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特許7147308ICタグラベルシートおよびICタグラベル
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  • 特許-ICタグラベルシートおよびICタグラベル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ICタグラベルシートおよびICタグラベル
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20220928BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20220928BHJP
   B65D 51/24 20060101ALI20220928BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G06K19/07 160
G06K19/077 304
B65D51/24
G09F3/00 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018133131
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020013194
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山岡 経之介
(72)【発明者】
【氏名】中林 貴光
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0197060(US,A1)
【文献】特開2016-131012(JP,A)
【文献】特表2018-505823(JP,A)
【文献】特表2018-532179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/077
B65D 51/24
G09F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルク栓によって密封されたボトルの口栓部が、棒状物または管状物によって穿刺されたことを検知可能なICタグラベルシートであって、
ICタグラベルシートの基材上に、外部装置と無線通信可能なアンテナと、コルク栓が棒状物または管状物によって穿刺されたことを検知する検知部と、ICチップと、を備えており、
検知部とアンテナは、それぞれICチップと電気的に接続されており、
検知部は、一筆書きにより任意の形状に形成された、ライン/スペースが0.30mm以下/0.30mm以下の、2つの導体回路が、一方の導体回路のライン部と、他方の導体回路のスペース部と、が絶縁層を介して平面視で互いに重なる様に備えられているものであり、且つミリメートルオーダーの電極やスペースおよびスルーホールを含んでおらず、
ICチップは、検知部の導体回路の断線または抵抗値の増加を検知する機能を備えていることを特徴とするICタグラベルシート。
【請求項2】
前記形状が、渦巻状であることを特徴とする請求項1に記載のICタグラベルシート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のICタグラベル用インレットを備えていることを特徴とするICタグラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICタグラベルに関する。更に詳しくは、高級ワインなどのボトルのコルク栓に取り付けることにより、中味の入れ替えなどの不正行為を検知するICタグラベルとそれに用いられるICタグラベルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
コルク栓を使用して密封した高級ワインや高級ウィスキー、或いは高級な飲料物や調味料のボトルの中身を安価なものに入れ替る不正行為が後を絶たない。例えば、コルク栓を抜かずに注射針を刺し込むことによってボトルの中味を取り出す道具を悪用し、コルク栓に中味を抜取り、安価なものと入れ替る不正行為が行われている。
【0003】
この様な不正行為を防止する技術としては、コルク栓を使用して密封されたボトルの口栓部に、注射針を刺し込んだことを検知するセンサを設置することが考えられる。その様な検知センサとしては、一筆書きの配線を密に形成することで、注射針を刺し込むと配線が断線し、その断線を検知する構成が考えられている。
【0004】
その様な構成の例として、図2に一筆書きの配線を密に形成した回路からなる検知センサの検知部を示した。
