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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20220928BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20220928BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/19
B41J2/175 501
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018061458
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019171648
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏本 昌広
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0279610(US,A1)
【文献】特開2005-081775(JP,A)
【文献】特開平04-187446(JP,A)
【文献】特開平11-042795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283819(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104417069(CN,A)
【文献】特開平05-238017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給する供給ユニットと、
前記供給ユニットと前記記録ヘッドとを接続し、前記供給ユニットから前記記録ヘッドに供給される前記液体が通過する供給経路と、
前記記録ヘッドと前記供給ユニットとを接続し、前記記録ヘッドから前記供給ユニットに戻る前記液体が通過する循環経路と、
を備え、
前記供給経路には、前記供給経路を分離および接続可能な供給カップリングが設けられており、
前記循環経路には、前記循環経路を分離および接続可能な循環カップリングが設けられており、
前記供給経路の前記供給カップリングに対して上流側の部分と前記循環経路の前記循環カップリングに対して下流側の部分とは、連通および遮断可能に構成されたバイパス経路によって接続され、
前記供給カップリングは、分離状態において、前記供給経路を閉じ、
前記循環カップリングは、分離状態において、前記循環路を閉じ
前記循環経路には、前記記録ヘッドから排出される液状の物質が通過する排出経路が接続されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記供給ユニットは、補給容器から補給される前記液体を収容する液体タンクと、前記補給容器と前記液体タンクとを接続する補給経路と、前記液体タンクから前記液体が供給され、前記液体を前記記録ヘッドに送る送液ポンプと、前記液体タンクと前記送液ポンプとを接続する送液経路と、を含み、
前記供給経路は、前記送液ポンプと前記記録ヘッドとを接続し、
前記循環経路は、前記記録ヘッドと前記補給経路とを接続することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記バイパス経路には、前記バイパス経路を連通および遮断する切替部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記液体は、インクであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙のような記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドに液体を供給する供給ユニットと、を備えたインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ、複写機、プリンターのような記録装置として、インクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置が、高精細な画像を形成できることから広く用いられている。
【0003】
インクジェット記録装置としては、記録ヘッドと、記録ヘッドにインク(液体)を供給する供給ユニットと、供給ユニットから記録ヘッドに供給されるインクが通過する供給経路と、記録ヘッドから供給ユニットに戻るインクが通過する循環経路と、を備えたものが知られている。循環経路は、記録ヘッド内の気泡を抜く(供給ユニットに戻す)ために設けられている。
【0004】
インクジェット記録装置の出荷時には、供給ユニットは、インクの劣化を抑制するために空の状態(空気で満たされた状態)になっており、記録ヘッドは、気泡の巻き込みを抑制するために保存液が充填されている。インクジェット記録装置の着荷時には、供給ユニットにインクが充填されるとともに、記録ヘッドの保存液がインクに置換される。
【0005】
なお、記録ヘッドと記録ヘッドにインクを供給する供給ユニットとを備え、出荷時に記録ヘッドに保存液が充填されるインクジェット記録装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-205418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インクジェット記録装置の出荷時に、供給ユニットを空の状態にするとともに記録ヘッドに保存液を充填する場合、供給ユニットと記録ヘッドとを切り離しておく必要がある。このため、上記供給経路および循環経路を備えたインクジェット記録装置では、供給経路には、供給経路を分離および接続可能な供給カップリングが設けられ、循環経路には、循環経路を分離および接続可能な循環カップリングが設けられる。そして、インクジェット記録装置の出荷時には各カップリングが分離され、着荷時には各カップリングが接続される。
