(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20220928BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20220928BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20220928BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20220928BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220928BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220928BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08L45/00
C08K3/24
C08K3/36
C08K3/04
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2018102587
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】竹中 美夏子
(72)【発明者】
【氏名】宮瀬 晴子
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 貴裕
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-214297(JP,A)
【文献】特表2004-518806(JP,A)
【文献】特開2013-023568(JP,A)
【文献】特開2016-216578(JP,A)
【文献】特表2013-515817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0079895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B60C 1/00 - 19/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、軟化点60~150℃、α-ピネン単位含有率65~100質量%、β-ピネン単位含有率0~35質量%及びリモネン単位含有率10質量%以下のテルペン系樹脂と
、脂肪酸エステル系可塑剤とを含有し、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が5~80質量%、前記ブタジエンゴムの含有量が5~80質量%、前記イソプレン系ゴム及び前記ブタジエンゴムの合計含有量が60質量%以上であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が1~500質量部、前記テルペン系樹脂の含有量が0.1~100質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
テルペン系樹脂は、α-ピネンの単独重合体、α-ピネン単位含有率が99質量%以上のテルペン系樹脂、並びに、α-ピネン単位及びβ-ピネン単位を有する共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
テルペン系樹脂は、数平均分子量が500~775、z平均分子量が1300~1600である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が30~80質量部である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
シリカの窒素吸着比表面積が160m
2/g以上である請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
シリカの窒素吸着比表面積が190m
2/g以上である請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が0.1~50質量部である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
ブタジエンゴムは、シス含量が90質量%以上である請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
ゴム成分100質量部に対して、極性可塑剤を0.1~100質量部含む請求項1~8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
極性可塑剤のガラス転移温度が-80℃以下である請求項9記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
0℃におけるE*が3.0~8.0、-10℃と10℃におけるE*の差が10.0以下、0℃におけるtanδが0.14~0.26である請求項1~10のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のゴム組成物で構成されたトレッドを有する空気入りタイヤ。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載のゴム組成物で構成されたトレッドを有するスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪路面走行用としてスパイクタイヤの使用やタイヤへのチェーンの装着がされてきたが、粉塵問題等の環境問題が発生するため、これに代わるものとしてスタッドレスタイヤが提案されている。スタッドレスタイヤは、一般路面に比べて路面凹凸が大きい雪氷上路面で使用されるため、材料面及び設計面での工夫がなされており、低温特性に優れたジエン系ゴムを配合したゴム組成物、軟化効果を高めるために軟化剤を多量に配合したゴム組成物、等が開発されている(特許文献1等参照)。
【0003】
最近では、氷雪上性能の他、環境面の観点から、良好な耐摩耗性等も同時に付与することが要求されており、これらの性能をバランス良く改善することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、氷雪上性能、耐摩耗性をバランス良く改善するタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、軟化点60~150℃、α-ピネン単位含有率65~100質量%、β-ピネン単位含有率0~35質量%及びリモネン単位含有率10質量%以下のテルペン系樹脂とを含有し、前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が5~80質量%、前記ブタジエンゴムの含有量が5~80質量%、前記イソプレン系ゴム及び前記ブタジエンゴムの合計含有量が60質量%以上であり、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が1~500質量部、前記テルペン系樹脂の含有量が0.1~100質量部であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0007】
テルペン系樹脂は、α-ピネンの単独重合体、α-ピネン単位含有率が99質量%以上のテルペン系樹脂、並びに、α-ピネン単位及びβ-ピネン単位を有する共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0008】
テルペン系樹脂は、数平均分子量が500~775、z平均分子量が1300~1600であることが好ましい。
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が30~80質量部であることが好ましい。
【0009】
シリカの窒素吸着比表面積が160m2/g以上であることが好ましい。
シリカの窒素吸着比表面積が190m2/g以上であることが好ましい。
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が0.1~50質量部であることが好ましい。
【0010】
ブタジエンゴムは、シス含量が90質量%以上であることが好ましい。
ゴム成分100質量部に対して、極性可塑剤を0.1~100質量部含むことが好ましい。
極性可塑剤のガラス転移温度が-80℃以下であることが好ましい。
【0011】
前記ゴム組成物は、0℃におけるE*が3.0~8.0、-10℃と10℃におけるE*の差が10.0以下、0℃におけるtanδが0.14~0.26であることが好ましい。
【0012】
本発明は、前記ゴム組成物で構成されたトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
本発明はまた、前記ゴム組成物で構成されたトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、所定のテルペン系樹脂とを所定配合で含むタイヤ用ゴム組成物であるので、氷雪上性能、耐摩耗性をバランス良く改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記タイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、軟化点60~150℃、α-ピネン単位含有率65~100質量%、β-ピネン単位含有率0~35質量%及びリモネン単位含有率10質量%以下のテルペン系樹脂とを、所定配合で含有する。所定配合のイソプレン系ゴム及びブタジエンゴムを含む特定のゴム成分に特定のテルペン系樹脂を配合しているため、氷雪上性能、耐摩耗性がバランス良く改善される。
【0015】
このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下の作用機能によるものと推察される。
前記特定のテルペン系樹脂は、特にα-ピネン由来成分が本発明の範囲であるものは、イソプレン系ゴムとの相溶性に特に優れているため、例えば、冬用タイヤのような柔らかいゴム組成物に配合しても耐摩耗性を低下させることなく、氷雪上性能を向上できるものと推察される。また、上記テルペン系樹脂の軟化点や分子量(Mn、Mz、Mw等)を上記所定の範囲内にコントロールすることで、イソプレン系ゴムとの相溶性が更に向上し、ブルーム等による性能低下も防げるため、氷雪上性能が長期に渡って維持されるものと推察される。従って、前記ゴム組成物により、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランスが顕著に改善され、また、良好なこれらの性能の長期維持性能(耐久性)も付与できる。
【0016】
更に、前記ゴム組成物により、良好な低燃費性、操縦安定性を付与でき、氷雪上性能、耐摩耗性、低燃費性、操縦安定性の性能バランスも顕著に改善される。
【0017】