図2(a)は、矩形状に形成した一筆書きの回路であり、回路が形成されていない部分がある場合を示している。この部分に注射針を刺し込んだ場合は検知できない問題が有る。
図2(b)は、両面板を使用して矩形状に形成した回路からなる検知部の例を示している。これは、両面板の表裏面の回路を接続する直径が5mm程度の一般的なクリンピング部を示したものである。この部分に注射針を刺し込んだ場合は検知できない。クリンピング部の代わりに、回路を跨ぐためのブリッジする部分やスルーホールがあっても同様である。
図2(c)は、円形の領域内に矩形状に形成した一筆書きの回路を配置した場合を示している。この場合は、円形領域の端部に隣接した回路の面積が、中心部から離れた部位で増加するため、この部分に注射針を刺し込んだ場合は検知できない虞がでてくる。
【0005】
一方、高級ワインなどのボトルの口栓部を密封するコルク栓に取り付けて、中味の入れ替えなどの不正行為を検知する先行技術としては、例えば、開封検知機能とRFID機能を併せ持ったラベルが開示されている(特許文献1)。被貼着体に貼着した時に、少なくともRFID機能のアンテナ形成部を被貼着体から離間させることが可能なラベルであって、高級ワインボトルなどの口栓部に貼着することにより封印し、ラベルを開封した場合には、開封したことを検知する開封検知機能を備えた貼着部と、RFID機能を備えた起立部と、を備えているラベルである。このラベルの貼着部と起立部は、剥離シートと粘着剤層とラベル基材がこの順に積層された積層体である。貼着部と起立部の境界において、ラベル基材には折り曲げ線が形成されている。また剥離シートには切込み線が形成されている。そのため、貼着部を物品に貼り付けて封印した状態で、ラベルを折り曲げ線で折り曲げることにより起立させた起立部を保持するためのロック手段が備えられていることを特徴としたラベルである。ワインボトルなどの被着体の表面で起立することで、起立部が表面から離間するため、リーダ・ライタなどの外部装置と容易に通信可能となる優れた技術である。
【0006】
しかしながら、この技術は封印を開封されたことを検知可能とする技術であり、高級ワインなどのボトルのコルク栓を抜かずに、注射針を刺し込むことによって中味を抜取り、
安価なものと入れ替る不正行為を検知する技術とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-78984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の事情に鑑み、本発明は、ボトルを密封するコルク栓に注射針を刺し込むことによって中味を抜き取り、内容物を入れ替る不正行為が行われたことを検知可能なICタグラベルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、コルク栓によって密封されたボトルの口栓部が、棒状物または管状物によって穿刺されたことを検知可能なICタグラベルシートであって、
ICタグラベルシートの基材上に、外部装置と無線通信可能なアンテナと、コルク栓が棒状物または管状物によって穿刺されたことを検知する検知部と、ICチップと、を備えており、
検知部とアンテナは、それぞれICチップと電気的に接続されており、
検知部は、一筆書きにより任意の形状に形成された、ライン/スペースが0.30mm以下/0.30mm以下の、2つの導体回路が、一方の導体回路のライン部と、他方の導体回路のスペース部と、が絶縁層を介して平面視で互いに重なる様に備えられているものであり、且つミリメートルオーダーの電極やスペースおよびスルーホールを含んでおらず、
ICチップは、検知部の導体回路の断線または抵抗値の増加を検知する機能を備えていることを特徴とするICタグラベルシートである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記形状が、渦巻状であることを特徴とする請求項1に記載のICタグラベルシートである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のICタグラベルシートを備えていることを特徴とするICタグラベルである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のICタグラベルシートとICタグラベルにおいては、検知部が、一筆書きにより任意の形状に形成された回路のライン/スペースが共に0.30mm以下の導体回路のみからなるため、直径1.00mm程度の注射針を使用してボトルの口栓部のコルク栓を穿刺した場合に、導体回路が確実に断線する。そのため、ICチップがこの導体回路の断線を検知可能であるため、ボトルの口栓部のコルク栓が穿刺されたかどうか、を外部装置により読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のICタグラベルシートの検知部の回路の形態を例示する上面説明図。