【0008】
しかしながら、インクジェット記録装置の着荷時に、各カップリングを接続した後に、供給ユニットにインクを充填するのと同時に記録ヘッドの保存液をインクに置換しようとすると、記録ヘッドのインクに気泡が巻き込まれる(インク内に気泡が発生する)。
【0009】
この不都合を回避するために、以下の方法が考えられる。すなわち、供給カップリングのオス部(またはメス部)と循環カップリングのメス部(またはオス部)とを接続することによって供給ユニット側で循環構造を形成し、この状態で供給ユニットにインクを充填する。すなわち、供給ユニットと記録ヘッドとを切り離した状態で供給ユニットにインクを充填する。その後、供給カップリングのオス部(またはメス部)と循環カップリングのメス部(またはオス部)とを分離し、供給カップリングのオス部とメス部とを接続して供給経路を連通するとともに、循環カップリングのオス部とメス部とを接続して循環経路を連通する。すなわち、供給ユニットと記録ヘッドとを接続する。そして、記録ヘッドの保存液をインクに置換する。この方法によれば、記録ヘッドのインクに気泡が巻き込まれるのを抑制することができる。
【0010】
しかしながら、カップリングを分離する際にはカップリング内部のインクが必ず漏れるので、上記方法では、インクジェット記録装置内がインクで汚れてしまうという懸念がある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、記録ヘッドのインクに気泡が巻き込まれるのを抑制するとともに、装置内がインクで汚れるのを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1の局面のインクジェット記録装置は、記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドに液体を供給する供給ユニットと、供給ユニットと記録ヘッドとを接続し、供給ユニットから記録ヘッドに供給される液体が通過する供給経路と、記録ヘッドと供給ユニットとを接続し、記録ヘッドから供給ユニットに戻る液体が通過する循環経路と、を備える。供給経路には、供給経路を分離および接続可能な供給カップリングが設けられており、循環経路には、循環経路を分離および接続可能な循環カップリングが設けられている。供給経路の供給カップリングに対して上流側の部分と循環経路の循環カップリングに対して下流側の部分とは、連通および遮断可能に構成されたバイパス経路によって接続されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の局面のインクジェット記録装置によれば、供給経路の供給カップリングに対して上流側の部分と循環経路の循環カップリングに対して下流側の部分とは、連通および遮断可能に構成されたバイパス経路によって接続されている。これにより、インクジェット記録装置の着荷時に、供給経路からバイパス経路を介して循環経路に液体を循環させることができる。すなわち、記録ヘッドを介することなく、供給ユニットに液体を充填することができる。その後、供給カップリングのオス部とメス部とを接続して供給経路を連通するとともに、循環カップリングのオス部とメス部とを接続して循環経路を連通し、記録ヘッドの保存液を液体に置換することによって、記録ヘッドの液体に気泡が巻き込まれるのを抑制することができる。
【0014】
また、供給経路と循環経路とを接続するバイパス経路を設けることによって、供給ユニット側で循環構造を形成するために供給カップリングと循環カップリングとを接続する必要がない。これにより、供給ユニットに液体を充填した後に記録ヘッドの保存液を液体に置換する際に、供給カップリングと循環カップリングとを分離する必要がないので、供給カップリングと循環カップリングとの接続部分から液体が漏れることがない。このため、インクジェット記録装置内が液体で汚れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の構造を示す図
図2図1に示すインクジェット記録装置の第1搬送ユニット及び記録部を上方から見た図
図3】記録部のラインヘッドを構成する記録ヘッドの図
図4】記録ヘッドをインク吐出面側から見た図
図5】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の供給ユニットおよび記録ヘッド周辺の構成を示す図
図6】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の供給ユニットおよび記録ヘッド周辺の構成を示す図
図7】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の供給カップリングおよび循環カップリング周辺の構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1図7を参照して、本発明の一実施形態のインクジェット記録装置100について説明する。図1に示すように、インクジェット記録装置100では、装置本体1の内部下方に用紙収容部である給紙カセット2が配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち図1における給紙カセット2の右側の上方には給紙装置3が配置されている。この給紙装置3により、用紙Pは図1において給紙カセット2の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
