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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20220928BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20220928BHJP
   A47C 1/024 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/22
A47C1/024
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017226007
(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公開番号】P2019093960
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嵐 真人
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 治
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047562(WO,A1)
【文献】特開2016-049797(JP,A)
【文献】特表2011-513141(JP,A)
【文献】特開2017-30496(JP,A)
【文献】特開2015-67144(JP,A)
【文献】特開2007-301077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/22
A47C 1/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックフレームおよびクッションフレームを有するシートフレームと、
所定の回動軸を中心にして、前記クッションフレームに対する前記バックフレームの回動を可能とするリクライナとを備え、
前記シートフレームおよび前記リクライナのいずれか一方には、前記回動軸の軸周りに配置される貫通孔が形成され、
前記シートフレームおよび前記リクライナのいずれか他方は、前記回動軸の軸方向に突出し、前記貫通孔に嵌合される突出部を有し、さらに、
前記回動軸から見た場合の前記貫通孔の外周側の縁に沿って延びる外周部と、前記回動軸から見た場合の前記貫通孔の内周側の縁に沿って延びる内周部と、前記回動軸の周方向における前記貫通孔の端部側の縁に沿って延び、前記外周部および前記内周部を接続する周端部とを有し、レーザー溶接を用いて、前記シートフレームおよび前記リクライナを接合してなる接合部を備え
前記貫通孔は、前記回動軸の半径方向において一定の幅を有しながら、前記回動軸を中心に円弧状に延びる開口形状を有し、
前記外周部は、前記貫通孔よりも前記回動軸の半径方向外側において、前記回動軸を中心に円弧状に延び、前記内周部は、前記回動軸の半径方向において、前記貫通孔を挟んで前記外周部と対向して配置され、前記貫通孔よりも前記回動軸の半径方向内側において、前記回動軸を中心に円弧状に延び、前記周端部は、前記外周部および前記内周部の間において半円弧状に延びる、乗物用シート。
【請求項2】
前記シートフレームおよび前記リクライナのいずれか一方には、前記貫通孔として、前記回動軸の周方向において、互いに間隔を設けて配置される第1貫通孔および第2貫通孔が形成され、
前記シートフレームおよび前記リクライナのいずれか他方は、前記突出部として、前記第1貫通孔に嵌合される第1突出部と、前記第2貫通孔に嵌合される第2突出部とを有し、
前記接合部は、
前記外周部、前記内周部および前記周端部として、前記第1貫通孔の縁に沿って延びる第1外周部、第1内周部および第1周端部を有する第1溶接ラインと、
前記外周部、前記内周部および前記周端部として、前記第2貫通孔の縁に沿って延びる第2外周部、第2内周部および第2周端部を有する第2溶接ラインと、
前記第1溶接ラインおよび前記第2溶接ラインを接続する中間溶接ラインとを含み、
前記第1溶接ライン、前記中間溶接ラインおよび前記第2溶接ラインは、連続的に線状に延びる、請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第1周端部は、前記回動軸の周方向において、前記中間溶接ラインとは反対側の前記第1貫通孔の端部側に設けられ、