図2】従来のICタグラベルシートの検知部の回路の形態を例示する上面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ICタグラベル>
本発明のICタグラベルシートについて、図1を使用して説明する。
本発明のICタグラベルシート10は、コルク栓によって密封されたボトルの口栓部が、棒状物または管状物によって穿刺されたことを検知可能なICタグラベルシートである。
【0015】
図1(a)に例示した様に、本発明のICタグラベルシート10は、リーダ・ライタなどの外部装置と無線通信可能なアンテナ3と、ボトルの口栓部を被覆して備えられることで、注射針のような棒状物または管状物がコルク栓に穿刺されたことを検知する検知部1と、アンテナ3と検知部1がそれぞれ接続されたICチップ2と、を備えている。
【0016】
検知部1は、ICタグラベルシート10の基材5上に、一筆書きにより任意の形状に形成された、ライン/スペースが共に0.30mm以下の導体回路からなる。その導体回路には、回路が形成されていないミリメートルオーダーのサイズの部分や電極やスルーホールを含んでいない。ミリメートルオーダーのサイズの、回路が形成されていない部分や、電極や、スルーホールがあると、その部分を注射針が穿刺しても、電気抵抗値には何ら影響を与えない。ここで、ミリメートルオーダーとは、1mm~9mmであることを指す。
【0017】
また、ICチップ2は、検知部1の導体回路が断線または導体回路の電気抵抗値が増加したことを検知する測定機能を備えている。
【0018】
この様な構成のICタグラベルシート10の検知部1を、ボトルの口栓部に接着し被覆する。ICタグラベルシート10の検知部1の裏面に接着層を備えておくことにより、被着物に貼り付けることができる。ボトルの口栓部の中(内側)はコルク栓により密封されている。そのため、注射針のような棒状物または管状物によってコルク栓が穿刺されると、検知部1が必ず穿刺され、検知部1の導体回路が断線または導体回路の抵抗値の増加を検知することができる。
【0019】
また、本発明のICタグラベルシート10は、検知部が、一筆書きにより任意の形状に形成された、ライン/スペースが共に0.30mm以下の、2つの導体回路が、一方の導体回路のライン部と、他方の導体回路のスペース部と、が絶縁層を介して平面視で互いに重なる様に備えられているものであっても構わない。この様な構成にすることで、検知部のスペース部分を狙って、直径が0.30mm未満の注射針のような棒状物または管状物によってコルク栓が穿刺されることをより困難にすることができる。
【0020】
(検知部)
本発明のICタグラベルシート10で使用する検知部1について、図1(b)を用いて説明する。図1(b)に例示した検知部1は、一筆書きにより同心円状に形成された、ライン(検知部1の導体回路の配線幅a)/スペース(検知部1の導体回路の配線の離間距離b)が共に0.30mm以下の導体回路からなる。例えば、ライン/スペース=0.30mm/0.30mmとしておくことにより、外形寸法が直径1.00mmの注射針を使用して、ボトルのコルク栓を穿刺した場合、確実に断線させることができる。
【0021】
なお、コルク栓は、ボトルの開口部の最上部からボトルの底部に向って、30mm程度の長さがある。その長さに亘って直径1.00mm以下の細い注射針を穿刺し、コルク栓を30mmの深さに貫くことは困難であるため、検知部1の導体回路のライン/スペースを0.30mm以下/0.30mm以下としておくことで、コルク栓が穿刺されたかどうかを検知可能である。もっと太い外形の注射針の場合は、それに対応させて、確実に、穿刺によって確実に断線させることができるライン/スペースの値を決めれば良い。
【0022】
注射針の太さに関しては、針のゲージ規格がある。例えば、ステンレス鋼のSUS316を使用したものの規格としては、外径が0.10±0.02mm~2.70±0.03mmまでの規格がある。それらに対応する内径は、0.03±0.02mm~2.40±0.03mmとなっている。輸血用に使用される針は、例えば、外径1.20mm、内径0.94mmとなっている。針の太さが細くなると、急激に断面積が小さくなる。例えば、外径1.20mmの針の内径の断面積を100%とすると、外径1.08mmでは76%だが、外径0.51mmでは9%、外径0.10mmでは0.1%となる。そのため、外径1mm以下の針では、コルク栓を穿刺できる強度が不足する上に、流量を確保するのが困難になる。
【0023】