【0018】
また、インクジェット記録装置100はその内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2に関して言えばその給紙方向である右上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは第1用紙搬送路4aにより装置本体1の側面に沿って上方に搬送される。
【0019】
用紙搬送方向に対し第1用紙搬送路4aの下流端にはレジストローラー対13が備えられている。さらにレジストローラー対13の用紙搬送方向下流側には第1搬送ユニット5及び記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は用紙Pの斜め送りを矯正しつつ記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1搬送ユニット5に向かって用紙Pを送り出す。
【0020】
用紙搬送方向に対し第1搬送ユニット5の下流側(図1の左側)には第2搬送ユニット12が配置されている。記録部9にてインク画像が記録された用紙Pは第2搬送ユニット12へと送られ、第2搬送ユニット12を通過する間に用紙P表面に吐出されたインクが乾燥される。
【0021】
用紙搬送方向に対し第2搬送ユニット12の下流側であって装置本体1の左側面近傍にはデカーラー部14が備えられている。第2搬送ユニット12にてインクが乾燥された用紙Pはデカーラー部14へと送られ、用紙Pに生じたカールが矯正される。
【0022】
用紙搬送方向に対しデカーラー部14の下流側(図1の上方)には第2用紙搬送路4bが備えられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bからインクジェット記録装置100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ15に排出される。
【0023】
装置本体1の上部であって記録部9及び第2搬送ユニット12の上方には両面記録を行うための反転搬送路16が備えられている。両面記録を行う場合には第一面への記録が終了して第2搬送ユニット12及びデカーラー部14を通過した用紙Pが第2用紙搬送路4bを通って反転搬送路16へと送られる。反転搬送路16へ送られた用紙Pは、続いて第二面の記録のために搬送方向が切り替えられ、装置本体1の上部を通過して右側に向かって送られ、第1用紙搬送路4a、及びレジストローラー対13を経て第二面を上向きにした状態で再度第1搬送ユニット5へと送られる。
【0024】
また、第2搬送ユニット12の下方にはワイプユニット19及びキャップユニット90が配置されている。ワイプユニット19は、後述するパージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドのインク吐出口から押出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。キャップユニット90は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
【0025】
記録部9は図2に示すように、ヘッドハウジング10と、ヘッドハウジング10に保持されたラインヘッド11C、11M、11Y、及び11Kを備えている。これらのラインヘッド11C~11Kは、第1搬送ユニット5の第1搬送ベルト8の搬送面に対して所定の間隔(例えば1mm)が形成されるような高さに支持され、用紙搬送方向(矢印X方向)と直交する用紙幅方向(図2の上下方向)に沿って延びる1個以上(ここでは1個)の記録ヘッド17によって構成されている。
【0026】
図3及び図4に示すように、記録ヘッド17のヘッド部18のインク吐出面F1には、インク吐出口18a(図2参照)が多数配列されたインク吐出領域R1が設けられている。
【0027】
各ラインヘッド11C~11Kを構成する記録ヘッド17には、4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のインクがラインヘッド11C~11Kの色毎に供給される。
【0028】
各記録ヘッド17は、制御部110(図1参照)からの制御信号により外部コンピューターから受信した画像データに応じて、第1搬送ベルト8の搬送面に吸着保持されて搬送される用紙Pに向かってインク吐出口18aからインクを吐出する。これにより、第1搬送ベルト8上の用紙Pにはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が形成される。
【0029】
また、記録ヘッド17には、クリーニング液を供給するクリーニング液供給部材20が設けられている。クリーニング液供給部材20は、ヘッド部18に対してワイパー25のワイピング方向上流側(図3の右側)に隣接して配置されている。クリーニング液供給部材20は、クリーニング液を供給するクリーニング液供給口が多数配列されたクリーニング液供給領域R2を含むクリーニング液供給面F2を有する。
【0030】