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、イソプレン系ゴムとブタジエンゴムとを含有するゴム成分を含む。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、5質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。該含有量は、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0019】
ブタジエンゴム(BR)としては特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。BRは、市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
BRのシス含量は、良好な氷雪上性能、耐摩耗性等の観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
なお、本明細書において、シス含量(シス-1,4-結合量)は、赤外吸収スペクトル分析や、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出される値である。
【0021】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、5質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量の上限は、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0022】
BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。
上記変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するBR等を使用できる。例えば、BRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に上記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性BRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。
【0023】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0024】
上記変性BRとして、例えば、(1)下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたBR等を好適に使用できる。
【0025】
【0026】
上記式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R4及びR5は結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
【0027】
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性BRとしては、なかでも、溶液重合のブタジエンゴムの重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたBR等が好適に用いられる。
【0028】
R1、R2及びR3としてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R4及びR5としてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R4及びR5が結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0029】
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記変性BRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性BRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0031】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0032】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0033】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
【0034】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なかでも、アルコキシシランにより変性された変性BRが好ましい。
なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
【0035】
上記変性BRの他の例としては、(2)活性末端を有するBRを用い、このBRの活性末端に、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するアルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行う変性工程(A)と、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させる縮合工程(B)とを含み、前記BRとして、下記(a)~(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物の存在下で重合したBRを用いる製造方法により得られるものも挙げられる。
(a)成分:ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物
(b)成分:アルミノオキサン、及び、一般式(1);AlRaRbRcで表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式(1)中、Ra及びRbは、同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。Rcは、Ra及びRbと同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(c)成分:その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物
【0036】
すなわち、活性末端を有するBR(BR(I))の活性末端に、アルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行い、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含有される元素のうちの少なくとも1種の元素を含む縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物のアルコキシシラン化合物残基を縮合反応させることによって、変性BR(変性BR(I))を製造することができる。
【0037】
上記変性工程(A)は、活性末端を有するBR(BR(I))を用い、このBRの活性末端に、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するアルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行う工程である。
【0038】
上記BR(I)としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン及びミルセンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を用いることができる。
【0039】
BR(I)を製造する際には、溶媒を用いて重合を行ってもよいし、無溶媒下で重合を行ってもよい。重合に用いる溶媒(重合溶媒)としては、不活性な有機溶媒を用いることができるが、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4~10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数6~20の飽和脂環式炭化水素、1-ブテン、2-ブテン等のモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0040】
上記BR(I)を製造する際の重合反応温度は、-30~200℃であることが好ましく、0~150℃であることがより好ましい。重合反応の形式としては特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。なお、重合溶媒を用いる場合は、この溶媒中のモノマー濃度が5~50質量%であることが好ましく、7~35質量%であることがより好ましい。また、BR製造の効率性の観点、及び、活性末端を有するBRを失活させない観点から、重合系内に、酸素、水又は炭酸ガス等の失活作用のある化合物を極力混入させないようにすることが好ましい。
【0041】
ここで、上記BR(I)としては、前記(a)~(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物(以下、「触媒」とも称する。)の存在下で重合したBRが用いられる。
【0042】
上記(a)成分は、ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物である。ランタノイドの中でも、ネオジム、プラセオジム、セリウム、ランタン、ガドリニウム、サマリウムが好ましく、ネオジムが特に好ましい。なお、上記ランタノイドとしては、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記ランタノイド含有化合物の具体例としては、ランタノイドのカルボン酸塩、アルコキサイド、β-ジケトン錯体、リン酸塩、亜リン酸塩等が挙げられる。このうち、カルボン酸塩、またはリン酸塩が好ましく、カルボン酸塩がより好ましい。
【0043】
上記ランタノイドのカルボン酸塩の具体例としては、一般式(2);(Rd-COO)3Mで表されるカルボン酸の塩を挙げることができる(ただし、一般式(2)中、Mは、ランタノイドを表す。Rdは、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。)。なお、上記一般式(2)中、Rdは、飽和又は不飽和のアルキル基であることが好ましく、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であることが好ましい。また、カルボキシル基は、一級、二級又は三級の炭素原子に結合している。具体的には、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、商品名「バーサチック酸」(シェル化学社製、カルボキシル基が三級炭素原子に結合しているカルボン酸)等の塩が挙げられる。これらのうち、バーサチック酸、2-エチルヘキサン酸、ナフテン酸の塩が好ましい。
