(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/02 20120101AFI20220928BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20220928BHJP
【FI】
F16H57/02
F16H57/04 F
F16H57/04 J
(21)【出願番号】P 2018146627
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】更科 俊平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩井 夏樹
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-196770(JP,A)
【文献】特開2009-281455(JP,A)
【文献】特開2018-115675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/02
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力が伝達される回転軸と、
前記回転軸を収容する動力伝達ケースと、
前記動力伝達ケースに設けられ、軸受を介して前記回転軸を回転自在に支持する軸受支持部と、
前記回転軸と一体で回転するように前記回転軸に取付けられたセンサリングとを備え、
前記センサリングをセンサによって検出することにより、前記回転軸の回転数を検出する車両用動力伝達装置であって、
前記センサリングは、前記回転軸から径方向外方に延びる環状部と、前記環状部の径方向の外端部に連絡されて前記環状部の外端部から前記回転軸の軸方向に延び、円周方向に一定の間隔で形成された複数の歯面を有する筒状部とを備えており、
前記センサリングは、
前記筒状部が前記回転軸の軸方向において前記軸受と重なるように前記回転軸に設置されて
おり、前記回転軸の軸方向において、前記環状部が前記軸受に接触していることを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記回転軸上に、前記回転軸と一体で回転する回転体が設けられており、
前記環状部は、前記回転軸の軸方向において前記回転体と前記軸受とに挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記動力伝達ケースは、前記軸受支持部から前記回転軸の径方向の外方に延びる縦壁を有し、
前記軸受支持部は、前記筒状部と前記軸受との間に位置するように、前記縦壁から前記回転軸の軸方向に突出しており、
前記縦壁に、前記軸受支持部の真下に位置するようにオイルストレーナが設置されており、
前記センサリングは、前記回転軸の軸方向において前記筒状部、前記軸受および前記軸受支持部が重なるように設置されており、
前記筒状部は、前記軸受支持部を覆うように前記環状部から前記縦壁に向かって突出することにより、前記軸受から流れてくるオイルを、前記縦壁を伝わせて前記オイルストレーナに案内可能なことを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項4】
前記回転軸を第1の回転軸とした場合に、前記第1の回転軸よりも下方に第2の回転軸が設置されており、
前記軸受支持部を第1の軸受支持部とした場合に、前記縦壁は、前記第1の軸受支持部よりも下方において軸受を介して前記第2の回転軸を回転自在に支持する第2の軸受支持部を有し、
前記第2の軸受支持部の上側にオイル導入溝が形成されていることを特徴とす
る請求項3に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される変速機において、回転軸にセンサリングを一体に設け、センサによってセンサリングの回転を検出することにより、回転軸の回転を検出するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されるものは、変速機ケースの軸受支持部に、ベアリングを介してトランスミッションアウトプット部が回転自在に支持されている。トランスミッションアウトプット部にはセンサリングが取付けられており、センサリングは、トランスミッションアウトプット部の軸方向において軸受支持部と離れて設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の変速機にあっては、トランスミッションアウトプット部の軸方向においてセンサリングが軸受支持部と離れて設置されているので、トランスミッションアウトプット部に対する軸受支持部の厚み分とセンサリングの厚み分だけトランスミッションアウトプット部が軸方向に長くなる。