前記第2周端部は、前記回動軸の周方向において、前記中間溶接ラインとは反対側の前記第2貫通孔の端部側に設けられる、請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記中間溶接ラインは、前記第1外周部および前記第2外周部を接続する、請求項2または3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記周端部は、前記外周部および前記内周部の間において湾曲しながら延びる、請求項1から4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-30496号公報(特許文献1)に開示された乗物用シートは、バックフレームおよびクッションフレームを有するシートフレームと、バックフレームの背凭れ角度を調節するためのリクライナとを備える。バックフレームの左右両側のサイドフレームが、リクライナを介して、クッションフレームの左右両側の後端部に配設されたリクライニングプレートに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-30496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に開示されるように、リクライナを備える乗物用シートが知られている。このような乗物用シートにおいて、乗物が前方または後方から衝突された場合など、乗物に対して外部から衝撃が加えられる場合がある。この場合、リクライナに対して、リクライナにおける回動軸周りに過大なモーメントが入力されるため、シートフレームおよびリクライナ間の接合強度を十分に高める必要がある。
【0005】
一方、シートフレームおよびリクライナ間の接合にアーク溶接を用いた場合、アーク溶接の範囲を広げると、ビードの体積が増大することになる。この場合、シートフレームおよびリクライナ間の接合強度は向上するものの、乗物用シートの重量が増大してしまう。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、シート重量の増大を抑えつつ、外部からの衝撃に対するシートフレームおよびリクライナ間の接合の耐性を、十分に高めることが可能な乗物用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の1つの局面に従った乗物用シートは、バックフレームおよびクッションフレームを有するシートフレームと、所定の回動軸を中心にして、クッションフレームに対するバックフレームの回動を可能とするリクライナとを備える。シートフレームおよびリクライナのいずれか一方には、回動軸の軸周りに配置される貫通孔が形成される。シートフレームおよびリクライナのいずれか他方は、回動軸の軸方向に突出し、貫通孔に嵌合される突出部を有する。乗物用シートは、レーザー溶接を用いて、シートフレームおよびリクライナを接合してなる接合部をさらに備える。接合部は、回動軸から見た場合の貫通孔の外周側の縁に沿って延びる外周部と、回動軸から見た場合の貫通孔の内周側の縁に沿って延びる内周部と、回動軸の周方向における貫通孔の端部側の縁に沿って延び、外周部および内周部を接続する周端部とを有する。貫通孔は、回動軸の半径方向において一定の幅を有しながら、回動軸を中心に円弧状に延びる開口形状を有する。外周部は、貫通孔よりも回動軸の半径方向外側において、回動軸を中心に円弧状に延び、内周部は、回動軸の半径方向において、貫通孔を挟んで外周部と対向して配置され、貫通孔よりも回動軸の半径方向内側において、回動軸を中心に円弧状に延び、周端部は、外周部および内周部の間において半円弧状に延びる。
この発明の別の局面に従った乗物用シートは、バックフレームおよびクッションフレームを有するシートフレームと、所定の回動軸を中心にして、クッションフレームに対するバックフレームの回動を可能とするリクライナとを備える。シートフレームおよびリクライナのいずれか一方には、回動軸の軸周りに配置される貫通孔が形成される。シートフレームおよびリクライナのいずれか他方は、回動軸の軸方向に突出し、貫通孔に嵌合される突出部を有する。乗物用シートは、レーザー溶接を用いて、シートフレームおよびリクライナを接合してなる接合部をさらに備える。接合部は、回動軸から見た場合の貫通孔の外周側の縁に沿って延びる外周部と、回動軸から見た場合の貫通孔の内周側の縁に沿って延びる内周部と、回動軸の周方向における貫通孔の端部側の縁に沿って延び、外周部および内周部を接続する周端部とを有する。
【0008】