【0044】
上記ランタノイドのアルコキサイドの具体例としては、一般式(3);(ReO)3Mで表されるものを挙げることができる(ただし、一般式(3)中、Mは、ランタノイドを表す。)。なお、上記一般式(3)中、「ReO」で表されるアルコキシ基の具体例としては、2-エチル-ヘキシルアルコキシ基、オレイルアルコキシ基、ステアリルアルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基等が挙げられる。これらのうち、2-エチル-ヘキシルアルコキシ基、ベンジルアルコキシ基が好ましい。
【0045】
上記ランタノイドのβ-ジケトン錯体の具体例としては、アセチルアセトン錯体、ベンゾイルアセトン錯体、プロピオニトリルアセトン錯体、バレリルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体等が挙げられる。これらのうち、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体が好ましい。
【0046】
上記ランタノイドのリン酸塩又は亜リン酸塩の具体例としては、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ビス(1-メチルヘプチル)、リン酸ビス(p-ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール-p-ノニルフェニル)、リン酸(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)、リン酸(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-p-ノニルフェニル、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸等の塩が挙げられる。これらのうち、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ビス(1-メチルヘプチル)、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸の塩が好ましい。
【0047】
上記ランタノイド含有化合物としては、これらのなかでも、ネオジムのリン酸塩、又は、ネオジムのカルボン酸塩が特に好ましく、ネオジムのバーサチック酸塩、又は、ネオジムの2-エチルヘキサン酸塩が最も好ましい。
【0048】
上記ランタノイド含有化合物を溶剤に可溶化させるため、若しくは、長期間安定に貯蔵するために、ランタノイド含有化合物とルイス塩基とを混合すること、又は、ランタノイド含有化合物とルイス塩基とを反応させて反応生成物とすることも好ましい。ルイス塩基の量は、ランタノイド1モルに対して、0~30モルとすることが好ましく、1~10モルとすることがより好ましい。ルイス塩基の具体例としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、一価又は二価のアルコール等が挙げられる。これまで述べてきた(a)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記(b)成分は、アルミノオキサン、及び、一般式(1);AlRaRbRcで表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式(1)中、Ra及びRbは、同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子を表す。Rcは、Ra及びRbと同一又は異なって、炭素数1~10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0050】
上記アルミノオキサン(以下、「アルモキサン」とも称する。)は、その構造が、下記一般式(4)又は(5)で表される化合物である。なお、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、及びJ.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で開示されている、アルモキサンの会合体であってもよい。
【0051】
【0052】
【0053】
上記一般式(4)及び(5)中、R6は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。pは、2以上の整数である。
【0054】
上記R6の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、イソブチル基、t-ブチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
また、上記pは、4~100の整数であることが好ましい。
【0055】
上記アルモキサンの具体例としては、メチルアルモキサン(以下、「MAO」とも称する。)、エチルアルモキサン、n-プロピルアルモキサン、n-ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t-ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、イソヘキシルアルモキサン等が挙げられる。これらの中でも、MAOが好ましい。上記アルモキサンは、公知の方法によって製造することができるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶媒中に、トリアルキルアルミニウム、又は、ジアルキルアルミニウムモノクロライドを加え、更に水、水蒸気、水蒸気含有窒素ガス、又は、硫酸銅5水塩や硫酸アルミニウム16水塩等の、結晶水を有する塩を加えて反応させることにより製造することができる。なお、上記アルモキサンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
上記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ-n-プロピルアルミニウム、水素化ジ-n-ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム、エチルアルミニウムジハイドライド、n-プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられる。これらの中でも、水素化ジイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウムが好ましく、水素化ジイソブチルアルミニウムが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
上記(c)成分は、その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物である。このようなヨウ素含有化合物を用いることで、シス含量が94質量%以上のBRを容易に製造することができる。上記ヨウ素含有化合物としては、その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有している限り特に制限されないが、例えば、ヨウ素、トリメチルシリルアイオダイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ベンジリデンアイオダイド、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化カドミウム、ヨウ化水銀、ヨウ化マンガン、ヨウ化レニウム、ヨウ化銅、ヨウ化銀、ヨウ化金等が挙げられる。
【0058】
なかでも、上記ヨウ素含有化合物としては、一般式(6):R7
qSiI4-q(一般式(6)中、R7は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基又は水素原子を表す。また、qは0~3の整数である。)で表されるヨウ化ケイ素化合物、一般式(7):R8
rI4-r(一般式(7)中、R8は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。また、rは1~3の整数である。)で表されるヨウ化炭化水素化合物又はヨウ素が好ましい。このようなヨウ化ケイ素化合物、ヨウ化炭化水素化合物、ヨウ素は有機溶剤への溶解性が良好であるため、操作が簡便になり、工業的な生産を行う上で有用である。
【0059】
上記ヨウ化ケイ素化合物(上記一般式(6)で示される化合物)の具体例としては、トリメチルシリルアイオダイド、トリエチルシリルアイオダイド、ジメチルシリルジヨード等が挙げられる。なかでも、トリメチルシリルアイオダイドが好ましい。
また、上記ヨウ化炭化水素化合物(上記一般式(7)で示される化合物)の具体例としては、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ベンジリデンアイオダイド等が挙げられる。なかでも、メチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタンが好ましい。
【0060】
上記ヨウ素含有化合物としては、これらのなかでも、ヨウ素、トリメチルシリルアイオダイド、トリエチルシリルアイオダイド、ジメチルシリルジヨード、メチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタンが特に好ましく、トリメチルシリルアイオダイドが最も好ましい。上記ヨウ素含有化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
上記各成分((a)~(c)成分)の配合割合は、必要に応じて適宜設定すればよい。(a)成分の配合量は、例えば、100gの共役ジエン系化合物に対して、0.00001~1.0ミリモルであることが好ましく、0.0001~0.5ミリモルであることがより好ましい。
【0062】
上記(b)成分がアルモキサンである場合、アルモキサンの配合量としては、(a)成分と、アルモキサンに含まれるアルミニウム(Al)とのモル比で表すことができ、「(a)成分」:「アルモキサンに含まれるアルミニウム(Al)」(モル比)が1:1~1:500であることが好ましく、1:3~1:250であることがより好ましく、1:5~1:200であることが更に好ましい。
【0063】
また、上記(b)成分が有機アルミニウム化合物である場合、有機アルミニウム化合物の配合量としては、(a)成分と、有機アルミニウム化合物とのモル比で表すことができ、「(a)成分」:「有機アルミニウム化合物」(モル比)が1:1~1:700であることが好ましく、1:3~1:500であることがより好ましい。