このため、変速機が大型化するおそれがあり、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、回転軸の軸長が長くなることを防止して回転軸にセンサリングを取付けることができ、大型化することを防止できる車両用動力伝達装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内燃機関の動力が伝達される回転軸と、前記回転軸を収容する動力伝達ケースと、前記動力伝達ケースに設けられ、軸受を介して前記回転軸を回転自在に支持する軸受支持部と、前記回転軸と一体で回転するように前記回転軸に取付けられたセンサリングとを備え、前記センサリングをセンサによって検出することにより、前記回転軸の回転数を検出する車両用動力伝達装置であって、前記センサリングは、前記回転軸から径方向外方に延びる環状部と、前記環状部の径方向の外端部に連絡されて前記環状部の外端部から前記回転軸の軸方向に延び、円周方向に一定の間隔で形成された複数の歯面を有する筒状部とを備えており、前記センサリングは、前記筒状部が前記回転軸の軸方向において前記軸受と重なるように前記回転軸に設置されており、前記回転軸の軸方向において、前記環状部が前記軸受に接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、回転軸の軸長が長くなることを防止して回転軸にセンサリングを取付けることができ、車両用動力伝達装置が大型化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置の左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置の平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置のセンサリングの正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置のセンサリングの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用動力伝達装置は、内燃機関の動力が伝達される回転軸と、回転軸を収容する動力伝達ケースと、動力伝達ケースに設けられ、軸受を介して回転軸を回転自在に支持する軸受支持部と、回転軸と一体で回転するように回転軸に取付けられたセンサリングとを備え、センサリングをセンサによって検出することにより、回転軸の回転数を検出する車両用動力伝達装置であって、センサリングは、回転軸の軸方向においてセンサリングの一部が軸受と重なるように回転軸に設置されている。
これにより、回転軸の軸長が長くなることを防止して回転軸にセンサリングを取付けることができ、車両用動力伝達装置が大型化することを防止できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置について、図面を用いて説明する。
図1から
図6は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置を示す図である。
図1から
図6において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用動力伝達装置を基準とし、前後方向に対して直交する方向が左右方向、車両用動力伝達装置の高さ方向が上下方向である。
【0012】
まず、構成を説明する。
図1、
図2において、車両1には車両用動力伝達装置(以下、単に動力伝達装置という)2が搭載されており、動力伝達装置2は、エンジン3に接続された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。
【0013】
動力伝達装置2は、動力伝達ケース4を備えており、動力伝達ケース4は、トルクコンバータハウジング(以下、単にトルコンハウジングという)5と、フロントケース6と、トランスファフロントケース7と、トランスファリヤケース8と、トランスファシフトケース9とを備えている。
【0014】
動力伝達ケース4のうち、トルコンハウジング5、フロントケース6およびトランスファフロントケース7は、変速機ケースを構成し、トランスファリヤケース8およびトランスファシフトケース9は、トランスファケースを構成する。
【0015】
トルコンハウジング5の前端部には図示しないボルトによって内燃機関としてのエンジン3が接続されている。エンジン3は、燃料の燃焼を行い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する。
【0016】
トルコンハウジング5は、フロントケース6に連結されている。トルコンハウジング5の内部には図示しないトルクコンバータが収容されている。トルクコンバータは、エンジン3と入力軸11(
図3参照)との間でオイルを介して動力を伝達する流体継手を構成している。
【0017】
フロントケース6には図示しないクラッチが収容されており、クラッチは、エンジン3から入力軸11に動力を伝達し、また、動力の伝達を遮断する。
【0018】
フロントケース6にはトランスファフロントケース7が連結されており、フロントケース6およびトランスファフロントケース7には入力軸11が収容されている(