このように構成された乗物用シートによれば、接合部に周端部を設けることによって、リクライナに対してその回動軸周りに過大なモーメントが入力された場合であっても、接合部に応力集中が生じることを防止できる。これにより、外部からの衝撃に対するシートフレームおよびリクライナ間の接合の耐性を十分に高めることができる。この際、シートフレームおよびリクライナ間の接合にレーザー溶接が用いられているため、接合部に、外周部、内周部および周端部を設けたにもかかわらず、シート重量が増大することを抑制できる。
【0009】
また好ましくは、シートフレームおよびリクライナのいずれか一方には、貫通孔として、回動軸の周方向において、互いに間隔を設けて配置される第1貫通孔および第2貫通孔が形成される。シートフレームおよびリクライナのいずれか他方は、突出部として、第1貫通孔に嵌合される第1突出部と、第2貫通孔に嵌合される第2突出部とを有する。接合部は、第1溶接ラインと、第2溶接ラインと、中間溶接ラインとを含む。第1溶接ラインは、外周部、内周部および周端部として、第1貫通孔の縁に沿って延びる第1外周部、第1内周部および第1周端部を有する。第2溶接ラインは、外周部、内周部および周端部として、第2貫通孔の縁に沿って延びる第2外周部、第2内周部および第2周端部を有する。中間溶接ラインは、第1溶接ラインおよび第2溶接ラインを接続する。第1溶接ライン、中間溶接ラインおよび第2溶接ラインは、連続的に線状に延びる。
【0010】
このように構成された乗物用シートによれば、第1溶接ライン、中間溶接ラインおよび第2溶接ラインが、連続的に線状に延びるため、レーザー溶接時の作業効率を向上させることができる。
【0011】
また好ましくは、第1周端部は、回動軸の周方向において、中間溶接ラインとは反対側の第1貫通孔の端部側に設けられる。第2周端部は、回動軸の周方向において、中間溶接ラインとは反対側の第2貫通孔の端部側に設けられる。
【0012】
このように構成された乗物用シートによれば、リクライナに対してその回動軸周りに過大なモーメントが入力された場合に、第1貫通孔および第2貫通孔が並ぶ回動軸の周方向の両端において、接合部に応力集中が生じることを防止できる。
【0013】
また好ましくは、中間溶接ラインは、第1外周部および第2外周部を接続する。
このように構成された乗物用シートによれば、リクライナにおける回動軸周りのモーメントがより大きく作用する第1外周部および第2外周部において、溶接ラインの終端が存在しないため、外部からの衝撃に対するバックフレームおよびリクライナの接合の耐性をさらに高めることができる。
【0014】
また好ましくは、周端部は、外周部および内周部の間において湾曲しながら延びる。
このように構成された乗物用シートによれば、リクライナに対してその回動軸周りに過大なモーメントが入力された場合に、接合部に応力集中が生じることをより効果的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、この発明に従えば、シート重量の増大を抑えつつ、外部からの衝撃に対するシートフレームおよびリクライナ間の接合の耐性を、十分に高めることが可能な乗物用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施の形態における乗物用シートを示す斜視図である。
図2図1中の2点鎖線IIで囲まれた範囲を車両内側から見た斜視図である。
図3図1中の2点鎖線IIで囲まれた範囲を車両外側から見た斜視図である。
図4図2中のIV-IV線上の矢視方向から見たリクライナを示す断面図である。
図5図2中のリクライナを示す分解組み立て図である。
図6図3中のリクライナを示す分解組み立て図(一部)である。
図7図1中の2点鎖線IIで囲まれた範囲を車両外側から見た側面図である。
図8図7中のバックフレームおよびリクライナの接合部の断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態における乗物用シートを示す斜視図である。図1を参照して、本実施の形態における乗物用シート10は、自動車に搭載されるシートである。
【0019】
図中には、代表的に、自動車の左側座席として構成されたシートが示されている。乗物用シート10のシート右側が車両内側に対応し、乗物用シート10のシート左側が車両外側に対応する。
【0020】
まず、乗物用シート10の全体構成について説明する。乗物用シート10は、シートクッション13と、左右一対のスライドレール18と、シートバック12と、ヘッドレスト14と、左右一対のリクライナ40とを有する。
【0021】