図5に示すように、各記録ヘッド17には、各色のインク22がそれぞれ通過するインク供給チューブ70の下流端が接続されている。各インク供給チューブ70の上流端は、各記録ヘッド17に供給するインク22を収容する各色のサブインクタンク(液体タンク)50に接続されている。各インク供給チューブ70には、インク22をサブインクタンク50から汲み上げて記録ヘッド17に送る供給ポンプ(送液ポンプ)72が設けられている。なお、供給ポンプ72、サブインクタンク50、インク供給チューブ70の後述する上流側チューブ70a、及び後述する空気抜きチューブ73、インク補給チューブ75等によって、記録ヘッド17にインク(液体)22を供給する供給ユニット60が構成されている。また、図では、理解を容易にするために、インク22にハッチングを施している。また、インク供給チューブ70、サブインクタンク50、供給ポンプ72、及び後述するインク補給チューブ75、インクパック76、補給ポンプ77は、各記録ヘッド17に対して設けられているが、図では図面簡略化のため、1つずつ描いている。
【0031】
また、各サブインクタンク50には、各色のインク22がそれぞれ通過するインク補給チューブ(補給経路)75の下流端が接続されている。各インク補給チューブ75の上流端は、各サブインクタンク50に補給するインク22を収容するインクパック(補給容器)76に接続されている。各インク補給チューブ75には、インク22をインクパック76から汲み上げてサブインクタンク50に送る補給ポンプ77が設けられている。供給ポンプ72および補給ポンプ77としては、例えば、チューブポンプ、シリンジポンプ、ダイアフラムポンプ等を用いることができる。
【0032】
インクパック76は、アルミニウムシートからなる容器であり、内部には脱気されたインク22が充填されている。インクパック76から記録ヘッド17へインク22を供給すると、インクパック76内のインク22が排出されるにつれ、インクパック76の外観形状が膨らんだ状態から次第につぶれて偏平な状態へと変化する。
【0033】
サブインクタンク50には、インク22の液面(上面)を検知する検知センサー55が設けられている。検知センサー55によって液無し(又は液面低下)が検知されると、補給ポンプ77によってインクパック76からサブインクタンク50に所定量のインク22が補給される。
【0034】
クリーニング液供給部材20は、ヘッド部18と同様の給液機構によってクリーニング液が供給されるように構成されている。すなわち、クリーニング液供給部材20には、供給ポンプを用いてメインクリーニング液タンクからサブクリーニング液タンク(いずれも図示せず)を介してクリーニング液が供給される。
【0035】
このインクジェット記録装置100では、記録ヘッド17のインク吐出面F1を清浄にするために、長期間停止後の印字開始時及び印字動作の合間には、ヘッド部18のインク吐出口18aから粘度の高くなったインク22を押し出すパージを実行するとともに、クリーニング液供給部材20のクリーニング液供給口(図示せず)からクリーニング液を供給する。そして、ワイプユニット19のワイパー25(図3参照)によりクリーニング液供給面F2およびインク吐出面F1を拭き取る。このとき、ワイパー25によって拭き取られた廃インクおよび廃クリーニング液は、ワイプユニット19に設けられた回収トレイ(図示せず)に回収され、廃インクチューブを介して廃インクタンク(図示せず)に貯留される。この記録ヘッド17の回復動作は、制御部110(図1参照)からの制御信号に基づいて記録ヘッド17、ワイプユニット19、供給ポンプ72等の動作を制御することによって実行される。
【0036】
次に、サブインクタンク50周辺の構造について説明する。
【0037】
検知センサー55は図5に示すように、サブインクタンク50内に配置されサブインクタンク50内のインク量に応じて所定範囲内で上下に移動するフロート56と、フロート56の上下方向の移動に伴いインク22の液面を検知する棒状のセンサー本体57と、によって構成されている。フロート56は、円筒状に形成されているとともに、内部にマグネット(図示せず)が設けられている。センサー本体57は、フロート56の中心部に挿通されている。センサー本体57の内部には、マグネット(図示せず)の上下方向の移動に伴い作動するリードスイッチ(図示せず)が設けられている。なお、インク22の液面が所定位置まで低下すると、フロート56は下限位置まで低下する。これにより、リードスイッチ(図示せず)が作動し、センサー本体57から制御部110に補給信号が送信され、インク22がインクパック76からサブインクタンク50に所定量補給される。そして、インク22の液面が所定位置まで上昇し、フロート56は上限位置まで上昇する。
【0038】
また、サブインクタンク50は、インク22の液面が記録ヘッド17よりも少しだけ下方になる高さに配置されている。このため、記録ヘッド17のインク22には負圧がかかり、一定の位置(記録ヘッド17のインク吐出口18aの下端)にインク22のメニスカスが記録ヘッド17の内側(上側)に湾曲するように形成される。
【0039】
図6に示すように、供給ポンプ72は、中空形状のシリンダー72aと、シリンダー72aの中空部分に配置され、駆動機構(図示せず)によってシリンダー72aの長手方向(上下方向)に沿って移動されるピストン部72bと、を含んでいる。
【0040】
インク供給チューブ70は上流側チューブ(送液経路)70aおよび下流側チューブ(供給経路)70bによって構成されており、シリンダー72aの底面には、サブインクタンク50に繋がる上流側チューブ70aの下流端と、記録ヘッド17に繋がる下流側チューブ70bの上流端と、が接続されている。すなわち、下流側チューブ70bは、記録ヘッド17と供給ユニット60とを接続し、供給ユニット60から記録ヘッド17に供給されるインク22が通過する。
