(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20220928BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220928BHJP
C08L 25/16 20060101ALI20220928BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20220928BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220928BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L9/00
C08L25/16
C08L45/00
C08K3/36
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2018111088
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 達也
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-229286(JP,A)
【文献】特開2013-087194(JP,A)
【文献】特開2009-215540(JP,A)
【文献】特開2016-003318(JP,A)
【文献】特開2013-053296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B60C 1/00 - 19/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン量25質量%以上のスチレンブタジエンゴム
及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、
重量平均分子量が400以下のα-メチルスチレン・インデン共重合樹脂と、
シリカとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂の含有量が0.1~100質量部、前記シリカの含有量が80質量部以上であ
り、
前記ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が70質量%以上、ブタジエンゴムの含有量が10質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
重量平均分子量が400以下のインデン樹脂を含む請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が5質量%以上である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
窒素吸着比表面積が170~300m
2/gのシリカを含有する請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂中、α-メチルスチレン単位の含有量が15~70モル%である請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには、安全性等の確保のため、ウェットグリップ性能が要求される。この要求に応えるため、スチレンブタジエンゴムやシリカが汎用されているが、スチレンブタジエンゴムを使用すると、低燃費性や耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0003】
また、ウェットグリップ性能を改善する手法として、α-メチルスチレン樹脂、テルペン樹脂等の樹脂を配合する手法も知られており、特許文献1では、所定量のインデンを含む樹脂が検討されている。しかしながら、近年では、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スチレン量25質量%以上のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、重量平均分子量が400以下のα-メチルスチレン・インデン共重合樹脂と、シリカとを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂の含有量が0.1~100質量部、前記シリカの含有量が80質量部以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0007】
上記ゴム組成物は、重量平均分子量が400以下のインデン樹脂を含むことが好ましい。
【0008】
前記ゴム成分100質量%中、前記スチレンブタジエンゴムの含有量が10質量%以上であることが好ましい。
【0009】
上記ゴム組成物は、窒素吸着比表面積が170~300m2/gのシリカを含有することが好ましい。
【0010】
前記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂中、α-メチルスチレン単位の含有量が15~70モル%であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スチレン量25質量%以上のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、重量平均分子量が400以下のα-メチルスチレン・インデン共重合樹脂と、シリカとを含み、ゴム成分100質量部に対して、α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂の含有量が0.1~100質量部、シリカの含有量が80質量部以上であるタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性をバランス良く改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、スチレン量25質量%以上のスチレンブタジエンゴム(SBR)を含むゴム成分と、重量平均分子量(Mw)が400以下のα-メチルスチレン・インデン共重合樹脂と、シリカとを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂の含有量が0.1~100質量部、前記シリカの含有量が80質量部以上である。
【0014】
上記ゴム組成物は前述の効果が得られるが、これは以下の作用効果により奏するものと推察される。
上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂は、構造中にスチレンを有するため、同じく構造中にスチレンを有するSBRとの相溶性(親和性)が高く、SBR中で容易に分散することができ、かつ、走行中にSBRから分離しにくい。
また、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂は、Mwが400以下であるため、ウェット走行時に相当する10~30℃でブリードしやすい。
さらに、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂は、一般的に使用されるTDAEオイルと比較して、25~30℃での動粘度が高いため、ゴム組成物のHs(硬度)を高く維持することができる。加えて、TDAEオイルと比較して、ブリード物が均質であるため、グリップが安定する。
以上の作用により、低燃費性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性をバランス良く改善されると考えられる。
【0015】
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、SBRを含有する。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。市販品としては、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0017】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0018】
変性SBRとして、特に下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBRが好適である。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R
4及びR
5は結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
【0019】
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、なかでも、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR等)が好適に用いられる。
【0020】
R1、R2及びR3としてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R4及びR5としてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R4及びR5が結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0021】
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0023】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0024】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0025】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
【0026】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。
なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
【0027】
SBRのスチレン量は、25質量%以上であればよいが、好ましくは26質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂との相溶性(親和性)が特に良好となる傾向がある。
なお、SBRのスチレン量は、1H-NMR測定によって測定できる。
【0028】
SBRのビニル量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、SBRのビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0029】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。上記範囲内であると、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂との絡み合いが発現しやすく、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0030】
SBR以外に使用できるゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン系ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、BR、イソプレン系ゴムが好ましい。
【0031】