シートクッション13は、乗員を下方から支持するシート部位である。シートクッション13は、スライドレール18を介して、車室内のフロア上に設けられている。シートクッション13のシート前後方向における位置は、スライドレール18により調節可能とされている。スライドレール18は、電動式であり、シートクッション13の側部に設けられたスイッチ18Sを前後に押し引きする操作によって、シートクッション13をスライド移動させる。
【0022】
シートバック12は、乗員の背部を支持するシート部位であり、背凭れを構成している。ヘッドレスト14は、シートバック12の上方において頭凭れを構成している。シートバック12の傾き(背凭れ角度)は、リクライナ40により調節可能とされている。リクライナ40は、電動式であり、シートクッション13の側部に設けられたスイッチ40Sを前後に押し傾ける操作によって、シートバック12を傾動させる。
【0023】
なお、スライドレール18およびリクライナ40は、上記の電動式に限られず、手動式であってもよい。
【0024】
続いて、乗物用シート10のフレーム構成について説明する。乗物用シート10は、シートの骨格をなすシートフレーム15を有する。シートフレーム15は、バックフレーム20と、左右一対のリクライニングプレート16を有するクッションフレームとを有する。
【0025】
バックフレーム20は、シートバック12においてシートの骨格をなしている。バックフレーム20は、全体として、四角形の枠形状を有する。バックフレーム20は、左右一対のサイドフレーム21と、アッパーフレーム22と、ロアーパネル23とを有する。
【0026】
一対のサイドフレーム21は、シート幅方向に間隔を設けて配置されている。サイドフレーム21は、上下方向に延びている。サイドフレーム21は、鋼材により形成されている。サイドフレーム21は、シート幅方向が厚み方向となるように配置され、シート前後方向における両端がシート内側に折り曲げられた鋼材により形成されている。
【0027】
アッパーフレーム22は、サイドフレーム21の上端側に設けられている。アッパーフレーム22は、シート幅方向に延び、一対のサイドフレーム21同士を接続している。ロアーパネル23は、サイドフレーム21の下端側に設けられている。ロアーパネル23は、シート幅方向に延び、一対のサイドフレーム21同士を接続している。
【0028】
バックフレーム20は、リクライナ40に接続されている。サイドフレーム21の下端部が、リクライナ40に接続されている。リクライナ40は、中心軸101を中心にして、クッションフレームに対するバックフレーム20の回動を可能としている。中心軸101は、リクライナ40における回動軸であり、シート幅方向に延びている。
【0029】
クッションフレームは、シートクッション13においてシートの骨格をなしている。リクライニングプレート16は、クッションフレームの後端部に設けられている。リクライニングプレート16は、リクライナ40に接続されている。リクライニングプレート16は、鋼材により形成されている。リクライニングプレート16は、シート幅方向が厚み方向となるように配置された鋼材により形成されている。
【0030】
図2は、図1中の2点鎖線IIで囲まれた範囲を車両内側から見た斜視図である。図3は、図1中の2点鎖線IIで囲まれた範囲を車両外側から見た斜視図である。図4は、図2中のIV-IV線上の矢視方向から見たリクライナを示す断面図である。図5は、図2中のリクライナを示す分解組み立て図である。図6は、図3中のリクライナを示す分解組み立て図(一部)である。
【0031】
続いて、リクライナ40の構造について簡単に説明する。なお、左右一対のリクライナ40は、左右対称の構造を有するため、以下では、車両内側に設けられたリクライナ40の構造について代表的に説明する。
【0032】
図1から図6を参照して、リクライナ40は、シート幅方向において、バックフレーム20(サイドフレーム21)およびリクライニングプレート16の間に介挿されている。リクライナ40は、バックフレーム20がリクライニングプレート16に対して中心軸101を中心に回動可能となるように、バックフレーム20およびリクライニングプレート16を連結している。
【0033】
図5に示されるように、リクライナ40は、内歯部材41と、外歯部材42と、外周リング46(図4を参照)と、一対の楔部材45と、操作部47を有する操作部材と、キャップ48と、コネクティングロッド49とを有する。
【0034】
内歯部材41には、半径方向内側に向けて突出し、周方向に並ぶ複数の歯からなる内歯車が設けられている。内歯部材41は、バックフレーム20(サイドフレーム21)に接合されている。外歯部材42には、半径方向外側に向けて突出し、周方向に並ぶ複数の歯からなる外歯車が設けられている。外歯部材42は、中心軸101の軸方向において、内歯部材41と組み合わされている。内歯部材41の内歯車は、外歯部材42の外歯車の外周上に配置されている。外歯部材42は、リクライニングプレート16に接合されている。