【0041】
また、ピストン部72bには、供給ポンプ72内の空気を通過させる空気抜きチューブ73の上流端が接続されている。この空気抜きチューブ73は、何らかの原因で(例えばシリンダー72aの内側面とピストン部72bとの間に異物が挟まり)、供給ポンプ72内に空気が徐々に入った場合に、供給ポンプ72内の空気を抜くために設けられている。供給ポンプ72内に入った空気は、ピストン部72bとインク22の液面(上面)との境界に溜まる。このため、ピストン部72bを下方に移動させると、供給ポンプ72内の空気を空気抜きチューブ73を介してサブインクタンク50に移動させることが可能である。なお、空気抜き動作は、定期的に(例えば、1週間に1回程度)行われる。
【0042】
インク補給チューブ75、上流側チューブ70a、下流側チューブ70b、空気抜きチューブ73には、インク流路(又は空気流路)を開閉する電磁弁G75、G70a、G70bおよびG73がそれぞれ設けられている。なお、電磁弁G75、G70a、G70bおよびG73の開閉動作は、制御部110によって行われる。
【0043】
ここで、本実施形態では、記録ヘッド17には、記録ヘッド17から供給ユニット60に戻るインク22が通過する循環チューブ(循環経路)78の上流端が接続されている。循環チューブ78は、記録ヘッド17内の空気を抜く際に記録ヘッド17から供給ユニット60にインク22を戻すために設けられている。循環チューブ78の下流端は、インク補給チューブ75に接続されており、ここでは、インク補給チューブ75のうちの補給ポンプ77(図5参照)よりも下流側で電磁弁G75よりも上流側の部分に接続されている。
【0044】
図6および図7に示すように、供給ユニット60から記録ヘッド17に供給されるインク22が通過する下流側チューブ70bの所定位置には、下流側チューブ70bを分離および接続可能な供給カップリング41が設けられている。供給カップリング41は、上流側に配置されるオス部41aと、下流側に配置されオス部41aに対して着脱可能なメス部41bと、によって構成されている。なお、オス部41aおよびメス部41bのそれぞれには、オス部41aとメス部41bとの接続状態においてインク流路を開状態にし、オス部41aとメス部41bとの分離状態においてインク流路を閉状態にする弁部材(図示せず)が内蔵されている。
【0045】
記録ヘッド17から供給ユニット60に戻るインク22が通過する循環チューブ78の所定位置には、循環チューブ78を分離および接続可能な循環カップリング42が設けられている。循環カップリング42は、上流側に配置されるメス部42aと、下流側に配置されメス部42aに対して着脱可能なオス部42bと、によって構成されている。なお、メス部42aおよびオス部42bのそれぞれには、メス部42aとオス部42bとの接続状態においてインク流路を開状態にし、メス部42aとオス部42bとの分離状態においてインク流路を閉状態にする弁部材(図示せず)が内蔵されている。
【0046】
また、下流側チューブ70bの供給カップリング41に対して上流側の部分と循環チューブ78の循環カップリング42に対して下流側の部分とは、バイパスチューブ(バイパス経路)79によって接続されている。バイパスチューブ79は連通状態と遮断状態とに切替可能に構成されている。本実施形態では、バイパスチューブ79には、インク流路を開閉するクランプ(切替部材)80が設けられている。なお、クランプ80を設けず、市販のクリップ(図示せず)等を用いてバイパスチューブ79を連通状態と遮断状態とに切り替えてもよい。
【0047】
循環チューブ78には図6に示すように、初期状態(出荷時)に記録ヘッド17に充填された保存液を排出するための排出チューブ(排出経路)81の上流端が接続されている。ここでは、排出チューブ81は、循環チューブ78のうちの循環カップリング42よりも下流側の部分に接続されている。なお、排出チューブ81には、保存液流路を開閉する電磁弁G81が設けられている。排出チューブ81の下流端は、廃保存液タンク(図示せず)に繋がっている。また、循環チューブ78には、インク流路を開閉する電磁弁G78が設けられている。ここでは、電磁弁G78は、循環チューブ78の排出チューブ81との接続部分よりも下流側の部分に設けられている。なお、電磁弁G81およびG78の開閉動作は、制御部110によって行われる。
【0048】
このインクジェット記録装置100では、インクパック76からサブインクタンク50にインク22を補給する場合は、電磁弁G75は開いており、電磁弁G78は閉じている。サブインクタンク50から供給ポンプ72にインク22を供給する場合は、電磁弁G75およびG73は閉じており、電磁弁G70aは開いている。供給ポンプ72を用いて記録ヘッド17に向かってインク22を供給する場合は、電磁弁G70aおよびG73は閉じており、電磁弁G70bは開いている。なお、上述した空気抜き動作時には、電磁弁G70aおよびG70bは閉じられ、電磁弁G73は開かれる。
【0049】
インクジェット記録装置100の出荷時には、供給ユニット60はインク22の劣化を抑制するために空の状態(空気で満たされた状態)になっており、記録ヘッド17は、保存液(図示せず)が充填されている。また、供給カップリング41は、オス部41aとメス部41bとが分離されており、循環カップリング42は、メス部42aとオス部42bとが分離されている。
【0050】