例えば、ライン/スペースが0.50mm/0.50mmの導体回路からなる検知部1に対して、外径が1mmの針を穿刺した場合、検知部1は、(1)検知部1の導体回路の配線を切断した状態になるか、または、(2)検知部1の隣接する導体回路の配線を半分だけ欠損した状態になるか、または、(3)それらの中間的な状態となる。
【0024】
上記の(1)では、一筆書きの導体回路の1箇所が切断された状態である。そのため検知部1の電気抵抗値は無限大となる。(2)では、一筆書きの導体回路の1箇所で線幅が1/2となる。その部分の電気的抗値が2倍となる。一筆書きの導体回路全体の中に占める一部の電気抵抗値の増加を検知可能にしておくことにより、穿刺された事を検知することができる。例えば、一筆書きの導体回路全体の電気抵抗値を100Ωとし、1ブロックが1Ωのブロックが100ブロック直列に接続した導体回路であるとする。そのうちの1ブロックの電気抵抗値が2Ωになった場合は、導体回路全体の電気抵抗値は、100Ωから101Ωに増加する。この1%の増加分を検知可能な検出回路を備えていれば良い。それ以下の僅かな電気抵抗値の増加分を検出可能な回路を備えておけば検出可能となる。
【0025】
また、ライン/スペースが0.30mm/0.30mmの導体回路からなる検知部1に対して、外径が1mmの針を穿刺した場合は、常に導体回路を断線する。
【0026】
検知部1の大きさは、ボトルの口栓部のコルク栓を被覆できるサイズ以上であれば良い。検知部1の形状として、一筆書きにより形成された同心円状の場合を挙げて説明したが、同心円状に限定する必要は無い。ボトルの口栓部が円形であるため、外形としては円形であることが好ましいが、外形も円形に限定する必要は無い。例えば、外形が円形の検知部の場合、一筆書きの導体回路の形成方法は、矩形状の形態であっても構わない。矩形状に限らず、任意の形状であっても良いが、例えば、ライン/スペース=0.30mm/0.30mmとすることを確保できる様に、直線部のライン/スペースを小さくしておけば良い。矩形状の場合は、直線部のライン/スペースを0.30mm/0.30mmとした場合、90°に折れ曲がる部分では、ライン/スペースが約1.4倍の0.42mm/0.42mmとなる。そのため、90°に折れ曲がる部分で0.30mm/0.30mmを確保するため、直線部では0.21mm/0.21mm程度とすれば良い。
【0027】
(ICチップ)
本発明のICタグラベルシート10で使用するICチップ2は、リーダ・ライタなどの外部装置と無線通信が可能であることが必要である。それに加えて、一筆書きの導体回路である検知部1の断線(電気抵抗値が無限大)を検知できることが必要である。それに加えて、検知部1の電気抵抗値の増加を検知可能な機能を備えていることが望ましい。検知可能な機能としては、電気抵抗値の1%オーダーの増加を検知可能、或いはそれ以上の高感度で検知できることが望ましい。
【0028】
ICチップ2は、検知部1の断線または電気抵抗値の増加を検知すると、断線したことまたは電気抵抗値が増加したことを、アンテナ3からリーダ・ライタなどの外部装置に送信する機能を備えている。
【0029】
(基材)
本発明のICタグラベルシート10の基材5の材料や形状は特に限定されない。基材5の材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂フィルムを好
適に使用することができる他、機械的な強度や耐水性を強化した紙ベースの材料も使用することができる。検知部1のライン/スペースが0.30mm以下/0.30mm以下とすることを考慮すると、表面の平坦性が良好で、表面粗さが小さい樹脂フィルムを使用する方が良い。
【0030】
(アンテナ)
本発明のICタグラベルシート10で使用するアンテナ3は、外部装置との無線通信に使用する電波の周波数によって、必要なターン数が決まる。また求められる通信距離を確保するため、外部装置の電波の出力や受信感度に応じて、アンテナ3の大きさを決めれば良い。
【0031】
(ICタグラベル)
以上の様にして作製したICタグラベルシート10は、その表裏面にオーバーシートを積層し、更に少なくとも片面に接着層を備えることにより、ボトルの口栓部などの被着物に貼着可能なICタグラベルとなる。まず、多面付けされた形態のICタグラベルシート10が製造され、そのシート10の少なくとも片面に接着層と剥離紙が積層される。その後、断裁工程を経て、個片化されたICタグラベルが完成する。このような個片化されたICタグラベルの剥離紙を剥がすことで、被着物に貼り付けることができる。
【0032】
<ICタグラベルシートの製造方法>
次に、本発明のICタグラベルシート10の製造方法について説明する。
本発明のICタグラベルシート10の製造方法は、検知部1を備えていないICチップ2とアンテナ3が基材5上に備えられているICタグラベルシートと、同様である。