図3参照)。トランスファフロントケース7は、トランスファリヤケース8に連結されている。入力軸11よりも下方においてトランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8にはカウンタ軸12が設置されている(
図3参照)。
【0019】
入力軸11には図示しない複数の入力ギヤが設けられている。カウンタ軸12には図示しない複数のカウンタギヤが設けられており、同一の変速段を構成する入力ギヤは、同一の変速段を有するカウンタギヤに噛み合っている。
【0020】
トランスファリヤケース8の上部にはトランスファシフトケース9が連結されている。
図3において、トランスファリヤケース8には出力軸13が収容されている。本実施例の出力軸13は、本発明の回転軸および第1の回転軸を構成し、カウンタ軸12は、本発明の第2の回転軸を構成する。
【0021】
入力軸11の後端部は、出力軸13の前端部にニードル軸受10Aを介して相対回転自在に連結されている。
【0022】
トランスファフロントケース7には隔壁16が設けられており、隔壁16は、動力伝達ケース4の内部の空間をトランスファフロントケース7側の空間であるギヤ室20Aとトランスファリヤケース8側の空間であるトランスファ室20Bとに仕切っている。
【0023】
隔壁16には軸受支持部16Aが設けられており、軸受支持部16Aは、軸受17を介して出力軸13の前端部を回転自在に支持している。隔壁16は、軸受支持部16Aから出力軸13の径方向の外方に延びており、延びる方向の外端がトランスファフロントケース7の内周部に連結されている。
【0024】
トランスファリヤケース8には後壁18が設けられており、後壁18は、隔壁16と共にトランスファフロントケース7側のトランスファ室20Bを閉塞している。後壁18には後壁18からトランスファシフトケース9に向かって突出する中空部45が設けられている。本実施の形態の後壁18は、本発明の縦壁を構成する。
【0025】
トランスファシフトケース9は、中空部45に連結されており、中空部45およびトランスファシフトケース9の内部にはトランスファギヤシフト室20Cが形成されている。
後壁18の上部には開口18aが形成されており、トランスファ室20Bは、開口18aを通してトランスファギヤシフト室20Cに連通されている。
【0026】
後壁18には軸受支持部18Aが設けられており、軸受支持部18Aは、軸受19を介して出力軸13の軸方向の中央部を回転自在に支持している。後壁18は、軸受支持部18Aから出力軸13の径方向の外方に延びており、延びる方向の外端がトランスファリヤケース8の内周部に連結されている。
【0027】
軸受支持部18Aは、後壁18から隔壁16に向かって入力軸11側に突出している。軸受19は、出力軸13の外周部に嵌合されるインナレース19Aと、軸受支持部18Aの内周部に嵌合されるアウタレース19Bと、インナレース19Aとアウタレース19Bとを相対回転自在に連結するボール部19Cとを備えている。
【0028】
出力軸13にはスライディングヨーク31がスプライン嵌合されており、スライディングヨーク31は、出力軸13と一体で回転自在で、かつ、出力軸13の軸方向に移動自在となっている。
【0029】
スライディングヨーク31にはリヤプロペラシャフト41が連結されている。リヤプロペラシャフト41は、図示しないリヤディファレンシャル装置に連結されており、リヤディファレンシャル装置は、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の後輪に連結されている。
【0030】
リヤプロペラシャフト41が前後方向に移動すると、スライディングヨーク31が出力軸13の軸方向に沿って前後に移動することにより、リヤプロペラシャフト41の前後方向への移動が許容される。
【0031】
後壁18には筒状のスライディングヨーク支持部18Hが設けられている。スライディングヨーク支持部18Hは、後壁18からスライディングヨーク31に向かって延びており、出力軸13の一部とスライディングヨーク31の一部とを覆っている。
【0032】
スライディングヨーク31とスライディングヨーク支持部18Hとの間にはメタルブッシュ39が設けられている。メタルブッシュ39は、スライディングヨーク31が出力軸13と一体で回転しながら出力軸13の軸方向に移動したときに、スライディングヨーク31を支持する。
【0033】
トランスファリヤケース8にはダストケース36が設置されている。ダストケース36は、スライディングヨーク31とスライディングヨーク支持部18Hとを覆うようにしてスライディングヨーク31に取付けられている。
これにより、外部からスライディングヨーク支持部18Hとスライディングヨーク31との間を通して動力伝達ケース4の内部に塵等が侵入することを防止できる。
【0034】
スライディングヨーク支持部18Hの後端の内周部とスライディングヨーク31との間にはオイルシール43が設けられている。オイルシール43は、スライディングヨーク支持部18Hとスライディングヨーク31との間を流れるオイルや、スライディングヨーク支持部18Hとメタルブッシュ39との間を流れるオイルが外部に漏出されることを防止している。
【0035】