【0035】
外周リング46は、リング形状を有し、車両内側から内歯部材41および外歯部材42の外周上に組み付けられている。外周リング46は、内歯部材41および外歯部材42を互いに組み合わされた状態に保持している。
【0036】
一対の楔部材45は、左右対称に湾曲した形状を有する。一対の楔部材45は、半径方向において内歯部材41および外歯部材42間に設けられた隙間に挿入されている。操作部47は、その内歯部材41および外歯部材42間に設けられた隙間において、周方向における一対の楔部材45間の空間に配置されている。
【0037】
キャップ48は、車両内側から外歯部材42に組み付けられている。キャップ48は、楔部材45の脱落を防いでいる。コネクティングロッド49は、中心軸101の軸上に沿って延びている。コネクティングロッド49の両端は、左右一対のリクライナ40において、上記の操作部材に連結されている。
【0038】
内歯部材41の内歯車と、外歯部材42の外歯車とは、常時は、楔部材45により互いが半径方向に押し付けられている。これにより、内歯部材41の内歯車と、外歯部材42の外歯車とは、バックラッシのない深い噛合状態に保持されており、回転止めされた状態とされている。駆動用モータ(不図示)からの回転が、コネクティングロッド49を介して操作部材に伝達される。操作部材が回転すると、楔部材45が、操作部47によって周方向に押し回される。これにより、内歯部材41の内歯車と、外歯部材42の外歯車とが、互いの噛合位置を変化させて相対的な回転が可能となる。
【0039】
続いて、シートフレーム15およびリクライナ40の接合構造について詳細に説明する。
【0040】
図2図4および図5を参照して、リクライニングプレート16には、貫通孔31が形成されている。貫通孔31は、シート幅方向においてリクライニングプレート16を貫通している。貫通孔31は、複数の拡径部32を有する。複数の拡径部32は、中心軸101の周方向において間隔を隔てて配置されている。複数の拡径部32は、中心軸101の周方向において等間隔に配置されている。貫通孔31は、各拡径部32において局所的に拡径した円形の開口形状を有する。
【0041】
外歯部材42は、複数の突出部43を有する。複数の突出部43は、複数の拡径部32に対応する位置に設けられている。突出部43は、中心軸101の軸方向において突出している。
【0042】
複数の突出部43は、それぞれ、複数の拡径部32に嵌め合わされている。貫通孔31の外周側の縁に沿ってレーザーが照射されることによって、外歯部材42は、リクライニングプレート16に接合されている。
【0043】
図7は、図1中の2点鎖線IIで囲まれた範囲を車両外側から見た側面図である。図8は、図7中のバックフレームおよびリクライナの接合部の断面を示す写真である。
【0044】
図4、および、図6から図8を参照して、バックフレーム20(サイドフレーム21)には、貫通孔27と、貫通孔28とが形成されている。貫通孔27および貫通孔28は、シート幅方向においてバックフレーム20(サイドフレーム21)を貫通している。
【0045】
貫通孔27は、中心軸101の軸上に設けられている。貫通孔27は、円形の開口形状を有する。貫通孔27には、コネクティングロッド49が挿通されている。貫通孔28は、中心軸101の軸周りに配置されている。貫通孔28は、中心軸101の半径方向において一定の幅を有しながら、中心軸101を中心に円弧状に延びる開口形状を有する。
【0046】
バックフレーム20(サイドフレーム21)には、複数の貫通孔28として、第1貫通孔28Aと、第2貫通孔28Bと、第3貫通孔28Cとが形成されている。複数の貫通孔28は、中心軸101の周方向において間隔を隔てて配置されている。複数の貫通孔28は、中心軸101の周方向において不等間隔に配置されている。
【0047】
第3貫通孔28Cは、中心軸101の周方向において、第1貫通孔28Aおよび第2貫通孔28Bの間に位置している。第1貫通孔28Aおよび第2貫通孔28Bは、第3貫通孔28Cよりもシート後方に位置している。第1貫通孔28Aおよび第3貫通孔28Cは、中心軸101よりも上方に位置している。第2貫通孔28Bは、中心軸101よりも下方に位置している。
【0048】
なお、本発明における貫通孔の形状は、上記の円弧形状に限られず、たとえば、中心軸101を中心とする円弧とは異なる曲率を有する円弧形状であってもよいし、中心軸101の軸周りで直線状に延びる形状であってもよい。