【0064】
上記(c)成分の配合量としては、(c)成分に含有されるヨウ素原子と、(a)成分とのモル比で表すことができ、((c)成分に含有されるヨウ素原子)/((a)成分)(モル比)が0.5~3.0であることが好ましく、1.0~2.5であることがより好ましく、1.2~2.0であることが更に好ましい。
【0065】
上述した触媒には、(a)~(c)成分以外に、必要に応じて、共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を、(a)成分1モルに対して、1000モル以下含有させることが好ましく、3~1000モル含有させることがより好ましく、5~300モル含有させることが更に好ましい。触媒に共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有させると、触媒活性が一段と向上するために好ましい。このとき、用いられる共役ジエン系化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、非共役ジエン系化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、1,4-ビニルヘキサジエン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0066】
上記(a)~(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物は、例えば、溶媒に溶解した(a)~(c)成分、更に必要に応じて添加される共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を反応させることにより、調製することができる。なお、調製の際の各成分の添加順序は任意であってよい。ただし、各成分を予め混合、反応させるとともに、熟成させておくことが、重合活性の向上及び重合開始誘導期間の短縮の観点から好ましい。熟成温度は0~100℃とすることが好ましく、20~80℃とすることがより好ましい。なお、熟成時間は特に制限されない。また、重合反応槽に添加する前に、各成分どうしをライン中で接触させてもよいが、その場合の熟成時間は0.5分以上あれば充分である。なお、調製した触媒は、数日間は安定である。
【0067】
上記変性BR(I)を製造する際に用いるBR(I)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、すなわち、分子量分布(Mw/Mn)が、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。分子量分布が3.5を超えるものであると、破壊特性、低発熱性を始めとするゴム物性が低下する傾向にある。一方、分子量分布の下限は、特に限定されない。
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量と数平均分子量との割合(重量平均分子量/数平均分子量)により算出される値を意味する。ここで、BRの重量平均分子量は、GPC法(Gel Permeation Chromatography法)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、BRの数平均分子量は、GPC法で測定されたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0068】
なお、上記BR(I)の、ビニル含量、シス含量は、重合温度をコントロールすることによって、容易に調整することができる。また、上記Mw/Mnは上記(a)~(c)成分のモル比をコントロールすることによって、容易に調整することができる。
【0069】
上記BR(I)の100℃におけるムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40であることがより好ましい。このムーニー粘度は、上記(a)~(c)成分のモル比をコントロールすることにより容易に調整することができる。
【0070】
上記BR(I)の1,2-ビニル結合の含量(1,2-ビニル結合量、ビニル含量)は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。また、上記BR(I)の1,2-ビニル結合量としては、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。
なお、BRの1,2-ビニル結合量は、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出した値である。
【0071】
上記変性工程(A)に用いるアルコキシシラン化合物(以下、「変性剤」とも称する。)としては、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するものである。アルコキシシリル基以外の反応基としては、特にその種類は限定されないが、例えば、(f);エポキシ基、(g);イソシアネート基、(h);カルボニル基、及び(i);シアノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。なお、上記アルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよいし、該アルコキシシラン化合物と該部分縮合物の混合物であってもよい。
【0072】
ここで、「部分縮合物」とは、アルコキシシラン化合物のSiOR(ORは、アルコキシ基を表す。)の一部(すなわち、全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。なお、上記変性反応に用いるBRは、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
【0073】
上記アルコキシシラン化合物の具体例としては、(f);エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「エポキシ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランが好適なものとして挙げられるが、これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランがより好ましい。
【0074】
また、(g);イソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0075】
また、(h);カルボニル基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「カルボニル基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、3-メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0076】
更に、(i);シアノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「シアノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、3-シアノプロピルトリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3-シアノプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3-シアノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0077】
上記変性剤としては、これらのなかでも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシランが特に好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
これら変性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上述のアルコキシシラン化合物の部分縮合物を用いることもできる。
【0078】
上記変性工程(A)の変性反応では、上記アルコキシシラン化合物の使用量は、上記(a)成分1モルに対して、0.01~200モルであることが好ましく、0.1~150モルであることがより好ましい。なお、上記変性剤の添加方法は特に制限されないが、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法などが挙げられ、なかでも、一括して添加する方法が好ましい。
【0079】
上記変性反応は、溶液中で行うことが好ましく、この溶液としては、重合時に使用した未反応モノマーを含んだ溶液をそのまま使用することができる。また、変性反応の形式については特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器やインラインミキサなどの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作などの前に行うことが好ましい。
【0080】
上記変性反応の温度は、BRを重合する際の重合温度と同様とすることができる。具体的には20~100℃が好ましく、30~90℃がより好ましい。また、上記変性反応における反応時間は、5分~5時間であることが好ましく、15分~1時間であることがより好ましい。なお、縮合工程(B)において、重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後、所望により、公知の老化防止剤や反応停止剤を添加してもよい。
【0081】
上記変性工程(A)においては、上記変性剤の他に、縮合工程(B)において、活性末端に導入された変性剤であるアルコキシシラン化合物残基と縮合反応し、消費されるものを更に添加することが好ましい。具体的には、官能基導入剤を添加することが好ましい。
【0082】
上記官能基導入剤は、活性末端との直接反応を実質的に起こさず、反応系に未反応物として残存するものであれば特に制限されないが、例えば、上記変性剤として用いるアルコキシシラン化合物とは異なるアルコキシシラン化合物、即ち、(j);アミノ基、(k);イミノ基、及び(l);メルカプト基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有するアルコキシシラン化合物であることが好ましい。なお、この官能基導入剤として用いられるアルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよいし、官能基導入剤として用いるアルコキシシラン化合物の部分縮合物でないものと該部分縮合物との混合物であってもよい。
【0083】