カウンタ軸12にはファイナルドライブギヤ21が設けられており、ファイナルドライブギヤ21は、カウンタ軸12と一体で回転する。出力軸13の前側にはファイナルドリブンギヤ22が設けられており、ファイナルドリブンギヤ22は、出力軸13と一体で回転する。
【0036】
入力軸11から所定の変速段を成立している入力ギヤおよびカウンタギヤを介してカウンタ軸12に動力が伝達されると、ファイナルドライブギヤ21からファイナルドリブンギヤ22に動力が伝達される。
【0037】
ファイナルドリブンギヤ22の後方において、出力軸13にはニードル軸受10Bを介してスプロケット24が相対回転自在に連結されている。スプロケット24にはチェーン25が巻き掛けられている。チェーン25は、フロントプロペラシャフト40(
図2参照)の図示しないスプロケットに巻き掛けられている。
【0038】
フロントプロペラシャフト40は、図示しないフロントディファレンシャル装置に連結されており、フロントディファレンシャル装置は、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の前輪に連結されている。
【0039】
スプロケット24の後方において出力軸13にはハブ26がスプライン嵌合されており、ハブ26は、出力軸13と一体で回転する。本実施例のハブ26は、本発明の回転体を構成する。
【0040】
ハブ26の外周部には環状のハブスリーブ27がスプライン嵌合しており、ハブスリーブ27は、ハブ26と一体で回転し、かつ、ハブ26に対して出力軸13の軸方向に移動自在となっている。
【0041】
ハブスリーブ27にはシフトフォーク28が嵌合している。シフトフォーク28は、シフタ軸29に取付けられている。シフタ軸29は、一端部が隔壁16の上部に設けられた嵌合溝16Bに嵌合し、一端部から開口18aを通してトランスファギヤシフト室20Cに延び、トランスファシフトケース9に設けられた嵌合溝9Aに嵌合している。
【0042】
シフタ軸29は、コイルスプリング30によって後方のトランスファシフトケース9側に付勢されており、図示しない駆動用のモータによって出力軸13の軸方向に移動される。駆動用モータは、2輪駆動-4輪駆動切換用の操作レバーが操作されて操作レバーが2輪駆動側に切換えられると、停止される。モータが停止されると、コイルスプリング30の付勢力によってシフタ軸29が後方に移動し、シフトフォーク28によってハブスリーブ27が後方に移動する。
【0043】
このとき、ハブスリーブ27がハブ26とスプロケット24とを連結していないので、出力軸13からリヤプロペラシャフトのみに動力が伝達され、車両1が後輪駆動される。
出力軸13の軸方向において、ハブ26とスプロケット24との間にはシンクロナイザリング32が介装されている。
【0044】
シンクロナイザリング32は、ハブスリーブ27が後方からスプロケット24側に移動したときに、スプロケット24の回転をハブスリーブ27の回転に同期させる。
【0045】
駆動用モータは、2輪-4輪切り換え用の操作レバーが操作されて操作レバーが4輪駆動側に切換えられると、シフタ軸29を前方に移動させる。シフタ軸29が前方に移動すると、シフトフォーク28によってハブスリーブ27が前方に移動する。
【0046】
このとき、ハブスリーブ27がスプロケット24に連結されるので、出力軸13からリヤプロペラシャフト41に動力で伝達されるとともに、出力軸13からハブ26、ハブスリーブ27、スプロケット24およびチェーン25を介してフロントプロペラシャフト40に動力が伝達され、車両1が前後輪で駆動される。
【0047】
出力軸13にはセンサリング33が取付けられており、センサリング33は、出力軸13と一体で回転する。
【0048】
図5、
図6において、センサリング33は、環状部33Aと、筒状部33Bとを有する。
図3において、環状部33Aは、出力軸13から径方向外方に延びている。筒状部33Bは、環状部33Aの径方向の外端部に連絡されて環状部33Aの外端部から後壁18に向かって出力軸13の軸方向に延びている。
【0049】
図5、
図6において、筒状部33Bには複数の歯面33bが形成されており、歯面33bは、筒状部33Bの円周方向に一定の間隔で形成されている。
図2においてトランスファリヤケース8の側面には回転数センサ34が設けられている。
【0050】
回転数センサ34は、図示しない検出素子を有する。検出素子は、歯面33bの間隔を検出し、歯面33bに応じたパルス信号を図示しない制御部に出力することにより、出力軸13の回転数を検出する。
【0051】
具体的には、制御部は、回転数センサ34から入力されたパルス信号を参照し、単位時間当たりのパルス数を算出することにより、出力軸13の回転数を検出する。本実施例の回転数センサ34は、本発明のセンサを構成する。
【0052】
図3において、センサリング33の筒状部33Bは、出力軸13の軸方向において軸受19と軸受支持部18Aとに重なるように出力軸13に設置されている。
【0053】