【0049】
内歯部材41は、突出部44を有する。突出部44は、中心軸101の軸方向において突出している。突出部44は、中心軸101の軸方向から見て貫通孔28の開口に対応する形状、すなわち、中心軸101の半径方向において一定の幅を有しながら、中心軸101を中心に円弧状に延びる凸形状を有する。突出部44は、貫通孔28に嵌合されている。
【0050】
内歯部材41は、複数の突出部44として、第1突出部44Aと、第2突出部44Bと、第3突出部44Cとを有する。複数の突出部44は、中心軸101の周方向において間隔を隔てて配置されている。第1突出部44A、第2突出部44Bおよび第3突出部44Cは、それぞれ、第1貫通孔28A、第2貫通孔28Bおよび第3貫通孔28Cに対応する位置に設けられている。第1突出部44A、第2突出部44Bおよび第3突出部44Cは、それぞれ、第1貫通孔28A、第2貫通孔28Bおよび第3貫通孔28Cに嵌合されている。
【0051】
なお、バックフレーム20(サイドフレーム21)に突出部が設けられ、リクライナ40(内歯部材41)に、その突出部が嵌合される貫通孔が形成される構成であってもよい。
【0052】
図7に示されるように、乗物用シート10は、接合部50を有する。接合部50は、レーザー溶接を用いて、バックフレーム20およびリクライナ40を接合することにより構成されている。接合部50は、レーザー溶接を用いて、サイドフレーム21および内歯部材41を接合することにより構成されている。接合部50は、サイドフレーム21および内歯部材41が、溶融し、そのあと凝固することによって、互いに一体化されている部分である。接合部50は、一般的には、レーザーの照射方向に向けて先細りとなる断面形状を有する。
【0053】
接合部50は、外周部61と、内周部62と、周端部63とを有する。外周部61は、中心軸101から見た場合の貫通孔28の外周側の縁に沿って延びている。内周部62は、中心軸101から見た場合の貫通孔28の内周側の縁に沿って延びている。周端部63は、中心軸101の周方向における貫通孔28の端部側の縁に沿って延びている。周端部63は、外周部61および内周部62を接続している。
【0054】
外周部61は、貫通孔28よりも中心軸101の半径方向外側において、中心軸101を中心に円弧状に延びている。内周部62は、貫通孔28よりも中心軸101の半径方向内側において、中心軸101を中心に円弧状に延びている。周端部63は、外周部61および内周部62の間において湾曲しながら延びている。周端部63は、外周部61および内周部62の間において半円弧状に延びている。
【0055】
接合部50は、レーザー溶接のためのレーザーが、貫通孔28の外周側から、貫通孔28の周方向における端部を周り込んで、貫通孔28の内周側にまで走査されることにより構成されている。接合部50は、貫通孔28の縁と一定の間隔を保ちながら、貫通孔28の縁に沿って延びている。
【0056】
乗物用シート10を搭載する自動車に対して外部から衝撃が加わる場合が想定される。たとえば、自動車が後方から衝突される後突時、リクライナ40に対して、中心軸101の軸周りに過大なモーメントが入力される。この際、中心軸101よりもシート前方側には、引っ張り荷重(図7中の白抜き矢印106に示す荷重)が作用し、中心軸101よりもシート後方側には、圧縮荷重(図7中の白抜き矢印107に示す荷重)が作用する。リクライナ40のシート後方側は、上記の圧縮荷重によって、車両内側に折れ曲がるように変形しようとし(図4中の白抜き矢印108に示す変形)、その結果、リクライナ40(内歯部材41)と、バックフレーム20(サイドフレーム21)との接合部で溶接剥離が生じるおそれがある。
【0057】
これに対して、本実施の形態では、接合部50が、外周部61と、内周部62と、周端部63とを有して構成されている。このような構成により、リクライナ40に入力された過大なモーメントを、外周部61および内周部62を接続する周端部63において広く受けることができる。これにより、接合部50に応力集中が生じることを回避して、外部からの衝撃に対するバックフレーム20およびリクライナ40間の接合の耐性を高めることができる。
【0058】
特に本実施の形態では、周端部63が、外周部61および内周部62の間において湾曲しながら延びている。このため、クライナ40に対して中心軸101の軸周りに過大なモーメントが入力された場合に、接合部50に応力集中が生じることをより効果的に防ぐことができる。
【0059】