上記官能基導入剤の具体例としては、(j);アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「アミノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2-ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2-ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(1-ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シランや、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、及び、これらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物又はエチルジメトキシシリル化合物などが挙げられるが、なかでも、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが特に好ましい。
【0084】
また、(k);イミノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「イミノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン、3-(1-ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン、また、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-〔10-(トリエトキシシリル)デシル〕-4-オキサゾリン、N-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールが好適なものとして挙げられるが、これらの中でも、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾールがより好ましい。
【0085】
また、(l);メルカプト基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「メルカプト基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-メルカプトプロピル(モノエトキシ)ジメチルシラン、メルカプトフェニルトリメトキシシラン、メルカプトフェニルトリエトキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0086】
上記官能基導入剤としては、これらのなかでも、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランが特に好ましく、3-アミノプロピルトリエトキシシランが最も好ましい。
これらの官能基導入剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
上記官能基導入剤としてアルコキシシラン化合物を用いる場合、その使用量は、上記(a)成分1モルに対して、0.01~200モルが好ましく、0.1~150モルがより好ましい。
【0088】
上記官能基導入剤の添加時期としては、上記変性工程(A)において上記BR(I)の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後であって、上記縮合工程(B)における縮合反応が開始される前が好ましい。縮合反応開始後に添加した場合、官能基導入剤が均一に分散せず触媒性能が低下する場合がある。官能基導入剤の添加時期としては、具体的には、変性反応開始5分~5時間後であることが好ましく、変性反応開始15分~1時間後であることがより好ましい。
【0089】
なお、上記官能基導入剤として、上記官能基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合、活性末端を有するBR(I)と、反応系に加えられた実質上化学量論的量の変性剤とが変性反応を起こし、実質的に活性末端の全てにアルコキシシリル基が導入され、更に上記官能基導入剤を添加することにより、このBRの活性末端の当量より多くのアルコキシシラン化合物残基が導入されることになる。
【0090】
アルコキシシリル基同士の縮合反応は、遊離のアルコキシシラン化合物とBR末端のアルコキシシリル基の間で起こること、また場合によってはBR末端のアルコキシシリル基同士で起こることが、反応効率の観点から好ましく、遊離のアルコキシシラン化合物同士の反応は好ましくない。したがって、官能基導入剤としてアルコキシシラン化合物を新たに加える場合には、そのアルコキシシリル基の加水分解性が、BR末端に導入したアルコキシシリル基の加水分解性に比べて低いことが好ましい。
【0091】
例えば、BR(I)の活性末端との反応に用いられるアルコキシシラン化合物には加水分解性の高いトリメトキシシリル基を含有する化合物を用い、官能基導入剤として新たに添加するアルコキシシラン化合物には、該トリメトキシシリル基含有化合物より加水分解性が低いアルコキシシリル基(例えば、トリエトキシシリル基)を含有するものを用いる組み合わせが好ましい。
【0092】
上記縮合工程(B)は、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させる工程である。
【0093】
上記縮合触媒は、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するものであれば、特に制限されないが、例えば、チタン(Ti)(第4族)、スズ(Sn)(第14族)、ジルコニウム(Zr)(第4族)、ビスマス(Bi)(第15族)及びアルミニウム(Al)(第13族)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むものであることが好ましい。
【0094】
上記縮合触媒の具体例としては、スズ(Sn)を含む縮合触媒として、例えば、ビス(n-オクタノエート)スズ、ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ラウレート)スズ、ビス(ナフトエネート)スズ、ビス(ステアレート)スズ、ビス(オレエート)スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジn-オクタノエート、ジブチルスズジ2-エチルヘキサノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジブチルスズビス(2-エチルヘキシルマレート)、ジn-オクチルスズジアセテート、ジn-オクチルスズジn-オクタノエート、ジn-オクチルスズジ2-エチルヘキサノエート、ジn-オクチルスズジラウレート、ジn-オクチルスズマレート、ジn-オクチルスズビス(ベンジルマレート)、ジn-オクチルスズビス(2-エチルヘキシルマレート)等が挙げられる。
【0095】
ジルコニウム(Zr)を含む縮合触媒として、例えば、テトラエトキシジルコニウム、テトラn-プロポキシジルコニウム、テトラi-プロポキシジルコニウム、テトラn-ブトキシジルコニウム、テトラsec-ブトキシジルコニウム、テトラtert-ブトキシジルコニウム、テトラ(2-エチルヘキシルオキシド)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2-エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2-エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等が挙げられる。
【0096】
ビスマス(Bi)を含む縮合触媒として、例えば、トリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス等が挙げられる。
【0097】
アルミニウム(Al)を含む縮合触媒として、例えば、トリエトキシアルミニウム、トリn-プロポキシアルミニウム、トリi-プロポキシアルミニウム、トリn-ブトキシアルミニウム、トリsec-ブトキシアルミニウム、トリtert-ブトキシアルミニウム、トリ(2-エチルヘキシルオキシド)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2-エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等が挙げられる。
【0098】
チタン(Ti)を含む縮合触媒として、例えば、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラn-プロポキシチタニウム、テトラi-プロポキシチタニウム、テトラn-ブトキシチタニウム、テトラn-ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラsec-ブトキシチタニウム、テトラtert-ブトキシチタニウム、テトラ(2-エチルヘキシルオキシド)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2-エチルヘキシルオキシド)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2-エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2-エチルヘキサノエート)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、テトラキス(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム等が挙げられる。
【0099】
これらの中でも、上記縮合触媒としては、チタン(Ti)を含む縮合触媒がより好ましい。チタン(Ti)を含む縮合触媒の中でも、チタン(Ti)のアルコキシド、カルボン酸塩又はアセチルアセトナート錯塩であることが更に好ましい。特に好ましくは、テトラi-プロポキシチタニウム(テトライソプロピルチタネート)である。チタン(Ti)を含む縮合触媒を用いることにより、変性剤として用いる上記アルコキシシラン化合物の残基、及び官能基導入剤として用いる上記アルコキシシラン化合物の残基の縮合反応をより効果的に促進させることができる。
【0100】
上記縮合触媒の使用量としては、縮合触媒として用いることができる上記種々の化合物のモル数が、反応系内に存在するアルコキシシリル基総量1モルに対して、0.1~10モルとなることが好ましく、0.3~5モルが特に好ましい。
【0101】
上記縮合触媒は、上記変性反応前に添加することもできるが、変性反応後、かつ縮合反応開始前に添加することが好ましい。上記縮合触媒の添加時期としては、具体的には、変性反応開始5分~5時間後であることが好ましく、変性反応開始15分~1時間後であることがより好ましい。