インクジェット記録装置100の着荷時には、インク補給チューブ75の上流端にインクパック76が取り付けられ、供給ユニット60にインク22が充填される。このとき、下流側チューブ70bからバイパスチューブ79を介して循環チューブ78にインク22が循環される。すなわち、記録ヘッド17を介することなく、供給ユニット60にインク22が充填される。
【0051】
その後、供給カップリング41のオス部41aとメス部41bとを接続して下流側チューブ70bを連通するとともに、循環カップリング42のメス部42aとオス部42bとを接続して循環チューブ78を連通する。また、クランプ80によってバイパスチューブ79を閉じるとともに、電磁弁G78を閉じる。そして、供給ポンプ72により記録ヘッド17にインク22を供給することによって、記録ヘッド17の保存液をインク22に置換する。記録ヘッド17の保存液は、排出チューブ81を介して廃保存液タンク(図示せず)に排出される。その後、電磁弁G81が閉じられるとともに、電磁弁G78が開かれる。
【0052】
本実施形態では、上記のように、下流側チューブ70bの供給カップリング41に対して上流側の部分と循環チューブ78の循環カップリング42に対して下流側の部分とは、連通および遮断可能に構成されたバイパスチューブ79によって接続されている。これにより、インクジェット記録装置100の着荷時に、下流側チューブ70bからバイパスチューブ79を介して循環チューブ78にインク22を循環させることができる。すなわち、記録ヘッド17を介することなく、供給ユニット60にインク22を充填することができる。その後、供給カップリング41のオス部41aとメス部41bとを接続して下流側チューブ70bを連通するとともに、循環カップリング42のオス部42bとメス部42aとを接続して循環チューブ78を連通し、記録ヘッド17の保存液をインク22に置換することによって、記録ヘッド17のインク22に気泡が巻き込まれる(インク22内に気泡が発生する)のを抑制することができる。
【0053】
また、下流側チューブ70bと循環チューブ78とを接続するバイパスチューブ79を設けることによって、供給ユニット60側で循環構造を形成するために供給カップリング41と循環カップリング42とを接続する必要がない。これにより、供給ユニット60にインク22を充填した後に記録ヘッド17の保存液をインク22に置換する際に、供給カップリング41と循環カップリング42とを分離する必要がないので、供給カップリング41と循環カップリング42との接続部分からインク22が漏れることがない。このため、インクジェット記録装置100内がインク22で汚れるのを抑制することができる。
【0054】
また、上記のように、下流側チューブ70bは、供給ポンプ72と記録ヘッド17とを接続し、循環チューブ78は、記録ヘッド17とインク補給チューブ75とを接続する。これにより、下流側チューブ70bを介して供給ユニット60から記録ヘッド17にインク22を容易に供給することができるとともに、循環チューブ78を介して記録ヘッド17から供給ユニット60にインク22を容易に戻すことができる。
【0055】
また、上記のように、バイパスチューブ79には、バイパスチューブ79を連通および遮断するクランプ80が設けられている。これにより、インクジェット記録装置100の着荷時に、バイパスチューブ79を連通状態にすることによって、下流側チューブ70bからバイパスチューブ79を介して循環チューブ78にインク22を容易に循環させることができる。また、供給ユニット60にインク22を充填した後に、バイパスチューブ79を遮断状態にすることによって、記録ヘッド17の保存液をインク22に容易に置換することができる。
【0056】
また、上記のように、循環チューブ78には、記録ヘッド17から排出される保存液が通過する排出チューブ81が接続されている。これにより、記録ヘッド17の保存液をインク22に置換する際に、保存液がサブインクタンク50に浸入するのを容易に抑制することができる。
【0057】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0058】
例えば、上記実施形態では、液体の一例としてインク22を用いる例について示したが、本発明はこれに限らない。供給ユニット60から記録ヘッド17に供給されるとともに記録ヘッド17から供給ユニット60に戻される液体として、クリーニング液を用いてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、排出チューブ(排出経路)81が循環チューブ(循環経路)78に接続される例について示したが、本発明はこれに限らず、排出チューブ(排出経路)81は循環チューブ(循環経路)78に接続されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0060】
17 記録ヘッド
22 インク(液体)
41 供給カップリング
42 循環カップリング
50 サブインクタンク(液体タンク)
60 供給ユニット
70a 上流側チューブ(送液経路)
70b 下流側チューブ(供給経路)
72 供給ポンプ(送液ポンプ)
75 インク補給チューブ(補給経路)
76 インクパック(補給容器)
78 循環チューブ(循環経路)
79 バイパスチューブ(バイパス経路)
80 クランプ(切替部材)
81 排出チューブ(排出経路)
100 インクジェット記録装置
P 用紙(記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7