【0033】
(ステップ1)
まず、基材5の少なくとも片面にアルミニウム箔や銅箔などの金属箔を貼り合せた材料を用意する。
【0034】
(ステップ2)
次に、この金属箔をフォトリソグラフィ技術によって、エッチング加工することにより、検知部1とアンテナ3を同時に形成する。検知部1とICチップ2、アンテナ3とICチップ2、のそれぞれの接続電極も同時に形成することができる。
【0035】
このアンテナ3の所望の位置に、ブリッジ部を形成する。このブリッジ部は、アンテナ3が2ターン以上の巻数を備えた導体パターンからなる場合に、アンテナ3の2つの端子を同じ面上に備えるために必要となる。すなわち、アンテナ3の1つの端子からスタートし、内側にコイル状に導体パターンを形成して行くが、導体パターンの最後部と、アンテナ3のもう1つの端子と、を接続する為には、既に形成されているアンテナ3の導体パターンとショートしない様に接続しなければならない。
【0036】
そのためには、(1)アンテナ3と同じ面状にジャンパー線を用いて、導体パターンの最後部と、アンテナ3のもう1つの端子と、を接続する方法、(2)導体パターンの最後部に形成したかしめ部と、アンテナ3のもう1つの端子に近い部位に形成したかしめ部と、を用いて基材5の裏面に形成した導体パターンにより接続する方法、および(3)導体パターンの最後部からアンテナ3のもう1つの端子に向う導体パターンが、既に形成してあるアンテナの導体パターンと交差する部分に絶縁層を形成して、その絶縁層の上に導体パターンを形成することにより、導体パターンの最後部とアンテナ3のもう1つの端子を接続する方法、がある。ここでは(2)の場合を説明する。なお、かしめ部とは金属製のリベットにより表裏面に形成した導体パターンの導通をとることを指す。ブリッジ部とは、ジャンパー線などで同一面内の2つの導体パターンの間にある導体パターンとショートせずに、導通をとることを指す。
【0037】
かしめ部を介して表裏面の導通をとる方法としては、所望の位置をリベットによりかしめる方法がある。シートの表裏面に形成されている導体パターンを金属からなるリベットやハト目などを用いてかしめることで導通をとることが可能である。また、所望の位置に孔を形成しておき、スルーホールめっきや導電性インキを充填しても良い。
【0038】
(ステップ3)
次に、ICチップ2を基材5に接着し固定する。この時、ICチップ2の検知部1との接続電極部と検知部1側の電極とを導電性接着剤で接着しても良い。同様に、ICチップ2のアンテナ3との接続電極部とアンテナ3側の電極とを導電性接着剤で接着しても良い。また、まず基材5上にICチップ2をダイボンドしてから、検知部1の電極およびアンテナ3の電極と、ICチップの電極とをワイヤーボンディングや、導電性インキを使用して接続しても良い。最後にICチップ2上に樹脂モールドしても良い。
【0039】
<ICタグラベルの製造方法>
上記で作製したICタグラベルシート10を使用して、その表裏面に接着層を介してオーバーシートを積層し、更に裏面側(ICチップ2が備えられていない側)のオーバーシート上に接着層を形成したのち、離型シートを積層することにより、ICタグラベルを作製することができる。オーバーシートには、必要に応じて絵柄層が形成されていても良い。また、更に絵柄層の上に、保護層が積層されていても良い。
【0040】
通常は、ICタグラベルシート10は、大きなシート上に多面付けされた状態で製造されるため、打ち抜き装置などを使用して、1つ1つのICタグラベルに個片化するステップが入ることで、ICタグラベルが製造される。
【実施例
【0041】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0042】
<実施例1>
(基材)
基材として、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを使用した。厚さ38μmのPETフィルムの表裏面に、それぞれ厚さ10μmと18μmのアルミニウム箔が接着された両面フィルムを用意した。
【0043】
(ICチップ)
ICチップとして、断線検知機能を備えたWisekey社のVaultIC154を用意した。
【0044】
(アルミニウム箔のエッチング加工)
まず、10μmのアルミニウム箔側のエッチング加工を行った。2つのスルーホール間を接続する線幅0.2mmの配線が形成される様に、配線が残る部分に溶剤で剥離可能なエッチングレジストをスクリーン印刷した。エッチングレジストの溶剤分を揮発・乾燥させるため、クリーンオーブン中で加熱乾燥した。
【0045】