出力軸13の軸方向において、環状部33Aの径方向の内端は、軸受19のインナレース19Aとハブ26に接触している。環状部33Aは、出力軸13の軸方向においてインナレース19Aとハブ26に挟持されており、出力軸13の軸方向においてインナレース19Aとハブ26に位置決めされつつ、インナレース19Aとハブ26に保持されている。
【0054】
図5において、環状部33Aには貫通孔33aが形成されており、貫通孔33aにはハブ26に設けられた図示しない突起が嵌合している。これにより、センサリング33は、ハブ26に対して回転方向にずれることがなく、ハブ26と一体で回転する。
【0055】
図3において、動力伝達装置2の高さ方向において筒状部33Bとハブスリーブ27とは、同じ高さ位置に設置されている。換言すれば、出力軸13の径方向において筒状部33Bとハブスリーブ27とは、同じ位置に設置されている。
【0056】
これにより、ハブスリーブ27が後方に過度に移動した場合に、筒状部33Bに衝突することにより、ハブスリーブ27がハブ26から脱落することを防止できる。
【0057】
後壁18の軸受支持部18Aは、出力軸13の軸方向においてセンサリング33の筒状部33Bと軸受19との間に位置するように、後壁18から隔壁16に向かって出力軸13の軸方向に突出している。
【0058】
動力伝達ケース4の底部、すなわち、フロントケース6、トランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の底部(
図3ではトランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の底部のみを図示)にはオイルOが貯留されている。
【0059】
図3、
図4のオイルOの油面は、出力軸13が回転していないときのオイルの油面の高さを示しており、出力軸13の回転時には図示しないオイルポンプによってオイルが吸い込まれるので、油面が低下する。
【0060】
後壁18の下部にはオイル導入溝18Cが設けられており、オイル導入溝18Cにはオイル通路18Dの下端が開口している。オイル導入溝18Cの開口部18cには編み目状のオイルストレーナ35が設けられている。
【0061】
図4において、オイルストレーナ35は、軸受支持部18Aの真下に設置されている。換言すれば、オイル導入溝18Cは、軸受支持部18Aの真下に設けられている。
【0062】
後壁18には図示しないオイルポンプが設置されており、オイルポンプは、カウンタ軸12によって駆動される。オイルポンプが駆動されると、トランスファリヤケース8の底部に貯留されるオイルOがオイルストレーナ35で濾過された後、オイル導入溝18Cに導入される。
図3でオイルの流れをオイルO1、O2で示す。
【0063】
次いで、オイル導入溝18Cに導入されたオイルO1は、オイル通路18Dを通してスライディングヨーク31とスライディングヨーク支持部18Hの間に導入された後(O2参照)、軸受19に供給される。これにより、軸受19がオイルO2によって潤滑および冷却される。
【0064】
センサリング33は、出力軸13の軸方向において筒状部33Bが軸受19および軸受支持部18Aと重なるように設置されている。筒状部33Bは、軸受支持部18Aを覆うように環状部33Aから後壁18に向かって突出している。
【0065】
これにより、環状部33Aおよび筒状部33Bと、軸受19および軸受支持部18Aとの間にオイルO2を案内する空間37が形成される。このため、軸受19から流れてくるオイルO2を、後壁18を伝わせてオイルストレーナ35に案内できる。
【0066】
図4において、後壁18には軸受支持部18Eが設けられており、軸受支持部18Eは、軸受支持部18Aよりも下方に設置されている。カウンタ軸12の後端部は、軸受38を介して軸受支持部18Eに回転自在に支持されている。
【0067】
軸受支持部18Eの上側にはオイル導入溝18eが形成されており、オイル導入溝18eから軸受支持部18Eに導入されたオイルは、軸受38に供給される。
【0068】
以上、本実施例の動力伝達装置2は、エンジン3の動力が伝達される出力軸13と、出力軸13を収容する動力伝達ケース4と、動力伝達ケース4に設けられ、軸受19を介して出力軸13を回転自在に支持する軸受支持部18Aと、出力軸13と一体で回転するように出力軸13に取付けられたセンサリング33とを備えている。
【0069】
これに加えて、センサリング33は、出力軸13の軸方向において筒状部33Bが軸受19と重なるように出力軸13に設置されている。
これにより、出力軸13は、センサリング33の厚さ分の出力軸13の軸長を確保することを不要にできる。このため、出力軸13の軸長が長くなることを防止して出力軸13にセンサリング33を取付けることができ、結果的に動力伝達装置2が大型化することを防止できる。
【0070】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、センサリング33は、出力軸13から径方向外方に延びる環状部33Aと、環状部33Aの径方向の外端部に連絡されて環状部33Aの外端部から出力軸13の軸方向に延び、円周方向に一定の間隔で形成された複数の歯面33bを有する筒状部33Bとを備えている。