また、バックフレーム20およびリクライナ40間の接合にアーク溶接を用いた場合、アーク溶接の範囲を広げると、ビーの体積が増大し、シート重量の増大を招くおそれがある。これに対して、本実施の形態では、接合部50によるバックフレーム20およびリクライナ40間の接合に、レーザー溶接が用いられている。このため、接合部50が、外周部61、内周部62および周端部63を有する構成にもかかわらず、シート重量の増大を抑えることができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、接合部50が、貫通孔28の縁と一定の間隔を保ちながら、貫通孔28の縁に沿って延びる構成を説明したが、本発明は、このような構成に限られない。本発明においては、接合部が、接合部と貫通孔の縁との間隔を変化させながら、貫通孔の縁に沿って延びてもよい。たとえば、円弧状の貫通孔に対して、接合部が、波打ちながら貫通孔の縁に沿って延びてもよい。また、突出部の側壁と、貫通孔の縁との間にほぼ隙間が存在しない場合には、接合部を、突出部の側壁と貫通孔の縁との境界に設けることも可能である。
【0061】
接合部50は、第1溶接ライン51と、第2溶接ライン52と、中間溶接ライン53とを有する。第1溶接ライン51は、第1貫通孔28Aの縁に沿って延びている。第2溶接ライン52は、第2貫通孔28Bの縁に沿って延びている。中間溶接ライン53は、第1溶接ライン51および第2溶接ライン52を接続している。
【0062】
第1溶接ライン51は、外周部61として、第1外周部61Aを有し、内周部62として、第1内周部62Aを有し、周端部63として、第1周端部63Aを有する。すなわち、第1外周部61Aは、中心軸101から見た場合の第1貫通孔28Aの外周側の縁に沿って延びている。第1内周部62Aは、中心軸101から見た場合の第1貫通孔28Aの内周側の縁に沿って延びている。第1周端部63Aは、中心軸101の周方向における第1貫通孔28Aの端部側の縁に沿って延びている。第1周端部63Aは、第1外周部61Aおよび第1内周部62Aを接続している。
【0063】
第1周端部63Aは、中心軸101の周方向において、中間溶接ライン53とは反対側の第1貫通孔28Aの端部側に設けられている。中間溶接ライン53は、中心軸101を中心とする反時計周り方向の第1貫通孔28Aの端部側に設けられ、第1周端部63Aは、中心軸101を中心とする時計周り方向の第1貫通孔28Aの端部側に設けられている。
【0064】
第2溶接ライン52は、外周部61として、第2外周部61Bを有し、内周部62として、第2内周部62Bを有し、周端部63として、第2周端部63Bを有する。すなわち、第2外周部61Bは、中心軸101から見た場合の第2貫通孔28Bの外周側の縁に沿って延びている。第2内周部62Bは、中心軸101から見た場合の第2貫通孔28Bの内周側の縁に沿って延びている。第2周端部63Bは、中心軸101の周方向における第2貫通孔28Bの端部側の縁に沿って延びている。第2周端部63Bは、第2外周部61Bおよび第2内周部62Bを接続している。
【0065】
第2周端部63Bは、中心軸101の周方向において、中間溶接ライン53とは反対側の第2貫通孔28Bの端部側に設けられている。中間溶接ライン53は、中心軸101を中心とする時計周り方向の第2貫通孔28Bの端部側に設けられ、第2周端部63Bは、中心軸101を中心とする反時計周り方向の第2貫通孔28Bの端部側に設けられている。
【0066】
中間溶接ライン53は、第1溶接ライン51および第2溶接ライン52の間の経路上において、第3貫通孔28Cの縁に沿って延びている。中間溶接ライン53は、中心軸101から見た場合の第3貫通孔28Cの外周側の縁に沿って延びている。中間溶接ライン53は、第1溶接ライン51の第1外周部61Aと、第2溶接ライン52の第2外周部61Bとを接続している。第1溶接ライン51の第1周端部63Aと、第2溶接ライン52の第2周端部63Bとは、中心軸101の周方向において、互いに対向している。
【0067】
第1溶接ライン51、中間溶接ライン53および第2溶接ライン52は、連続的に線状に延びている。第1溶接ライン51、中間溶接ライン53および第2溶接ライン52は、第1溶接ライン51の第1内周部62Aと、第2溶接ライン52の第2内周部62Bとの間において、連続的に線状に延びている。第1溶接ライン51、中間溶接ライン53および第2溶接ライン52は、一筆書きが可能な一続きのラインにより構成されている。
【0068】