【0102】
上記縮合工程(B)の縮合反応は、水溶液中で行うことが好ましく、縮合反応時の温度は85~180℃であることが好ましく、100~170℃であることがより好ましく、110~150℃であることが特に好ましい。
【0103】
上記縮合反応が行われる水溶液のpHは9~14であることが好ましく、10~12であることがより好ましい。水溶液のpHをこのような範囲とすることにより、縮合反応が促進され、変性BR(I)の経時安定性を改善することができる。
【0104】
上記縮合反応の反応時間は、5分~10時間であることが好ましく、15分~5時間程度であることがより好ましい。また、縮合反応時の反応系内の圧力は、0.01~20MPaであることが好ましく、0.05~10MPaであることがより好ましい。
【0105】
縮合反応の形式については特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と同時に脱溶媒を行ってもよい。
【0106】
上述のように縮合反応を行った後、従来公知の後処理を行い、目的の変性BRを得ることができる。
【0107】
上記変性BRの他の例としては、(3)スズ変性BRを使用可能である。
スズ変性BRとしては特に限定されないが、リチウム開始剤により重合され、スズ原子の含有量が50~3000ppm、ビニル含量が5~50質量%、分子量分布が2以下のスズ変性ブタジエンゴム(BR)が好ましい。
【0108】
上記スズ変性BRは、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行った後、スズ化合物を添加することにより得られ、更に該スズ変性BR分子の末端はスズ-炭素結合で結合されていることが好ましい。
【0109】
上記リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウムなどのリチウム系化合物が挙げられる。
また、上記スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライドなどが挙げられる。
【0110】
上記スズ変性BRのスズ原子の含有量は、50ppm以上であることが好ましい。また、3000ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。
【0111】
上記スズ変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましい。分子量分布の下限は特に限定されないが、1以上であることが好ましい。上記スズ変性BRのビニル含量は5質量%以上であることが好ましい。また、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0112】
前記ゴム組成物において、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及びBRの合計含有量は、60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。
【0113】
前記ゴム組成物は、前記効果を阻害しない範囲で他のゴム成分を配合してもよい。他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。
【0114】
(シリカ)
前記ゴム組成物は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、充填剤としてシリカを含む。シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上である。該含有量の上限は、500質量部以下、好ましくは300質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上記範囲とすることで、シリカの良好な分散性が得られ、優れた氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
【0116】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは70m2/g以上、より好ましくは160m2/g以上、更に好ましくは190m2/g以上である。また、シリカのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは500m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、更に好ましくは250m2/g以下である。上記範囲とすることで、シリカの良好な分散性が得られ、優れた氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0117】
前記ゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカ含有率は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0118】
(シランカップリング剤)
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Z、エボニック社製のSi363などのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下が更に好ましく、10質量部以下がより更に好ましい。上記範囲とすることで、配合量に見合った効果が得られ、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
【0120】
(カーボンブラック)
前記ゴム組成物は、帯電防止性及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、充填剤としてカーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは7質量部以下である。上記範囲とすることで、カーボンブラックの良好な分散性が得られ、良好な氷雪上性能、耐摩耗性及び低燃費性能の性能バランス等が得られる傾向がある。
【0122】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上が更に好ましい。また、上記N2SAは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、130m2/g以下が更に好ましい。上記範囲とすることで、カーボンブラックの良好な分散性が得られ、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0123】
(テルペン系樹脂)
前記ゴム組成物は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、所定の軟化点、α-ピネン単位含有率、β-ピネン単位含有率及びリモネン単位含有率を有するテルペン系樹脂を含む。
【0124】
前記テルペン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。また、上記含有量は、100質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲とすることで、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
【0125】
前記テルペン系樹脂は、軟化点が60~150℃である。下限は、70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上が更に好ましい。上限は、140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性が得られる傾向があり、下限以下にすることで、良好な加工性が得られる傾向がある。
なお、軟化点は、ASTM D6090(公開日1997年)に準拠して測定する値である。
【0126】
テルペン系樹脂は、数平均分子量(Mn)が500~775であることが好ましい。下限は、580以上がより好ましく、620以上が更に好ましい。上限は、765以下がより好ましく、755以下が更に好ましい。上記範囲とすることで、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
【0127】
テルペン系樹脂は、z平均分子量(Mz)が1300~1600であることが好ましい。下限は、1310以上がより好ましく、1320以上が更に好ましい。上限は、1570以下がより好ましく、1550以下が更に好ましい。上記範囲とすることで、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
【0128】
テルペン系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が800~1100であることが好ましい。上記範囲とすることで、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
【0129】
テルペン系樹脂は、分子量分布(Mw/Mn)が1.30~1.70であることが好ましい。上記範囲とすることで、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
【0130】
なお、Mn、Mw、Mzは、ASTM D5296(公開日2005年)に記載されているゲル浸透/サイズ排除クロマトグラフィー(GPC-SEC)を用いて測定する値である。
【0131】
テルペン系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が25~90℃であることが好ましい。下限は、35℃以上がより好ましく、38℃以上が更に好ましい。上限は、85℃以下がより好ましく、81℃以下が更に好ましい。上記範囲とすることで、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。
なお、Tgは、TA Instrumentsの示差走査熱量計SC Q2000を用いて、ASTM D 6604(公開日2013年)に従って測定する値である。
【0132】
前記テルペン系樹脂は、リモネン単位含有率(テルペン系樹脂100質量%中のリモネン単位の含有率)が10質量%以下である。好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
【0133】
前記テルペン系樹脂は、1種のテルペン(テルペンモノマー)が重合された単独重合体、2種以上のテルペンが共重合された共重合体、1種以上のテルペンと1種以上のテルペン以外の他のモノマーとの共重合体のいずれでもよい。
【0134】
