれモールドに投入して、160℃で2分間、プレス加硫することにより、厚さ2mmの3号ダンベル型試験片を作製した。JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、室温下で引張試験を実施し、各試験片の破断点伸びを測定した。得られた測定値がEB(%)として、下記表6-10に示されている。
【0086】
[トルエン膨潤度]
実施例1-17及び比較例1-6のゴム組成物をそれぞれモールドに投入して、160℃で2分間、プレス加硫することにより、厚さ0.5mm、長さ10mm、幅5mmの試験片を準備した。各試験片を、室温下でトルエンに24時間浸漬し、その浸漬前後の試験片の質量変化から、トルエン膨潤度(質量変化率(%)=浸漬後の質量/浸漬前の質量)を算出した。得られたトルエン膨潤度がSW(%)として、下記表6-10に示されている。
【0087】
[テニスボールの製造]
実施例1と同様にして得た未加硫のゴム組成物を、モールドに投入して、150℃で4分間加熱することにより、2枚のハーフシェル(厚さ3.2mm±0.4mm)を形成した。1枚のハーフシェルに塩化アンモニウム、亜硝酸ナトリウム及び水を投入した後、他のハーフシェルと接着し、150℃で4分間加熱することにより、球状のコアを形成した。このコアの表面に、その断面にシーム糊を付着させたフェルト部2枚を貼り合わせることにより、テニスボールを製造した。コアの内圧は、180kPaであった。同様に、実施例2-17及び比較例1-6のゴム組成物からなるコアをそれぞれ備えたテニスボールを製造した。
【0088】
[コンプレッション測定]
実施例2-17及び比較例1-6について得られたテニスボールを20±2℃で24時間保存した後、国際テニス連盟の規定に準拠して、DF値(フォワードデフォメーション値)を測定した。具体的には、テニスボールの中心を通って互いに直交する3つの方向(X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向)から、各3回、1インチ圧縮することにより、コンディショニングをおこなって残留応力を除去した。その後、テニスボールに80.07N荷重をかけたときの変形量(mm)を測定した。測定時の温度は、25℃である。X軸、Y軸及びZ軸の3方向から荷重したときの変形量をそれぞれ測定して、その平均値を算出した。その後、同じテニスボールをハンマリング試験機で100回打撃した後、再度、DF値の測定を行なった。ハンマリング試験前のDF値(mm)がDF1として、ハンマリング試験後のDF値(mm)がDF2として、それぞれ、下記表6-10に示されている。DF1に対するDF2の比が、変化率(%)として下記表6-10に示されている。
【0089】
[耐久性評価]
コンプレッション測定で得られた変化率(%)を指標として、以下の判定基準により、テニスボールの耐久性を評価した。この結果が、下記表6-10に示されている。
S:5.0%未満
A:5.0%以上15.0%未満
B:15.0%以上25.0%未満
C:20.0%以上
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
表6-10に示されるように、実施例のテニスボールは、比較例のテニスボールに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明されたゴム組成物は、圧縮ガスが充填された種々の中空ボールの製造に適用されうる。
【符号の説明】
【0097】
2・・・中空ボール
4・・・コア
6・・・フェルト部
8・・・シーム部