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含量のBR(ハイシスBR)、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。スズ変性BRは、通常、低シス含量のBR(ローシスBR)である。また、BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。変性BRは、ローシスBR、ハイシスBRのいずれであってもよい。市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。耐摩耗性の観点からは、希土類系BRが好ましく、低燃費性の観点からは、変性BRが好ましい。
【0032】
希土類系BRとしては、従来公知のものを使用でき、例えば、希土類元素系触媒(ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒)などを用いて合成したものが挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたネオジム系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(Nd系BR)が好ましい。
【0033】
BRのシス含量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上であり、上限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0034】
BRのビニル量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、下限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0035】
BRのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-160℃以上、より好ましくは-130℃以上であり、また、好ましくは-60℃以下、より好ましくは-90℃以下である。
なお、BRのガラス転移温度は、JIS-K7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
【0036】
BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0037】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
イソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0039】
上記ゴム組成物は、重量平均分子量(Mw)が400以下のα-メチルスチレン・インデン共重合樹脂を含有する。
上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂は、α-メチルスチレン由来の構成単位(α-メチルスチレン単位)及びインデン由来の構成単位(インデン単位)を主成分とするコポリマー(共重合体)であって、常温(25℃)で液状のものであり、例えば、α-メチルスチレン1個及びインデン1個で構成された2量体や、α-メチルスチレン2個及びインデン1個、又は、α-メチルスチレン1個及びインデン2個で構成された3量体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
なお、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂は、一般的な重合方法によって製造することができる。
【0040】
上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂のMwは、400以下であればよいが、好ましくは380以下であり、また、好ましくは150以上、より好ましくは200以上である。上記範囲内であれば、適切な動粘度やブルーム性が得られる傾向がある。
なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0041】
上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂中、α-メチルスチレン単位の含有量は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、また、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下である。上記範囲内であると、SBRとの相溶性(親和性)が特に良好となる傾向がある。
同様の観点から、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂中、α-メチルスチレン単位及びインデン単位の合計含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、100モル%であってもよい。
【0042】
ゴム成分100質量部に対する上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂の含有量は、0.1~100質量部であればよいが、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0043】
上記ゴム組成物は、重量平均分子量(Mw)が400以下のインデン樹脂を含有することが好ましい。上記インデン樹脂は、高極性のため、単独ではゴム中に分散し難いが、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂と併用することで、ゴム中に良好に分散することが可能となる。そして、上記インデン樹脂がゴム中に均一に分散することで、ゴム表面に形成されるブリード物(ブリード膜)の量及び粘弾性が増大し、ウェットグリップ性能を更に改善することができる。
上記インデン樹脂は、インデン単位を主成分とするポリマー又はコポリマーであって、常温(25℃)で液状のものであり、例えば、インデン2個で構成された2量体や、インデン3個で構成された3量体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
なお、上記インデン樹脂は、一般的な重合方法によって製造することができる。
【0044】
上記インデン樹脂のMwは、400以下であればよいが、好ましくは380以下であり、また、好ましくは150以上、より好ましくは200以上である。上記範囲内であれば、適切な動粘度が得られる傾向がある。
【0045】
上記インデン樹脂中、インデン単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、100モル%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
上記インデン樹脂を含有する場合、ゴム成分100質量部に対する上記インデン樹脂の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
同様の観点から、ゴム成分100質量部に対する上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂及び上記インデン樹脂の合計含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。
【0047】
上記ゴム組成物は、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂及び上記インデン樹脂以外に、他の樹脂を含有していてもよい。他の樹脂としては、タイヤ工業で汎用されているものであれば特に限定されず、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、C5樹脂、C9樹脂等が挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは170m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上、更に好ましくは230m2/g以上、特に好ましくは250m2/g以上であり、また、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは280m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0050】
N2SAが200m2/g以上のシリカ(微粒子シリカ)を用いる場合、ゴム組成物のHs及び粘度が高くなるため、シリカ量を減らす必要があるが、シリカ量を減らすと、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。これに対し、上記ゴム組成物では、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂を配合することで、シリカ量を減らしても、良好なウェットグリップ性能を確保することができる。
また、微粒子シリカを用いると、シリカ量を減らしただけでは、ゴム組成物のHs及び粘度を適切な範囲に調整することができない場合もあるが、上記ゴム組成物では、上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂を配合することで、ゴム組成物のHs及び粘度を適切な範囲に調整することができる。
【0051】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、80質量部以上であればよいが、好ましくは90質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
上記ゴム組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、効果がより良好に得られる傾向がある。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0054】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、効果がより良好に得られる傾向がある。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0056】
上記ゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂は、常温(25℃)で液状であるため、上記ゴム組成物に配合することで、オイルを減量し、低燃費性等を更に改善することができる。上記ゴム組成物において、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下であり、0質量部であってもよい。
【0058】
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0060】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
【0061】
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0062】
上記ゴム組成物は、脂肪酸、特にステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0064】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0066】