前記テルペン系樹脂を構成するテルペンの基本的な分子式は、(C5H8)n(nは連結イソプレン単位の数(nは2以上))である。好適なテルペンの例としては、α-ピネン、β-ピネン、δ-3-カレン、β-フェランドレン;α-ピネン、β-ピネン、δ-3-カレン、δ-2-カレン、テルピネンの熱分解物;これらの組み合わせ;等が挙げられる。なかでも、α-ピネン、β-ピネンが好ましく、α-ピネンがより好ましい。
【0135】
前記テルペン系樹脂は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、テルペン単位含有率(テルペン系樹脂100質量%中のテルペン単位の含有率)が80質量%以上であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。この場合、テルペン系樹脂は、テルペンのみを構成単位とする単独重合体又は共重合体のいずれでもよい。
【0136】
前記テルペン系樹脂は、α-ピネン単位を有する重合体、α-ピネン単位及びβ-ピネン単位を有する重合体を好適に使用できる。具体的に、α-ピネンの単独重合体、α-ピネン単位及びβ-ピネン単位を有する共重合体等が挙げられる。
【0137】
前記テルペン系樹脂において、α-ピネン単位含有率(テルペン系樹脂100質量%中のα-ピネン単位の含有率)は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、65~100質量%の範囲内である。好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上で、100質量%でもよい。
【0138】
テルペン系樹脂において、β-ピネン単位含有率(テルペン系樹脂100質量%中のβ-ピネン単位の含有率)は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、0~35質量%の範囲内である。好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下で、0質量%でもよい。
【0139】
前記テルペン系樹脂において、α-ピネン単位及びβ-ピネン単位の合計含有率(テルペン系樹脂100質量%中のα-ピネン単位及びβ-ピネン単位の合計含有率)は、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、80質量%以上であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
【0140】
前記テルペン系樹脂は、例えば、ルイス酸触媒を用い、1種又は2種以上のテルペンモノマー等をカチオン重合し、合成できる。
ルイス酸触媒としては特に限定されず、BF3、BBr3、AlF3、AlBr3、TiCl4、TiBr4、TiL4、FeCl3、FeCl2、SnCl4、WCl6、MoCl5、ZrCl4、SbCl3、SbCl5、TeCl2及びZnCl2等の金属ハライド;Et3Al、Et2AlCl3、EtAlCl2、Et3Al2Cl3、(i-Bu)3Al、(i-Bu)2AlCl、(i-Bu)AlCl2、Me4Sn、Et4Sn、Bu4Sn、Bu3SnCl等の金属アルキル化合物;Al(OR)3-xClx、Ti(OR)4-yCly(Rはアルキル基又はアリール基を表し、xは1又は2の整数を表し、yは1~3の整数を表す。)等の金属アルコキシ化合物;等が挙げられる。また、(i)AlCl3と、トリメチルアミン等のアルキル第3級アミンとの組み合わせ;(ii)AlCl3と、トリアルキルシリコンハロゲン化物、低級ジアルキルフェニルシリコンハロゲン化物、ヘキサアルキルジシロキサン等の有機ケイ素化合物との組み合わせ;(iii)AlCl3と、塩化トリメチルゲルマニウム、トリエチルゲルマニウムエトキシド等の有機ハロゲン化ゲルマニウムとの組み合わせ;(iv)炭素数1~18の低級アルキル基;等も挙げられる。
【0141】
カチオン重合を溶液重合により実施する場合、使用可能な溶媒としては、テルペンモノマーが重合可能なものであれば特に限定されず、例えば、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素等が使用可能である。具体的には、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、1,1-ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、n-プロピルクロライド、1-クロロ-n-ブタン、2-クロロ-n-ブタン等);芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、ナフサ等);脂肪族炭化水素系溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等)が挙げられる。重合反応は、例えば、-120~100℃、-80~80℃、5~50℃等の温度範囲で実施できる。
【0142】
(液体可塑剤)
前記ゴム組成物は、加工性、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、液体可塑剤を含むことが好ましい。液体可塑剤は、常温(25℃)で液体状態の可塑剤である。
【0143】
液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲とすることで、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。なお、後述の極性可塑剤(液体状)の含有量も同様であることが好適である。
【0144】
液体可塑剤は、ガラス転移温度(Tg)が-60℃以下であることが好ましい。より好ましくは-80℃以下、更に好ましくは-90℃以下である。下限は特に限定されないが、-200℃以上が好ましく、-150℃以上がより好ましい。上記範囲とすることで、良好な氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等が得られる傾向がある。なお、後述の極性可塑剤(液体状)のTgも同様であることが好適である。
なお、Tgは、前述のテルペン系樹脂と同様の方法で測定できる。
【0145】
液体可塑剤としては、オイル、液状ジエン系ポリマー、極性可塑剤(エステル系可塑剤等)等が挙げられる。なかでも、氷雪上性能及び耐摩耗性の性能バランス等の観点から、エステル系可塑剤(脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤(ホスフェート系可塑剤)等)の極性可塑剤が好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0146】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。
【0147】
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
【0148】
エステル系可塑剤としては、前記植物油;グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル、グリセリン脂肪酸トリエステル等の合成品や植物油の加工品;リン酸エステル(ホスフェート系、これらの混合物等);が挙げられる。
【0149】
エステル系可塑剤として、例えば、下記式で示される脂肪酸エステルを好適に使用できる。
【化4】
(式中、R
11は、炭素数1~8の直鎖若しくは分枝状アルキル基、炭素数1~8の直鎖若しくは分枝状アルケニル基、又は1~5個のヒドロキシル基で置換された炭素数2~6の直鎖又は分枝状アルキル基を表す。R
12は、炭素数11~21のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0150】
R11としては、メチル基、エチル基、2-エチルヘキシル基、イソプロピル基、オクチル基、これらの基が1~5個のヒドロキシル基で置換された基、等が挙げられる。R12としては、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等の直鎖又は分岐状アルキル基、アルケニル基が挙げられる。
【0151】
脂肪酸エステルとしては、オレイン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、リノール酸アルキル、パルミチン酸アルキル等が挙げられる。なかでも、オレイン酸アルキル(オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸オクチル等)が好ましい。この場合、脂肪酸エステル100質量%中のオレイン酸アルキルの含有量は、80質量%以上が好ましい。
【0152】
脂肪酸エステルとしては、脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、パルミチン酸等)と、アルコール(エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトール、イノシトール等)との脂肪酸モノエステル及び脂肪酸ジエステル等も挙げられる。なかでも、オレイン酸モノエステルが好ましい。この場合、脂肪酸モノエステル及び脂肪酸ジエステルの合計量100質量%中のオレイン酸モノエステルの含有量は、80質量%以上が好ましい。
【0153】
エステル系可塑剤として、リン酸エステルも好適に使用できる。
リン酸エステルは、炭素数が12~30の化合物であることが好ましく、なかでも、炭素数12~30のリン酸トリアルキルが好適である。なお、リン酸トリアルキルの炭素原子数は、3つのアルキル基の炭素原子の総数を意味し、当該3つのアルキル基は、同一の基でも、異なる基でもよい。アルキル基は、例えば、直鎖又は分岐状アルキル基が挙げられ、酸素原子などのヘテロ原子を含むものでも、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子で置換されたものでもよい。
【0154】
リン酸エステルとしては、リン酸と、炭素数1~12のモノアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのモノ、ジ又はトリエステル;前記リン酸トリアルキルのアルキル基の1又は2個がフェニル基に置換された化合物;等、公知のリン酸エステル系可塑剤も挙げられる。具体的には、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2-ブトキシエチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0155】
(他の材料)