【0071】
これに加えて、筒状部33Bが出力軸13の軸方向において軸受支持部18Aと重なっている。
【0072】
これにより、歯面33bを有する軸長の長い筒状部33Bを、出力軸13の軸方向において軸受19と重ねることができ、出力軸13の軸方向において厚みの薄い環状部33Aを出力軸13に設けることができる。
【0073】
このため、出力軸13の軸長が長くなることをより効果的に防止して出力軸13にセンサリング33を取付けることができ、動力伝達装置2が大型化することをより効果的に防止できる。
【0074】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、出力軸13の軸方向において、環状部33Aが軸受19のインナレース19Aに接触しているので、センサリング33を軸受19に近づけて設置できる上に、出力軸13の軸方向において筒状部33Bを軸受19に容易に重ねることができる。
【0075】
このため、出力軸13の軸長が長くなることをより効果的に防止して出力軸13にセンサリング33を取付けることができ、動力伝達装置2が大型化することをより効果的に防止できる。
【0076】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、出力軸13上に、出力軸13と一体で回転するハブ26が設けられており、環状部33Aは、出力軸13の軸方向においてハブ26と軸受19とに挟持されている。
【0077】
これにより、出力軸13の軸方向においてハブ26とセンサリング33との間の隙間およびセンサリング33と軸受19との間の隙間を無くすことができる。このため、出力軸13の軸長が長くなることをより効果的に防止して出力軸13にセンサリング33を取付けることができ、動力伝達装置2が大型化することをより効果的に防止できる。
【0078】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、動力伝達ケース4のトランスファリヤケース8は、軸受支持部18Aから出力軸13の径方向の外方に延びる後壁18を有する。
【0079】
軸受支持部18Aは、筒状部33Bと軸受19との間に位置するように、後壁18から隔壁16に向かって出力軸13の軸方向に突出している。さらに、後壁18には軸受支持部18Aの真下に位置するようにオイルストレーナ35が設置されている。
【0080】
これに加えて、センサリング33は、出力軸13の軸方向において筒状部33B、軸受19および軸受支持部18Aが重なるように設置されており、筒状部33Bは、軸受支持部18Aを覆うように環状部33Aから後壁18に向かって突出することにより、軸受19から流れてくるオイルO2を、後壁18を伝わせてオイルストレーナ35に案内可能となっている。
【0081】
これにより、センサリング33を利用してオイルをオイルストレーナ35に導くことができ、オイルをオイルストレーナ35に導く新規な部材を不要にできる。このため、オイルストレーナ35の周辺により多くのオイルを戻すことができ、オイルストレーナ35を通してオイル導入溝18Cにより多くのオイルを導入できる。このため、軸受19の潤滑性能および冷却性能を向上できる。
【0082】
また、軸受19から流れてくるオイルO2が後壁18を伝ってオイルストレーナ35に案内されるので、オイルO2がカウンタ軸12に衝突して空気と攪拌され、オイルに空気が混入されてしまうことを防止できる。
【0083】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、出力軸13よりも下方にカウンタ軸12が設置されている。後壁18は、軸受支持部18Aよりも下方において軸受38を介してカウンタ軸12を回転自在に支持する軸受支持部18Eを有し、軸受支持部18Eの上側にオイル導入溝18eが形成されている。
【0084】
これにより、軸受19から流れてくるオイルO3(
図4参照)を、後壁18を伝わせてオイル導入溝18eに積極的に導入することができる。このため、軸受38に多くのオイルを供給でき、軸受38の潤滑性能および冷却性能を向上できる。
【0085】
本実施例の動力伝達装置2においては、センサリング33が2輪駆動-4輪駆動切換用のスプロケット24と軸受19によって挟持されているが、挟持する一方の部材は、2輪駆動-4輪駆動切換用のスプロケット24に限定されるものではない。
【0086】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0087】
2...動力伝達装置(車両用動力伝達装置)、3...エンジン(内燃機関)、4...動力伝達ケース、12...カウンタ軸(第2の回転軸)、13...出力軸(回転軸、第1の回転軸)、18...後壁(縦壁)、18A...軸受支持部、18e...オイル導入溝、19...軸受、26...ハブ(回転体)、33...センサリング、33A...環状部、33B...筒状部、33b...歯面、34...回転数センサ(センサ)、35...オイルストレーナ