次に、18μmのアルミニウム箔側に、一筆書きの渦巻き状の導体回路とアンテナが形成される部分を被覆する様にエッチングレジストを形成した。エッチングレジストのパターン形成は、スクリーン印刷によって行った。エッチングレジストの印刷後、エッチングレジストの溶剤分を揮発させるためクリーンオーブンにて加熱乾燥を行った。
【0046】
次に、アルミニウムのリン酸系エッチング液を用いてアルミニウム箔をエッチング加工
することによって、まず10μmのアルミニウム箔側の2つのスルーホール間を接続する配線が形成されるまでエッチング加工を進めた。
【0047】
次に、形成された2つのスルーホール間を接続する配線の上から、エッチングレジストを塗布・乾燥し、エッチングがそれ以上に進まない様にした。
【0048】
次に、18μmのアルミニウム箔側のアルミニウム箔を追加エッチングすることによって、検知部とアンテナを形成した。
【0049】
次に、エッチングレジストを溶解剥離可能な溶剤中に浸漬し、搖動することによって、エッチングレジストを剥離した。
【0050】
最後に、表裏面の導通をとる部位をアルミニウム製のリベットでかしめることによって、表裏面に形成されているアルミニウム配線の導通をとった。
【0051】
以上により、表裏両面のアルミニウム箔のパターニングが完了し、一方の面には、ライン/スペースが0.20mm/0.20mmの渦巻き状の配線からなる検知部と、矩形コイル状のアンテナが形成され、もう一方の面には、線幅0.20mmのスルーホール間を接続する配線を形成した。
【0052】
(ICチップの実装)
使用したICチップは、断線検知するための一対の電極と、アンテナに接続し、無線通信可能とする一対の電極を備えているものである。
【0053】
断線を検知するICチップの電極に検知部を、またアンテナに接続するICチップの電極にアンテナを、導電性接着剤を用いて接着する事により、ICタグラベルシートを完成した。
【0054】
<実施例2>
基材として、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを使用した。厚さ50μmのPETフィルムの片面に、厚さ10μmのアルミニウム箔が接着された片面フィルムを用意した。
【0055】
(ICチップ)
ICチップとして、断線検知機能を備えたNXP社のNTAG213 TTを用意した。
【0056】
(アルミニウム箔のエッチング加工)
次に、10μmのアルミニウム箔に、一筆書きの渦巻き状の導体回路とアンテナが形成される部分を被覆する様にエッチングレジストを形成した。エッチングレジストのパターン形成は、スクリーン印刷によって行った。エッチングレジストの印刷後、エッチングレジストの溶剤分を揮発させるためクリーンオーブンにて加熱乾燥を行った。
【0057】
次に、アルミニウムのリン酸系エッチング液を用いてアルミニウム箔をエッチング加工することによって、まず10μmのアルミニウム箔のエッチング加工を行うことにより検知部とアンテナを形成した。その後、エッチングレジストの溶剤に浸漬・搖動することによって、エッチングレジストを剥離した。
【0058】
次に、アルミニウム箔側とは反対側である裏面に、2つのスルーホール間を接続する配線を導電性インキのスクリーン印刷により印刷し乾燥することにより形成した。
【0059】
以上により、表裏両面のアルミニウム箔のパターニングが完了し、一方の面には、ライン/スペースが0.20mm/0.10mmの検知部とアンテナが形成され、もう一方の面には、線幅0.20mmのスルーホール間を接続する配線を形成した。
【0060】
その他は、実施例1と同様にして、ICタグラベルシートを完成した。
【0061】
<評価>
実施例1と2で作製したICタグラベルシートを使用して、その表裏面に接着層を介して、オーバーシートをラミネートした。オーバーシートは、厚さ50μmのPETG(グリコール変性のポリエチレンテレフタレート)樹脂シートを使用した。
【0062】
以上の様にして作製したICタグラベルシートの検知部をコルクシートの上に載置し、外形が1.08mmのSUS316製の輸血用の注射針を使用して、検知部の任意の1箇所だけ穿刺した。
【0063】
その結果、実施例1と実施例2で作製したICタグラベルシートは、共に、断線していることが検知された。そのため、検知部を穿刺したことを検知することができた。
【0064】
以上の結果により、本発明のICタグラベルシートを使用して作製したICタグラベルの検知部を、直径が1mm程度の輸血用の注射針を使用した場合、確実に検知部が穿刺されたことを検知可能である事が分った。
【符号の説明】
【0065】
1・・・検知部
2・・・ICチップ
3・・・アンテナ
4・・・裏面接続配線(またはジャンパー線)
5・・・(ICタグラベルシートの)基材
10・・・ICタグラベルシート
a・・・検知部の導体回路の配線幅
b・・・検知部の導体回路の配線の離間距離
図1
図2