前記ゴム組成物は、前記テルペン系樹脂以外の固体レジン(常温(25℃)で固体状態のレジン)を含んでもよい。固体レジンとしては、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。他の固体レジンを含む場合、前記テルペン系樹脂及び該テルペン系樹脂以外の固体レジン(他のレジン)の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましく、10~70質量部がより好ましい。
【0156】
前記ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0157】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0158】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。上限以下にすることで、良好なタイヤの外観が得られる傾向がある。
【0159】
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部以上、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0160】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0161】
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0162】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0163】
前記ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0164】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。なお、ワックスの含有量は、耐オゾン性、コストの点から、適宜設定すれば良い。
【0165】
前記ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な性能を付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
【0166】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な性能が得られる傾向がある。
【0167】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0168】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、通常、0.3~10質量部、好ましくは0.5~7質量部である。
【0169】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0170】
前記ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0171】
前記ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0172】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0173】
上記ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。上記ゴム組成物は、タイヤのトレッド、特にスタッドレスタイヤのトレッド(単層トレッド、多層トレッドのキャップトレッド)として好適に使用可能である。
【0174】
前記ゴム組成物(加硫ゴム組成物)は、氷雪上性能、操縦安定性の性能バランス等の観点から、0℃におけるE*(複素弾性率)が3.0~10.0MPaであることが好ましい。下限は、3.5MPa以上がより好ましい。上限は、9.0MPa以下がより好ましく、8.0MPa以下が更に好ましい。
【0175】
前記ゴム組成物(加硫ゴム組成物)は、氷雪上性能、耐摩耗性の性能バランス等の観点から、-10℃と10℃におけるE*(複素弾性率)の差((-10℃におけるE*)-(10℃のE*))が10.0MPa以下であることが好ましい。8.0MPa以下がより好ましく、7.0MPa以下が更に好ましい。
【0176】
前記ゴム組成物(加硫ゴム組成物)は、氷上性能の観点から、0℃におけるtanδ(損失正接)が0.14~0.26であることが好ましい。上限は、0.25以下がより好ましい。
【0177】
(空気入りタイヤ)
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド(キャップトレッドなど)の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、タイヤが得られる。本発明のタイヤは、スタッドレスタイヤ(特に乗用車用スタッドレスタイヤ)として好適に使用できる。
【実施例】
【0178】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0179】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:RSS#3
BR:宇部興産製のBR150B(シス95質量%以上)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220
シリカ:ローティア社製ZEOSIL P200MP(N2SA215m2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi-69
テルペン系樹脂1:α-ピネンホモポリマー(軟化点130℃、Mn742g/mol、Mz1538g/mol、Mw1055g/mol、Mw/Mn1.42、Tg81℃、リモネン単位含有率0質量%)
テルペン系樹脂2:ピネンポリマー(α-ピネン90質量%、β-ピネン10質量%、軟化点130℃、Mn657g/mol、Mz1332g/mol、Mw917g/mol、Mw/Mn1.40、Tg80℃、リモネン単位含有率0質量%)
テルペン系樹脂3:ピネンポリマー(α-ピネン20質量%、β-ピネン80質量%、軟化点130℃、Mn790g/mol、Mz1891g/mol、Mw1101g/mol、Mw/Mn1.57、Tg78℃、リモネン単位含有率0質量%))
樹脂4:α-メチルスチレン樹脂(クレイトンポリマー製Sylvares SA120 軟化点120℃)
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエースワックス
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
液体可塑剤1:出光興産(株)製のPS-32(ミネラルオイル)
液体可塑剤2:グリセリン脂肪酸モノエステル(H&R社製Pionier TP130B、高オレイン酸ヒマワリ油のモノエステル、Tg-110℃)
液体可塑剤3:Tris(2-ethylhexyl)phosphate(ホスフィン系可塑剤、ランクセス社製Disflmoll TOF、Tg-105℃)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
【0180】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、天然ゴムとシリカ、ブタジエンゴムとシリカを添加し、それぞれ150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物(マスターバッチ)を得た。次に、得られたマスターバッチに、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を添加し、150℃の条件下で2分間混練りし、混練り物を得た。更に、硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた各未加硫ゴム組成物を170℃で15分間加硫し、加硫ゴム組成物(試験片)を得た。
【0181】
また、得られた各未加硫ゴム組成物をそれぞれキャップトレッドの形状に成型し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて170℃で15分間加硫することにより、試験用スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0182】
得られた加硫ゴム組成物(試験片)、試験用スタッドレスタイヤについて、室温暗所で三ヶ月保管した後、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0183】
<氷上性能>
試験用スタッドレスタイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は0~-5℃であった。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例1をリファレンスとして、下記式から算出した。指数が大きいほど、氷上性能に優れることを示す。
(氷上性能)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
【0184】
<操縦安定性>
試験用スタッドレスタイヤを試験用実車(国産FF車、排気量:2000cc)の全輪に装着し、蛇行運転を行った。その際における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが官能評価し、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
【0185】
<転がり抵抗(低燃費性能)>
転がり抵抗試験機を用い、試験用スタッドレスタイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100としたときの指数で表示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示している。
【0186】
<耐摩耗性>
加硫ゴム組成物について、(株)岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用い、表面回転速度50m/分、付加荷重3.0kg、落砂量15g/分でスリップ率20%の条件下にて、摩耗量を測定し、該摩耗量の逆数を算出した。比較例1の摩耗量の逆数を100とし、他の配合の摩耗量の逆数を指数で表した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0187】
【0188】
表1より、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、シリカを含む配合に、所定の軟化点、α-ピネン単位含有率、β-ピネン単位含有率、リモネン単位含有率を有するテルペン系樹脂を所定配合で添加した実施例では、氷雪上性能、耐摩耗性の性能バランスが顕著に改善された。また、氷雪上性能、耐摩耗性、操縦安定性、低燃費性の性能バランスも顕著に改善された。