このように本実施の形態では、第1溶接ライン51、中間溶接ライン53および第2溶接ライン52が、連続的に線状に延びているため、バックフレーム20およびリクライナ40のレーザー溶接時、レーザーを途切れなく走査することができる。これにより、レーザー溶接時の作業効率を向上させることができる。
【0069】
また、第1周端部63Aは、中心軸101の周方向において、中間溶接ライン53とは反対側の第1貫通孔28Aの端部側に設けられ、第2周端部63Bは、中心軸101の周方向において、中間溶接ライン53とは反対側の第2貫通孔28Bの端部側に設けられている。このような構成により、リクライナ40に対して中心軸101の軸周りに過大なモーメントが入力された場合に、中心軸101の周方向における接合部50の両端において、応力集中が生じることを防止できる。
【0070】
また、リクライナ40に入力される中心軸101の軸周りのモーメントは、中心軸101からの半径方向における距離が大きいほど、溶接剥離に繋がり易い。これに対して、本実施の形態では、中間溶接ライン53が、第1外周部61Aおよび第2外周部61Bを接続している。これにより、中心軸101からの半径方向における距離が大きい第1外周部61Aおよび第2外周部61Bにおいて、溶接ラインの終端が存在しないため、接合部50における溶接剥離をより効果的に防ぐことができる。
【0071】
以上に説明した、この発明の実施の形態における乗物用シート10の構造についてまとめて説明すると、本実施の形態における乗物用シート10は、バックフレーム20を有するシートフレーム15と、所定の回動軸としての中心軸101を中心にして、クッションフレームに対するバックフレーム20の回動を可能とするリクライナ40とを備える。シートフレーム15およびリクライナ40のいずれか一方としてのシートフレーム15(バックフレーム20のサイドフレーム21)には、中心軸101の軸周りに配置される貫通孔28が形成される。シートフレーム15およびリクライナ40のいずれか他方としてのリクライナ40は、中心軸101の軸方向に突出し、貫通孔28に嵌合される突出部44を有する。乗物用シート10は、レーザー溶接を用いて、シートフレーム15(バックフレーム20のサイドフレーム21)と、リクライナ40とを接合してなる接合部50をさらに備える。接合部50は、中心軸101から見た場合の貫通孔28の外周側の縁に沿って延びる外周部61と、中心軸101から見た場合の貫通孔28の内周側の縁に沿って延びる内周部62と、中心軸101の周方向における貫通孔28の端部側の縁に沿って延び、外周部61および内周部62を接続する周端部63とを有する。
【0072】
このように構成された、この発明の実施の形態における乗物用シート10によれば、シート重量の増大を抑えつつ、外部からの衝撃に対するバックフレーム20およびリクライナ40の接合の耐性を、十分に高めることができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、本発明における外周部、内周部および周端部を有する接合部の溶接構造を、バックフレーム20およびリクライナ40間の接合に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、たとえば、クッションフレーム側のリクライニングプレートと、リクライナとの接合に適用してもよい。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、自動車や飛行機、船、電車等の乗物用シートに適用される。
【符号の説明】
【0076】
10 乗物用シート、12 シートバック、13 シートクッション、14 ヘッドレスト、15 シートフレーム、16 リクライニングプレート、18 スライドレール、18S,40S スイッチ、20 バックフレーム、21 サイドフレーム、22 アッパーフレーム、23 ロアーパネル、27,28,31 貫通孔、28A 第1貫通孔、28B 第2貫通孔、28C 第3貫通孔、32 拡径部、40 リクライナ、41 内歯部材、42 外歯部材、43,44 突出部、44A 第1突出部、44B 第2突出部、44C 第3突出部、45 楔部材、46 外周リング、47 操作部、48 キャップ、49 コネクティングロッド、50 接合部、51 第1溶接ライン、52 第2溶接ライン、53 中間溶接ライン、61 外周部、61A 第1外周部、61B 第2外周部、62 内周部、62A 第1内周部、62B 第2内周部、63 周端部、63A 第1周端部、63B 第2周端部、101 中心軸。
図1
図2
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図6
図7
図8