上記ゴム組成物は硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0068】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0070】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0071】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0072】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0073】
上記ゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)に好適に用いられるが、トレッド以外の部材、例えば、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層に用いてもよい。
【0074】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階で各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0075】
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等に使用可能であり、特に、乗用車用タイヤに好適である。
【実施例】
【0076】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0077】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
なお、α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂1~6、インデン樹脂1~2、α-メチルスチレン樹脂1~2、スチレン・インデン共重合樹脂1~2は、個別の樹脂成分を、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)から分取した試作品である。
<NR>
TSR20
<BR>
ランクセス(株)製のCB25(Nd系触媒を用いて合成したBR(Nd系BR)、シス含量:97質量%、ビニル量:0.7質量%、Tg:-110℃)
<シリカ用変性SBR>
下記製造例1で作製した末端変性SBR(スチレン量:27質量%、ビニル量:58質量%、変性剤:上記式のR1、R2及びR3=-OCH3、R4及びR5=-CH3、n=3)
<カーボンブラックN220>
キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:114m2/g)
<シリカ1>
Solvay社製のZ1085Gr(N2SA:80m2/g)
<シリカ2>
エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)
<シリカ3>
Solvay社製のPremium SW(N2SA:275m2/g)
<シリカ4>
エボニックデグッサ社製のU9000(N2SA:235m2/g)
<α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂1>
試作品(α-メチルスチレン1個及びインデン1個で構成された2量体、Mw:236、α-メチルスチレン単位の含有量:50モル%)
<α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂2>
試作品(α-メチルスチレン1個及びインデン2個で構成された3量体、Mw:354、α-メチルスチレン単位の含有量:33モル%)
<α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂3>
試作品(α-メチルスチレン2個及びインデン1個で構成された3量体、Mw:354、α-メチルスチレン単位の含有量:67モル%)
<インデン樹脂1>
試作品(インデン2個で構成された2量体、Mw:236)
<インデン樹脂2>
試作品(インデン3個で構成された3量体、Mw:354)
<α-メチルスチレン樹脂1>
試作品(α-メチルスチレン2個で構成された2量体、Mw:236)
<α-メチルスチレン樹脂2>
試作品(α-メチルスチレン3個で構成された3量体、Mw:354)
<α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂4>
試作品(α-メチルスチレン1個及びインデン3個で構成された4量体、Mw:472、α-メチルスチレン単位の含有量:25モル%)
<α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂5>
試作品(α-メチルスチレン2個及びインデン2個で構成された4量体、Mw:472、α-メチルスチレン単位の含有量:50モル%)
<α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂6>
試作品(α-メチルスチレン2個及びインデン3個で構成された5量体、Mw:590、α-メチルスチレン単位の含有量:40モル%)
<スチレン・インデン共重合樹脂1>
試作品(スチレン1個及びインデン1個で構成された2量体、Mw:222)
<スチレン・インデン共重合樹脂2>
試作品(スチレン1個及びインデン2個で構成された3量体、Mw:340)
<α-メチルスチレン・スチレン共重合樹脂>
アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体)
<芳香族変性テルペン樹脂>
ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(スチレン及びテルペン化合物の共重合体、軟化点:125℃)
<クマロン・インデン共重合樹脂>
日塗化学(株)製のエスクロンV120(クマロン、インデン、スチレン及びフェノールの共重合体(石炭由来の構成単位及び石油由来の構成単位を主成分とするコポリマー)、軟化点:120℃)
<プロセスオイル>
H&R社製のVivatec500(TDAEオイル)
<パラフィンワックス>
日本精蝋(株)製のOzoace0355
<老化防止剤6PPD>
住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
<老化防止剤TMQ>
大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
<ステアリン酸>
日油(株)製のステアリン酸「椿」
<酸化亜鉛>
東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
<シランカップリング剤>
エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
<硫黄>
細井化学(株)製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
<加硫促進剤TBBS>
大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<加硫促進剤DPG>
大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0078】
<末端変性剤の作製>
窒素雰囲気下、250mlメスフラスコに3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)を20.8g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を250mlにして作製した。
【0079】
<製造例1>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn-ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を540g、ブタジエンを1460g、テトラメチルエチレンジアミンを17mmolを加え、40℃に昇温した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を3.5ml加え、30分撹拌を行った。次に、ブチルリチウムを10.5mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、上記末端変性剤を30mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6-tert-ブチル-p-クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、シリカ用変性SBRを得た。
【0080】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合処方に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で10分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。
【0081】
得られた加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを下記により評価した。結果を表1に示す。
なお、実施例及び比較例は、硬度が一定の範囲内となるように配合内容を調節している。
【0082】
<低燃費性>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度50℃、周波数10Hz、初期歪10%及び動歪2%の条件下で上記加硫ゴム組成物のtanδを測定し、比較例1を100として指数表示した(低燃費性指数)。指数が大きいほど、tanδが小さく、低燃費性に優れることを示す。指数が105以上の場合に良好であると判断した。
【0083】
<ウェットグリップ性能>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが官能評価し、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。指数が105以上の場合に良好であると判断した。
【0084】
<耐摩耗性>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。1000km毎にコントロールタイヤ及び試験用タイヤの車両装着位置を交換し、摩耗への車両走行要因を平均化した。30000km走行後の試験用タイヤにおけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時8.0mm)、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、摩耗ゴム量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。指数が105以上の場合に良好であると判断した。
【0085】
【0086】
表1より、スチレン量25質量%以上のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、重量平均分子量が400以下のα-メチルスチレン・インデン共重合樹脂と、シリカとを含み、ゴム成分100質量部に対して、α-メチルスチレン・インデン共重合樹脂の含有量が0.1~100質量部、シリカの含有量が80質量部以上である実施例は、低燃費性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性がバランス良く改善された。
【0087】
一方、重量平均分子量が400を超えるα-メチルスチレン・インデン共重合樹脂を使用した場合、性能は改善されず、むしろ低下する傾向があった(比較例8~11)。